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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241122BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/514 100
A61F13/514 210
A61F13/514 321
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018047118
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019154869
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】光野 聡
(72)【発明者】
【氏名】池内 謙仁
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-91353(JP,A)
【文献】特開2016-59673(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103961(WO,A1)
【文献】特開2017-104197(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌対向面側に位置する内面側シートと非肌対向面側に位置する外面側シートと、前記内外面側シートに介在された吸収体とを備える吸収性物品において、
前記内外面側シートのうちの少なくとも一方が柔軟性不織布で形成されており、
前記柔軟性不織布は、繊維径が14~22μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布であって、前記ポリエチレン繊維の含有率は100質量%であり、
KES法による摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が2~6%であって、
前記柔軟性不織布のKES法による曲げ剛性値Bが0.003~0.01N・m/m×10^-4であり、
前記曲げ剛性値及び前記摩擦係数の変動係数は、前記柔軟性不織布の製造時の機械方向及びそれに直交する交差方向において、上記に規定された数値範囲を満たすものであることを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
KES法による圧縮回復率RCが15~50%である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記柔軟性不織布の質量は10~30g/m、49.03hPa荷重時の見掛け密度は0.12~0.2g/cmである請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記柔軟性不織布の摩擦係数MIUが少なくとも0.25である請求項1~3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記柔軟性不織布の構成繊維は複数の融着部分を介して互いに接合されており、前記柔軟性不織布の面積に対する前記融着部分の総面積率が5~25%である請求項1~4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
49.03hPa荷重下における比容積は5.0~10cm/gである請求項1~5のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維不織布シートを使用した吸収性物品は知られている。例えば、特許文献1においては、少なくとも表面層が繊維径10~15μmの複合短繊維で構成されており、摩擦係数MIUが0.25以下、単位目付当たりの反射率が1.2%以上である不織布を使用した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-293554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明に係る吸収性物品は、表面層が互いに熱融着された、繊維径10~15μmの複合短繊維を含む不織布から形成されており、該不織布の表面特性として摩擦係数MIUが0.25以下であることから、柔らかさ等の優れた風合いと肌触り性に優れる。また、該不織布の反射率が1.2%以上であることによって、不織布の繊維間の空隙度が比較的に低いことから、接着剤等の染み出し、抜け等の度合いを抑えることができる。
【0005】
しかし、かかる吸収性物品においては、該不織布が複合短繊維から形成されることから繊維同士の熱融着部分が比較的に多くなって熱融着部分どうしの離間距離が小さくなるために、不織布が変形、屈曲し難く、ドレープ性が低下するおそれがある。また、繊維間の空隙度が比較的に低いことから、空気が通過する通気路となる部分が減少して、通気性が悪くなる。さらに、シートの製造工程において、複合短繊維を解繊するためのカード機による解繊工程が必要となるので、連続繊維を使用する場合に比べて、製造コストが掛かり、生産性が低いといえる。
【0006】
本発明の課題は、肌触りが良好であって、適度な通気性を有する柔軟性不織布を使用した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、肌対向面側に位置する内面側シートと非肌対向面側に位置する外面側シートと、前記内外面側シートに介在された吸収体とを備える吸収性物品に関する。
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、前記内外面側シートのうちの少なくとも一方が柔軟性不織布で形成されており、前記柔軟性不織布は、繊維径が14~22μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンメルト不織布であって、前記ポリエチレン繊維の含有率は100質量%であり、KES法による摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が2~6%であって、前記柔軟性不織布のKES法による曲げ剛性値Bが0.003~0.01N・m2/m×10^-4であり、前記曲げ剛性値及び前記摩擦係数の変動係数は、前記柔軟性不織布の製造時の機械方向及びそれに直交する交差方向において、上記に規定された数値範囲を満たすものであることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る吸収性物品の他の実施態様の一つにおいて、KES法による圧縮回復率RCが15~50%である。
【0011】
本発明に係る吸収性物品のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記柔軟性不織布の質量は10~30g/m、49.03hPa荷重下の見掛け密度は0.12~0.2g/cmである。
【0012】
