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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/364 20140101AFI20241119BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B23K26/364
H01L21/78 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021104239
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003203
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 充史
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-285654(JP,A)
【文献】特表2014-509949(JP,A)
【文献】特開2004-158859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0127697(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0227889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/364
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー加工装置であって、
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された被加工物にパルスレーザービームを集光して照射する集光光学素子を備えたレーザー照射手段と、
該保持テーブルと該パルスレーザービームの集光点とを相対的に加工送りする送り手段と、
加工条件を入力する入力手段と、
該入力手段から入力された加工条件で該レーザー照射手段および送り手段を制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、
該被加工物のレーザー加工において集光点を基準とした最適なデフォーカス量(dz)を、被加工物の沸点(T)と、吸収係数(α)と、密度(ρ)と、比熱(c)と、該レーザー照射手段を構成するパルスレーザービームの集光角(θ)と、パルスレーザービームのパルスエネルギー(E)と、に基づいて求める、レーザー加工装置。
【請求項2】
該制御手段は、
該パルスエネルギー(E)を、該被加工物による反射損失で補正する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該制御手段は、
該集光角(θ)に代わって、該レーザー照射手段を構成する集光光学素子の焦点距離(f)と、該集光光学素子に到達するパルスレーザービームの直径(D)とを更に用いて該デフォーカス量(dz)を求める、
請求項1または請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該制御手段は、
該パルスエネルギー(E)に代わって、パルスレーザービームの平均出力(P)と、該パルスレーザービームの繰り返し周波数(f)とを更に用いて該デフォーカス量(dz)を求める、
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
該制御手段は、
最適なデフォーカス量(dz)を、パルスレーザービームの波長を(λ)、自然対数の底を(e)、円周率を(π)として、mks単位系で、
【数1】
で求める請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
該制御手段は、
最適なデフォーカス量(dz)を、パルスレーザービームの波長を(λ)、パルスレーザービームのMスクウェア値を(M2)、自然対数の底を(e)、円周率を(π)として、mks単位系で、
【数2】
で求める請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
該制御手段は、
レーザー加工すべき領域の所望の加工溝の深さを(L)と、該送り手段の送り速度を(v)と、に基づいて
レーザー加工すべき領域への走査回数(N)を求める請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項8】
該制御手段は、
該走査回数(N)を、mks単位系で、
【数3】
で求める請求項7に記載のレーザー加工装置。
【請求項9】
該制御手段は、
該求められた最適なデフォーカス量(dz)によって決定されるスポット径が加工すべき領域の幅を超えている場合、
加工すべき領域の幅(g)と、被加工物の沸点(T)と、吸収係数(α)と、密度(ρ)と、比熱(c)と、に基づいて、パルスエネルギー(E)を調整し、
パルスレーザービームの集光角(θ)と、加工すべき領域の幅(g)とに基づいて、デフォーカス量(dz)を調整する、
請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項10】
該制御手段は、
該パルスエネルギー(E)を、mks単位系で、
【数4】
で調整し、
該デフォーカス量(dz)を、mks単位系で、
【数5】
で調整する、請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項11】
該制御手段は、
レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)に基づいてパルスレーザービームの走査ピッチ(p)を求め、
パルスレーザービームを走査ピッチ(p)で走査本数(N)だけ並列に走査する、
請求項1乃至請求項10のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項12】
該制御手段は、
該走査本数(N)を、mks単位系で、
【数6】
で求め、
該走査ピッチ(p)を
【数7】
で求める、
請求項11に記載のレーザー加工装置。
【請求項13】
制御手段は、
レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)と、レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)とし、
(L)/(a)が加工すべき領域の幅(g)を超える場合、
警告を発する請求項11または請求項12に記載のレーザー加工装置。
【請求項14】
該レーザー加工装置は、
該被加工物に形成された加工溝の深さ(L)を測定する深さ測定器を有し、
該制御手段は、
該深さ測定器によって測定されたレーザー加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)を算出する上限値算出部と、
該上限値算出部によって算出された該上限値(a)に基づいて、所望の深さを有する加工溝を形成するための加工条件を算出する加工条件算出部と、
を更に含む、請求項1乃至請求項13のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項15】
該制御手段は、
該加工条件算出部によって算出された加工条件で被加工物を加工した後、
該深さ測定器で被加工物に形成された加工溝の深さ測定を行い、
該加工溝の深さが所望の深さになっているか否かを判定する判定部と、
該判定部による判定の結果、所望の深さになっていないと判定された場合に、走査回数(N)を修正する加工条件修正部と、
を更に備える、請求項14に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザー加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物にレーザービームを照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段と、該保持テーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に加工送りする送り手段と、加工条件を入力する入力手段と、該入力手段から入力された加工条件で少なくとも該レーザー照射手段および該送り手段を制御する制御手段と、を備え、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたレーザー加工装置は、被加工物の種類ごとにレーザービームの出力、デフォーカス量や走査回数等について実験を繰り返し最適な加工条件を求めなければならず生産性が悪いという問題がある。
【0006】
従って、被加工物の種類に応じて最適な加工条件を生産性の向上を図りながらも設定できるレーザー加工装置に解決すべき課題がある。
【0007】
本願発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物の種類に応じて最適な加工条件を生産性の向上を図りながらも設定できるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、レーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物にパルスレーザービームを集光して照射する集光光学素子を備えたレーザー照射手段と、該保持テーブルと該パルスレーザービームの集光点とを相対的に加工送りする送り手段と、加工条件を入力する入力手段と、該入力手段から入力された加工条件で該レーザー照射手段および送り手段を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、該被加工物のレーザー加工において集光点を基準とした最適なデフォーカス量(dz)を、被加工物の沸点(T)と、吸収係数(α)と、密度(ρ)と、比熱(c)と、該レーザー照射手段を構成するパルスレーザービームの集光角(θ)と、パルスレーザービームのパルスエネルギー(E)と、に基づいて求めることを特徴とする。
【0009】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該パルスエネルギー(E)を、該被加工物による反射損失で補正しても良い。
【0010】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該集光角(θ)に代わって、該レーザー照射手段を構成する集光光学素子の焦点距離(f)と、該集光光学素子に到達するパルスレーザービームの直径(D)とを更に用いて該デフォーカス量(dz)を求めても良い。
