(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】トナー、トナー収容ユニット、トナー製造方法、画像形成方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20241120BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241120BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2020092500
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】秋山 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】唐戸 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】勝又 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 花鈴
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017829(JP,A)
【文献】特開2011-197029(JP,A)
【文献】特開2017-020006(JP,A)
【文献】国際公開第2013/100129(WO,A1)
【文献】特開2005-099120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/087
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー表面に含まれる界面活性剤中の、60質量%超80質量%以下が長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を有する界面活性剤であり、20質量%以上40質量%以下が長鎖炭化水素基及び1個の親水性官能基を有する界面活性剤であ
り、
前記長鎖炭化水素基の炭素数が11以上である、
ことを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記長鎖炭化水素基が分岐鎖構造を有している、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項1
又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のトナーを収容したトナー収容ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のトナーを製造するためのトナーの製造方法であって、
少なくとも結着樹脂および/または結着樹脂前駆体および離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー材料液(油相)を調製する工程と、該油相を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して母体粒子を形成する工程と、を備え、
前記水系媒体が、長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を持つ界面活性剤を含有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
トナーを用いて、前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着工程と、を有し、
前記トナーとして請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のトナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを有し、
前記トナーが、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナー収容ユニット、トナー製造方法、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成は、一般に、感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成し、該静電荷像を現像剤で現像して可視像(トナー像)とした後、該可視像を紙等の記録媒体に転写し定着することにより定着像とする一連のプロセスにより行われる。前記現像剤としては、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤、及びキャリアを必要としない一成分系現像剤(磁性トナー、非磁性トナー)が知られている。
【0003】
従来より、前記トナーとしては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのトナーバインダーを着色剤などと共に溶融混練し、微粉砕した乾式トナーが用いられており、高品位、高画質の画像を得るために、トナーの粒子径を小さくすることが試みられている。
しかし、通常の混練、粉砕法による製造方法では、その粒子形状が不定形であり、二成分系現像剤として用いる場合には現像部内でのキャリアとの攪拌や、一成分系現像剤として用いる場合には現像ローラとトナー供給ローラ、層厚規制ブレードや摩擦帯電ブレードなどとの接触による接触ストレスにより、更にトナーが粉砕される。このため、極微粒子が発生したり、流動化剤がトナー表面に埋め込まれたりするために画像品質が低下するという問題がある。
【0004】
また、その形状のために粉体としての流動性が悪く、多量の流動化剤を必要としたり、トナーボトル内への充填率が低く、コンパクト化への阻害要因となっており、小粒径化による利益が十分に得られていない。また、粉砕法では、得られる粒子の粒子径に限界があり、更なる小粒径化に対応することができない。
【0005】
更に、フルカラー画像を作成するために多色トナーにより形成された画像の感光体から転写媒体や紙への転写プロセスも複雑になってきている。このため、粉砕トナーのような不定形の形状では、転写性の悪さから、転写された画像に抜けが生じたり、それを補うためにトナー消費量が増大したりするという問題がある。
【0006】
したがって、更なる転写効率の向上を果たすことにより、トナーの消費量を減少させて画像の抜けのない高品位の画像を得たり、ランニングコストを低減させたいという要求が高まっている。転写効率が非常に優れている場合、感光体や転写媒体から未転写トナーを取り除くためのクリーニングユニットが不要となり、機器の小型化、低コスト化が実現され、また、廃棄トナーもなくなる。このため、種々の球状のトナーの製造方法が考案され、例えば、懸濁重合法、乳化重合凝集法、ポリマー溶解懸濁法などによるトナーの製造方法が提案されている。
【0007】
前記ポリマー溶解懸濁法は、体積収縮を伴う工法であり、トナー材料を低沸点有機溶媒等の揮発性溶剤に溶解乃至分散させ、これを分散剤の存在する水系媒体中で乳化、液滴化した後に揮発性溶剤を除去するものである(特許文献1参照)。この方法は、前記懸濁重合法、前記乳化重合凝集法と異なり、用いることのできる樹脂の選択の幅が広く、特に透明性や定着後の画像部の平滑性が要求されるフルカラープロセスに有用なポリエステル樹脂を用いることができる点で優れている。
【0008】
しかし、得られるトナー粒子の表面に極性基(例えば、酸性基)が存在し、該極性基が湿度環境の影響を受け、帯電性が低下するという問題がある。また、用いた分散剤が強くトナー粒子表面に吸着し、後の洗浄操作によっても除去が困難であり、それに伴ってトナーの帯電性が用いた分散剤によって大きく支配されるという問題がある。このため、得られるトナーの平均帯電レベルは低く、帯電速度も緩慢で、また、湿度の影響を強く受けてしまいトナーが凝集したり、帯電性が低下したりするなど、環境安定性に劣るものであった。
【0009】
そこで特許文献2では、水中で疎水基を2個以上有する界面活性剤を添加し、トナー粒子の表面に付着させる方法が開示されている。特許文献3には、トナー粒子の表層部に、第1界面活性剤に由来する陽イオンと第2界面活性剤に由来する陰イオンとがイオン結合した疎水性塩を1種類以上含有させる方法が開示されている。特許文献4には静電荷像現像用トナーにおいて、ToF-SIMSで測定したトナー中の界面活性剤由来のイオン性官能基量がintensity値で30000以下であることを規定した静電荷像現像用トナーが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献2に記載のトナーの製造方法では、親水性を有する界面活性剤が使用されており、こうした界面活性剤がトナー粒子の表面に付着すると、トナー粒子の表面に水分子が吸着し易くなる。特に高湿度環境下では、トナー粒子の表面に水分子が吸着し易くトナー粒子の表面に水分子が吸着すると、トナー粒子の帯電量が減衰する傾向がある。また、上記特許文献3に記載のトナーは、トナーの表面の界面活性剤の疎水性を上げるために、第2界面活性剤を使用しており、この工程を含むことでトナー表面の界面活性剤の全体量は増加している。そのため、トナーの流動性が悪くなるといった課題がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐トナー飛散性、耐熱保存性、転写性及びクリーニング性が良好な静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための本発明は下記に記載のトナーに係るものである。
トナー表面に含まれる界面活性剤中の、60質量%超が長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を有する界面活性剤であり、40質量%以下が長鎖炭化水素基及び1個の親水性官能基を有する界面活性剤であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐トナー飛散性、耐熱保存性、転写性及びクリーニング性等の諸特性が良好なトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(トナー及びその製造方法)
本発明のトナーは、本発明のトナーの製造方法により得られる。
また、本発明のトナーは、トナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させて前記トナー材料の溶解乃至分散液を調製した後、該溶解乃至分散液を水系媒体中に、長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を持つ界面活性剤を用いて乳化乃至分散させ、該水系媒体中で重合体を反応させて接着性基材を少なくとも含む粒子を生成させてトナーを造粒して得られる。
【0016】
<トナー造粒工程>
前記トナー造粒工程は、トナー材料の溶解乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させてトナーを造粒する工程である。
【0017】
―界面活性剤―
本発明では、上記乳化時に使用する界面活性剤において、長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を有する界面活性剤が60質量%超であり、長鎖炭化水素基及び1個の親水性官能基を有する界面活性剤が40質量%以下であることが非常に重要である。
親水性官能基の数が2以上である界面活性剤の比率が60質量%超であることで、乳化時のトナーの粒度分布がシャープになり、親水性官能基が1本である界面活性剤の比率が40質量%以下であることで、トナーの帯電量の低下を抑制することができる。
上記界面活性剤の疎水基中の長鎖炭化水素基の炭素数は11以上であるとトナーの粒度分布は良化する。疎水基中の長鎖炭化水素基の炭素数が14未満であると、トナー飛散性及びクリーニング性が悪化することがないため、14未満であることが好ましい。上記界面活性剤はトナーの粒度分布の観点から、長鎖炭化水素基が直鎖構造を有していることが好ましい。上記界面活性剤の種類はトナーの粒度分布及びクリーニング性の観点からアニオンであることが好ましい。
【0018】
