(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】通信システム、制御方法、および通信制御装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/022 20170101AFI20241120BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H04B7/022
H04B7/06 950
(21)【出願番号】P 2022574876
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000650
(87)【国際公開番号】W WO2022153355
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0238282(US,A1)
【文献】特開2017-143320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/022
H04B 7/06
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え
、
前記推定部は、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力とを用いて相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する
無線通信システム。
【請求項2】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え、
前記推定部は、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの受信電力とを用いて忘却係数型の相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する
無線通信システム。
【請求項3】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え、
前記使用禁止部は、前記第1ビームおよび前記第2ビームのうち、使用を禁止するビームをランダムに決定するか、ラウンドロビン方式で決定する
無線通信システム。
【請求項4】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え、
前記使用禁止部は、前記第1無線基地局装置および前記第2無線基地局装置のうち、収容されている無線端末局が多い方の無線基地局が照射するビームの使用を禁止させる
無線通信システム。
【請求項5】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける、前記通信制御装置の制御方法であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定ステップと、
前記推定ステップにより、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止ステップと、
を備え
、
前記推定ステップでは、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力とを用いて相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する、
制御方法。
【請求項6】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける、前記通信制御装置の制御方法であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定ステップと、
前記推定ステップにより、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止ステップと、
を備え、
前記推定ステップでは、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの受信電力とを用いて忘却係数型の相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する、
制御方法。
【請求項7】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける、前記通信制御装置の制御方法であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定ステップと、
前記推定ステップにより、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止ステップと、
を備え、
前記使用禁止ステップは、前記第1ビームおよび前記第2ビームのうち、使用を禁止するビームをランダムに決定するか、ラウンドロビン方式で決定する、
制御方法。
【請求項8】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける、前記通信制御装置の制御方法であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定ステップと、
前記推定ステップにより、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止ステップと、
を備え、
前記使用禁止ステップは、前記第1無線基地局装置および前記第2無線基地局装置のうち、収容されている無線端末局が多い方の無線基地局が照射するビームの使用を禁止させる、
制御方法。
【請求項9】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける前記通信制御装置であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え
、
前記推定部は、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの、現時点から一定期間前までに得られた又は直近のN個の受信電力とを用いて相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する
通信制御装置。
【請求項10】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける前記通信制御装置であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え
、