【0011】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該パルスエネルギー(E)に代わって、パルスレーザービームの平均出力(P)と、該パルスレーザービームの繰り返し周波数(f)とを更に用いて該デフォーカス量(dz)を求めても良い。
【0012】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、最適なデフォーカス量(dz)を、パルスレーザービームの波長を(λ)、自然対数の底を(e)、円周率を(π)として、mks単位系で、
【数1】
で求めても良い。
【0013】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、最適なデフォーカス量(dz)を、パルスレーザービームの波長を(λ)、パルスレーザービームのMスクウェア値を(M2)、自然対数の底を(e)、円周率を(π)として、mks単位系で、
【数2】
で求めても良い。
【0014】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、レーザー加工すべき領域の所望の加工溝の深さを(L)と、該送り手段の送り速度を(v)と、に基づいて、レーザー加工すべき領域への走査回数(N)を求めても良い。
【0015】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該走査回数(N)を、mks単位系で、
【数3】
で求めても良い。
【0016】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該求められた最適なデフォーカス量(dz)によって決定されるスポット径が加工すべき領域の幅を超えている場合、加工すべき領域の幅(g)と、被加工物の沸点(T)と、吸収係数(α)と、密度(ρ)と、比熱(c)と、に基づいて、パルスエネルギー(E)を調整し、パルスレーザービームの集光角(θ)と、加工すべき領域の幅(g)とに基づいて、デフォーカス量(dz)を調整しても良い。
【0017】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該パルスエネルギー(E)を、mks単位系で、
【数4】
で調整し、
該デフォーカス量(dz)を、mks単位系で、
【数5】
で調整しても良い。
【0018】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)に基づいてパルスレーザービームの走査ピッチ(p)を求め、パルスレーザービームを走査ピッチ(p)で走査本数(N)だけ並列に走査しても良い。
【0019】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該走査本数(N)を、mks単位系で、
【数6】
で求め、
該走査ピッチ(p)を
【数7】
で求めても良い。
【0020】
前記レーザー加工装置において、制御手段は、レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)と、レーザー加工される加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)とし、(L)/(a)が加工すべき領域の幅(g)を超える場合、警告を発しても良い。
【0021】
前記レーザー加工装置において、該レーザー加工装置は、該被加工物に形成された加工溝の深さ(L)を測定する深さ測定器を有し、該制御手段は、該深さ測定器によって測定されたレーザー加工溝の幅に対する加工溝の深さ(L)の比の上限値(a)を算出する上限値算出部と、該上限値算出部によって算出された該上限値(a)に基づいて、所望の深さを有する加工溝を形成するための加工条件を算出する加工条件算出部と、を更に含んでも良い。
【0022】
前記レーザー加工装置において、該制御手段は、該加工条件算出部によって算出された加工条件で被加工物を加工した後、該深さ測定器で被加工物に形成された加工溝の深さ測定を行い、該加工溝の深さが所望の深さになっているか否かを判定する判定部と、該判定部による判定の結果、所望の深さになっていないと判定された場合に、走査回数(N)を修正する加工条件修正部と、を更に備えても良い。
【0023】
さて、図1に示すように、基板201の表面202に格子状に形成された分割予定ライン203で区画された領域にデバイス204が形成された被加工物200にパルスレーザービーム21(図2に示す)を照射して、被加工物200にアブレーション加工を施し、加工溝210を形成する。なお、図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工対象の被加工物の要部の平面図である。図2は、実施形態1に係るレーザー加工装置が被加工物にレーザー加工を施す状態を模式的に示す側面図である。
【0024】
パルス幅がピコ秒オーダーまで圧縮されたパルスレーザービーム21を物質に照射した場合、光エネルギーによって被加工物200が発熱しても、その熱の拡散量が十分小さいうちに光照射が完了し、その照射領域が除去される。また、フェムト秒オーダーまで圧縮されたパルスレーザービーム21を照射した場合には、被加工物200が発熱することなく分子や原子の結合が切断され、その照射領域が除去される。すなわち、吸収された光エネルギーの殆どは、熱として拡散することなく、その場に留まり、被加工物の除去に寄与する。その結果、閾値以上の光エネルギーを吸収した領域がそのまま除去されると捉えることが可能となり、照射光のフルエンスが加工閾値Fthを超える領域のみ除去される、というモデルが成立する。このモデルに従うと、1パルスのパルスレーザービーム21で形成される加工痕の深さLと、被加工物200の表面202でのフルエンスFとの関係は、下記の式1及び式2で示すことができる。
【0025】
【数8】
【0026】
【数9】
【0027】
なお、フルエンスFとは、被加工物200の表面202でのパルスレーザービーム21のパルスエネルギーEを、被加工物200の表面202でのパルスレーザービーム21のスポットの面積で除した値である。また、αとは、被加工物200の吸収係数(/m)である。
【0028】
除去効率をL/Fとして、この除去効率L/Fが最大となるのが、下記の式3及び式4の時である。なお、eとは、自然対数の底である。
【0029】
【数10】
【0030】
【数11】
【0031】
一方、除去に必要なエネルギーの体積密度Ethを、被加工物200を構成する原子や分子の結合エネルギーについての単体積当たりの総和で考えると、被加工物200の比熱である質量比熱c、被加工物200の密度ρ、被加工物200の沸点Tbを用いて、下記の式5で近似することができる。
【0032】
【数12】
【0033】
ここで光の侵入長は1/αなので、除去に必要な単位面積あたりの光エネルギー、すなわちフルエンスの加工閾値Fthは、下記の式6となる。
【0034】
【数13】
【0035】
従って、1パルスのパルスレーザービーム21で形成される加工溝210の深さLが最大となって、除去効率が最大となるフルエンスFは、下記の式7となる。
【0036】
【数14】
【0037】
パルスレーザービーム21のレーザーパワーの空間分布が、ガウス分布を示すとすると、フルエンスFとパルスエネルギーEとの関係は、下記の式8となる。なお、πは、円周率であり、wは、被加工物200の表面202でのパルスレーザービーム21の半径である。
【0038】
【数15】
【0039】
また、パルスエネルギーEと、パルスレーザービーム21の繰り返し周波数fと、パルスレーザービーム21の平均出力Pとの関係は、下記の式9となる。
【0040】
【数16】
【0041】
従って、除去効率が最大となるパルスレーザービーム21の半径wは、下記式10となる。
【0042】
【数17】
【0043】
パルスレーザービーム21の半径wは、波動光学に基づいて、下記の式11、又はパルスレーザービーム21のMスクェア値M2を導入すると、下記の式12となり、パルスレーザービーム21の半径wとデフォーカス量dzの関係との関係は、下記の式13、又はパルスレーザービーム21のMスクェア値M2を導入すると、下記の式14となる。
【0044】
【数18】
【0045】
【数19】
【0046】
【数20】
【0047】
【数21】
【0048】
なお、式11、式12、式13及び式14において、wは、Mスクェア値M2が1を示す場合の集光点23(図2に示す)でのパルスレーザービーム21の半径、zは、焦点深度を示す。デフォーカス量dzは、被加工物200の表面202から集光点23までの距離である。
【0049】
パルスレーザービーム21を集光する集光光学素子である集光光学素子22の焦点距離をfとし、パルスレーザービーム21の波長をλとし、集光レンズ21に到達する集光前のパルスレーザービーム21のビーム径(直径に相当)をDとすると、集光点23(図2に示す)でのパルスレーザービーム21の半径wと、焦点深度zは、下記の式15及び式16で表すことができる。
【0050】
【数22】
【0051】
【数23】
【0052】
従って、除去効率が最大となるデフォーカス量dzは、下記の式17、又はパルスレーザービーム21のMスクェア値M2を導入すると、下記の式18となる。
【0053】
【数24】
【0054】
【数25】
【0055】
なお、式17及び式18に含まれる、D/fは、レーザービーム照射ユニット20を構成するレーザービーム21の集光角θの2倍とほぼ一致する。従って、式17と式18は、レーザービーム21の集光角θに基づいてデフォーカス量dzを算出することに相当する。また、Mスクェア値M2は、下記の式19で示される。dは、ビームウェストの直径である。
【0056】
【数26】
【0057】
式1については、被加工物200の表面202におけるパルスレーザービーム21の反射損失を考慮して、下記の式20としても良い。
【0058】
【数27】
【0059】
ここで、式20のRは被加工物200の反射率を示し、下記の式21で算出される。
【0060】
【数28】
【0061】
なお、式21のnは被加工物200の屈折率であり、iは虚数単位である。この時、除去効率が最大となるデフォーカス量dzは、下記の式22として算出される。
【0062】
【数29】
【0063】
この式22は、式17と比較してP⇒(1-R)Pと補正されており、式22を用いることは、平均出力Pについて、反射率Rが有限であることに起因する反射損失を補正することに相当する。さらには、平均出力PはパルスエネルギーEに比例するため、式22を用いることは、パルスエネルギーEについても反射損失を補正していることに相当する。
【0064】