-トナー材料の溶解乃至分散液-
前記トナー材料の溶解液は、前記トナー材料を溶媒中に溶解させてなり、前記トナー材料の分散液は、前記トナー材料を溶媒中に分散させてなる。
前記トナー材料としては、トナーを形成可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単量体、重合体、活性水素基含有化合物、及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体のいずれかを含み、結晶性ポリエステル樹脂を含んでいてもよく、更に必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤、樹脂微粒子などのその他の成分を含む。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機溶剤が好ましい。
【0019】
--有機溶剤--
前記有機溶剤としては、前記トナー材料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100質量部に対し、40~300質量部が好ましく、60~140質量部がより好ましく、80~120質量部が更に好ましい。
【0020】
-水系媒体-
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などが挙げられる。
前記水と混和可能な溶剤としては、前記水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
-乳化乃至分散-
前記トナー材料の溶解乃至分散液を前記水系媒体中に乳化乃至分散させると、該水系媒体中に、前記トナー材料の溶解乃至分散液からなる分散体(油滴)が形成される。
前記トナー材料の溶解乃至分散液は、前記水系媒体中で攪拌しながら乳化乃至分散させるのが好ましい。
前記分散の方法としては特に制限はなく、公知の分散機等を用いて適宜選択することができ、該分散機としては、例えば、低速剪断断式分散機、高速剪断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、などが挙げられる。これらの中でも、前記分散体(油滴)の粒径を2~20μmに制御することができる点で、高速剪断式分散機が好ましい。
前記高速剪断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度などの条件については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記回転数としては、1,000~30,000rpmが好ましく、5,000~20,000rpmがより好ましく、前記分散時間としては、バッチ方式の場合は、0.1~5分が好ましく、前記分散温度としては、加圧下において0~150℃が好ましく、40~98℃がより好ましい。なお、前記分散温度は高温である方が一般に分散が容易である。
【0022】
-造粒-
前記造粒は、その方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法等を用いてトナーを造粒する方法、後述する接着性基材を生成しつつ該接着性基材を少なくとも含む粒子を得ることによりトナーを造粒する方法などが挙げられるが、これらの中でも、前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法が好ましい。
【0023】
このようにして造粒されるトナーは、接着性基材を少なくとも含み、結晶性ポリエステル樹脂を含んでいてもよく、更に必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤、樹脂微粒子などのその他の成分を含んでなる。
【0024】
--接着性基材--
前記接着性基材は、紙等の記録媒体に対し接着性を示し、前記活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を前記水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを少なくとも含み、更に公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
前記接着性基材の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1,000以上が好ましく、2,000~10,000,000がより好ましく、3,000~1,000,000が特に好ましい。
前記重量平均分子量が、1,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0026】
前記接着性基材のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、30~70℃が好ましく、40~65℃がより好ましい。本発明のトナーでは、架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存していることにより、従来のポリエステル系トナーと比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示すものである。
前記ガラス転移温度(Tg)が、30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。
【0027】
前記ガラス転移温度は、例えば、TG-DSCシステムTAS-100(理学電機社製)を用いて、以下の方法により測定することができる。まず、トナー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。
室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10min放置する。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、TG-DSCシステムTAS-100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出することができる。
【0028】
前記接着性基材の貯蔵弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上であり、110~200℃が好ましい。該(TG’)が100℃未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
前記接着性基材の粘性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、測定周波数20Hzにおいて1,000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下であり、90~160℃が好ましい。該(Tη)が180℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。
したがって、耐ホットオフセット性と低温定着性との両立を図る観点から、前記(TG’)は前記(Tη)よりも高いことが好ましい。すなわち、(TG’)と(Tη)との差(TG’-Tη)は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。該差は大きければ大きいほどよい。
また、低温定着性と耐熱保存性との両立を図る観点からは、前記(TG’-Tη)は0~100℃が好ましく、10~90℃がより好ましく、20~80℃が更に好ましい。
【0029】
前記接着性基材の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、前記活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを前記水系媒体中で反応させて得られる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよく、この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0~10/90が好ましく、80/20~20/80がより好ましく、60/40~30/70が特に好ましい。
前記ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0030】
前記ウレア変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下(1)から(10)、即ち、(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、等が好適に挙げられる。
【0031】
前記アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、前記B1~B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等、が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0032】
前記ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
前記B1~B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、前記(B1)から(B5)のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0033】
なお、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。該反応停止剤を用いると、前記接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などが挙げられる。
【0034】
前記アミン類(B)と、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3~3/1であるのが好ましく、1/2~2/1であるのがより好ましく、1/1.5~1.5/1であるのが特に好ましい。
前記混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、前記ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0035】
---活性水素基含有化合物と反応可能な重合体---
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)としては、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0036】
前記プレポリマーにおける前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。
これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。
【0037】
前記プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)であるのが特に好ましい。
前記ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適に挙げられる。
【0038】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ前記活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。
【0039】
前記ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオール(DIO)単独、又は前記ジオール(DIO)と少量の前記3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が好ましい。
【0040】
