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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241120BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20241120BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
C08G59/14
C08F290/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021504993
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009438
(87)【国際公開番号】W WO2020184380
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019044874
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 光
(72)【発明者】
【氏名】西巻 裕和
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016615(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/203540(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/031556(WO,A1)
【文献】特開2018-063382(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190380(WO,A1)
【文献】特開2008-088278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C08G 59/14
C08F 290/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)で表される繰り返し構造単位で構成される共重合体、又は下記式(1a)で表される繰り返し構造単位及び下記式(1b)乃至式(1k)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し構造単位を有する共重合体と、有機溶媒とを含むレジスト下層膜形成組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
光架橋剤をさらに含む、請求項1記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
下記式(5)で表される化合物及び/又は式(6)で表される化合物をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式中、Xはカルボニル基又はメチレン基を表し、l及びmはそれぞれ独立して0乃至5の整数を表し、3≦l+m≦10の関係式を満たし、Rは炭素原子数1乃至4のアルキレン基もしくはアルケニレン基又は単結合を表し、kは0又は1を表し、nは2乃至4の整数を表す)
【請求項4】
界面活性剤をさらに含む、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
段差を有する基板に請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し、そしてそれを熱硬化させる加熱工程を含むレジスト下層膜を製造する方法。
【請求項6】
前記加熱工程の加熱温度が200℃乃至300℃である請求項に記載のレジスト下層膜を製造する方法。
【請求項7】
更に露光する露光工程を含む請求項に記載のレジスト下層膜を製造する方法。
【請求項8】
段差を有する基板に請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し、そしてそれを250℃以上で熱硬化させる加熱工程を含む、露光工程を経ずにレジスト下層膜を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差を有する基板上に段差を埋め込み平坦にするための平坦化膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物と、そのレジスト下層膜形成組成物を用いた平坦化されたレジスト下層膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置は微細なデザイン設計に従い、加工されうるようにすることが求められている。光リソグラフィー技術により一層微細なレジストパターンを形成するためには、露光波長をより短波長化する必要がある。
ところが、露光波長の短波長化に伴い焦点深度が低下するため、基板上に形成された被膜の平坦化性を一層向上させることが必要とされる。すなわち微細なデザイン設計を持つ半導体装置を製造するためには、特に段差基板に対しより高水準の平坦化膜を形成することができる平坦化技術の確立が重要となってきている。
【0003】
これまで、平坦化膜の形成方法としては、例えばレジスト膜の下に形成されるレジスト下層膜を光硬化により形成する方法が開示されている。
側鎖にエポキシ基、オキセタン基を有するポリマーと光カチオン重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物、又はラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するポリマーと光ラジカル重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、エポキシ基、ビニル基等のカチオン重合可能な反応性基を有するケイ素系化合物と、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献2参照)。
また、側鎖に架橋性官能基(例えばヒドロキシ基)を有するポリマーと架橋剤と光酸発生剤とを含有するレジスト下層膜を用いる半導体装置の製造方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、光架橋系のレジスト下層膜ではないが、不飽和結合を主鎖又は側鎖に有するレジスト下層膜が開示されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2006/115044号パンフレット
【文献】国際公開第2007/066597号パンフレット
【文献】国際公開第2008/047638号パンフレット
【文献】国際公開第2009/008446号パンフレット
