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特許7590491注射デバイス用の無線エレクトロニクスアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】注射デバイス用の無線エレクトロニクスアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/178 20060101AFI20241119BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61M5/178
A61M5/31 520
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081206
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020526332の分割
【原出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2023103388
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】17306575.6
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・ディフェンバッハ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189153(WO,A1)
【文献】特表2017-531454(JP,A)
【文献】特表2012-507314(JP,A)
【文献】国際公開第2016/134137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(100)で使用するためのエレクトロニクスアセンブリ(340)であって:
プロセッサ(343)と;
薬物送達デバイス(100)の薬物容器の充填レベルを測定し、測定信号をプロセッサ(343)へ出力するように配置されたセンサ(341)と;
少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、該コンピュータ可読媒体は:
第1の時間間隔当たりの起動を表す第一の頻度でセンサ(341)を起動し、測定信号を受信することと、
受信した測定信号に基づいて、薬物容器が薬剤を収容しているかどうかを判定することと、
薬物容器が薬剤を収容していると判定されたとき、
センサ(341)の起動の頻度を、第一の頻度から、第1の時間間隔より短い第2の時間間隔当たりの起動を表す第2の頻度に変えて、第1の頻度より高い頻度で測定信号を受信することと、を含む動作をプロセッサ(343)に実行させるように動作可能な命令を記憶する、前記エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項2】
エレクトロニクスアセンブリ(340)は、薬物送達デバイス(100)内へのエレクトロニクスアセンブリ(340)の組立てによって起動されるように配置されたスイッチを含み、スイッチはエレクトロニクスアセンブリ(340)を起動する、請求項1に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項3】
第2の時間間隔は1時間未満である、請求項1または2に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項4】
第1の時間間隔は12時間を超える、請求項1~3のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項5】
センサ(341)は、栓の内側に配設されるように配置され、栓は、薬物容器へ挿入さ
れるように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項6】
エレクトロニクスアセンブリ(340)は、栓へ挿入されるように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項7】
エレクトロニクスアセンブリ(340)および/またはセンサ(341)は、栓と一体形成される、請求項5または6に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項8】
センサ(341)は、薬物容器内の栓の位置を測定することによって、薬物容器の充填レベルを測定するように構成され、動作は、栓の感知された位置に基づいて、薬物容器の充填レベルを計算することをさらに含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項9】
センサ(341)は、超音波伝送器および対応する検出器を含み、超音波伝送器は、超音波信号を薬物容器内へ放出するように構成され、対応する検出器は、薬物容器からの超音波信号の反射を受信し、測定信号をプロセッサへ出力するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項10】
動作が:
充填レベルを受信した測定信号に基づいて、薬物容器の充填レベルを判定することと;
充填レベルを、最初に感知された値として、メモリに記憶すること;
をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のエレクトロニクスアセンブリ(340)。
【請求項11】
システムであって:
ハウジングを含む薬物送達デバイス(100)と;
該薬物送達デバイスのハウジング内に収容されるように構成された薬物容器と;
該薬物容器の空洞内に配設され、薬物送達デバイスの駆動機構によって該薬物容器内へ駆動されるように構成された栓とを含み、
ここで、該栓または薬物容器は、エレクトロニクスアセンブリ(340)を含み、該エレクトロニクスアセンブリ(340)は:
プロセッサ(343)と;
薬物容器の充填レベルを測定し、測定信号をプロセッサへ出力するように配置されたセンサ(341)と;
少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、該コンピュータ可読媒体は:
第1の時間間隔当たりの起動を表す第一の頻度でセンサ(341)を起動し、測定信号を受信することと、
受信した測定信号に基づいて、薬物容器が薬剤を収容しているかどうかを判定することと、
薬物容器が薬剤を収容していると判定されたとき、
センサ(341)の起動の頻度を、第一の頻度から、第1の時間間隔より短い第2の時間間隔当たりの起動を表す第2の頻度に変えて、第1の頻度より高い頻度で測定信号を受信することとを含む動作をプロセッサ(343)に実行させるように動作可能な命令を記憶する、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、薬物送達デバイスで使用するための無線能力を有するエレクトロニクスアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による治療を必要とする様々な疾病が存在する。そのような注射は、医療従事者または患者自身によって適用することができる薬物送達デバイスを使用して実行することができる。一例として、1型および2型の糖尿病は、たとえば1日1回または数回の薬物用量の注射によって、患者自身で治療することができる。たとえば、充填済みの使い捨て薬物ペンまたは自動注射器を薬物送達デバイスとして使用することができる。別法として、再利用可能なペンまたは自動注射器を使用することもできる。再利用可能なペンまたは自動注射器では、空の薬剤カートリッジを新しい薬剤カートリッジに交換することが可能である。いずれのタイプのペンまたは自動注射器にも1組の一方向針が付属しており、これらの針は使用前に毎回交換される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、薬物送達デバイスのカートリッジ内の薬剤の充填レベルなどの薬物送達デバイスに関係する一定の特性を検出し、それらの検出した特性を移動電話、タブレット、またはコンピュータなどの外部デバイスへ使用者が見られるように無線で送信することが可能なエレクトロニクスを有する薬物送達デバイスに関する。特定の場合、エレクトロニクスは、カートリッジの栓またはストッパ内に収容される。