前記推定部は、無線端末局が前記第1ビームを受信したときの受信電力と、無線端末局が前記第2ビームを受信したときの受信電力とを用いて忘却係数型の相関係数を導出し、導出された相関係数が所定値以上の場合に、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する
通信制御装置。
【請求項11】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける前記通信制御装置であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え
、
前記使用禁止部は、前記第1ビームおよび前記第2ビームのうち、使用を禁止するビームをランダムに決定するか、ラウンドロビン方式で決定する
通信制御装置。
【請求項12】
通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける前記通信制御装置であって、
複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、
前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、
を備え
、
前記使用禁止部は、前記第1無線基地局装置および前記第2無線基地局装置のうち、収容されている無線端末局が多い方の無線基地局が照射するビームの使用を禁止させる
通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、制御方法、および通信制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来と比較して高周波数帯に区分されるミリ波・準ミリ波を用いた無線通信として、3GPP(3rd Generation Partnership Project) 5G(5th Generation) NR(New Radio)やIEEE802.11adなどがある。これらの無線通信は、従来のマイクロ波帯と比較して広帯域を確保できたり、直進性が大きく他の通信への干渉が少ないなどの利点を有する。そのため、大容量無線を実現するための手段として実用化が進められている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
無線伝搬路の距離減衰量は周波数に応じて大きくなる。そのため、ミリ波帯における通信では、特に地上に設置される無線基地局装置において、通信相手となる無線端末局装置に向けて指向性ビームを形成(ビームフォーミング)して信号を送信することが一般的である。また、無線基地局装置において、指向性ビームを形成して信号を受信することも一般的である。
【0004】
図9は、一般的なミリ波帯におけるビームフォーミングを使用する通信システムの概念図である。無線基地局装置は、それぞれ破線で示される自身が形成可能な指向性ビームの中から、無線端末局装置側で受信電力が最大となるビームを選択する。ビーム選択は例えばIEEE802.11adでは、SLS(Sector Level Sweep)と呼ばれる手順により行われる(非特許文献2参照)。
【0005】
まず通信を開始する側の通信装置(イニシエータ:ここでは無線基地局装置)が、とりうるビームを用いた信号を、時分割で順次送信する。その際、対向となる側の通信装置(レスポンダ:ここでは無線端末局装置)は、最大ビーム幅のビームで、イニシエータから送信された信号を受信し、その受信電力を測定する。レスポンダも同様にビームを用いて順次信号を送信しても構わない。無線基地局装置側のビーム選択に関しては、無線端末局装置において最大受信電力が得られたビームのIDを無線基地局装置に共有することで、ビーム選択が完了する。
【0006】
同様に5G NRでは、複数のSS/PBCH(Synchronization Signal/Physical Broadcast CHannel)と呼ばれる信号ブロックが、無線基地局装置のビームごとに時分割で順次送信される。これを無線端末局装置が読み取り、どのビームの受信電力が最も大きかったかを測定し無線基地局装置へフィードバックすることで、初期のビーム選択が完了する。
【0007】
高周波数帯における無線伝搬路の距離減衰を補うため、周波数が高くなるにつれて無線通信装置が具備するアンテナ素子数は多くなり、指向性ビームの幅は狭くなっていく。この時、前記SLSやSS/PBCHに代表されるビーム選択では、時分割かつ総当たりによるビーム選択を行うことから、その処理時間が増大してしまう。
【0008】
一方で、高周波数帯では、そのフレネルゾーンが極小化することから、遮蔽に伴う受信電力の急激な低下も大きな課題となる。そのため、高周波数帯無線システムでは、基地局を多数配置する分散アンテナ構成となり、それらのカバー範囲は重複した構成となる(非特許文献3参照)。分散アンテナ構成におけるビーム選択アルゴリズムは、分散アンテナ毎に時間を分けて行う必要があり、さらにその処理時間が増大してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】滝波他、“ミリ波帯無線LANシステムの標準化動向と要素技術”、電子情報通信学会通信ソサイエティマガジン、2016秋号、No.38、p.100-106
【文献】IEEE, “Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications Amendment 3: Enhancements for Very High Throughput in the 60 GHz Band” (IEEE Std 802.11ad-2012), 2012/12/28
【文献】内田他、“端末高密度/遮蔽環境での高周波数帯分散アンテナシステムの一検討”、2020年電子情報通信学会総合大会、B-5-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビームフォーミングを行う無線基地局装置が複数配置された分散アンテナ環境において、それぞれの基地局装置のカバーするサービスエリアが重複することがある。この場合、サービスエリアが重複する基地局装置の各々の分散アンテナから順次ビームが送信される。これにより、ビームサーチに要する時間が増大し、効率的にビーム選択が行えないという課題があった。
【0011】
上記事情に鑑み、本発明は、より効率的にビームを選択可能な技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムであって、前記通信制御装置は、複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、を備えた無線通信システムである。