【文献】特表2004-533637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、光架橋可能な材料として、例えばヒドロキシ基等の熱架橋可能な官能基を有するポリマーと架橋剤と酸触媒(酸発生剤)とを含むレジスト下層膜形成組成物を用いた場合にあっては、基板上に形成された凹凸パターン(例えば、ホールやトレンチ構造)に充填するために該組成物を加熱した際、架橋反応が進行して粘度上昇が生じ、その結果、パターン内部への充填不良が生じるという問題があった。
また、従来のレジスト下層膜を形成する加熱温度は、180℃以上の加熱の場合、レジスト下層膜形成組成物が徐々に熱硬化し、リフロー性がよくない問題もあった。
【0008】
また、一般にエポキシ基、ビニル基等のカチオン重合可能な反応性基を有するポリマーと酸発生剤とを含むレジスト下層膜形成組成物においては、光照射と加熱とを組み合わせて硬化させるため、手間がかかる。
【0009】
さらに、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて、レジスト層への露光光の基板からの反射でパターンエッジの形状が崩れ、所望の形状のレジストパターンを形成できず、レジストパターンの寸法の変動やさらには解像不良の原因となる。
【0010】
従って、本発明の課題はパターンへの充填性が高く、熱収縮が発生しなく、リフロー性がよくかつ反射効果を有する硬化膜の形成が可能な平坦化膜を基板上に形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は第1観点として、式(1)で表される繰り返し構造単位及び/又は式(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体と有機溶媒とを含むレジスト下層膜形成組成物に関する。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、Rは式(3)で表される官能基を表し、式(3)中、QおよびQはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、*は酸素原子との結合端を表し、式(2)中、Xは炭素原子数1~50の有機基を表し、i及びjはそれぞれ独立して0又は1を表す)
本発明は第2観点として、前記式(3)で表される官能基が下記式(4)で表される基である観点1記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
【化2】
(式(4)中、*は酸素原子との結合端を表す)
本発明は第3観点として、前記式(2)で表される繰り返し構造単位において、Xは炭素原子数2乃至20の直鎖状、分岐状もしくは環状の二価の炭化水素基を表すか、硫黄原子又は酸素原子を少なくとも1つ有する炭素原子数2乃至20の直鎖状、分岐状もしくは環状の二価の有機基を表すか、又は炭素原子数6乃至20の芳香族環もしくは炭素原子数3乃至12の複素環を少なくとも1つ含む二価の有機基を表し、該複素環は硫黄原子又は酸素原子を少なくとも1つ有する、観点1又は観点2に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
本発明は第4観点として、前記共重合体においてRを含むモノマーから形成される繰り返し構造単位を、25%以上含む観点1乃至観点3のいずれか1項記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
本発明は第5観点として、光架橋剤をさらに含む、観点1乃至観点4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
本発明は第6観点として、下記式(5)で表される化合物及び/又は式(6)で表される化合物をさらに含む、観点1乃至観点5のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
【化3】
(式中、Xはカルボニル基又はメチレン基を表し、l及びmはそれぞれ独立して0乃至5の整数を表し、3≦l+m≦10の関係式を満たし、Rは炭素原子数1乃至4のアルキレン基もしくはアルケニレン基又は単結合を表し、kは0又は1を表し、nは2乃至4の整数を表す)
本発明は第7観点として、界面活性剤をさらに含む、観点1乃至観点6のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
本発明は第8観点として、段差を有する基板に観点1乃至観点7のいずれか1項記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し、そしてそれを熱硬化させる加熱工程を含むレジスト下層膜を製造する方法に関する。
本発明は第9観点として、前記加熱工程の加熱温度が200℃乃至300℃である観点8に記載のレジスト下層膜を製造する方法に関する。
本発明は第10観点として、更に露光する露光工程を含む観点9に記載のレジスト下層膜を製造する方法に関する。
本発明は第11観点として、段差を有する基板に観点1乃至観点7のいずれか1項記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し、そしてそれを250℃以上で熱硬化させる加熱工程を含み、露光工程を経ずにレジスト下層膜を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレジスト下層膜形成組成物によれば、レジスト下層膜形成組成物を基板に塗布し、そしてそれを加熱する工程によって高いリフロー性が発現し、段差を有する基板上でも、平坦な膜を形成することができる。また、形成された硬化膜は適切な反射防止効果を有している。
本発明のレジスト下層膜形成組成物によれば、界面活性剤を含むことで、基板に対する塗布性を向上させる効果を有している。
本発明のレジスト下層膜を製造する方法によれば、本発明のレジスト下層膜形成組成物を基板に塗布し、そしてそれを加熱する工程によって高いリフロー性が発現し、段差を有する基板上でも、平坦な膜を形成することができる。また、形成された硬化膜は適切な反射防止効果を有している。
さらに、本発明のレジスト下層膜を製造する方法によれば、加熱と露光二工程を組み合わせて本発明のレジスト下層膜形成組成物を硬化させることもでき、一方、露光工程を経ずに、高温で加熱するのみ本発明のレジスト下層膜形成組成物を硬化させることでも平坦性がある平坦化膜が形成されたため、製造工程が簡略化され、作業効率をよくする効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<共重合体>
本発明のレジスト下層膜形成組成物の必須成分である共重合体は、好ましくは下記式(1)で表される繰り返し構造単位及び/又は下記式(2)で表される繰り返し構造単位を有する共重合体である。
【化4】
(式(1)及び式(2)中、Rは式(3)で表される官能基を表し、式(3)中、QおよびQはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、*は酸素原子との結合端を表し、式(2)中、Xは炭素原子数1~50の有機基を表し、i及びjはそれぞれ独立して0又は1を表す。)