前記ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、炭素数2~12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。前記アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数2~12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2~12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0041】
前記3価以上のポリオール(TO)としては、3~8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
前記3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0042】
前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合物における、前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01~10が好ましく、100:0.01~1がより好ましい。
【0043】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はDICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。
前記アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。前記アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4~20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8~20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0044】
前記3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3~8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。
前記芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9~20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0045】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、前記ジカルボン酸(DIC)、前記3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。前記低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0046】
前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物における前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01~10が好ましく、100:0.01~1がより好ましい。
【0047】
前記ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、前記ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1~1/1であるのが好ましく、1.5/1~1/1であるのがより好ましく、1.3/1~1.02/1であるのが特に好ましい。
【0048】
前記ポリオール(PO)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、2~20質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0049】
前記ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。前記イソシアヌレート類としては、例えば、トリス-イソシアナトアルキル-イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル-イソシアヌレート等が挙げられる。
これらは、1種単独でも使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記ポリイソシアネート(PIC)と、前記活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1~1/1であるのが好ましく、4/1~1.2/1でるのがより好ましく、3/1~1.5/1であるのが特に好ましい。
前記イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
【0051】
前記ポリイソシアネート(PIC)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、2~20質量%が更に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0052】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2~5がより好ましく、1.5~4がより好ましい。
前記イソシアネート基の平均数が、1未満であると、前記ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0053】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000~30,000が好ましく、1,500~15,000がより好ましい。該重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0054】
前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
すなわち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05~0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50~200μl注入して測定する。前記試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。前記検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、PressureChemicalCo.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、及び4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、前記検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0055】
---結着樹脂---
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。
前記未変性ポリエステル樹脂としては、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂と同様のもの、即ちポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物、等が挙げられる。該未変性ポリエステル樹脂は、その一部が前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と相溶していること、すなわち、互いに相溶可能な類似の構造であるのが、低温定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
【0056】
前記未変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000~30,000が好ましく、1,500~15,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるので、上述したように前記重量平均分子量(Mw)が1,000未満である成分の含有量は、8~28質量%であることが必要である。一方、前記重量平均分子量(Mw)が30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
前記未変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、通常30~70℃であり、35~70℃がより好ましく、35~50℃が更に好ましく、35~45℃が特に好ましい。前記ガラス転移温度が、30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5mgKOH/gが以上が好ましく、10~120mgKOH/gがより好ましく、20~80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が、5未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の酸価としては、1.0~50.0mgKOH/gが好ましく、1.0~30.0がより好ましく、5.0~20.0mgKOH/gが更に好ましい。一般に前記トナーに酸価をもたせることによって負帯電性となり易くなる。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナーに含有させる場合、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と該未変性ポリエステル樹脂(PE)との混合質量比(RMPE/PE)としては、5/95~25/75が好ましく、10/90~25/75がより好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合質量比が、95を超えると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがあり、25未満であると、光沢性が悪化することがある。
前記結着樹脂における前記未変性ポリエステル樹脂の含有量としては、例えば、50~100質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましく、80~90質量%が更に好ましい。該含有量が50質量%未満であると、低温定着性や画像の光沢性が悪化することがある。
【0057】
----結晶性ポリエステル樹脂----
前記結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性を有し、定着開始温度付近において急激な粘度低下を生ずる熱溶融特性を示す。すなわち、溶融開始温度直前までは結晶性により耐熱保存性が良好で、溶融開始温度では急激な粘度低下(シャープメルト性)を生じて定着することから、優れた耐熱保存性と低温定着性とを両立するトナーを作製することができる。また、離型幅(低温定着下限温度とホットオフセット発生温度との差)にも優れる。
【0058】
前記結晶性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコール成分としての炭素数2~6のジオール化合物、特に1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びこれらの誘導体を80モル%以上、好ましくは85~100モル%含有したものと、少なくとも酸性分としてのマレイン酸、フマル酸、コハク酸、及びこれらの誘導体と、を用いて合成される下記一般式(1)で表される結晶性ポリエステル樹脂が好適に挙げられる。
【0059】
【化6】
(前記一般式(1)中、n及びmは、繰返単位数を表し、Lは1~3の整数を表し、R
1及びR
2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子又は炭化水素基を表す。)
【0060】
