IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】抗体薬物コンジュゲートの精製
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20241119BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241119BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20241119BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20241119BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B01J20/26 H
C07K16/00
B01D15/08
B01J20/26 L
B01J20/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022500024
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020068437
(87)【国際公開番号】W WO2021001387
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】19184130.3
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクダス,ロマス
(72)【発明者】
【氏名】ホルツグレーヴェ,アンニカ
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ペーク,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】ゾールン,ドミニク
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528271(JP,A)
【文献】特開2016-041688(JP,A)
【文献】特表2016-519070(JP,A)
【文献】特表2016-504337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 15/00-15/42
C07K 1/00-19/00
B01J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
B01J 39/00-49/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にポリマー鎖が共有結合によってグラフトされたヒドロキシル基含有ベースマトリックスを含む分離材料であって、
ポリマー鎖が、アミノ酸末端基-N(Y)-R3を含む、ただし式中、
a.Yは、互いに独立してHまたはCH3であり、および
b.R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、C1~C4アルキルまたはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである
ことを特徴とする、前記分離材料。
【請求項2】
ポリマー鎖のモノマー単位が、直線状に連結し、および、各モノマー単位が、末端基-N(Y)-R3を含む、請求項1に記載の分離材料。
【請求項3】
イオン密度が、400~900μeq/gの間である、請求項1または2に記載の分離材料。
【請求項4】
YがHであり、およびR4がイソプロピルおよび/またはイソブチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分離材料。
【請求項5】
ヒドロキシル基含有ベースマトリックスが、脂肪族のヒドロキシル基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分離材料。
【請求項6】
ベースマトリックスが、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,5-ペンタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルまたはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの群から選択される親水性置換されたアルキルビニルエーテルと架橋剤としてのジビニルエチレン尿素(1,3-ジビニルイミダゾリン-2-オン)との共重合により形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の分離材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の分離材料であって、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスを式V
【化1】
ただし式中、R1、R2およびYは、互いに独立してHまたはCH3であり、
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、C1~C4アルキルまたはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである、
に従うモノマーのセリウム(IV)触媒グラフト重合に供することにより調製可能である、前記分離材料。
【請求項8】
その表面にポリマー鎖が共有結合によってグラフトされたヒドロキシル基含有ベースマトリックスを含む分離材料と、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む試料を接触させることによる、抗体薬物コンジュゲート(ADC)のクロマトグラフ精製および/または分離のためのプロセスであって、
ポリマーが、末端基-N(Y)-R3を含む、
ただし式中、Yは、互いに独立してHまたはCH3であり、
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、C1~C4アルキルまたはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである
ことを特徴とする、前記プロセス。
【請求項9】
ADC標的分子が、2~7の間のpHで分離マトリックスに結合する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
試料が、10~1200μeq/gの間のイオン密度で分離マトリックスに適用される、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
分離材料のmlあたり10mg~100mgの間のADCが結合する、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の分離材料の調製のためのプロセスであって、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスを式V
【化2】
ただし式中、R1、R2およびYは、互いに独立してHまたはCH3であり、
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、C1~C4アルキルまたはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、および、Mは、H、Na、K、またはNHである、
に従うモノマーのセリウム(IV)触媒グラフト重合に供することによる、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸ベースの末端基を有するイオン交換分離材料に関する。この材料は、とくにADCの分離および精製に好適である。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、典型的にがん処置に特化した新しいクラスの強力な薬物である。これらのコンジュゲートにおいて、抗体分子はがん細胞の特異的な認識に特化し、抗体分子に運ばれる毒性のペイロードがそれらを破壊する。市販のADCの例は、Adcetris(登録商標)およびKadcyla(登録商標)である。
【0003】
これらの新しい薬物は、毒性分子(ペイロード)を抗体分子へ抱合させることによって製造される。これは典型的には、抗体の表面に晒された特定のアミノ酸残基、例えば:システイン結合の還元の後のリシンまたはシステイン、との制御された化学的コンジュゲーション法を通じて達成される。両方のアプローチは、可変の薬物抗体比(drug to antibody ratio)(DAR)でのADC種の不均一混合物を結果としてもたらす。リシンコンジュゲーションの経路は、100を超える可能性を作り出し、および、異なるDAR(0、1、2、3、4…>10)での不均一集団へ導く。システインコンジュゲーションの経路は、抗体の4つのジスルフィド架橋を利用した偶数のDAR(例として0、2、4、6および8)での集団へ導く。
【0004】
ADC種の不均一性を最小限にするために、部位特異的コンジュゲーション法を使用することができる。これらの方法は、抗体に連結するペイロード分子の正確な数および場所に対するより良い制御性を有するが、しかしコンジュゲートする毒性分子の限られた量(例として、大抵はたったの2である)およびコンジュゲーション部位の限られた選択肢に起因して(それが薬物の有効性に影響を及ぼし得るので)難題である。ADC不均一性における製造上の難題を克服するために、いくつかのいくつかのクロマトグラフ技術を、望ましくない低DARおよび高DAR種を取り除くために使用することができる。
【0005】
低DAR種は、抗体薬物コンジュゲートと競合しており薬物の有効性を低減させるので望ましくない。高い毒性ペイロードを抱えたDAR種(>6)もまた望ましくなく、それは、それらが薬物の効率と寿命に対して影響を有するからである(K.J. Hamblett et al. in Clinical Cancer Research 10 (2004) 7063-7070)。ADCについてのさらなる情報は、Rachel S. Zolot, Satarupa Basu, Ryan P. Million. Antibody-drug conjugates. Nature reviews Drug Discovery. 2013, 12: 259-260において見出すことができる。例示のADCについての詳細は、WO2011/139985、とくに例8において見出すことができる。
【0006】
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、時々、コンジュゲーションプロセス後のADC種の精製に適用される(US15104359)。残念ながら、高い精製コストと低い精製効率を引き起こす、高塩濃度の溶液および低い結合能(およそ10mg/ml)における低いADC安定性に起因して、この方法には限界がある。したがって、産業界においては、ADC薬物の効率を向上させ、主にDAR2およびDAR4種を得て最良の薬物動態、有効性、半減期、および忍容性を実現可能にすることに対する増大しているニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
その結論として、異なるDAR種が効率的に分離される、広い範囲の条件において効果的に適用可能な、ロバストで信頼できる抗体薬物コンジュゲート精製ステップを提供する途を見出すことが好都合になる。これはまた、精製コストを低減させるためにも有益である。
【0008】
共有結合的に付着したロイシン残基または類似の残基を抱えたイオン交換材料は、>10mg ADC/ml材料のキャパシティで効率的なDAR(薬物抗体比)種分離を実現可能にするADCの精製のために使用できるということが見出されており、より好ましい態様において、キャパシティは10~80mg/mlの間である。そのうえ、この革新的なイオン交換材料は、高い導電率>10mS/cmにおいて使用することができ、より好ましい態様において、導電率は10~40mS/cmの間である。
【0009】
驚くべきことに、各個々のDAR種を分離することが、溶媒pH勾配を使用してそれらのコンジュゲーション手順にかかわらず可能であった。そのうえ、この革新的なイオン交換材料の適用は、>90%の生産物回収率を保証し、疎水性相互作用またはヒドロキシアパタイト材料と比較して有意な経済的な利点を示した。
【0010】
本発明は、したがって、その表面にポリマー鎖が共有結合によってグラフトされたヒドロキシル基含有ベースマトリックスに基づいたイオン交換クロマトグラフィーのための分離材料であって、
a)ベース支持材(base support)が、ヒドロキシル基を含有し、
b)ポリマー鎖が、支持材に共有結合し、
c)ポリマー鎖が、アミノ酸末端基-N(Y)-R3を含む、ただし式中、
Yは、互いに独立してHまたはCH3、好ましくはHであり、および
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNH4+である
ことを特徴とする前記分離材料に向けられる。
【0011】
好ましくは、ポリマー鎖のモノマー単位は、直線状に連結し、および、各モノマー単位は、末端基-N(Y)-R3を含む。
好ましくは、イオン密度は、10~1200μeq/gの間である。
好ましい態様において、YはHであり、およびR4はイソプロピルおよび/またはイソブチルである。
好ましい態様において、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスは、脂肪族のヒドロキシル基を含む。
【0012】
好ましい態様において、ベースマトリックスは、グループa)およびb)からの少なくとも1の化合物の共重合によって形成されたコポリマーである、ここで
a)少なくとも1の、式Iで表される親水性置換されたアルキルビニルエーテル
【化1】

式中、R1、R2、R3は、相互に独立して、HまたはC1~C6アルキル、好ましくはHまたは-CH、とすることができ、
およびR4は、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたラジカルである、ならびに
b)少なくとも1の、式IIおよび/またはIIIおよび/またはIVに従った架橋剤、ここで、
【化2】