【0004】
代表的な概要では、エレクトロニクスアセンブリはカートリッジの栓に挿入される。エレクトロニクスアセンブリは、カートリッジの充填レベルを検出し(たとえば、栓の位置を検出することによる)、いくつかの例では、カートリッジまたはカートリッジ内の薬剤の温度を検出する。カートリッジ内の充填レベルは、患者がデバイスを使用するにつれて変動し、エレクトロニクスアセンブリは、この変化を短い時間間隔(たとえば、5分)で感知し、このレベル変化により、検出を感知した瞬間にBluetooth伝送器が起動される。その後、患者は、エレクトロニクスアセンブリに外部デバイスをペアリングまたはリンクして、測定データ(たとえば、送達済み用量)の送信を起動することが可能である。短い時間(たとえば、10分)後、カートリッジ内の充填レベルのさらなる変化が測定されず、外部デバイスがペアリングされなかった場合、Bluetooth伝送器を再びスリープモードに自動的に設定することができ、エレクトロニクスアセンブリは、次の薬物送達動作のために規則的な間隔で感知を再開する。注射が検出されるたびに、デバイスと外部デバイスとの新たな伝達が可能になる。追加の機能として、ペアリングされるとき、印刷された変数データ(すなわち、バッチまたは有効期日)またはラベルの材料コードを使用することができる。これらは、エレクトロニクスアセンブリから受信したデータが薬物送達デバイスに整合することを確認するために、カメラによって読み取ることができ、または患者が手動で入力することができる。
【0005】
代表例では、エレクトロニクスアセンブリは、エレクトロニクスアセンブリのセンサがカートリッジまたはカートリッジの充填レベルを変化させるために使用される薬物送達デバイスの駆動機構の変化(たとえば、充填動作および薬物送達動作)を検出することが有効になるように、カートリッジ内に配置され、または薬物送達デバイス内の他の場所に位置する。エレクトロニクスアセンブリは、充填レベルの変化を判定したとき、Bluetooth無線モジュールまたは類似の無線プロトコルを介してデータ交換を開始するよう
に構成されたプロセッサを含む。第1の状態で、プロセッサは、非常に低い頻度で、たとえば数日に1回、測定値を得るようにセンサに命令し、無線モジュールは停止状態にされ
る。この状態は、組立て前またはカートリッジの充填前に有効である。エレクトロニクスを含む栓がカートリッジに組み立てられた後、薬剤がカートリッジに導入されたことまたはカートリッジが薬物送達デバイス内に組み立てられたことを示す標示などの応答を測定することができる。このように信頼できる応答を検出すると、センサの起動をより高い頻度、たとえば数分に1回の測定に切り換えるようにプロセッサがトリガされる。いくつか
の例では、無線モジュールはこの時点で起動され、外部デバイスとのペアリングにより現在の測定を短期間で送り出すことが有効になる。別法として、測定結果の変化がプロセッサによって判定されるたびに無線モジュールを起動することができ、それにより無線モジュールが測定ごとではなく「新しい」測定値に対してのみ起動されるため、電力消費をさらに低減させることができる。この配置の利点は、生産後、カートリッジまたは薬物送達デバイスへの導入前に、エレクトロニクスアセンブリを外部から起動する必要がなく、エレクトロニクスアセンブリを自己完結型(たとえば、封止)アセンブリとすることが有効になることである。
【0006】
エレクトロニクスアセンブリの例は、一度だけ使用できる(たとえば、使い捨ての)薬物送達デバイスと、複数回使用できる(たとえば、再利用可能な)薬物送達デバイスとの両方で使用することができる。例示的な使い捨ての実施形態では、エレクトロニクスアセンブリが構築されてカートリッジへ挿入され、その時点で、エレクトロニクスアセンブリは、低頻度感知モードでカートリッジを感知しながら、使い捨て薬物送達デバイスの組立ての完了を示す薬剤の導入の検出を待っている。薬剤を検出すると、使い捨て薬物送達デバイスは使用準備完了状態になることができ、したがってエレクトロニクスアセンブリは、高頻度感知モードに入り、薬物送達動作の検出を待ち、薬物送達動作を検出した時点で、エレクトロニクスアセンブリは、無線モジュールを起動して、短期間にわたって外部デバイスとのペアリングを可能にする。代替実施形態では、エレクトロニクスアセンブリには最初の低頻度感知モードがなく、代わりに使い捨て薬物送達デバイスの組立てを検出して高頻度感知モードを起動するように構成された起動機構またはセンサを含む。この起動機構は、組立て中に薬物送達デバイスとの接触によってトリガされるようにエレクトロニクスアセンブリ上に配置されたスイッチとすることができる。
【0007】
再利用可能な薬物送達デバイスの例では、エレクトロニクスアセンブリが構築されて充填済みカートリッジに組み立てられ、その時点で、エレクトロニクスアセンブリは、たとえば薬物送達デバイスへの充填済みカートリッジの組立てを検出するように構成されたセンサによって、低頻度感知状態とすることができ、または電子アセンブリは、カートリッジへの薬剤を命令したとき、薬物送達デバイスへのカートリッジの命令前に、高頻度感知モードとすることができる。上記の一度だけ使用できる薬物送達デバイスの例および複数回使用できる薬物送達デバイスの例のいずれにおいても、薬物送達デバイスが使用準備完了状態になったとき、エレクトロニクスアセンブリは、センサまたは起動機構を使用して高頻度感知モードに入り、それによって次の薬物送達動作をより速く検出すること、および薬物送達動作の検出後に所与の持続時間にわたって無線モジュールをより速く起動することが有効になる。
【0008】
本開示の一定の態様では、薬物送達デバイスに無線接続性が加えられること以外にもいくつかの利点が得られる。たとえば、内部電源を有する封止エレクトロニクスアセンブリでは、内部電力の量に限界があるため、保管寿命は限られている。薬物送達デバイスが使用準備完了構成に入る前のセンサ起動を制限することによって、薬物送達デバイスまたはカートリッジへ導入する前の製造済みエレクトロニクスアセンブリの保管寿命を延ばすことができる。同様に、薬物送達動作後の無線モジュールの起動を制限することによって、薬物送達デバイスの最終製造(すなわち、使用準備完了状態)後のエレクトロニクスアセ
ンブリの保管寿命を延ばすことができる。保管寿命が延びたため、エレクトロニクスアセンブリは、カートリッジまたは薬物送達デバイスの製造から独立して別個に製造することができ、これにより既存の生産ラインへの影響も低減または解消される。
【0009】
別の利点は、エレクトロニクスアセンブリが外部デバイスへの無線送信を介して使用者に追加の情報を提供することが可能になることである。たとえば、薬物送達デバイスまたはカートリッジに有効期日を提供することができ、この有効期日を外部デバイスへ送信して外部デバイス内に記憶し、使用者が印刷された情報を確認し、薬物送達をより良好に管理することを助けることができる。薬物送達デバイスまたはカートリッジのバッチ番号または固有のシリアルナンバーなどの追加の情報を外部デバイスへ送信して、使用者を支援することができる。このデータは、リコールの支援、患者挙動の追跡および分析、ならびに製品使用の監視のために、製造業者が中央で追跡することもできる。加えて、いくつかの実施形態では、エレクトロニクスアセンブリは温度センサを含み、エレクトロニクスアセンブリは、たとえば温度限界に到達したときに使用者に警告するために、温度データを外部デバイスへ提供することができる。またこれにより、製造業者は、患者および輸送業者が薬剤温度の取扱い方針に準拠していることを追跡することが可能になる。