前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御するため、前記結晶性ポリエステルの合成を行う際に、アルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを使用してもよい。なお、前記結晶性ポリエステルの分子構造は、固体NMRなどにより確認することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、オルトジクロロベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布で、1,000~30,000が好ましく、1,000~6,500がより好ましい。該重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
前記結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、オルトジクロロベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布で、500~6,000が好ましく、500~2,000がより好ましい。また、(Mw/Mn)としては、2~8が好ましく、2~5がより好ましい。
なお、前記GPCによる分子量分布において、横軸をlog(M)、縦軸を質量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であるのが好ましい。
【0061】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融解温度及びF1/2温度としては、耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが好ましく、例えば、DSC吸熱ピーク温度が50~150℃であるのが好ましい。該融解温度及び該F1/2温度が50℃未満であると、耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の温度でブロッキングが発生しやすくなり、150℃を超えると、定着下限温度が高くなるため低温定着性が悪化することがある。
【0062】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、赤外吸収スペクトルにおいて965±10cm-1及び990±10cm-1の少なくともいずれかにオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するのが好ましい。該オレフィンのδCHに基づく吸収が前記位置に存在すると、低温定着性が向上する。
【0063】
前記結晶性ポリエステルの酸価としては、紙と樹脂との親和性の観点から、低温定着性を実現するためには、8mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。一方、ホットオフセット性を向上させるためには、45mgKOH/g以下が好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、低温定着性、帯電特性の向上の点で、0~50mgKOH/gが好ましく、5~50mgKOH/gがより好ましい。
【0064】
前記未変性ポリエステル樹脂(b)及び前記結晶性ポリエステル樹脂(c)を前記トナーに含有させる場合、前記ウレア結合性生成基含有ポリエステル樹脂(a)と前記未変性ポリエステル樹脂(b)と前記結晶性ポリエステル樹脂(c)との混合質量比としては、通常(a)/(b)+(c)が5/95~25/75であり、10/90~25/75が好ましく、12/88~25/75がより好ましく、12/88~22/78が更に好ましく、かつ、(b)と(c)との質量比が、99/1~50/50であり、95/5~60/40が好ましく、90/10~65/35がより好ましい。前記質量比が前記数値範囲を外れると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。
【0065】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、樹脂微粒子、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0066】
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~15質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0068】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0070】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高剪断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高剪断分散装置が好適に用いられる。
【0071】
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。
前記ワックス類としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン、等が挙げられる。前記ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
前記ポリオレフィンワッックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
前記長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワッックス、サゾールワックス等が挙げられる。
【0072】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40~160℃が好ましく、50~120℃がより好ましく、60~90℃が特に好ましい。
前記融点が、40℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
前記離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5~1000cpsが好ましく、10~100cpsがより好ましい。
前記溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
【0073】
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましい。
前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0074】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEGVP2036、コピーチャージNXVP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
前記帯電制御剤は、前記マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、あるいは前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。
【0075】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。該含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0076】
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
なお、前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸-アクリル酸エステル重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。
前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS-30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン、1,6-ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0077】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、(1)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、(2)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、(3)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法、(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、などが好適に挙げられる。
【0078】
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm~2μmが好ましく、5nm~500nmがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、20~500m2/gが好ましい。
前記無機微粒子の前記トナーにおける含有量としては、0.01~5.0質量%が好ましく、0.01~2.0質量%がより好ましい。
【0079】
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01~1μmのものが好適である。
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0080】
前記造粒の一例として、前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法を以下に示す。
前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法においては、例えば、水系媒体相の調製、前記トナー材料の溶解乃至分散液の調製、乳化乃至分散液の調製、前記接着性基材の生成、前記有機溶剤の除去、その他(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)の合成、前記活性水素基含有化合物の合成等)を行う。
【0081】
前記水系媒体相の調製は、例えば、前記樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。該樹脂微粒子の該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5~10質量%が好ましい。
前記トナー材料の溶解乃至分散液の調製は、前記有機溶剤中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。
なお、前記トナー材料の中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、前記水系媒体相調製において、前記樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させる際に該水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、前記トナー材料の溶解乃至分散液を前記水系媒体相に添加する際に、該溶解乃至分散液と共に前記水系媒体相に添加してもよい。
【0082】
前記乳化乃至分散液の調製は、先に調製した前記トナー材料の溶解乃至分散液を、先に調製した前記水系媒体相中に乳化乃至分散させることにより行うことができる。そして、該乳化乃至分散の際、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応乃至架橋反応させると、前記接着性基材が生成する。