式中、Xは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、隣接せずかつNのすぐ近傍に位置づけられていない1以上のメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、ならびに、
【化3】

【化4】

式中、式IIIおよびIVにおけるY1およびY2は、相互に独立して、
C1~C10アルキルまたはシクロアルキルであり、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO2、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよいか、
あるいは、C6~C18アリールであり、ここで、アリール系の中の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、および、
Aは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH(C1~C8)アルキル、N(C1~C8)アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい。
【0013】
式IにおけるR4は、典型的には、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたアルキルラジカル、シクロ脂肪族ラジカルまたはアリールラジカルである。
極めて好ましい態様において、マトリックスは、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,5-ペンタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルまたはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの群から選択して採用される親水性置換されたアルキルビニルエーテルと架橋剤としてのジビニルエチレン尿素(1,3-ジビニルイミダゾリン-2-オン)との共重合により形成される。
【0014】
好ましい態様において、分離材料は、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスを式V
【化5】

ただし式中、R1、R2およびYは、互いに独立してHまたはCH3、好ましくはHであり、
R3は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである、
に従うモノマーのセリウム(IV)触媒グラフト重合に供することにより調製可能である。
【0015】
このグラフト重合は、好ましくは、US5453186の9頁、例8に従い行われる。
【0016】
本発明はさらに、その表面にポリマー鎖が共有結合によってグラフトされたヒドロキシル基含有ベースマトリックスを含む分離材料であって
a)ベース支持材が、ヒドロキシル基を含有し、
b)ポリマーが、支持材にヒドロキシル基を介して共有結合的に結合し、
c)ポリマーが、アミノ酸末端基-N(Y)-R3を含む、ただし式中、
Yは、互いに独立してHまたはCH3、好ましくはHであり、および
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNH4である
ことを特徴とする前記分離材料と、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む試料を接触させることによる、抗体薬物コンジュゲート(ADC)のクロマトグラフ精製および/または分離に向けられる。
【0017】
好ましい態様において、ADC標的分子は、2~7の間のpHで分離マトリックスに結合し、任意には、pH値をアルカリ性pHまで、好ましくは9を上回る値、例として、9~11の間、好ましくは10前後まで増大させることによって洗浄されて溶出させられる。
好ましい態様において、試料は、10~1200μeq/gの間のイオン密度で分離マトリックスに適用される。
好ましい態様において、分離材料のmlあたり10mg~100mgの間のADCが結合する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、アクリロイルロイシンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を伴った本発明に従う分離材料の概略図を示す。
図2図2は、アクリロイルバリンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を伴った本発明に従う分離材料の概略図を示す。
図3図3は、バリンおよびロイシンについての、アクリル酸クロリドとの反応スキームを示す。
【0019】
図4図4は、10mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図5図5は、分析HPLCカラム(mAbPac HIC-Butyl 5μm、4.6×100mm(P/N: 088558) von Thermo Fisher Scientific)上での減少する導電率および増大する2-プロパノール量の線形勾配を使用した抗体薬物コンジュゲート種の溶出の定性的な例を示す。バッファーAは、1.5M硫酸アンモニウム、0.05Mリン酸塩pH7.0および5% 2-プロパノールからなり、バッファーBは、0.05Mリン酸塩pH7.0および20% 2-プロパノールからなる。HPLCカラムは、1ml/分の流速で操作され、および、バッファーAからバッファーBまでの勾配が20分で達成される。ADC試料は、バッファーA中に5mg/ml濃度で希釈され、および、10μlが、勾配溶離の前にHPLC上に注入される。
【0020】
図6図6は、10mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(5A1~5B7)の定量面積(quantitative area)で表示される試料画分特性評価の分析結果を示す。
図7図7は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図8図8は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(5A2~5C6)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を表す。
【0021】
図9図9は、DAR0~DAR4種の範囲にわたるDAR種の分布を示した、Adcetris(登録商標)試料についてのデコンボリューションされたマススペクトルを表す。DAR6種は、低いイオン化と、より低いDAR種の過負荷な方法とに起因して検出不可能である。
図10図10は、第1の溶出ピークの最大を表す溶出画分5A7についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、他のDAR種の明らかな存在なしに、DAR2種のものである。
【0022】
図11図11は、第2の溶出ピークの最大を表す溶出画分5B4についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、他のDAR種の明らかな存在なしに、DAR4種のものである。
図12図12は、第3の溶出ピークの最大を表す溶出画分5B11についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、DAR4種およびDAR6種のものである。信号強度は定量的ではない。
【0023】
図13図13は、60mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを表す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図14図14は、60mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(1A1~3G12)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を示す。
図15図15は、Capto(商標) MMC ImpResクロマトグラフィー樹脂を使用しての30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0024】
図16図16は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(4A3~2C2)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を表す。
図17図17は、10mg ADC/ml CV負荷および50mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図18図18は、10mg ADC/ml CV負荷および100mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0025】
図19図19は、10mg ADC/ml CV負荷および150mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図20図20は、10mg ADC/ml CV負荷および200mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図21図21は、10mg ADC/ml CV負荷および300mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0026】
図22図22は、10mg ADC/ml CV負荷および350mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図23図23は、ステップアプローチを使用しての10mg ADC/ml CV負荷および350mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図24図24は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0027】
図25図25は、分析HPLCカラム(mAbPac HIC-Butyl 5μm、4.6×100mm(P/N: 088558) von Thermo Fisher Scientific)上での減少する導電率および増大する2-プロパノール量の線形勾配を使用した抗体薬物コンジュゲート種の溶出の定性的な例を表す。バッファーAは、1.5M硫酸アンモニウム、0.05Mリン酸塩pH7.0および5% 2-プロパノールからなり、バッファーBは、0.05Mリン酸塩pH7.0および20% 2-プロパノールからなる。HPLCカラムは、1ml/分の流速で操作され、および、バッファーAからバッファーBまでの勾配が20分で達成される。ADC試料は、バッファーA中に5mg/ml濃度で希釈され、および、10μlが、勾配溶離の前にHPLC上に注入される。
図26図26は、10mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(1A3~3C10)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を示す。
【0028】
図27図27は、DAR0~DAR7種の範囲にわたるDAR種の分布を示した、Kadcyla(商標)試料についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。
図28図28は、より低いDAR種の分布を示した、溶出画分3A4の試料についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。
図29図29は、より高いDAR種の分布を示した、溶出画分3B12の試料についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。
【0029】
図30図30は、60mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを表す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図31図31は、60mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(2A1~4C10)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を示す。
【0030】
図32図32は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでのCapto(商標) MMC ImpResクロマトグラフィー樹脂上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図33図33は、30mg ADC/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、分析した溶出画分(2B1~5D1)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果を示す。
図34図34は、ステップアプローチを使用しての10mg ADC/ml CV負荷および400mM NaClでの分離マトリックス上に結合したADCの溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図4~34を、例においてさらに説明する。
本発明を詳細に説明する前に、この発明は特定の組成またはプロセスステップに限定されるものではなく、かかるものは多様であり得るということが理解されるべきである。この明細書および添付の請求項に使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明確に別様に指示されない限り、指示物の複数形を包含することが留意されなければならない。よって、例えば、「リガンド」を指すことは複数のリガンドを包含し、および、「抗体」を指すことは複数の抗体を包含する、等とする。
【0032】
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術および科学用語は、この発明が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。以下の用語は、本明細書に記載のとおり、発明の目的のために定義される。