【0014】
好ましく、式(3)のQおよびQはそれぞれ独立して水素原子を表す。即ち、式(3)で表される官能基が下記の式(4)で表される基になる。
【化5】
(式(4)中、*は酸素原子との結合端を表す。)
【0015】
好ましくは、前記共重合体において、Rを含むモノマーから形成される繰り返し構造単位を25%以上含み、より好ましくは50%以上含む。
【0016】
好ましくは、式(2)中の基Xが、炭素原子数2乃至20の直鎖状、分岐状もしくは環状の二価の炭化水素基を表すか、硫黄原子又は酸素原子を少なくとも1つ有する炭素原子数2乃至20の直鎖状、分岐状もしくは環状の二価の有機基を表すか、又は炭素原子数6乃至20の芳香族環もしくは炭素原子数3乃至12の複素環を少なくとも1つ含む二価の有機基を表し、該複素環は硫黄原子又は酸素原子を少なくとも1つ有する。
前記芳香族環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、ピレン環及びクリセン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環である。
前記複素環としては、例えばトリアジン環、シアヌル環、ピリミジン環、イミダゾール環、カルバゾール環が挙げられる。
【0017】
下記式で表される化合物は、前記共重合体において前記式(1)で表される繰り返し単位に対応するモノマーの例になる。
【化6】
【0018】
下記式で表される化合物は、前記共重合体において前記式(2)で表される繰り返し単位に対応するモノマーの例になる。
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
上記式(1)で表される繰り返し構造単位及び上記式(2)で表される繰り返し構造単位を有する共重合体としては、例えば、下記式(1a)乃至式(1k)で表される繰り返し構造単位を有する共重合体が挙げられる。
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、式(5)で表される化合物及び/又は式(6)で表される化合物を含有することができる。
【化11】
式中、Xはカルボニル基又はメチレン基を表し、l及びmはそれぞれ独立して0乃至5の整数を表し、3≦l+m≦10の関係式を満たし、Rは炭素原子数1乃至4のアルキレン基もしくはアルケニレン基又は単結合を表し、kは0又は1を表し、nは2乃至4の整数を表す。)
【0023】
前記式(5)で表される化合物として、例えば下記式(5-1)乃至式(5-20)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
【0024】
前記式(6)で表される化合物として、例えば下記式(6-1)乃至式(6-31)で表される化合物が挙げられる。
【化13】
【0025】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記式(5)で表される化合物及び/又は式(6)で表される化合物を、前記共重合体の含有量100質量部に対し、例えば0.01質量部乃至60質量部、好ましくは0.1質量部乃至20質量部含むことができる。
【0026】
<光架橋剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、熱架橋剤が必要ない。光架橋剤に関して、必要に応じて添加することができる。
【0027】
光架橋剤として、例えば、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジル基含有イソシアヌレート、エポキシシクロヘキシル化合物、エポキシ基置換シクロヘキシル化合物、及びこれらの樹脂を挙げることができる。本発明に用いられる光架橋剤は、例えば以下に例示することができる。
【化14】
式(C-1)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-SSとして入手することができる。
式(C-2)は四国化成工業(株)製、商品名MA-DGICとして入手することができる。
式(C-3)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-411として入手することができる。
式(C-4)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-521として入手することができる。
式(C-7)は日本化薬(株)製、商品名RE810-NMとして入手することができる。
式(C-8)は昭和電工(株)製、商品名BATGとして入手することができる。
式(C-9)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-711として入手することができる。
式(C-10)はDIC(株)製、商品名YD-4032Dとして入手することができる。
式(C-11)はDIC(株)製、商品名HP-4770として入手することができる。
式(C-12)は新日鉄住金化学(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
式(C-13)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-4700として入手することができる。
式(C-14)は旭有機材工業(株)製、商品名TEP-Gとして入手することができる。
式(C-15)は(株)ダイセル製、商品名エポリード GT401であり、a、b、c、dはそれぞれ0又は1であり、a+b+c+d=1である。
式(C-16)は(株)ダイセル製、商品名EHPE-3150として入手することができる。
式(C-17)はDIC(株)製、商品名HP-7200Lとして入手することができる。
式(C-18)は日本化薬(株)製、商品名EPPN-201として入手することができる。
式(C-19)は旭化成エポキシ(株)製、商品名ECN-1229として入手することができる。
式(C-20)は日本化薬(株)製、商品名EPPN-501Hとして入手することができる。
式(C-21)は日本化薬(株)製、商品名NC-2000Lとして入手することができる。
式(C-22)は日本化薬(株)製、商品名NC-3000Lとして入手することができる。
式(C-23)は日本化薬(株)製、商品名NC-7000Lとして入手することができる。
式(C-24)は日本化薬(株)製、商品名NC-7300Lとして入手することができる。
式(C-25)は日本化薬(株)製、商品名NC-3500として入手することができる。
式(C-26)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-5000として入手することができる。
式(C-27)は日本化薬(株)製、商品名FAE-2500として入手することができる。
式(C-28)は日本化薬(株)製、商品名NC-6000として入手することができる。
【0028】
