(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】LED実装基板の製造方法及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20241119BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20241119BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20241119BHJP
C11D 7/12 20060101ALI20241119BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20241119BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20241119BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241119BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241119BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241119BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L33/00 Z
H01L33/32
H01L33/48
C11D7/12
C11D7/06
C11D7/26
H01L21/68 A
H01L21/60 311S
G09F9/00 338
G09F9/33
(21)【出願番号】P 2024532127
(86)(22)【出願日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2023024640
(87)【国際公開番号】W WO2024009956
(87)【国際公開日】2024-01-11
【審査請求日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2022108986
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】北川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小川 敬典
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和紀
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-261335(JP,A)
【文献】特開2022-041533(JP,A)
【文献】特開2020-181847(JP,A)
【文献】特開2009-252777(JP,A)
【文献】特開2013-251338(JP,A)
【文献】特開2010-287731(JP,A)
【文献】特開2009-231560(JP,A)
【文献】特開2011-124296(JP,A)
【文献】中国実用新案第204946922(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
C11D 7/00 - 7/60
G09F 9/00
G09F 9/30 - 9/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有するLED実装基板の製造方法であって、
前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップの、前記レセプター基板とは反対側の面に、前記レーザーリフトオフにより生じた窒化ガリウム系半導体の分解残留物を有し、
前記レセプター基板に接着される側の前記LEDチップの面の表面に、周期表において第3周期~第5周期及び11族~14族の範囲の金属
であり、ガリウム以外の金属を有し、
前記LEDチップと前記レセプター基板との間に前記アルカリ性洗浄液が侵入可能な間隙を有し、
前記洗浄する工程により前記分解残留物を除去する、LED実装基板の製造方法。
【請求項2】
前記窒化ガリウム系半導体は、GaNである請求項1記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項3】
レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有するLED実装基板の製造方法であって、
前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップの、前記レセプター基板とは反対側の面に金属ガリウムを有し、
前記レセプター基板に接着される側の前記LEDチップの面の表面に、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有し、
前記LEDチップと前記レセプター基板との間に前記アルカリ性洗浄液が侵入可能な間隙を有し、
前記洗浄する工程により前記金属ガリウムを除去するLED実装基板の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ性洗浄液のアルカリ濃度を0.5質量%以上、飽和濃度以下とする請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性洗浄液の温度を5℃以上、80℃以下とする請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ性洗浄液にて洗浄する時間を10秒以上、1時間以下とする請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項7】