【0033】
本明細書に使用されるとき、用語「標的分子」は、試料中の、1以上の他の構成成分、例として不純物から、単離、分離または精製されることとなる、あらゆる分子、物質または化合物を指す。標的分子の例は、ADCである。生産および/または精製プロセスにおいて、標的分子は、典型的には液体中に存在する。液体は、水、バッファー、エタノールのような非水溶媒、またはそれらのあらゆる混合物であり得る。標的分子の傍ら、当該液体は、1以上の不純物を含み得る。
【0034】
液体はまた、試料とも呼ばれることがある。液体の組成は、生産および/または精製の間に、行われるプロセスステップに依存して変化し得る。クロマトグラフのステップの後、液体は、典型的には、クロマトグラフのステップにおいて使用された溶離液のためにそれ以前とは違う溶媒を含む。典型的には、まさに最後の精製ステップの後でのみ、標的分子が最終剤形を調製するために乾燥され得る。
【0035】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。「抗体」または「IgG」は、分析物(抗原)に特異的に結合して認識する、免疫グロブリン遺伝子(単数)または免疫グロブリン遺伝子(複数)によって実質的にコードされるポリペプチド、またはそのフラグメントをさらに指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を包含する。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類され、ひいては、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを定義する。
【0036】
例示の免疫グロブリン(抗体)構造単位は、ポリペプチド鎖の2つのペア、各ペアは1の「軽」(約25kD)および1の「重」鎖(約50~70kD)を有し、当該鎖は、例えば鎖間ジスルフィド結合によって安定化している、から構成されている。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ指す。
【0037】
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、モノマーまたはポリマーの形態で存在してもよく、例えば、五量体の形態で存在するIgM抗体および/またはモノマー、ダイマーまたは多量体の形態で存在するIgA抗体である。抗体は、それらがリガンド特異的な結合ドメインを保持するか、またはそれを含むように改変される限り、多重特異性抗体(例として、二重特異性抗体)および抗体フラグメントもまた包含してもよい。
【0038】
用語「フラグメント」は、無傷のもしくは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体もしくは抗体鎖の一部もしくは部分を指す。フラグメントは、無傷のもしくは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントは、組換え手段によって得ることもできる。組換えで生産されるとき、フラグメントは、単独で発現しても、または融合タンパク質と呼ばれるより大きなタンパク質の部分として発現してもよい。例示のフラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFvフラグメントを包含する。例示の融合タンパク質は、Fc融合タンパク質を包含する。本発明に従うと、融合タンパク質もまた用語「抗体」によって網羅される。
【0039】
いくつかの態様において、抗体は、Fc領域含有タンパク質、例として免疫グロブリンである。いくつかの態様において、Fc領域含有タンパク質は、別のポリペプチドまたはそのフラグメントに融合された免疫グロブリンのFc領域を包含する組換えタンパク質である。
【0040】
例示のポリペプチドは、例として、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを包含する成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-抗トリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;タンパク質Cなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼまたは組織種類プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-αおよび-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T- cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、;ミュラー管阻害物質;リラキシンα鎖;リラキシンβ鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;例えばβ-ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)(例としてCTLA-4);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;タンパク質AまたはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または、NGF-βなどの神経成長因子、などの神経栄養因子;血小板由来成長因子(PDGF);αFGFおよびβFGFなどの線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF-アルファ、およびTGF-βl、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5を包含するTGF-βなどのトランスフォ-ミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34、およびCD40などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、および-γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例としてM-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例としてIL-I~IL-IO;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えばAIDSエンベロープの部分などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CDl Ia、CDl Ib、CDl Ic、CD 18、ICAM、VLA-4およびVCAMなどのインテグリン;HER2、HER3またはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;および上記に列記したあらゆるポリペプチドのフラグメントおよび/またはバリアントを包含する。
【0041】
加えて、本発明に従う抗体は、上記に列記したポリペプチドのいずれかに特異的に結合する、あらゆるタンパク質またはポリペプチド、フラグメントまたはそのバリアントである。
【0042】
本明細書で使用されるとき、かつ、別様に述べられない限り、用語「試料」は、標的分子を含有するあらゆる組成物または混合物を指す。試料は、生物学的なまたはその他の入手源に由来してもよい。生物学的な入手源は、動物またはヒトといった真核生物の入手源を包含する。好ましい試料は、哺乳動物に由来する血液または血漿試料である。試料は、標的分子とともに混合されて見出される希釈剤、バッファー、洗剤、および汚染種(contaminating species)等々もまた包含してもよい。試料は、「部分的に精製されて」(すなわち、濾過または遠心分離ステップなどの、1以上の精製ステップに供されていて)もよく、または標的分子を生産する生体から直接的に得てもよい。血漿試料は、血漿または血漿の部分を含むあらゆる試料である。
【0043】
用語「不純物」または「夾雑物」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる外来のまたは好ましくない分子を指し、これは、1以上の外来のまたは好ましくない分子から分離される標的分子を含有する試料に存在し得る、DNA、RNA、1以上の宿主細胞タンパク質、核酸、エンドトキシン、脂質、合成起源の不純物および1以上の添加剤などの生物学的高分子を包含する。用語「不純物」または「夾雑物」はまた、本明細書で使用されるとき、患者(patents)においてアレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンAならびに免疫グロブリンMといった、標的分子から分離される必要がある所定の免疫グロブリンにも適用できる。加えて、かかる不純物は、生産および/または精製プロセスのステップに使用されるあらゆる試薬を包含してもよい。
【0044】
用語「精製する」、「分離する」または「単離する」は、本明細書で交換可能に使用されるとき、標的分子と1以上の他の構成成分、例として不純物、とを含む組成物または試料からそれを分離することによって標的分子の純度を増大させることを指す。典型的には、組成物から少なくとも1の不純物を取り除く(完全にまたは部分的に)ことによって標的分子の純度が増大する。
【0045】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中に存在する他の分子から関心対象の分析物(例として標的分子)を分離するあらゆる種類の技術を指す。大抵、標的分子は、移動相の影響下で、または結合-溶出プロセスにおいて、混合物の個々の分子が固定(stationary)媒体もしくはマトリックスを通って移動する速度の相違の結果として他の分子から分離される。クロマトグラフィー分離プロセスについての例は、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーである。
【0046】
「バッファー」は、その酸-塩基コンジュゲート構成成分の作用によりpHの変化に耐える溶液である。例えばバッファーの所望のpHに依存して用いることができる様々なバッファーは、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。バッファーの非限定例は、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、グリシンおよびアンモニウムバッファー、ならびにこれらの組み合わせを包含する。
【0047】
用語「マトリックス」、「クロマトグラフィーマトリックス」、または「分離マトリックス」は、本明細書で交換可能に使用され、分離プロセスにおいて固定相として使用され、混合物に存在する他の分子から標的分子(例として、免疫グロブリンなどのFc領域含有タンパク質)を分離する、あらゆる種類の吸着剤、支持材、樹脂または固相を指す。大抵、標的分子は、移動相の影響下で、または結合-溶出プロセスにおいて、混合物の個々の分子がマトリックスを通って移動しおよびマトリックスと相互作用する速度の相違の結果として他の分子から分離される。
【0048】
典型的に樹脂粒子、モノリシック吸着剤または膜から構成されるマトリックスは、カラムまたはカートリッジ中に入れることができる。典型的には、マトリックスは、1以上のタイプのリガンドが付着するベースマトリックスまたは基材をマトリックスが含むことを意味する1以上のタイプのリガンドを抱える。
【0049】
「リガンド」は、官能基であるかまたはこれを含むものであり、クロマトグラフィーベースマトリックスに付着し、マトリックスの結合特性を決定するかまたはこれに影響する。好ましくは、リガンドは、1以上、好ましくは複数の官能基を抱えたポリマー鎖である。最も好ましいものは、それらを構築するモノマー単位あたり少なくとも1の官能基を抱えたポリマー鎖で作られたリガンドである。
【0050】
「リガンド」の例は、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオ親和性相互作用基、金属アフィニティー基、アフィニティー基、バイオアフィニティー基、および混合モード基(先述の組み合わせ)を包含するが、これらに限定されない。本明細書で使用することのできる好ましいリガンドは、カルボン酸などの弱イオン交換基を包含するが、これらに限定されない。
【0051】
用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」は、混合物中の標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)がイオン交換マトリックスに(共有結合的な付着によってなどで)連結した荷電した化合物と相互作用し、それによって標的分子が、混合物中の溶質不純物または夾雑物よりも多くまたは少なく荷電した化合物と非特異的に相互作用する、クロマトグラフプロセスを指す。混合物中の不純物は、イオン交換材料のカラムから標的分子よりも速くまたは遅く溶出するか、または標的分子に対して相対的に、樹脂に結合するか、もしくは樹脂から除かれる。
【0052】
「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的にいうと、カチオン交換、アニオン交換、および混合モードイオン交換クロマトグラフィーを包含する。イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域含有標的タンパク質)に結合しこれに続いて溶出を行うことができるか、または不純物に主に結合することができる一方で標的分子がカラムを「フロースルーする」。好ましくは、イオン交換クロマトグラフィーのステップは、結合-溶出モードで行われる。
【0053】
句「イオン交換マトリックス」は、負に荷電している(すなわち、カチオン交換樹脂)か、または正に荷電している(すなわちアニオン交換樹脂)、クロマトグラフィーマトリックスを指す。電荷は、マトリックスに1以上の荷電したリガンドを付着させることによって、例として共有結合的な連結によって、提供されてもよい。代替的に、または加えて、電荷はマトリックスの固有の特性であってもよい。