<界面活性剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含むことができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-30N、同R-40-LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(AGC(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0029】
上記界面活性剤が使用される場合、当該界面活性剤の含有量は、前記共重合体の含有量100質量部に対し、例えば、0.01質量部乃至5質量部、好ましくは0.1質量部乃至3質量部である。
【0030】
<有機溶媒>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記各成分を適当な有機溶媒に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。そのような有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンを用いることができる。これらの有機溶媒は単独または2種以上の組合せで使用することができる。さらに、これらの有機溶媒に、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点有機溶媒を混合して使用することもできる。
【0031】
<レジスト下層膜を製造する方法>
次に本発明のレジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜を製造する方法について説明すると、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えばシリコン/二酸化シリコン被覆、ガラス基板、ITO基板などの透明基板)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法によりレジスト下層膜形成組成物を塗布後、ホットプレート上でベーク(加熱)し、レジスト下層膜を形成する。即ち、基板にレジスト下層膜形成組成物を塗布し、そしてそれを高温で加熱する加熱工程を含むレジスト下層膜を製造する方法である。
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、250℃までの高温でもレジスト下層膜形成組成物が熱硬化しなく、250℃以上の高温で加熱することで熱硬化し、平坦なレジスト下層膜が形成される。
【0032】
本発明において、加熱工程の好ましい加熱温度は200℃乃至300℃である。
【0033】
250℃以上の高温で加熱する場合、レジスト下層膜形成組成物が熱硬化し、露光工程を経ずに、レジスト下層膜を形成することができる。
【0034】
また本発明において、加熱工程で熱硬化しない下層膜形成組成物に対し、加熱した後、さらに紫外線照射装置により紫外線照射を行う露光工程を追加し、レジスト下層膜形成組成物を光硬化させる方法がある。
露光する光は、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV、波長13.5nm)等の化学線であり、例えば248nm(KrFレーザー光)、193nm(ArFレーザー光)、172nm(キセノンエキシマ光)、157nm(F2レーザー光)等の波長の光が用いられる。また、露光波長は150nm乃至248nmの紫外光を用いることができ、そして172nmの波長を好ましく用いることができる。
この露光によりレジスト下層膜の架橋が行われる。露光工程の露光量が10mJ/cm乃至3000mJ/cmとすることができる。この範囲の露光量で光反応が生じ、架橋が形成され、溶剤耐性を生じるものである。
【実施例
【0035】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物の具体例を、下記実施例を用いて説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0036】
下記合成例で得られた反応生成物の重量平均分子量の測定に用いた装置等を示す。
装置:東ソー(株)製HLC-8320GPC
GPCカラム:TSKgel Super-MultiporeHZ-N(2本)
カラム温度:40℃
流量:0.35ml/分
溶離液:THF
標準試料:ポリスチレン
【0037】
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次の通りである。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
RE810-NM:ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂(下記式(A))
BPA-CA:2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(下記式(B))
Ex-216L:シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(下記式(C))
Ex-252:水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(下記式(D))
Cis-1,2-Cyclohexanedicarboxylic Acid:Cis-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
EHPE-3150:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物
【化15】
【0038】
<合成例1>
PGME72.46gに、商品名 RE810-NM(日本化薬(株)製)26.00g、商品名 BPA-CA(小西化学(株)製)20.81g、触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド2.18g、及びラジカルトラップ剤としてヒドロキノンを0.32g添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。PGMEにて20wt%溶液へ希釈後、陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス(株))147.90gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ(株))147.90gを加え、60℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は18,000であった。得られた反応生成物は、下記式(7)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化16】
【0039】
<合成例2>
