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特許7590701メルカプト基含有シリカ粒子を含む水性シリカゾル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】メルカプト基含有シリカ粒子を含む水性シリカゾル
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/149 20060101AFI20241120BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241120BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241120BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20241120BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241120BHJP
   C08G 77/28 20060101ALI20241120BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20241120BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20241120BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241120BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241120BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C01B33/149
C08L83/04
C08K3/36
C08K5/548
C08L101/00
C08G77/28
C09C1/28
C09C3/08
C09D201/00
C09D7/62
C09D5/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024532561
(86)(22)【出願日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2024000291
【審査請求日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2023002270
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳昊
(72)【発明者】
【氏名】末村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 恵
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/178232(WO,A1)
【文献】特開2003-226706(JP,A)
【文献】特開2021-097040(JP,A)
【文献】特表2012-520227(JP,A)
【文献】特開2021-138928(JP,A)
【文献】特開2011-246636(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/149
C08L 83/04
C08K 3/36
C08K 5/548
C08L 101/00
C08G 77/28
C09C 1/28
C09C 3/08
C09D 201/00
C09D 7/62
C09D 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物で被覆されたシリカ粒子を含むpH2~7.5の水性シリカゾルであって、
前記シリカ粒子がメルカプト基を含むシラン化合物(a)として式(1):
【化1】
(式(1)中、R はメルカプト基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R はアルコキシ基を示し、aは1~3の整数を示す。)で示されるシラン化合物又はその加水分解物で被覆されている水性シリカゾル。
【請求項2】
水性分散媒中の残留アルコールが1.0質量%以下である請求項に記載の水性シリカゾル。
【請求項3】
請求項に記載のシリカ粒子がメルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物と、式(2)乃至式(4):
【化2】
(式(2)中、Rはそれぞれアルケニル基、アリール基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、若しくウレイド基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基を示し、bは1~3の整数を示し、
式(3)及び式(4)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、cは1~3の整数であり、dは0又は1の整数であり、eは1~3の整数である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(b)又はその加水分解物とで被覆されたシリカ粒子を含み、更に塩基性物質を含むシリカゾル。
【請求項4】
pHが6.0~7.5である請求項に記載のシリカゾル。
【請求項5】
前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物の合計量は、前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物又はその加水分解物で被覆されているシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数で0.3個/nm~5.0個/nmの範囲内にある請求項に記載のシリカゾル。
【請求項6】
シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の動的光散乱法による平均粒子径が5nm~200nmである請求項に記載のシリカゾル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はエーテル結合を含む水溶性樹脂とを含むエマルジョン組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はエーテル結合を含む疎水性樹脂とを含む塗料組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、重合性樹脂とを含む重合性組成物。
【請求項11】
下記(A)工程乃至(C)工程:
(A)工程:水性シリカゾルをpH2~7.5に調製する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた水性シリカゾルにメルカプト基を含むシラン化合物(
a)、又はメルカプト基を含むシラン化合物(a)と式(2)乃至式(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(b)とを添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた水性シリカゾルの水性媒体から炭素原子数1~5のアルコールを除去する工程、
を含む請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の水性シリカゾルの製造方法。
【請求項12】
(B)工程が式(2)乃至式(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(b)を(A)工程で得られた水性シリカゾルに添加した後に、塩基性物質でpH6~7.5に調整し、その後メルカプト基を含むシラン化合物(a)を添加する工程(B-1)である請求項11に記載の水性シリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
メルカプト基含有シラン化合物で被覆されたシリカ粒子を含む水性シリカゾル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド状シリカ粒子が媒体に分散したシリカゾルは、シリカ粒子の特性により耐摩耗性、凹凸付与性に優れていることから、例えば担体等に広く利用されている。シリカゾルをフィルム等の表面に塗布するコーティング液や、フィルム形成マトリックスに混合してフィルム内部に含有する樹脂組成物等、様々な使用方法がある。シリカ粒子の表面にシラン化合物を被覆して官能基の特性を利用したシラン被覆シリカ粒子を含むシリカゾルも多く存在する。
例えば、シラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体の製造方法であって、水性媒質中において、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない(例えばメルカプト基を有する官能基)、コロイドシリカ粒子を改質することが可能な少なくとも1種のシラン化合物と、c)コロイドシリカ粒子とを、任意の順序で混合して、a)およびb)に由来するシラン化合物を含有するシラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体を形成するステップを含む方法が開示されている(特許文献1参照)。
コロイド状シリカの表面層にシラン化合物を被覆する方法において、水性又はアルコール性のシリカゾルとグリシジル基含有シラン化合物の加水分解化合物を混合する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-520227号公報
【文献】特開2002-511509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メルカプト基含有シラン化合物で被覆されたシリカ粒子が水性媒体に分散したpH2~7.5の水性シリカゾルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第1観点として、メルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物で被覆されたシリカ粒子を含むpH2~7.5の水性シリカゾル、
第2観点として、シリカ粒子がメルカプト基を含むシラン化合物(a)として式(1):
