(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】アンモニア除害装置およびアンモニア除害方法
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20241120BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B01D53/14 200
(21)【出願番号】P 2022101713
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 大志
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-037849(JP,A)
【文献】特開平04-270111(JP,A)
【文献】特開2010-071148(JP,A)
【文献】特開2019-015199(JP,A)
【文献】特開2012-082796(JP,A)
【文献】特開2017-217982(JP,A)
【文献】国際公開第2016/062410(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015012213(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
B63H 21/32
B01D 53/14
F23J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶に接続されるアンモニア除害装置であって、
多段型反応部、送液部、貯蔵部を備え、
前記多段型反応部は、尿素水を溶媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記送液部は、前記多段型反応
部にて生成されるアンモニア水や前記
船舶に設置された造水機にて生成される清水を送付し、
前記貯蔵部は、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニア除害装置であって、
前記多段型反応部における熱交換器の冷媒を、前記液化アンモニアまたは前記船舶にさらに別途搭載された液化石油ガスとする、もの。
【請求項3】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶に接続されるアンモニア除害装置であって、
横置多段型反応部、送液部、貯蔵部を備え、
前記
横置多段型反応部は、前記船舶に設置された造水機にて生成される清水を冷媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記横置多段型反応部には、前記横置多段型反応部の内部に設置される螺旋板、または前記横置多段型反応部の入口に設置されるミキサー、の少なくとも一方が備え付けられ、
前記送液部は、前記
横置多段型反応
部にて生成されるアンモニア水や前記清水を送付し、
前記貯蔵部は、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、もの。
【請求項4】
請求項
3に記載のアンモニア除害装置であって、
前記
横置多段型反応部における熱交換器の冷媒を、前記液化アンモニアまたは前記船舶にさらに別途搭載された液化石油ガスとする、もの。
【請求項5】
請求項
1~2に記載のアンモニア除害装置であって、
前記多段型反応部に、分散器具が備え付けられる、もの。
【請求項6】
請求項
1~4に記載のアンモニア除害装置であって、
前記貯蔵部に貯蔵された前記アンモニア水または前記混合水を、前記船舶と接続される選択式還元触媒システムの還元剤として供給するよう構成される、もの。
【請求項7】
請求項
5に記載のアンモニア除害装置であって、
前記貯蔵部に貯蔵された前記アンモニア水または前記混合水を、前記船舶と接続される選択式還元触媒システムの還元剤として供給するよう構成される、もの。
【請求項8】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニア除害方法であって、
多段型反応ステップ、送液ステップ、貯蔵ステップを備え、
前記多段型反応ステップは、尿素水を溶媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記送液ステップは、前記多段型反応ステップにて生成されるアンモニア水や前記
船舶に設置された造水機にて生成される清水を送付し、
前記貯蔵ステップは、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のアンモニア除害方法であって、
前記多段型反応ステップにおける熱交換器の冷媒を、前記液化アンモニアまたは前記船舶にさらに別途搭載された液化石油ガスとする方法。
【請求項10】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニア除害方法であって、
多段型反応ステップ、送液ステップ、貯蔵ステップを備え、
前記多段型反応ステップは、
前記船舶に設置された横置多段型反応部にて、前記船舶に設置された造水機にて生成される清水を溶媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記多段型反応ステップは、前記横置多段型反応部内部に備え付けられる螺旋板、または前記横置多段型反応部の入口に備え付けられるミキサー、の少なくとも一方が用いられ、
前記送液ステップは、前記多段型反応ステップにて生成されるアンモニア水や前記清水を送付し、
