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特許7591792ナフトビスチアジアゾール化合物及びその製造方法並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ナフトビスチアジアゾール化合物及びその製造方法並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20241122BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20241122BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20241122BHJP
【FI】
C07D513/04 301
C07D513/04 CSP
H10K10/40
H10K30/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022521800
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016336
(87)【国際公開番号】W WO2021230035
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020082939
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】陣内 青萌
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 卓司
(72)【発明者】
【氏名】大井 彩裕美
(72)【発明者】
【氏名】森山 太一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073468(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039369(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0018281(KR,A)
【文献】国際公開第2014/026244(WO,A1)
【文献】米国特許第9184315(US,B2)
【文献】国際公開第2015/190762(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるナフトビスチアジアゾール化合物。
【化1】

(一般式(I)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
Ar及びArは、互いに独立して、
【化2】

であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
及びWは、互いに独立して、
【化3】

であり、*は結合手であり、Q、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
Dはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む有機半導体材料。
【請求項3】
請求項2に記載の有機半導体材料を含む有機半導体デバイス。
【請求項4】
下記一般式(II)で示される化合物。
【化4】

(一般式(II)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りであり;
Ar及びArは、互いに独立して、
【化5】

であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)
【請求項5】
前記請求項1に記載の一般式(I)で示されるナフトビスチアジアゾール化合物の製造方法であって、下記一般式(II)で示される化合物
【化6】

(一般式(II)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りであり;
Ar及びArは、互いに独立して、
【化7】

であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)中のArを置換するホルミルの酸素原子及びArを置換するホルミルの酸素原子の各々を、
【化8】

(各化学式中、Q、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)で表される化合物と反応させることを特徴とする、前記ナフトビスチアジアゾール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフトビスチアジアゾール化合物及びその製造方法並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスに関する。更に、本発明は、ナフトビスチアジアゾール化合物を製造するための中間体化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を用いた有機トランジスタや有機太陽電池等に関する研究開発が盛んに行われている。有機半導体材料を用いた場合、印刷法、スピンコート法等のウエットプロセスによる簡便な方法で、薄膜状の有機半導体層を作製できる。このため、有機半導体材料を用いて半導体素子等を作製した場合、無機半導体材料を用いて半導体素子を作製した場合に比べて、製造コストが低いという利点があり、また、薄く柔軟性に優れる有機半導体素子が得られる等の利点がある。
n型有機半導体材料の一例として、フェニルC61酪酸メチルエステルやフェニルC71酪酸メチルエステル等のフラーレン誘導体を用いて、バルクヘテロ型有機太陽電池を作製することが提案されている。しかしながら、フラーレン誘導体を用いると、他の有機半導体材料と比べて比較的製造コストが高い等の欠点があるため、かかるフラーレン代替となり得るπ拡張系n型有機半導体材料の研究開発が行われている。
n型有機半導体材料への応用が期待される化合物の一例として、高い対称性や平面性を有し、低い最低空軌道のエネルギー準位をもつ特徴を有するナフトビスチアジアゾール化合物が挙げられる。例えば、非特許文献1に、ナフトビスチアジアゾール骨格を含む化合物(P-PDTz-TDT-NTz)がn型有機半導体材料として駆動することが記載されている。また、特許文献1には、電子受容性を向上させる強力な電子吸引性の置換基であるフッ素原子が導入されたナフトビスカルコゲナジアゾール化合物を製造するための、汎用性の高い製造用中間体として利用可能なナフトビスカルコゲナジアゾール誘導体を提供することを目的として、硫黄原子を含むナフトビスチアジアゾール誘導体及びその製造方法の例が記載されている(段落[0006]-[0009])。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Org.Lett.2015,17,4580-4583.
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/123207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの独自の検討によれば、n型有機半導体材料として良好な特性を示すナフトビスチアジアゾール化合物、及びこれを製造するための中間体化合物として利用可能なナフトビスチアジアゾール誘導体には更なる改良の余地があることが判明し、これを達成することを発明が解決しようとする課題に設定した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する目的で、ナフトビスチアジアゾール化合物及びこれを製造するための中間体化合物として利用可能なナフトビスチアジアゾール誘導体を探索し、鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示される化合物が、優れたn型有機半導体特性を有し、有機半導体材料として高い光電変換効率を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下に存する。
【0007】
[1]下記一般式(I)で示されるナフトビスチアジアゾール化合物。
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(I)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
【0010】
Ar及びArは、互いに独立して、
【0011】
【化2】
【0012】
であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
及びWは、互いに独立して、
【0013】
【化3】
【0014】
であり、*は結合手であり、Q、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり;
Dはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である。)
【0015】
[2][1]に記載の化合物を含む有機半導体材料。
【0016】
[3][2]に記載の有機半導体材料を含む有機半導体デバイス。
【0017】
[4]下記一般式(II)で示される化合物。
【0018】
【化4】
【0019】
(一般式(II)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りであり;
Ar及びArは、互いに独立して、
【0020】
【化5】
【0021】
であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)
【0022】
[5]前記[1]に記載の一般式(I)で示されるナフトビスチアジアゾール化合物の製造方法であって、下記一般式(II)で示される化合物
【0023】
【化6】
【0024】
(一般式(II)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りであり;
Ar及びArは、互いに独立して、
【0025】
【化7】
【0026】
であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)中のArを置換するホルミルの酸素原子及びArを置換するホルミルの酸素原子の各々を、
【0027】
【化8】
【0028】
(各化学式中、Q、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。)で表される化合物と反応させることを特徴とする、前記ナフトビスチアジアゾール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る化合物は、高い電子受容骨格である、フッ素原子、シアノ、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアシルアミノ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアシルオキシ、置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、置換されていてもよいアルキルチオ、又は置換されていてもよいアリールチオで置換したナフトビスチアジアゾールと芳香族基をそれぞれ有することから、優れたn型有機半導体特性を有する。そのため、本発明に係る化合物は有機半導体材料として、より一層優れた光電変換効率を有する有機太陽電池、又はより一層優れたキャリア移動度を有する有機トランジスタ等に有用である。
また、本発明では、有機半導体材料を簡便に、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】試験例1の有機太陽電池における電流密度-電圧特性を示す図である。
図2】試験例2の有機太陽電池における電流密度-電圧特性を示す図である。
図3】試験例3の有機太陽電池における電流密度-電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(化合物の構造)
本発明の化合物は、一般式(I)で示される。本発明において、ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも一種を意味する。
【0032】
【化9】
【0033】
上記一般式(I)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオである。X及びXは、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルチオが好ましい。
【0034】
本発明において、Dはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である。
【0035】
Ar及びArは、互いに独立して、
【0036】
【化10】
【0037】
であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオである。Ar及びArは、チオフェン-2,5-ジイル基、チアゾール-2,5-ジイル基又は、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基であるのが好ましい。
【0038】
及びWは、互いに独立して、
【0039】
【化11】
【0040】
であり、*は結合手であり、Q、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオである。W及びWは、3-アルキル-2-チオキソチアゾリジン-4-オン-5-メチレン基、3-アルキル-チアゾリジン-2,4-ジオン-5-メチレン基、1H-インデン-1,3(2H)-ジオン-2-メチレン基、又は3-(ジシアノメチリデン)インダン-1-オン-2-メチレン基であるのが好ましい。
【0041】
(中間体化合物の構造)
本発明の中間体化合物は、一般式(II)で示される。
【0042】
【化12】
【0043】
一般式(II)中、X及びXは、互いに独立して、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。X及びXは、フッ素原子、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルチオが好ましい。
【0044】
Ar及びArは、互いに独立して、
【0045】
【化13】
【0046】
であり、*は結合手であり、結合手の結合位置は任意であり;
及びZは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであり、Dは前記の定義の通りである。Ar及びArは、チオフェン-2,5-ジイル基、チアゾール-2,5-ジイル基又は、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基であるのが好ましい。
【0047】
(化合物の製造方法)
前記一般式(I)で示される化合物(以下一般式(I)の化合物)の製造方法は特に限定されないが、一例として、以下の反応スキームに沿って、市販されている化合物から合成して製造することができる。より具体的な一例は、後述の実施例に記載されている。
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
前記特許文献1の記載に基づき、式(1-1)で表される化合物(以下「化合物(1-1)」という)を合成し、該化合物から工程A、B、C及びDを経て、又は工程E、F、G及びDを経て、一般式(I)の化合物を合成することができる。また、前記特許文献1の記載に基づき、式(4-1)で表される化合物(以下「化合物(4-1)」という)を製造し、得られた化合物(4-1)から工程H及びIを経て、又は化合物(1-1)から工程Mを経て、式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」という)を合成する。このようにして得られた化合物(1)から工程J、C及びDを経て、又は工程K及びDを経て、又は工程L、G及びDを経て、一般式(I)の化合物を合成することができる。
【0051】
<工程A>
工程Aでは、化合物(1-1)と、式(i)で示される化合物(以下「化合物(i)」という)及び式(ii)で示される化合物(以下「化合物(ii)」という)とから、式(2-1)で示される化合物(以下「化合物(2-1)」という)を製造する。化合物(1-1)の式中において、Y及びYは、互いに独立して、臭素原子、ヨウ素原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基を表す。化合物(i)及び化合物(ii)各々の式中において、Ar及びArは前述の定義通りであるが、互いに独立して、チオフェン-2,5-ジイル基、チアゾール-2,5-ジイル基又は、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基であるのが好ましく、B及びBは、互いに独立して、臭素原子、ヨウ素原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、又はトリアルキルスズ基であるのが好ましい。