また、D/fが、レーザービーム照射ユニット20を構成するレーザービーム21の集光角θの2倍とほぼ一致するので、式22は、式17と式18と同様に、レーザービーム21の集光角θに基づいてデフォーカス量dzを算出することに相当する。また、式17、式18及び式22は、集光角θに代わって、焦点距離fとパルスレーザービーム21の直径Dとを更に用いてデフォーカス量dzを算出することにも相当するとともに、パルスエネルギーEに代わって、平均出力Pと、繰り返し周波数Frとを更に用いてデフォーカス量dzを算出することにも相当する。
【0065】
また、前述した式17、式18及び式22は、パルス幅がピコ秒オーダー(さらに望ましくは、フェムト秒オーダー)まで圧縮されたパルスレーザービーム21を照射する場合に用いられることが望ましい。例えば、式17、式18及び式22は、パルスレーザービーム21のパルス幅が、5fs(フェムト秒)~100ps(ピコ秒)であるパルスレーザービーム21を照射する場合に用いられることが好ましく、パルスレーザービーム21のパルス幅が、5fs~10psであるパルスレーザービーム21を照射する場合に用いられることがより好ましく、パルスレーザービーム21のパルス幅が、5fs~1psであるパルスレーザービーム21を照射する場合に用いられることが更に好ましい。なお、5fs~1psは、フェムト秒オーダーであり、1ps~100psは、ピコ秒オーダーである。
【0066】
一方、この時に1パルスのパルスレーザービーム21で加工される深さLと、加工痕の半径rは、下記の式23及び式24で示される。
【0067】
【数30】
【0068】
【数31】
【0069】
加工上で必要な所望の加工痕の深さをLとすると、同一箇所へのパルスレーザービーム21のパルス照射数Nは、下記の式25で示される。なお、パルス照射数Nとは、所望の加工痕の深さLを実現するために、被加工物200の同一箇所にパルスレーザービーム21を照射する回数である。
【0070】
【数32】
【0071】
パルスレーザービーム21の走査速度をvとすると、所望の加工痕の深さLを実現するための走査回数Nは、下記の式26で示される。走査回数Nとは、被加工物200の各分割予定ライン203に所望の深さLの加工痕である加工溝210を形成するために、パルスレーザービーム21を照射しながら送り速度である走査速度vで保持テーブル10をX軸方向に移動させる(即ち、保持テーブル10に保持された被加工物200と集光点23とをX軸方向に相対的に移動させる)回数である。走査速度vは、保持テーブル10のX軸方向の送り速度であってもよいし、パルスレーザービーム21の走査速度であってもよい。
【0072】
【数33】
【0073】
一方、加工痕である加工溝210の幅を所望の加工幅(実施形態1では、例えは、分割予定ライン203の幅g)以下に加工したい場合、例えば分割予定ライン203の幅gが下記の式27を満たす必要がある。
【0074】
【数34】
【0075】
レーザー発振器から最大出力Pのパルスレーザービーム21を出射すると、被加工物200の表面202上のパルスレーザービーム21のスポット径が分割予定ライン203の幅gを超える場合には、パルスレーザービーム21の半径wが下記の式28を満たし、デフォーカス量dzが下記の式29を満たし、パルスエネルギーEが下記の式30を満たし、パルスレーザービーム21の平均出力Pが下記の式31を満たす必要がある。
【0076】
【数35】
【0077】
【数36】
【0078】
【数37】
【0079】
【数38】
【0080】
一般的に加工溝210のアスペクト比(図3に示す加工溝210の幅Wに対する加工溝210の深さLの比をいい、L/Wで示される)には、上限値aが存在する。このため、所望の深さLで加工溝210を形成するには、加工溝210の幅がL/aであることが必要となる。この時の走査本数N(図3に示す)と走査ピッチp(図3に示す)は、下記の式32及び式33を満たす必要がある。なお、図3は、図2に示された被加工物に所望の深さの加工溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。
【0081】
【数39】
【0082】
【数40】
【0083】
なお、走査本数Nは、幅L/aの加工溝210を形成するために、各分割予定ライン203の幅方向に照射するパルスレーザービーム21の本数である。走査ピッチpは、各分割予定ライン203の幅方向に照射するパルスレーザービーム21のうちの互いに隣り合うパルスレーザービーム21の集光点23間の距離である。
【0084】
このように、本発明のレーザー加工装置は、式17、式18又は式22等を用いてデフォーカス量dzを算出するなどして、加工条件を求めるので、被加工物200の種類に応じて最適な加工条件を、実験等を繰り返すことなく求めることができる、という効果を奏する。
【発明の効果】
【0085】
本発明は、被加工物の種類に応じて最適な加工条件を生産性の向上を図りながらも設定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工対象の被加工物の要部の平面図である。
図2図2は、実施形態1に係るレーザー加工装置が被加工物にレーザー加工を施す状態を模式的に示す側面図である。
図3図3は、図2に示された被加工物に所望の深さの加工溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示されたレーザー加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。
図6図6は、図4に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの概略の構成を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工動作の流れの一部を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工動作の流れの残りを示すフローチャートである。
図9図9は、図7及び図8に示された加工動作においてアスペクト比の上限値を算出する際に被加工物の同一箇所に加工溝を形成した際の走査回数と加工溝の深さの一例を示す図である。
図10図10は、図7及び図8に示された加工動作においてアスペクト比の上限値を算出する際に被加工物の同一箇所に加工溝を形成した際の加工溝の幅と飽和した加工溝の深さの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0088】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置1を図面に基づいて説明する。図4は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図5は、図4に示されたレーザー加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。図6は、図4に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの概略の構成を示す図である。図4に示す実施形態1に係るレーザー加工装置1は、図5に示す被加工物200に対してパルスレーザービーム21を照射し、被加工物200にレーザー加工(加工に相当)を施す加工装置である。
【0089】
(被加工物)
図4に示されたレーザー加工装置1の加工対象である被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などの基板201を有する円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等である。被加工物200は、図5に示すように、基板201の表面202に互いに交差する分割予定ライン203が複数設定され、表面202に複数設定された分割予定ライン203によって区画された各領域にデバイス204が形成されている。
【0090】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、LED(Light Emitting Diode)等である。
【0091】
また、実施形態1において、被加工物200は、被加工物200の外径よりも大径な円板状でかつ外縁部に環状のフレーム207が貼着された粘着テープ208が裏面205に貼着されて、フレーム207の開口209内に支持される。また、実施形態1において、被加工物200は、表面202の裏側の裏面205が粘着テープ208に貼着されて、表面202を上方に向けている。
【0092】
実施形態1において、被加工物200は、粘着テープ208によりフレーム207の開口209内に支持された状態で、レーザー加工装置1によりレーザー加工が施されるなどして、分割予定ライン203に沿って加工痕である加工溝210が形成されるなどして、個々のデバイス204に分割される。
【0093】
(レーザー加工装置)
レーザー加工装置1は、被加工物200の表面202から被加工物200を構成する基板201に対して吸収性を有する波長のパルスレーザービーム21を分割予定ライン203に沿って照射して、被加工物200にアブレーション加工を施して、各分割予定ライン203に加工溝210を形成する加工装置である。
【0094】
レーザー加工装置1は、図4に示すように、被加工物200を保持する保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット40と、制御手段である制御ユニット100とを有する。
【0095】
保持テーブル10は、被加工物200を水平方向と平行な保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル10は、真空吸引源により吸引されることで、保持面11上に載置された被加工物200を吸引保持する。保持テーブル10の周囲には、被加工物200を開口209内に支持するフレーム207を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0096】
また、保持テーブル10は、移動ユニット30の回転移動ユニット34により保持面11に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。保持テーブル10は、回転移動ユニット34とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。保持テーブル10は、移動ユニット30によりレーザービーム照射ユニット20の下方の加工領域と、レーザービーム照射ユニット20の下方から離れて被加工物200が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0097】