用語「カチオン交換マトリックス」は、本明細書では、負に荷電した例として、そこに付着したカルボン酸基などの1以上の負に荷電したリガンドを有する、クロマトグラフィーマトリックスを指すのに使用される。
【0054】
結合-溶出モードで分離カラムに「負荷(loading)」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子がクロマトグラフィーマトリックスに結合する一方で理想的にはすべての不純物がカラムに結合せずカラムをフロースルーするような導電率および/またはpHを有する。
【0055】
標的分子を「フロースルー」させるために分離カラムに「負荷」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子がクロマトグラフィーマトリックスに結合せずにカラムをフロースルーする一方で理想的にはすべての不純物がカラムに結合するような導電率および/またはpHを有する。
【0056】
標的分子を「結合-溶出(bing and elute)」させるために分離カラムに「負荷」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子がクロマトグラフィーマトリックスに結合するような導電率および/またはpHを有する。1以上の不純物からの分離は、標的分子が1以上の不純物より前にまたは後に洗浄または溶出されるような導電率および/またはpHに続いて起こる。典型的には、マトリックス上に試料が負荷されたバッファーは、ローディングバッファーまたは試料バッファーと呼ばれる。
【0057】
用語「平衡化」は、標的分子を負荷する前にクロマトグラフィーマトリックスを平衡化するためのバッファーの使用を指す。典型的には、ローディングバッファーが平衡化のために使用される。
「洗浄」またはクロマトグラフィーマトリックスを「洗浄する」とは、マトリックスを通してまたはマトリックス上で、適切な液体、例としてバッファーを通過させることを意味する。典型的には、洗浄は、負荷後に、標的分子を溶出させる前にマトリックスから弱く結合した夾雑物を取り除くために、および/または、非結合のもしくは弱く結合した標的分子を取り除くために使用される。
【0058】
この場合、典型的には、洗浄バッファーとローディングバッファーとは同じものである。ウイルス不活性化バッファーを使用する場合、それは、標的分子を溶出させる前に、所定の存在するウイルスを不活性化するために使用される。この場合、典型的には、ウイルス不活性化バッファーは、それが洗剤(単数)/洗剤(複数)を含有してもよいか、または異なる特性(pH/導電率/塩およびそれらの量)を有してもよいため、ローディングバッファーとは異なる。
【0059】
洗浄はまた、標的分子の溶出後にマトリックスから夾雑物を取り除くためにも使用できる。これは、適切な液体、例えばバッファーを、標的分子の溶出後にマトリックスを通してまたはマトリックス上で通過させることによってなされる。この場合、典型的には、洗浄バッファーはローディングバッファーとは異なる。それは、洗剤(単数)/洗剤(複数)を含有してもよいか、または種々の特性(pH/導電率/塩およびそれらの量)を有してもよい。洗浄バッファーは、例えば酸性バッファーである。
【0060】
クロマトグラフィーマトリックスから分子(例として、免疫グロブリンGのような関心対象のポリペプチドまたは不純物)を「溶出」させることは、そこから分子を取り除くことを意味する。溶出は、フロースルーモードで直接、標的分子がローディングバッファーの前方側の溶媒で溶出されるとき、またはローディングバッファーとは異なるバッファーがクロマトグラフィーマトリックス上のリガンド部位の関心対象の分子と競合するように溶液条件を変更することによって、実行され得る。非限定例は、イオン交換材料の荷電部位に対してバッファーが分子と競合するようにイオン交換材料を取り囲むバッファーのイオン強度を変更することによってイオン交換マトリックスから分子を溶出させることである。
【0061】
用語「平均粒径」またはd50は、累積粒子サイズ分布の50%での平均粒子サイズ分布値を意味する。粒子サイズは、レーザー回折によって、好ましくはMalvern ‘Master Sizerを用いて決定される。
用語「平均孔径」は、累積孔径分布の50%での平均孔径分布値を意味する。
用語「フロースルー(flow-through)プロセス」、「フロースルーモード」および「フロースルー操作」は、本明細書で交換可能に使用されるとき、試料中に1以上の不純物とともに含有される少なくとも1の標的分子(例として、Fc領域含有タンパク質または抗体)が、標的分子は大抵結合せずにローディングバッファーとともにマトリックスから溶出する(すなわち、フロースルーする)、大抵1以上の不純物を結合させるクロマトグラフィーマトリックスを通って流れることが意図される分離技術を指す。
【0062】
用語「結合-溶出(bind and elute)モード」および「結合-溶出プロセス」は、本明細書で使用されるとき、試料中に含有される少なくとも1の標的分子(例として、Fc領域含有タンパク質)が、好適なクロマトグラフィーマトリックス(例として、イオン交換クロマトグラフィー媒体)に結合し、およびその後ローディングバッファーとは異なるバッファーで溶出される、分離技術を指す。
「抗体薬物コンジュゲート」または「ADC」は、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを指し、かつ、本明細書中の下記にさらに記載されるとおりの、細胞毒性剤、細胞静止剤および/または治療剤などの薬物にコンジュゲートされている。
【0063】
用語「薬物」は、本明細書では「ペイロード」と交換可能に使用され、および、化合物またはタンパク質またはタンパク質フラグメントまたはその他の細胞毒性、成長阻害もしくはイメージング剤であって、抗体にコンジュゲートされているか、もしくはコンジュゲートされることになるものを指す。よって、いくつかの態様において、薬物は、小分子である。いくつかの態様において、小分子は、細胞毒性剤またはイメージング剤である。いくつかの態様において、細胞毒性剤は、アントラサイクリン、アウリスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エネジイン、ゲルダナマイシン、メイタンシン、ピューロマイシン、タキサン、ビンカアルカロイド、SN-38、チューブリシン、ヘミアステリン、およびそれらの立体異性体、アイソステア、類似体、または誘導体からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの態様において、薬物は、生体適合性のポリマー、またはポリペプチドである。本明細書で使用されるときの「薬物」は、古典的な化学治療薬に限定されるものと解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を備えるタンパク質またはポリペプチドであり得る。好ましくは、薬物は、小分子である。
【0065】
用語「薬物抗体比(drug to antibody ratio)」(「DAR」と略される)は、抗体あたりのコンジュゲートされる薬物分子の数を指す。複数の抗体薬物コンジュゲートの組成、バッチ、および/または処方は、平均DARによって特徴付けられ得る。DARおよび平均DARは、UV分光法、質量分析法、ELISAアッセイ、放射分析法、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、電気泳動およびHPLCなどの様々な慣用の手段によって決定することができる。
【0066】
用語「細胞毒性剤」は、本明細書で使用されるとき、細胞の機能を阻害もしくは防止し、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、核酸分解酵素などの酵素およびそれらのフラグメント、抗生物質、ならびに、小分子トキシンもしくは酵素活性トキシンなどのトキシンであって細菌、真菌、植物または動物起源のもの(それらのフラグメントおよび/またはバリアントを包含する)、ならびに下記に開示されている様々な抗腫瘍もしくは抗がん剤を包含することを意図する。
【0067】
他の細胞毒性剤は、以下に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。「化学療法剤」は、がんの処置において有用な化合物である。
【0068】
化学療法剤の例は、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を包含するエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(とくにブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)および9-アミノカンプトテシンを包含する);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を包含する);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189およびCB1-TM1を包含する);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア;エネジイン抗生物質(例として、カリケアマイシン、とくにカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例として、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);ジネマイシンAを包含するジネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団))、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを包含する)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とくにT-2トキシン、ベルカリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例として、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE(商標)というパクリタキセルのクレモフォール非含有のアルブミン処理された(albumin-engineered)ナノ粒子処方物(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;レウコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標))上記のあらゆるものの薬学的に許容し得る塩、酸または誘導体;ならびに、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの組み合わせ療法の略語であるCHOP、および、5-FUおよびレウコボビンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))での処置レジメンの略語であるFOLFOXなどの、上記の2以上の組み合わせを包含する。
【0069】
この定義に包含されるものにはまた、がんの成長を促進させることができるホルモンの影響を調節する、低減させる、ブロックする、または阻害するように作用し、かつ、しばしば全身性的な(systemic)もしくは全身(whole-body)処置の形態にある、抗ホルモン剤がある。それらは、ホルモンそれ自体であってもよい。
【0070】
例は、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを包含する)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェンを包含する);抗プロゲステロン薬;エストロゲン受容体下方制御剤(ERD);卵巣を抑制またはシャットダウンするように機能する薬剤、例えば、LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標)酢酸リュープロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin)などの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミドなどのその他の抗アンドロゲン薬;ならびに、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、 RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎でのエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、を包含する。加えて、かかる化学療法剤の定義は、クロドロナート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロナート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロナート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロナート、AREDIA(登録商標)パミドロナート、SKELID(登録商標)チルドロナート、またはACTONEL(登録商標)リセドロナートなどのビスホスホナート;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(EGF-R)などの、異常な細胞増殖に加担しているシグナリング経路における遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン(例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン)などのワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパニチブジトシラート(GW572016としてもまた知られているErbB-2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);ならびに上記のあらゆるものの薬学的に許容し得る塩、酸または誘導体、を包含する。