PGME48.10gに、商品名 RE810-NM(日本化薬(株)製)9.00g、商品名 BPA-CA(小西化学(株)製)14.98g、商品名 Ex-216L(ナガセケムテックス(株)製)6.28g、触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.57g、及びラジカルトラップ剤としてヒドロキノンを0.23g添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。メタノール(320g、関東化学(株)製)を用いて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、24時間乾燥し、目的とするポリマー得られた。PGMEにて20wt%溶液へ調整後、陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス(株))11.83gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ(株))11.81gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は13,700であった。得られた反応生成物は、下記式(8)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化17】
【0040】
<合成例3>
PGME48.10gに、商品名 RE810-NM(日本化薬(株)製)9.00g、商品名 BPA-CA(小西化学(株)製)14.98g、商品名 Ex-252(ナガセケムテックス(株)製)8.76g、触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.57g、及びラジカルトラップ剤としてヒドロキノンを0.23g添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。メタノール(320g、関東化学(株)製)を用いて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、24時間乾燥し、目的とするポリマー得られた。PGMEにて20wt%溶液へ調整後、陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス(株))15.03gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ(株))15.16gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は11,300であった。得られた反応生成物は、下記式(9)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化18】
【0041】
<比較合成例1>
PGME148.30gに、商品名 YX4000(三菱ケミカル(株)製)40.00g、Cis-1,2―Cyclohexanedicarboxylic Acid(東京化成工業(株)製)19.54g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド4.01gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス(株))64.00gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ(株))64.00gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2,000であった。得られた反応生成物は、下記式(10)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化19】
【0042】
<比較合成例2>
PGME7.57gに、PGMEA17.67g、商品名:EHPE-3150((株)ダイセル製)5.00g、9-アントラセンカルボン酸3.11g、安息香酸2.09g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.62gを加え、窒素雰囲気下、13時間加熱還流した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ(株))16g、陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス(株))16gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は4,700であった。得られた反応生成物は、下記式(11)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化20】
【0043】
〔レジスト下層膜形成組成物の調製〕
<実施例1>
前記合成例1で得た、共重合体1.16gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は20.18wt%)5.74gに、PGME8.49g、PGMEA5.65g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGME溶液を0.12g混合し、5.8質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0044】
<実施例2>
前記合成例2で得た、共重合体1.30gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は18.05wt%)7.20gに、PGME7.06g、PGMEA5.61g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGME溶液を0.13g混合し、6.5質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0045】
<実施例3>
前記合成例3で得た、共重合体1.30gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は18.38wt%)7.07gに、PGME7.19g、PGMEA5.61g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGME溶液を0.13g混合し、6.5質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0046】
<実施例4>
前記合成例1で得た、共重合体0.70gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は20.18wt%)3.47gに、PGME3.74g、PGMEA2.72g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGMEA溶液を0.07g混合した。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0047】