前記貯蔵ステップは、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、方法。
【請求項11】
請求項
10に記載のアンモニア除害方法であって、
前記多段型反応ステップにおける熱交換の冷媒を、前記液化アンモニアまたは前記船舶に搭載された液化石油ガスとする、方法。
【請求項12】
請求項
8~9に記載のアンモニア除害方法であって、
前記多段型反応ステップは、備え付けられた分散器具が用いられる、方法。
【請求項13】
請求項
8~11に記載のアンモニア除害方法であって、
前記貯蔵ステップにて貯蔵された前記アンモニア水または前記混合水を、前記船舶と接続される選択式還元触媒システムの還元剤として供給するよう構成される、方法。
【請求項14】
請求項
12に記載のアンモニア除害方法であって、
前記貯蔵ステップにて貯蔵された前記アンモニア水または前記混合水を、前記船舶と接続される選択式還元触媒システムの還元剤として供給するよう構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア除害装置およびアンモニア除害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの潮流において、燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶が増加している。しかし、液化アンモニアは大気圧下および常温下において揮発しやすいものであり、かつ、アンモニアは、人体に影響があるためそのまま大気放出することはできず、除害装置にてアンモニアを除去しておかねばならない。
【0003】
一般にアンモニアを除害するための方法としてスクラバと呼ばれる、水にアンモニアガスを吸収させる方法が知られており、比較的コストが掛からず操作が安易であるため船舶においてよく使用される方法である。
【0004】
特許文献1には、上記スクラバにおいて、水を貯蔵したタンクの下部から窒素などの不活性ガスをバブリングして溶け込ませることで、アンモニアが除害できる船舶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は水を貯蔵している処理タンクの下部からバブリングによってアンモニアを溶け込ませるため、反応時間を確保すべく、タンク自体が気泡塔としてある程度の高さが要求されるところ、船舶での設置スペースの制約上不可能な場合がある。
【0007】
また水とアンモニアガスとの接触による発熱反応は非常に大きく、その反応熱により溶媒の温度上昇が発生し、アンモニアガスの溶解量が小さくなるが、この問題を解決できる構成とはなっていない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶において発生しうるアンモニアについて、特に高さ方向において制約がある状況であっても、溶解量を小さくすることなく効率よく除害しうるアンモニア除害装置およびアンモニア除害方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶に接続されるアンモニア除害装置であって、
多段型反応部、送液部、貯蔵部を備え、
前記多段型反応部は、前記船舶に設置された造水機にて生成される清水を溶媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記送液部は、前記多段方反応器にて生成されるアンモニア水や前記清水を送付し、
前記貯蔵部は、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、ものである。
【0010】
本発明の第2の観点は、
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニア除害方法であって、
多段型反応ステップ、送液ステップ、貯蔵ステップを備え、
前記多段型反応ステップは、前記船舶に設置された造水機にて生成される清水を溶媒として、前記アンモニアを溶解させ、
前記送液ステップは、前記多段型反応ステップにて生成されるアンモニア水や前記清水を送付し、
前記貯蔵ステップは、前記アンモニア水または前記アンモニア水と前記清水との混合水を貯蔵するよう構成される、方法である。
【0011】
本発明のアンモニア除害装置およびアンモニア除害方法によれば、特に高さ方向において制約がある船舶であっても、アンモニアガスの溶解量を小さくすることなく効率よくアンモニアを除害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかるアンモニア除害装置1の全体図
【
図5】燃料供給装置とアンモニア除害装置1との構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
1.アンモニア除害装置1の構成
第1節では、本実施形態のアンモニア除害装置1の構成について説明する。
【0015】
1.1 アンモニア除害装置1
図1は、本実施形態の一態様であって、燃料又は貨物として、液化アンモニア(以下「LNH3」とする)を搭載する船舶に接続されるアンモニア除害装置1の全体図である。アンモニア除害装置1は、多段型反応部2と、送液部3、貯蔵部4から構成される。多段型反応部2は主としてアンモニアガスを、溶媒である清水または上記船舶に接続される選択式還元触媒の還元剤としての尿素水に溶け込ませる構成となっている。送液部3は、そうして生成されたアンモニア水や合成還元剤を貯蔵部4に送付し、貯蔵部4はこれらを様々な目的に利用するよう貯蔵する。
【0016】
1.2 多段型反応部2
多段型反応部2は、
図2や