【0010】
本開示の例示的な実施形態は、薬物送達デバイスで使用するためのエレクトロニクスアセンブリである。エレクトロニクスアセンブリは、プロセッサと、薬物送達デバイスの薬物容器の充填レベルを測定し、測定信号をプロセッサへ出力するように配置されたセンサと;外部デバイスをペアリングすることができる無線モジュールと、センサ、プロセッサ、および無線伝送器に電力を供給するように配置された電力モジュールと、プロセッサに動作を実行させるように動作可能な命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを含む。これらの動作は、第1の時間間隔でセンサを起動し、第1の時間間隔でセンサを起動するたびに測定信号を受信することと、受信した測定信号に基づいて、薬物容器の充填レベルの変化を判定することと、充填レベルの変化が検出されたとき、第1の持続時間にわたって無線モジュールを起動して、外部デバイスが無線モジュールとペアリングすることを有効にすることとを含む。
【0011】
いくつかの例では、記憶されている命令は、無線モジュールがペアリングされたとき、薬物容器の充填レベルの変化を外部デバイスへ送信し、無線モジュールを停止状態にすることを含む。
【0012】
いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリは、薬物送達デバイスへのエレクトロニクスアセンブリの組立てによって起動されるように配置されたスイッチを含み、スイッチはエレクトロニクスアセンブリを起動する。
【0013】
いくつかの例では、命令は、第1の時間間隔でセンサを起動する前に、第1の時間間隔より長い第2の時間間隔でセンサを起動し、測定信号を受信することと、受信した測定信号に基づいて、薬物容器が空であるか、それとも充填済みであるかを判定することと、薬物容器が充填済みであると判定されたとき、第2の時間間隔でのセンサの起動を停止し、第1の時間間隔でのセンサの起動を開始することとを含む。
【0014】
いくつかの例では、第1の時間間隔は1時間未満である。いくつかの例では、第2の時間間隔は12時間を超える。いくつかの例では、第1の持続時間は、30分未満である。
【0015】
いくつかの例では、命令は、電力モジュールの残存電力レベルを判定し、残存電力レベルに基づいて第1の持続時間を調整することを含む。いくつかの例では、命令は、薬物容器の充填レベルの各変化をメモリ内に記憶することと、無線モジュールがペアリングされたとき、薬物容器の充填レベルの記憶した変化の各々を外部デバイスへ送信し、無線モジ
ュールを停止状態にすることとを含む。
【0016】
いくつかの例では、センサは、栓の内側に配設されるように配置され、栓は、薬物容器へ挿入されるように構成される。いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリは、栓へ挿入されるように構成される。いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリおよび/またはセンサは、栓と一体形成される。
【0017】
いくつかの例では、センサは、薬物容器内の栓の位置を測定することによって、薬物容器の充填レベルを測定するように構成される。いくつかの例では、命令は、栓の感知された位置に基づいて、薬物容器の充填レベルを計算することを含む。いくつかの例では、センサは、超音波伝送器および対応する検出器を含み、超音波伝送器は、超音波信号を薬物容器内へ放出するように構成され、対応する検出器は、薬物容器からの超音波信号の反射を受信し、測定信号をプロセッサへ出力するように構成される。いくつかの例では、外部エレクトロニクスデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、およびパーソナルコンピュータから選択される。
【0018】
いくつかの例では、薬物送達デバイスまたは薬物容器は、印刷された識別情報または有効期限情報を含み、命令は、無線モジュールがペアリングされたとき、印刷された識別情報または有効期限情報に対応する確認識別情報を送信することを含む。
【0019】
本開示の別の例は、薬物送達デバイスの薬物容器へ挿入されるように構成されたエレクトロニクスアセンブリの無線モジュールを起動する方法である。方法は、第1の時間間隔でエレクトロニクスアセンブリのセンサを起動し、第1の時間間隔でセンサを起動するたびに、薬物容器の充填レベルを測定するように配置されたセンサから測定信号を受信することと、受信した測定信号に基づいて、薬物容器の充填レベルの変化を判定することと、充填レベルの変化が検出されたとき、第1の持続時間にわたってエレクトロニクスアセンブリの無線モジュールを起動して、外部デバイスが無線モジュールとペアリングすることを有効にすることとを含む。
【0020】
いくつかの例では、方法は、無線モジュールがペアリングされたとき、薬物容器の充填レベルの変化を外部デバイスへ送信し、無線モジュールを停止状態にすることを含む。
【0021】
いくつかの例では、方法は、第1の時間間隔でセンサを起動する前に、第1の時間間隔より長い第2の時間間隔でセンサを起動し、測定信号を受信することと、受信した測定信号に基づいて、薬物容器が空であるか、それとも充填済みであるかを判定することと、薬物容器が充填済みであると判定されたとき、第2の時間間隔でのセンサの起動を停止し、第1の時間間隔でのセンサの起動を開始することとを含む。
【0022】
いくつかの例では、第1の時間間隔は1時間未満である。いくつかの例では、第2の時間間隔は12時間を超える。
【0023】
いくつかの例では、方法は、薬物容器の充填レベルの各変化をメモリ内に記憶することと、無線モジュールがペアリングされたとき、薬物容器の充填レベルの記憶した変化の各々を外部デバイスへ送信し、無線モジュールを停止状態にすることとを含む。
【0024】
いくつかの例では、方法は、エレクトロニクスアセンブリの電力モジュールの残存電力レベルを判定し、残存電力レベルに基づいて第1の持続時間を調整することを含む。
【0025】
本開示のさらに別の例は、薬物送達デバイスを含むシステムであり、薬物送達デバイスは、ハウジングと、薬物送達デバイスのハウジング内に収容されるように構成された薬物
容器と、薬物容器の空洞内に配設され、薬物送達デバイスの駆動機構によって薬物容器内へ駆動されるように構成された栓とを含む。栓または薬物容器は、エレクトロニクスアセンブリを含み、エレクトロニクスアセンブリは、プロセッサと、薬物容器の充填レベルを測定し、測定信号をプロセッサへ出力するように配置されたセンサと、外部デバイスをペアリングすることができる無線モジュールと、センサ、プロセッサ、および無線伝送器に電力を供給するように配置された電力モジュールと、プロセッサに動作を実行させるように動作可能な命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体とを含む。これらの命令は、第1の時間間隔でセンサを起動し、第1の時間間隔でセンサを起動するたびに測定信号を受信することと、受信した測定信号に基づいて、薬物容器の充填レベルの変化を判定することと、充填レベルの変化が検出されたとき、第1の持続時間にわたって無線モジュールを起動して、外部デバイスが無線モジュールとペアリングすることを有効にすることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】薬物送達デバイスの分解図である。
図2A】エレクトロニクスアセンブリを収容する図1のストッパの横断面図である。
図2B図2Aのストッパの上面図である。