前記レセプター基板に接着される側の前記LEDチップの面にバンプを有する請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項8】
前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップを前記レセプター基板ごと前記アルカリ性洗浄液に浸漬することにより洗浄する請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項9】
前記
アルカリ性洗浄液は、pHが9.5~14.0のものである請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項10】
前記
アルカリ性洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び、酢酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する水溶液である請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項11】
前記レセプター基板の、前記LEDチップが移載される側の表面に接着剤層を備える請求項1~3のいずれか一項記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項12】
前記レセプター基板は、表面に粘着剤層を備えた石英基板である請求項11記載のLED実装基板の製造方法。
【請求項13】
レーザーリフトオフによりサファイア基板から
レセプター基板上に移載されたLEDチップを洗浄する洗浄方法であって、
前
記LEDチップは、前記レーザーリフトオフにより生じた窒化ガリウム系半導体の分解残留物と、周期表において第3周期~第5周期及び11族~14族の範囲の金属
であり、ガリウム以外の金属とを表面に有し、
前記分解残留物及び前記金属にアルカリ性洗浄液が接触するように洗浄し、前記分解残留物を除去する洗浄方法。
【請求項14】
レーザーリフトオフによりサファイア基板からレセプター基板上に移載されたLEDチップを洗浄する洗浄方法であって、
前記LEDチップは、ガリウムと、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の金属とを表面に有
し、
前記ガリウム及び前記金属にアルカリ性洗浄液が接触するように洗浄し、前記ガリウムを選択的に除去する洗浄方法。
【請求項15】
前記LEDチップと前記レセプター基板との間に前記アルカリ性洗浄液が侵入可能な間隙を有する請求項
14記載の洗浄方法。
【請求項16】
前記金属は、銅、銀、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有する請求項
14又は
15記載の洗浄方法。
【請求項17】
前記金属は、銅、銀及びスズを有する請求項
14又は
15記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED実装基板の製造方法、洗浄液及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体の光デバイスが、液晶ディスプレイのバックライトや、サイネージ用ディスプレイとして使われるようになっている。
【0003】
光デバイスは、例えば、サファイア基板上に半導体プロセスにより大量に作製される。マイクロLEDと呼ばれる100μm角以下のLEDによって4インチのディスプレイ基板を作製する場合、数百万個のマイクロLEDが必要になる。数十μmの微小なデバイスであるマイクロLEDは、エピタキシャル成長用基板であるサファイア基板から分離して利用される。
【0004】
マイクロLEDディスプレイの製造工程において、マイクロLEDチップをサファイア基板から剥離するためにレーザー・リフト・オフ(LLO)を行う。LLO工程は、例えばLEDチップのGaN層にエキシマレーザーを照射し、GaN層を気体のN2と金属Gaに分解することでサファイア基板からLEDチップを剥離する工程である。これにより、多数の光デバイスが表面上に配置されたレセプター基板を得ることができる。
【0005】
このような方法は、光デバイスに関するものに限られず、微細な半導体デバイスなどの複数の移載対象物を表面上に配置したレセプター基板を製造するのにも応用できる。
【0006】
例えば、特許文献1には、レーザ照射を用いて、ドナー基板上の移載対象物をレセプター基板に精度よく移載する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LLO工程を行う際、剥離したマイクロLEDチップの表面に不透明な金属Gaが析出してしまう。このLEDチップ上に析出した金属Gaを酸性洗浄液で除去し、洗浄後のLEDチップを基板へと実装したところ、接続不良が生じた。この接続不良の原因について本発明者らが様々な可能性を検討した結果、接続前のバンプの形状が当初よりも変化していることに気づいた。そしてその変化は、洗浄工程の酸性洗浄液によりバンプが溶解、変性等していたことが原因だと突き止めた。
【0009】
ここで、LEDチップはサファイア基板からレセプター基板へLLOされる際に、バンプが設けられている面がレセプター基板に接着され、洗浄液から保護されているようであったのにもかかわらず、洗浄工程において溶解、変性が生じていた。すなわち、LEDチップとレセプター基板との間にバンプ等の段差による間隙が存在し、その間隙から洗浄液が侵入し、バンプを溶解、変性させたものと考えられた。
【0010】
