(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】取付部材およびモータポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20241120BHJP
F04D 13/06 20060101ALI20241120BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20241120BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20241120BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20241120BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F04D29/44 C
F04D13/06 E
F04D13/06 G
F04D29/08 B
F04D29/62 A
H02K5/10 Z
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2021004825
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】今井 智大
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106323(JP,A)
【文献】特開2021-004570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 13/06
F04D 29/08
F04D 29/62
H02K 5/10
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータポンプを接続対象物に取り付けるための、前記モータポンプの一部を構成する取付部材であって、
前記接続対象物内の液体が流れる液体流路と、
前記液体流路に接続され、かつ前記接続対象物の壁面に密着可能な密着面と、
前記密着面に形成され、かつ前記液体流路の外側に配置されたシール溝と、を備え
、
前記取付部材は、前記接続対象物の壁面との間に空気の層を形成する空気層形成部を備えており、
前記空気層形成部は、前記密着面に形成されている、取付部材。
【請求項2】
前記シール溝は、前記液体流路と同心状に配置された環状のシール溝である、請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
前記取付部材は、前記接続対象物に締結可能な締結具を挿入するための締結孔が形成されたフランジ部を備えている、請求項1または請求項2に記載の取付部材。
【請求項4】
前記空気層形成部は、前記取付部材を前記液体流路の流線方向から見たとき、前記モータポンプの一部を構成するモータ固定子と重なる位置に形成されている、請求項
1に記載の取付部材。
【請求項5】
前記密着面は、前記液体流路の流線方向と垂直に延びる平坦面である、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の取付部材。
【請求項6】
モータポンプであって、
永久磁石が埋設された羽根車と、
前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
複数の固定子コイルが巻回された固定子コアを有するモータ固定子と、
前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、を備え、
前記モータケーシングは、
前記モータポンプを接続対象物に取り付けるための、前記モータポンプの一部を構成する取付部材と、
前記取付部材に取り付けられたモータフレームと、を備えて
おり、
前記取付部材は、
前記接続対象物内の液体が流れる液体流路と、
前記液体流路に接続され、かつ前記接続対象物の壁面に密着可能な密着面と、
前記密着面に形成され、かつ前記液体流路の外側に配置されたシール溝と、を備えており、
前記モータポンプは、前記モータフレームを前記取付部材と前記ポンプケーシングで挟んだ状態で前記モータケーシングおよび前記ポンプケーシングを一体的に締結する締結具を備えている、モータポンプ。
【請求項7】
前記取付部材は、前記モータフレームを挟んで、前記ポンプケーシングの反対側に配置されている、請求項
6に記載のモータポンプ。
【請求項8】
前記取付部材に形成された液体流路は、第1液体流路であって、
前記モータフレームは、前記第1液体流路に連結された第2液体流路を備えている、請求
項6または請求項7に記載のモータポンプ。
【請求項9】
