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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】めっき装置、および、めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/10 20060101AFI20241119BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20241119BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20241119BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20241119BHJP
   C25D 7/00 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D7/12
C25D17/10 C
H01L21/288 E
H05K3/18 N
C25D7/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023083690
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2023502957の分割
【原出願日】2022-06-27
(65)【公開番号】P2024003761
(43)【公開日】2024-01-15
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 良輔
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143217(JP,A)
【文献】特開2017-115171(JP,A)
【文献】特開2021-011624(JP,A)
【文献】特開2019-218618(JP,A)
【文献】特開2019-002051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0281257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/10
C25D 7/12
H01L 21/288
H05K 3/18
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽と、
多角形基板を保持するように構成される基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記アノードと前記基板ホルダとの間に設けられ、前記多角形基板の外形に対応した開口を画定するレギュレーションプレートであって、
前記開口における前記多角形基板の各辺に対応した各開口辺のうち、対向する1対の開口辺の中央部に、前記1対の開口辺のそれぞれから当該開口の中央に向かって突出し、互いの間に形成される開口サイズが連続的に変化する両サイドを有する1対の凸部を有し、
前記レギュレーションプレートにおける前記基板と対向する側の面に配置され、前記1対の開口辺の外側に設けられた1対の補助アノードを有する、レギュレーションプレートと、
を備える、めっき装置。
【請求項2】
前記1対の補助アノードは、前記1対の開口辺と平行に配置され、前記1対の補助アノードの前記1対の開口辺に沿った長さは、当該1対の開口辺の長さよりも短い、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記1対の凸部は、前記開口の中央に向かって細くなる台形形状である、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
基板が4角形基板であり、
前記レギュレーションプレートは、前記4角形基板の各辺に対応した各開口辺の中央部に、当該各開口辺のそれぞれから前記開口の中央に向かって突出する凸部を有する、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記基板ホルダは、前記4角形基板の各辺に沿って設けられたコンタクトを有し、前記コンタクトを通じて前記4角形基板に給電するように構成される、請求項4に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置、および、めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の基板の表面に設けられた微細な配線用溝、ホール、又はレジスト開口部に配線を形成したり、基板の表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりすることが行われている。この配線及びバンプを形成する方法として、例えば、電解めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法等が知られている。半導体チップのI/O数の増加、細ピッチ化に伴い、微細化が可能で性能が比較的安定している電解めっき法が多く用いられるようになってきている。
【0003】
電解めっき法で配線又はバンプを形成する場合、基板上の配線用溝、ホール、又はレジスト開口部に設けられるバリアメタルの表面に電気抵抗の低いシード層(給電層)が形成される。このシード層の表面において、めっき膜が成長する。
【0004】
一般的に、めっきされる基板は、その周縁部に電気接点を有する。すなわち、電流はめっきされる基板の中央から周縁部に向かって流れる。基板の中央から距離が離れるにつれ、シード層の電気抵抗分だけ電位は徐々に降下し、基板の中心部よりも基板の周縁部でより卑な電位が生じる。この、基板中心と周縁部での電位差により、基板の周縁部に金属イオンの還元電流、すなわちめっき電流が集中する現象はターミナルエフェクトと呼ばれる。
【0005】