図5に示すように、バンプに使用されている金属(InやSnAgCu系合金(SAC)等)とGa(ガリウム)は周期表において近接していることが多く、バンプとガリウムが洗浄液に接触する状態でガリウムを選択的に除去することは困難であることが考えられた。そこで本発明者らは、まず、バンプをレセプター基板の接着剤層に深く埋め込むことにより、バンプを洗浄液から保護することを検討した。しかしながら、この方法では、バンプを洗浄液から保護することはできるが、その後の工程でバンプから接着剤層を剥離することが難しくなることがわかった。
【0011】
ここで、周期表においてガリウムと近接しているとは、ガリウムの周期表上の位置である第4周期、13族と近接している位置であることを意味し、例えば、第3周期~第6周期及び11族~15族の範囲となる位置であってもよく、第3周期~第5周期及び11族~14族の範囲となる位置であってもよい。
【0012】
このように、金属Gaと金属Ga以外の金属を表面に有するLEDチップなどの部品から、金属Ga以外の金属に影響を与えずに金属Gaを選択的に除去する洗浄方法やこれに用いることが可能な洗浄液が必要であることがわかった。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップに付着している金属Ga(以下、単に「Ga」、「ガリウム」などと称することもある)を、他の金属を溶解、変性させることなく選択的に除去してLED実装基板を製造することが可能なLED実装基板の製造方法、これに用いることが可能な洗浄液、LEDチップに付着しているガリウムを、他の金属を溶解、変性させることなく選択的に除去する洗浄方法、及び、ガリウムとガリウム以外の金属を表面に有する部品から、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなくガリウムを選択的に除去する洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有するLED実装基板の製造方法を提供する。
【0015】
このようなLED実装基板の製造方法によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを除去して、高品質なLED実装基板を製造できる。
【0016】
このとき、前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップの、前記レセプター基板とは反対側の面にガリウムを有し、前記洗浄する工程により前記ガリウムを除去することができる。
【0017】
本発明のLED実装基板の製造方法の洗浄する工程は、特にこのようなLEDチップからガリウムを除去する場合に有効である。
【0018】
このとき、前記アルカリ性洗浄液のアルカリ濃度を0.5質量%以上、飽和濃度以下とすることができる。また、前記アルカリ性洗浄液の温度を5℃以上、80℃以下とすることができる。また、前記アルカリ性洗浄液にて洗浄する時間を10秒以上、1時間以下とすることができる。
【0019】
このような条件であれば、より安定して確実に、ガリウムを選択的に除去することができる。
【0020】
このとき、前記レセプター基板に接着される側の前記LEDチップの面にバンプを有することができる。
【0021】
本発明のLED実装基板の製造方法は、特にこのようなLEDチップからバンプを有するLED実装基板を製造する場合に有効である。
【0022】
このとき、前記バンプは、鉛フリーはんだにより形成されたものとすることができる。また、前記バンプは、SnAgCu系合金、SnZnBi系合金、SnCu系合金、SnAgInBi系合金、SnZnAl系合金及びインジウムから選択される少なくとも一種を主成分として有するものとすることができる。
【0023】
本発明のLED実装基板の製造方法は、特にこのようなバンプを有するLEDチップを対象とする場合に有効である。
【0024】
このとき、前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップを前記レセプター基板ごと前記アルカリ性洗浄液に浸漬することにより洗浄することができる。
【0025】
これにより、より容易にLED実装基板を製造することができる。
【0026】
本発明は、また、サファイア基板上に設けられたLEDチップを、レーザーリフトオフによりレセプター基板へ移載した後に洗浄するための洗浄液であって、アルカリ性のものである洗浄液を提供する。
【0027】
このような洗浄液によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去できるものとなる。
【0028】
このとき、前記洗浄液は、pHが9.5~14.0のものとすることができる。また、前記洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び、酢酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する水溶液とすることができる。
【0029】
これにより、より簡便により安定した洗浄を行うことができるものとなる。
【0030】
本発明は、また、レーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを洗浄するための洗浄方法であって、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法を提供する。
【0031】
このようなLEDチップを洗浄するための洗浄方法によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することができる。
【0032】
このとき、前記LEDチップはレセプター基板上に移載されたものとすることができる。
【0033】
本発明の洗浄方法は、特にこのようなLEDチップを洗浄する場合に有効である。
【0034】
本発明は、また、ガリウムと前記ガリウム以外の金属を表面に有する部品からガリウムを選択的に除去する洗浄方法であって、前記部品を、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法を提供する。