【0013】
本発明の一態様は、通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける、前記通信制御装置の制御方法であって、複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定ステップと、前記推定ステップにより、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止ステップと、を備えた制御方法である。
【0014】
本発明の一態様は、通信制御装置と、複数のビームを形成して信号を送信可能な複数の無線基地局装置とを有する無線通信システムにおける前記通信制御装置であって、複数の無線基地局装置のうち、第1無線基地局装置が照射する第1ビームの範囲と、前記第1無線基地局装置とは異なる第2無線基地局装置が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する推定部と、前記推定部により、前記第1ビームの範囲と前記第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、前記第1無線基地局装置に対し、前記第1ビームの使用を禁止させるか、前記第2無線基地局装置に対し、前記第2ビームの使用を禁止させる使用禁止部と、を備えた通信制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、より効率的にビームを選択可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】通信制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】基地局のビーム送信時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】基地局の使用禁止信号受信時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】端末局のビーム受信時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】通信制御装置のビーム情報受信時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】一般的なミリ波帯におけるビームフォーミングを使用する通信システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態における無線通信システム100の全体構成図である。無線通信システム100は、1つのセル10に1つの通信制御装置200を備える。また、無線通信システム100は、セル10内に複数の無線基地局装置(以下、「基地局」という)300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11を備える。
図1では、一例として11の基地局が示されているが、複数備えていればよく、11に限るものではない。
【0018】
以下、基地局300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11のそれぞれを特に区別しない場合には任意の1台を基地局300と表現する。無線通信システム100において、各々の基地局300は、通信制御装置200と接続される。また、基地局300は、無線端末局(以下、「端末局」という)400と各種通信を行う。
【0019】
以下では、各基地局300が他の基地局300と時間的に重複しない任意のタイミングでビームを送信する場合を例にした実施形態について説明する。
【0020】
図2は、通信制御装置200の構成を示すブロック図である。通信制御装置200は、通信部201、ビーム情報記憶部202、推定部203、および使用禁止信号送信部204で構成される。
【0021】
通信部201は、基地局300と通信するためのインタフェースである。ビーム情報記憶部202は、通信部201により受信された基地局300から送信されたビーム情報を不図示の記憶装置に記憶する。ビーム情報は、基地局識別子と、端末識別子、ビームID、受信電力を含む。基地局識別子は、基地局300を一意に示す識別子である。端末識別子は、端末局400を一意に示す識別子である。ビームIDは、基地局識別子に示される基地局300が、端末識別子に示される端末局400に送信したビームを一意に示す情報である。受信電力は、基地局識別子に示される基地局300が、ビームIDに対応するビームを送信し、端末識別子に示される端末局400が当該ビームを受信したときの受信電力を示す情報である。
【0022】
推定部203は、基地局300のうち、第1基地局が照射する第1ビームの範囲と、第1基地局とは異なる第2基地局が照射する第2ビームの範囲とが相関関係にあるか否かを推定する。推定方法については後述する。なお、第1基地局、および第2基地局は、基地局400のうちのいずれかの基地局である。
【0023】
使用禁止信号送信部204は、推定部203により、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定された場合に、通信部201を介して使用禁止信号を送信する。使用禁止信号は、使用を禁止するビームのビームIDを指定する信号である。使用禁止信号は、第1基地局および第2基地局のいずれか一方に送信される。このようにすることで、使用禁止信号送信部204は、第1基地局に対し、第1ビームの使用を禁止させるか、第2基地局に対し、第2ビームの使用を禁止させる。
【0024】
図3は、基地局300の構成を示すブロック図である。基地局300は、データ処理部301、305、ビーム制御部302、通信制御部303、フィードバック受信部304、および無線部306で構成される。
【0025】
データ処理部301は、入力されたデータを無線部306に出力する。無線部306は、データ処理部301が出力したデータを無線により送信したり、無線により受信したデータをフィードバック受信部304またはデータ処理部305に出力する。フィードバック受信部304は、端末局400から送信された後述するフィードバック情報を受信し、受信したフィードバック情報を通信制御部303に転送する。通信制御部303は、通信制御装置200と有線または無線により接続する。通信制御部303は、フィードバック受信部304により出力された受信内容を通信制御装置200に転送する。通信制御部303は、通信制御装置200から受信した使用禁止信号をビーム制御部302に出力する。ビーム制御部302は、使用禁止信号に指定されたビームIDに対応するビームを送信しないように無線部306を制御する。