図3に示すように、アンモニアガスと造水機で作られた清水や上述の尿素水との気液混合を促進するよう、分散器具として内部に螺旋板や入口にミキサー等が設けられているものが考えられる。また多段型反応部2は、反応流路を確保するため、横向きに複数本のチューブラを保持する構成となっている。
なお、上述のとおり、水とアンモニアガスとの接触による発熱反応は非常に大きく、その反応熱により溶媒の温度上昇が発生する。そして、アンモニアガスの溶解量が小さくなる。これを防止するために、多段型反応部2は熱交換器にもなっており、
図2や
図3のように、冷媒が複数本のチューブラと接触する形状となっている。こうすることでアンモニアの溶解量を小さくすることなく、アンモニアを除害することができるようになる。
【0017】
1.3 送液部3
送液部3は、多段型反応部2に、造水機で作られた清水や選択式還元触媒の還元剤として使用される尿素水を送る。また多段型反応部2で生成されたアンモニア水や合成還元水(合成還元剤)を後段の貯蔵部4に送る。なお、貯蔵部4は様々な目的を達成できるように、アンモニア水や合成還元水(合成還元剤)の濃度を一定に保つ必要があるため、造水機で作られた清水を多段型反応部2だけでなく、貯蔵部4に直接送るものであっても構わない。そのため、送液部3には流量調整機構が設けられ、各種液体が所定の濃度となるよう設定される。
【0018】
1.4 貯蔵部4
貯蔵部4に蓄えられるのは、多段型反応部2での溶媒が清水の場合はアンモニア水であり、尿素水の場合は合成還元水(合成還元剤)である。なお、特に、合成還元水(合成還元剤)の尿素、アンモニアのそれぞれの割合等を調整すべく、造水機で作られた清水が送液部3から送られ、合わせて貯留されるものである。
また、上記アンモニア水や合成還元水(合成還元剤)は、舶用ディーゼルエンジンに接続される選択式還元触媒の還元剤としても利用されるものであるため、貯蔵部4自体が還元剤の備蓄タンクと併用されるものであっても良い。そうすることでさらに船内スペースの有効利用も図りうる。
【0019】
なお、貯蔵部4には温度調整機構が設けられている。外気温の影響により内部に蓄えられたアンモニア水や、合成還元水(合成還元剤)からアンモニアガスの放散や粉末尿素が析出することもあり、それらを抑制する必要があるからである。
図5のように、多段型反応部2との間でアンモニアガスが循環ラインを形成していても勿論よい。
【0020】
2 第1の実施形態
第2節では、本発明第1の実施形態の態様について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の一態様であって、アンモニア除害装置1の全体図である。なお多段型反応部2での冷熱源が、燃料タンクに貯留されているLNH3である場合の、燃料供給装置とアンモニア除害装置1とを合わせた構成図は
図5のようになる。
【0022】
上述のとおり、いわゆるスクラバ方式によりアンモニアガスを不活性ガスによるバブリングにより溶媒である水に溶け込ませる除害方法は知られている。しかし、そのためには、反応時間を確保するために、気泡塔のようなある程度の高さが必要になるところ、船内の設置スペースの関係上制限される場合がある。
また、アンモニアガスと水とは発熱反応を起こすため、温度上昇を防ぐためには、上記のとおり高さだけが必要なのではなく、大量の溶媒としての水も当該発熱反応の周囲になければならい。そうすると船舶に搭載される造水機の負担も大きくなり、効率的なアンモニア除害装置にはならない。
【0023】
そこで
図2や
図3のような、横置きタイプの多段型反応部2が考えられる。こうすることで反応流路を確保しつつ、また冷媒を用いることができるため、アンモニア除害装置1のコンパクト化が実現される。
図2のように分散器具として、螺旋板がチューブの内部に取り付けられることで気液混合がより促進されることになり、また
図3のように分散器具として、チューブ入口にミキサーが取り付けられることでも気液混合が促進される。なお、設置スペース等の問題により複数のチューブが2本程度にせざるを得ない場合には、上記分散器具としての螺旋板とミキサーが内部と入口の同時に取り付けられるものであっても勿論よい。
さらに
図2や
図3のような、チューブのU字型部分に分散器具として、ミキサーが取り付けられるものであっても勿論よい(不図示)。
【0024】
なお上記冷媒としてはフロン等の気化ガスが考えられる。環境調整を考慮して、冷熱源として海水を利用することも考えられる。海水を利用した場合には、アンモニアガスと溶媒である水との反応熱は造水機にて清水を生成するのに消費することも可能となるため、より好ましい形態ではある。しかし、海水の温度が季節に応じて変化するため、外気温で想定される最高温度での濃度にせざるを得ないところもあり、アンモニア水の濃度を高めにくいという点も看過できない。外気温の影響により、溶媒に溶け込んだアンモニアガスが放散する場合があるからである。
【0025】
多段型反応部2での要素試験結果を
図4に示す。実験条件は
図4に記載のとおりであり、本実験に用いた冷媒はエチレングリコール水を減圧したものを用いている。なお溶媒は工場用水を用いており、多段型反応部2へ35℃で供給されている。
冷媒入口温度を低くすることでアンモニアの回収率が高くなることがわかる。またチューブラが複数構造となることで、反応時間が増大することにより高い水準でアンモニアを回収できることもわかる。
【0026】