【化1】
(式(1)中、Rはメルカプト基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基を示し、aは1~3の整数を示す。)で示されるシラン化合物又はその加水分解物で被覆されている第1観点に記載の水性シリカゾル、
第3観点として、水性分散媒中の残留アルコールが1.0質量%以下である第1観点又は第2観点に記載の水性シリカゾル、
第4観点として、第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載のシリカ粒子が
メルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物と、式(2)乃至式(4):
【化2】
(式(2)中、Rはそれぞれアルケニル基、アリール基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、若しくウレイド基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基を示し、bは1~3の整数を示し、
式(3)及び式(4)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、cは1~3の整数であり、dは0又は1の整数であり、eは1~3の整数である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(b)又はその加水分解物とで被覆されたシリカ粒子を含み、更に塩基性物質を含むシリカゾル、
第5観点として、pHが6.0~7.5である第4観点に記載のシリカゾル、
第6観点として、前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物の合計量は、前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物又はその加水分解物で被覆されているシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数で0.3個/nm~5.0個/nmの範囲内にある第4観点に記載のシリカゾル、
第7観点として、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の動的光散乱法による平均粒子径が5nm~200nmである第1観点乃至第6観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第8観点として、第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と樹脂とを含む樹脂組成物、
第9観点として、第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はエーテル結合を含む水溶性樹脂とを含むエマルジョン組成物、
第10観点として、第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はエーテル結合を含む疎水性樹脂とを含む塗料組成物、
第11観点として、第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載のシリカゾルに由来するシリカ粒子と、重合性樹脂とを含む重合性組成物、
第12観点として、下記(A)工程乃至(C)工程:
(A)工程:水性シリカゾルをpH2~7.5に調製する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた水性シリカゾルにメルカプト基を含むシラン化合物(a)、又はメルカプト基を含むシラン化合物(a)と式(2)乃至式(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(b)とを添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた水性シリカゾルの水性媒体から炭素原子数1~5のアルコールを除去する工程、
を含む第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載の水性シリカゾルの製造方法、
第13観点として、(B)工程が式(2)乃至式(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(b)を(A)工程で得られた水性シリカゾルに添加した後に、塩基性物質でpH6~7.5に調整し、その後メルカプト基を含むシラン化合物(a)を添加する工程(B-1)である第12観点に記載の水性シリカゾルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明はメルカプト基を有するシラン化合物を水性媒体中、例えばpH2~7.5の水性媒体中でシリカ粒子に被覆することでメルカプト基を有するシラン化合物で被覆されたシリカ粒子を分散質として含む水性シリカゾルが得られる。シリカ粒子を含むpH2~7.5の水性媒体とは、2~7.5のpHを有するシリカゾルでありシリカゾルに酸性物質を添加することや、陽イオン交換することで得られる。
メルカプト基を有するシラン化合物をpH2~7.5の水性媒体中で被覆することで得られたpH2~7.5の水性シリカゾルは、その後にpHを上昇させることや、樹脂と混合して樹脂組成物を製造することでも安定に存在する。
メルカプト基を有するシラン化合物をシリカ粒子に被覆する時のpHが前記pH値を外れていた場合には、上述の効果が得られない。官能基としてメルカプト基が有する機能が、上述のpH範囲ではシリカ粒子表面に被覆される時にシリカ粒子表面でのメルカプト基の変性がなく安定な被覆シリカ粒子となる。また、メルカプト基を有するシラン化合物がシリカ粒子に結合していることで中性付近の水性媒体で安定に存在することができる。これはその後のpH変化や樹脂との混合でも変化しない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明はメルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物で被覆されたシリカ粒子を含むpH2~7.5の水性シリカゾルである。pH2~7.5の水性シリカゾルとすることで、メルカプト基を含むシラン化合物(a)又はその加水分解物の変性が抑制され、前記シリカ粒子の凝集ゲル化を抑制することができる。
本発明のゾルは固形分として0.1質量%~70質量%、又は1質量%~60質量%、又は10質量%~55質量%である。ここで固形分とはゾルの全成分から溶媒成分を除いたものである。
本発明のシリカ粒子は窒素ガス吸着法(BET法)による平均一次粒子径が5nm~200nm、又は5nm~150nm、又は5nm~100nmの範囲で得られる。そして、動的光散乱法(DLS法)による平均粒子径が5nm~200nm、5nm~150nm、又は5nm~100nmの範囲で得られる。
【0008】
シリカ粒子がメルカプト基を含むシラン化合物(a)として式(1)で示されるシラン化合物又はその加水分解物で被覆することができる。
式(1)中、Rはメルカプト基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基を示し、aは1~3の整数を示す。
【0009】
メルカプト基を含む炭素原子数1~5のアルキル基としては、例えば、メルカプトメチル基、メルカプトプロピル基が挙げられる。
シラン化合物(a)としては、例えば、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは信越化学工業株式会社製のシラン化合物として入手することができる。
【0010】
水性分散媒中の残留アルコールは1.0質量%以下に設定することが好ましい。残留アルコールは主にシラン化合物の加水分解で生じたアルコールであり、この副生アルコールは系外に除去することが好ましい。
【0011】
本発明ではpH2~7.5の水性媒体中、シリカ粒子をシラン化合物(b)又はその加水分解物で被覆し、その後にメルカプト基を有するシラン化合物(a)又はその加水分解物により被覆すること、更にpH調整を行った後にメルカプト基を有するシラン化合物(a)又はその加水分解物を被覆することができる。
【0012】
本発明ではシリカ粒子がシラン化合物(a)又はその加水分解物と、式(2)乃至式(4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(b)又はその加水分解物とで被覆されたシリカ粒子とすることができる。
【0013】
式(2)中、Rはそれぞれアルケニル基、アリール基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、若しくウレイド基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、Rはそれぞれアルコキシ基を示し、bは1~3の整数を示し、
式(3)及び式(4)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びRはそれぞれアルコキシ基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、cは1~3の整数であり、dは0又は1の整数であり、eは1~3の整数である。
【0014】
前記アリール基は炭素原子数6~30のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレン基等が挙げられる。
アルケニル基としては炭素原子数2~10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
前記エポキシ基を有する有機基は例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-グリシドキシプロピル基、3-グリシドキシプロピルメチル基等が挙げられる。
【0016】
前記アルコキシ基としては炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
前記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方をあらわす。(メタ)アクリロイル基を有する有機基としては、例えば、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
