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特許7590471単位スタックセル構造体及びそれを含む全固体2次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】単位スタックセル構造体及びそれを含む全固体2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241119BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/587
H01M4/38 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023007480
(22)【出願日】2023-01-20
(65)【公開番号】P2023106356
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0008687
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 益▲ファン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 泰貞
(72)【発明者】
【氏名】朴 晋煥
(72)【発明者】
【氏名】崔 復圭
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-002495(JP,A)
【文献】特開2018-125215(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189007(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025557(WO,A1)
【文献】特開平08-193118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 4/587
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個積層された単位セルを含み、
前記単位セルは、正極層、固体電解質層、負極層、及び弾性層が順次に配置された積層体を含み、
前記弾性層の圧縮強度が圧縮率40~70%区間で0.28MPa以上、0.6MPa未満であり、
圧縮強度が、直径10mmの球状ジグを有する圧縮試験機を用いて0.6mm/minの圧縮速度で弾性層を40%圧縮した後、元の厚さの60%になったときの負荷を求め、下記式1:
<式1>
圧縮強度(MPa)=[40%圧縮での負荷(kgf)]/[試片の面積(m )]×0.1
を用いて算出したものである、単位スタックセル構造体。
【請求項2】
前記弾性層の40%圧縮率で圧縮強度が0.28MPa以上、0.35MPa以下である、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項3】
前記弾性層の応力緩和率が5%~20%であり、復元率が60%以上であるが、応力緩和率と復元率との和が78%~95%であり、
応力緩和率及び復元率が、前記圧縮試験機を用いて0.6mm/minの圧縮速度で弾性層を2.5kgfまで加圧した地点を初期地点とし、初期地点からさらに40μm圧縮した地点での60秒間の応力の変化を測定し、その後、40μmを復元した初期地点での応力を測定し、下記式2及び式3:
<式2>
応力緩和率(%)=(40μm圧縮後、60秒後の応力)/(40μm圧縮時の初期応力)×100
<式3>
復元率(%)=(40μm圧縮後、初期地点への復元時の応力)/(40μm圧縮時の初期応力)×100
を用いて算出したものである、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項4】
前記弾性層の応力緩和率が6.5%~15%である、請求項3に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項5】
前記弾性層の復元率が70%以上である、請求項3に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項6】
前記弾性層は、弾性材からなる圧縮パッドである、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項7】
前記弾性材は、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択された1種以上を含む、請求項6に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項8】
前記弾性層は、加圧前、最初厚さの40~90%厚さを有するように加圧された圧縮パッドである、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項9】
前記弾性層の厚さは、全固体2次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚さの200~500%範囲に設定される、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項10】
前記固体電解質層は、硫化物系固体電解質を含む、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項11】
前記硫化物系固体電解質が、LiS-P,LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素)、LiS-P-LiO,LiS-P-LiO-LiI,LiS-SiS,LiS-SiS-LiI,LiS-SiS-LiBr,LiS-SiS-LiCl,LiS-SiS-B-LiI,LiS-SiS-P-LiI,LiS-B,LiS-P-Z(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち、1つ)、LiS-GeS,LiS-SiS-LiMO(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち、1つ)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2),Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2),及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である、請求項10に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項12】
前記硫化物系固体電解質は、LiPSCl,LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型硫化物系固体電解質である、請求項10に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項13】
前記負極層は、負極活物質及びバインダを含む負極活物質層を含み、前記負極活物質は、粒子状を有し、前記負極活物質の平均粒径が4μm以下である、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項14】
前記負極活物質が炭素系負極活物質及び金属または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含み、前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素を含み、前記金属または半金属負極活物質が金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項13に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項15】
前記負極活物質が非晶質炭素からなる第1粒子及び金属または半金属からなる第2粒子の混合物を含み、前記第2粒子の含量は、前記混合物の総重量を基準に8~60重量%である、請求項13に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項16】
前記単位スタックセル構造体は、正極集電体を中心に両面に1対の前記単位セルが対称に配置されたバイセル(bi-cell)が複数枚積層された構造を有する、請求項1に記載の単位スタックセル構造体。