レーザービーム照射ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200に対してパルスレーザービーム21を集光して照射する集光光学素子22(実施形態1では、集光レンズ)を備えたレーザー照射手段である。実施形態1では、レーザービーム照射ユニット20の一部は、図4に示すように、装置本体2から立設した立設壁3に設けられた移動ユニット30のZ軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動される昇降部材4に支持されている。
【0098】
レーザービーム照射ユニット20は、図6に示すように、被加工物200の基板201に対して吸収性を有する波長のパルスレーザービーム21を出射するレーザー発振器26と、保持テーブル10の保持面11に保持された被加工物200にレーザー発振器26から出射されたパルスレーザービーム21を集光する集光光学素子22とを備える。
【0099】
レーザー発振器26は、被加工物200に対して吸収性を示す波長を有し、1/eビーム径がDであるガウシアン状の空間分布を示し、なおかつEのパルスエネルギーを有するパルスレーザービーム21を、繰り返し周波数Fで発振する。発振されたパルスレーザービーム21は、パルスレーザービーム21の偏向方向を制御するためのミラー24、パルスレーザービーム24のパルスエネルギーを制御するための減衰器25などを介して、集光光学素子22へと導光される。なお、本発明では、減衰器25は、レーザー発振器26の内部にあっても良い。
【0100】
集光光学素子22は、保持テーブル10の保持面11とZ軸方向に対向する位置に配置され、保持テーブル10に保持された被加工物200に対してパルスレーザービーム21を集光して照射する。集光光学素子22は、レーザー発振器26から出射されたパルスレーザービーム21を透過して、パルスレーザービーム21を集光点23(図2に示す)に集光する。前述した構成のレーザービーム照射ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200に対して吸収性を有する波長のパルスレーザービーム21の集光点23を、被加工物200の内部に設定して、パルスレーザービーム21を被加工物200の表面202に照射して、被加工物200をアブレーション加工する。
【0101】
移動ユニット30は、保持テーブル10とレーザービーム照射ユニット20が照射するパルスレーザービーム21の集光点23とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、互いに直交し、かつ保持面11(即ち水平方向)と平行な方向である。移動ユニット30は、保持テーブル10をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、保持テーブル10,15をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、レーザービーム照射ユニット20に含まれる集光光学素子22をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット33と、保持テーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34とを備える。
【0102】
Y軸移動ユニット32は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20のパルスレーザービーム21の集光点23とを相対的に割り出し送りするユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート5をY軸方向に移動自在に支持している。
【0103】
X軸移動ユニット31は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20のパルスレーザービーム21の集光点23とを相対的に加工送りする送り手段である。X軸移動ユニット31は、移動プレート5上に設置されている。X軸移動ユニット31は、保持テーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34を支持した第2移動プレート6をX軸方向に移動自在に支持している。第2移動プレート6は、回転移動ユニット34、保持テーブル10を支持している。Z軸移動ユニット33は、立設壁3に設置され、昇降部材4をZ軸方向に移動自在に支持している。回転移動ユニット34は、保持テーブル10を支持している。
【0104】
X軸移動ユニット31、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート5,6をX軸方向又はY軸方向に移動自在に支持するとともに、昇降部材4をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット34は、保持テーブル10を軸心回りに回転するモータ等を備える。
【0105】
また、レーザー加工装置1は、保持テーブル10のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、保持テーブル10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザービーム照射ユニット20に含まれる集光光学素子22のZ軸方向の位置を検出するZ軸方向位置検出ユニット50とを備える。各位置検出ユニット50は、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0106】
撮像ユニット40は、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮像するものである。撮像ユニット40は、対物レンズを透過した光を受光し、対物レンズがZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えている。
【0107】
撮像ユニット40は、撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。また、撮像ユニット40は、保持テーブル10の保持面11に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得する。
【0108】
また、実施形態1において、撮像ユニット40と、Z軸方向位置検出ユニット50とは、深さ測定器61を構成している。深さ測定器61は、パルスレーザービーム21の照射によって被加工物200に形成された加工痕である加工溝210の深さLを測定するものである。深さ測定器61は、被加工物200の表面202の加工溝210が形成されていない箇所に撮像ユニット40のピントがあった時のZ軸方向位置検出ユニット50の検出結果と、被加工物200の表面202の加工溝210の底に撮像ユニット40のピントがあった時のZ軸方向位置検出ユニット50の検出結果とを制御ユニット100に出力することで、加工溝210の表面202からの深さLを測定する。なお、制御ユニット100は、被加工物200の表面202の加工溝210が形成されていない箇所に撮像ユニット40のピントがあった時のZ軸方向位置検出ユニット50の検出結果と、被加工物200の表面202の加工溝210の底に撮像ユニット40のピントがあった時のZ軸方向位置検出ユニット50の検出結果とから加工溝210の表面202からの深さLを算出する。
【0109】
また、実施形態1において、深さ測定器61を構成する撮像ユニット40は、加工溝210の幅Wを測定する幅測定器62も構成する。撮像ユニット40は、被加工物200の表面202にピントがあった際の画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。制御ユニット100は、撮像ユニット40が取得した画像から加工溝210の幅Wを測定する。
【0110】
制御ユニット100は、レーザー加工装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対するレーザー加工動作をレーザー加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0111】
また、レーザー加工装置1は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示手段である表示ユニット110と、オペレータが加工条件などを入力する際に用いる入力手段である入力ユニット111と、音と光の少なくとも一方を発してオペレータに報知する報知ユニット112とを備えている。表示ユニット110、入力ユニット111及び報知ユニット112は、制御ユニット100に接続している。入力ユニット111は、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置との少なくとも一方により構成される。
【0112】
また、制御ユニット100は、記憶部101と、加工条件算出部102と、上限値算出部103と、判定部104と、加工条件修正部105とを備える。記憶部101は、入力ユニット111から入力された加工条件を記憶するとともに、制御ユニット100の各コンピュータプログラム等を記憶するものである。
【0113】
実施形態1では、記憶部101は、加工条件として、集光光学素子22の焦点距離f、集光前のパルスレーザービーム21のビーム径D、レーザー発振器の出射するパルスレーザービーム21の平均出力P、レーザー発振器の出射するパルスレーザービーム21のパルスエネルギーE、パルスレーザービーム21の繰り返し周波数f、パルスレーザービーム21の波長λ、パルスレーザービーム21のMスクェア値M2、パルスレーザービーム21を照射する際の走査速度v、分割予定ライン203の幅g、被加工物200に加工したい加工溝210の深さL、レーザービーム照射ユニット20を構成する集光光学素子22のパルスレーザービーム21の集光角θ、被加工物200に形成したい加工溝210の所望の深さL等を含む。
【0114】
また、実施形態1では、記憶部102は、被加工物200の材料名と、被加工物200の吸収係数α、被加工物200の質量比熱c(比熱に相当)、被加工物200の密度ρ、被加工物200の沸点T、被加工物200の屈折率nとを対応付けて記憶している。
【0115】