アミノ基を有する有機基としては、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0018】
ウレイド基を有する有機基としては、例えば、3-ウレイドプロピル基が挙げられる。
【0019】
シアノ基を有する有機基としては、例えば、3-シアノプロピル基が挙げられる。
前記式(2)で表されるシラン化合物はエポキシ基またはエポキシ基の加水分解物がシリカ粒子の表面に形成される化合物であることが好ましい。
【0020】
好ましい官能基としてエポキシ基、エポキシ基の加水分解物等であり、それに対応するシラン化合物として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
シリカ粒子の表面にヒドロキシル基、例えばシリカ粒子であればシラノール基と前記シラン化合物が反応してシロキサン結合によりシリカ粒子の表面に前記シラン化合物を被覆する工程である。反応温度は20℃からその分散媒の沸点の範囲までの温度で行うことができるが、例えば20℃~100℃の範囲で行うことができる。反応時間は0.1時間~6時間程度で行うことができる。
【0022】
前記式(1)のシラン化合物に由来するイオウ原子の含有量はシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のイオウ原子の個数で0.3個/nm~3.0個/nmの範囲内にすることができる。前記シリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のイオウ原子の個数で0.3個/nm~3.0個/nmとすることで、樹脂組成物として金属板(例えばCu板など)上にコート膜を形成したときに、コート膜の密着性を向上させることができる。
【0023】
前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物の合計量は、前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物又はその加水分解物で被覆されているシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数で0.3個/nm~5.0個/nmの範囲内にすることができる。そして、前記式(1)のシラン化合物に由来するイオウ原子の個数と、前記式(1)乃至式(4)のシラン化合物中のケイ素原子の個数は、S:Siがモル比で1:0~10.0、又は1:0~7.0に設定することができる。前記シリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数で0.3個/nm~5.0個/nmとすることで、樹脂組成物としてコート膜を形成したときに、樹脂とシリカ粒子がシラン化合物を介して強固に相互作用してコート膜の耐擦傷性を向上させることができる。
【0024】
シラン化合物の被覆は、触媒なしで行う場合はシリカ粒子表面が酸性サイドで存在する場合であり、触媒を用いる場合は、加水分解触媒として金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。加水分解触媒としての金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。加水分解触媒としての有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸等が挙げられる。加水分解触媒としての無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。加水分解触媒としての有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、第4級アンモニウム塩が挙げられる。加水分解触媒としての無機塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0025】
本発明のシリカゾルは下記(A)工程乃至(C)工程:
(A)工程:水性シリカゾルをpH2~7.5に調製する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた水性シリカゾルにメルカプト基を含むシラン化合物(a)、又はメルカプト基を含むシラン化合物(a)と式(2)乃至式(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(b)とを添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた水性シリカゾルの水性媒体から炭素原子数1~5のアルコールを除去する工程、を含むことができる。
(B)工程がシラン化合物(b)を添加した後に、塩基性物質でpH6~7.5に調整した後にシラン化合物(a)を添加する工程(B-1)を含むことができる。
【0026】
(B)工程で添加する前記塩基性物質は、有機塩基の場合、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、第4級アンモニウム塩が挙げられる。無機塩基の場合、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0027】
(C)工程が、水性シリカゾルの水性媒体から炭素原子数1~5のアルコールを除去する工程とすることができる。
【0028】
本発明ではシリカ粒子がシラン化合物(a)若しくはその加水分解物、又はシラン化合物(a)と共にシラン化合物(b)若しくはその加水分解物により被覆された水性シリカゾルは、シラン化合物が加水分解した時に副生するアルコールの残留量が水性媒体中で1.0質量%以下に設定することで水性シリカゾルとして安定に存在することができる。pHが2~7.5のメルカプト基を有する酸性水性シリカゾルでは残留アルコールが1.0質量%以上存在する場合に、被覆剤とアルコールとの相溶性が低下して安定性が悪くなる場合がある。
【0029】
本発明では前記水性シリカゾルに由来するシリカ粒子と樹脂を含む樹脂組成物を製造することができる。
【0030】
そして、本発明では前記水性シリカゾルに由来するシリカ粒子と、水溶性樹脂を含むエマルジョン組成物を製造することができる。水溶性樹脂はヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はエーテル結合を含む水溶性樹脂を上げることができる。水性シリカゾルと水溶性樹脂は任意の割合で混合することができ水性樹脂エマルジョン組成物を製造することができる。水性樹脂エマルジョン組成物中のシリカは固形分として0.1質量%~70質量%、又は1質量%~60質量%、又は10質量%~55質量%である。pHは2~7.5、又は2~6の範囲に設定することができる。
【0031】
また、本発明では前記水性シリカゾルと、疎水性樹脂を含む塗料組成物を製造することができる。疎水性樹脂はヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、又はエーテル結合を含む疎水性樹脂を挙げることができる。
疎水性樹脂中のシリカは固形分として0.10質量%~70質量%、又は1質量%~60質量%、又は10質量%~55質量%である。pHは2~7.5、又は2~6の範囲に設定することができる。pHは疎水性樹脂と水とを1:1、又は疎水性樹脂とメタノールと水とを1:1:1の質量割合で混合した状態で測定することができる。
ヒドロキシル基を含む水溶性樹脂及び疎水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチロールメラミン樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられる。
アミド基含有樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メチロール化尿素樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミック酸等が挙げられる。
エーテル結合含有樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等が挙げられる。
【0032】
本発明では前記水性シリカゾルに由来するシリカ粒子と、重合性樹脂を含む重合性組成物を製造することができる。前記水性シリカゾルと、重合性樹脂を混合し重合性組成物を得ることができる。それら重合性組成物は被膜形成組成物として利用することができる。
【0033】
本発明では前記水性シリカゾルと重合性樹脂の混合において、重合性樹脂は熱硬化性又は光硬化性の樹脂を選択し混合することにより被膜形成組成物が得られる。そして、それら熱硬化性及び光硬化性樹脂は、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ラジカル発生剤系硬化剤(熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤)、又は酸発生剤系硬化剤(熱酸発生剤、又は光酸発生剤)等の硬化剤を含み硬化物とすることができる。
【0034】
有機樹脂と硬化剤を含む被膜形成組成物を基材に塗布又は充填して加熱、光照射、又はその組み合わせにより硬化物を形成することができる。有機樹脂(硬化性樹脂)としてはエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基を有する樹脂や、イソシアネート系樹脂が挙げられる。例えば光硬化性多官能アクリレートを好ましく用いることができる。
【0035】
多官能アクリレートとしては分子中に2官能、3官能、4官能、それ以上の官能基を有する多官能アクリレートが挙げられ、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら多官能アクリレートとしては、以下に記載の構造式で表される多官能アクリレートを用いてもよい。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0036】
本発明の被膜形成組成物は界面活性剤(レベリング剤)を含むことができる。
界面活性剤(レベリング剤)としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤(レベリング剤)は、有機樹脂に対して0.01phr~5phr、又は0.01phr~1phrの範囲で添加することが可能である。