【請求項17】
複数個積層された請求項1~16のいずれか1項に記載の単位スタックセル構造体を含み、積層された前記単位スタックセル構造体がバイポーラで連結されている、全固体2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位スタックセル構造体及びそれを含む全固体2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求によってエネルギー密度と安定性の高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器分野だけではなく、自動車分野でも実用化されている。特に、自動車分野においては、生命に係わるので、安全が重要視されている。
【0003】
現在、販売されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含み、電解液が用いられているので、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。これについて、電解液の代わりに、固体電解質を用いた全固体2次電池が提案されている。全固体2次電池は、可燃性有機溶媒を使用せず、短絡が発生しても、火災や爆発の発生可能性を大きく減らすことができる。したがって、このような全固体2次電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べて、大きく安全性を高めることができる。
【0004】
固体電解質、例えば、硫化物系固体電解質を用いた全固体2次電池は、固体電解質の性質上、大気に露出させた状態で使用できず、大気から遮断する必要がある。そのために、ラミネートフィルムや剛性を有する材料を用いた外装体に全固体2次電池を注入して製造することで、全固体2次電池を大気から遮断することができる。
【0005】
しかし、全固体2次電池の積層剤を外装体に注入するか、積層後、ラミネートフィルムを用いて圧縮するとき、または、全固体2次電池を加圧するとき、固体電解質に応力が伝達されてクラックが発生し、ショートが発生しうる。また、加圧後、応力が蓄積されている状態や充放電環境で負極の厚さが変化するが、この際、固体電解質のクラックが発生してショートが発生しうる。
【0006】
特に、全固体2次電池の放電時に外部から均一に加圧されていない場合には、リチウムイオンの移動速度が低下し、放電効率が低くなり、局所的に加圧された場合には、加圧された部分にリチウムイオンが移動し、放電効率が低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、充放電によって負極の厚さが変動する場合にも、クーロン効率が高い単位スタックセル構造体を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記単位スタックセル構造体を含む全固体2次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によって、複数個積層された単位セルを含み、前記単位セルは、正極層;固体電解質層;負極層;及び弾性層;が順次に配置された積層体を含み、前記弾性層の圧縮強度が0.28MPa以上、0.6MPa未満である単位スタックセル構造体が提供される。
【0010】
他の一側面によって、複数個積層された前記単位スタックセル構造体を含み、積層された前記単位スタックセル構造体がバイポーラで連結されている全固体2次電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
一側面による前記単位スタックセル構造体は、それを含む全固体2次電池の加圧時に固体電解質に加えられる応力を分散して均一に加圧されるようにし、充放電条件において、優秀な復元力により、放電時に、負極と固体電解質との接触面を均一に加圧して放電効率を高めることができる。また、充放電によって負極活物質層の厚さが変わった場合にも、クーロン効率の高い全固体2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施例による単位スタックセル構造体が含む単位セルの断面模式図である。
図2】他の実施例による単位スタックセル構造体が含む単位セルの断面模式図である。
図3】さらに他の実施例による単位スタックセル構造体が含む単位セルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明において詳細に説明する。しかし、これは、本創意的思想を特定の実施形態について限定しようとするものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物または代替物を含むと理解されねばならない。
【0014】
以下で使用される用語は、ただ特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本創意的思想を限定しようとする意図ではない。単数表現は、文脈上、明白に異なる意味ではない限り、複数の表現も含む。以下、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料またはそれらの組合物が存在するということを示すものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料またはそれらの組合物などの存在または付加可能性を予め排除するものではないということを理解せねばならない。以下で使用される「/」は、状況によって「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0015】
図面において複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大するか、縮小して示した。明細書全体を通じて類似した部分については、同じ図面符号を付した。明細書全体において層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」または「上方に」あるとするとき、それは他の部分の直上にある場合だけではなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されうるが、構成要素が用語によって限定されてはならない。用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけに使用される。
【0016】
全固体2次電池は、充放電による負極活物質層の厚さ変動によってクーロン効率が低くもなる。充電時に負極活物質層の厚さが増加した場合、固体電解質層及び負極集電体に応力が加えられ、その状態で電極反応が発生する。応力が加えられた状態は、固体電解質層と負極集電体、すなわち、固体同士の接触が良好である状態ではなくとも、イオン伝導パス及び電子伝導パスが確保されやすい。逆に、放電時に負極活物質層の厚さが減少した場合には、応力が緩和されるので、固体同士の接触状態が悪くなる。その結果、全固体2次電池は、イオン伝導パス及び電子伝導パスが中断されやすくなり、クーロン効率が低くなる。
【0017】
本発明者らは、前記問題を解決するために、負極集電体の追従性に注目した。具体的には、充放電によって負極活物質層の厚さが変わった場合にも、その変動に対する負極集電体の追従性を良好にすることで、固体同士の接触状態の悪化を抑制することを検討し、本発明に至った。
【0018】
以下、例示的な具現例による単位スタックセル構造体及びそれを含む全固体2次電池についてさらに詳細に説明する。
【0019】
[単位スタックセル構造体]
一具現例による単位スタックセル構造体は、
複数個積層された単位セルを含み、
前記単位セルは、正極層、固体電解質層、負極層、及び弾性層が順次に配置された積層体を含み、
前記弾性層の圧縮強度が0.28MPa以上、0.6MPa未満である。
【0020】
図1は、一実施例による単位スタックセル構造体が含む単位セルの構造を概略的に示したものである。
【0021】
図1を参照すれば、単位セル1は、正極層10、固体電解質層30、負極層20及び弾性層40が順次に配置された積層体を含む。正極層10は、正極集電体11及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、負極層20は、負極集電体21及び負極集電体21上に配置された負極活物質層22を含む。
【0022】