加工条件算出部102は、入力ユニット111等から被加工物200の材料名が入力されると、入力された材料名に対応付けられた吸収係数α、質量比熱c、密度ρ、沸点T、屈折率nを記憶部101から取得する。加工条件算出部102は、記憶部101から取得した吸収係数α、質量比熱c、密度ρ、沸点Tb、屈折率n、及び記憶部101に記憶された加工条件に基づいて、式9、式10、式11、式12を用い、さらに、式17、式18又は式22を用いて、パルスレーザービーム21を照射して加工効率(除去効率ともいい、加工溝210を形成するための効率を示している)を最大とする最適なデフォーカス量dzを求めるものである。即ち、加工条件算出部102は、被加工物200のレーザー加工において集光点23を基準とした最適なデフォーカス量dzを、沸点Tと、吸収係数αと、密度ρと、質量比熱cと、パルスレーザービーム21の集光角θと、パルスレーザービーム21のパルスエネルギーEと、に基づいて求める。実施形態1では、デフォーカス量dzを、沸点Tb、吸収係数α、密度ρ、質量比熱c、集光角θ、パルスエネルギーEに加え、ビーム径D、焦点距離f、波長λ、平均出力P、繰り返し周波数fに基づいて求める。
【0116】
なお、実施形態1では、記憶部102が、被加工物200の材料名と、被加工物200の吸収係数α、被加工物200の質量比熱c(比熱に相当)、被加工物200の密度ρ、被加工物200の沸点Tb、被加工物200の屈折率nとを対応付けて記憶し、加工条件算出部102が、入力ユニット111等から被加工物200の材料名が入力されると、入力された材料名に対応付けられた吸収係数α、質量比熱c、密度ρ、沸点Tb、屈折率nを記憶部101から取得している。しかしながら、本発明は、入力ユニット111等から被加工物200の材料名と、被加工物200の吸収係数α、被加工物200の質量比熱c、被加工物200の密度ρ、被加工物200の沸点Tb、被加工物200の屈折率nが入力されると、加工条件算出部102は、入力された値と加工条件とに基づいて、式17、式18又は式22を用いて、最適なデフォーカス量dzを求めても良い。
【0117】
また、加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、式9を用いて、パルスレーザービーム21の平均出力Pと、パルスレーザービーム21の繰り返し周波数frと、に基づいてパルスエネルギーEを求める。加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、パルスエネルギーEを被加工物200による反射率Rで補正し、パルスレーザービーム21の平均出力Pを被加工物200による反射率Rで補正する。また、加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、式17、式18又は式22を用いて、デフォーカス量dzを求め、D/fがレーザービーム21の集光角θの2倍とほぼ一致するので、ビーム径Dと焦点距離fとに基づいて、D/2fによりレーザービーム21の集光角θを求める。
【0118】
上限値算出部103は、深さ測定器61によって測定された加工溝210の幅Wに対する加工溝210の深さLのアスペクト比の上限値aを算出するものである。
【0119】
また、加工条件算出部102は、上限値算出部103によって算出されたアスペクト比の上限値aに基づいて、所望の深さLを有する加工溝210を形成するための加工条件を算出するものである。加工条件算出部102は、加工条件で定められた走査速度vで保持テーブル10をX軸方向に移動させながら加工条件で定められたパルスレーザービーム21を照射して、分割予定ライン203に所望の深さLの加工溝210を形成する際に、分割予定ライン203への走査回数Nを式26等を用いて求める。
【0120】
加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、走査回数Nを加工溝210の深さLと走査速度vとに基づいて求める。実施形態1では、加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、走査回数Nを、加工溝210の深さL、走査速度vに加え、平均出力P、繰り返し周波数F、質量比熱c、密度ρ、沸点Tb、吸収係数αに基づいて求める。加工条件算出部102は、式26等を用いて算出した走査回数Nのパルスレーザービーム21を保持テーブル10に保持された被加工物200に照射して、被加工物200に加工溝210を形成する。
【0121】
判定部104は、加工条件算出部102によって算出された加工条件で被加工物200を加工した後、深さ測定器61で被加工物200に形成された加工溝210の深さ測定を行い、加工溝210の深さが所望の深さLになっているか否かを判定するものである。
【0122】
加工条件修正部105は、判定部104による判定の結果、所望の深さになっていないと判定された場合に、走査回数Nを修正するものである。
【0123】
また、判定部104は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が加工すべき領域(実施形態1では、分割予定ライン203)の幅gを超えているか否かを判定するものでもある。具体的には、判定部104は、L/aが上限値である幅gを超えるか否かを判定する。
【0124】
判定部104は、L/aが幅gを超えると判定すると、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定する。
【0125】
判定部104は、L/aが幅gを超えないと判定すると、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えないと判定する。
【0126】
また、判定部104は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えていると判定すると、報知ユニット112を動作させて警告を発したり、表示ユニット110に警告を表示する。
【0127】
加工条件修正部105は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定部104が判定すると、分割予定ライン203の幅g、被加工物200の沸点T、吸収係数α、密度ρ、質量比熱cに基づいて、パルスエネルギーEを調整し、パルスレーザービーム21の集光角θと、分割予定ライン203の幅gに基づいて、デフォーカス量dzを調整するものでもある。
【0128】
加工条件修正部105は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定部104が判定すると、パルスエネルギーEを式30を用いて算出し、算出したパルスエネルギーEを被加工物200を加工する際の加工条件として設定する。即ち、加工条件修正部105は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定部104が判定すると、パルスエネルギーEを式30を用いて調整する。
【0129】
また、加工条件修正部105は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定部104が判定すると、デフォーカス量dzを式29を用いて算出し、算出したデフォーカス量dzを被加工物200を加工する際の加工条件として設定する。即ち、加工条件修正部105は、加工条件算出部102により求められた最適なデフォーカス量dzによって決定されるパルスレーザービーム21の被加工物200の表面202におけるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定部104が判定すると、デフォーカス量dzを式29を用いて調整する。実施形態1において、加工条件修正部105は、ビーム径D、焦点距離f、即ち集光角θ、幅g、波長λに基づいて、デフォーカス量dzを調整する。
【0130】
また、加工条件算出部102は、上限値算出部103によって算出されたアスペクト比の上限値aに基づいて、式32で各分割予定ライン203に照射するパルスレーザービーム21の走査本数Nを求め、式33で走査ピッチpを求める。加工条件算出部102即ち制御ユニット100は、アスペクト比の上限値aに基づいて、パルスレーザービーム21の走査ピッチpを求める。実施形態1では、加工条件算出部102は、上限値aに加え、加工溝210の所望の深さL、沸点Tb、吸収係数α、密度ρ、質量比熱c、平均出力P、繰り返し周波数fに基づいて、走査本数Nを求める。また、実施形態1では、加工条件算出部102は、上限値aに加え、加工溝210の所望の深さL、沸点Tb、吸収係数α、密度ρ、質量比熱c、平均出力P、繰り返し周波数fに基づいて、走査ピッチpを求める。
【0131】
なお、記憶部101の機能は、前述した記憶装置により実現される。加工条件算出部102、上限値算出部103、判定部104及び加工条件修正部105の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施することにより実現される。
【0132】
次に、実施形態1に係るレーザー加工装置1の加工動作を図面に基づいて説明する。図7は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工動作の流れの一部を示すフローチャートである。図8は、実施形態1に係るレーザー加工装置の加工動作の流れの残りを示すフローチャートである。図9は、図7及び図8に示された加工動作においてアスペクト比の上限値を算出する際に被加工物の同一箇所に加工溝を形成した際の走査回数と加工溝の深さの一例を示す図である。図10は、図7及び図8に示された加工動作においてアスペクト比の上限値を算出する際に被加工物の同一箇所に加工溝を形成した際の加工溝の幅と飽和した加工溝の深さの一例を示す図である。
【0133】
前述した構成のレーザー加工装置1は、オペレータが入力ユニット等を操作して入力した加工条件を制御ユニット100が受け付け、搬入出領域に位置付けられた保持テーブル10の保持面11に被加工物200が載置される。実施形態1において、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が入力ユニットからオペレータの加工動作の開始指示を受け付けると、加工動作を開始する。
【0134】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がi=1として(ステップ1001)、被加工物200を保持テーブル10の保持面11に吸引保持し、クランプ部12でフレーム207を挟持する。レーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、加工条件に基づき、加工溝210の深さL、アスペクト比の上限値aを仮に1として、加工条件であるデフォーカス量dzを式17、式18又は式22を用いて算出する(ステップ1002)。
【0135】
また、加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が移動ユニット30を制御して保持テーブル10を加工領域に位置付け、保持テーブル10に吸引保持された被加工物200を撮像ユニット40の下方に位置付ける。レーザー加工装置1は、撮像ユニット40で被加工物200を撮像し、撮像ユニット40が取得した画像に基づいてアライメントを遂行する。なお、実施形態1では、被加工物200のデバイス204が形成されていない外周部の外周余剰領域をレーザービーム照射ユニット20の集光光学素子22の下方に位置付ける。