図2C図1の薬物送達デバイスのカートリッジ内に配設された図2Aのストッパの横断面図である。
図3図2A図2Cのストッパ内のエレクトロニクスアセンブリの内部構成要素の横断面概略図である。
図4A図1の薬物送達デバイス内に配設されている図2A図2Cのエレクトロニクスアセンブリおよびストッパの横断面図である。
図4B】使用準備完了構成で図1の薬物送達デバイス内に配設された図4Aのエレクトロニクスアセンブリおよびストッパの横断面図である。
図4C】薬物送達動作後の図4Bのエレクトロニクスアセンブリ、ストッパ、および薬物送達デバイスの横断面図である。
図5A】エレクトロニクスアセンブリの無線モジュールの起動を制御する方法を示す流れ図である。
図5B】エレクトロニクスアセンブリの感知持続時間モードを制御する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
カートリッジに基づく一部の注射および医療用シリンジシステムは、無線接続性に対応する一体化されたエレクトロニクスを含む。いくつかの例では、カートリッジストッパ(栓とも呼ぶ)が、センサ、無線モジュール、電力モジュール、およびメモリ付きプロセッサを含む自己完結型のエレクトロニクスアセンブリを含むことができる。たとえば、ストッパは、ストッパから分離された挿入可能な電子アセンブリを受け入れることができる。たとえばストッパは、滅菌後にストッパまたはカートリッジ内へ組み立てることができる。エレクトロニクスアセンブリは、自己完結型ユニットとすることができ、薬物送達デバイスの組立て前に構築され、薬物送達デバイスの最終組立て中にストッパ内に埋め込まれる。いくつかの例では、自己完結型のエレクトロニクスアセンブリにより、カートリッジの充填レベルの検出が有効になり、外部デバイスとのペアリング(たとえば、Bluetoothまたは類似の無線プロトコルを介する)によって、測定された充填レベルを報告することが有効になる。たとえば、無線モジュールを有する薬物送達デバイスでは、スマートフォンまたはタブレットが、薬物送達デバイスとペアリングして、注射が行われたことを確認すること、または排出された用量の確認もしくは測定を提供する内部センサから測定値を受信することが有効になる。
【0028】
提供される情報にかかわらず、内部無線モジュールの電力要件と、典型的な内蔵電源のサイズおよび保管寿命の制限とを均衡させるときに課題が存在する。以下でより詳細に論じる課題の2つの特定の例は、(1)薬物送達デバイスの組立てまたはカートリッジの充填を行う前の一体化されたエレクトロニクスアセンブリの保管寿命をどのように延ばすか、および(2)無線モジュールの使用が必要なときに、組立てまたは充填後の一体化されたエレクトロニクスアセンブリの動作寿命をどのようにさらに延ばすかを伴う。本開示のいくつかの例では、第1の課題に対する解決策は、以下でより詳細に説明するように、センサを使用して、カートリッジ内に薬剤が充填されたことを検出し、次に応答検出モードに変化して次の注射に応答することを伴う。加えて、いくつかの例では、第2の課題に対する解決策は、以下でより詳細に説明するように、注射の検出後、無線モジュールの動作、したがって電力の消耗を短い間隔に制限することを伴う。
【0029】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0030】
「薬物送達デバイス」という用語は、薬物の体積を人間または動物の体内へ投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを包含するものとする。体積は、典型的に、約0.5ml~約10mlの範囲とすることができる。限定されるものではないが、薬物送達デバイスは、シリンジ、針安全システム、ペン注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、潅流システム、または薬物の皮下、筋肉内、または血管内送達のために構成された他のデバイスを含むことができる。そのようなデバイスは、針を含むことが多く、針は、小ゲージ針(たとえば、約24ゲージより大きく、27、29、または31ゲージを含む)を含むことができる。
【0031】
特定の薬物と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、所要のパラメータの範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、一定の時間期間内(たとえば、注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約5分~約60分)、低レベルもしくは最小レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する一定の条件の範囲内とすることができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因によって生じ得る。
【0032】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージ、カートリッジまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の実施形態では、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の実施形態では、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の実施形態では、薬物容器は、薬物製剤の2
つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような実施形態では、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0033】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0034】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0035】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0036】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(By
dureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-114、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0037】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0038】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0039】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0040】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0041】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0042】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)
由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0043】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0044】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0045】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0046】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0047】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0048】