このように、前記単位スタックセル構造体が含む単位セル1は、負極層20上に圧縮強度0.28MPa以上、0.6MPa未満の弾性層40を配置することで、全固体2次電池のクーロン効率を高めうる。弾性層40を備えた単位セル1は、充放電によって負極活物質層22の厚さが変わった場合にも、負極集電体21に対する追従性を良好に改善させ、固体である固体電解質層30と負極集電体21との接触状態が悪くなることを抑制し、これにより、クーロン効率の高い全固体2次電池を提供することができる。また、負極集電体21を基準に固体電解質層30の反対側に弾性層40が配置されるので、弾性層40が負極層20のリチウムと反応して劣化されることを防止することができるという長所がある。このような側面でも、クーロン効率が高くなりうる。
【0023】
一実施例によれば、単位スタックセル構造体は、正極集電体を中心に両面に1対の単位セルが対称に配置されたバイセル(bi-cell)が複数個積層された構造を有する。バイセルは、バイポーラで連結されうる。このようなバイセルが複数個積層されるとき、隣接するバイセル間に弾性層が配置されて単位スタックセル構造体内に負極層の体積変化を吸収することができる。単位スタックセル構造体は、負極の体積変化を吸収する弾性層を含むことで、セル全体の体積変化を抑制して安定した寿命が得られ、スタック及びバイポーラ構造を同時に有し、容量及び電圧を自在に設計することができるという長所がある。
【0024】
以下、各構成要素について説明する。
[弾性層]
単位セル1の負極層20上には、圧縮強度0.28MPa以上、0.6MPa未満、圧縮強度0.28MPa以上、0.5MPa未満、圧縮強度0.28MPa以上、0.4MPa未満,または圧縮強度0.28MPa以上、0.35MPa未満の弾性層40が配置される。
【0025】
弾性層40の圧縮強度は、圧縮率40~70%区間で0.28MPa以上、0.6MPa未満であり、例えば、圧縮率40%で圧縮強度が0.28MPa以上、0.5MPa以下であり、具体的には、圧縮強度が0.28MPa以上、0.4MPa以下であり、さらに具体的には、圧縮強度が0.28MPa以上、0.35MPa以下でもある。弾性層40の圧縮強度が0.28MPaより小さければ、圧縮方向への加圧に対する剛性不足によって全固体電池構造体を組立てて加圧するとき、弾性シートが40%以上圧縮されて均一な面圧が得られず、過圧縮となり、全固体電池の充放電環境で高い圧力が伝達されてショートなどの原因になる。一方、圧縮率70%区間で弾性層40の圧縮強度が0.6MPaより大きければ、全固体電池構造体を組立てて加圧するとき、不均一な面圧によって固体と固体との界面での界面抵抗が減少できず、ショートなど寿命に悪影響を及ぼす。弾性層40の圧縮強度が0.28MPa以上、0.6MPa未満範囲で高いクーロン効率を示す全固体2次電池を提供することができる。
【0026】
一実施例によれば、弾性層40の応力緩和率は、5%~20%であり、復元率が60%以上であるが、応力緩和率と復元率との和が78%~95%でもある。前記範囲においてセル積層体加圧時に固体電解質に加えられる応力を分散させて均一に加圧し、充放電条件で優秀な復元力で、放電時に、負極と固体電解質との接触面を均一に加圧して放電効率を高め、充電環境で負極の厚さ増加によって圧縮される高応力緩和型弾性層を提供することができる。
【0027】
弾性層40の応力緩和率は、5%~20%であり、例えば、6.5%~15%でもある。前記範囲で全固体2次電池の加圧及び充放電による厚さ変動にも、応力を分散させて均一な加圧がさらに容易にもなる。弾性層40の復元率は、60%以上であり、例えば、70%以上、または80%以上でもある。前記範囲において圧縮方向に優秀な復元力を提供することができる。
【0028】
但し、応力緩和率と復元率との和は、78%~95%である。応力緩和率と復元率との和が78%未満であるか、95%超過であれば、充放電中にショートが発生しやすく、放電効率が良くなく、サイクル特性が顕著に低下してしまう恐れがある。
【0029】
弾性層40のモデュラスは、45℃、1rad/sで0.01MPa以上5MPa以下が望ましく、弾性層40は、単層または多層構造でもある。多層構造の場合、互いに異なるモデュラスを有する異なる材料を有することができる。
【0030】
弾性層の構成材料は、上述した条件の圧縮強度を満たし、応力緩和特性を有するものであれば、特に限定されない。
【0031】
一実施例によれば、前記弾性層40は、弾性材からなる圧縮パッドでもある。
弾性材としては、例えば、ポリウレタン、天然ゴム、スパンデックス、ブチルゴム(Isobutylene Isoprene Rubber, IIR)、フルオロエラストマー、エラストマー、エチレンプロピレンゴム(EPR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン、エラスチン、ゴムエピクロロヒドリン、ナイロン、テルペン、イソプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ハロゲン化ブチルゴム、ネオプレン及びこれらの共重合体からなる群から選択された1種以上を含むが、それらに限定されるものではなく、弾性を有する材質であれば、制限なしに使用されうる。
【0032】
例えば、弾性層40の弾性材としては、シリコンゴム、セルロース繊維、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0033】
弾性層40は、設置時の厚さが、加圧前の最初厚さの40~90%厚さを有するように加圧されたものでもある。具体例として、弾性層40の設置時の厚さは、加圧前の最初厚さの50~85%、さらに具体的には、60~80%、または65~75%を有するように加圧されたものでもある。前記範囲で負極の体積変化を効果的に吸収して全固体電池の円滑な充放電が可能である。
【0034】
弾性層40の厚さは、全固体2次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚さの200~1000%範囲で決定されうる。全固体2次電池で負極のリチウム析出層の厚さは、正極の電流密度に比例して決定されるが、すなわち、正極から負極に移動するリチウム量によって負極のリチウム析出層厚が決定され、これにより、負極の体積変化が起こる。したがって、このような負極の体積変化を吸収するように弾性層の厚さを決定することができる。したがって、弾性層40の厚さを、全固体電池充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚さの200~1000%範囲に設定することで、負極の体積変化を効果的に吸収することができる。例えば、弾性層40の厚さは、全固体電池充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚さの250~800%範囲、具体的に、例えば300~600%範囲でもある。
【0035】
弾性層40の厚さは、例えば50μm~300μm範囲に設定され、例えば、100μm~150μm、200μm~300μm、または50μm~100μmのように、場合によって選択的に設定可能である。
【0036】
このように負極層20上に弾性層40を設置することで、負極におけるリチウム堆積(Li deposition)反応による体積変化を吸収することができ、セル全体の体積変化を抑制して安定した寿命が得られる。
【0037】
[正極層]
正極層10は、正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含む。
【0038】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0039】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、異なってもよい。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0040】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)することができる正極活物質である。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)などのリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄、または酸化バナジウム(vanadium oxide)などであるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野で正極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質は、それぞれ単独または2種以上の混合物である。