【0052】
工程Aは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1)と、化合物(i)及び化合物(ii)を触媒存在下で反応させて化合物(2)を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)、テトラヒドロフラン(以下THFと略す)等が挙げられる。また、触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(2)は、工程Bに供する前に精製することが好ましい。
【0053】
<工程B>
次いで、化合物(2-1)から、式(2-2)で示される化合物(以下「化合物(2-2)」という)を製造する(工程B)。化合物(2-2)の式中において、X1a及びX2aは、互いに独立して、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、又はDで置換されていてもよいアリールチオであるが、互いに独立して、シアノ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、アリールオキシ、アシルオキシ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルキルチオ又はアリールチオであるのが好ましい。また、Dは前述の通りである。
【0054】
工程Bは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(2-1)とカリウムシアニドのようなシアン化合物、アルコール、アミン、及び/又はチオアルコールを反応させて化合物(2-2)を生成させる。溶媒としては、THF、アセトニトリル、クロロベンゼン、DMF等が挙げられる。また、塩基として、炭酸ナトリウムやtert-ブトキシカリウム等を添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(2-2)は、工程Cに供する前に精製することが好ましい。
【0055】
<工程C>
次いで、化合物(2)から、一般式(II)で示される化合物(以下「一般式(II)の化合物」という)を製造する(工程C)。なお、化合物(2)には、化合物(2-1)と化合物(2-2)が包含され、X及びXは前述の通りである。
【0056】
工程Cは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(2)を酸で加水分解反応させて一般式(II)の化合物を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。一般式(II)の化合物は、工程Dに供する前に精製することが好ましい。
【0057】
<工程D>
次いで、一般式(II)の化合物と、化合物(iii)(以下「化合物(iii)」という)、化合物(iv)(以下「化合物(iv)」という)、化合物(v)(以下「化合物(v)」という)又は化合物(vi)(以下「化合物(vi)」という)とから、一般式(I)の化合物を製造する(工程D)。化合物(iii)、化合物(iv)、化合物(v)又は化合物(vi)において、Q、R、R、R及びRは前述の定義通りである。また、一般式(I)の化合物において、W及びWは、互いに独立して、 3-アルキル-2-チオキソチアゾリジン-4-オン-5-メチレン基、3-アルキル-チアゾリジン-2,4-ジオン-5-メチレン基、1H-インデン-1,3(2H)-ジオン-2-メチレン基、又は3-(ジシアノメチリデン)インダン-1-オン-2-メチレン基 であるのが好ましい。
【0058】
工程Dは、具体的には、例えば、溶媒中で一般式(II)の化合物と、化合物(iii)、化合物(iv)、化合物(v)又は化合物(vi)とを、塩基の存在下で反応させて一般式(I)の化合物を生成させる。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピリジン等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。一般式(I)の化合物は、精製することが好ましい。
【0059】
<工程E>
化合物(1-1)と、式(vii)で示される化合物(以下「化合物(vii)」という)及び式(viii)で示される化合物(以下「化合物(viii)」という)とから、式(3-1)で示される化合物(以下「化合物(3-1)」という)を製造する(工程E)。化合物(vii)及び化合物(viii)において、B及びBは前述の通りである。
【0060】
工程Eは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1)と化合物(vii)及び化合物(viii)とを触媒存在下で反応させて化合物(3-1)を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(3-1)は、工程Fに供する前に精製することが好ましい。
【0061】
<工程F>
次いで、化合物(3-1)から、式(3-2)で示される化合物(以下「化合物(3-2)」という)を製造する(工程F)。
【0062】
工程Fは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(3-1)とシアン化合物、アルコール、アミン、及び/又はチオアルコールとを反応させて化合物(3-2)を生成させる。溶媒としては、THF、アセトニトリル、クロロベンゼン、DMF等が挙げられる。また、塩基として、炭酸ナトリウムやtert-ブトキシカリウム等を添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(3-2)は、工程Gに供する前に精製することが好ましい。
【0063】
<工程G>
次いで、化合物(3)から、一般式(II)の化合物を製造する(工程G)。なお、化合物(3)には、化合物(3-1)と化合物(3-2)が包含される。
【0064】
工程Gは、具体的には、溶媒中でオキシ塩化リン存在下、化合物(3)に、DMF等を反応させて一般式(II)の化合物を生成させる。溶媒としては、塩化メチレン及び/又はクロロホルム及び/又は1,2-ジクロロエタン等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。一般式(II)の化合物は、精製することが好ましい。
【0065】
<工程H>
化合物(4-1)から、式(4-2)で示される化合物(以下「化合物(4-2)」という)を製造する(工程H)。
【0066】
工程Hは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(4-1)とカリウムシアニドのようなシアン化合物、アルコール、アミン、及び/又はチオアルコールとを反応させて化合物(4-2)を生成させる。溶媒としては、THF、アセトニトリル、クロロベンゼン、DMF等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(4-2)は、工程Iに供する前に精製することが好ましい。
【0067】
<工程I>
次いで、化合物(4)から、式(1)で示される化合物(以下「化合物(1)」という)を製造する(工程I)。なお、化合物(1)には、前記した化合物(1-1)と後記する化合物(1-2)が包含される。
【0068】
工程Iは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(4)とN-ブロモスクシンイミド、臭素、N-ヨードスクシンイミド等とを反応させて化合物(1)を生成させる。溶媒としては、THF、ジクロロエタン、クロロホルム等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(1)は、工程J、K、又はLに供する前に精製することが好ましい。
【0069】
<工程J>
次いで、化合物(1)と、化合物(i)及び化合物(ii)とから、化合物(2)を製造する(工程J)。
【0070】
工程Jは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1)と化合物(i)及び化合物(ii)とを触媒存在下で反応させて化合物(2)を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(2)は、精製することが好ましい。
【0071】
<工程K>