こうして、多段型反応部2によりアンモニアガスは溶媒である水に全て溶け込むことになり、大気にそのまま排出されることはない。その後、送液部3により生成されたアンモニア水は貯蔵部4に送られることになる。送液部3は、貯蔵部4でのアンモニア水の濃度を調整しうるように、生成した清水を所定の流量送付できるように造水機にも取り付けられていてもよい。送液部3の流量調整弁によって、種々の目的に対応できるように貯蔵部4にて所定の濃度のアンモニア水として貯留されることになる。
【0027】
さらに、貯蔵部4に温度調整機構が設けられており、多段型反応部2との間で循環ラインが形成されていれば、貯蔵部4から放出されたアンモニアガスの有効利用ができることにもなり、より環境調和性の高いものになる。
【0028】
なお、多段型反応部2へ導かれるアンモニアガスは、
図5にあるとおり弁V1と弁V2を閉じた状態にして、弁V3を開いてもたらされるものである。その際、弁V1とエンジン間より、窒素に代表される不活性ガスを供給して、アンモニア供給装置とエンジンの切り分けがなされる。
【0029】
以上のとおり、こうすることで、気泡塔のような高さを要するスクラバは必要なくなり、特に高さ方向において制約がある場合であっても安定してアンモニアを処理できる。当然のことながらスクラバに溶媒となる水を揚程しなくても構わないことになるため、ポンプへの負荷も低減できることになり、溶解量を小さくすることなく効率よくアンモニアを除害できることになる。
【0030】
3 第2の実施形態
第3節では、本発明第2の実施形態の態様について説明する。なお、第1の実施形態と略同様の機能や構成については、その説明を省略する。
【0031】
多段型反応部2に用いる冷媒を、船舶が燃料または貨物として搭載しているLNH3とすることも考えられる。
図5のとおり、多段型反応部2で熱を吸収したLNH3が一部気化する。そうして発生したアンモニアガスを、アンモニア燃料船の場合には、当該燃料タンクに、一方アンモニア貨物船の場合には、当該貨物タンクに戻すこともできるため、さらに好ましい形態となり環境調和性が高い。
また、多段型反応部2で使用される冷媒が、LNH3であれば、燃料供給装置等で昇圧された当該LNH3を直接的に用いることができるため、エネルギー効率としても無駄がないものでもある。
【0032】
図5のように、本発明のアンモニア除害装置が燃料供給装置と併設する形態となることで、全体の配管の設置コストの上昇を抑えることもできる。当該併設形態は高さ方向において制約がある船舶の場合であっても、多段型反応部2を横置き設置できるため、その効果は大きい。
【0033】
なお、上記船舶が液化石油ガス(以下「LPG」とする)を搭載している場合には、そのLPGを冷媒として用いてもよい。船舶の運行状況によってLNH3を利用できない場合も考えられるため、冷媒として用いる限りにおいてはLPGであっても熱交換器としての役割を果たすことができるからである。そのため上記のように、高さ方向において制約がある場合のみならず、横置き設置の場合であっても冷熱源としての効果は高く、多段型反応部2の小型化による設置スペースの有効利用も図れるため、さらに好ましい。
【0034】
4 その他の実施形態
本発明第1および第2の実施形態の態様において、多段型反応部2での溶媒が、液化アンモニアを搭載する船舶に接続される選択式還元触媒システムの還元剤としての尿素水であってもよい。
【0035】
貯蔵部4の省スペース化および軽量化を達成させることができることになるからである。またアンモニアを直接的に尿素水に溶け込ませることで、造水機5での負荷自体も低減できることになるため好ましい形態である。
アンモニアガスは水に溶けると弱アルカリ性となるため、水素イオン指数で濃度を容易に計測できるため、合成還元水(合成還元剤)の限界濃度である40重量%の尿素水と28重量%のアンモニア水を作成することも困難になりにくいため、より好ましい。
【0036】
図2のとおり、多段型反応部2に、分散器具として、内部にコイル状の螺旋板が設けられるものであってもよい。気液混合が促進されるところ、アンモニアガスが清水または尿素水により溶け込むことになり、アンモニア除害装置の効率化に資するため好ましい。
なお、螺旋板の設置は気液混合を促進させるものであるため、当該螺旋板の形状がコイル状のものに限定されるわけではない。
【0037】
また、
図3のように多段型反応部2に、分散器具として、入口直前に気液混合ミキサーが設けられるものであってもよい。気液混合が促進されるところ、アンモニアガスが清水または尿素水により溶け込むことになり、アンモニア除害装置の効率化に資するため好ましい。
なお、
図2や
図3のようなチューブのU字型部分に、分散器具としてのミキサーが取り付けられるものであっても勿論よい。気液混合が促進されるため、なお好ましい。
【0038】
さらに、分散器具として、上述の螺旋板やミキサーがともに多段型反応部2に設けられていても勿論よい。多段型反応部2のチューブラの本数が複数であっても、2本程度と少ない場合には、上記螺旋板とミキサーを併用することにより、さらに効率よく気液混合が促進されることになるため、より好ましい。
【0039】
40重量%の尿素水と28重量%のアンモニア水は、同等の還元作用能力を有すると考えられるところ、船舶に接続される選択式還元触媒システムの還元剤備蓄タンクを本発明に係るアンモニア除害装置の貯蔵部4とすることで、設置スペースの省略可を図りうるため好ましい。また合成還元水(合成還元剤)の使用によって吹きかける噴霧量を低減させることも可能となり、ランニングコストの削減に繋がるためさらに好ましい。
【0040】
以上、種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 アンモニア除害装置
2 多段型反応部
3 送液部
4 貯蔵部
5 造水機