【0041】
正極活物質は、例えば、Li1-b(前記式において、0.90≦a≦1,及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記式において、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1である);LiNiCoCMnGeO(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうち、いずれか1つで表現される化合物である。このような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり;Fは、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。このような化合物表面にコーティング層が付け加えられた化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付け加えられた化合物との混合物の使用も可能である。このような化合物の表面に付け加えられるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、または、コーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。このようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物である。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野に従事する者によく理解されうる内容なので、詳細な説明は省略する。
【0042】
正極活物質は、例えば、上述したリチウム遷移金属酸化物のうち、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に酸素原子層と金属原子層が交互に規則的に配列し、これにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(face centered cubic lattice, fcc)が互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。このような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)などの三元系リチウム遷移金属酸化物である。正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体2次電池1のエネルギー(energy)密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0043】
正極活物質は、上述したように被覆層によっても覆われる。被覆層としては、全固体2次電池の正極活物質の被覆層と公知されたものであれば、いずれでも使用可能である。被覆層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などである。
【0044】
正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMなどの三元系リチウム遷移金属酸化物であってニッケル(Ni)を含む場合、全固体2次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態で正極活物質の金属溶出の減少が可能である。結果として、全固体2次電池1の充電状態でのサイクル(cycle)特性が向上する。
【0045】
正極活物質の形状は、例えば、真球、楕円球状などの粒子形状である。正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体2次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極10の正極活物質の含量も、特に制限されず、従来の全固体2次電池の正極に適用可能な範囲である。
【0046】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含む。正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一であるか、異なってもよい。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照すればよい。
【0047】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べてD50平均粒径が小さい。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下でもある。
【0048】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含む。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylen)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などである。
【0049】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は、導電材を含む。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素繊維、金属粉末などである。
【0050】
[正極層:その他添加剤]
正極層10は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性助剤などの添加剤をさらに含む。
【0051】
正極層10が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性助剤としては、一般的に全固体2次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0052】
[固体電解質層]
図1に示されたように、正極層10及び負極層20の間に固体電解質層30が配置され、固体電解質層30は、硫化物系固体電解質を含みうる。
【0053】
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P,LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素)、LiS-P-LiO,LiS-P-LiO-LiI,LiS-SiS,LiS-SiS-LiI,LiS-SiS-LiBr,LiS-SiS-LiCl,LiS-SiS-B-LiI,LiS-SiS-P-LiI,LiS-B,LiS-P-Z(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち、1つ)、LiS-GeS,LiS-SiS-LiPO,LiS-SiS-LiMO(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち、1つ)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pなどの出発原料を溶融急冷法や機械的ミーリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、このような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質や、結晶質や、これらが混合された状態でもある。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含む。例えば、固体電解質は、LiS-Pを含む材料でもある。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むものを用いる場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50~90:10程度の範囲である。