【0035】
このようなガリウムを選択的に除去する洗浄方法によれば、簡便な方法でガリウム以外の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、ガリウムを選択的に除去することができる。
【0036】
このとき、前記洗浄時に前記ガリウム及び前記ガリウム以外の金属に前記アルカリ性洗浄液を接触させることができる。
【0037】
これにより、より簡便な方法でガリウム以外の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、ガリウムを選択的に除去することができる。
【0038】
このとき、前記部品は基板状であり、前記洗浄時に他の基板に固定され、前記ガリウムは、前記部品における前記他の基板側とは反対側の面に存在し、前記ガリウム以外の金属は、前記部品における前記他の基板側に存在するものとすることができる。
【0039】
本発明の洗浄方法は、特にこのような部品を洗浄する場合に有効である。
【0040】
このとき、前記ガリウム以外の金属は、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有するものとすることができる。また、前記ガリウム以外の金属は、銅、銀、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有するものとすることができる。また、前記ガリウム以外の金属は、銅、銀及びスズを有するものとすることができる。
【0041】
このようなガリウム以外の金属であれば、より安定して溶解させたり変性させたりすることがない。
【発明の効果】
【0042】
以上のように、本発明のLED実装基板の製造方法によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去して、高品質なLED実装基板を製造することが可能となり、LEDチップの接続不良を減少させることができる。
【0043】
また、本発明の洗浄液によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去できるものとなり、LEDチップの接続不良を減少させることができる。
【0044】
また、本発明のレーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを洗浄するための洗浄方法によれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することが可能となり、LEDチップの接続不良を減少させることができる。
【0045】
また、本発明のガリウムを選択的に除去する洗浄方法によれば、ガリウムと前記ガリウム以外の金属を表面に有する部品から、簡便な方法でガリウム以外の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することが可能となる。
【0046】
なお、本発明において、バンプ等の金属やガリウム以外の金属は、全く溶解等しないことが好ましい。しかしながら、ガリウムの除去量が、バンプ等の金属やガリウム以外の金属の除去量よりも多く、ガリウムを選択的に除去可能であれば、バンプ等の金属やガリウム以外の金属は実用に供し得る範囲において溶解等してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明に係る洗浄工程の一例を説明する図面である。
【
図2】実施例1-3、比較例1、2の条件及び評価結果を示す。
【
図5】洗浄による除去対象/非対象の金属元素の例を説明するための図(周期表)である。
【
図6】ギャップ-レーザリフトオフ(Gap-LLO)を説明する概略図である。
【
図7】コンタクト-レーザリフトオフ(Contact-LLO)を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
上述のように、レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップに付着している金属Gaを、他の金属を溶解、変性させることなく選択的に除去してLED実装基板を製造することが可能なLED実装基板の製造方法、これに用いることが可能な洗浄液、LEDチップに付着しているガリウムを、他の金属を溶解、変性させることなく選択的に除去する洗浄方法、及び、ガリウムとガリウム以外の金属を表面に有する部品から、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなくガリウムを選択的に除去する洗浄方法が求められていた。
【0050】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有するLED実装基板の製造方法により、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去して、高品質なLED実装基板を製造することができ、LEDチップの接続不良を減少させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0051】
本発明者らは、また、サファイア基板上に設けられたLEDチップを、レーザーリフトオフによりレセプター基板へ移載した後に洗浄するための洗浄液であって、アルカリ性のものである洗浄液により、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去でき、LEDチップの接続不良を減少させることができるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0052】