【0071】
本明細書に使用されるとき、「成長阻害剤」は、細胞、とくにTAT発現がん細胞の成長をin vitroまたはin vivoのいずれかにおいて阻害する化合物または組成物を指す。よって、成長阻害剤は、S相におけるTAT発現細胞の割合を有意に低減させるものであり得る。成長阻害剤の例は、Gl停止およびM相停止を誘発する薬剤などの、細胞周期の進行を(S相以外の箇所で)ブロックする薬剤を包含する。古典的なM相ブロッカーは、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、および、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害薬、およびブレオマイシンを包含する。Glを停止するそれらの薬剤は、S相停止にもまた波及し、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤である。
【0072】
さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, eds., 第1章、標題「Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs」Murakami et al.著(WB Saunders: Philadelphia, 1995)、とくに第13頁において見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイの木に由来する抗がん薬である。ヨーロッパのイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進して、解重合を防止することにより微小管を安定化させ、それは細胞における有糸分裂の阻害を結果としてもたらす。
【0073】
本発明は、ADCの精製に向けられている。上に定義されるとおり、ADCは、抗体をトキシンへ、典型的には小分子トキシンへ、好ましくはリンカーを介して、リジンカップリング、重鎖および軽鎖の還元的ジスルフィドカップリング、またはその他のカップリング法を関与させて共有結合させることによって形成される、抗体とコンジュゲートした薬物である。抗体は、あらゆる種類の抗体または抗体フラグメント、例としてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、であってもよく、好ましくはモノクローナル抗体である。小分子トキシンの例は、メイタンシン誘導体DM1(N2’-デアセチル-N2’-3-メルカプト-1オキソプロピル)-メイタンシン)、DM4(N2’-デアセチル-N2’-4)-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシンおよびその類似体、ドルフィントキシン誘導体MMAE(Monomethyl Auristatin E、メチルアウリスタチンE)、MMAF(Monomethyl Auristatin F、メチルアウリスタチンF)およびその類似体である。例示のリンカーは、SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミドエステル)である。
【0074】
本発明は、ポリマー鎖が二重結合的に付着したベースマトリックスを含む、樹脂とも呼ばれる、分離材料を提供する。ポリマー鎖は、アミノ酸およびポリマー化可能な二重結合を含む、モノマーで作られる。
【0075】
本発明はさらに、異なるDARでのADCの分離のための、あるいは、抗体薬物コンジュゲート(ADC)調製物から高分子量種、具体的にいうと凝集物を取り除くための、ADCの分離および精製のための方法を提供する。本発明は、抗体薬物コンジュゲート調製物のラージスケール精製に有用である。本発明のある特定の側面において、それは、より高い毒性に寄与して治療指数(Tl)を低下させ得る、より疎水的でより速いクリアランスを実証する高いDAR(DAR>6)を有するADCを除去するのに有益である。
【0076】
本発明の他の側面において、それは、低いDAR(DAR<2)を有するADC、これは有効性にほとんど寄与せず、しかしながら、標的抗原に対するADCと競合し得るコンジュゲートされていない抗体の量の増大を提供し、より低いTIへ導くものである、を除去するのに有益である。本発明の別の側面において、それは、高いDAR(DAR>6)を有するADCおよび低いDAR(DAR<2)を有するADCを除去するのに有益である。本発明の一態様において、精製されたADCは、3.5~4.5の間の薬物負荷(薬物抗体比、DAR)を含有し、および、別の態様においては、3~5の間である。
【0077】
本発明の分離材料は、テンタクル様(tentacle-like)構造がグラフトされた基材を含む。
基材は、ベースマトリックスともまた呼ばれ、グラフト重合反応に利用可能な反応基、とりわけOH基、好ましくは脂肪族のOH基を含有する。基材は、したがって、例えば、有機ポリマーからもまた調製することができる。
【0078】
このタイプの有機ポリマーは、アガロース、デキストラン、デンプン、セルロース等々などの多糖、または、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(アクリラート)、ポリ(メタクリラート)、親水性置換されたポリ(アルキルアリルエーテル)、親水性置換されたポリ(アルキルビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(スチレン)および対応するモノマーのコポリマーなどの合成ポリマー、とすることができる。これらの有機ポリマーは、好ましくは、架橋された親水性ネットワークの形態でもまた採用することができる。これは、スチレンおよびジビニルベンゼンから作られたポリマーもまた包含し、これは好ましくは、他の疎水性ポリマーのように、親水化された形態で採用することができる。
【0079】
代替的に、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム等々、などの無機材料を、基材として採用してもよい。複合材料、すなわち、例えば、磁化可能な粒子または磁化可能なコアの共重合によってそれら自体が磁化することができる粒子を採用することも、同等に可能である。
【0080】
しかしながら、本発明に従う材料は、好ましくはアルカリ性のクリーニングまたは再生に、例として、塩基性pHで、延長された使用期間にわたって耐えるべきであるため、加水分解に対して安定であるかまたは困難を伴わなければ加水分解できない親水性の基材の使用が優先される。
【0081】
基材は、不規則な形状のまたは球形の粒子からなり得、その粒子サイズは2~1000μmの間とすることができる。3~300μmの間の粒子サイズが優先される。
基材は、特に、非多孔性または好ましくは多孔性粒子の形態であり得る。孔径は、2~300nmの間とすることができる。5~200nmの間の孔径が優先される。
【0082】
基材は、同等にまた、膜、繊維、中空繊維、コーティングまたはモノリシック成形物の形態であってもよい。モノリシック成形物は、好ましくは、多孔性の三次元体、例えば円筒形の形態である。
【0083】
好ましい態様において、基材は、グループa)およびb)からの少なくとも1の化合物の共重合によって形成されたコポリマーである、ここで
a)少なくとも1の、式Iで表される親水性置換されたアルキルビニルエーテル
【化6】

式中、R1、R2、R3は、相互に独立して、HまたはC1~C6アルキル、好ましくはHまたは-CH3、とすることができ、
およびR4は、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたラジカルである、ならびに
b)少なくとも1の、式IIおよび/またはIIIおよび/またはIVに従った架橋剤、ここで、
【化7】

式中、Xは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、隣接せずかつNのすぐ近傍に位置づけられていない1以上のメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、ならびに、
【化8】

【化9】

式中、式IIIおよびIVにおけるY1およびY2は、相互に独立して、
C1~C10アルキルまたはシクロアルキルであり、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO2、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよいか、
あるいは、C6~C18アリールであり、ここで、アリール系の中の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、および、
Aは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH(C1~C8)アルキル、N(C1~C8)アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい。
【0084】
式IにおけるR4は、典型的には、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたアルキルラジカル、シクロ脂肪族ラジカルまたはアリールラジカルである。
【0085】
極めて好ましい態様において、マトリックスは、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,5-ペンタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルまたはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの群から選択して採用される親水性置換されたアルキルビニルエーテルと架橋剤としてのジビニルエチレン尿素(1,3-ジビニルイミダゾリン-2-オン)との共重合により形成される。
好適な市販のビニルエーテルベースの基材の例は、Eshmuno(登録商標), Merck KGaA, Germanyである。
【0086】
分離材料が生成されるように基材の表面へ線状ポリマー鎖が共有結合的に結合されるところ、
a)基材は、好ましくは脂肪族のヒドロキシル基を含有し、
b)ポリマーは、基材へ共有結合的に結合し、
c)ポリマーは、アミノ酸残基を含有し、
d)ポリマーのモノマー単位は、直線状に連結する。
【0087】
基材および二重結合的に付着した線状ポリマー鎖を含む実際の分離材料は、様々なやり方で調製することができる。「grafting onto」法の場合、ポリマー鎖はまずモノマーから形成しされなければならず、および第2ステップで表面に結合させられる。「grafting from」法の場合、ポリマー化反応は表面上で開始され、および、グラフトポリマーは個々のモノマーから直接構築される。支持材料の表面への結合を可能にする他の重合方法もまた採用することができる。
【0088】
「grafting from」法が優先され、および、分離で除かなければならない非共有結合的に結合されたポリマーなどの副産物がわずかのみ形成される変法が特に優先される。例えば原子移動フリーラジカル重合(ATRP)の方法などの、制御されたフリーラジカル重合を伴うプロセスは、特に好適であるように見受けられる。ここでは、開始基が、第1のステップにおいて所望の密度で支持体表面に共有結合される。開始基は、例えば、2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エステルにおけるとおりの、エステル官能基を介して結合されたハロゲン化物である。グラフト重合は、第2のステップにおいて銅(I)塩の存在下で実施される。
【0089】
本発明の分離材料の生産のために好適な極めて好ましいワンステップグラフト重合反応は、支持材を活性化させることを要することなく、ヒドロキシル含有支持材上でセリウム(IV)によって開始することができる。
【0090】
このセリウム(IV)で開始されるグラフティングは、好ましくは、EP0337144またはUS5,453,186に従って実施される。生産される鎖は、モノマー単位を介して基材に連結される。これを目的に、本発明に従う基材は、モノマーの溶液中に、好ましくは水溶液中に懸濁される。ポリマー材料のグラフティング・オンは、酸素の排除を伴う慣用のレドックス重合の過程でできる。採用されるポリマー化触媒はセリウム(IV)イオンであり、それはこの触媒が基材の表面上にフリーラジカル部位を形成し、そこからモノマーの重合が開始するからである。この反応は、通常、希薄鉱酸中において実施される。このグラフト重合を実施するために、酸は、大抵、1~0.00001mol/l、好ましくは0.1~0.001mol/lの範囲内の濃度の水溶液において採用される。希硝酸の使用が特に極めて優先され、0.1~0.001mol/lの濃度において採用される。
【0091】
本発明に従う分離材料の調製のために、モノマーは、通常、基材に対して過剰量で添加される。典型的には、堆積したポリマー材料のリットルあたり0.05~100molの総モノマーが採用され、好ましくは0.05~25mol/lが採用される。
【0092】
セリウム塩が関与する終止反応によって、重合は終了する。この理由のため、(平均)鎖長は、基材、開始剤およびモノマーの濃度比に影響され得る。さらに、均一のモノマーか、または異なるモノマーの混合物をも採用することができ;後者の場合には、グラフトコポリマーが形成される。
【0093】
本発明に従う分離材料の調製のために好都合に使用されるモノマーは、式V
【化10】

に従うものであり、
ただし式中、R、RおよびYは、互いに独立してHまたはCH、好ましくはHである。
は、-CHCOOMRであり、
【化11】

ただし式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNH である。
【0094】
ペルフルオロアルキルは、アルキル残基のすべてのH原子がF原子で置換されているということを意味する。
例示の好ましい式Vの構造は、Va
【化12】

ただし式中、R、RおよびYは、Hであり、
は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、イソプロピルであり、