【0054】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2),Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2),及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。特に、硫化物系固体電解質は、LiPSCl,LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0055】
アルジロダイト型の固体電解質の密度は、1.5~2.0g/ccである。アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体2次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
前記固体電解質の弾性係数は、例えば、15~35GPaである。
【0056】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含む。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と負極活物質層22とが含むバインダと同一であるか、異なってもよい。
【0057】
[負極層]
[負極層:負極活物質]
負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、粒子状を有する。粒子状を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。粒子状を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm以下、10nm~3μm以下、10nm~2μm以下、10nm~1μm以下、または、10nm~900nm以下である。負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易でもある。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。
【0058】
負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含む。
【0059】
炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black)(CB)、アセチレンブラック(acetylene black)(AB)、ファーネスブラック(furnace black)(FB)、ケッチェンブラック(ketjen black)(KB)、グラフェン(graphene)などであるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野において非晶質炭素と分類されるものであれば、いずれも使用可能である。非晶質炭素は、結晶性を有さないか、結晶性の非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0060】
金属または半金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または半金属負極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0061】
負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち、一種の負極活物質を含むか、複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。それと異なって、負極活物質層22は、非晶質炭素と金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または、4:1ないし2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されず、要求される全固体2次電池1の特性によって選択される。負極活物質が、そのような組成を有することにより、全固体2次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0062】
負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子及び金属または半金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または半金属は、例えば、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。半金属は、言い換えれば、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に8~60重量%、10~50重量%、15~40重量%、または20~30重量%である。第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体2次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0063】
[負極層:バインダ]
負極活物質層22が含むバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylen)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。バインダは、単独または、複数の互いに異なるバインダで構成されうる。
【0064】
負極活物質層22がバインダを含むことにより、負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程で負極活物質層22の体積変化及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、負極活物質層22のクラックが抑制される。例えば、負極活物質層22がバインダを含まない場合、負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離されうる。負極集電体21から負極活物質層22が離脱することにより、負極集電体21が露出された部分で、負極集電体21が固体電解質層30と接触することにより、短絡の発生可能性が増加する。負極活物質層22は、例えば、負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥して作製される。バインダを負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの閉塞(例えば、負極活物質の凝集体による閉塞)を抑制することができる。
【0065】
[負極層:その他添加剤]
負極活物質層22は、従来の全固体2次電池に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性助剤などをさらに含みうる。
【0066】
[負極層構造]
負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または、3μm~7μmである。第1負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが負極活物質層を崩壊させて全固体2次電池のサイクル特性が向上し難い。負極活物質層の厚さが過度に増加すれば、全固体2次電池のエネルギー密度が低下し、負極活物質層による全固体2次電池の内部抵抗が増加して全固体2次電池のサイクル特性が向上し難い。
【0067】
負極活物質層の厚さが減少すれば、例えば、第1負極活物質層の充電容量も減少する。負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、0.1%~5%、または0.1%~2%である。負極活物質層22の充電容量が過度に少なければ、負極活物質層22の厚さが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程で負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが負極活物質層22を崩壊させて全固体2次電池のサイクル特性が向上し難い。負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体2次電池のエネルギー密度が低下し、負極活物質層22による全固体2次電池の内部抵抗が増加して全固体2次電池のサイクル特性が向上し難い。