本発明者らは、また、レーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを洗浄するための洗浄方法であって、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法により、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0053】
本発明者らは、また、ガリウムと前記ガリウム以外の金属を表面に有する部品からガリウムを選択的に除去する洗浄方法であって、前記部品を、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法により、簡便な方法でガリウム以外の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0054】
以下、図面を参照して説明する。
【0055】
上述のように、本発明者らが上述の課題を解決するために鋭意検討した結果驚くべきことに、洗浄液としてアルカリ性水溶液を用いることで、バンプを物理的に保護しなかったとしてもガリウム以外の金属に影響を与えずにガリウムを選択的に除去できることを見出した。このようにアルカリ性水溶液を洗浄液として用いるという簡素な手法で、ガリウムを選択的に除去できるということは、生産プロセスの簡素化や、歩留まり向上に繋げることができ、1台数千万円と言われるマイクロLEDディスプレイの低額化に向けて非常に大きな一歩となる。以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0056】
[洗浄液]
本発明に係る洗浄液は、サファイア基板上に設けられたLEDチップをレーザーリフトオフによりレセプター基板へ移載した後に洗浄するための、アルカリ性の洗浄液である。本発明に係る洗浄液であれば、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去でき、LEDチップの接続不良を減少させることができる。
【0057】
このような洗浄液は、アルカリ性であれば特に限定されないが、pHが9.5~14.0のものが好ましい。LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、安定して確実にGaを選択的に除去することができる。
【0058】
また、本発明に係る洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び、酢酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する水溶液とすることができる。このような水溶液は入手や取り扱いが比較的容易であり、低コストのものである。
【0059】
このような本発明に係る洗浄液を用いて洗浄を行う際の好ましい条件等については、後述する。
【0060】
[LED実装基板の製造方法]
本発明に係るLED実装基板の製造方法は、レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有する。レーザーリフトオフ法としては特に限定されないが、ギャップ-レーザリフトオフ(Gap-LLO)や、コンタクト-レーザリフトオフ(Contact-LLO)などが適用可能である。以下、これらの方法を、
図6及び
図7を参照しながら概略的に説明する。
【0061】
Gap-LLOでは、まず、
図6(a)に示すように、例えば移載対象物であるLEDチップ5などを備えたサファイア基板1と、表面にシリコーンなどの粘着材層3を備えた、例えば石英基板のようなレセプター基板2とを、LEDチップ5と粘着材層3との間に空間を開けて、すなわちギャップを設けて対向させる。この状態で、レーザ発振器110から、サファイア基板1のLEDチップ5とは反対側の面を通して、複数のLEDチップ5のサファイア基板1との界面11にレーザ20を照射する。レーザ20は、一般に、各LEDチップ5のサファイア基板1との界面11の全面に1つずつ順に照射する。
【0062】
例えば、界面11にGaN層などの窒化ガリウム系半導体層を含む複数のLEDチップ5を備えたサファイア基板1の場合、レーザ20の照射により、GaN層が分解する(アブレーション)。アブレーションによりLEDチップ5とサファイア基板1との結合力(接着力、接合力など)が弱まると、LEDチップ5がサファイア基板1から剥離される。また、GaN層の分解により、ガス(例えば窒素ガス)が発生する。このガスの圧力により、剥離されたLEDチップ5は、レセプター基板2に向かう推進力を得、サファイア基板1とレセプター基板2との間の空間を移動し、レセプター基板2上の粘着材層3に到達する。このようにして、LEDチップ5がレセプター基板2上に移載される。次に、
図6(b)に示すように、サファイア基板1を除去する。これにより、サファイア基板1からレセプター基板2へのLEDチップ5の移載が完了する。
【0063】
Contact-LLOは、レーザ20の照射の際、
図7(a)に示すように、移載対象物であるLEDチップ5を備えたサファイア基板1と、表面に粘着材層3を備えたレセプター基板2とを、LEDチップ5と粘着材層3とを接触させた状態で対向させる以外は、Gap-LLOと同様である。レーザ20の照射後、
図7(b)に示すようにサファイア基板1を除去することで、サファイア基板1からレセプター基板2へのLEDチップ5の移載が完了する。
【0064】
このような、LLO工程において、GaN層などの窒化ガリウム系半導体層の分解によりLEDチップ5などの部品に金属Gaが残留する。この金属Gaを除去するために、本発明ではLEDチップ5を、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する。これにより、LEDチップのバンプ等の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、不要なガリウムを選択的に除去することができ、その結果LEDチップの接続不良を減少させることができる。