および、Mは、Hである、
ならびに式Vb
【化13】

ただし式中、R、RおよびYは、Hであり、
は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、イソブチルであり、
および、Mは、Hである、
である。
【0095】
かかるモノマーはまた、アクリロイルバリン(式Va)、アクリロイルロイシン(式Vb)、アクリロイルアラニン、アクリロイルノルロイシン、メタクリロイルバリン、メタクリロイルロイシン、メタクリロイルアラニン、メタクリロイルノルロイシン、ジメタクリロイルバリン、ジメタクリロイルロイシン、ジメタクリロイルアラニン、ジメタクリロイルノルロイシン、としても記載できるところ、アクリロイルバリンおよびアクリロイルロイシンが好ましく、アクリロイルロイシンがとくに好ましい。
【0096】
本発明に従う分離材料は、好ましくは、式Vに従うモノマーから構築された基材上にグラフトされたテンタクル様の線状ポリマー構造のみを含有する。好ましくは、それらは、式Vに従う1のタイプのモノマーのみにより構築された線状ポリマーを含有する。
【0097】
しかし、線状ポリマーは、式Vに従う2以上の異なるモノマーの共重合によって線状ポリマーが構築されるということもまた可能である。線状ポリマーは、式Vに従う1以上の異なるモノマー、および1以上のその他の重合可能なモノマー(他のアクリルアミド、メタクリラート、アクリラート、官能化(例として、イオン基、親水基または疎水基で)されたメタクリラート等々、といったもの)の共重合によって構築されるということもまた可能である。
【0098】
本発明に従う分離材料の例示的な構造が、図1および2に示されている。図1は、クリロイルロイシンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を示す。加えて、明確化のために、各ポリマー単位のカルボキシアルキル末端基が示されている。図2は、アクリロイルバリンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を示す。加えて、明確化のために、各ポリマー単位のカルボキシアルキル末端基が示されている。
【0099】
好ましい態様において、本発明の分離材料は、10~1200μeq/gの範囲にわたる各種様々な量のイオン密度帯のイオン交換材料であり、ここで、より好ましい態様において、イオン密度帯は400~900μeq/gの間である。
好ましい態様において、イオン交換材料は、イオン交換官能基および疎水性官能基を含有することができ、ここで、より好ましい態様においては、ポリマー鎖中に構築されている1のモノマーの単位(monomeric unit)から結果として生じた単一の表面機能的単位(surface functional unit)の上に両方の官能基があり、ここで、最も好ましい態様において、官能基はアミノ酸残基の一部である。
【0100】
本発明はさらに、上に記載の本発明に従う分離材料を含むクロマトグラフィーカラムに向けられている。クロマトグラフィーカラムは、当業者に知られている。それらは、典型的には、分離材料で満たされた円筒形のチューブもしくはカートリッジ、ならびにフィルターおよび/またはチューブもしくはカートリッジ中に分離材料を固定するための手段、およびチューブの内外への溶媒送達のための接続を含む。クロマトグラフィーカラムのサイズは、アプリケーション、例として、分析または分取、に依存して様々である。
【0101】
本発明に従う材料はまた、分離エフェクター(separation effectors)を提供された基材としても記載できる。それらは、1以上の標的構成成分の選択的、部分的に選択的または非選択的な結合もしくは吸着のために、試料液の外への分離を狙いとして、あるいは、1以上の二次的な構成成分の選択的、部分的に選択的または非選択的な結合もしくは吸着のために、マトリックスの外への二次的な構成成分の分離、天然源からの生体高分子の単離、濃縮および/または枯渇、組換え的な入手源からの生体高分子の単離、濃縮および/または枯渇、タンパク質またはポリペプチドの単離、濃縮および/または枯渇、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の単離、濃縮および/または枯渇、ウイルスの単離、濃縮および/または枯渇、宿主細胞タンパク質の単離、濃縮および/または枯渇、ADCの単離、濃縮および/または枯渇を狙いとして、使用することができる。好ましい標的分子は、ADCである。
【0102】
標的分子は、試料からの1以上の他の物質から分離され、ここで、標的分子を含む試料は液体中に溶解させられ、これが本発明に従う材料と接触させられる。接触時間は、大抵、30秒~24時間の範囲内である。それは、本発明に従う分離材料を含有するクロマトグラフィーカラムを通して液体を通過させることによって液体クロマトグラフィーの原理に従って働くのに有利である。液体は、単にその重力を通じて、またはポンプの手段によってこれを通って送り出されることで、カラムを通り抜けることができる。
【0103】
代替の方法は、バッチクロマトグラフィーであり、そこでは標的分子または生体高分子が分離材料に結合することができるようになるために必要な長さの時間だけ、攪拌もしくは振とうによって液体と混合される。同じように、分離させる液体を、例えば、分離材料を含む懸濁液中へと導入することによって、クロマトグラフ流動床の原理に従って働くことが可能であり、ここで、分離材料は、その高い密度および/または磁性コアのために所望の分離に好適となるように選択される。
【0104】
クロマトグラフプロセスが結合-溶出モードで稼働させられる場合、標的分子は、本発明に従う分離材料に結合する。分離材料は、その後洗浄バッファーで洗浄されることができ、これは、好ましくは、標的分子が分離材料と中で接触させられる液体と同じイオン強度および同じpHを有する。洗浄バッファーは、分離材料に結合しないすべての物質を取り除く。標的分子を脱離させることなしに、他の好適なバッファーでのさらなる洗浄ステップがこれに続いてもよい。結合した標的分子の脱離は、溶離液におけるイオン強度を変えることによっておよび/または溶離液におけるpHを変えることによっておよび/または溶媒を変えることによって実施される。標的分子は、よって、溶離液中で精製および濃縮された形態で得られる。標的分子は、大抵、70%~99%の、好ましくは85%~99%、特に好ましくは90%~99%の純度を、脱離後に有する。
【0105】
しかしながら、クロマトグラフプロセスがフロースルーモードで稼働させられる場合であれば、標的分子は液体中に残り、しかし他の付随する物質が分離材料へ結合する。標的分子は、次いで、通過した流れ(through-flow)の中のカラム溶離液を集めることによって直接得られる。当業者が特定の生体高分子を分離材料に結合させるためにいかにして条件、特にpHおよび導電率を適応させなければならないか、あるいは、標的分子を結合させない精製のタスクにとってそれが有利であるか否かは、当業者の知るところである。
【0106】
本発明は、好ましくは、ADCの分離および精製のための上に記載の本発明に従う分離材料の使用、ならびに、本発明に従う分離材料を、1以上のADCを含む試料と酸性条件下で接触させることを含む、液体クロマトグラフィーによるADCの分離および/または精製のための方法に向けられる。
【0107】
予想外なことに、我々は、本発明に従うイオン交換材料が、>10mg ADC/ml材料のキャパシティで効率的なDAR(薬物抗体比)種分離を実現可能にするADCの精製のために使用できるということを見出しており、より好ましい態様において、キャパシティは10~80mg/mlの間である。そのうえ、この革新的なイオン交換材料は、高い導電率>10mS/cmにおいて使用することができ、より好ましい態様において、導電率は10~40mS/cmの間である。
【0108】
驚くべきことに、各個々のDAR種を分離することが、好ましくは4~7から9を上回るpHまでのpH変化を使用して、好ましくは9~11の間のpHまで、最も好ましくはpH10前後まででの勾配またはステップモードにて、それらのコンジュゲーション手順にかかわらず可能である。そのうえ、この分離材料の適用は、>90%の生産物回収率を保証し、疎水性相互作用またはヒドロキシアパタイト材料と比較して有意な経済的な利点を示した。加えて、適用は、異なるDAR種の分離に限られず、コンジュゲートされていないmABを取り除くためにも使用することができる。そのうえ、分離材料の適用は異なるDAR種の分離に限られず、コンジュゲートされていない毒性分子を取り除くためにも使用することができる。
【0109】
加えて、この材料の適用は、結合-溶出アプリケーションに限られず、フロースルーモードにおいても使用することができ、pH<7および/または高い導電率(>20mS/cm)を有するバッファーを使用したイオン交換材料上へのより高いDAR種の吸着を結果的にもたらす。さらに、驚くべきことに、第一義的に材料に共有結合的に付着したアミノ酸からなるものであるこのイオン交換材料のみが、DAR種に対する必要な選択性を有し、より好ましい態様において、これらのアミノ酸はバリンまたはロイシン(それらの組み合わせおよび誘導体を包含する)であり、最も好ましいものはロイシンである。
【0110】
さらに、本発明は、再生することができ、および、広範な操作帯(operation window)、例として、pH3~10;導電率1mS/cm~50mS/cm、において適用可能である、クロマトグラフィーベースのADC精製ステップを提供する。
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するための結合-溶出モードにおけるADC精製プロセスのために使用される。
【0111】
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するための結合-溶出モードにおけるADC精製プロセスのために使用され、ここで、操作帯(operation window)のスパンはpH2~pH10の間であり、より好ましい態様においてpHは4~7の間である。
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するための結合-溶出モードにおけるADC精製プロセスのために使用され、ここで、結合した構成成分を回収するために溶媒pH溶出が使用される。
【0112】
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するための結合-溶出モードにおけるADC精製プロセスのために使用され、ここで、結合帯(binding window)のスパンは、10mg ADC/ml材料~100mg ADC/ml材料の間であり、より好ましい態様において結合帯のスパンは20mg ADC/ml材料~80mg ADC/ml材料の間である。
【0113】
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するための結合-溶出モードにおけるADC精製プロセスのために使用され、ここで、導電率帯のスパンは1mS/cm~50mS/cmの間であり、より好ましい態様においては2~30mS/cmの間の導電率範囲である。
【0114】
別の好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、DAR種を分離するフロースルーモードにおけるADC精製プロセスのために使用され、ここで、低DAR種は、フロースルー中にあり、より高いDAR種は、材料に結合する。
【0115】
好ましい態様において、イオン交換材料は、1μm~200μmの範囲にわたる様々な粒子サイズにすることができるところ、より好ましい態様において、平均粒子サイズは、20~63μmの間である。
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、4nm~1500nmの範囲にわたる様々な孔径を有するものとできるところ、より好ましい態様において、平均孔径は、10~120nmの間であり、および最も好ましい態様において、平均孔径は、40~110nmの間である。
【0116】
本発明は、以下の図および例によってさらに解説されるが、しかしながら、それらに制限されない。
上記および下記ならびに2019年7月7日に出願された対応EP特許出願第19184130.3号で引用された、すべての出願、特許、および刊行物の全開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【実施例
【0117】

以下の例は、本発明の実用的な応用を表す。
【0118】
1.分離材料の合成
プロセスからのグラフティングのために使用するモノマーの調製のために、アミノ酸、例として、バリン、ロイシンまたはアラニンが、VE水中に溶解され、および、pHが、NaOH(32%)を添加することによって13を上回るpHまで調整される。0~5℃の間の温度にてアクリル酸塩化物またはアクリル酸といったアクリル化合物が加えられ、および混合物は1時間攪拌される。
バリンおよびロイシンについての、アクリル酸クロリドとの反応スキームが、図3に示されている。
【0119】
次いで、硝酸を添加することによって、pHが約2.2まで調整される。その後で、OH含有基材、例として、Eshmuno(登録商標)粒子が添加される。
重合は、硝酸セリウム(IV)を添加することによって始まる。反応は、30~50℃で4時間実行される。
重合反応の後、非反応の構成成分および開始剤が、室温または上昇した温度にて酸性の、塩基性のおよび溶媒の混合物を使用した大規模な洗浄(extensive washing)によって取り除かれる。
【0120】
ペルフルオロアルキル化された末端基を抱えた分離材料の調製のために、ヘキサフルオロバリンがVE水中に溶解され、および、pHが、NaOH(32%)を添加することによって13を上回るpHまで調整される。0~5℃の間の温度にてアクリル酸塩化物またはアクリル酸といったアクリル化合物が加えられ、および混合物は1時間攪拌される。次いで、硝酸を添加することによって、pHが約2.2まで調整される。その後で、OH含有基材、例として、Eshmuno(登録商標)粒子が添加される。重合は、硝酸セリウム(IV)を添加することによって始まる。反応は、30~50℃で4時間実行される。
【0121】
2.