【0037】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤としては、脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が挙げられ、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどがある。
【0038】
高級アルコール硫酸エステル塩は、炭素原子数12のドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウムなどがある。
【0039】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウムなどがある。
α-オレフィンスルホン酸塩は、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムなどがある。
【0040】
アルカンスルホン酸塩は、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0041】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系剤が挙げられる。
【0042】
アルキルトリメチルアンモニウム塩は第4級アンモニウム塩であり、塩化物イオンや臭化物イオンを対イオンとして有する。例えば、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0043】
ジアルキルジメチルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を2つ、メチル基を2つ有するものである。ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を1つ、メチル基を2つ、ベンジル基を有する第4級アンモニウム塩であり塩化ベンザルコニウムが挙げられる。例えば、塩化アルキル(C8-18)ジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。
【0045】
アミン塩系剤としては、アンモニアの水素原子を1つ以上の炭化水素基で置換したもので、例えばNメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩が挙げられる。
【0046】
本発明に用いられる両性界面活性剤は、N-アルキル-β-アラニン型のアルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルカルボキシベタイン型のアルキルベタイン、N,N-ジメチルドデシルアミンオキシド型のアルキルアミンオキシドが挙げられる。これらの例示として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0047】
本発明に用いられる非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。
【0048】
ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルとしては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルなどがある。
【0049】
アルキルグルコシドとしては、デシルグルコシド、ラウリルグルコシドなどがある。
【0050】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリプロピレングリコールジオレートなどがある。
【0051】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物などがある。
【0052】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレートなどがある。
【0053】
また脂肪酸アルカノールアミドとしては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどがある。
【0054】
さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキルエーテル又はポリオキシアルキルグリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ソルビタン脂肪酸エステルアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ソルビタンモノオレート、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0055】
界面活性剤(レベリング剤)としてシリコーン系界面活性剤を用いることができる。シリコーン系界面活性剤は主鎖にシロキサン結合を含む繰り返し単位を有する化合物である。シリコーン系界面活性剤の重量平均分子量は500~50000の範囲で用いることができる。これらは変性シリコーン系界面活性剤であってもよく、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端に有機基を導入した構造が挙げられる。有機基としてはアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪族エステル基、脂肪族アミド基、ポリエーテル基が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては商品名、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400 (以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、Silwet l-77、L-7280、L-7001、L-7002、L-7200、L-7210、L-7220、L-7230、L7500、L-7600、L-7602、L-7604、L-7605、L-7622、L-765 7、L-8500、L-8610 (以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002 (以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330 (以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。例えばポリエーテル変性シリコーンとして商品名L-7001(DOWSIL社製)を好適に用いることができる。
【0056】
本発明では前記水性シリカゾルと有機樹脂を含む被膜形成組成物が得られる。被膜形成組成物は水性シリカゾル中の水系溶媒を除去して、シリカ粒子と有機樹脂を含む被膜形成組成物とすることができる。
【0057】
前記被膜形成組成物において熱硬化性被膜形成組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基含有樹脂に対して熱硬化剤を0.01phr~50phr、又は0.01phr~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えばエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して熱硬化剤を0.5当量~1.5当量、好ましくは0.8当量~1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する熱硬化剤の当量は、官能基に対する熱硬化剤の当量比で示される。
【0058】
熱硬化剤はフェノール樹脂、アミン系硬化剤、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。特にラジカル発生剤系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤が好ましい。
【0059】
これら熱硬化剤は固体であっても溶剤に溶解することによって使用することはできるが、溶剤の蒸発により硬化物の密度低下や細孔の生成により強度低下、耐水性の低下を生ずるために、硬化剤自体が常温、常圧下で液状のものが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0060】
アミン系硬化剤としては、例えばピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。これらの中で液状であるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等は好ましく用いることができる。
【0061】
ポリアミド樹脂としては、ダイマー酸とポリアミンの縮合により生成するもので、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンである。
【0062】
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0063】
ポリメルカプタンは、例えばポリプロピレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものや、ポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものであり、液状のものが好ましい。
【0064】
酸無水物系硬化剤としては一分子中に複数のカルボキシル基を有する化合物の無水物が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0065】
熱酸発生剤としてはスルホニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられるが、スルホニウム塩が好ましく用いられる。例えば以下の化合物を例示することができる。
【化7】
Rは炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数6~20アリール基が挙げられ、特に炭素原子数1~12のアルキル基が好ましい。
【0066】
これらの中でも常温、常圧で液状であるメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(メチルナジック酸無水物、無水メチルハイミック酸)、水素化メチルナジック酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物が好ましい。これら液状の酸無水物は粘度が25℃での測定で10mPa・s~1000mPa・s程度である。