【0065】
ここで使用するアルカリ性洗浄液としては、上述のアルカリ性の洗浄液を適用することができる。
【0066】
アルカリ性洗浄液のアルカリ濃度は、0.5質量%以上、飽和濃度以下とすることが好ましい。また、アルカリ性洗浄液の温度は、5℃以上、80℃以下とすることが好ましい。洗浄液の温度は凍結しない程度の温度5℃以上とすることが好ましい。また、温度が高すぎてもガリウム除去効果が変化しなくなるため、80℃以下でよい。さらに、アルカリ性洗浄液にて洗浄する時間は、10秒以上、1時間以下とすることが好ましい。洗浄時間を10秒以上とすることで、より安定して確実に、Gaを選択的に除去することができる。洗浄時間は長すぎてもガリウム除去効果が変化しなくなるため、1時間以下でよい。また上述のアルカリ濃度、アルカリ性洗浄液の温度、洗浄する時間を適宜組み合わせることで、さらに安定して確実に、ガリウムを選択的に除去することができる。
【0067】
上述のようにしてレセプター基板上に移載されたLEDチップは、レセプター基板とは反対側の面にガリウムを有している。また、LEDチップはレセプター基板に接着される側にバンプを有している。レセプター基板とは反対側の面のガリウムは、アルカリ性洗浄液を用いた洗浄により容易に除去することができる。
【0068】
本発明に係るLED実装基板の製造方法において、バンプは、鉛フリーはんだにより形成されたものであることが好ましく、SnAgCu(SAC)系合金、SnZnBi系合金、SnCu系合金、SnAgInBi系合金、SnZnAl系合金及びインジウムから選択される少なくとも一種を主成分として有するものであることが、より好ましい。特にこのようなバンプを用いた場合、アルカリ性洗浄液で洗浄を行っても、安定して確実にバンプの溶解や変性(損傷)を防ぐことができる。
【0069】
図1にLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程の一例を示す。
図1に示すように、本発明に係るLED実装基板の製造方法における、LEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程では、レセプター基板2上に移載されたLEDチップ5を、レセプター基板2ごとアルカリ性洗浄液6に浸漬することにより洗浄することが好ましい。より簡便かつ確実に安定して、ガリウム4を選択的に除去することができる。より具体的には
図1に示すように、アルカリ性洗浄液6を満たした洗浄容器の中にLEDチップ5が移載されたレセプター基板2を浸漬し、その後純水などで洗浄を適切な回数行い、乾燥(風乾)させることができる。
【0070】
[LEDチップの洗浄方法]
本発明は、また、上述のようなレーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法を提供する。このような洗浄方法であれば、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなく、容易にガリウムのみを選択的に洗浄により除去することができ、その結果、LEDチップの接続不良を減少させることができる。また、このような本発明に係る洗浄方法においては、LEDチップはレセプター基板上に移載されたものであることが好ましい。LEDチップの洗浄方法の具体例は、上記
図1を用いて説明したのと同様である。
【0071】
[部品からガリウムを選択的に除去する洗浄方法]
本発明者らは、上述のようにレーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄することで、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなく、ガリウムのみを選択的に除去することができることを見出した。そしてさらに研究を重ねた結果、LEDチップに限られず、ガリウムと、ガリウム以外の金属を表面に有する部品からガリウムを選択的に除去する場合にも、部品を、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄するという極めて簡便な方法により、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなく、ガリウムを選択的に除去できることを見出した。
【0072】
このような洗浄方法において、特に、ガリウム及びガリウム以外の金属にアルカリ性洗浄液を接触させて洗浄を行うことが好ましい。より簡便な方法でガリウム以外の金属を溶解させたり変性させたりすることなく、ガリウムを選択的に除去することができる。
【0073】
また、洗浄する部品は、基板状であり、洗浄時に他の基板に固定されていることが好ましく、ガリウムは、部品における他の基板側とは反対側の面に存在し、ガリウム以外の金属は、部品における他の基板側に存在する状態のものであることが好ましい。
【0074】
ガリウム以外の金属としては、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有するものであることが好ましく、銅、銀、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有するものであることがより好ましく、銅、銀及びスズを有するものであることがさらに好ましい。ガリウム以外の金属がこのようなものであれば、洗浄時の溶解や変性をより安定して抑制できるためである。
【0075】
なお、本発明において、除去対象であるガリウムは、純度が100%の状態で存在してもよく、酸化物や窒化物などの状態で存在してもよい。また、これらの状態が混在してもよい。除去対象に占めるガリウムの割合は、50体積%以上、好ましくは70体積%以上、より好ましくは90体積%以上の時に効果的である。