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Adcetris(登録商標)のADC種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と300mM NaClでプレ平衡化した(例として、24mS/cm)。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、凍結乾燥Adcetris(登録商標)試料を、1mg/ml濃度に至るまで溶解させた。
【0122】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して10mg Adcetris(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。10mg/ml Adcetris(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと300mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのAdcetris(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0123】
試料溶出液を分画し、得られた画分を、DAR種同定のための2つの異なる方法を使用したラインにつき評価した。第1に選んだ方法は、Thermo Fisher Scientificからの4.6×100mm寸法のmAbPac HIC-Butylカラムを使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーであった。分画された試料のクロマトグラフ分離は、各々の種に対する異なる溶出帯(elution window)(例として、DAR0種の溶出は7~9分の間、DAR2種の溶出は10~14分の間、DAR4種の溶出は15~18分の間およびDAR6種の溶出は19~22分の間であった)に基づいて異なるDAR種およびその質を同定することを我々に実現可能にした。
【0124】
10mg/ml Adcetris(登録商標)負荷でのクロマトグラフ実験例が、図4に示されており、そこでは、UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。画分は集められ、および分析的HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)HPLCを使用して分析され、および、定量面積を使用して異なるDARの量が算出された(図4)。
【0125】
図5は、分析HPLCカラム上の線形溶出勾配の間の抗体薬物コンジュゲート種の分離を解説する。5つの連続的な溶出プールがUVシグナルトレースにおいて同定され、以下の5つの異なる抗体薬物コンジュゲート種を表した:ピーク1は、薬物なしの抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク2は、単一の抗体分子に2つの薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク3は、単一の抗体分子に4つの薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク4は、抗体薬物コンジュゲート種の混合物を表し、ピーク5は、単一の抗体分子に6つの薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表す。
【0126】
同定された抗体薬物コンジュゲート種は、それらの平均疎水度が異なり、ある1のものがより親水性(例として、左側)~疎水性(例として、右側)である。
集められた画分の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した分析的評価が、図6に表示されており、3つの得られたピークがDAR種の分離、つまり、第1のピークは主としてDAR2およびDAR6種(例として、溶出最大値が98mlにある)、第2のピークは主としてDAR4種(例として、溶出最大値が104mlにある)、および、第3のもの-DAR6種(例として、溶出最大値が125mlにある)、であることを示す。
【0127】
図6に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、異なるDARでの分離/濃縮が可能である。図1の第1のピークにおいて、DAR2の純度は40%まで増大した(開始レベルDAR2 24%)。第2のピークにおいて、DAR4の純度は65%まで増大した(開始レベル22%)。第3のピークにおいて、DAR6の純度は95%まで増大した(開始レベル37%)。
【0128】
3.
この実験において、例1に従って調製したイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Adcetris(登録商標)のADC種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と300mM NaClでプレ平衡化した(例として、24mS/cm)。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、凍結乾燥Adcetris(登録商標)試料を、1mg/ml濃度に至るまで溶解させた。
【0129】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して30mg Adcetris(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、@150cm/hのバッファー速度で行った。30mg/ml Adcetris(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと300mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのAdcetris(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0130】
試料溶出液を分画し、得られた画分を、DAR種同定のための2つの異なる方法を使用したラインにつき評価した。第1に選んだ方法は、Thermo Fisher Scientificからの4.6×100mm寸法のmAbPac HIC-Butylカラムを使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーであった。分画された試料のクロマトグラフ分離は、各々の種に対する異なる溶出帯(例として、DAR0種の溶出は7~9分の間、DAR2種の溶出は10~14分の間、DAR4種の溶出は15~18分の間およびDAR6種の溶出は19~22分の間であった)に基づいて異なるDAR種およびその質を同定することを我々に実現可能にした。
【0131】
第2に選んだ方法は、異なるDAR種がそれらの質量およびイオン化比に基づいて分離される質量分析法であった。この方法を使用して、定量的ではないが、定性的な試料評価が、DAR種の異なるイオン化(例として、より高いDAR種がより低い程度までイオン化する傾向がある)に起因して可能である。30mg/ml Adcetris(登録商標)負荷でのクロマトグラフ実験例が、図7に示されており、そこでは、UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0132】
集められた画分の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した分析的評価が、図8に表示されており、3つの得られたピークがDAR種の分離、つまり、第1のピークは主としてDAR2種(例として、溶出最大値@110ml)、第2のピークは主としてDAR4種(例として、溶出最大値@125ml)、および、第3のもの-DAR6種(例として、溶出最大値@140ml)、であることを示す。
【0133】
図8に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、異なるDARでの分離/濃縮が可能である。図7の第1のピークにおいて、DAR2の純度は55%まで増大した(開始レベル28%)。第2のピークにおいて、DAR4の純度は81%まで増大した(開始レベル29%)。第3のピークにおいて、DAR6の純度は87%まで増大した(開始レベル26%)。選択された試料画分を、質量分析を使用してさらに評価したことで、DAR種分離の質を評価した。図9~12に示された結果は、各々の得られた画分が、同定されたDAR種を含有していたということを示す。
【0134】
図9は、DAR0~DAR4種の範囲にわたるDAR種の分布を示した、Adcetris(登録商標)試料についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。DAR6種は、低いイオン化と、より低いDAR種の過負荷な方法とに起因して検出不可能である。
図10は、第1の溶出ピークの最大を表す溶出画分5A7についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、他のDAR種の明らかな存在なしに、DAR2種のものである。
【0135】
図11は、第2の溶出ピークの最大を表す溶出画分5B4についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、他のDAR種の明らかな存在なしに、DAR4種のものである。
図12は、第3の溶出ピークの最大を表す溶出画分5B11についてのデコンボリューションされたマススペクトルを示す。得られた分子量は、DAR4種およびDAR6種のものである。信号強度は定量的ではない。
【0136】
4.
この実験において、例1に従って調製したイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Adcetris(登録商標)のADC種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と300mM NaClでプレ平衡化した(例として、24mS/cm)。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、凍結乾燥Adcetris(登録商標)試料を、1mg/ml濃度に至るまで溶解させた。
【0137】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して60mg Adcetris(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、@150cm/hのバッファー速度で行った。60mg/ml Adcetris(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと300mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのAdcetris(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0138】
試料溶出液を分画し、得られた画分を、DAR種同定のための2つの異なる方法を使用したラインにつき評価した。第1に選んだ方法は、Thermo Fisher Scientificからの4.6×100mm寸法のmAbPac HIC-Butylカラムを使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーであった。分画された試料のクロマトグラフ分離は、各々の種に対する異なる溶出帯(例として、DAR0種の溶出は7~9分の間、DAR2種の溶出は10~14分の間、DAR4種の溶出は15~18分の間およびDAR6種の溶出は19~22分の間であった)に基づいて異なるDAR種およびその質を同定することを我々に実現可能にした。60mg/ml Adcetris(登録商標)負荷でのクロマトグラフ実験例が、図13に示されており、そこには、UV吸着シグナルトレースが実線で、pHシグナルトレースが破線で表されている。
【0139】
集められた画分の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した分析的評価が、図14に表示されており、3つの得られたピークがDAR種の分離、つまり、第1のピークは主としてDAR2種(例として、溶出最大値@188ml)、第2のピークは主としてDAR4種(例として、溶出最大値@205ml)、および、第3のもの-DAR6種(例として、溶出最大値@230ml)、であることを示す。
【0140】
驚くべきことに、60mg/ml負荷においてもまたDAR種の分離が可能であり、49.66%のDAR2種を含有する画分3B4に見られるとおり、精製されたDAR2種が得られる。そのうえ、画分3C2は、DAR4種を主として含有し、これは83.02%であり、および画分3C12は、DAR6種を主として含有し、これは83.12%である。この結果は、すべてのクロマトグラフステップを合わせて97.37%の回収率内で得られた。
【0141】
5.