【0067】
熱ラジカル発生剤は例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらは東京化成工業(株)から入手することができる。
【0068】
また、前記硬化物を得る際、適宜、硬化助剤が併用されても良い。硬化助剤としてはトリフェニルホスフィンやトリブチルホスフィンなどの有機リン化合物、エチルトリフェニルホスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムリン酸ジエチル等の第4級ホスフォニウム塩、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エンとオクチル酸の塩、オクチル酸亜鉛、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化助剤は、硬化剤1質量部に対して、0.001質量部~0.1質量部の割合で含有することができる。
【0069】
組成物は、樹脂と硬化剤と所望により硬化助剤を混合し熱硬化性ワニスが得られる。これらの混合は反応容器中で撹拌羽根やニーダーを用いて行うことができる。
混合は加熱混合方法により行われ、60℃~100℃の温度で0.5時間~1時間行われる。
得られた硬化性被膜形成組成物は熱硬化性コーティング組成物であり、例えば液状封止材として用いるための適切な粘度を有する。液状の熱硬化性被膜形成組成物は、任意の粘度に調製が可能であり、キャスティング法、ポッティング法、ディスペンサー法、印刷法等によりLED等の透明封止材として用いるために、その任意箇所に部分的封止ができる。液状の熱硬化性組成物を上述の方法で液状のまま直接にLED等に実装した後、乾燥し、硬化することによりエポキシ樹脂硬化体が得られる。
熱硬化性被膜形成組成物(熱硬化性コーティング組成物)は基材に塗布し、80℃~200℃の温度で加熱することにより硬化物が得られる。
【0070】
前記被膜形成組成物において光硬化性樹脂組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基含有樹脂に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.01phr~50phr、又は0.01phr~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えばエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.5当量~1.5当量、好ましくは0.8当量~1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する光硬化剤の当量は、官能基に対する光硬化剤の当量比で示される。
光ラジカル発生剤は、光照射により直接又は間接的にラジカルを発生するものであれば特に限定されない。
光ラジカル発生剤としては、光ラジカル重合開始剤として例えば、イミダゾール化合物、ジアゾ化合物、ビスイミダゾール化合物、N-アリールグリシン化合物、有機アジド化合物、チタノセン化合物、アルミナート化合物、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩化合物、及びチオキサントン化合物等が挙げられる。
【0071】
有機アジド化合物としては、p-アジドベンズアルデヒド、p-アジドアセトフェノン、p-アジド安息香酸、p-アジドベンザルアセトフェノン、4,4’-ジアジドカルコン、4,4’-ジアジドジフェニルスルフィド、及び2,6-ビス(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0072】
ジアゾ化合物としては、1-ジアゾ-2,5-ジエトキシ-4-p-トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1-ジアゾ-4-N,N-ジメチルアミノベンゼンクロリド、及び1-ジアゾ-4-N,N-ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0073】
ビスイミダゾール化合物としては、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビスイミダゾール、及び2,2’-ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビスイミダゾール等を挙げることができる。
【0074】
チタノセン化合物としては、ジシクロペンタジエニル-チタン-ジクロリド、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビスフェニル、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4,6-トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4-ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、及びジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)等を挙げることができる。
【0075】
光ラジカル発生剤としては、また、1,3-ジ(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン等を挙げることができる。
【0076】
これらの光ラジカル重合剤としては、例えばBASF社製、商品名Irgacure TPO(成分は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)(c1-1-1)、IGM RESINS社製、商品名Omnirad819(成分はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスピンオキサイド)(c1-1-2)、IGM RESINS社製、商品名Irgacure 184(成分は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(c1-1-3)として入手することができる。
【化8】
【0077】
光酸発生剤は、光照射により直接又は間接的に酸を発生するものであれば特に限定されない。
【0078】
光酸発生剤の具体例としては、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体などを用いることができる。
【0079】
前記光酸発生剤として用いるオニウム塩は、ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムクロライド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、更にビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのビス(アルキルフェニル)ヨードニウム塩、アルコキシカルボニルアルコキシ-トリアルキルアリールヨードニウム塩(例えば、4-[(1-エトキシカルボニル-エトキシ)フェニル]-(2,4,6-トリメチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、ビス(アルコキシアリール)ヨードニウム塩(例えば、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩)が挙げられる。
【0080】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリフェニルスルホニウム塩や、(4-フェニルチオフェニル) ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル) ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)等のスルホニウム塩が挙げられる。
【0081】
ホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のホスホニウム塩が挙げられる。
トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェートなどのセレニウム塩、(η5又はη6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなどのメタロセン錯体が挙げられる。
【0082】
また、光酸発生剤としては以下の化合物も用いることができる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0083】
光酸発生剤としてはスルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物が好ましい。それらのアニオン種としてはCFSO 、CSO 、C17SO 、カンファースルホン酸アニオン、トシル酸アニオン、BF 、PF 、AsF 及びSbF などが挙げられる。特に強酸性を示す六フッ化リン及び六フッ化アンチモン等のアニオン種が好ましい。
【0084】
本発明の被膜形成組成物は必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、溶解促進剤、充填剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0085】
本発明の被膜形成組成物の塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
【0086】
本発明では光硬化性コーティング組成物(被膜形成組成物)を基板上に塗布し光照射により硬化することができる。また光照射の前後に加熱することもできる。
【0087】
塗膜の厚みは、硬化物の用途に応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えばフォトレジストに用いる場合は0.05μm~10μm(特に0.1μm~5μm)程度とすることができ、プリント配線基板に用いる場合は5μm~5mm(特に100μm~1mm)程度とすることができ、光学薄膜に用いる場合は0.1μm~100μm(特に0.3μm~50μm)程度とすることができる。