前記接着性基材(例えば、前記ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記トナー材料の溶解乃至分散液を、前記活性水素基含有化合物(例えば、前記アミン類(B))と共に、前記水系媒体相中に乳化乃至分散させ、分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)前記トナー材料の溶解乃至分散液を、予め前記活性水素基含有化合物を添加した前記水系媒体中に乳化乃至分散させ、分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)前記トナー材料の溶解乃至分散液を、前記水系媒体中に添加混合させた後で、前記活性水素基含有化合物を添加し、分散体を形成し、該水系媒体相中で粒子界面から両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、前記(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子において濃度勾配を設けることもできる。
【0083】
前記乳化乃至分散により、前記接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、反応時間としては、10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましく、反応温度としては、0~150℃が好ましく、40~98℃がより好ましい。
【0084】
前記水系媒体相中において、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記分散体を安定に形成する方法としては、例えば、前記水系媒体相中に、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等の前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解乃至分散させて調製した前記トナー材料の溶解乃至分散液を添加し、剪断力により分散させる方法、等が挙げられる。なお、前記分散の方法の詳細は上述した通りである。
【0085】
前記乳化乃至分散液の調製において、前記水系媒体の使用量としては、前記トナー材料100質量部に対し、50~2,000質量部が好ましく、100~1,000質量部がより好ましい。
前記使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0086】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、などが挙げられる。
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、などが挙げられる。
前記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-シアノアクリル酸、α-シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β-ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-クロロ2-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。前記アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。前記クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0087】
前記乳化乃至分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。
該分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。
該分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0088】
前記乳化乃至分散液の調製においては、前記伸長反応乃至前記架橋反応の触媒を用いることができる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、等が挙げられる。
【0089】
得られた分散液(乳化スラリー)から、有機溶剤を除去する。該有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、前記油滴中の前記有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。前記有機溶剤の除去が行われると、トナー粒子が形成される。そして、該トナー粒子に対し、洗浄等を行うことができる。
【0090】
以上の工程により、前記トナー材料の溶解乃至分散液が前記水系媒体中に乳化乃至分散されて前記トナーが造粒される。
【0091】
<その他の工程>
前記トナー造粒工程及び前記トナー疎水化工程を経て得られたトナー粒子に対し、乾燥等を行うことができ、更にその後、所望により分級等を行うことができる。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0092】
また、得られたトナー粒子を、前記着色剤、離型剤、前記帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を印加することにより、該トナー粒子の表面から該離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0093】
本発明のトナーは、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、平均円形度、針入度、低温定着性、オフセット未発生温度、熱特性、ガラス転移温度、画像濃度、BET比表面積などを有していることが好ましい。
【0094】
前記トナーの体積平均粒径(Dv)としては、例えば、3~8μmが好ましく、4~7がより好ましく、5~6が更に好ましい。
前記体積平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0095】
前記トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、例えば、1.20以下が好ましく、1.00~1.20がより好ましく、1.10~1.20が更に好ましく、1.10~1.15が特に好ましい。
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させたりすることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.20を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0096】
前記体積平均粒径、及び、前記体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
【0097】
前記平均円形度は、前記トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、例えば、0.900~0.980が好ましく、0.950~0.975がより好ましい。なお、前記平均円形度が0.940未満の粒子が15%以下であることが好ましい。
前記平均円形度が、0.900未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、0.980を超えると、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
前記平均円形度は、例えば、トナーを含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法などにより計測することができ、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA-2100(シスメックス社製)等を用いて計測することができる。
【0098】
前記針入度としては、例えば、針入度試験(JISK2235-1991)で測定した針入度が、15mm以上であることが必要であり、20~30mmがより好ましい。
前記針入度が、15mm未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。
前記針入度は、JISK2235-1991に従って測定することができ、具体的には、50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に20時間放置する。このトナーを室温まで冷却し、針入度試験を行うことにより針入度を測定することができる。なお、前記針入度の値が大きい程、前記耐熱保存性が優れることを示している。
【0099】
前記低温定着性としては、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させる観点からは、定着下限温度が低くなるほど好ましく、また、オフセット未反応温度が高くなるほど好ましく、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させ得る温度領域としては、前記定着下限温度が150℃未満であり、前記オフセット未発生温度が200℃以上である。
なお、前記定着下限温度は、例えば、画像形成装置を用い、転写紙をセットし、複写テストを行い、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度を定着下限温度としたものである。
前記オフセット未発生温度は、例えば、画像形成装置を用いて、転写紙をセットし、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各単色、及び中間色としてレッド、ブルー、及びグリーンのベタ画像を各単色で現像されるように調整し、定着ベルトの温度が可変となるように調整して、オフセットの発生しない温度を測定することによって求めることができる。
【0100】
前記熱特性は、フローテスター特性とも言われ、例えば、軟化温度(Ts)、流出開始温度(Tfb)、1/2法軟化点(T1/2)などとして評価される。
これらの熱特性は、適宜選択した方法により測定することができ、例えば、高架式フローテスターCFT500型(島津製作所製)を用いて測定したフローカーブから求めることができる。
前記軟化温度(Ts)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、30℃以上が好ましく、50~120℃がより好ましい。前記軟化温度(Ts)が、30℃未満であると、耐熱保存性及び低温保存性の少なくともいずれかが悪化することがある。
前記流出開始温度(Tfb)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50℃以上が好ましく、60~150℃がより好ましい。前記流出開始温度(Tfb)が、50℃未満であると、耐熱保存性及び低温保存性の少なくともいずれかが悪化することがある。
前記1/2法軟化点(T1/2)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、60℃以上が好ましく、80~170℃がより好ましい。前記1/2法軟化点(T1/2)が、60℃未満であると、耐熱保存性及び低温保存性の少なくともいずれかが悪化することがある。
【0101】
前記ガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、40~70℃が好ましく、45~65℃がより好ましい。該ガラス転移温度(Tg)が、40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。
前記ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(「DSC-60」;島津製作所製など)を用いて測定することができる。
【0102】
前記画像濃度は、分光計(X-ライト社製、938スペクトロデンシトメータ)を用いて測定した濃度値が、例えば、1.40以上が好ましく、1.45以上がより好ましく、1.50以上が特に好ましい。
前記画像濃度が、1.40未満であると、画像濃度が低く、高画質が得られないことがある。