なお、電解めっき法でめっきされる基板の形状としては、円形の基板や、四角形の基板が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
円形基板においては、円形基板の中央部から基板の周縁部までの距離と隣り合う電気接点間の距離が、基板の全周に渡って同一である。このため、円形基板にめっきするときのターミナルエフェクトは、基板の全周囲に渡ってほぼ同様に生じる。したがって、円形基板にめっきをした場合は、基板の中心部におけるめっき速度が低下し、基板の中心部におけるめっき膜の膜厚が基板の周縁部におけるめっき膜よりも薄くなる。従来は、ターミナルエフェクトによる膜厚の面内均一性の低下を抑制するために、円形基板の周縁部に均等に配置された電気接点に電流を供給しつつ、例えば特許文献3に開示されているようなレギュレーションプレートを用いて、円形基板に加わる電場、すなわち電気活性イオンの移流を調節することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-125294号公報
【文献】特公平03-029876号公報
【文献】特開2005-029863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多角形基板において、多角形のすべての辺の周縁部に電気接点を配置した場合、円形基板の場合と同様の手法で、基板と相似形状の開口を有するレギュレーションプレートやアノードマスクを用いた場合、基板自体の対称性が低い為、角部近傍と辺の中央部(頂点間の中央部)ではめっきの膜厚分布傾向が異なってしまう。このため、膜厚
分布に特異点を生じやすく、多角形基板では、中心部からの距離が比較的長い角部に近い領域で、最終的なめっき膜厚が小さくなる傾向がある。
【0009】
また、こうした影響は、処理対象である多角形基板のレジスト開口率、めっき処理のレシピ、およびめっき液の利用状態などに応じて変化する。このため、めっき処理の状況に応じてアノードマスクの開口サイズを変更可能にすることも考えられる。しかしながら、例えば上記したターミナルエフェクトが小さい場合と大きい場合とでは角部と他の領域とで膜厚分傾向が大きく異なり、単純に開口サイズを調整するだけでは、めっき膜の面内均一性を十分に向上させることができない場合がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によれば、めっき装置が提案され、かかるめっき装置は、めっき槽と、多角形基板を保持するように構成される基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記多角形基板の外形に対応した開口を画定するアノードマスクであって、前記開口における前記多角形基板の第1辺に対応した第1開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第1凸部を画定する第1マスク部材と、前記開口における前記多角形基板の第2辺に対応した第2開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第2凸部を画定する第2マスク部材と、を有し、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との互いの距離が調整できるように構成されるアノードマスクと、を備える。
【0012】
別の一実施形態によれば、めっき装置においてアノードと多角形基板との間に電流を流して前記多角形基板にめっきする方法が提案され、かかるめっき方法は、前記多角形基板の外形に対応した開口を画定するアノードマスクであって、前記開口における前記多角形基板の第1辺に対応した第1開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第1凸部を画定する第1マスク部材と、前記開口における前記多角形基板の第2辺に対応した第2開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第2凸部を画定する第2マスク部材と、を有するアノードマスクにおいて、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との互いの距離を調整するステップと、前記アノードと前記多角形基板との間に電流を流すステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のめっき装置の全体配置図である。
図2】めっき装置に備えられているめっきユニットの概略側断面図(縦断面図)である。
図3A】一実施形態におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
図3B】一実施形態におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
図3C】一実施形態におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
図4A】一実施形態におけるレギュレーションプレートを基板側から示す図である。
図4B】一実施形態におけるレギュレーションプレートとアノードマスクとを基板側から示す図である。
図5A】ターミナルエフェクトが大きい条件において、本実施形態のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図5B】ターミナルエフェクトが中程度の条件において、本実施形態のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図5C】ターミナルエフェクトが小さい条件において、本実施形態のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図6A】ターミナルエフェクトが大きい条件において、比較例のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図6B】ターミナルエフェクトが中程度の条件において、比較例のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図6C】ターミナルエフェクトが小さい条件において、比較例のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。