【0136】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が加工条件に基づいて、集光点23を保持テーブル10に吸引保持された被加工物200の内部に設定し、レーザービーム照射ユニット20及び移動ユニット30を制御して、保持テーブル10をX軸方向に移動させながらレーザービーム照射ユニット20からパルスレーザービーム21を被加工物200の表面202に照射して、被加工物200をレーザー加工し、被加工物200に加工溝210を形成する(ステップ1003)。ステップ1003では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がZ軸移動ユニット33を制御して、集光点23のZ軸方向の位置を調整し、集光点23のZ軸方向の位置をステップ1002で算出したデフォーカス量dzとなる位置に設定する。なお、実施形態1では、ステップ1003において、レーザー加工装置1は、保持テーブル10をX軸方向に1回移動させながらパルスレーザービーム21を照射する。即ち、実施形態1では、ステップ1003において、レーザー加工装置1は、走査回数1回でパルスレーザービーム21を被加工物200に照射する。
【0137】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が深さ測定器61で被加工物200に形成された加工溝210の深さLを測定し、測定結果をステップ1003からの累積の走査回数と対応付けて記憶部101に記憶する(ステップ1004)。加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がi=i+1とし(ステップ1005)、各構成要素を制御して、ステップ1003と同様に被加工物200をレーザー加工する(ステップ1006)。なお、レーザー加工装置は、ステップ1006では、ステップ1003において形成した加工溝210の底にパルスレーザービーム21を照射して、被加工物200のステップ1003と同一箇所に加工溝210を形成するとともに、走査回数を1回とする。
【0138】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が深さ測定器61で被加工物200に形成された加工溝210の深さLを測定すると共に、加工溝210の幅を測定し、測定結果をステップ1003からの累積の走査回数と対応付けて記憶部101に記憶する(ステップ1007)。加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がL>Li-1であるか否かを判定する(ステップ1008)。即ち、ステップ1008では、ステップ1007で測定した深さLと、前回のステップ1007で測定した深さLi-1とが変化しているか否か、即ち加工溝210の深さLが飽和しているか否かを判定する。
【0139】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がL>Li-1であると判定する(ステップ1008:Yes)とステップ1005に戻る。こうして、加工動作では、レーザー加工装置1は、加工溝210の深さLが変化しなくなるまで、即ち、加工溝210の深さLが飽和するまで、ステップ1005からステップ1008を繰り返す。こうして、制御ユニット100は、図9に示す走査回数と加工溝210の深さLとの関係を取得する。なお、図9は、幅が260μmの加工溝210を形成した時の走査回数と加工溝210の深さLとの関係を示している。図9の横軸は、ステップ1003からの累積の走査回数を示し、図9の縦軸は、加工溝210の深さLを示している。
【0140】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がL>Li-1ではないと判定する(ステップ1008:No)と、被加工物200に所定数の加工溝210を形成したか否かを判定する(ステップ1009)。加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が被加工物200に所定数の加工溝210を形成していないと判定する(ステップ1009:No)と、走査本数Nを変更して(ステップ1010)、ステップ1003に戻る。
【0141】
こうして、加工動作では、レーザー加工装置1は、被加工物200に互いに幅が異なる加工溝210を所定数形成するまで、ステップ1003からステップ1009を繰り返して、各幅の加工溝210について、図9に示す関係を取得する。戻ったステップ1003からステップ1009では、被加工物200の既に加工溝210が形成された位置と異なる位置に新たな加工溝210を形成する。
【0142】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が被加工物200に所定数の加工溝210を形成したと判定する(ステップ1009:Yes)と、上限値算出部103が図10に一例を示す各加工溝210の幅と、各加工溝210の深さLの飽和値(飽和した加工溝210の深さである)との関係を生成する(ステップ1011)。なお、図10の横軸は、加工溝210の幅Wを示し、図10の縦軸は、加工溝210の深さLの飽和値を示している。
【0143】
加工動作では、ステップ1011において、レーザー加工装置1は、各加工溝210の幅と、各加工溝210の深さLの飽和値とが比例するので、制御ユニット100の上限値算出部103が図10に示された関係から例えば最小二乗法等を用いて、各加工溝210の幅と各加工溝210の深さLの飽和値とを関係付ける関係式(図10に点線で示す)を算出する。
【0144】
関係式は、各加工溝210の幅をXとし、加工溝210の深さLの飽和値をYとすると、Y=aXで示され、Xの係数aが、アスペクト比の上限値aとなる。こうして、ステップ1011は、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の上限値算出部103がアスペクト比の上限値aを算出し、算出した上限値aを記憶する。例えば、図9の例では、アスペクト比の上限値aは、1.8827である。
【0145】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、加工条件に基づき、加工溝210の深さL、ステップ1011で算出したアスペクト比の上限値a等を用い、加工条件であるデフォーカス量dzを式17、式18又は式22を用いて算出し、走査回数Nを式26を用いて算出し、各分割予定ライン203にパルスレーザービーム21を照射する際の走査本数Nを式32を用いて算出し、各分割予定ライン203にパルスレーザービーム21を照射する際の走査ピッチpを式33を用いて算出する(ステップ1012)。
【0146】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が加工条件特に、ステップ1012で算出したデフォーカス量dzに基づいて、集光点23を保持テーブル10に吸引保持された被加工物200の内部に設定し、レーザービーム照射ユニット20及び移動ユニット30を制御して、保持テーブル10をX軸方向に移動させながらレーザービーム照射ユニット20からパルスレーザービーム21を被加工物200の表面202に照射して、被加工物200をレーザー加工し、被加工物200に加工溝210を形成する(ステップ1013)。なお、実施形態1では、ステップ1013において、レーザー加工装置1は、保持テーブル10をX軸方向にステップ1012で算出した走査回数N移動させながらパルスレーザービーム21を照射する。また、ステップ1013において、レーザー加工装置1は、被加工物200のデバイス204が形成されていない外周余剰領域のステップ1003及びステップ1006で形成した加工溝210と異なる位置にパルスレーザービーム21を照射して、新たな加工溝210を形成する。
【0147】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が深さ測定器61で被加工物200にステップ1013で形成された加工溝210の深さLを測定し、測定結果を記憶部101に記憶する(ステップ1014)。加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の判定部104が、L=Lか否か、即ちステップ1013で形成した加工溝210が所望の深さLになっているか否かを判定する(ステップ1015)。
【0148】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の判定部104が、L=Lではない、即ち、ステップ1013で形成した加工溝210が所望の深さLになっていないと判定する(ステップ1015:No)と、制御ユニット100の加工条件修正部105がs=s+1とし(ステップ1016)として走査回数Nを修正して(ステップ1017)、ステップ1013に戻る。制御ユニット100の加工条件修正部105は、走査回数Nを修正する際に、修正後の走査回数Nを、N=Ns-1(L/Ls-1)の数式を用いて算出する。なお、Ns-1は、修正前の走査回数、即ち前回のステップ1013の走査回数であり、Ls-1は、直前のステップ1014で計測して取得した加工溝210の深さLである。
【0149】
加工動作では、戻ったステップ1013において、レーザー加工装置1は、制御ユニット100が加工条件特に、ステップ1012で算出したデフォーカス量dz、ステップ1017で修正した走査回数N等に基づいて、保持テーブル10をX軸方向に移動させながらレーザービーム照射ユニット20からパルスレーザービーム21を被加工物200の表面202に照射して、被加工物200に加工溝210を形成する。なお、実施形態1では、戻ったステップ1013において、レーザー加工装置1は、被加工物200のデバイス204が形成されていない外周余剰領域のステップ1003、ステップ1006及び今まで実施したステップ1013で形成した加工溝210と異なる位置にパルスレーザービーム21を照射して、新たな加工溝210を形成する。
【0150】