【0068】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち、正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総合が正極活物質層12の充電容量である。負極活物質層22の充電容量も同様の方法で計算される。すなわち、負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に負極活物質層22のうち、負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総合が負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を用いて推定された容量である。全固体半電池(half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と負極活物質層22との充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で割れば、充電容量密度が得られる。それと異なって、正極活物質層12と負極活物質層22の充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0069】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料で構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野で電極集電体として使用するものであれば、いずれも使用可能である。負極集電体の厚さは、1~20μm、例えば、5~15μm、例えば、7~10μmである。
【0070】
負極集電体21は、上述した金属のうち、1種で構成されるか、2種以上の金属の合金または被覆材料で構成されうる。負極集電体21は、例えば、板状または箔状(foil)である。
【0071】
図2を参照すれば、単位スタックセル構造体の単位セル1は、例えば、負極集電体21上にリチウムと合金を形成する元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と負極活物質層22との間に配置される。薄膜24は、例えば、リチウムと合金とを形成する元素を含む。リチウムと合金とを形成する元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスなどであるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金とを形成する元素であれば、いずれも使用可能である。薄膜24は、これらの金属のうち、1つで構成されるか、複数種の金属合金で構成される。薄膜24が負極集電体21上に配置されることにより、例えば、薄膜24と負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層(図示せず)の析出形態がさらに平坦化され、全固体2次電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0072】
薄膜24の厚さは、例えば、1nm~800nm、10nm~700nm、50nm~600nm、または100nm~500nmである。薄膜24の厚さが1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難い。薄膜24の厚さが過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵して負極層でリチウムの析出量が減少して全固体電池のエネルギー密度が低下されて、全固体2次電池のサイクル特性が低下されうる。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置されうるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜24を形成可能な方法であれば、いずれも使用可能である。
【0073】
[負極層:第2負極活物質層]
図3を参照すれば、単位スタックセル構造体の単位セル1aを含む全固体2次電池は、負極集電体21と負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含む。第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層なので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されず、当該技術分野でリチウム合金として使用するものであれば、いずれも使用可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金中の1つまたはリチウムからなるか、複数種の合金からなる。
【0074】
第2負極活物質層23の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm~1000μm、1μm~500μm、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または1μm~50μmである。第2負極活物質層23の厚さが過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行し難い。第2負極活物質層23の厚さが過度に厚ければ、全固体2次電池の質量及び体積が増加し、サイクル特性がむしろ低下する可能性がある。第2負極活物質層23は、例えば、このような範囲の厚さを有する金属ホイルでもある。
【0075】
単位スタックセル構造体において、第2負極活物質層23は、例えば、単位スタックセル構造体の組立前に負極集電体21と負極活物質層22との間に配置されるか、単位スタックセル構造体の組立後に全固体2次電池の充電によって負極集電体21と負極活物質層22との間に析出されうる。
【0076】
単位スタックセル構造体の組立前に負極集電体21と負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体2次電池のサイクル特性がさらに向上する。例えば、単位スタックセル構造体の組立前に負極集電体21と負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置される。
【0077】
単位スタックセル構造体の組立後に充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、単位スタックセル構造体の組立時に第2負極活物質層23を含まないので、全固体2次電池のエネルギー密度が増加する。例えば、全固体2次電池の充電時、負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、負極活物質層22を過充電する。充電初期には、負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。すなわち、負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動されたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。負極活物質層22の容量を超過して充電すれば、例えば、負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。このような結果は、例えば、負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質で構成されることで得られる。放電時には、負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10側に移動する。したがって、全固体2次電池において、リチウムを負極活物質として使用可能である。また、負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するために、第2負極活物質層23、すなわち、金属層の保護層の役割をすると共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体2次電池の短絡及び容量低下を抑制し、結果的に、全固体2次電池のサイクル特性を向上させる。また、単位スタックセル構造体の組立後に全固体2次電池の充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、負極集電体21と前記負極活物質層22、及びこれらの間の領域は、例えば、全固体2次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0078】