【0076】
また、本発明において、ガリウムの溶解速度と、それ以外の金属の溶解速度との比である選択比が大きい方が効果的である。この選択比は1以上であってもよく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。作業環境や作業性の観点から、この選択比の上限は100程度であってもよく、50程度であってもよく、20程度であってもよい。
【0077】
ここで、溶解速度(μm/分)は、例えば、以下の(A)~(G)に示す方法により測定できる。
(A)洗浄に使用するアルカリ性洗浄液、例えば、5質量%のKOH(水酸化カリウム)水溶液を1リットル用意する。
(B)縦1cm、横1cm、厚さ1mmの板状であるガリウムの基板及びガリウム以外の金属の基板を用意し、その質量W0を測定する。基板の表面に自然酸化膜等がある場合には事前に除去しておく。
(C)アルカリ水溶液を500ミリリットルずつ二つの容器に分け、予定される洗浄条件、例えば、25℃に調整されたアルカリ水溶液にガリウムの基板及びガリウム以外の金属の基板を各々の容器に分けて3分間浸漬する。浸漬中の各容器内での各基板の姿勢は、二つの基板で極端に異なり溶解量に影響を与えることがないように調整する。なお、基板が完全に溶解する場合には前記(B)において用意する基板の厚さを厚くする。
(D)アルカリ水溶液から各々の基板を取り出し、室温にて洗浄する。
(E)洗浄後の各基板の質量W1を測定する。
(F)前記質量W0と前記質量W1との差および各基板の比重から溶解速度(μm/分)を算出する。この時、基板の厚さ方向のみに溶解したと仮定して計算を行う。
(G)得られた溶解速度の値から下記式に従い選択比を計算する。
選択比=ガリウムの溶解速度(μm/分)/それ以外の金属の溶解速度(μm/分)
【0078】
なお、ガリウム以外の金属と洗浄液との接触面積が、ガリウムと洗浄液との接触面積よりも充分に小さい場合には選択比は1未満でもよい。
【0079】
以上、ガリウムとガリウム以外の金属が存在する対象の洗浄方法について説明したが、本発明の技術思想を用いれば、それ以外の金属の組合せが存在する対象の洗浄方法にも応用が可能である。例えば、特定の金属と、その金属に周期表において近接している金属(例えば、前記特定の金属の周期±2及び族±2の範囲である金属)との組合せが存在する対象の洗浄方法である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0081】
一方の面にバンプが形成されたLEDチップをレーザーリフトオフによりレセプター基板に移載した物を準備し、洗浄工程を行った。In(インジウム)バンプ、SACバンプのそれぞれを用いたLEDチップを準備した。
【0082】
(洗浄前評価)
まず、洗浄前に光学顕微鏡によりLEDチップの観察を行ったところ、LEDチップのバンプ形成面と反対側の面にはガリウムが付着していることが確認できた。なお、洗浄後のガリウムの付着の有無や、洗浄によるバンプの溶解の発生の有無は、色の違いにより区別できる。
図2の「洗浄前写真」に、観察結果を示す。
【0083】
(実施例1)
洗浄液として、アルカリ性洗浄液である5質量%のKOH(水酸化カリウム)水溶液を用いて洗浄を行った。LEDチップが移載されたレセプター基板ごと洗浄液に浸漬し、洗浄時間を3分、洗浄温度を25℃(室温)として洗浄を行った。洗浄前評価と同様に光学顕微鏡を用いてLEDチップの観察を行い、ガリウムの付着の有無、バンプの溶解の発生の有無を評価した。
【0084】
(実施例2)
洗浄液として、アルカリ性洗浄液である2.34質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして洗浄、評価を行った。
【0085】
(実施例3)
洗浄液として、アルカリ性洗浄液である10質量%Na2CO3(炭酸ナトリウム)水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして洗浄、評価を行った。
【0086】
(比較例1)
洗浄液として、酸性洗浄液である12.3質量%HCl水溶液(塩酸)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして洗浄、評価を行った。
【0087】
(比較例2)
洗浄液として、酸性洗浄液である6質量%H2SO4水溶液(硫酸)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして洗浄、評価を行った。
【0088】
図2に評価結果を示す。実施例1-3では、LEDチップ上に付着していた金属Gaは洗浄液の種類にかかわらず除去されたことが確認できた。一方、Inバンプ、SACバンプ共に、洗浄による溶解は発生しなかった。アルカリ性洗浄液で洗浄を行えば、金属Gaのみを選択的に溶解、除去できることが分かった。一方、酸性洗浄液で洗浄を行った比較例1,2では、Inバンプは溶解してしまうことが確認できた。但し、SACバンプの溶解は確認されなかった。
【0089】
(実施例4)
実施例1と同様のアルカリ性洗浄液(5質量%KOH(水酸化カリウム)水溶液)に浸漬処理した後のSACバンプに対して、フラックスの成分であるアビエチン酸のIPA溶液を塗布し、40℃で乾燥させた。その後、ホットプレート上で250℃に加熱した。
図3に光学顕微鏡を用いた評価結果を示す。
図3に示すように250℃加熱後ではバンプの色が変化しており、SACバンプが溶解したことがわかる。フラックスは、バンプ表面の酸化膜を還元することで半田の溶融性や濡れ性を高め、電気的な接続を確保する目的で使用されるものである。したがって、実施例4のような処理を行ってSACバンプが溶融したということは、実施例4の洗浄処理によりSACバンプの変性が起こらなかったことを意味する。なお、用いたSACバンプの組成は、Sn=96.5質量%、Ag=3.0質量%、Cu=0.5質量%であった。