化合物(1)と、一般式(ix)で示される化合物(以下「化合物(ix)」という)及び一般式(x)で示される化合物(以下「化合物(x)」という)とから、一般式(II)の化合物を製造する(工程K)。化合物(ix)及び化合物(x)において、Ar、Ar、B及びBは前述の通りである。
【0072】
工程Kは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1)と化合物(ix)及び化合物(x)とを触媒存在下で反応させて一般式(II)の化合物を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。一般式(II)の化合物は、精製することが好ましい。
【0073】
<工程L>
化合物(1)と、化合物(vii)及び化合物(viii)とから、化合物(3)を製造する(工程L)。
【0074】
工程Lは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1)と化合物(vii)及び化合物(viii)とを触媒存在下で反応させて化合物(3)を生成させる。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、THF等が挙げられる。また、触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(3)は、精製することが好ましい。
【0075】
<工程M>
化合物(1-1)から、化合物(1-2)を製造する(工程M)。
【0076】
工程Mは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(1-1)とカリウムシアニドのようなシアン化合物、アルコール、アミン、及び/又はチオアルコールとを反応させて化合物(1-2)を生成させる。溶媒としては、THF、アセトニトリル、クロロベンゼン、DMF等が挙げられる。反応温度は、例えば0℃~200℃とすることができる。化合物(1-2)は、精製することが好ましい。
【0077】
(有機半導体材料)
本発明の一般式(I)の化合物は、有機半導体材料として用いることができる。特に、n型有機半導体材料として優れた効果を有する。
【0078】
(有機半導体素子)
前記の有機半導体材料を含む層を基板上に形成して、有機半導体素子として用いることができる。基板としては、例えば、ガラス、樹脂を用いてもよい。有機半導体材料を含む層を形成するには、公知の方法を用いて、溶媒に溶解した溶液を塗布したり、有機半導体材料を蒸着して形成することができる。
【0079】
(有機半導体デバイス)
前記の有機半導体素子を用いて、必要に応じて電極や配線を施して、有機半導体デバイスとすることができる。有機半導体デバイスとしては、有機エレクトロニクス全般、例えば、有機太陽電池、有機トランジスタ(有機電界効果型トランジスタ、光トランジスタ等)、有機エレクトロルミネッセンス、センサ(光センサ等)、メモリ、電子写真用感光体、コンデンサ及び/又はバッテリー等においても使用することができる。また、プロトン導電膜の材料としても使用し得る。
【0080】
(有機太陽電池)
前記の有機半導体素子を用いて有機太陽電池を作製することができる。有機太陽電池は、例えば、基板上に電極層、電子輸送層(電子取出層)、光電変換層(光活性層)、正孔輸送層(正孔取出層)、及び電極層を順に積層した構造を有する。本発明に係る化合物を含む有機半導体材料は、例えば、光電変換層(光活性層)を形成する。基板としては、例えば、受光性能を阻害しないよう、光透過性を有する基板が挙げられる。そのような基板としては、例えば、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色又は有色の透明性を有する樹脂を用いてもよい。また、そのような樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、及びポリメチルペンテン等が挙げられる。電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)電極、銀電極、アルミニウム電極、金電極、クロム電極、酸化チタン電極、酸化亜鉛電極等が挙げられる。電子輸送層(電子取出層)としては、例えば、フェナントロリン、バソキュプロイン、及びペリレン等の有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体等の有機物;LiF、CsF,CsO,CsCO,TiOx(xは0~2の任意の数字)、及びZnO等の無機化合物;Ca、Ba等の金属;等が挙げられる。正孔輸送層(正孔取出層)としては、例えば、PEDOT(ポリスチレンスルホネート、poly(styrenesulfonate))、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、及びポリカルバゾール等の導電性高分子;MoO及びWO等の無機化合物;フタロシアニン、及びポルフィリン等の有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体;トリフェニルアミン化合物及びヒドラジン化合物等の電荷移動剤;TTF(テトラチアフルバレン)のような電荷移動錯体;等の正孔移動度が高い材料が挙げられる。
【0081】
本発明の一般式(I)の化合物をn型半導体材料として用いる場合において、正孔輸送層(正孔取出層)として共に用いるp型半導体材料としては、ドナー型π共役高分子やドナーアクセプタ型π共役高分子等が挙げられる。ドナー型π共役高分子としては、ポリ-3-へキシルチオフェン(P3HT)、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリ-アルコキシ-p-フェニレンビニレン、ポリ-9,9-ジアルキルフルオレン、ポリ-p-フェニレンビニレンを挙げることができる。ドナーアクセプタ型π共役高分子中のドナーユニットとしては、ベンゾチオフェン、ジチエノシロール、N-アルキルカルバゾールが、またアクセプタユニットとしては、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェン、チオフェンピロールジオン等が挙げられ、具体的には、これらのユニットを組み合わせた、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン-co-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]チオフェン)(PTBxシリーズ)、ポリ(ジチエノ[1,2-b:4,5-b’][3,2-b:2’,3’-d]シロール-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)類等の高分子化合物が挙げられる。これらのうちで、好ましいものとしては、ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7)、ポリ[4,8-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン]-2,6-ジイル-alt-((5-オクチルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン)-1,3-ジイル)(PBCTTPD)、ポリ[(4,4’-ビス(2-エチルヘキシル)ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール)-2,6-ジイル-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル)(PSBTBT)、ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-alt-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT)、ポリ[1-(6-{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]-6-メチルベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2-イル}{3-フルオロ-4-メチルチエノ[3,4-b]チオフェン-2-イル}-1-オクタノン)(PBDTTT-CF)が挙げられる。
【0082】
(有機トランジスタ)
前記の有機半導体素子を用いて有機トランジスタを作製することができる。有機トランジスタは、具体的には、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び活性層を有し、該活性層に前記の有機半導体素子を用いることができる。