図7】めっきユニットで使用される基板ホルダの概略正面図である。
図8】基板ホルダの概略側面図である。
図9】フロントプレート本体の背面図である。
図10】コネクタに近い側のフェース部の角部近傍を拡大して示す背面図である。
図11A】変形例におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
図11B】変形例におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
図11C】変形例におけるアノードマスクを基板側から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態におけるめっき装置の全体配置図を示す。図1に示すように、このめっき装置は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する2台のカセットテーブル102と、基板の位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を乾燥させるリンスドライヤ106とを有する。リンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行う基板着脱部120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置122が配置されている。
【0016】
基板着脱部120、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きを行うストッカ124、基板を純水に浸漬させるプリウェット槽126、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜をエッチング除去するプリソーク槽128、プリソーク後の基板を基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄する第1洗浄槽130a、洗浄後の基板の液切りを行うブロー槽132、めっき後の基板を基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄する第2洗浄槽130b、及びめっきユニット10は、この順に配置されている。
【0017】
めっきユニット10は、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽14を収納して構成されている。各めっき槽14は、内部に1個の基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すようになっている。
【0018】
めっき装置は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置140を有する。この基板ホルダ搬送装置140は、基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、及びブロー槽132との間で基板を搬送する第1トランスポータ142と、第1洗浄槽130a、第2洗浄槽130b、ブロー槽132、及びめっきユニット10との間で基板を搬送する第2トランスポータ144を有している。めっき装置は、第2トランスポータ144を備えることなく、第1トランスポータ142のみを備えるようにしてもよい。
【0019】
この基板ホルダ搬送装置140のオーバーフロー槽136を挟んだ反対側には、各めっき槽14の内部に位置してめっき槽14内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドル16(図2参照)を駆動するパドル駆動装置146が配置されている。
【0020】
基板着脱部120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われる。
【0021】
また、めっき装置は、装置全体を制御するための制御装置17を備えている。制御装置17は、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0022】
図2は、図1に示すめっき装置に備えられているめっきユニット10の概略側断面図(縦断面図)である。図2に示すように、めっきユニット10は、めっき液、基板ホルダ30、及びアノードホルダ13を収容するように構成されためっき槽14と、オーバーフロー槽(不図示)とを有する。基板ホルダ30は、多角形の基板Wfを保持するように構成され、アノードホルダ13は、金属表面を有するアノード12を保持するように構成される。多角形の基板Wfとアノード12とは、めっき電源15を介して電気的に接続され、基板Wfとアノード12との間に電流を流すことにより基板Wfの表面にめっき膜が形成される。
【0023】
アノードホルダ13は、アノード12と基板Wfとの間の電界を調整するためのアノードマスク18を有する。アノードマスク18は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ13の前面に設けられる。ここで、アノードホルダ13の前面とは、基板ホルダ30に対向する側の面をいう。すなわち、アノードマスク18は、アノード12と基板ホルダ30の間に配置される。アノードマスク18は、アノード12と基板Wfとの間に流れる電流が通過する開口18aを略中央部に有する。
【0024】