前記モータポンプは、前記第1液体流路および前記第2液体流路のうちの少なくとも1つの液体流路に配置された整流部材を備えている、請求項
8に記載のモータポンプ。
【請求項10】
前記取付部材は、前記モータフレームよりも低い熱伝導率を有する材料から構成されている、請求項
6~請求項
9のいずれか一項に記載のモータポンプ。
【請求項11】
前記取付部材は、前記モータフレームよりも高い熱伝導率を有する材料から構成されている、請求項
6~請求項
9のいずれか一項に記載のモータポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材およびモータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石が埋設された羽根車を、モータ固定子が発生する磁界により回転させるモータポンプが存在する(例えば、特許文献1参照)。このようなモータポンプは、他のポンプ装置と比較して、コンパクトな構造を有しており、各種装置等への組み込みに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-048162号公報
【文献】特開昭51-072169号公報
【文献】特開2019-120158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなモータポンプは、吸込配管が接続されるねじ接続部を有しており、これら吸込配管およびねじ接続部を介して各種装置等に接続される。したがって、モータポンプの設置時では、これらねじ接続部および吸込配管が配置されるスペースを確保しなければならず、結果として、モータポンプの設置面積が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、モータポンプの設置面積を低減することができる取付部材および取付部材を備えるモータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、モータポンプを接続対象物に取り付けるための、前記モータポンプの一部を構成する取付部材が提供される。取付部材は、前記接続対象物内の液体が流れる液体流路と、前記液体流路に接続され、かつ前記接続対象物の壁面に密着可能な密着面と、前記密着面に形成され、かつ前記液体流路の外側に配置されたシール溝と、を備えている。
【0007】
一態様では、前記シール溝は、前記液体流路と同心状に配置された環状のシール溝である。
一態様では、前記取付部材は、前記接続対象物に締結可能な締結具を挿入するための締結孔が形成されたフランジ部を備えている。
一態様では、前記取付部材は、前記接続対象物の壁面との間に空気の層を形成する空気層形成部を備えており、前記空気層形成部は、前記密着面に形成されている。
【0008】
一態様では、前記空気層形成部は、前記取付部材を前記液体流路の流線方向から見たとき、前記モータポンプの一部を構成するモータ固定子と重なる位置に形成されている。
一態様では、前記密着面は、前記液体流路の流線方向と垂直に延びる平坦面である。
【0009】
一態様では、永久磁石が埋設された羽根車と、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、複数の固定子コイルが巻回された固定子コアを有するモータ固定子と、前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、を備えるモータポンプが提供される。前記モータケーシングは、上記取付部材と、前記取付部材に取り付けられたモータフレームと、を備えている。
【0010】
一態様では、前記取付部材は、前記モータフレームを挟んで、前記ポンプケーシングの反対側に配置されている。
一態様では、前記モータポンプは、前記モータフレームを前記取付部材と前記ポンプケーシングで挟んだ状態で前記モータケーシングおよび前記ポンプケーシングを一体的に締結する締結具を備えている。
一態様では、前記取付部材に形成された液体流路は、第1液体流路であって、前記モータフレームは、前記第1液体流路に連結された第2液体流路を備えている。
【0011】
一態様では、前記モータポンプは、前記第1液体流路および前記第2液体流路のうちの少なくとも1つの液体流路に配置された整流部材を備えている。
一態様では、前記取付部材は、前記モータフレームよりも低い熱伝導率を有する材料から構成されている。
一態様では、前記取付部材は、前記モータフレームよりも高い熱伝導率を有する材料から構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取付部材を設けることにより、ねじ接続部および吸込配管は不要である。したがって、モータポンプの設置面積を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】モータフレームに装着された取付部材を示す図である。