【0090】
(比較例3)
比較例1と同様の酸性洗浄液(12.3質量%HCl水溶液(塩酸))に浸漬処理した後のSACバンプに対して、フラックスの成分であるアビエチン酸のIPA溶液を塗布し、40℃で乾燥させた。その後、ホットプレート上で250℃に加熱した。
図4に光学顕微鏡を用いた評価結果を示す。
図4に示すように250℃加熱前後でバンプの色が変化しておらず、SACバンプは溶解しなかったことがわかる。これは、酸性洗浄液で洗浄することによってSn/Ag/Cuの合金組成が変化し、融点が上昇したためであると考えられ、通常使用されるバンプの状態から変性したと考えられる。つまり、酸性洗浄液によりSACバンプ自体は溶解しないものの、組成等が変性するため、LEDチップの電気的特性が変化してしまうことがわかった。これにより、接続不良の発生が示唆された。
【0091】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、ガリウム以外の金属を溶解、変性させることなく、ガリウムのみを洗浄により除去することができることがわかった。
【0092】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:レーザーリフトオフによってサファイア基板上からレセプター基板上に移載されたLEDチップをアルカリ性洗浄液にて洗浄する工程を有するLED実装基板の製造方法。
[2]:前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップの、前記レセプター基板とは反対側の面にガリウムを有し、前記洗浄する工程により前記ガリウムを除去する上記[1]のLED実装基板の製造方法。
[3]:前記アルカリ性洗浄液のアルカリ濃度を0.5質量%以上、飽和濃度以下とする上記[1]又は上記[2]のLED実装基板の製造方法。
[4]:前記アルカリ性洗浄液の温度を5℃以上、80℃以下とする上記[1]、上記[2]又は上記[3]のLED実装基板の製造方法。
[5]:前記アルカリ性洗浄液にて洗浄する時間を10秒以上、1時間以下とする上記[1]、上記[2]、上記[3]又は上記[4]のLED実装基板の製造方法。
[6]:前記レセプター基板に接着される側の前記LEDチップの面にバンプを有する上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]又は上記[5]のLED実装基板の製造方法。
[7]:前記バンプは、鉛フリーはんだにより形成されたものである上記[6]のLED実装基板の製造方法。
[8]:前記バンプは、SnAgCu系合金、SnZnBi系合金、SnCu系合金、SnAgInBi系合金、SnZnAl系合金及びインジウムから選択される少なくとも一種を主成分として有するものである上記[6]又は上記[7]のLED実装基板の製造方法。
[9]:前記レセプター基板上に移載された前記LEDチップを前記レセプター基板ごと前記アルカリ性洗浄液に浸漬することにより洗浄する上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]又は上記[8]のLED実装基板の製造方法。
[10]:サファイア基板上に設けられたLEDチップを、レーザーリフトオフによりレセプター基板へ移載した後に洗浄するための洗浄液であって、アルカリ性のものである洗浄液。
[11]:前記洗浄液は、pHが9.5~14.0のものである上記[10]の洗浄液。
[12]:前記洗浄液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び、酢酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する水溶液である上記[10]又は上記[11]の洗浄液。
[13]:レーザーリフトオフによりサファイア基板から分離されたLEDチップを洗浄するための洗浄方法であって、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法。
[14]:前記LEDチップはレセプター基板上に移載されたものである上記[13]の洗浄方法。
[15]:ガリウムと前記ガリウム以外の金属を表面に有する部品からガリウムを選択的に除去する洗浄方法であって、前記部品を、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄する洗浄方法。
[16]:前記洗浄時に前記ガリウム及び前記ガリウム以外の金属に前記アルカリ性洗浄液を接触させる上記[15]の洗浄方法。
[17]:前記部品は基板状であり、前記洗浄時に他の基板に固定され、前記ガリウムは、前記部品における前記他の基板側とは反対側の面に存在し、前記ガリウム以外の金属は、前記部品における前記他の基板側に存在する上記[15]又は上記[16]の洗浄方法。
[18]:前記ガリウム以外の金属は、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、インジウム、スズ及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有する上記[15]、上記[16]又は上記[17]の洗浄方法。
[19]:前記ガリウム以外の金属は、銅、銀、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも一種の金属を有する上記[15]、上記[16]、上記[17]又は上記[18]の洗浄方法。
[20]:前記ガリウム以外の金属は、銅、銀及びスズを有する上記[15]、上記[16]、上記[17]、上記[18]又は上記[19]の洗浄方法。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。