図3A図3Cは、一実施形態におけるアノードマスク18を基板Wf側から示す図である。アノードマスク18は、基板Wfの多角形形状に対応した多角形開口を画定する枠部材182と、枠部材182に隣接して配置されて枠部材182に対して移動可能な複数のマスク部材184~187と、を有する。図3A図3Cに示す例では、基板Wfは略正方形の板面形状を有し、枠部材182は略正方形の開口182aを画定している。また、開口182aの各辺に対応して4つのマスク部材184~187が設けられている。見易さを考慮して、枠部材182と4つのマスク部材184~187とのそれぞれにはハッチングを付している。本実施形態では、4つのマスク部材184~187は、互いに同一形状であり、90度ごと回転した状態で配置されている。ただし、4つのマスク部材184~187は互いに異なる形状であってもよい。代表して、図3A図3Cでは、開口182aの上辺に対応して設けられたマスク部材184に対して他のマスク部材185~187と異なるハッチングを付している。
【0025】
複数のマスク部材184~187のそれぞれは、基板Wfの各辺に沿った(枠部材182の開口辺に沿った)辺部184a~187aと、基板Wfの各辺中央に対応した位置に設けられてアノードマスク18の中央(内周側)に向かって突出する凸部184b~187bと、を有している。一例として、凸部184b~187bは、アノードマスク18の開口18aの中央に向かって細くなる台形形状である。複数のマスク部材184~187は、枠部材182に対して移動可能に構成されており、枠部材182と共にアノードマスク18の開口18aを画定する。図3Aに示す例では、複数のマスク部材184~187は、外側に位置して枠部材182の開口182aと重なっておらず、枠部材182の開口182aがアノードマスク18の開口18aとなる。この状態から複数のマスク部材184~187のそれぞれが枠部材182に対して中央側に移動すると、図3Bに示すように
、凸部184b~187bのそれぞれが枠部材182の開口182a内に突出する。図3Bに示す例では、枠部材182の一部と、マスク部材184~187の凸部184b~187bの一部とで画定される開口が、アノードマスク18の開口となる。そして、更に複数のマスク部材184~187のそれぞれが枠部材182に対して中央側に移動すると、図3Cに示すように、マスク部材184~187の凸部184b~187bおよび辺部184a~187aが枠部材182の開口182a内に突出する。図3Cに示す例では、複数のマスク部材184~187によって画定される開口が、アノードマスク18の開口18aとなる。なお図3A図3B図3Cのそれぞれは、アノードマスク18の開口18aの状態の一例を示しているものであり、複数のマスク部材184~187の位置は滑らかに変化できるものとすればよい。
【0026】
アノードマスク18は、例えば誘電体である塩化ビニルによって形成される。枠部材182と複数のマスク部材184~187とは、同一の材料で形成されてもよい。複数のマスク部材184~187は、枠部材182に隣接して配置されることが好ましい。マスク部材184~187は、枠部材182におけるアノード12と反対側に配置することもできるし、アノード12の側に配置することもできる。マスク部材184~187は、枠部材182に対して移動可能に構成される。マスク部材184~187は、アノードマスク18の開口18aの中心からの距離が互いに等しくなるように構成されてもよい。複数のマスク部材184~187は、手動で移動されるものとしてもよい。また、めっきユニット10は、複数のマスク部材184~187を移動させるための移動機構(不図示)を備えてもよい。移動機構としては、公知の機構を採用することができ、例えばモータ及びボールねじを利用して実現することができる。めっき装置の制御装置17は、めっき中にアノードマスク18の開口形状が変更されるように移動機構を制御してもよい。各マスク部材184~187間、およびマスク部材184~187と枠部材182間の、基板Wf面に垂直方向の距離は、極間(アノード12と基板Wf間の距離)に比べて十分に隣接して配置することが好ましいが、移動機構を設置する際の制約等理由で、ある程度間隔を設けて配置してもよい。
【0027】
以上説明したように、アノードマスク18は、枠部材182と複数のマスク部材184~187とを有し、枠部材182とマスク部材184~187とによってアノードマスク18の開口18aが画定される。アノードマスク18は、基板Wfの第1辺(例えば上辺)に対応した第1開口辺に設けられて開口18aの中央に向かって突出する凸部を画定する第1マスク部材(例えばマスク部材184)と、基板Wfの第1辺に対向する第2辺(例えば下辺)に対応した第2開口辺に設けられて開口18aの中央に向かって突出する凸部を画定する第2マスク部材(たとえばマスク部材186)と、を有する。第1マスク部材184と第2マスク部材186とは、枠部材182に対して移動可能に構成され、互いの距離が調整できる。また、アノードマスク18は、基板Wfの第3辺(例えば右辺)に対応した第3開口辺に設けられて開口18aの中央に向かって突出する凸部を画定する第3マスク部材(例えばマスク部材185)と、基板Wfの第3辺に対向する第4辺(例えば左辺)に対応した第4開口辺に設けられて開口18aの中央に向かって突出する凸部を画定する第4マスク部材(たとえばマスク部材187)と、を有する。第3マスク部材185と第4マスク部材187とは、枠部材182に対して移動可能に構成され、互いの距離が調整できる。本実施形態では、第1~第4マスク部材184~187は、それぞれに配置された開口辺に対して垂直な方向に移動可能に構成される。
【0028】
このようにアノードマスク18が構成されることにより、マスク部材184~187を移動させてアノードマスク18の開口18aの形状を調整することができる。ここで、多角形の基板では、ターミナルエフェクトが大きいときに基板の頂点付近が頂点間の部分よりも最終的なめっき膜厚が小さくなる傾向があることが判っている。本実施形態のアノードマスク18では、マスク部材184~187の凸部184b~187bによって中央に