【0088】
透明性被膜を得る場合に、被膜の可視光線透過率が80%以上、又は90%以上、典型的には90~96%とすることができる。
【0089】
光酸発生剤を用いる場合の照射又は露光する光は、例えばガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよく、通常、可視光又は紫外線、特に紫外線である場合が多い。光の波長は、例えば150nm~800nm、好ましくは150~600nm、さらに好ましくは150nm~400nm程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば2mJ/cm~20000mJ/cm、好ましくは5mJ/cm~5000mJ/cm程度とすることができる。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば紫外線の場合は低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。このような光照射により、前記組成物の硬化反応が進行する。
【0090】
熱酸発生剤を用いる場合や、光酸発生剤を用い光照射後に必要により行われる塗膜の加熱は、例えば60℃~350℃、好ましくは100℃~300℃程度で行われる。加熱時間は、3秒以上(例えば、3秒~5時間程度)の範囲から選択でき、例えば、5秒~2時間、好ましくは20秒~30分程度で行うことができ、通常は1分~3時間(例えば、5分~2.5時間)程度で行うことができる。
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザー光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。
【0091】
現像液としてはアルカリ水溶液や有機溶剤を用いることができる。
アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液を挙げることができる。
【0092】
前記アルカリ現像液は10質量%以下の水溶液であることが一般的で、好ましくは0.1質量%~3.0質量%の水溶液などが用いられる。さらに前記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもでき、これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~10質量部である。
この中で、水酸化テトラメチルアンモニウム0.1質量%~2.38質量%水溶液を用いることができる。
また、現像液としての有機溶剤は一般的な有機溶剤を用いることが可能であり、例えばアセトン、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として用いることができる。特にプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等は好ましく使用することができる。
【0093】
本発明では現像後の基板との密着性を向上させる目的で、密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤はトリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(N-ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。前記密着促進剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの密着促進剤の添加量は固形分中で、通常18質量%以下、好ましくは0.0008質量%~9質量%、より好ましくは0.04質量%~9質量%である。
【0094】
本発明では増感剤を含んでいてもよい。使用できる増感剤としては、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン等が挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。特に好ましいのは、アントラセン系の増感剤であり、カチオン硬化触媒(感放射性カチオン重合開始剤)と併用することにより、感度が飛躍的に向上すると共に、ラジカル重合開始機能も有しており、本発明のカチオン硬化システムとラジカル硬化システムを併用するハイブリッドタイプでは、触媒種をシンプルにできる。具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン等が有効である。増感剤の添加量は固形分中で、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~10質量%の割合で使用される。
【0095】
本発明の組成物を光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤、光酸発生剤又は熱酸発生剤を用い光硬化又は熱硬化させることが可能である。光酸発生剤又は熱酸発生剤を用いる場合は、例えば通常用いられるエポキシの硬化剤(例えばアミンや酸無水物)を用いないか又はそれらを用いたとしても極端にそれらの含有量が少ないため、本組成物の保存安定性が良くなる。
【0096】
前記組成物は光カチオン重合性に適用することを見出した。従来品の液状エポキシ化合物(例えばエポキシシクロヘキシル環を有する脂環式エポキシ化合物)よりも高い硬化速度を有する。硬化速度が速いため酸発生剤添加量の低減や、弱酸系酸発生剤の使用も可能である。酸発生剤の低減はUV照射後も酸活性種が残存することがあり金属腐食防止の上で重要である。硬化速度が速いため厚膜硬化が可能である。
【0097】
UV照射による硬化は熱に弱い材料(機材)に適用できる。
本発明の被膜形成組成物は鋼板のコーティング剤として用いることができ、鋼板表面の被膜は鋼板との密着性に優れたものである。
【0098】
本件発明の被膜形成組成物を用いた熱硬化材料、光硬化材料は速硬性、透明性、硬化収縮が小さい等の特徴を持ち電子部品、光学部品(反射防止膜)、精密機構部品の被覆や接着に用いることができる。例えば携帯電話機やカメラのレンズ、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)などの光学素子、液晶パネル、バイオチップ、カメラのレンズやプリズムなどの部品、パソコンなどのハードディスクの磁気部品、CD、DVDプレヤーのピックアップ(ディスクから反射してくる光情報を取り込む部分)、スピーカーのコーンとコイル、モーターの磁石、回路基板、電子部品等の接着に用いることができる。
電化製品、建材、プラスチックなどの表面保護のためのハードコート材向けとしては、例えばメガネのプラスチックレンズ、携帯電話機、ゲーム機、光学フィルム、IDカード等への適用ができる。
アルミニウム等の金属、プラスチックなどに印刷するインキ材料向けとしては、クレジットカード、会員証などのカード類、電化製品やOA機器のスイッチ、キーボードへの印刷用インキ、CD、DVD等へのインクジェットプリンター用インキへの適用が挙げられる。
3次元CADと組み合わせて樹脂を硬化し複雑な立体物をつくる技術や、工業製品のモデル製作等の光造形への適用、光ファイバーのコーティング、接着、光導波路、厚膜レジストなどへの適用が挙げられる。
また、本発明の被膜形成組成物は、反射防止膜、半導体封止材料、電子材料用接着剤、プリント配線基板材料、層間絶縁膜材料、パワーモジュール用封止材等の電子材料用絶縁樹脂や発電機コイル、変圧器コイル、ガス絶縁開閉装置等の高電圧機器に使用される絶縁樹脂として好適に使用できる。
【実施例
【0099】
(分析方法)
〔SiO濃度の測定〕
シリカゾルを坩堝に取り、100℃で乾燥後、得られたゲルを1000℃で30分間焼成し、焼成残分を計量して算出した。
〔平均一次粒子径(窒素吸着法粒子径)の測定〕
酸性シリカゾルの300℃乾燥粉末の比表面積を、比表面積測定装置 商品名モノソーブMS-16(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定し、平均一次粒子径を算出した。
〔動的光散乱法による平均粒子径の測定〕
動的光散乱法粒子径測定装置(Malvern Instruments LTD製、商品名ZETASIZER Nano series)を用いて測定した。水性シリカゾルはサンプルを0.15質量%NaCl水溶液で希釈して測定した。
〔粘度の測定〕
シリカゾルの20℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定した。
〔メタノール量の測定〕
使用装置:GC-2014S(株式会社島津製作所社製)
ガスクロマトグラフィー測定にて測定した。
〔pHの測定〕
使用装置:MM-43X(東亜ディーケーケー株式会社製)
水性シリカゾルの場合:シリカゾルのままpHメーターで測定した。
〔シリカ粒子に結合したチオール基に基づくイオウ原子含有量の分析方法〕
容量15mlの遠心式フィルターユニットである商品名アミコンウルトラ-15(メルク(株))にシリカゾル2gと純水4gを投入し、2770G(回転数3000rpm)の遠心力で30分遠心処理した。遠心後、ユニット下部に排出された液体を廃棄し、廃棄した液体と同質量の純水をフィルター上に濃縮されたシリカゾルに投入して再分散させた後、再び3000rpmの回転速度で30分遠心処理した。前記の作業を合計4回繰り返して、未結合のシランを除去した水性シリカゾルを得た。
未結合のシランを除去した水性シリカゾル1gをガラスシャーレに入れ、ホットプレート上で加熱乾燥させて水を除去した後、乳鉢で粉砕した。得られた粉末を20mlのガラスサンプル管に入れて真空乾燥(加熱温度60℃、30分間)することで測定用の粉末を得た。
前記得られた粉末を、自動燃焼イオンクロマトグラフ分析装置(JFEテクノリサーチ株式会社製)を用いて測定し、粉末中の硫黄含有量S(質量%)を得た。得られた値から、下記式によって、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量(個/nm)を求めた。
〔シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量〕(個/nm)=
(S/32.07×6.02×1023)/(2720/(平均一次粒子径nm)×1020
【0100】