【実施例
【0083】
以下、実施例に基づき、有機半導体材料を構成する各種化合物の合成、化合物を含む有機半導体材料を用いた有機太陽電池の特性について更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
<物性の測定条件等>
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMM-ECS400」、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JNM-ECA600」、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「ECX(500MHz)」、又はブルカー・バイオスピン株式会社製の商品名「AVANCEIII700」を用いて測定した。ケミカルシフトは、百万分率(ppm)で表す。内部標準(0ppm)には、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで表され、略号s、d、t、q、m及びbrは、各々、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)、及び広幅線(broad)を表す。
【0085】
質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製の商品名「GCMS-QP5050A」を用い、直接試料導入(DI)法によって測定した。
【0086】
実施例で用いた全ての化学物質及びカラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、又はシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入した。
【0087】
[合成例1]
(化合物2の合成)
50mLナス型フラスコに、NPG Asia Materials 10, p.1016―1028, 2018.に記載に基づき合成した下記化合物1(31mg,0.05mmol)、tert-ブトキシカリウム(14mg,0.12mmol)、n-ヘキシルアルコール(51mg,0.5mmol)及びTHF(10mL)を加え、窒素置換した。その後、加熱還流条件で20時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に塩化メチレン及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと塩化メチレンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物2を得た(暗褐色固体,18mg,収率46%)。反応式を以下に示す。
【0088】
【化16】
【0089】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.29(d,J=1.2Hz,2H),7.20(d,J=1.2Hz,2H),3.95(t,J=7.0Hz,4H),2.75(t,J=7.8Hz,4H),2.16-2.08(m,4H),1.78-1.70(m,4H),1.48-1.26(m,28H),0.96-0.82(m,12H)。
【0090】
[合成例2]
(化合物3の合成)
50mLナス型フラスコに、前記合成例1に記載の化合物1(31mg,0.05mmol)、炭酸ナトリウム(53mg,0.50mmol)、1-ヘキサンチオール(71mg,0.60mmol)及びDMF(5mL)を加え、窒素置換した。その後、60℃で19時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと塩化メチレンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物3を得た(暗褐色固体,12mg,収率30%)。反応式を以下に示す。
【0091】
【化17】
【0092】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.52(d,J=1.2Hz,2H),7.23(d,J=1.2Hz,2H),2.74(t,J=7.6Hz,4H),2.57(t,J=7.4Hz,4H),1.77-1.68(m,4H),1.47-1.28(m,XH),1.20-1.02(m,16H),0.96-0.84(m,12H),0.77(t,J=0.74,6H)。
【0093】
[合成例3]
(化合物5の合成)
50mLナス型フラスコに、NPG Asia Materials 10, p.1016―1028, 2018.の記載に準じて合成した化合物4(30mg,0.045mmol)、シアン化カリウム(18mg,0.27mmol)、18-クラウン6-エーテル(1mg,0.005mmol)、THF(4mL)及びDMF(1mL)を加え、窒素置換した。その後、90℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと塩化メチレンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物5を得た(赤色固体,30mg,収率98%)。反応式を以下に示す。
【0094】
【化18】
【0095】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.00(d,J=1.6Hz,2H),7.42(d,J=1.6Hz,2H),2.72(t,J=6.8Hz,4H),1.75-1.63(m,2H),1.47-1.24(m,8H),0.99-0.86(m,12H)。
【0096】
前記の化合物2、3、5は、一般式(I)の化合物の中間体化合物である化合物(3)であり、工程G、Dを経て、一般式(I)の化合物を合成することができる。
【0097】
[合成例4]
(化合物7の合成)
200mLナス型フラスコに、Structural Chemistry, 2012, vol. 23, p.1751-1760の記載に準じて合成した化合物6(3.78g,16.8mmol)、エチレングリコール(2.09g,33.7mmol)、トルエン(80mL)及びp―トルエンスルホン酸(29mg,0.17mmol)を加え、ディーンスタークトラップを設置し12時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて10分間撹拌した。反応液にヘキサンを加えて抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物7を得た(無色液体,4.34g,収率96%)。反応式を以下に示す。
【0098】
【化19】
【0099】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.22(d,J=5.2Hz,1H),6.82(d,J=5.2Hz,1H),6.09(s,1H),4.15(m,2H),4.01(m,2H),2.57(d,J=7.2Hz,2H),1.58(m,1H),1.32-1.24(m,8H),0.89-0.84(m,6H)。
【0100】
[合成例5]
(化合物8の合成)
100mL二口ナス型フラスコに、前記合成例4で得た化合物7(1.00g,3.73mmol)とTHF(37mL)を加えて窒素置換し、-78℃に冷却した。その後n-ブチルリチウム溶液(1.6mmol/L、2.44mL、3.91mmol)を滴下し30分撹拌した後、塩化トリブチルスズ(1.82g、5.59mmol)を加え、反応液を室温まで昇温させた。その後、反応液に水を加え、ヘキサンで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去し、純度60-80%の下記化合物8を得た(淡黄色液体,2.51g)。反応式を以下に示す。
【0101】
【化20】
【0102】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=6.83(s,1H),6.06(s,1H),4.17(m,2H),3.99(m,2H),2.57(d,J=7.2Hz,2H),1.58(m,1H),1.58-1.49(m,4H),1.32-1.24(m,12H),1.05(t,J=8.0Hz,3H),0.89-0.84(m,12H)。
【0103】
[合成例6]
(化合物10の合成)