[全固体2次電池]
一具現例による全固体2次電池は、複数個積層された単位スタックセル構造体を含み、積層された単位スタックセル構造体がバイポーラで連結されうる。全固体2次電池は、単位スタックセル構造体をバイポーラで連結させることにより、所望の電圧設計が可能であり、単位セル内に弾性層40の導入によってセル全体の体積変化を抑制することができる。
【0079】
前記全固体2次電池は、中大型電池または電力保存装置(energy storage system: ESS)に適用可能である。
【0080】
以下の実施例及び比較例を通じて本創意的概念がさらに詳細に説明される。但し、実施例は、本創意的概念を例示するためのものであって、これらだけで本創意的概念の範囲が限定されるものではない。
【0081】
(全固体2次電池製造)
実施例1
(弾性層製造)
樹脂成分としてアクリル酸n-ブチル(以下「BA」とも表記する)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)10重量部、イソボルニルアクリレート20重量部を反応器中で混合して樹脂混合物を調製した。該樹脂混合物に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、溶剤として酢酸エチル150重量部を混合し、撹拌しながら75℃に温度を上昇させて重合反応を実施し、さらに酢酸エチル10重量部にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を溶解させた重合触媒溶液を順に添加しながら、同じ温度で8時間にわたって重合を完了させた。重合完了後、希釈溶剤(酢酸エチル)を追加することで、重量平均分子量100万のカルボキシル基未含有アクリル系共重合体を含む固形分35重量%の溶液を製造した。
【0082】
前記製造された重量平均分子量100万のアクリレート共重合体の溶液100重量部を基準に気泡剤としてエクスパンセル551 DU 40(Akzo Nobel Chemicals) 7重量部及びイソシアネート架橋剤(XDI(Xylylene Diisocyanate)、商品名「タケネートD110N」、三井化学ポリウレタン社製品、分子量698、3官能性、固形分濃度75重量%)0.2重量部を、前記アクリレート共重合体の溶液に混合し、混合結果物をPET離型フィルムにコーティング後、150℃で5分間乾燥して厚さ300μmのシート状の弾性層を製造した。
【0083】
(負極層製造)
負極集電体として厚さ10μmのNi箔を準備した。また、負極活物質として一次粒径が30nm程度であるカーボンブラック(CB)及び平均粒子直径が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0084】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子を3:1の重量比で混合した混合粉末4gを容器に入れ、そこにPVDFバインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたNMP溶液4gを追加して混合溶液を準備した。次いで、この混合溶液に、NMPを少しずつ添加しながら、混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーをSUSシートにバーコータ(bar coater)を用いて塗布し、空気中、80℃で10分間乾燥させた。これにより、得られた積層体を40℃で10時間真空乾燥した。乾燥した積層体を300MPaの圧力で10msの間、ロール加圧(roll press)して積層体の負極活物質層表面を平坦化させた。以上の工程によって負極層を作製した。負極層が含む負極活物質層の厚さは、約7μmであった。
【0085】
(正極層製造)
正極活物質としてLiO-ZrO(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造した。固体電解質としてアルジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLiPSCl(D50=0.5μm、結晶質)を準備した。バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備した。導電剤として炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。このような材料を正極活物質:固体電解質:導電剤:バインダ=84:11.5:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)溶媒と混合した混合物をシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させて正極活物質層を製造した。正極活物質層を18μm厚さのカーボンコーティングされたアルミニウムホイルからなる正極集電体上に圧着して正極層を製造した。正極層の厚さは、約105μmであった。
【0086】
(固体電解質層の製造)
アジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLiPSCl固体電解質(D50=3.0μm、結晶質)に、固体電解質の98.5重量部に対して1.5重量部のアクリル系バインダを追加して混合物を準備した。準備された混合物に酢酸オクチル(Octyl acetate)を添加しながら、撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーを不織布上にバーコータ(bar coater)を用いて塗布し、空気中で80℃温度で10分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を80℃で6時間真空乾燥した。以上の工程によって固体電解質層を製造した。
【0087】
(単位スタックセル構造体の製造)
まず、正極層の正極活物質層上に固体電解質層を接触させ、固体電解質層上に固体電解質層が接触するように負極層を配置し、圧力を加えて単位セルの基本となる積層体を2個作製した。1個の積層体の負極層上に弾性層を配置させて合紙した。次いで、前記弾性層上にさらに他の積層体の負極層が接触するようにさらに他の積層体を配置させて積層構造物を準備した。
【0088】
設けられた積層構造物をラミネートフィルムに入れて85℃でトルクレンチ基準0.5Nの圧力で30分間の間、平板加圧(plate press)処理して製造された単位スタックセル構造体を全固体2次電池とした。
【0089】
前記全固体2次電池をテストモジュールに入れて5000kgfの力で固定し、充放電評価を進めた。
【0090】
実施例2
弾性層を製造するために、まず重量平均分子量120万の無溶剤アクリレート混合樹脂を製造した。4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)(Osaka Organic Chemical)とアクリル酸-2-エチルヘキシル-(2-EHA)(LG化学)の30/70重量比で混合し、そこに光開始剤(イルガキュア651)0.01重量部を入れてUVを照射して重量平均分子量120万の無溶剤アクリレート混合樹脂を製造した。
【0091】
該無溶剤アクリレート混合樹脂100重量部基準に、光開始剤(イルガキュア651)0.5重量部、架橋剤(1,6-hexanediol diacrylate(HDDA)、シグマアルドリッチ)0.3重量部及びエクスパンセル551 DU 40(Akzo Nobel Chemicals) 6重量部を前記無溶剤アクリレート混合樹脂に混合し、混合結果物をシリコン離型処理された汎用のPETフィルムの間にコーティングし、UVを2000mj/cmで照射した。そのシートを150℃で5分間放置して551 DU 40を膨脹させて厚さ300μmのシート状の弾性層を製造した。
【0092】
このように製造された弾性層を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0093】
実施例3