(実施例1)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの200gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)4.3gを添加した後、液温を80℃で4時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力を150Torrとし、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら圧力を110Torrまで徐々に下げつつ水80gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.6質量%、粘度(20℃)4.2mPa・s、メタノール0.01質量%、pH2.7、動的光散乱法による平均粒子径22nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量0.97個/nm)224gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は26nm、粘度(20℃)は7.0mPa・sであった。
【0101】
(実施例2)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)15.26gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.8であった。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)5.43gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力を150Torrとし、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら圧力を110Torrまで徐々に下げつつ水190gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.3質量%、粘度(20℃)4.4mPa・s、メタノール0.05質量%、pH2.7、動的光散乱法による平均粒子径21nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.44個/nm)572gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は22nm、粘度(20℃)は4.9mPa・sであり、安定であった。
【0102】
(実施例3)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)15.26gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。次に、NaOH水溶液(10.22質量%)を1.96g添加し、表面処理水性シリカゾルのpHを7.0に調整した。その後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは7.2であった。メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)5.43gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力を150Torrとし、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら圧力を110Torrまで徐々に下げつつ水190gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、粘度(20℃)7.7mPa・s、メタノール0.05質量%、pH7.5、動的光散乱法による平均粒子径21nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.47個/nm)568gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は20nm、粘度(20℃)は6.0mPa・sであり、安定であった。
【0103】
(実施例4)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)22.89gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.8であった。次に、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-803、信越化学工業株式会社製)3.83gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力を150Torrとし、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら圧力を110Torrまで徐々に下げつつ水190gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、粘度(20℃)6.9mPa・s、メタノール0.02質量%、pH2.7、動的光散乱法による平均粒子径23nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.20個/nm)565gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は26nm、粘度(20℃)は9.3mPa・sであった。
【0104】
(実施例5)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-40(BET法による平均一次粒子径22nm、シリカ濃度40.5質量%、pH2.4、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)10.13gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.7であった。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)7.22gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力150Torr~110Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら水429gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.9質量%、粘度(20℃)4.7mPa・s、メタノール0.04質量%、pH3.4、動的光散乱法による平均粒子径36nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.93個/nm)672gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は38nm、粘度(20℃)は4.9mPa・sであり、安定であった。
【0105】
(実施例6)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスOL(BET法による平均一次粒子径45nm、シリカ濃度20.5質量%、pH2.7、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)2.42gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは3.0であった。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)1.68gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力150Torr~110Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら水160gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.8質量%、粘度(20℃)3.0mPa・s、メタノール0.01質量%、pH2.9、動的光散乱法による平均粒子径76nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.62個/nm)337gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は77nm、粘度(20℃)は3.1mPa・sであり、安定であった。
【0106】
(実施例7)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-40(BET法による平均一次粒子径22nm、シリカ濃度40.5質量%、pH2.4、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの300gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)6.08gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.7であった。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)2.17gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.7であった。次に、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-5103、信越化学工業株式会社製)0.60gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力150Torr~110Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら水333gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度31.2質量%、粘度(20℃)4.6mPa・s、メタノール0.01質量%、pH3.8、動的光散乱法による平均粒子径36nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.42個/nm)398gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は37nm、粘度(20℃)は4.5mPa・sであり、安定であった。