20mLネジ口試験管に、NPG Asia Materials 10, p.1016―1028, 2018.に準じて合成した化合物9(100mg,0.228mmol)、前記合成例5で得た化合物8(477mg,0.86mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(26mg,0.023mmol)及びトルエン(5mL)を加え、窒素置換した。その後、110℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、反応溶液に塩化メチレンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物10を得た(赤色固体,123mg,収率66%)。反応式を以下に示す。
【0104】
【化21】
【0105】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.24(s,2H),6.25(s,2H),4.24(m,4H),4.09(m,4H),2.71(d,J=7.2Hz,4H),1.74(m,2H),1.43-1.30(m,16H),0.96-0.87(m,12H)。
【0106】
[合成例7]
(化合物11の合成)
20mLネジ口試験管に、前記合成例6で得た化合物10(30mg,0.037mmol)、シアン化カリウム(25mg,0.37mmol)、18-クラウン6-エーテル(1mg,0.005mmol)、THF(3mL)及びDMF(1mL)を加え、窒素置換した。その後、90℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物11を得た(赤色固体,26mg,収率85%)。反応式を以下に示す。
【0107】
【化22】
【0108】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.93(s,2H),6.25(s,2H),4.22(m,4H),4.09(m,4H),2.71(d,J=7.2Hz,4H),1.74(m,2H),1.43-1.30(m,16H),0.96-0.87(m,12H)。
【0109】
[合成例8]
(化合物12の合成)
50mLナス型フラスコに、前記合成例7で得た化合物11(36mg,0.044mmol)、THF(12mL)及び希塩酸(2mol/L、3.6mL)を加え、窒素置換した。その後、60℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去して下記化合物12を得た(赤色固体,25mg,収率78%)。反応式を以下に示す。
【0110】
【化23】
【0111】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.21(s,2H),7.93(s,2H),3.03(d,J=6.8Hz,4H),1.74(m,2H),1.45-1.30(m,16H),0.96-0.87(m,12H)。
【0112】
[合成例9]
(化合物13の合成)
10mLネジ口試験管に、前記合成例8で得た化合物12(7mg,0.009mmol)、3-(ジシアノメチリデン)インダン-1-オン(15mg,0.076mmol)、クロロホルム(3mL)及びピリジン(0.05mL)を加え、窒素置換した。その後、65℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にメタノールを加え、析出した沈殿をろ過回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物13を得た(濃青色固体,11mg,収率100%)。反応式を以下に示す。
【0113】
【化24】
【0114】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=9.18(s,2H),8.77(d,J=8.2Hz,2H),8.07(s,2H),7.99(d,J=7.0Hz,2H),7.85(t,J=8.2Hz,2H),7.85(t,J=7.0Hz,2H),3.09(d,J=6.8Hz,4H),1.84(m,2H),1.48-1.30(m,16H),0.96-0.87(m,12H)。
【0115】
[合成例10]
(化合物14の合成)
10mLネジ口試験管に、前記合成例8で得た化合物12(18mg,0.024mmol)、3-エチルロダニン(31mg,0.76mmol)、クロロホルム(5mL)及びピペリジン(0.05mL)を加え、窒素置換した。その後、65℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にメタノールを加え、析出した沈殿をろ過回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物14を得た(濃青色固体,13mg,収率52%)。反応式を以下に示す。
【0116】
【化25】
【0117】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.16(s,2H),8.06(s,2H),4.23(q,J=6.8Hz,4H),2.88(d,J=6.8Hz,4H),1.77(m,2H),1.46-1.30(m,22H),0.97(t,J=7.6Hz,6H),0.91(t,J=7.6Hz,6H)。
【0118】
[合成例11]
(化合物16の合成)
100mL試験管に、NPG Asia Materials 10, p.1016―1028, 2018.に記載に基づき合成した下記化合物15(56mg,0.2mmol)、tert-ブトキシカリウム(112mg,1.0mmol)、n-ヘキシルアルコール(408mg,4.0mmol)及びTHF(40mL)を加え、窒素置換した。その後、加熱還流条件で19時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと酢酸エチルを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物16を得た(黄色固体,44mg,収率50%)。反応式を以下に示す。
【0119】
【化26】
【0120】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.57(s,2H),4.39(t,J=6.8Hz,4H),2.16-2.10(m,4H),1.78-1.71(m,4H),1.49-1.38(m,8H),0.95(t,J=7.4Hz,6H)。
【0121】
[合成例12]
(化合物17の合成)
50mL試験管に、化合物16(35mg,0.079mmol)及び塩化メチレン(12mL)を加えて0℃に冷却し、臭素(101mg,0.63mmol)の塩化メチレン(1mL)溶液を滴下した後、0℃で30分間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した。反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと塩化メチレンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物17を得た(黄色固体,27mg,収率57%)。反応式を以下に示す。
【0122】
【化27】
【0123】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=4.25(t,J=6.6Hz,4H),2.22-2.13(m,4H),1.72-1.63(m,4H),1.50-1.38(m,8H),0.96(t,J=7.2Hz,6H)。
【0124】
前記の化合物17は、一般式(I)の化合物の中間体化合物である化合物(8)であり、工程J、C、D又は工程K、D又は工程L、G、Dを経て、一般式(I)の化合物を合成することができる。
【0125】
[合成例13]
(化合物18の合成)
窒素置換した50mL二口ナス型フラスコを氷浴に浸漬し、DMF(1.2mL)、オキシ塩化リン(0.18mL)を加えた。その後、前記合成例2で得た化合物3(31mg,0.038mmol)、1,2-ジクロロエタン(9.3mL)を加え、反応液を95℃まで昇温させ、15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンと酢酸エチルを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物18を得た(橙色固体,25mg,収率75%)。反応式を以下に示す。
【0126】
【化28】