こうして、加工動作では、制御ユニット100の判定部104がL=Lと判定、即ち、ステップ1013で形成した加工溝210が所望の深さLになったと判定するまで、ステップ1013からステップ1017を繰り返し、加工条件修正部105が走査回数Nを修正する。加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の判定部104が、Ls=Lである、即ち、ステップ1013で形成した加工溝210が所望の深さLになったと判定する(ステップ1015:Yes)と、制御ユニット100の判定部104が、L/aが分割予定ライン203の幅gを超えるか否か、即ち、ステップ1012で算出されたデフォーカス量dzによって決定されるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えるか否かを判定する(ステップ1018)。
【0151】
加工動作では、レーザー加工装置1は、制御ユニット100の判定部104が、L/aが分割予定ライン203の幅gを超える、即ち、ステップ1012で算出されたデフォーカス量dzによって決定されるスポット径が分割予定ライン203の幅gを超えると判定する(ステップ1018:Yes)と、警告を発し、加工条件修正部105が、加工条件のデフォーカス量dzを式29を用いて算出し、式29を用いて算出した値に調整し、加工条件のパルスエネルギーEを式30を用いて算出し、式30を用いて算出した値に調整する(ステップ1019)。また、加工動作では、ステップ1019において、制御ユニット100の加工条件算出部102が、調整後のデフォーカス量dz、パルスエネルギーE、式9等に基づいて、走査本数Nを式32等を用いて算出し、式32等を用いて算出した値に調整し、加工条件の走査ピッチpを式33等を用いて算出し、式33等を用いて算出した値に調整する。
【0152】
加工動作では、レーザー加工装置1は、ステップ1012で算出した加工条件、又はステップ1019で調整した加工条件等に基づいて、制御ユニット100がレーザービーム照射ユニット20及び移動ユニット30等を制御して、被加工物200とレーザービーム照射ユニット20とを分割予定ライン203に沿って相対的に移動させながらパルスレーザービーム21を被加工物200の分割予定ライン203に照射して、被加工物200の分割予定ライン203にレーザー加工を施す(ステップ1020)。
【0153】
加工動作では、ステップ1020において、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がステップ1012で算出した加工条件又はステップ1019で調整した加工条件等に基づいて、保持テーブル10に保持した被加工物200の全ての分割予定ライン203にパルスレーザービーム21を照射して、レーザー加工を施す。即ち、加工動作では、ステップ1020において、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がパルスレーザービーム21をステップ1012で算出又はステップ1019で調整したデフォーカス量dz、走査回数Ns、走査ピッチpで走査本数Nだけ並列に走査する。加工動作では、ステップ1020において、レーザー加工装置1は、制御ユニット100がステップ1012で算出した加工条件又はステップ1019で調整した加工条件等に基づいて、保持テーブル10に保持した被加工物200の全ての分割予定ライン203にレーザー加工を施すと、保持テーブル10を搬入出領域までに移動し、搬入出領域において保持テーブル10の吸引保持を停止し、クランプ部12のフレーム207の挟持を解除して、加工動作を終了する。
【0154】
以上説明したように、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が被加工物200の沸点T、吸収係数α、密度ρ、質量比熱c、集光角θ及びパルスエネルギーEなどに基づいてデフォーカス量dzを算出する。このために、レーザー加工装置1は、実験を繰り返して最適な加工条件を求める必要がなく、生産性の向上に貢献することができる。その結果、レーザー加工装置1は、被加工物200の種類に応じて最適な加工条件を生産性の向上を図りながらも設定できるという効果を奏する。
【0155】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式17、式18又は式22に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、1パルスのパルスレーザービーム21による除去深さを最大とするデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0156】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が加工溝210の深さL、走査速度v等に基づいて走査回数Nsを算出するので、実験を繰り返して最適な加工条件を求める必要がなく、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0157】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式26に基づいて走査回数Nを算出するので、所望の深さLの加工溝210を形成することができる走査回数Nを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0158】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、L/aが幅gを超えている場合に警告を発し、加工条件修正部105が幅g、沸点T、吸収係数α、密度ρ、質量比熱c等によって式30に基づいてパルスエネルギーEを調整し、集光角θ、幅g等によって式29に基づいてデフォーカス量dzを調整する。その結果、レーザー加工装置1は、L/aが幅gを超えている場合、即ち、スポット径が分割予定ライン203の幅gを超える場合に、パルスエネルギーE、デフォーカス量dz等を調整して、スポット径が分割予定ライン203の幅gを超えることを抑制することができる。
【0159】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式32に基づいて走査本数Nを算出し、式33に基づいて走査ピッチpを算出するので、実験を繰り返すことなく、所望の幅の加工溝210を形成することができる加工条件を設定することができる。
【0160】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の上限値算出部103がアスペクト比の上限値aを算出するので、加工条件算出部102が所望の深さLを有する加工溝210を形成するための加工条件を算出することができる。
【0161】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の判定部104が加工溝210の深さLが所望の深さLになっているか否かを判定し、加工条件修正部105が所望の深さLにはっていないと判定された場合に走査回数Nを修正する。その結果、レーザー加工装置1は、所望の深さLの加工溝210を形成するための走査回数Nを容易に設定することができるという効果を奏する。
【0162】
〔変形例1〕
実施形態1の変形例1に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式34又は式35を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0163】
【数41】
【0164】
【数42】
【0165】
なお、式34及び式35は、質量比熱cの代わりにmol比熱cmoを用いて、式17及び式18を表したものである。式17及び式18のc×ρは、mol比熱cmoを用いると、以下の式36で示すことができる。以下の式36を用いると、式17及び式18は、式34及び式35で示すことができる。なお、Nは、単位胞あたりの分子の数、Vは、単位胞体積、Nは、アボガドロ数である。
【0166】
【数43】
【0167】
変形例1に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式34又は式35に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、被加工物200の熱物性としてmol比熱のみが既知である場合であっても、被加工物200を効率的に深く除去することができるデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0168】
〔変形例2〕
実施形態1の変形例2に係るレーザー加工装置1を説明する。パルスレーザービーム21の空間分布がガウス分布から大きく逸脱する場合、1/eビーム径を求めることが困難な場合がある。そこで、変形例2に係るレーザー加工装置1は、1/eビーム径に変わる概略のビーム径Dに基づき、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式37又は式38を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0169】
【数44】
【0170】
【数45】
【0171】
なお、式37又は式38は、パルスレーザービーム21のレーザーパワーの空間分布が、矩形形状を示すとすると、実施形態1では式8で示されたフルエンスFとパルスエネルギーEとの関係が、下記の式39となる。以下の式39を用いると、式17及び式18は、式37及び式38で示すことができる。
【0172】
【数46】
【0173】
変形例2に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式37又は式38に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、レーザーパワーの空間分布がガウシアンから大きく逸脱し、1/eビーム径の算出が困難な場合であっても、被加工物200を効率的に深く除去することができるデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0174】
〔変形例3〕
実施形態1の変形例3に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例3に係るレーザー加工装置1では、レーザー発振器26より、繰り返し周波数fでパルス数Nのバーストパルスが出力される。これに伴い、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式40又は式41を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0175】
【数47】
【0176】
【数48】
【0177】
なお、式40又は式41は、シングルパルスのパルスレーザービーム21を照射する代わりに、バーストバルスのパルスレーザービーム21を照射すると、実施形態1では式9の関係が、下記の式42となる。以下の式42を用いると、式17及び式18は、式40及び式41で示すことができる。なお、Nは、バースト数である。