前記画像濃度は、例えば、カラー複写機(「プリテール550」;株式会社リコー製)を用いて、複写紙(「タイプ6200」;株式会社リコー製)に現像剤の付着量が0.4±0.05mg/cm2のベタ画像を定着ローラの表面温度が160±2℃で形成し、得られたベタ画像における任意の3箇所の画像濃度を、分光計(X-ライト社製、938スペクトロデンシトメータ)を用いて測定しその平均値を算出することにより、測定することができる。
【0103】
前記トナーにおけるBET比表面積としては、例えば、0.5~8.0m2/gが好ましく、0.5~7.5m2/gがより好ましい。
前記BET比表面積が、0.5m2/g未満であると、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が皮膜化又はトナー表面全体を密に覆う状態となり、樹脂微粒子がトナー内部のバインダー樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られることがある一方、8.0m2/gを超えると、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られることがある。
前記トナーの比表面積は、BET法に従って測定することができ、例えば、比表面積測定装置トライスター3000(島津製作所製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することができる。
【0104】
前記トナーの酸価としては、例えば、0.5~40.0(KOHmg/g)が好ましく、1.0~30.0がより好ましく、5.0~20.0が更に好ましい。該トナーに酸価をもたせることによって負帯電性となり易くなる。
【0105】
本発明のトナーの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは前記着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができる。
【0106】
本発明のトナーの製造方法は、前記トナー造粒工程において、前記トナー材料の溶解乃至分散液を前記水系媒体中に前記界面活性剤を使用して乳化乃至分散させてトナーを造粒させるので、帯電性、耐凝集性、流動性等の諸特性が良好であり、疎水性が高く環境安定性に優れたトナーを効率的に製造することができる。
【0107】
本発明のトナーは、表面の疎水性が高いため、帯電性、耐凝集性、流動性等の諸特性が良好であり、環境安定性に優れ、高品質な画像を形成することができる。また、本発明のトナーが、前記活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を水系媒体中で反応させて得られる前記接着性基材を少なくとも含む粒子を含むと、転写性、定着性等の諸特性に更に優れる。
【0108】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0109】
本発明のトナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明の前記第1~第4の形態のいずれかのトナーを用いて画像形成が行われるため、トナーの消費量を減少させて画像の抜けのない高品位の画像を得たり、ランニングコストを低減させたりすることができる。
【0110】
本発明の画像形成方法は、例えば、
図1の概略構成図に示すような電子写真プロセスを用いる画像形成装置により実施される。以下、
図1に示す画像形成装置の概略的な構成について説明する。
感光体(像担持体)1は、矢印方向に回転駆動されながら、その表面が帯電器2により一様に帯電される(帯電させる工程)。次いで、この感光体1は、その回転方向の該帯電器2の下流側部位の露光部において、図示しない露光手段により画像光γを照射される。これにより、該画像光γが照射された部位の感光体表面の電荷が消失して、該感光体1の表面に、該画像光に対応した静電潜像が形成される。
【0111】
上記露光部の下流部位には、現像手段としての現像器3が配設されており、該現像器3内には、現像剤としてのトナー4が収容されている。該トナー4は、搬送スクリュー13を備えたパドル(攪拌機構)14により撹拌混合されて所定の極性に摩擦帯電された後、現像スリーブ5によって、該現像スリーブ5と感光体1とのニップ部(現像領域)に搬送される。この現像領域に搬送されたトナーは、図示しない現像バイアス印加手段により該現像領域に形成された現像電界によって、該現像スリーブ5の表面から感光体1の表面側に移動されて該感光体表面に付着し、該感光体表面に形成された静電潜像をトナー像化(可視像化)する(現像する工程)。
【0112】
このようにして感光体1上に形成されたトナー像は、上記現像器3の下流側の、該感光体1に対して近接して配設された転写手段としての転写搬送ベルト6と該感光体1とのニップ部(転写部)により、レジストローラ18により該転写部に給紙された転写体としての転写紙S上に転写される(転写する工程)。そして、このトナー像が転写された転写紙は、該転写搬送ベルト6の回転方向下流側に配設された図示しない定着手段としての定着ローラにより、該トナー像を定着された(定着画像を得る工程)後、図示しない排紙手段により装置本体外の排紙トレイ上に排出される。転写搬送ベルト6は、バイアスローラ6aに懸架されている。
【0113】
一方、上記転写部において該転写紙上に転写されずに、該感光体1上に残留したトナー(残留トナー)は、上記転写部の感光体回転方向下流側に配設されたクリーニング手段としてのクリーニング装置のクリーニングブレード7、回収ばね8および回収コイル9により、感光体1上から除去される。また、この残留トナーのクリーニング後の感光体1上に残留した残留電荷は、除電ランプ等からなる除電器20によって除去される。
図1に記載の符号中、16は反射濃度検知センサー(Pセンサー)であり、17はトナー濃度センサーである。10は感光体およびクリーニングユニット(PCU)を表す。
【実施例】
【0114】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
また、以下の記載においては特に明記しない限り、部は質量部を示し、%は質量%を示す。
【0115】
下記実施例において、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶ポリエステル樹脂、ポリエステルプレポリマー等の樹脂における、酸価、水酸基価、及び重量平均分子量は、以下のようにして測定した。
【0116】
<酸価の測定>
JISK0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
まず、試料0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加して、室温(23℃)で約10時間撹拌して溶解した。
更に、エタノール30mLを添加して試料溶液とした。
電位差自動滴定装置(DL-53Titrator、メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で酸価を測定し、解析ソフトLabXLightVersion1.00.000を用いて解析した。
なお、装置には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いた。
水酸基の場合も同様の条件で測定した。
測定は、上記記載の測定方法にて計算することができるが、具体的には次のように計算した。予め、標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、下記式により酸価を求めた。
酸価[KOHmg/g]
=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料質量[g]
(ただし、Nは、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)
【0117】
<水酸基価の測定>
JISK0070-1966に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
まず、試料0.5gを100mlのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mLを正確に加えた。
その後、100℃±5℃の浴中に浸して加熱した。
1~2時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後水を加えて振り動かして無水酢酸を分解した。次いで、分解を完全にするため、再びフラスコを浴中で10分間以上加熱し放冷後、有機溶媒でフラスコの壁をよく洗浄した。
この液を前記電極を用いてN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で電位差滴定を行い、水酸基価を求めた。
【0118】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量は次の様に測定する。
重量平均分子量及は、以下の方法で測定した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)カラム:TSKgelSuperHZM-H15cm3連(東ソー株式会社製)温度:40℃溶媒:テトラヒドロフラン(THF)流速:0.35mL/min試料:0.15%の試料を0.4mL注入試料の前処理:試料をテトラヒドロフラン(THF、安定剤含有、和光純薬工業株式会社製)に0.15%で溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾過を試料として用いた。
テトラヒドロフラン試料溶液を100μL注入して測定した。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwの測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工株式会社製ShowdexSTANDARDのStd.NoS-7300、S-210、S-390、S-875、S-1980、S-10.9、S-629、S-3.0、S-0.580、トルエンを用いた。
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0119】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,12-デカンジオール2,500g、1,8-オクタン二酸2,330g、及びハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で20時間反応させた後、200℃に昇温して6時間反応させ、更に8.3kPaにて10時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点は64℃、重量平均分子量は5720、酸価28mgKOH/gであった。
【0120】
(ワックス分散剤の合成例)
温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン600部、低分子量ポリエチレン(サンワックスLEL-400、軟化点128℃、三洋化成工業株式会社製)300部を入れ、充分溶解し、窒素置換後、スチレン2,310部、アクリロニトリル270部、アクリル酸ブチル150部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート78部、及びキシレン455部の混合溶液を175℃で3時間かけて滴下して重合し、更にこの温度で30分間保持し、ワックス分散剤(1)を合成した。
【0121】
(非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂の合成例)
~非結晶性ポリエステル樹脂(1)の製造~