図1は、薬物送達デバイス100の分解図であり、薬物送達デバイス100は、使い捨ての薬物送達デバイスであっても、再利用可能な薬物送達デバイスであってもよい。薬物送達デバイス100は、カートリッジ114およびカートリッジ114が配設されたカー
トリッジハウジング104を収容するハウジング110を含む。カートリッジ114の本体104内に栓またはストッパ200が配設されており、使用中、栓またはストッパ200を本体104内で前進させて、カートリッジ114から薬剤を排出することができる。カートリッジハウジング104にニードルアセンブリ115を取り付けることができる。使用前、ニードルアセンブリ115の針109は、内側ニードルキャップ116および外側ニードルキャップ117によって保護されており、外側ニードルキャップ117は、キャップ118によって覆うことができる。薬物送達デバイス100から排出予定の薬剤または薬物の用量は、投与量ノブ112を回すことによって選択され、選択された用量は、投与量窓またはディスプレイ113を介して表示される。
【0049】
以下でさらに説明するように、薬物送達デバイス100は、1つまたはそれ以上の電子構成要素122、124を含むことができ、電子構成要素122、124の一部は、カートリッジ114のストッパ200内に、たとえば自己完結型のエレクトロニクスアセンブリとして含まれ得る。いくつかの例では、電子構成要素122、124は、薬物送達デバイスの他の部材内に位置し、電子構成要素122、124のセンサがカートリッジ114の充填レベルを判定または測定することを有効にする。
【0050】
引き続き薬物送達デバイス100の動作に関して説明すると、投与量ノブ112を回すことで機械的クリック音が生じ、使用者に音響フィードバックを提供する。投与量ディスプレイ113内に表示される数字は、ハウジング110内に収容されたスリーブ上に印刷されており、スリーブは、カートリッジ114と相互作用するように構成されたプランジャと機械的に相互作用する。針109が患者に刺されて、次いで注射ボタン111が押されたとき、ディスプレイ113内に表示される薬物用量が、薬物送達デバイス100から排出される。注射中、プランジャアームの外形として示されている駆動機構106が、ストッパ200をカートリッジ114内へ駆動して薬物を排出する。ストッパ200は、流体および気体がカートリッジ114の内外へ漏れるのを防止するためのバリアとして作用し、H2Oおよび他の流体の蒸発を防止することができる。いくつかの実施形態では、容器の壁に接触する弾性封止要素によって封止機能が提供されるが、封止機能はそれでもなお、ストッパ200が滑ることを可能にする。注射ボタン111が押された後、薬物送達デバイス100の針109が一定の時間にわたって患者の皮膚の中に留まったとき、用量の大部分は患者の体内へ実際に注射される。いくつかの例では、薬物送達デバイス100は、一度だけ使用できるまたは使い捨てのデバイスであり、薬物送達デバイス100内で使用される電子構成要素122、124は、一度だけ使用できるまたは使い捨ての薬物送達デバイス内の類似の機能とともに同様に存在し得ることが、当業者には理解されよう。
【0051】
図2Aは、薬物送達デバイス100のストッパ200の一実施形態の横断面図である。ストッパ200は、電子デバイス122、124を収容する外殻202および芯204を含み、いくつかの実施形態では、電子デバイス122、124は、芯204の材料内に埋め込まれる。いくつかの例では、芯204は、製造後にストッパ200の外殻202内へ挿入されるように構成される。たとえば、外殻が薬物送達デバイス100のカートリッジ114内に配設された後、芯204を外殻202内へ挿入することができる。他の例では、外殻202は、電子デバイス122、124を有する芯204と組み立てられ、後にカートリッジ114内へ挿入される。いくつかの例では、外殻202は、外殻202がカートリッジ114内へ挿入されたときにカートリッジ114の内面に対する封止インターフェースを提供するように配置された封止要素208(たとえば、Oリング)を含む。いくつかの例では、外殻202および芯204は、電子デバイス122、124の有無にかかわらず、単一の構成要素として製造される。
【0052】
いくつかの例では、外殻202および芯204の材料は、センサ信号が外殻202および芯204を通過することを可能にする能力で選択される。たとえば、ポリマーもしくは
セラミックのような非金属材料または極薄金属(たとえば、厚さ0.1mm未満)を使用することができる。電子デバイス122、124は、たとえば、センサ、エネルギー源、マイクロコントローラ、および/または無線トランシーバを含むことができる。電子デバイス122、124は、代表例に過ぎない。任意の数の電子デバイスが存在することができる。センサは、たとえば圧電デバイス、音響センサ、または電磁センサなどのセンサ/トランシーバデバイスとすることができる。センサ/トランシーバは、ストッパ200を介してたとえば超音波、音響、光、または他の信号などの信号を送信し、応答を測定することができ、いくつかの実施形態では、この応答を使用して、カートリッジ114内のストッパ200の位置または注射が行われたかどうかを判定することができる。いくつかの実施形態では、センサは、超音波エミッタおよび音響センサを有する超音波センサを含み、センサは、超音波エミッタを使用して超音波信号をカートリッジ114内へ放出するように配置され、音響センサは、カートリッジ114内の薬剤の充填レベルまたはカートリッジ114内の薬剤の存在によってもたらされたカートリッジ114からの超音波信号の反射を受信するように位置する。注射前および注射後のストッパ200の位置は、カートリッジ114内に残っている薬剤の体積の変化に対応し、この体積により、カートリッジ114から排出された薬剤の体積または用量を示すことができる。いくつかの実施形態では、センサが受信した応答は、コントローラ(たとえば、ストッパ200内または薬物送達デバイス100内の他の場所に位置するプロセッサ)へ提供され、コントローラは、応答を受信して、カートリッジ114の状態を計算することができる。カートリッジ114の状態は、カートリッジ114内の薬剤の充填レベル、ストッパ200の位置、または用量の体積に対応することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、電池またはエネルギー貯蔵デバイスである。無線モジュールは、外部電子デバイスならびにセンサおよびエネルギー源と通信することができる。外部電子デバイスは、コントローラ、スマートフォン、タブレット、またはコンピュータとすることができ、センサから受信したデータを外部データベースへ通信することができる。外部デバイスとの通信は、一方向であっても双方向であってもよい。センサデバイスから外部データベースへ伝達されたデータは、デバイスの識別に関係する情報(たとえば、固有の番号)、較正データ、生産ロット情報、デバイス材料情報、収納時間および生産時間に関係するデータ、ならびにセンサ測定に関係する情報(たとえば、測定時間、温度などのセンサ測定結果、距離、光信号、および音響信号など)を含むことができる。無線モジュールは、たとえばBluetooth、NFC、または無線頻度を含む任意の知られている無線通信技法を使用して通信することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ストッパ200の外殻202は、金属、ポリマー(たとえば、COC、PA、PP、PE、POM、PS、ABS、COPなど)、ガラス、またはセラミックなどの材料から構築される。いくつかの実施形態では、電子デバイス(または電子アセンブリ)122、124は、センサ、電源(たとえば、電池)、コントローラまたはプロセッサ、無線通信モジュール(たとえば、Bluetooth、NFC、Bluetooth LE、任意のRF、IrDA)、メモリ、オンオフスイッチ、感温要素、圧力センサなどのうちの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態では、エレクトロニクスデバイス122、124は、薬物送達デバイス100の組立て中、たとえば薬物送達デバイス100の構成要素によるストッパ200との接触(たとえば、駆動機構106からの力)によってエレクトロニクスデバイス122、124をトリガするように構成されたオンオフ機構を含む。