【
図4】モータポンプを液体流路の流線方向(すなわち、
図2のA線方向)から見た図である。
【
図5】水槽の壁面に取り付けられたモータポンプを示す図である。
【
図6】本実施形態に係るモータポンプの効果を説明するための図である。
【
図7】モータポンプの他の実施形態を示す図である。
【
図8】空気層形成部の他の実施形態を示す図である。
【
図9】モータポンプの他の実施形態を示す図である。
【
図10】モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、モータポンプの一実施形態を示す図である。
図2は、モータポンプの断面図である。モータポンプMPは、水槽などの接続対象物に直接的に取り付け可能である。以下、本明細書では、接続対象物の一例としての水槽WTに取り付けられたモータポンプMPの実施形態について、説明する。
【0015】
モータポンプMPは、吐出配管DPに接続されており、吐出配管DPを通じて、水槽WTに貯留された液体を外部に移送するように構成されている。
図2に示すように、モータポンプMPは、複数の永久磁石5が埋設された羽根車1と、これらの永久磁石5に作用する磁力を発生するモータ固定子6と、羽根車1を収容するポンプケーシング2と、モータ固定子6を収容するモータケーシング3と、羽根車1のラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受10と、を備えている。モータ固定子6および軸受10は、羽根車1の吸込側に配置されている。
【0016】
モータケーシング3は、モータポンプMPが接続される水槽に取り付け可能な取付部材100と、取付部材100に取り付けられたモータフレーム101と、を備えている。モータフレーム101は、環状形状を有するモータ固定子6を収容可能な環状の凹構造を有している。
【0017】
モータ固定子6は、複数の歯(図示しない)を有する固定子コア6Aと、これらの歯にそれぞれ巻回された固定子コイル6Bと、を有している。固定子コイル6Bには、リード線が接続されており、リード線の端子は図示しない駆動回路に接続される。この駆動回路は、スイッチング素子を用いて各固定子コイル6Bに供給する電流のタイミングを制御する機器である。
【0018】
モータフレーム101は、図示しない締結具によってポンプケーシング2に締結されている。ポンプケーシング2とモータフレーム101との間には、シール部材としてのOリング9が設けられている。羽根車1とモータフレーム101とは微小な隙間を介して対向しており、羽根車1は、モータ固定子6により発生される回転磁界が永久磁石5に作用することによって回転する。
【0019】
羽根車1は単一の軸受10によって回転自在に支持されている。この軸受10は液体の動圧を利用した滑り軸受(動圧軸受)である。この軸受10は、互いに緩やかに係合する回転側軸受要素11と固定側軸受要素12の組み合わせから構成される。回転側軸受要素11は、羽根車1に固定されており、羽根車1の液体入口を囲むように配置されている。固定側軸受要素12はモータフレーム101に固定されており、回転側軸受要素11の吸込側に配置されている。
【0020】
ポンプケーシング2の側面には、吐出口16aを有する吐出ポート16が設けられており、回転する羽根車1によって昇圧された液体は、吐出口16aを通って吐き出される。羽根車1から吐き出された液体の一部は、羽根車1とモータフレーム101との間の微小な隙間を通って軸受10に導かれる。回転側軸受要素11が羽根車1とともに回転すると、回転側軸受要素11と固定側軸受要素12との間に液体の動圧が発生し、これにより羽根車1が軸受10によって非接触に支持される。
【0021】
モータフレーム101には、吸込口100aを有する取付部材100が固定される。取付部材100は、吸込口100aを通じて、水槽WT内の液体が流れる液体流路105を有している。液体流路105は、取付部材100の中心部に形成されている。モータフレーム101の中心部には、液体流路101aが形成されている。軸受10の中心部に形成される液体流路は、モータフレーム101の中心部に形成された液体流路101aの一部を構成する。これら液体流路105,101aは一列に連結され、吸込口100aから羽根車1の液体入口まで延びる1つの液体流路を構成する。
【0022】
図3は、モータフレームに装着された取付部材を示す図である。
図2および
図3に示すように、取付部材100は、その中心部に形成された環状凸部106を有しており、モータフレーム101は、その中心部に形成された環状凹部110を有している。環状凹部110は、環状凸部106が挿入可能なサイズを有しており、環状凸部106を環状凹部110に挿入することにより、取付部材100はモータフレーム101に装着される。