向かって突出する凸部が開口18aに形成され(図3B図3C参照)、マスク部材184~187が内側に移動して開口18aの面積が小さくされても開口18aの頂点付近はあまり遮蔽されない。こうしたアノードマスク18がこうした開口18a形状を有することにより、基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることができる。なお、複数のマスク部材184~187の凸部184b~187bの寸法および形状については、めっき膜の面内均一性が向上されるように実験またはシミュレーションなどによって適宜定められればよい。
【0029】
再び図2を参照して説明する。めっきユニット10は、基板Wfとアノード12との間の電場を調整するためのレギュレーションプレート(調整板)20と、めっき液を撹拌するためのパドル16と、を有する。レギュレーションプレート20は、基板ホルダ30とアノード12との間に配置される。具体的な一例としては、レギュレーションプレート20の下端部が、めっき槽14の床面に設けられた一対の凸部材28間に挿入されて、レギュレーションプレート20がめっき槽14に対して固定される。また、レギュレーションプレート20は、上端付近で外側に突出するアーム(図示せず)を有し、図1に示したストッカ124内において、ストッカ124の周壁上面にアームを引っ掛けることで吊下げ支持されてもよい。パドル16は、基板ホルダ30とレギュレーションプレート20との間に配置される。
【0030】
図4Aは、一実施形態におけるレギュレーションプレート20を基板Wf側から示す図である。また、図4Bは、一実施形態におけるレギュレーションプレート20とアノードマスク18とを基板Wf側から示す図である。レギュレーションプレート20は、基板Wfの多角形形状に対応した多角形開口21を有している。図4Aに示す例では、多角形開口21は概ね正方形形状であり、限定するものではないが4辺のそれぞれから中央に向けて突出する凸部20bが形成されている。このような凸部をアノードマスク18だけでなく、レギュレーションプレート20にも形成することで、ターミナルエフェクトが大きい場合にみられる、角部に近い領域のめっき膜厚が小さくなる傾向を更に改善することができる。凸部20bは、図4Aに示した例が台形形状であるように、凸部の両サイドに傾斜を有し、多角形開口21の対向するもう一方の辺の凸部との間に形成される開口サイズが連続的に変化する形状が好ましい。これによって、凸部20b形成部とそれ以外の部分の境界付近で電場遮蔽の程度が急激に変化することでめっき膜厚分布に起伏が生じることを抑制し、基板Wfに形成されるめっきの面内均一性を向上させることができる。また、図4Bに示すように、本実施形態では、レギュレーションプレート20の多角形開口21は、アノードマスク18の開口18aよりも大きい寸法となっている。また、本実施形態では、レギュレーションプレート20は、多角形開口21の各開口辺に配置された補助アノード214~217を有する。換言すれば、複数の補助アノード214~217は、複数のマスク部材184~187の凸部184b~187bに対応して配置されている。多角形の基板Wfと補助アノード214~217とは、めっき電源15または図示しない補助電源を介して電気的に接続される。
【0031】
制御装置17は、補助アノード214~217と基板Wfとの間に印加する電圧を調整して補助アノード214~217と基板Wfとの間に流れる電流を調整することができる。具体的な一例として、制御装置17は、アノードマスク18におけるマスク部材184~187同士の距離が大きいほど、補助アノード214~217と基板Wfとの間に流れる電流を大きくする。つまり、制御装置17は、いわゆるターミナルエフェクトなどにより、基板Wfの中心部におけるめっき膜の膜厚が小さく基板Wfの周縁部におけるめっき膜の膜厚が大きくなると想定される場合に、アノードマスク18におけるマスク部材184~187同士の距離を小さくすると共に、補助アノード214~217と基板Wfとの間に流れる電流を小さく又はゼロにする。また、制御装置17は、基板Wfの中心部におけるめっき膜の膜厚が大きく基板Wfの周縁部におけるめっき膜の膜厚が小さくなると想
定される場合に、アノードマスク18におけるマスク部材184~187同士の距離を大きくすると共に、補助アノード214~217と基板Wfとの間に流れる電流を大きくする。なお、補助アノード214~217の長さ(レギュレーションプレート20の多角形開口21と平行な方向の寸法)を予め調整することで、補助アノード214~217によるめっき膜厚制御範囲を調整することができる。例えば、ターミナルエフェクトが小さい場合、レギュレーションプレートに形成した凸部20bの近傍は、その電界遮蔽効果によって、めっき膜厚が小さくなる傾向があるが、補助アノード214~217の長さを凸部20bの形状や長さに応じて調整することで、凸部20bの近傍のめっき膜厚が小さくなるのを効果的に抑制することができる。こうした制御により、基板Wfに形成されるめっきの面内均一性を向上させることができる。
【0032】
図5A図5Cのそれぞれは、ターミナルエフェクトが大きい、中程度、小さい条件において、本実施形態のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。また、図6A図6Cのそれぞれは、図5A図5Cと同様にターミナルエフェクトが大きい、中程度、小さい条件において、比較例のめっき装置にて四角形基板にめっきをしたときのめっき膜厚を示す概略図である。なお、図5A図5C図6A図6Cでは、四角形基板を4分割した右上領域のめっき膜厚を示しており、図中左下が四角形基板の中心部Ctrに当たり、図中右上が四角形基板の角部Corに当たる。これらの図では、色が薄い場所ほど平均膜厚に対して膜厚が小さいことを示しており、色が濃い場所ほど平均膜厚に対して膜厚が大きいことを示している。図6Aに示すように、比較例の従来のめっき装置では、ターミナルエフェクトの影響が大きいときに、基板Wfの角部付近では膜厚が小さく、辺の中央部付近では膜厚が大きくなっている。また、図6Cに示すように、比較例の従来のめっき装置では、ターミナルエフェクトの影響が小さいときに基板Wf中央部では膜厚が小さく、角部を含めた周縁部では膜厚が大きくなっている。これに対して、図5A図5Cに示すように、本実施形態のめっき装置によるめっきでは、ターミナルエフェクトが大きい、中程度、小さい条件のいずれにおいても、好適な面内均一性が得ることができた。