【0127】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.18(s,2H),7.58(s,2H),3.10(t,J=7.6Hz,4H),2.65(t,J=7.6Hz,4H),1.83-1.76(m,4H),1.48-1.33(m,4H),1.19-1.04(m,12H),0.91(t,J=7.1,6H),0.78(t,J=7.1,6H)。
【0128】
[合成例14]
(化合物19の合成)
10mLネジ口試験管に、前記合成例13で得た化合物18(27mg,0.039mmol)、3-エチルロダニン(63mg,0.39mmol)、クロロベンゼン(1.5mL)及びピペリジン(0.04mL)を加え、窒素置換した。その後、65℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にメタノールを加え、析出した沈殿をろ過回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物19を得た(赤紫色固体,28mg,収率78%)。反応式を以下に示す。
【0129】
【化29】
【0130】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.11(s,2H),7.75(s,2H),4.23(q,J=6.9Hz,4H),2.94(t,J=7.8Hz,4H),2.65(t,J=7.3Hz,4H),1.79-1.71(m,4H),1.49-1.23(m,22H),1.21-1.10(m,12H),0.91(t,J=7.1Hz,6H),0.76(t,J=6.9Hz,6H)。
【0131】
[合成例15]
(化合物20の合成)
10mLネジ口試験管に、前記合成例13で得た化合物18(22mg,0.025mmol)、1,3-インダンジオン(37mg,0.25mmol)、クロロベンゼン(1mL)及びピぺリジン(0.04mL)を加え、窒素置換した。その後、65℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にメタノールを加え、析出した沈殿をろ過回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物20を得た(赤紫色固体,20mg,収率57%)。反応式を以下に示す。
【0132】
【化30】
【0133】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.28(s,2H),8.02-7.96(m,4H),7.80-7.78(m,4H),7.71(s,2H),3.11(t,J=7.6Hz,4H),2.68(t,J=7.3Hz,4H),1.85-1.78(m,4H),1.53-1.46(m,4H),1.43-1.31(m,12H),1.21-1.03(m,12H),0.92(t,J=7.1Hz,6H),0.73(t,J=6.9Hz,6H)。
【0134】
[合成例16]
(化合物21の合成)
10mLネジ口試験管に、前記合成例13で得た化合物18(22mg,0.025mmol)、3-(ジシアノメチリデン)インダン-1-オン(49mg,0.25mmol)、クロロベンゼン(1mL)及びピリジン(0.04mL)を加え、窒素置換した。その後、65℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にメタノールを加え、析出した沈殿をろ過回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物21を得た(紫色固体,19mg,収率61%)。反応式を以下に示す。
【0135】
【化31】
【0136】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=9.21(s,2H),8.75(d,J=7.3Hz,2H),7.94(d,J=8.2Hz,2H),7.82-7.74(m,6H),3.14(t,J=7.6Hz,4H),2.70(t,J=7.3Hz,4H),1.85-1.77(m,4H),1.53-1.32(m,16H),1.20-1.08(m,12H),0.91(t,J=6.9Hz,6H),0.74(t,J=6.9Hz,6H)。
【0137】
[合成例17]
(化合物23の合成)
ナス型フラスコに、Structural Chemistry, 2012, vol. 23, p.1751―1760の記載に準じて合成した化合物22(216mg,0.77mmol)、エチレングリコール(96mg,1.54mmol)、トルエン(8mL)及びp―トルエンスルホン酸(1mg,0.001mmol)を加え、ディーンスタークトラップを設置し12時間加熱還流した。室温まで冷却後、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液に加えて、ヘキサンで抽出し、有機層を水で洗浄し、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離液:ヘキサン/クロロホルム=4/1)して下記化合物23を得た(茶色液体,195mg,収率78%)。反応式を以下に示す。
【0138】
【化32】
【0139】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.22(d,J=5.0Hz,1H),6.83(d,J=5.0Hz,1H),6.10(s,1H),4.19-4.17(m,2H),4.04-4.01(m,2H),2.58(d,J=7.3Hz,2H),1.67-1.60(m,1H),1.34-1.23(m,14H),0.92-0.86(m,6H)。
【0140】
[合成例18]
(化合物24の合成)
二口ナス型フラスコに前記合成例17で得た化合物23(195mg,0.60mmol)とTHF(5mL)を加えて窒素置換し、-78℃に冷却した。その後n-ブチルリチウム溶液(1.6mmol/L、0.38mL、0.60mmol)を滴下し30分撹拌した後、塩化トリブチルスズ(293mg、0.92mmol)を加え、反応液を室温まで昇温させ終夜撹拌した。その後、反応液に水を加え、ヘキサンで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離液:ヘキサン)して下記化合物24を得た(黄色液体,312mg,収率85%)。反応式を以下に示す。
【0141】
【化33】
【0142】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=6.84(s,1H),6.07(s,1H),4.20-4.16(m,2H),4.02-3.99(m,2H),2.58(d,J=7.2Hz,2H),1.66-1.60(m,1H),1.37-1.22(m,26H),1.07(t,J=8.0Hz,6H),0.91-0.86(m,15H)。
【0143】
[合成例19]
(化合物25の合成)
ネジ口試験管に、NPG Asia Materials 10, p.1016―1028, 2018.に準じて合成した化合物9(105mg,0.24mmol)、前記合成例18で得た化合物24(309mg,0.50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(55mg,0.048mmol)及びトルエンを加え、窒素置換した。その後、120℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物25を得た(赤色固体,88mg,収率40%)。反応式を以下に示す。
【0144】
【化34】
【0145】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.25(s,2H),6.25(s,2H),4.26-4.23(m,4H),4.09-4.06(m,4H),2.71(d,J=6.9Hz,2H),1.83-1.76(m,2H),1.37-1.25(m,28H),0.92-0.85(m,12H)。
【0146】
[合成例20]
(化合物26の合成)
ネジ口試験管に、前記合成例19で得た化合物25(40mg,0.043mmol)、シアン化カリウム(28mg,0.43mmol)、18-クラウン6-エーテル(1mg,0.004mmol)、THF(6mL)及びDMF(2mL)を加え、窒素置換した。その後、60℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後にクロロホルム及び氷水を加え0℃で撹拌した後、有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で分離精製して下記化合物26を得た。反応式を以下に示す。