【0023】
環状凸部106の外周面には、Oリングなどのシール部材111が装着されるシール溝112が形成されている。シール部材111をシール溝112に装着した状態で、環状凸部106を環状凹部110に挿入することにより、取付部材100とモータフレーム101との間の隙間からの液体の漏洩が防止される。
【0024】
図2に示すように、取付部材100は、ねじなどの締結具115によってモータフレーム101に締結されている。より具体的には、取付部材100は、液体流路105と平行に延びる貫通孔116を有しており、モータフレーム101は、貫通孔116に接続可能な接続孔117を有している。
【0025】
作業者は、環状凸部106を環状凹部110に挿入し、かつ貫通孔116および接続孔117を連結させる。この状態で、作業者は、締結具115を貫通孔116および接続孔117に挿入して、締結具115を締め付けることにより、取付部材100をモータフレーム101に固定する。取付部材100は、モータフレーム101を挟んで、ポンプケーシング2の反対側に配置されている。
【0026】
図4は、モータポンプを液体流路の流線方向(すなわち、
図2のA線方向)から見た図である。
図5は、水槽の壁面に取り付けられたモータポンプを示す図である。
図4に示す実施形態では、取付部材100は、等間隔に配置された4つの締結具115によってモータフレーム101に固定されているが、締結具115の数は本実施形態には限定されない。
【0027】
取付部材100は、液体流路105に接続され、かつ水槽WTの壁面W1に密着可能な密着面120と、密着面120に形成され、かつ液体流路105の外側に配置されたシール溝121と、を備えている。密着面120は、液体流路105の流線方向Aと垂直に延びる平坦面である。シール溝121は、液体流路105と同心状に配置された環状のシール溝である。シール溝121には、Oリングなどのシール部材122が装着されている。シール部材122は、水槽WTの壁面W1と取付部材100の密着面120との間の隙間からの液体の漏洩を防止する。
【0028】
図4および
図5に示すように、取付部材100は、水槽WTの壁面W1に締結可能なねじなどの締結具123を挿入するための締結孔124が形成されたフランジ部125を備えている。フランジ部125は、密着面120に形成された貫通孔116よりも外側に形成されている。締結孔124は、貫通孔116と平行に延びている。
【0029】
図5に示すように、作業者は、水槽WTの壁面W1に形成された連結孔W2とフランジ部125に形成された締結孔124とを一致させた状態で、締結具123をモータポンプMP側から締結孔124および連結孔W2に挿入し、締結具123を締め付ける。このようにして、モータポンプMPは直接的に水槽WTに取り付けられる。
【0030】
図6は、本実施形態に係るモータポンプの効果を説明するための図である。
図6の上側のモータポンプは、比較例としてのモータポンプであり、
図6の下側のモータポンプは、本実施形態に係るモータポンプMPである。比較例としてのモータポンプは、吸込配管が接続されるねじ接続部を有しており、これら吸込配管およびねじ接続部を介して水槽WTに接続されている。
【0031】
本実施形態に係るモータポンプMPは、ねじ接続部を有しておらず、その代わりに取付部材100を備えている。したがって、モータポンプMPは、吸込配管を使用することなく、直接的に水槽WTに接続される。結果として、モータポンプMPは、比較例としてのモータポンプと比べて、距離DTだけコンパクトな構造を有する。このような構造により、モータポンプMPの設置面積を低減することができ、モータポンプMPは、その設置面積の制約を受けることなく、様々な設置環境に応じて、設置可能である。
【0032】
さらに、本実施形態に係るモータポンプMPは、次の効果を奏することができる。つまり、比較例としてのモータポンプを採用する場合、液体の漏洩を防止するために、吸込配管のねじ部にシールテープを巻き付けたり、シール材を塗布する必要がある。しかしながら、このような方法には、ある程度のテクニックが必要であり、手間がかかる。したがって、モータポンプのメンテナンスに多大な時間や労力を要する。
【0033】
その一方で、本実施形態では、モータポンプMPは、シール部材122が装着された取付部材100を備えている(
図2および