【0026】
図4は、ビームの送信を説明するための図である。
図4には、一例として2つの基地局300A、300Bと、端末局400とが示されている。基地局300Aは、例として9つビームからなるビーム群410を送信可能である。同様に、基地局300Bは、例として9つビームからなるビーム群420を送信可能である。
【0027】
図4に示されるように、ビームは、基地局300から見て異なる方向に送信され、かつそれぞれのビームを示すビームIDが重畳された状態で送信される。端末局400は、ビームを受信すると、受信電力を測定し、ビームIDとともに記憶する。
【0028】
端末局400は、基地局300Aからビーム群410に属する全てのビームを受信すると、受信電力が最大となったビームIDと、受信電力と、端末局400を示す端末識別子とをフィードバック情報として基地局300Aに送信する。
【0029】
同様に、端末局400は、基地局300Bからビーム群420に属する全てのビームを受信すると、受信電力が最大となったビームIDと、受信電力と、端末局400を示す端末識別子とを基地局300Bにフィードバック情報として送信する。基地局300A、300Bは、フィードバック情報で示されたビームIDのビームを用いて、端末局400と通信する。
【0030】
例えば、
図4では、基地局300Aから送信されたビームのうち、ビーム411の受信電力が最も大きかったものとする。基地局300Bから送信されたビームのうち、ビーム421の受信電力が最も大きかったものとする。この場合、基地局300Aは、ビーム411で端末局400と通信する。基地局300Bは、ビーム421で端末局400と通信する。
【0031】
次に、推定部203の推定方法について説明する。以下の説明では、第1基地局は、第1ビームを送信し、第2基地局は、第2ビームを送信するものとする。推定部203は、端末局400が第1ビームを受信したときの受信電力と、端末局400が第2ビームを受信したときの受信電力とを用いて相関係数を導出する。推定部203は、導出された相関係数が所定値以上の場合に、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する。
【0032】
具体的に数式を用いて説明する。以下の説明において、 ̄Pは、Pのバーを示すものとする。そして、Paiを第1ビームがi回目(1≦i≦n)に受信されたときの受信電力とする。 ̄PaをPaiの平均値とする。同様に、Pbiを第2ビームがi回目に受信されたときの受信電力とする。 ̄PbをPbiの平均値とする。なお、第1基地局、第2基地局は、ほぼ同時刻に、同周期にてビームを送信するものとする。このとき、推定部203は、下記(1)を用いて、相関係数γabを導出する。
【0033】
【0034】
推定部203は、相関係数γabが所定値以上の場合、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する。この所定値は、実験等により定めてもよい。また所定値は、周囲の伝搬環境の変動に応じて動的に変化させるようにしてもよい。
【0035】
なお、周囲の伝搬環境の変動によって、送信が禁止されたビームのみが良好なビームとなりうる。このことから、ビームの送信の禁止期限を定め、一定期間内のみビームの送信を禁止してもよい。
【0036】
一般に、nが小さい場合(受信電力の標本数が少ない場合)、上記(1)の相関係数は有意な値とならない可能性が大きい。よって、相関係数の信頼度がある程度以上担保される所定の標本数が得られるまで、相関係数の導出を行わないようにしてもよい。この場合、相関係数が導出されない間は相関が不明のため、ビームの送信を禁止しなくてもよい。
【0037】
また、上記(1)で得られる相関係数は、伝搬環境の変動に伴ってその信頼度が低下する可能性がある。よって、上記(1)で用いる過去の受信電力を現時点から一定期間前までに得られた受信電力や、直近N個(Nは相関係数の信頼度がある程度以上担保される値)の受信電力のみとしてもよい。
【0038】
推定部203は、上記(1)に代えて、下記(2)により、忘却係数型の相関係数γ'abを導出してもよい。これにより、直近の受信電力を最も考慮した相関係数が導出される。
【0039】
【0040】
ここで、 ̄Pa[*]、 ̄Pb[*]、K(*)[*]、αは、下記(3)の通りである。
【0041】
【0042】
推定部203は、相関係数γ'abが所定値以上の場合、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定する。この所定値は、実験等により定めてもよい。また所定値は、周囲の伝搬環境の変動に応じて動的に変化させるようにしてもよい。
【0043】
推定部203により、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲とが相関関係にあると推定されるということは、第1ビームの範囲と第2ビームの範囲が一部または全部で重複している可能性が高い。この場合、第1ビームおよび第2ビームのいずれか一方でビームサーチを行えばよい。そこで、第1ビームの使用を禁止させるか、第2ビームの使用を禁止させることにより、ビームサーチに要する時間が抑制され、より効率的にビームを選択可能となる。
【0044】
以上説明した処理の流れをフローチャートを用いて説明する。
図5は、基地局300のビーム送信時の処理の流れを示すフローチャートである。基地局300は、ビームを送信する(ステップS101)。ここでは、送信可能な全てのビームを時分割で順次送信する。その後、基地局300は、端末局400からのフィードバック情報を待つ。フィードバック情報には、フィードバック情報を送信した端末の端末識別子と、受信電力が最大となったビームIDと、受信電力とが含まれる。
【0045】
基地局300は、フィードバック情報を受信すると(ステップS102:YES)、受信したフィードバック情報を、自らの基地局識別子とともに通信制御装置200に転送して(ステップS103)、処理を終了する。フィードバック情報と基地局識別子とで上述したビーム情報となる。よって、ステップS103では、基地局300から通信制御装置200にビーム情報が送信されることとなる。
【0046】
図6は、基地局300の使用禁止信号受信時の処理の流れを示すフローチャートである。基地局300は、使用禁止信号を受信すると(ステップS201)、使用禁止信号で指定されたビームの使用禁止を設定し(ステップS202)、処理を終了する。上述したように、ビーム制御部302は、使用禁止信号に指定されたビームIDに対応するビームを送信しないように無線部306を制御する。これにより、使用が禁止されたビームが送信されないため、ビームサーチに要する時間が抑制され、より効率的にビームを選択可能となる。