この実験において、市販のCapto(商標) MMC Impresクロマトグラフ樹脂を、市販の薬物Adcetris(登録商標)のADC種を分離するその能力について評価した。この混合モードの材料もまた、弱カチオン交換基および疎水基を持っており、ADC種の分離に好適であったといえる。Capto(商標) MMC Impres材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。Capto(商標) MMC Impres材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と300mM NaClでプレ平衡化した(例として、24mS/cm)。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、凍結乾燥Adcetris(登録商標)試料を、1mg/ml濃度に至るまで溶解させた。
【0142】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して30mg Adcetris(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、@150cm/hのバッファー速度で行った。30mg/ml Adcetris(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと300mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのAdcetris(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0143】
試料溶出液を分画し、得られた画分を、DAR種同定のための2つの異なる方法を使用したラインにつき評価した。第1に選んだ方法は、Thermo Fisher Scientificからの4.6×100mm寸法のmAbPac HIC-Butylカラムを使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーであった。分画された試料のクロマトグラフ分離は、各々の種に対する異なる溶出帯(例として、DAR0種の溶出は7~9分の間、DAR2種の溶出は10~14分の間、DAR4種の溶出は15~18分の間およびDAR6種の溶出は19~22分の間であった)に基づいて異なるDAR種およびその質を同定することを我々に実現可能にした。30mg/ml Adcetris(登録商標)負荷でのクロマトグラフ実験例が、図15に示されており、そこには、UV吸着シグナルトレースが実線で、pHシグナルトレースが破線で表されている。
【0144】
集められた画分の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した分析的評価が、図16に表示されており、選択されたCapto(商標) MMC Impres樹脂はADC試料の30mgすべてを結合することができず、分離は効率的でなかったということを示している。個々のDAR種について得られた最大の純度は、DAR2について52.92%、DAR4について75.32%、およびDAR6について72.74%までの範囲にわたっていた。比較として、同条件にて革新的なイオン交換樹脂上で得られた純度は以下である:DAR2 - 55.27%、DAR4 - 81.24%およびDAR6 - 86.89%。加えて、Capto MMC Impres樹脂を使用しての回収率は88.38%であった。
【0145】
6.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.0889M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.054M NaCl)を調製した。
【0146】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図17)。
【0147】
表1.10mg ADC/ml CV負荷および50mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表1】
【0148】
7.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.1389M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.104M NaCl)を調製した。
【0149】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図18)。
【0150】
表2.10mg ADC/ml CV負荷および100mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表2】
【0151】
8.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.1889M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.154M NaCl)を調製した。
【0152】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図19)。
【0153】
表3.10mg ADC/ml CV負荷および150mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表3】
【0154】
9.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.2389M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.204M NaCl)を調製した。
【0155】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図20)。
【0156】
表4.10mg ADC/ml CV負荷および200mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表4】
【0157】
10.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.3389M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.304M NaCl)を調製した。
【0158】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図21)。
【0159】
表5.10mg ADC/ml CV負荷および300mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表5】
【0160】
11.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.3889M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.354M NaCl)を調製した。
【0161】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図22)。
【0162】
表6.10mg ADC/ml CV負荷および350mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ピーク1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表6】
【0163】
12.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Adcetris(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.3389M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.304M NaCl)を調製した。
【0164】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0.491ml/分にて22% B、30% Bおよび36% BでのpHステップを使用して行った(図23)。
【0165】
表7.ステップ様式における10mg ADC/ml CV負荷および300mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ステップ1~3)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表7】
【0166】
13.
この実験において、革新的なイオン交換材料を、市販の薬物Kadcyla(登録商標)のADC種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と300mM NaClでプレ平衡化した(例として、24mS/cm)。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、凍結乾燥Kadcyla(登録商標)試料を、1mg/ml濃度に至るまで溶解させた。
【0167】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して30mg Kadcyla(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、@150cm/hのバッファー速度で行った。30mg/ml Kadcyla(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと300mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、グリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのKadcyla(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0168】
試料溶出液を分画し、得られた画分を、DAR種同定のための2つの異なる方法を使用したラインにつき評価した。第1に選んだ方法は、Thermo Fisher Scientificからの4.6×100mm寸法のmAbPac HIC-Butylカラムを使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーであった。分画された試料のクロマトグラフ分離は、各々の種に対する異なる溶出帯に基づいて異なるDAR種およびその質を同定することを我々に実現可能にした。
【0169】
第2に選んだ方法は、異なるDAR種がそれらの質量およびイオン化比に基づいて分離される質量分析法であった。この方法を使用して、定量的ではないが、定性的な試料評価が、DAR種の異なるイオン化(例として、より高いDAR種がより低い程度までイオン化する傾向がある)に起因して可能である。30mg/ml Kadcyla(登録商標)負荷でのクロマトグラフ実験例が、図24に示されており、そこには、そこには、UV吸着シグナルトレースが実線で、pHシグナルトレースが破線で表されている。
【0170】
画分は集められ、および分析的HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)HPLCを使用して分析され、および、定量面積を使用して異なるDARの量が算出された。図25は、分析HPLCカラム上の線形溶出勾配の間の抗体薬物コンジュゲート種の分離を解説する。
【0171】
5つの連続的な溶出プールがUVシグナルトレースにおいて同定され、以下の5つの異なる抗体薬物コンジュゲート種を表した:ピーク1は、薬物なしの抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク2は、単一の抗体分子に1の薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク3は、単一の抗体分子に2つの薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク4は、単一の抗体分子に3つの薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表し、ピーク5は、単一の抗体分子に>4の薬物分子がコンジュゲートした抗体薬物コンジュゲート種を表す。同定された抗体薬物コンジュゲート種は、それらの平均疎水度が異なり、ある1のものがより親水性(例として、左側)~疎水性(例として、右側)である。
【0172】
集められた画分の疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した分析的評価が、図26に表示されており、選択された革新的なイオン交換樹脂はより低いDAR種をより高いものから分離することが可能であったということを示している。
選択された試料画分を、質量分析を使用してさらに評価したことで、DAR種分離の質を評価した。図27~29に示された結果は、各々の得られた画分が、同定されたDAR種を含有していたということを示す。
【0173】
図27図27は、DAR0~DAR7種の範囲にわたるDAR種の分布を示した、Kadcyla(商標)試料についてのデコンボリューションされたマススペクトル。
図28.より低いDAR種の分布を示した、溶出画分3A4の試料についてのデコンボリューションされたマススペクトル。
図29.より高いDAR種の分布を示した、溶出画分3B12の試料についてのデコンボリューションされたマススペクトル。
【0174】
14.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Kadcyla(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75およびおよそ28mS/cmの導電率の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.2889M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5およびおよそ27mS/cmの導電率の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.254M NaCl)を調製した。
【0175】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液22.52mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図30)。
図31に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用して、異なるDARでの分離/濃縮が可能である。>DAR4の純度は96%まで増大した(開始レベル68%)。
【0176】
15.
この実験において、Capto(商標) MMC ImpResクロマトグラフ樹脂を、ADC Kadcyla(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75およびおよそ28mS/cmの導電率の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.2889M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5およびおよそ27mS/cmの導電率の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.254M NaCl)を調製した。
【0177】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液11.26mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0~100%のバッファーBで120CVにおいて0.491ml/分でpH勾配溶離を使用して行った(図32)。
図32に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用して、異なるDARでの分離/濃縮が可能である。>DAR4の純度は>90%まで増大した(開始レベル72%)。
【0178】
16.
この実験において、分離マトリックスを、ADC Kadcyla(登録商標)の異なるDAR(薬物抗体比)を分離するその能力について評価した。以下の実験のために、樹脂を、5mm径100mm長のカラム中に20%エタノール150mM NaCl溶液を使用して充填した。
以下の2つのバッファー、ローディングバッファーであるバッファーA(例として、pH4.75の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.0111M NaOHおよび0.4389M NaCl)、および、Bバッファー(例として、pH8.5の、0.00796M クエン酸、0.009068M リン酸二水素ナトリウム、0.021543M グリシン、0.010668M TRIS、0.007666M コハク酸塩、0.046M NaOHおよび0.404M NaCl)を調製した。
【0179】
充填されたカラムを、少なくとも10カラム体積分のバッファーAを使用して0.491ml/分で平衡化させた。凍結乾燥処方されたADCを、5mg/mlの濃度までバッファーA中に溶解させた。得られた溶液3.93mlを、平衡化されたカラム上へ0.491ml/分で直接負荷させた。負荷後に、平衡化溶液を使用して10CVでカラムを洗浄した。結合したADCの溶出を、0.491ml/分にて5% Bおよび40% BでのpHステップを使用して行った(図34)。
【0180】
表8.ステップ様式における10mg ADC/ml CV負荷および400mM NaClでの負荷されたADC(負荷)を包含する、溶出画分(ステップ1~2)の定量面積で表示される試料画分特性評価の分析結果。
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34