【0055】
図2Bは、ストッパ200の上面図である。外殻202は、芯204を取り囲み、封止要素208と連動し、封止要素208は、ストッパ200がカートリッジ114内へ導入されたとき、カートリッジ114に対する封止インターフェースを形成する。封止インターフェースは、カートリッジ114内に滅菌バリアの少なくとも一部を形成して、薬物送
達デバイス100によって送達予定の薬剤の滅菌状態を維持することができる。
【0056】
図2Cは、カートリッジ114内に配設されたストッパ200の横断面図である。示されているストッパ200の様々な機能については、図2Aおよび図2Bに関して上述した。カートリッジ114は、ストッパ200の封止要素208と連動してカートリッジ114の開端を封止するハウジング602を含む。いくつかの実施形態では、カートリッジ114のキャップ604とストッパ200の外殻202との間の空間内に薬剤が配設される。
【0057】
いくつかの実施形態では、異なる測定方法を使用して、ストッパ200の位置を測定する。システムまたはカートリッジ114内の固定位置に対するストッパ200の動きとともに変化する特定の信号が生成される。この固定位置は、カートリッジ114の内側とすることができる。いくつかの場合、たとえば固定位置は、カートリッジ114のセプタム区域上またはカートリッジ114の別の剛性壁上にある。別法として、固定基準を提供する目的で、カートリッジ内へ要素を導入することができる。他の実施形態では、固定基準は、薬物送達デバイス100のハウジング上など、カートリッジの外側に位置することもできる。いくつかの実施形態では、センサは、光源(たとえば、LED)から固定区域へ光を送り出し、軽減された光を光検出器によって受信することで、光信号の変化を測定する。軽減の強度は、距離に相関することができる。別の可能性は、信号(たとえば、音響信号)が送信器から固定位置へ移動し、送信器に近接する受信器の位置に戻るために必要とされる時間の変化を測定する。別の実施形態では、信号(光、音響、容量など)を固定位置から可動ストッパ200内の受信器へ送り出して、ストッパの移動中の信号の変化を測定し、この信号の変化をカートリッジ114内のストッパ位置に相関させることができる。
【0058】
一例では、伝送器(たとえば、エレクトロニクスデバイス122、124のうちの1つ)が、第1の時間tに音波を送信する。第1の時間t(たとえば、音波の送信時間)は、外部デバイスへ提供することができる。音波は、ストッパ200内の伝送器からカートリッジ114の遠位端(すなわち、キャップ604を有する端部)に向かって伝播し、カートリッジ114またはカートリッジ114の遠位端内に配設された反射器の表面から反射される(たとえば、跳ね返る)。音波の反射(たとえば、反射波)は、カートリッジ114の遠位端からストッパ200内のセンサに向かって伝播する。反射波は、第2の時間tに受信される。音波の速度は、カートリッジ114内の薬剤中の知られている音速Sである。音波の送信と受信との間の経過時間は、t-tである。この経過時間に音速を掛けて、波が伝送器からカートリッジ114の遠位端へ移動してセンサへ戻った距離を判定する。移動距離を2で割って、ストッパ200とカートリッジ114の遠位端との間の距離Dを判定する。カートリッジ114内の薬剤の体積V(たとえば、ストッパ200と遠位端との間でカートリッジ114内に密閉された薬剤の体積)は、判定された距離にカートリッジ114の断面積Aを掛けることによって判定される。したがって、V=A*(t2-t1)* S/2である。薬物送達動作前および薬物送達動作後のカートリッジ114内の薬剤の判定された体積の検出された差は、患者へ投与された用量に対応する。
【0059】
図3は、エレクトロニクスアセンブリ340の内部構成要素の横断面概略図であり、エレクトロニクスアセンブリ340は、たとえば、図1に示す電子構成要素122、124とすることができる。エレクトロニクスアセンブリ340は、ストッパ200内に配設された状態で示されており、ストッパ200自体は、カートリッジ114の開端内に設置されている。エレクトロニクスアセンブリ340は、センサ341、伝送器342、プロセッサ343、メモリ344、無線モジュール345、および電力モジュール346を含む。センサ341および伝送器342は、エレクトロニクスアセンブリ340がストッパ200内に配設されたとき、伝送器342がカートリッジ114の内側体積303内へ感知
信号を放出することができ、センサ341が内側体積303からの帰還または反射信号を検出することができるように、エレクトロニクスアセンブリ内に配置される。プロセッサ343は、エレクトロニクスアセンブリ340の要素のすべてに動作可能に連結され、センサ341、伝送器342、および無線モジュール345の起動を制御する。上述し、以下の図に関してより詳細に論じるように、メモリ344は、エレクトロニクスアセンブリ340の構成要素を動作させる際にプロセッサ343によって使用するための命令を記憶する。
【0060】
動作の際、無線モジュール345は、外部電子デバイスと通信してエレクトロニクスアセンブリ340からの情報を通信するように構成される。電力モジュール346は、エレクトロニクスアセンブリ340の構成要素のすべてに電力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、エレクトロニクスアセンブリ340は、たとえばスマートフォンから、近距離通信プロトコル(NFC)信号を介して、または他の誘導性装荷手段を有する典型的な無線充電デバイスによって、電力を無線で受信してモジュール346へエネルギーを提供するように構成された容量回路を含む容量デバイスを含む。
【0061】
図4Aは、薬物送達デバイス100内に配設されるように構成されたストッパ200内のエレクトロニクスアセンブリ340の横断面図である。ストッパ200は、エレクトロニクスアセンブリ340を保持する外殻202と、エレクトロニクスアセンブリ340をストッパ200内へ封止するように構成されたキャップ410とを含む。図4Aは、カートリッジ114の組立て中、カートリッジの内側体積303内へ薬剤が充填される前に、キャップ410が設置されている状態497を示す。このようにして、図4Aは、エレクトロニクスアセンブリ340が低頻度感知モードで動作し、感知信号470を使用して内側体積303が薬剤で充填されたことを検出する組立て工程を表す。
【0062】
図4Aで、エレクトロニクスアセンブリ340の無線モジュールは無効であり、カートリッジ114が使用準備完了状態になったことをエレクトロニクスアセンブリ340が検出するまで、エレクトロニクスアセンブリ340は、エレクトロニクスアセンブリ340の保管寿命を延ばすために極めて低い電力使用状態にある。いくつかの実施形態では、低頻度感知モードに加えて、または低頻度感知モードに対する代替として、エレクトロニクスアセンブリ340は、図4Bに示すように、ストッパ200内または薬物送達デバイス100内に設置されることによってエレクトロニクスアセンブリ340をトリガするように構成された起動機構を含む。