図3参照)。したがって、締結具123を締め付けることにより、シール部材122は、確実に水槽WTの壁面W1に確実に押し付けられ、水槽WTの壁面W1と取付部材100との間の隙間を確実に封止することができる。このように、取付部材100を水槽WTの壁面W1に固定するだけの簡単な方法で、シール部材122は、その機能を十分に発揮することができる。したがって、モータポンプMPのメンテナンスに要する時間や労力などを低減することができる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、モータポンプMPの、水槽WTとの接触面積は大きいため、モータポンプMPおよび水槽WTは一体の構造物とみなすことができる。したがって、モータポンプMPの全体の剛性を向上させることができ、モータポンプMPが振動しても、モータポンプMPおよび水槽WTは、振動の影響を受けにくい。結果として、モータポンプMPの振動に起因する騒音や部品の破損を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、一般的なモータポンプ(例えば、比較例としてのモータポンプ)の構成要素の一部であるモータカバーの代わりに、取付部材100をモータフレームに取り付けるだけの簡単な方法で、一般的なモータポンプは、本実施形態に係るモータポンプMPと同様の構造を有することができる。
【0036】
図7は、モータポンプの他の実施形態を示す図である。
図7に示すように、取付部材100は、水槽WTの壁面W1との間に空気の層を形成する空気層形成部130を備えている。空気層形成部130は、取付部材100の密着面120に形成された窪みである。空気層形成部130が形成された密着面120を水槽WTの壁面W1に密着させることにより、密着面120と水槽WTの壁面W1との間には、空気の層が形成される。
【0037】
モータ固定子6の固定子コイル6Bに電流を流すと、固定子コイル6Bが発熱する。熱の一部は、モータフレーム101および取付部材100を通じて水槽WTの壁面W1に伝達される。水槽WTには、熱の影響を受けることを望まない液体が貯留される場合がある。空気層形成部130は、密着面120と水槽WTの壁面W1との間に空気の層を形成するため、熱の、水槽WT内の液体への伝達を抑制することができる。
【0038】
図7に示す実施形態では、取付部材100は、シール溝121の外側に形成された2つの空気層形成部130を備えているが、空気層形成部130の数および形状は本実施形態には限定されない。一実施形態では、少なくとも1つの空気層形成部130が形成されてもよい。シール部材122がその機能を十分に発揮することができれば、空気層形成部130の配置箇所も特に限定されない。
【0039】
図8は、空気層形成部の他の実施形態を示す図である。
図8では、図面を見やすくするために、主要な構成要素以外の図示は省略されている。
図8に示すように、空気層形成部130は、取付部材100を液体流路105の流線方向Aから見たとき、モータ固定子6と重なる位置に形成されている。空気層形成部130は、環状形状を有しており、吸込口100aを取り囲んでいる。
【0040】
取付部材100を液体流路105の流線方向Aから見たとき、モータ固定子6からの熱の影響を最も受ける取付部材100の部位は、モータ固定子6と重なる位置における部位である。そこで、このような形状により、空気層形成部130は、モータ固定子6からの熱が水槽WT内の液体に伝達されることをより効率的に防止することができる。
【0041】
一実施形態では、取付部材100は、モータフレーム101よりも低い熱伝導率を有する材料(低熱伝導率材料)から構成されてもよい。このような材料の一例として、プラスチック材、ガラス材が挙げられる。このような構成により、熱の、水槽WT内の液体への伝達をより効率的に抑制することができる。
【0042】
上述したように、モータ固定子6は発熱部材であるため、モータ固定子6の温度が過剰に上昇してしまうと、モータ固定子6が劣化したり、破損したりするおそれがある。したがって、水槽WT内の液体の温度が十分に低く、かつこの液体がモータ固定子6の冷却に使用可能である場合、この液体によって、モータ固定子6を冷却してもよい。そこで、一実施形態では、取付部材100は、モータフレーム101よりも高い熱伝導率を有する材料(高熱伝導率材料)から構成されてもよい。このような材料は、例えば、銅合金またはアルミニウムなどの金属、またはセラミックである。
【0043】
一実施形態では、取付部材100は、空気層形成部130に埋め込まれた熱伝導性材料を備えてもよい。熱伝導性材料は、例えば、低熱伝導率材料、高熱伝導率材料、粉砕された低熱伝導率材料を軟質材料(例えば、樹脂など)に練り込んだ複合材料、粉砕された高熱伝導率材料を軟質材料(例えば、樹脂など)に練り込んだ複合材料から構成されている。
【0044】
熱伝導率材料が硬質材料から構成される場合、熱伝導率材料を空気層形成部130の形状に合わせて製造し、このように製造された熱伝導率材料を空気層形成部130に嵌め込んでもよい。接着剤によって熱伝導率材料を空気層形成部130に固定してもよい。熱伝導率材料が上記複合材料から構成される場合、熱伝導率材料を空気層形成部130に充填してもよい。