【0147】
【化35】
【0148】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.25(s,2H),6.25(s,2H),4.26-4.23(m,4H),4.09-4.06(m,4H),2.71(d,J=6.9Hz,2H),1.83-1.76(m,2H),1.37-1.25(m,28H),0.92-0.85(m,12H)。
【0149】
[合成例21]
(化合物27の合成)
前記合成例8において、化合物11に代えて前記合成例19で得た化合物25を用いたこと以外は同様にして、下記化合物27を得た。反応式を以下に示す。
【0150】
【化36】
【0151】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.19(s,2H),8.34(s,2H),3.02(d,J=7.3Hz,4H),1.86-1.76(m,2H),1.40-1.24(m,32H),0.93-0.84(m,12H)。
【0152】
[合成例22]
(化合物28の合成)
前記合成例8において、化合物11に代えて前記合成例20で得た化合物26を用いたこと以外は同様にして、下記化合物28を得た。反応式を以下に示す。
【0153】
【化37】
【0154】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.21(s,2H),7.92(s,2H),3.04(d,J=7.3Hz,4H),1.84-1.76(m,2H),1.40-1.24(m,32H),0.93-0.84(m,12H)。
【0155】
[合成例23]
(化合物29の合成)
前記実施例10において、化合物12に代えて前記合成例21で得た化合物27を用いたこと以外は同様にして、下記化合物29を得た。反応式を以下に示す。
【0156】
【化38】
【0157】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.43(s,2H),7.99(s,2H),4.23(q,J=8.0Hz,4H),2.85(d,J=6.9Hz,4H),1.83-1.76(m,2H),1.39-1.24(m,32H),0.91(t,J=6.4Hz,6H),0.86(t,J=8.0Hz,6H)、13C-NMR(100MHz,CDCl):δ=192.13、167.21、156.88、155.08、152.01、149.09、146.61、137.45、136.74、135.07、122.71、121.77、115.71、113.15、40.01、33.68、33.41、33.14、31.91、29.75、28.88、26.62、23.11、22.72、14.19、14.14、12.38、12.36。
【0158】
[合成例24]
(化合物30の合成)
前記実施例10において、化合物12に代えて前記合成例22で得た化合物28を用いたこと以外は同様にして、下記化合物30を得た。反応式を以下に示す。
【0159】
【化39】
【0160】
得られた目的物の物性を測定した。測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.14(s,2H),8.04(s,2H),4.22(d,J=7.3Hz,4H),2.87(d,J=6.9Hz,4H),1.83-1.78(m,2H),1.39-1.24(m,32H),0.89(t,J=6.4Hz,6H),0.85(t,J=6.4Hz,6H)、13C-NMR(100MHz,CDCl):δ=191.79、167.20、152.12、151.53、148.70、139.45、137.97、136.43、135.57、123.73、123.18、122.46、122.44、117.26、106.83、40.09、40.04、33.73、33.37、33.06、31.87、29.66、28.84、26.60、23.04、22.67、14.16、14.14、12.32。
【0161】
次に、本発明に係る化合物の代表例を第1表に挙げる。これらの化合物は、前記合成例1~24及び前記した本発明化合物の製造方法に基づいて合成したか又は合成できる化合物である。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
[有機薄膜太陽電池の性能評価]〕
[試験例1]
化合物14をn型有機半導体材料として有機薄膜太陽電池の評価を行った。p型有機半導体材料としてはPBDB-T(Poly[[4,8-bis[5-(2-ethylhexyl)-2-thienyl]benzo[1,2-b:4,5-b‘]dithiophene-2,6-diyl]-2,5-thiophenediyl[5,7-bis(2-ethylhexyl)-4,8-dioxo-4H,8H-benzo[1,2-c:4,5-c’]dithiophene-1,3-diyl]]polymer)を、電極としてはITO(陽極)及び銀(陰極)を、正孔輸送材料としては酸化モリブデンを、電子輸送材料としては酸化亜鉛をそれぞれ用いた。
【0165】
まず、ITO膜がパターニングされたガラス基板をアセトン、水、イソプロピルアルコールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、オゾンUVを90分間照射して表面を洗浄した。その後、酸化亜鉛前駆体溶液(酢酸亜鉛二水和物(200mg)、エタノールアミン(55μL)及び2-メトキシエタノール(2mL)の混合物)を調製し、スピンコート法製膜装置を利用して前記ITOガラス上に塗布し、次いで200℃で30分間アニール処理を施すことで酸化亜鉛薄膜を形成した。更に、スピンコート法製膜装置を用い、事前に調製したPBDB-Tと化合物14(重量比1:1)のクロロホルム溶液(6mg/mL)を前述の酸化亜鉛薄膜上にスピンコート(1000rpm、1分間)し、有機半導体層を形成させて、積層体を得た。その後、小型高真空蒸着装置を用い、作成した前記積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、正孔輸送層として酸化モリブデン(10nm)、及び金属電極としての銀層(100nm)を順次製膜し、3mm角の有機薄膜太陽電池を作製した。
【0166】
得られた有機薄膜太陽電池に、ソーラーシュミレーター(AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧とを測定した。図1に電流密度―電圧特性のグラフを示す。
【0167】
図1に基づいて短絡電流密度JSC(mA/cm)、開放電圧VOC(V)、形状因子FFを求めたところ、JSC=3.43mA/cm、VOC=0.79V、FF=0.30であった。「光電変換効率(η)=(JSC×VOC×FF)」より光電変換効率を算出したところ、0.81%であった。
【0168】
[試験例2]
前記試験例1の方法に従い、化合物19をn型有機半導体材料として有機薄膜太陽電池の評価を行った。p型有機半導体材料としてはP3HT(poly(3―hexylthiophene―2,5―diyl))を用いた。図2に電流密度―電圧特性のグラフを示す。
【0169】
図2に基づいて短絡電流密度JSC(mA/cm)、開放電圧VOC(V)、形状因子FFを求めたところ、JSC=4.09mA/cm、VOC=0.80V、FF=0.51であった。「光電変換効率(η)=(JSC×VOC×FF)」より光電変換効率を算出したところ、1.68%であった。
【0170】
[試験例3]
前記試験例1の方法に従い、化合物20をn型有機半導体材料として有機薄膜太陽電池の評価を行った。p型有機半導体材料としてはP3HTを用いた。図3に電流密度―電圧特性のグラフを示す。
【0171】
図3に基づいて短絡電流密度JSC(mA/cm)、開放電圧VOC(V)、形状因子FFを求めたところ、JSC=3.09mA/cm、VOC=0.72V、FF=0.51であった。「光電変換効率(η)=(JSC×VOC×FF)」より光電変換効率を算出したところ、1.14%であった。
【0172】
このように、本発明の化合物は、n型有機半導体材料として、例えばフラーレン誘導体の代替となり得る高い光電変換効率を達成できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の化合物は良好な光電変換効率等の半導体特性を有するため、有機半導体材料として有機太陽電池等の有機半導体デバイスに利用可能である。
図1
図2
図3