【0178】
【数49】
【0179】
変形例3に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式40又は式41に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、パルスレーザービーム21がバーストパルスとして出力される場合であっても、被加工物200を効率的に深く除去することが出来るデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0180】
〔変形例4〕
実施形態1の変形例4に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例4に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式43又は式44を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0181】
【数50】
【0182】
【数51】
【0183】
なお、式43及び式44は、吸収係数αの代わりに減衰係数κを用いて、式17及び式18を表したものである。式17及び式18のαは、減衰係数κを用いると、以下の式45で示すことができる。以下の式45を用いると、式17及び式18は、式43及び式44で示すことができる。
【0184】
【数52】
【0185】
変形例4に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式43又は式44に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、被加工物200の光吸収特性を示す物性値として消衰係数κのみが既知である場合であっても、被加工物200を効率的に深く除去することが出来るデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0186】
〔変形例5〕
実施形態1の変形例5に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例5に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式46又は式47を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0187】
【数53】
【0188】
【数54】
【0189】
なお、式46及び式47は、下記のように求めた。ここでは、基板201の表面202に格子状に形成された分割予定ライン203で区画された領域にデバイス204が形成された被加工物200に、空間分布がガウス分布を示すパルスレーザービーム21を照射して、被加工物200にアブレーション加工を施す場合について考える。この時、フルエンスが加工閾値Fthを超える領域のみ除去されるとして、1パルスのパルスレーザービーム21で形成される加工痕において、光軸からrだけ離れた位置における深さL(r)と、被加工物200の表面202における光軸上でのフルエンスFとの関係は、下記の式48で示すことができる。
【0190】
【数55】
【0191】
一方、光軸上のフルエンスFとパルスエネルギーEとの関係は、下記の式49となる。
【0192】
【数56】
【0193】
従って、下記の式50、式51が成立する。
【0194】
【数57】
【0195】
【数58】
【0196】
但し、式51では、下記の式52を満たす必要がある。なお、rは、1パルスのパルスレーザービーム21で形成される加工痕の半径である。
【0197】
【数59】
【0198】
1パルスのパルスレーザービーム21での除去体積をVとすると、下記の式53及び式54が成立する。
【0199】
【数60】
【0200】
【数61】
【0201】
dV/dw=0として、除去体積Vが最大となる即ち除去効率が最大となるパルスレーザービーム21の半径wを求めると、下記の式55及び式56が成立する。
【0202】
【数62】
【0203】
【数63】
【0204】
除去に必要な除去に必要なエネルギーの体積密度を、被加工物200の質量比熱c、被加工物200の密度ρ、被加工物200の沸点Tbを用いて、上記の式5で示すことができる。
【0205】
ここで、光の侵入長は1/αなので、除去に必要な単位面積あたりの光エネルギー、すなわちフルエンスの加工閾値Fthは、上記の式6となる。
【0206】
従って、除去体積Vが最大となる即ち除去効率が最大となるフルエンスFは、下記式57となる。
【0207】
【数64】
【0208】
また、パルスエネルギーEと、パルスレーザービーム21の繰り返し周波数fと、パルスレーザービーム21の平均出力Pとの関係は、上記の式9となる。
【0209】
従って、除去体積Vが最大となる即ち除去効率が最大となるパルスレーザービーム21の半径wは、下記の式58となる。式58を用いると、式17及び式18は、式46及び式47で示すことができる。
【0210】
【数65】
【0211】
変形例5に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式46又は式47に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、1パルスのパルスレーザービーム21による除去体積を最大とするデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0212】
〔変形例6〕
実施形態1の変形例6に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例6に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式59を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0213】
【数66】
【0214】
なお、式59は、焦点から十分に離れている場合に、上記式11を下記の式60に簡略化することができる。以下の式60を用いると、式17及び式18は、式59で示すことができる。
【0215】
【数67】
【0216】
変形例6に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式59に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、被加工物200を効率的に深く除去することが出来るデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0217】
〔変形例7〕
実施形態1の変形例7に係るレーザー加工装置1を説明する。変形例7に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が、式17又は式18の代わりに、以下の式61又は式62を用いて、デフォーカス量dzを算出する。
【0218】
【数68】
【0219】
【数69】
【0220】
なお、式61及び式62は、集光前のパルスレーザービーム21のビーム径Dの代わりに集光角θを用いて、式17及び式18を表したものである。式17及び式18のビーム径Dは、集光角θを用いると、以下の式63で示すことができる。以下の式63を用いると、式17及び式18は、式61及び式62で示すことができる。
【0221】
【数70】
【0222】
変形例7に係るレーザー加工装置1は、制御ユニット100の加工条件算出部102が式61又は式62に基づいてデフォーカス量dzを算出するので、ビーム径Dに代わって集光角θが既知の場合であっても、被加工物200を効率的に深く除去することが出来るデフォーカス量dzを容易に求めることができ、生産性の向上に貢献することができるという効果を奏する。
【0223】
なお、本発明の発明者は、本願発明の効果を確認した。確認では、GaN基板である被加工物200に深さLが690μmの加工溝210を形成しようとして、式17を用いてデフォーカス量dzを3mmと算出し、式26を用いて走査回数Nを500回と算出した。これら算出したデフォーカス量dzを3mmとし、走査回数Nを500回として、GaN基板である被加工物200に加工溝210を形成したところ、形成した加工溝210の深さLが500μmであった。
【0224】
したがって、式17を用いてデフォーカス量dzを算出し、式26を用いて走査回数N等を算出することで、実験を繰り返すことなく、所望の深さLに近い深さLの加工溝210を形成することが出来る加工条件を得ることができることが明らかとなった。
【0225】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変質して実施することができる。なお、上記実施形態等では、被加工物200の加工すべき領域の幅は、分割予定ライン203の幅gであるが、本発明では、分割予定ライン203の幅gに限定されず、分割予定ライン203の幅g以下であれば良い。また、上記実施形態等では、集光点23を被加工物200の基板201の内部に設定したが、本発明では、基板201の表面202よりも被加工物200の外側でも良い。この場合、デフォーカス量dzは、被加工物200の基板201の表面202からの距離に-(マイナス)が付されるのが望ましい。また、本発明では、深さ測定器61は、被加工物200の表面202及び加工溝210の底に検出用レーザービームを照射し、検出用レーザービームの反射光を受光して、加工溝210の深さLを測定しても良い。
【符号の説明】
【0226】
1 レーザー加工装置
10 保持テーブル
20 レーザービーム照射ユニット(レーザー照射手段)
21 パルスレーザービーム
22 集光レンズ(集光光学素子)
23 集光点
31 X軸移動ユニット(送り手段)
61 深さ測定器
100 制御ユニット(制御手段)
102 加工条件算出部
103 上限値算出部
104 判定部
105 加工条件修正部
111 入力ユニット(入力手段)
200 被加工物
203 分割予定ライン(加工すべき領域)
210 加工溝
a 上限値
c 質量比熱(比熱)
dz デフォーカス量
D ビーム径(直径)
e 自然対数の底
E パルスエネルギー
f 焦点距離
繰り返し周波数
g 幅
L 所望の深さ
M2 Mスクェア値
走査回数
N 走査本数
p 走査ピッチ
P 平均出力
R 反射率(反射損失)
沸点
v 走査速度(送り速度)
W 幅
α 吸収係数
ρ 密度
θ 集光角
λ 波長
π 円周率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10