【0063】
図4Bは、使用準備完了構成で薬物送達デバイス100内に配設されたエレクトロニクスアセンブリ340およびストッパ200の横断面図である。図4Bは、エレクトロニクスアセンブリ340を収容するカートリッジ114およびストッパ200を示し、カートリッジ114は、薬物送達デバイス100内に設置され、プランジャ106が、ストッパ200およびエレクトロニクスアセンブリ340をカートリッジ114内へ駆動するように配置される。キャップ410は、ストッパ200の内部領域内にエレクトロニクスアセンブリ340を封止している。カートリッジ114の内側体積303は、薬剤40で充填されており、エレクトロニクスアセンブリ340は、内側体積303内の薬剤40の存在を感知している(感知信号470を介する)。エレクトロニクスアセンブリがカートリッジ114内の薬剤40を検出すると、エレクトロニクスアセンブリ340がトリガされて低頻度感知モードから高頻度感知モードに変化し、適度な時間スケールで(すなわち、使用者が無線モジュールの起動を長く待ちすぎないように)、次の薬物送達動作を検出する。図4Bで、プランジャ106は、カートリッジ114を収容する薬物送達デバイス100のアクチュエータまたは駆動機構によって駆動される。動作の際、プランジャ106は、ストッパ200に対して駆動され(矢印498によって示す)、力を印加してストッパ200をカートリッジ114内へ動かし、薬剤40の一部分をカートリッジ114から出
す。
【0064】
図4Cは、薬物送達動作後のエレクトロニクスアセンブリ340、ストッパ200、および薬物送達デバイス100の横断面図である。図4Cは、薬物送達デバイス100のプランジャ106がストッパ200に接触し、ストッパ200をカートリッジ114内へ駆動して(矢印499によって示す)、薬物送達動作(たとえば、針109による注射)を行うことを示す。動作の際、薬剤40の存在を検出した後、エレクトロニクスアセンブリ340は高頻度モードにあり、感知信号470を放出し、いくつかの実施形態では、感知信号470はカートリッジ114内のストッパ200の位置に応答している。感知信号470は、エレクトロニクスアセンブリ340によって処理され、エレクトロニクスアセンブリ340は、示されている薬物送達動作後のストッパ200の動きまたはカートリッジ114の充填レベルを検出する。注射の検出に応答して、エレクトロニクスアセンブリ340の無線モジュールが短い持続時間にわたって起動され、外部デバイス480とのペアリングが有効になる。
【0065】
図4Cは、外部デバイス480がエレクトロニクスアセンブリ340との無線通信481を開始し、エレクトロニクスアセンブリ340の無線モジュールが帰還無線通信482に応答することを示す。いくつかの例では、外部デバイス480への帰還無線通信482は、カートリッジ114の充填レベルの検出された変化を含む。いくつかの例では、帰還無線通信482は、カートリッジ114の充填レベルの検出された変化の履歴を含み、外部デバイス480がカートリッジ114または薬物送達デバイス100の以前の薬物送達履歴のすべてまたは一部分を受信することが有効になる。検出された変化の履歴は、たとえば、以前の変化、複数の以前の変化(たとえば、一定の数または一定の期間)、または検出された変化の完全な履歴を含むことができる。いくつかの例では、帰還無線通信482は、エレクトロニクスアセンブリ340によって感知された温度情報または温度履歴を含む。いくつかの例では、帰還無線通信482は、薬剤、カートリッジ、または薬物送達デバイスのバッチまたは有効期限情報を含む。帰還無線通信482はまた、エレクトロニクスアセンブリ340のいずれかまたはすべての構成要素によって感知、検出、または判定される任意の他のパラメータまたは変化を含むことができる。いくつかの実施形態では、帰還無線通信482は、残存電力など、エレクトロニクスアセンブリまたはエレクトロニクスアセンブリの特定の構成要素の状態を含む。いくつかの例では、プランジャ106は、シリンジのプランジャであり、カートリッジ114は、シリンジハウジング(たとえば、一度だけ使用できる薬物送達デバイス)である。
【0066】
図5Aは、エレクトロニクスアセンブリ340の無線モジュール345の起動を制御する方法を示す流れ図である。いくつかの例では、図5Aおよび図5Bの論理は、エレクトロニクスアセンブリ340のメモリ344内に記憶され、プロセッサ343によって実行される。エレクトロニクスアセンブリ340が使用準備完了状態にあるとき(501)、上述したように、カートリッジ114内の薬剤の以前の検出または起動機構のトリガによって、プロセッサ343は、センサ(すなわち、センサ341および伝送器342)を起動し(502)、カートリッジ114の状態を調査する。プロセッサは、センサ341からの信号を受信し(503)、カートリッジ114の充填レベルの変化が感知されたかどうかを判定する(504)。いくつかの例では、カートリッジ114の充填レベルの変化を、カートリッジ114内のストッパ200の位置の変化として感知することができる。変化が判定されなかった場合、プロセッサ343は、一定期間(以下、時間Aと呼ぶ)にわたって待機し(511)、この期間は、たとえば5分、10分、15分、または1分~1時間、またはこれらの間の時間とすることができる。概して、時間Aは、エレクトロニクスアセンブリ340の平均検出時間と電力使用とを均衡させるように選択される。いくつかの例では、感知動作の電力使用は、無線モジュール345と比較すると極めて小さく、したがって時間A(高頻度モード)の持続時間は、エレクトロニクスアセンブリ340
が外部デバイス480とペアリングすることができるように、使用者が多くとも注射後数分だけ待てばよいほど短くすることができる。いくつかの例では、時間Aは、動的に選択することができる。たとえば、薬剤が1日1回だけ投与された場合、注射の検出後、時間Aを12時間に設定することができ、次いでその後、翌日の薬物送達動作を早めるために5分に低減させることができる。
【0067】
続けて、カートリッジ114の充填レベルの変化が判定された場合、プロセッサ343は、無線モジュール345を短い持続時間(以下、時間Bと呼ぶ)にわたって起動し、この持続時間は、たとえば5分、10分、15分、または1分~1時間、またはこれらの間の時間とすることができる。概して、時間Bは、無線モジュール345の大きい電力使用と、無線デバイスのペアリングを開始するためのより大きい時間窓を使用者に与えるという柔軟性とを均衡させるように選択される。いくつかの実施形態では、動作の完了直後ではなく、薬物送達動作中に最初の検出が行われた場合、充填レベルの変化が判定された後、プロセッサ343は、さらなる変化が検出されなくなるまで、さらなる感知動作を急速に行うことを命令する。加えて、いくつかの実施形態では、プロセッサ343は、メモリ344の充填レベルの検出された変化を記憶する(506)。無線モジュール345が起動されている間、外部デバイス480は、エレクトロニクスアセンブリ340とペアリングすることができる。無線モジュール345が起動されている間、プロセッサは、ペアリングが検出されるかどうかを確かめる(507)。ペアリングが検出されなかった場合、プロセッサは、時間Bが終了したかどうかを確かめる(508)。時間Bの終わりにペアリングが検出されなかった場合、無線モジュール345は停止状態にされ(510)、エレクトロニクスアセンブリは、高頻度感知モード(すなわち、使用準備完了状態501)に戻る。ペアリングが検出されたとき、無線モジュール345は、検出された変化を外部デバイス480へ送信し(509)、無線モジュール345を停止状態にする(510)。上述したように、停止状態にした後、プロセッサ343は、高頻度モードへ戻って次の薬物送達動作を検出することができ、または高頻度検出モードに戻るまで、時間A*(時間Aと同じとすることができ、または検出された薬物送達動作後にのみ生じるように特別に選択された異なる時間とすることができる)だけ待つことができる(511)。