【0107】
(実施例8)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-40(BET法による平均一次粒子径22nm、シリカ濃度40.5質量%、pH2.4、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの300gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)9.12gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.7であった。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名X-12-1307、信越化学工業株式会社製)2.17gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。得られたゾルのpHは2.7であった。次に、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-5103、信越化学工業株式会社製)0.60gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力150Torr~110Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら水333gを供給し、メルカプト基含有表面処理水性シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、粘度(20℃)5.1mPa・s、メタノール0.01質量%、pH3.5、動的光散乱法による平均粒子径35nm、シリカ粒子に結合した単位面積当たりのチオール基に基づくイオウ原子含有量 0.25個/nm)409gを得た。
得られたメルカプト基含有表面処理水性シリカゾルを密閉ガラス容器に入れ、50℃で14日保持した後の動的光散乱法による平均粒子径は35nm、粘度(20℃)は5.1mPa・sであり、安定であった。
【0108】
(比較例1)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性ゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)22.89gを添加した後、液温を80℃で4時間保持した。
その後、ロータリーエバポレーターにて圧力150Torr~110Torr、浴温度80℃で溶媒を蒸発留去させながら水190gを供給し、水性表面処理シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、粘度(20℃)5.2mPa・s、メタノール0.01質量%、pH2.8、動的光散乱法による平均粒子径22nm)561gを得た。
【0109】
(比較例2)
水性シリカゾル、商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)を準備した。
前記水性シリカゾルの500gを1Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで前記水性シリカゾルを攪拌しながら、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-403、信越化学工業株式会社製)15.26gを添加した後、液温を80℃で2時間保持した。次に、NaOH水溶液(10.22質量%)を8.30g添加し、表面処理水性シリカゾルのpHを9.0に調整した。その後、液温を80℃で2時間保持した。次に、メルカプトメチルトリメトキシシラン(商品名KBM-803、信越化学工業株式会社製)を添加した所、ゾル全体がゲル化した。
【0110】
〔密着性評価試験〕
<シリカゾル>
以下のシリカゾルを準備した。
・実施例1~8及び比較例1で作製した水性表面処理シリカゾル
・商品名スノーテックス30(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30.5質量%、pH9.9、日産化学株式会社製)
・商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)
<樹脂>
以下の樹脂エマルジョンを準備した。
・商品名ポリゾールS-65(主成分:酢酸ビニル樹脂、固形分:50.5質量%、昭和電工株式会社製)
・商品名ハイドランAP-40F(主成分:ポリエステル樹脂、固形分:22.5質量%、DIC株式会社製)
<コート液の調製方法>
樹脂エマルジョンに、樹脂に対するシリカ添加量が67phrになるように実施例1~8または比較例1のシリカゾルを添加した後、コート液の固形分が20質量%になるように純水で希釈することで、シリカ配合樹脂エマルジョンコート液を調製した(表1)。また、参考例1として、樹脂エマルジョンのみの場合も、コート液の固形分が20質量%になるように純水で希釈した。参考例2および3として、商品名スノーテックス30または商品名スノーテックスO-33を添加した後、コート液の固形分が20質量%になるように純水で希釈することで、シリカ配合樹脂エマルジョンコート液を調製した。
<塗工方法>
以下のCu板を準備した。
板厚:0.5mm、寸法:幅200mm×長さ365mmのCu板(商品名HC0526、光(株)製)
Cu板の保護シートを除去しアセトンで拭き取り脱脂を行った後、各コート液をCu板上に滴下し、卓上型ワイヤバーコーター(PM-9050MC、株式会社エスエムテー製)を用いてウエット塗布膜厚41μm、0.5m/分の速度で塗布した後、80℃で5分間の乾燥を行い、塗膜付きCu板を得た。
【0111】
<密着性評価>
JIS K5600-5-6を参考に、以下の方法に従い、クロスカット法によるコート膜のCu板への密着性を評価した。
切り込み工具を用いてコート面に1.5mm角の100個(10行×10列)の格子パターンをカットし、その格子部分にかかるように20mm幅のセロハン粘着テープを接触させた。その後、テープの端を掴み、0.5秒~1.0秒で確実に引き離すようにテープを剥がし、コート膜に生じた剥がれの有無及びその個数(碁盤目数)を目視にて確認し、以下の判定基準にて評価した。
<判定基準>
A:剥離しない碁盤目数が90個以上
B:剥離しない碁盤目数が60個以上90個未満
C:剥離しない碁盤目数が40個以上60個未満
D:剥離しない碁盤目数が40個以下
<コート液組成及び密着性評価結果>
コート液組成及び密着性評価結果を表1及び2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
〔耐擦傷性評価試験〕
<シリカゾル>
以下のシリカゾルを準備した。
・実施例1、実施例2、実施例4及び比較例1で作製した水性表面処理シリカゾル
・商品名スノーテックス30(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30.5質量%、pH9.9、日産化学株式会社製)
・商品名スノーテックスO-33(BET法による平均一次粒子径12nm、シリカ濃度33.5質量%、pH2.6、日産化学株式会社製)
<樹脂>
商品名UAW-1000W30(主成分:10官能ウレタンアクリレート系樹脂エマルジョン、溶媒:水、固形分:30質量%、共栄社化学株式会社製)を準備した。
<コート液の作製方法>
前記樹脂エマルジョンに、樹脂に対するシリカ添加量が50phrになるように実施例2、4及び5~8並びに比較例1のシリカゾルを添加した後、コート液の固形分が30質量%になるように純水で希釈した。それに、光重合開始剤である商品名Omnirad2959を樹脂成分に対して4質量%添加することでシリカ配合樹脂エマルジョンコート液を調製した。
また、参考例1として樹脂エマルジョンのみの場合も、同量の光重合開始剤を加えることで樹脂エマルジョンコート液とした。参考例2及び3として商品名スノーテックス30または商品名スノーテックスO-33を添加した後、コート液の固形分が30質量%になるように純水で希釈した。それに、光重合開始剤である商品名Omnirad2959を樹脂成分に対して4質量%添加することでシリカ配合樹脂エマルジョンコート液を調製した。
<塗工方法>
以下のPETフィルムを準備した。
フィルム厚さ:0.1mm、寸法:幅210mm×長さ297mmのPETフィルム(商品名コスモスシャインA4100#100、東洋紡(株)製)
各コート液をPETフィルム上に滴下し、ワイヤバーコーター(ウエット塗布膜厚31μm)を用いて1.0m/分の速度で塗布した後、80℃で3分間の乾燥を行った。その後、コンベア式UV硬化装置(商品名EYE INVERTOR GRANDAGE(4KW) アイグラフィックス株式会社製)を用い、照射量:620mJ/cmでUV硬化し、コート膜付きPETフィルムを得た。得られた硬化膜の透明性を目視で評価した。
<耐擦傷性評価(耐スチールウール(SW)試験)>
得られたコート膜の表面(低屈折率層表面)を往復摩耗試験機(商品名HEIDON TRIBOGEAR TYPE:30S 新東科学株式会社製)に取り付け、コート膜の表面を荷重1.0kgの条件でスチールウールにて10回繰り返し擦過し、当該表面における傷の本数を、目視で確認した。コート液組成及び耐摩耗性結果を表3及び4に示す。
<コート液組成及び摩耗性評価結果>
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0117】
メルカプト基含有シラン化合物で被覆されたシリカ粒子が水性媒体に分散したpH2~7.5の水性シリカゾルを提供する。
【要約】
【課題】
メルカプト基含有シラン化合物で被覆されたシリカ粒子が水性媒体に分散したpH2~7.5の水性シリカゾルを提供する。
【解決手段】
メルカプト基を含むシラン化合物又はその加水分解物で被覆されたシリカ粒子を含むpH2~7.5の水性シリカゾルであり、メルカプト基を含むシラン化合物又はその加水分解物と、それ以外の少なくとも1種のシラン化合物又はその加水分解物とで被覆されたシリカ粒子を含み、更に塩基性物質を含むシリカゾルであり、シラン化合物の合計量はシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数で0.3個/nm~5.0個/nmの範囲内にあるシリカゾル、並びに該シリカ粒子を含む樹脂組成物、エマルジョン組成物、塗料組成物、又は重合性組成物とその製造方法。
【選択図】
なし