【0033】
続いて、基板ホルダ30について説明する。図7図2に示しためっきユニット10で使用される基板ホルダ30の概略正面図であり、図8は、基板ホルダ30の概略側面図である。なお、基板ホルダ30は、フロントプレート300とバックプレート400とを備えている。これらのフロントプレート300とバックプレート400との間に基板Wfが保持される。本実施例では、基板ホルダ30は、基板Wfの片面を露出した状態で基板Wfを保持する。
【0034】
フロントプレート300は、フロントプレート本体310と、アーム部330とを備えている。アーム部330は、一対の台座331を有し、図1に示した各処理槽の周壁上面に台座331を設置することで、基板ホルダ30が垂直に吊下げ支持される。また、アーム部330には、めっき槽14の周壁上面に台座331を設置したときに、めっき槽14に設けられた電気接点と接触するように構成されたコネクタ332が設けられる。これにより、基板ホルダ30は外部電源と電気的に接続され、基板ホルダ30に保持された多角形の基板Wfに電圧・電流が印加される。
【0035】
フロントプレート本体310は、概ね矩形状であり、配線バッファ部311とフェース部312とを有し、前面301と背面302とを有する。フロントプレート本体310は、取付部320によって2箇所でアーム部330に取り付けられている。フロントプレート本体310には、開口部303が設けられており、開口部303から基板Wfの被めっき面が露出される。本実施形態では、開口部303は、多角形の基板Wfの形状に対応した形状に形成されている。尚、開口部303の内周部には、基板Wfのめっき面の外周部の一部を遮蔽するように、電界調整のためのマスクを設置してもよい。これは、基板Wf
に形成されたシード層が極端に薄い等の理由で、ターミナルエフェクトが非常に大きい場合に有効である。マスクは、一例として樹脂等の誘電体材料から形成することができる。
【0036】
バックプレート400は、概ね矩形状であり、基板Wfの背面を覆う。バックプレート400は、基板Wfをフロントプレート本体310(より詳細には、フェース部312)の背面302との間に挟んだ状態でクランプ340によって固定される。クランプ340は、フロントプレート本体310の面301,302に平行な回転軸341回りに回転するように構成される。ただし、クランプ340は、こうした例に限定されず、面301,302に垂直な方向に往復運動してバックプレート400をクランプするように構成されるなどとしてもよい。
【0037】
図9は、フロントプレート本体の背面図であり、図10は、コネクタに近い側のフェース部の角部近傍を拡大して示す背面図である。フロントプレート本体310の背面302は、18個のコンタクト領域C1-C18を有する。コンタクト領域C1-C7、C17、C18は、フェース部312のうちコネクタ332側の半分の領域(近位領域、図9の右側半分の領域)に配置されており、コンタクト領域C8-C16は、フェース部312のうちコネクタ332から遠い側の半分の領域(遠位領域、図9の左側半分の領域)に配置されている。以下の説明では、便宜上、遠位領域に配置されるケーブルを第1グループのケーブル、近位領域に配置されるケーブルを第2グループのケーブルと称す場合がある。
【0038】
図10に示すように、各コンタクト領域C1-C18には、基板Wfに給電するためのコンタクト(接点部材)370が含まれる。コンタクト370は、フロントプレート300の開口部303の各辺に沿って配置されている。つまり、コンタクト370は、多角形の基板Wfの各辺に沿って配置される。各コンタクト領域C1-C18のコンタクト370には、それぞれ、ケーブルL1-L18を介して、外部から給電される。なお、以下の説明では、各ケーブルを区別する必要がない場合には、ケーブルL1-L18をまとめて、ケーブルLと総称する場合がある。また、任意のケーブルをケーブルLとして参照する場合もある。
【0039】
ケーブルL1-L18の第1端部は、アーム部330の一端に設けられたコネクタ332に接続されおり、より詳細には、コネクタ332において個別の接点または複数本ずつ共通の接点(図示省略)に電気的に接続されている。ケーブルL1-L18は、コネクタ332の各接点を介して外部の電源(電源回路、電源装置等)に電気的に接続可能である。
【0040】
ケーブルL1-L7は、同一平面内に並んでケーブル通路365内に導入され、開口部303のコネクタ332側の辺に沿って配置されている。ケーブル同士は、フェース部312の厚み方向に重ならない。したがって、フェース部312及びフロントプレート300の厚みを抑制することができる。
【0041】
各コンタクト領域におけるケーブルLとコンタクト370との電気接続は、以下のように行われている。ケーブルL1を例に挙げると、ケーブルL1の先端部(第2端部)は、被覆602が除去されて、心線(導電線)601が露出している。ケーブルL1の先端部は、コンタクトC1の近傍においてシールホルダ363の配線溝内に導入され、コンタクト領域C1内で、4箇所のネジ(締結部材)511によってコンタクト370とともに押圧されている。つまり、ネジ(締結部材)511とシールホルダ363とが、ケーブルL1の心線601をコンタクト370とともに挟持している。この結果、ケーブルL1は、コンタクト370に電気的に接続される。基板ホルダ30が基板Wfを保持すると、コンタクト370が基板Wfに接触して、外部の電源からケーブルL1、コンタクト370を
介して基板Wfに給電が行われる。他のコンタクト領域C2-C18も同様に構成されており、18箇所のコンタクト370から基板Wfに給電が行われる。
【0042】