【0068】
図5Bは、エレクトロニクスアセンブリ340の感知持続時間モードを制御する方法を示す流れ図である。上記でより詳細に論じたように、いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリ340は、薬物送達デバイスの最終組立て前に、起動機構を使用して、使用準備完了状態501に入り、いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリ340は、図5Bに示すように、低頻度感知モードを使用して、使用準備完了状態501を検出する。低頻度感知モードで、エレクトロニクスアセンブリ340は組立て状態にあり、エレクトロニクスアセンブリ340の構成要素の最終組立て、または薬剤によるカートリッジの充填(すなわち、使用準備完了にする薬物送達デバイスの最終組立て)前のカートリッジ114もしくは薬物送達デバイスへのエレクトロニクスアセンブリの組立て中の起動工程を含むことができる(520)。この組立て状態で、プロセッサ343は、センサ(すなわち、センサ341および伝送器342)を起動して(521)、カートリッジ114の状態を調査する。プロセッサは、センサ341から信号を受信し(522)、カートリッジ114内で薬剤が検出されたかどうかを判定する(523)。いくつかの例では、カートリッジ114内の薬剤の充填は、カートリッジ114内のストッパ200の位置の変化として感知することができる。充填が判定されなかった場合(523)、プロセッサ343は、一定期間(以下、時間Cと呼ぶ)だけ待機し(524)、この期間は、たとえば12時間、24時間、48時間、1時間~1日、またはこれらの間の時間とすることができる。いくつかの例では、時間Cは、構築後のエレクトロニクスアセンブリの長い保管寿命を有効にするためのエレクトロニクスアセンブリ340の電力使用と、薬剤による薬物送達デバイスの充填と患者による予期される使用との間の予期される時間とを均衡させるように選択される。時間Cは、薬物送達デバイスが使用のために患者へ送達される前に、エ
レクトロニクスアセンブリが使用準備完了状態501になることを確実にするように選択することができる。カートリッジ114内で薬剤が検出されたとき、プロセッサは、充填レベルが変化して薬物送達動作が行われたことを示すかどうかを後に判定する際に使用するために、最初に感知された値をメモリ344内に記憶する(526)。
【0069】
リチウムイオン、ニッケル金属水素化物、ニッケル-カドミウム、空気亜鉛などの技術を使用して、たとえば電池または他の電力貯蔵デバイスを含むことができる電力モジュール(PM)を使用してカートリッジシステム(たとえば、本明細書に開示したもの)内の電子回路にエネルギーを提供するためのデバイスおよび方法について上記に説明した。
【0070】
上記で開示したシステムの態様により、医療用注射器が、含まれている電子構成要素(たとえば、RFID、センサ)の付属物を用いた「スマート」技術を利用して、薬物送達デバイス(たとえば、ペン型注射器)のカートリッジに一定の機能を与えることが有効になる。カートリッジのストッパ内へエレクトロニクスを一体化したとき、1つまたはそれ以上の構成要素(たとえば、注射器またはカートリッジの一定の特性を測定するためのセンサ)を活動状態にすることができ、それにはエネルギー源が必要とされ、エネルギー源は典型的には電池である。1つの代替手段は、電池の代わりの電源代用品としてエネルギー収集手段を使用することである。いくつかの例では、LEDまたはレーザ光源などの光源が薬物送達デバイス内に含まれ、エレクトロニクスアセンブリは、光源からの光を受信するように構成されたレセプタクル(たとえば、光起電ユニットまたは光センサ)を含む。いくつかの例では、レセプタクルは、レセプタクルに入射する光を受信もしくは終了したとき、エレクトロニクスアセンブリをオンまたはオフに切り換えるように構成され、またはいくつかの例では、レセプタクルは、受信した光を電気エネルギーに変換することによって、エレクトロニクスアセンブリへ電力を提供する。
【0071】
本開示の実施形態はまた、カートリッジを使用することができない充填済みの単一および2つのチャンバを有するシリンジに適用することもできる。カートリッジのストッパ内のエレクトロニクスアセンブリに関して上述した例はまた、使い捨ての充填済みシリンジまたは再利用可能/再充填可能なカートリッジなどの他の薬物容器とともに使用することもできる。いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリは、エレクトロニクスアセンブリが注射後のカートリッジまたはシリンジの充填レベルの変化を感知することが有効になるように、カートリッジまたは薬物送達デバイス内に収容される。いくつかの例では、エレクトロニクスアセンブリの構成要素は、ストッパの外側またはカートリッジもしくは薬物送達デバイスの異なる部材内に位置する。
【0072】
上述した機能のいくつかは、デジタル電子回路内で、もしくはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア内で、またはこれらの組合せで実施することができる。装置は、プログラム可能プロセッサによって実行するための情報キャリア、たとえば機械可読記憶デバイス内で有形に実施されるコンピュータプログラム製品内で実施することができ;方法工程は、プログラム可能プロセッサが、入力データに対して動作して出力を生成することにより、記載の実施形態の機能を実施するための命令のプログラムを実行することによって実施することができる。記載の機能は、有利には、データ記憶システムからのデータおよび命令を受信し、データ記憶システムへデータおよび命令を送信するように連結された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサ、少なくとも1つの入力デバイス、ならびに少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラム可能システム上で実行可能な1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムで実施することができる。コンピュータプログラムは、一定の活動の実行または一定の結果の実現のためにコンピュータ内で直接または間接的に使用することができる1組の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイル済みまたは解釈実行済みの言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書き込むことができ、独立型プログラムを含む任意の形態で導入することができ、または演算環
境内で使用するのに好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくは他のユニットとして導入することができる。
【0073】
本発明の概念の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、構成、装置、方法、システム、デバイス、および実施形態の様々な構成要素に修正(たとえば、調整、追加、または削除など)を加えることができ、本発明は、そのような修正形態およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0074】
本開示の複数の実施形態について説明した。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B