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物90部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物209部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部、及びジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次いで、該反応液を10~15mmHgの減圧下にて5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸25部を添加し、常圧下、180℃にて2時間反応させて、非結晶性ポリエステル(1)を合成した。
得られたポリエステル樹脂の水酸基価は15mgKOH/g、重量平均分子量〔Mw〕が10000、酸価が5mgKOH/gであった。
【0122】
(ポリエステルプレポリマーの合成例)
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物質量81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。
更に、10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させて中間体ポリエステルを合成した。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記合成した中間体ポリエステル410部、イソホロンジイソシアネート89部、及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させて、ポリエステルプレポリマー(1)を合成させた。
得られたポリエステルプレポリマー(1)の遊離イソシアネート含有量は、1.53%であった。
【0123】
(界面活性剤の合成例)
~界面活性剤(1)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルデカン(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1684部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を101部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物1を得た。上記アルキル化反応生成物(1)を、発煙硫酸を用いて60分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(1)を得た。
【0124】
~界面活性剤(2)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルデカン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物に1、4-ジフェノキシベンゼン(東京化成工業株式会社製)を2595部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を155部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物2を得た。上記アルキル化反応生成物(2)を、発煙硫酸を用いて60分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(2)を得た。
【0125】
~界面活性剤(3)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルノナン(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1850部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を111部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(3)を得た。上記アルキル化反応生成物3を、発煙硫酸を用いて30分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(3)を得た。
【0126】
~界面活性剤(4)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、ウンデカン(東京化成工業株式会社製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1684部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を101部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(4)を得た。上記アルキル化反応生成物4を、発煙硫酸を用いて30分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(4)を得た。
【0127】
~界面活性剤(5)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、TRIDECANE,7-METHYL-(DayangChemicalsCo.,Ltd.製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1327部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を79部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(5)を得た。上記アルキル化反応生成物5を、発煙硫酸を用いて30分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(5)を得た。
【0128】
~界面活性剤(6)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルデカン(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1684部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を101部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(6)を得た。上記アルキル化反応生成物6を、発煙硫酸を用いて30分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(6)を得た。
【0129】
~界面活性剤(7)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルデカン(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にベンゼン(東京化成工業株式会社製)を773部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を46部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(7)を得た。上記アルキル化反応生成物7を、発煙硫酸を用いて30分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(7)を得た。
【0130】
~界面活性剤(8)の製造~
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、2-メチルデカン(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1000部、投入し、ガス導入菅から塩素ガスを導入しながら、100~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社聖製)を1684部投入し、またAlCl3含量27%のアルキル化触媒を101部投入し、100℃で約60分アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒を分離し、蒸留操作によって未反応成分を除去する事によって、アルキル化反応生成物(8)を得た。上記アルキル化反応生成物8を、発煙硫酸を用いて70分間スルホン化を行い、NaOHで中和処理をする事によって、界面活性剤(8)を得た。
【0131】
界面活性剤(1)~(8)の親水性官能基数、親水性官能基数が1であるものの割合、長鎖炭化水素基の炭素数、長鎖炭化水素基の構造、及び、界面活性剤種を下記表1に示す。
【0132】
【0133】
(実施例1)
<トナーの作製>
-顔料・ワックス分散液の作製-
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、前記合成した非結晶性ポリエステル樹脂(1)723部、カルナウバワックス(WA-05セラリカ野田社製)110部、前記合成したワックス分散剤(1)77部(ワックス分散剤の含有量はワックスに対し70%)、帯電制御剤(CCA、サリチル酸金属錯体E-84、オリエント化学工業株式会社製)22部、及び酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。
次いで、容器内に、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)155部、及び酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し、原料溶解液を得た。
得られた原料溶解液1,324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック及びワックスの分散を行った。
次いで、前記合成した非結晶性ポリエステル樹脂(1)の65%酢酸エチル溶液1,042.3部を添加し、上記条件のビーズミルで1パスし、顔料・ワックス分散液(1)を得た。
得られた顔料・ワックス分散液の固形分濃度は50%であった。
【0134】
-非結晶性ポリエステル樹脂溶解液(1)の作成-
金属製2L容器に、非結晶性ポリエステル樹脂(1)100部、及び酢酸エチル400部を入れ、40℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で冷却をし、非結晶性ポリエステル樹脂溶解液(1)を調製した。
【0135】
-油相の調製-
前記調製した顔料・ワックス分散液664部(ワックスのトナーにおける含有量4%)、前記合成したポリエステルプレポリマー(1)73部、前記調製した非結晶性ポリエステル樹脂溶解液(1)150部、及び5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(シグマアルドリッチジャパン株式会社社製)7.8部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmで1分間混合し、油相とした。
【0136】
-有機微粒子エマルションの合成-
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業株式会社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
得られた乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。
更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、75℃で5時間熟成させてビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液の微粒子分散液(1)を得た。微粒子分散液(1)中の樹脂微粒子の割合は20%であった。
【0137】
-水相の調製-
水884.0部、微粒子分散液(1)16.0部、界面活性剤(1)210.0部、及び酢酸エチル90.0部を混合し、乳白色の液体を得た。これを水相とする。
【0138】
-乳化及び脱溶媒-
次に、容器内に前記調製した油相800部、及び前記調製した水相1,200部を入れ、TKホモミキサーを用いて、13,000rpmで20分間混合し、乳化スラリーを得た。
得られた乳化スラリー2,050部に対しイオン交換水410部を添加したものを、撹拌機、及び温度計をセットした容器に投入し、30℃で8時間脱溶媒した後、45℃で4時間熟成させて、分散スラリーを得た。