以上で説明したように、本実施形態に係る基板ホルダ30は、多角形の基板Wfの各辺にコンタクト370が設けられており、各辺に設けられたコンタクト370から基板Wfに給電が行われる。これにより、基板Wfの表面にめっき膜が形成される。
【0043】
以上、四角形の基板Wfにめっきをするプロセスについて説明したが、これに限らず、三角形、又は五角形以上の基板Wfにも、同様のプロセスでめっきをすることができる。こうした場合においても、アノードマスクは、基板の形状に対応した開口辺の中央部に凸部を画定する複数のマスク部材を有して、複数のマスク部材の距離が調整できるように構成されるとよい。
【0044】
(変形例)
図11A図11Cは、変形例におけるアノードマスク18Aを基板Wf側から示す図である。変形例のアノードマスク18Aは、上記した実施形態のアノードマスク18と同様に、基板Wfの多角形形状に対応した多角形開口を画定する枠部材182を備える。また、アノードマスク18Aは、枠部材182に隣接して配置されて枠部材182に対して移動可能な複数のマスク部材184A~187Aを有する。図11A図11Cでは、見易さを考慮して、枠部材182と4つのマスク部材184A~187Aとのそれぞれにハッチングを付している。4つのマスク部材184A~187Aは、互いに同一形状であり、90度ごと回転した状態で配置されている。代表して、図11A図11Cでは、開口182aの左上に配置されるマスク部材184Aに対して他のマスク部材185A~187Aと異なるハッチングを付している。
【0045】
変形例のマスク部材184A~187Aのそれぞれは、開口182aの角部に配置され、開口182aにおける連続した2つの開口辺において開口182aの中央に向かって突出する凸部を画定するように構成されている。図11A図11Cに示す例では、マスク部材184A~187Aは、開口182aの辺に沿った凸部を画定する凸部184Ab~187Abと、開口182aの角に対応した位置に設けられて凸部184Ab~187Abよりも外周に向けて凹んだ凹部184Aa~187Aaと、を有する。マスク部材184A~187Aは、枠部材182に対して移動可能に構成されており、枠部材182と共にアノードマスク18Aの開口18Aaを画定する。図11A図11Cに示す例では、マスク部材184A~187Aは、紙面上下左右方向に対して45度傾斜した方向において枠部材182に対して直線的に移動することができる。図11Aに示す例では、マスク部材184A~187Aは、外側に位置して枠部材182の開口182aと重なっておらず、枠部材182の開口182aがアノードマスク18Aの開口18Aaとなる。この状態から複数のマスク部材184A~187Aのそれぞれが枠部材182に対して中央側に移動すると、図11Bに示すように、凸部184Ab~187Abのそれぞれが枠部材182の開口182a内に突出する。図11Bに示す例では、枠部材182の一部と、マスク部材184A~187Aの凸部184Ab~187Abの一部とで画定される開口が、アノードマスク18の開口となる。このときには、隣接するマスク部材184A~187Aの凸部184Ab~187Abによって、開口辺の中央部に開口18Aaの中央に向かって突出する凸部が画定される。例えば、左上に設けられるマスク部材184Aの凸部184Abと右上に設けられるマスク部材185Aの凸部185Abとによって、上辺の中央部に開口中央に向かって突出する凸部が画定される。そして、更に複数のマスク部材184A~187Aのそれぞれが枠部材182に対して中央側に移動すると、図11Cに示すように、マスク部材184A~187Aの凸部184Ab~187Abおよび凹部184Aa~187Aaが枠部材182の開口182a内に突出する。図11Cに示す例では、複数のマスク部材184A~187Aによって画定される開口が、アノードマスク18
の開口18aとなる。なお図11A図11B図11Cのそれぞれは、アノードマスク18の開口18aの状態の一例を示しているものであり、複数のマスク部材184A~187Aの位置は滑らかに変化できるものとすればよい。
【0046】
こうした変形例のアノードマスク18Aにおいても、上記した実施形態のアノードマスク18と同様に、開口形状を変更して基板Wfに形成されるめっきの面内均一性を向上させることができる。なお、複数のマスク部材184A~187Aは、手動で移動されるものとしてもよいし、図示しない移動機構によって移動可能とされてもよい。
【0047】
なお、上記した実施形態および変形例では、アノードマスク18,18Aは、基板Wfの形状に対応した枠部材182を有するものとした。しかしながら、アノードマスク18,18Aは、こうした枠部材を有さなくてもよく、例えば複数のマスク部材184~187の辺部184a~184bを長く形成するなどして、複数のマスク部材184~187,184A~187Aによって開口18aが画定されるように構成されてもよい。
【0048】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、めっき槽と、多角形基板を保持するように構成される基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された基板と対向するように前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記多角形基板の外形に対応した開口を画定するアノードマスクであって、前記開口における前記多角形基板の第1辺に対応した第1開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第1凸部を画定する第1マスク部材と、前記開口における前記多角形基板の第2辺に対応した第2開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第2凸部を画定する第2マスク部材と、を有し、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との互いの距離が調整できるように構成されるアノードマスクと、を備える、めっき装置が提案される。形態1によれば、第1マスク部材と第2マスク部材との互いの距離を調整してアノードマスクの開口形状を調整することができ、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることができる。