弾性層を製造するために、まず重量平均分子量4000のプロピレン系ポリオール30重量部、ポリエーテル系ポリオール(三洋化成工業社製、商品名「GP-3000」、粘度(25℃)500mPa・s、官能基数3個、数水平均分子量3000)70重量部、及びイソシアネート系架橋剤(BASF、Lupranate T80)11重量部を含む混合物に窒素100cc/分を5分間投入して撹拌した後、それをPETフィルム上にコーティングして弾性シートを120~200℃に加熱してコーティング厚さ300μmのシート状の弾性層を製造した。
【0094】
このように製造された弾性層を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0095】
実施例4
アクリル系弾性シート(Youngwoo、BHF)125μmを両面におき、ウレタンシート(Ventwin、Grade2085)50μmを結合して厚さ300μmの弾性層を製造した。
【0096】
このように製造された弾性層を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0097】
実施例5
1個の積層体の負極層下に弾性層を配置させて合紙した後、前記弾性層上に他の積層体の正極層が接触するように他の積層体を配置させ、前記他の積層体の負極層上に同材質の弾性層を配置させて合紙して積層構造物を準備した。
【0098】
このように準備された積層構造物を15Nの圧力で加圧して単位スタックセル構造体を製造したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0099】
実施例6
弾性層として実施例2で使用された弾性層を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0100】
実施例7
弾性層として実施例3で使用された弾性層を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0101】
実施例8
弾性層として実施例4で使用された弾性層を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0102】
比較例1
弾性層として厚さ300μmのシリコンパッド(AS ONE, T3)を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0103】
比較例2
弾性層として厚さ300μmのPTFEシート(GORE, SG05X-J)を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0104】
比較例3
弾性層として厚さ300μmのウレタンパッド(Main Elecom、M3)を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0105】
比較例4
弾性層として厚さ300μmのアクリル粘着シート(3M、VHB)を使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0106】
比較例5
弾性層として厚さ300μmのシリコンパッド(AS ONE, T3)を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0107】
比較例2
弾性層として厚さ300μmのPTFEシート(GORE, SG05X-J)を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0108】
比較例3
弾性層として厚さ300μmのウレタンパッド(Main Elecom、M3)を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0109】
比較例4
弾性層として厚さ300μmのアクリル粘着シート(3M、VHB)を使用したことを除き、前記実施例5と同じ過程を実施して全固体2次電池を製造した。
【0110】
評価例1:弾性層の物性測定
実施例1ないし4及び比較例1ないし4で使用された弾性層の物性を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。
【0111】
(1)圧縮強度
CFD(Compression Force Deflection)40%での値であり、物理的に弾性層を40%圧縮した場合の圧縮強度を示す。直径10mmの球状ジグを有する圧縮試験機を用いて0.6mm/min(10μm/sec)の圧縮比で、試片を40%圧縮した後、元の厚さの60%になったとき、負荷を求め、下記式1を用いて算出した。
<数1>
圧縮強度(MPa)=[40%圧縮での負荷(kgf)]/[試片の面積(m)]×0.1
【0112】
(2)応力緩和率と復元率
応力緩和率は、弾性層を直径10mmの球状ジグを有する圧縮試験機を用いて0.6mm/min(10μm/sec)の圧縮速度で2.5kgfまで1次加圧した後、その地点(初期地点)から40μmをさらに圧縮した後、60秒間の応力の変化を示したものであり、下記式2を用いて算出した。復元率は、同一条件で弾性層を40μmに圧縮した後、40μm圧縮直前の初期地点への復元時の応力変化を示したものであり、下記式3を用いて算出した。
【0113】
1.10μm/sec速度で2.5kgfに到逹するまで加圧した後、40μmと、同じ速度で加圧する。
2.40μm加圧地点で60sec間の応力の変化を測定し、その変化率を応力緩和率と定義する。
3.1、2が進められた後、加圧された距離(40μm)を再び復元したとき、0μm地点で応力を測定し、初期2.5kgfとの応力の差を復元率と定義する。
【0114】
<数2>
応力緩和率(%)=(40μm圧縮後、60秒後の応力)/(40μm圧縮時の初期応力)×100
【0115】
<数3>
復元率(%)=(40μm圧縮後、初期地点への復元時の応力)/(40μm圧縮時の初期応力)×100
【0116】
【表1】
【0117】
前記表1に示されたように、実施例1ないし4で使用された弾性層の物性を測定した結果、比較例1ないし4で使用された弾性層に比べて、圧縮方向への強度が優秀であり、応力緩和特性と復元率とが全固体2次電池の緩衝材として使用するのに適したレベルの特性を有していることを確認した。
【0118】
評価例2:充放電試験
実施例1ないし8及び比較例1ないし8で製造された全固体2次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体2次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0119】
まず、実施例1ないし8及び比較例1ないし8の全固体2次電池に対して、0.1Cの電流で4.25Vに到逹するまで定電流充電後0.05Cの電流に到逹するまで定電圧充電を実施した。充電済のセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を遂行した。
【0120】
前記充放電サイクルを総300回繰り返して充放電効率及びショート発生有無を評価した。充放電効率は、300回サイクル進行後、下記数式4で表示される容量維持率で評価する。
【0121】
<数4>
容量維持率(%)=(各サイクル後の放電容量/第1サイクル後の放電容量)×100
【0122】
実施例1ないし8は、300回サイクル進行中に充放電効率90%以上を達成した。
比較例1は、50回サイクル未満でショートが発生した。
比較例2は、300回サイクルを達成したが、充放電効率が88%であった。
比較例3は、50回サイクル未満でショートが発生した。
比較例4は、50回サイクル未満でショートが発生した。
比較例5は、30回サイクル未満でショートが発生した。
比較例6は、300回サイクルを達成したが、充放電効率が88%であった。
比較例7は、50回サイクル未満でショートが発生した。
比較例8は、50回サイクル未満でショートが発生した。
【0123】
前記充放電試験を通じて、実施例1ないし8の全固体2次電池は、優秀な圧縮強度及び応力緩和特性を有する弾性シートを備えることで、充放電によるセルの体積変化にも短絡の発生なしにクーロン効率が改善されたことを確認することができる。
【0124】
以上、図面及び実施例を参照して一具現例が説明されたが、これは、一例示に過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されねばならない。
【符号の説明】
【0125】
1,1a 単位セル
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 負極活物質層
23 第2負極活物質層
24 薄膜
30 固体電解質層
40 弾性層
図1
図2
図3