【0045】
このように、熱伝導率材料を空気層形成部130に埋め込むことにより、取付部材100自身を低熱伝導率材料(または高熱伝導率材料)から構成することなく、取付部材100は、効果的に断熱(または伝熱)することができる。さらに、このような構成により、空気層形成部130が形成された取付部材100を複数個、用意し、使用用途に応じて、熱伝導性材料の種類(低い熱伝導率または高い熱伝導率)選択し、選択された熱伝導性材料を空気層形成部130に埋め込むことができる。
【0046】
図9は、モータポンプの他の実施形態を示す図である。モータポンプMPの吐出ポート16には、吐出配管DP(
図1参照)が接続される。この吐出配管DPには、流量センサや圧力センサなどの部品が取り付けられる場合がある。この場合、吐出配管DP自体の荷重や部品の荷重の影響により、取付部材100および/またはモータフレーム101に高い応力が作用するおそれがある。結果として、モータポンプMPの構成要素(例えば、取付部材100および/またはモータフレーム101)が破損したり、変形したりする可能性がある。
【0047】
そこで、
図9に示す実施形態では、モータポンプMPは、モータフレーム101を取付部材100とポンプケーシング2で挟んだ状態でモータケーシング3およびポンプケーシング2を一体的に締結する締結具150を備えている。締結具150の一例として、通しボルト(ケーシングボルト)が挙げられる。
【0048】
図9に示す実施形態では、モータフレーム101は、貫通孔116に接続可能な連通孔151を有しており、ポンプケーシング2は、連通孔151に接続可能な挿入孔152を有している。作業者は、貫通孔116、連通孔151、および挿入孔152が一直線上に並ぶように、ポンプケーシング2、モータフレーム101、および取付部材100をこの順に配置する。この状態で、作業者は、締結具150をこれら貫通孔116、連通孔151、および挿入孔152に挿入し、締結具150を締め付ける。
【0049】
このようなモータケーシング3およびポンプケーシング2の一体的な締め付けにより、取付部材100の剛性を向上させることができる。したがって、吐出配管DP側の荷重がモータポンプMPに作用しても、モータポンプMPの構成要素の破損や変形を防止することができる。
【0050】
図10は、モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
図11は、整流部材を示す図である。
図10に示すように、モータポンプMPは、水槽WTから流れ込む液体を整流する整流部材160を備えてもよい。
図10に示す実施形態では、整流部材160は、取付部材100の中心部に形成された液体流路105およびモータフレーム101の中心部に形成された液体流路101aに配置されている。一実施形態では、整流部材160は、液体流路105,101aのうちの少なくとも1つの液体流路に配置されてもよい。
【0051】
図11に示すように、整流部材160は、互いに直交して配置された2つの整流体160a,160bを備えている。しかしながら、整流部材160は、吸込口100aから羽根車1の液体入口まで延びる液体流路を整流することができれば、
図11に示す実施形態には限定されない。
【0052】
比較例としてのモータポンプ(例えば、
図6の上側のモータポンプ)を採用する場合、吸込配管内に整流部材を配置して、水槽WTからモータポンプに流れ込む液体を整流する。本実施形態では、モータポンプMPは、吸込配管を必要としない構造を有している。したがって、モータポンプMPは、その内部に配置された整流部材160によって、水槽WTから流れ込む液体をモータポンプMPの内部で整流する。
【0053】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 モータケーシング
5 永久磁石
6 モータ固定子
6A 固定子コア
6B 固定子コイル
9 Oリング
10 軸受
11 回転側軸受要素
12 固定側軸受要素
16 吐出ポート
16a 吐出口
100 取付部材
100a 吸込口
101 モータフレーム
101a 液体流路
105 液体流路
106 環状凸部
110 環状凹部
111 シール部材
112 シール溝
115 締結具
116 貫通孔
117 接続孔
120 密着面
121 シール溝
122 シール部材
123 締結具
124 締結孔
125 フランジ部
130 空気層形成部
150 締結具
151 連通孔
152 挿入孔
160 整流部材
160a 整流体
160b 整流体
MP モータポンプ
DP 吐出配管
WT 水槽
W1 壁面
W2 連結孔