【0049】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記第1マスク部材は、前記第1開口辺に配置されて当該第1開口辺に垂直な方向に移動可能に構成され、前記第2マスク部材は、前記第2開口辺に配置されて当該第2開口辺に垂直な方向に移動可能に構成される。
【0050】
[形態3]形態3によれば、形態2において、前記アノードマスクは、前記開口における前記多角形基板の第3辺に対応した第3開口辺に配置され、当該第3開口辺の中央部に前記開口の中央に向かって突出する第3凸部を画定する第3マスク部材と、前記開口における前記多角形基板の第4辺に対応した第4開口辺に配置され、当該第4開口辺の中央部に前記開口の中央に向かって突出する第4凸部を画定する第4マスク部材と、を更に有し、前記第3マスク部材と前記第4マスク部材との互いの距離が調整できるように構成される。形態3によれば、第1~第4マスク部材の互いの距離を調整してアノードマスクの開口形状を調整することができ、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることができる。
【0051】
[形態4]形態4によれば、形態1において、前記第1マスク部材は、前記開口の第1角部に配置され、前記開口における連続した2つの開口辺に前記開口の中央に向かって突出する凸部を画定し、前記第2マスク部材は、前記開口の第2角部に配置され、前記開口における連続した2つの開口辺に前記開口の中央に向かって突出する凸部を画定する。
【0052】
[形態5]形態5によれば、形態1から4において、前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記開口の中央に向かって細くなる台形形状である。
【0053】
[形態6]形態6によれば、形態1から5において、前記アノードマスクは、前記多角形基板の外形に対応した多角形開口を画定する枠部材を備え、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材とは、前記枠部材に隣接して配置されて当該枠部材と共に前記アノードマスクの前記開口を画定する。
【0054】
[形態7]形態7によれば、形態1から6において、前記アノードホルダと前記基板ホルダとの間に設けられるレギュレーションプレートを備え、前記レギュレーションプレートは、前記第1マスク部材の前記第1辺に対応して配置された第1補助アノードと、前記第2マスク部材の前記第2辺に対応して配置された第2補助アノードと、を有する。形態7によれば、第1補助アノードと第2補助アノードとを用いてめっき膜の面内均一性をより向上させることができる。
【0055】
[形態8]形態8によれば、形態7において、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との距離が大きいほど前記第1補助アノードと前記第2補助アノードとに流れる電流が大きくなるように前記第1補助アノードおよび前記第2補助アノードと前記多角形基板との間に電流を流す制御装置を備える。
【0056】
[形態9]形態9によれば、めっき装置においてアノードと多角形基板との間に電流を流して前記多角形基板にめっきする方法であって、前記多角形基板の外形に対応した開口を画定するアノードマスクであって、前記開口における前記多角形基板の第1辺に対応した第1開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第1凸部を画定する第1マスク部材と、前記開口における前記多角形基板の第2辺に対応した第2開口辺の中央部に当該開口の中央に向かって突出する第2凸部を画定する第2マスク部材と、を有するアノードマスクにおいて、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との互いの距離を調整するステップと、前記アノードと前記多角形基板との間に電流を流すステップと、を含むめっき方法が提案される。形態9によれば、第1マスク部材と第2マスク部材との互いの距離を調整してアノードマスクの開口形状を調整することができ、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることができる。
【0057】
[形態10]形態10によれば、形態9において、前記めっき装置は、前記アノードホルダと前記基板ホルダとの間に設けられるレギュレーションプレートを備え、前記レギュレーションプレートは、前記第1マスク部材の前記第1辺に対応して配置された第1補助アノードと、前記第2マスク部材の前記第2辺に対応して配置された第2補助アノードと、を有し、前記めっき方法は、前記第1マスク部材と前記第2マスク部材との距離が大きいほど前記第1補助アノードと前記第2補助アノードとに流れる電流が大きくなるように前記第1補助アノードおよび前記第2補助アノードと前記多角形基板との間に電流を流すステップを含む。形態10によれば、第1補助アノードと第2補助アノードとを用いてめっき膜の面内均一性をより向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 めっきユニット
12 アノード
13 アノードホルダ
17 制御装置
18,18A アノードマスク
18a,18Aa 開口
20 レギュレーションプレート
21 多角形開口
30 基板ホルダ
184~187,184A~187A マスク部材
184a~187a 辺部
184b~187b 凸部
184Aa~187Aa 凹部
184Ab~187Ab 凸部
214~217 補助アノード
Wf 多角形基板
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C