<実施例5>
前記合成例1で得た、共重合体0.35gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は20.18wt%)1.73gに、GT-401(ダイセル(株)製、商品名:エポリードGT401)29.68wt%PGMEA溶液1.18g、PGME5.13g、PGMEA1.69g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGMEA溶液を0.28g混合した。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0048】
<実施例6>
前記合成例1で得た、共重合体0.79gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は20.18wt%)3.90gに、GT-401(ダイセル(株)製、商品名:エポリードGT401)29.68wt%PGMEA溶液0.88g、PGME6.65g、PGMEA3.36g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGMEA溶液を0.21g混合した。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0049】
<比較例1>
前記比較合成例1で得た、共重合体0.60gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は26.18wt%)2.29gに、PGME4.89g、PGMEA2.76g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)1wt%PGME溶液を0.060g混合し、6.0質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0050】
<比較例2>
前記比較合成例2で得た、共重合体4.51gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME/PGMEA混合溶剤、固形分は23.26wt%)19.52gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)1.14g、ピリジウニムp-トルエンスルホナート1wt%PGME溶液を3.41g、PGME50.68g、PGMEA14.80g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30)1wt%PGME溶液を0.45g混合し、6.35質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0051】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。これらのレジスト下層膜を、フォトレジスト溶液に使用される溶剤であるPGME及びPGMEAに浸漬し、両溶剤に不溶であることを確認し、その結果を下記表1に“○”で表した。比較例1は両溶剤に溶解した為、これ以上の試験は実施しなかった。
また、実施例4乃至実施例6は前述した実施例1乃至実施例3と同様の試験に加えて、下記表1に示す温度で焼成後にウシオ電機(株)製、UV照射ユニット(波長172nm)を用いた紫外線照射装置により、500mJ/cm2の紫外線照射を行い、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。その後、実施例1乃至実施例3と同様の試験を実施した。光硬化材料は表1に示す温度の熱で硬化せずに光で硬化させる材料の為、焼成後ではフォトレジスト溶液に溶解し、光照射後に不溶化する傾向を確認した。
【0052】
〔光学パラメーターの試験〕
実施例1乃至実施例6、及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。なお、実施例4乃至実施例6は所定温度で焼成後にUV照射ユニット(波長172nm)を用いた紫外線照射装置により、500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。そして、これらのレジスト下層膜を光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV-VASE VU-302)を用い、波長193nmでの、屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定した。その結果を下記表1に示す。上記レジスト下層膜が十分な反射防止機能を有するためには、波長193nmでのk値は0.1以上であることが望ましい。
【0053】
【表1】
【0054】
〔段差基板への被覆試験〕
平坦化性の評価として、230nm膜厚のSiO2基板で、トレンチ幅50nm、ピッチ100nmのトレンチパターンエリア(TRENCH)とパターンが形成されていないオープンエリア(OPEN)の被覆膜厚の比較を行った。実施例1乃至実施例6、及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物を上記基板上に200nmの膜厚で塗布後、ホットプレート上で上記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。なお、実施例4乃至実施例6は所定温度で焼成後にUV照射ユニット(波長172nm)を用いた紫外線照射装置により、500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。この基板の段差被覆性を日立ハイテクノロジーズ(株)製走査型電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察し、段差基板のトレンチエリア(パターン部)とオープンエリア(パターンなし部)との膜厚差(トレンチエリアとオープンエリアとの塗布段差でありBiasと呼ぶ)を測定することで平坦化性を評価した。各エリアでの膜厚と塗布段差の値を表2に示した。平坦化性評価はBias(塗布段差)の値が小さいほど、平坦化性が高い。
【0055】
【表2】
平坦化性を比較すると、実施例1乃至実施例6の結果はパターンエリアとオープンエリアとの塗布段差が、比較例2の結果よりも小さいことから、実施例1乃至実施例6のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜は平坦化性が良好と言える。更に、実施例1と実施例4は同じ組成の材料であるが、光硬化を利用することで同じ材料の平坦化性を高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は基板に塗布後、加熱工程によって高いリフロー性が発現し、段差を有する基板上でも平坦に塗布でき、平坦な膜を形成することができる。また、適切な反射防止効果を有しているため、レジスト下層膜形成組成物として有用である。