【0047】
図7は、端末局400のビーム受信時の処理の流れを示すフローチャートである。端末局400は、ビームを受信すると(ステップS301:YES)、ビームのビームIDとビームの受信電力を不図示の記憶装置に記憶する(ステップS302)。
【0048】
端末局400は、全てのビームの受信が終了したか否かを判定する(ステップS303)。なお、端末局400は、ビームに埋め込まれた残ビーム数等の情報に基づきビームの受信が終了したか否かを判定する。全てのビームの受信が終了していない場合には(ステップS303:NO)、ステップS301でビームの受信待ちとなる。
【0049】
全てのビームの受信が終了した場合には(ステップS303:YES)、端末局400は、記憶した受信電力のうちで最大の受信電力を検索し、基地局300にフィードバック情報を送信して(ステップS304)、処理を終了する。
【0050】
図8は、通信制御装置200のビーム情報受信時の処理の流れを示すフローチャートである。通信制御装置200は、ビーム情報を受信すると(ステップS401:YES)、ビーム情報を不図示の記憶装置に記憶する(ステップS402)。通信制御装置200は、所定の標本数分のビーム情報が得られたか否かを判定する(ステップS403)。所定の標本数とは、上述したように、相関係数の信頼度がある程度以上担保される標本数である。
【0051】
所定の標本数分のビーム情報が得られていない場合には(ステップS403:NO)、ステップS401でビーム情報の受信待ちとなる。所定の標本数分のビーム情報が得られた場合には(ステップS403:YES)、通信制御装置200は、上記(1)または(2)により相関係数を導出する(ステップS404)。通信制御装置200は、相関係数が所定値以上か否かを判定する(ステップS405)。
【0052】
相関係数が上述した所定値以上ではない場合には(ステップS405:NO)、通信制御装置200は、そのまま処理を終了する。相関係数が所定値以上である場合には(ステップS405:YES)、通信制御装置200は、使用禁止させるビームを決定する。この決定方法には3つある。3つのうちのいずれの方法を用いるかは予め設定されており、設定内容は不図示の記憶装置に記憶されている。通信制御装置200は、この設定内容を参照することでステップS406で分岐する。
【0053】
1つめの決定方法は、使用を禁止するビームをランダムに決定する方法である。2つ目の決定方法は、使用を禁止するビームをラウンドロビン方式で決定する方法である。この2つ目の方法を具体的に説明すると、例えばビームA、ビームBのいずれかを使用禁止とする場合に、ビームA、ビームB、再びビームAというように順繰りで使用禁止とする方法である。3つ目の決定方法は、収容されている端末局400が多い方の基地局300が照射するビームを使用禁止とする方法である。
【0054】
1つ目と2つ目の方法によれば、禁止するビームをいずれか一方のみビームのみに偏らせないようにすることで、基地局300の負荷が偏らないようにすることができる。3つ目の方法によれば、基地局300の負荷を分散することができる。
【0055】
フローチャートの説明に戻り、ステップS406において、1つ目の方法で決定する場合には、通信制御装置200は、使用を禁止するビームをランダムに決定し(ステップS407)、ステップS410に進む。2つ目の方法で決定する場合には、通信制御装置200は、使用を禁止するビームをラウンドロビン方式で決定し(ステップS408)、ステップS410に進む。3つ目の方法で決定する場合には、通信制御装置200は、使用を禁止するビームを、収容されている端末局400が多い方の基地局300が照射するビームとし(ステップS409)、ステップS410に進む。
【0056】
通信制御装置200は、ステップS407、408、または409で決定されたビームを照射する基地局300に、使用禁止信号を送信し(ステップS410)、処理を終了する。
【0057】
以上説明した実施形態では、端末局400が基地局300の1つのビームに対するフィードバック情報を送信する前提で説明を進めたが、5G NRにおけるMeasurement Reportのように、基地局300の周囲の複数の端末局400から受信された、複数のビームに対するフィードバック情報を通信制御装置200に転送してもよい。この場合も、各ビーム情報ごとに、その受信電力の相関係数を導出することで本実施形態を適用することができる。
【0058】
さらに、相関係数は、任意の機械学習手法により計算されても構わない。これにより、任意の受信電力の大小やその変動を考慮した計算式を用いて相関係数を導出してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、各基地局300が他の基地局300と時間的に重複しない任意のタイミングでビームを送信する場合を例にした実施形態について説明した。時間的に重複しない任意のタイミングに限らず、5G NRのような集中制御型の無線通信システムにおいては、通信制御装置が各無線基地局装置に対してビーム送信のタイミングを指示しても構わない。
【0060】
通信制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。この場合、通信制御装置200は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、通信制御装置200として機能する。なお、通信制御装置200の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0061】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、高周波数帯に区分されるミリ波・準ミリ波を用いた無線通信に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…セル、100…無線通信システム、200…通信制御装置、201…通信部、202…ビーム情報記憶部、203…推定部、204…使用禁止信号送信部、300、300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11、300A、300B…基地局、301…データ処理部、302…ビーム制御部、303…通信制御部、304…フィードバック受信部、305…データ処理部、306…無線部、400…端末局、410、420…ビーム群、411、421…ビーム