【0139】
-洗浄及び乾燥-
得られた分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。
次いで、10%塩酸100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
次いで、イオン交換水300部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
得られた濾過ケーキを、循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥させ、目開き75μmメッシュで篩い、実施例1のトナー母体粒子1を作製した。
【0140】
(実施例2)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(2)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のトナー母体粒子2を作製した。
【0141】
(実施例3)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(3)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のトナー母体粒子3を作製した。
【0142】
(実施例4)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(4)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナー母体粒子4を作製した。
【0143】
(実施例5)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(5)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナー母体粒子5を作製した。
【0144】
(実施例6)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)をGlycerolα-Monomyristate(東京化成工業株式会社製)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のトナー母体粒子6を作製した。
【0145】
(実施例7)
-顔料・ワックス分散液の作製-
実施例1と同様の操作を行い、顔料・ワックス分散液を得た。
【0146】
-非結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液の作成-
実施例1と同様の操作を行い、非結晶性ポリエステル樹脂溶解液を調製した。
【0147】
-油相の調製-
前記調製した顔料・ワックス分散液664部(ワックスのトナーにおける含有量4%)、前記調製した非結晶性ポリエステル樹脂溶解液223部、を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmで1分間混合し、油相とした。
【0148】
-水相の調製-
水884.0部、微粒子分散液(1)16.0部、界面活性剤(6)210.0部、及び酢酸エチル90.0部を混合し、乳白色の液体を得た。これを水相とする。
【0149】
-乳化及び脱溶媒-
実施例1と同様の操作を行い、分散スラリーを得た。
【0150】
-洗浄及び乾燥-
実施例1と同様の操作を行い、実施例7のトナー母体粒子7を作製した。
【0151】
(実施例8)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(6)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8のトナー母体粒子8を作製した。
【0152】
(比較例1)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(7)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のトナー母体粒子9を作製した。
【0153】
(比較例2)
<トナーの作製>
実施例1において、界面活性剤(1)を界面活性剤(8)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナー母体粒子10を作製した。
【0154】
-トナー表面残存界面活性剤の分析-
<トナー表面残存界面活性剤の抽出>
得られたトナー母体粒子、0.1gに10mlのメタノール添加し、30min超音波照射を実施した。超音波照射後の分散液を、目開き2μmのフィルターでフィルタリングする事によって、界面活性剤抽出液を得た。
【0155】
<トナー残存界面活性剤の分析>
得られた界面活性剤抽出液を以下の条件で分析を実施した。
測定装置:LCMS-8030(液体クロマトグラフ質量分析計:島津製作所社製)
カラム:InertSustainSwift(ジーエルサイエンス株式会社社製)
移動相:酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=80/20、メタノール(グラジエント溶離)
流速:0.3ml/min
注入量:0.2μl
試料中の検出された各ピークから、各界面活性剤成分の親水性官能基数、親水性官能基数が1のものの割合、長鎖炭化水素基の炭素数、長鎖炭化水素基の構造、界面活性剤種及び各界面活性剤成分の質量割合を求めた。
各分析結果は、トナー評価結果と合わせて、表2に示す。
【0156】
-外添処理-
得られた実施例1~8及び比較例1~2の各トナー母体粒子1~14を100部に、外添剤として疎水性シリカ(HDKH2000、クラリアントジャパン社製)0.7部と、疎水化酸化チタン0.3部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合し、外添処理して、トナーを作製した。
【0157】
上記実施例1~8および上記比較例1~2における、製造条件及び界面活性剤の分析結果について表1に示す。
【0158】
(評価項目)
<耐トナー飛散性>
画像面積率20%のチャートを、市販のデジタルフルカラープリンター(imagioMPC6000、A4横カラー50枚/分、株式会社リコー製)を用い8万枚連続出力した際の機内のトナー汚染の程度を目視にて、下記基準により4段階で評価した。「△」以上が実用可能である。
【0159】
[評価基準]
◎:トナー汚れがまったく観察されず良好な状態である
○:わずかに汚れが観察される程度で問題とはならい
△:少し汚れが観察される程度である
×:許容範囲外で非常に汚れがあり問題となる
【0160】
(耐熱保存性)
トナーを50℃×8時間保管後、42メッシュの篩にて2分間ふるい、金網上の残存率をもって耐熱保存性の指標とした。
耐熱保存性は以下の3段階で評価した。
◎:5%未満(全く問題ないレベル)
○:5%以上20%未満(若干保存性が悪いが、実用上問題ないレベル)
△:20%以上30%未満(若干保存性が悪いが、実用上許容可能なレベル)
×:30%以上(実用上問題のあるレベル)
【0161】
<転写性>
画像形成装置MF2800(株式会社リコー製)を用いて、マクベス反射濃度計で平均画像濃度が1.38以上となる、15cm×15cmの黒ベタ画像をマイリサクルペーパー100に形成した。転写率は下記式(1)により求めた。
転写率[%]=(記録紙上に転写されたトナー量/感光体上に現像されたトナー量)×100・・・(式(1))
転写性の判定基準は下記の通りである。
◎:転写性が97%以上(全く問題ないレベル)
○:転写率が95%以上97%未満(若干転写性が悪いが、実用上問題ないレベル)
△:転写率が80%以上95%未満(若干転写性が悪いが、実用上許容可能なレベル)
×:転写率が80%未満。実用上問題のあるレベル。
【0162】
<クリーニング性>
デジタルフルカラー複写機imagioColor2800(リコー社製)を用い、清掃工程を通過した感光体上の転写残トナーを、スコッチテープ(住友スリーエム社製)を用いて白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、ブランクとの差についてクリーニング性の指標とした。クリーニング性の判定基準は下記の通りである。
◎:ブランクとの差が0.00となり、全く問題ないレベル。
○:ブランクとの差が0.01以下であるが、スジ状に少し発生しているもの。若干クリーニング性が悪いが、実用上問題ないレベル。
△:ブランクとの差が0.02以下であり、若干クリーニング性が悪いが、実用上許容可能なレベル。
×:ブランクとの差が0.02を超過。実用上問題のあるレベル。
【0163】
下記表2の評価結果から明らかなように、実施例1~8のトナーについて、トナー飛散性、耐熱保存性、転写性、クリーニング性が十分に優れる結果となっている。対して、比較例1~2のトナーに関してはトナー飛散性、耐熱保存性、転写性、クリーニング性のどれかに実用上問題のある結果となっている。
【0164】
【0165】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
(1)トナー表面に含まれる界面活性剤中の、60質量%超が長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を有する界面活性剤であり、40質量%以下が長鎖炭化水素基及び1個の親水性官能基を有する界面活性剤であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
(2)前記長鎖炭化水素基の炭素数が11以上である、上記(1)に記載の静電潜像現像用トナー。
(3)前記長鎖炭化水素基が分岐鎖構造を有している、上記(1)または(2)に記載の静電潜像現像用トナー。
(4)前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のトナーを収容したトナー収容ユニット。
(6)上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のトナーを製造するためのトナーの製造方法であって、
少なくとも結着樹脂および/または結着樹脂前駆体および離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー材料液(油相)を調製する工程と、該油相を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して母体粒子を形成する工程と、を備え、
前記水系媒体が、長鎖炭化水素基及び2個以上の親水性官能基を持つ界面活性剤を含有することを特徴とするトナーの製造方法。
(7)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
トナーを用いて、前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着工程と、を有し、
前記トナーとして上記(1)乃至(4)いずれか1項に記載のトナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
(8)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを有し、
前記トナーが、上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0166】
1 感光体(像担持体)
2 帯電器
3 現像器
4 トナー
5 現像スリーブ
6 転写搬送ベルト
6a バイアスローラ
7 クリーニングブレード
8 回収ばね
9 回収コイル
10 感光体およびクリーニングユニット
13 搬送スクリュー
14パドル(攪拌機構)
16 反射濃度検知センサー
17 トナー濃度センサー
18 レジストローラ
20 除電器
γ 画像光
S 転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0167】
【文献】特開平7-152202号公報
【文献】特開2006-91081号公報
【文献】特開2016-224107号公報
【文献】特開2011-075704号公報