本発明に係る吸収性物品のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記柔軟性不織布の摩擦係数MIUが、少なくとも0.25である。
【0013】
本発明に係る吸収性物品のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記柔軟性不織布の構成繊維は複数の融着部分を介して互いに接合されており、前記柔軟性不織布の面積に対する前記融着部分の総面積率が5~25%である。
本発明に係る吸収性物品のさらに他の実施態様の一つにおいて、49.03hPa荷重下における比容積は5.0~10cm/gである
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る吸収性物品においては、内外面側シートのうちの少なくとも一方が柔軟性不織布で形成されており、前記柔軟性不織布は、繊維径が14~22μmのポリエチレン繊維から主として構成されており、KES法による摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が2~6%であることから、柔軟性に優れ、吸収性物品の着用者及び/又は着用補助者に対して柔らかで滑らかな触感を与えるとともに、良好な通気性によって吸収性物品内の蒸れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る吸収性物品の実施形態の一例における使い捨ておむつの斜視図。
図2】使い捨ておむつを内面側から視た、各弾性体の最大伸長時(弾性材料の収縮作用によるギャザーがなくなる程度)まで縦方向及び横方向に伸展したおむつの一部破断展開平面図。
図3】使い捨ておむつの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の実施の形態は、本発明に係る吸収性物品の実施形態の一例における使い捨ておむつ10に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。図2及び図3において、後述する各弾性体は、その収縮力に抗して、横方向X及び縦方向Yへの収縮力により、各弾性体が取り付けられた部材に生じたギャザーが自然な視覚によって実質的に無くなっているように見える程度にまで伸長された状態にある。
【0017】
図1図3を参照すると、本発明に係る使い捨て吸収性物品の一例である使い捨ておむつ10は、縦方向Y及びそれに交差する横方向Xと、厚さ方向Zと、肌対向面及びその反対側の非肌対向面と、横方向Xの長さ寸法を二等分する縦断中心線Pと、縦方向Yの長さ寸法を二等分する横断中心線Qとを有し、縦断中心線に関してほぼ対称であり、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前ウエスト域11および後ウエスト域12の間に位置するクロッチ域13とを含む。なお、本発明の実施形態に係る吸収性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキンのほかに、パンティライナー、尿取りパッドを含む各種公知の体液、例えば、経血、糞尿等の排泄物を吸収・保持するための物品を含む。
【0018】
おむつ10は、前ウエスト域11を形成する前ウエストパネル14と、後ウエスト域12を形成する後ウエストパネル15と、前後ウエストパネル14,15間において縦方向Yへ延び、クロッチ域13を形成する吸収パネル16とを有する。前ウエストパネル14と後ウエストパネル15とは、例えば同形同大に形成されている。
【0019】
吸収パネル16は、前ウエスト域11の肌対向面側に位置する前端部19Aと、後ウエスト域12の肌対向面に位置する後端部19Bと、前後端部19A,19B間に位置する中間部19Cとを有する。本実施形態において、吸収パネル16の前後端部19A,19Bは、それぞれ、前後ウエスト域11,12の肌対向面側に位置して固定しているが、前後端部19A,19Bが前後ウエスト域11,12の非肌対向面に位置するように、吸収パネル16を前後ウエストパネル14,15の外面に固定してもよい。
【0020】
前ウエスト域11の両側縁部と後ウエスト域12の両側縁部とは、縦方向Yへ離隔して配置された複数のシーム25によって互いに接合され、ウエスト開口26と一対のレッグ開口27とが画成されている。シーム25は、ホットメルト接着剤等の各種接着剤による接着手段、ヒートシール、ソニック等の溶着手段による各種公知の接合手段またはそれらの組み合わせによって形成することができる。
【0021】
前ウエストパネル14は、前レッグ開口の一部を形成する内端縁(前ウエスト域の内端縁)14aと、前ウエスト開口を形成する外端縁(前ウエスト域の外端縁)14bと、内外端縁14a,14b間において縦方向Yへ延びる両側縁14c,14d(前ウエスト域の両側縁)とによって画定された横長矩形状を有する。
【0022】
図2,3を参照すると、前ウエストパネル14は、肌対向面側に位置する不透液性の内層シート17と、非肌対向面側に位置する不透液性の外層シート18とを有する。外層シート18は、内層シート17と接合される主体部18Aと、内層シート17の外端縁から縦方向Yの外方に延出する折曲部18Bとを有する。折曲部18Bは、吸収パネル16の前端部19Aを前ウエストパネル14の肌対向面側に配置した状態においてそれを被覆するように、横方向Xへ延びる折曲ライン71に沿って縦方向の内側へ折り曲げられて内層シート17及び前端部19Aの肌対向面側に固定される。内層シート17と外層シート18の主体部18Aとの間には、複数条のストランド状又はストリング状の前ウエスト弾性体20が横方向Xへ収縮可能に固定されている。
【0023】
後ウエストパネル15は、後レッグ開口の一部を形成する内端縁(後ウエスト域の内端縁)15aと、後ウエスト開口を形成する外端縁(後ウエスト域の外端縁)15bと、内外端縁15a,15b間において縦方向Yへ延びる両側縁(後ウエスト域の両側縁)15c,15dとを有する。
【0024】
後ウエストパネル15は、肌対向面側に位置する不透液性の内層シート21と、非肌対向面側に位置する不透液性の外層シート22とを有する。外層シート22は、内層シート21と接合される主体部22Aと、内層シート21の外端縁から縦方向Yの外方に延出する折曲部22Bとを有する。折曲部22Bは、吸収パネル16の後端部19Bを後ウエストパネル15の肌対向面側に配置した状態においてそれを被覆するように、横方向Xへ延びる折曲ライン72に沿って縦方向の内側へ折り曲げられて内層シート21及び後端部19Bの肌対向面側に固定される。内層シート21と外層シート22の主体部22Aとの間には、複数条のストランド状又はストリング状の後ウエスト弾性体23が横方向Xへ収縮可能に固定されている。
【0025】
前ウエスト弾性体20は、外端縁14bに沿って横方向Xに延びる複数条の前上方ウエスト弾性体20Aと、前上方ウエスト弾性体20Aと内端縁14aとの間に位置する前下方ウエスト弾性体20Bとを有する。後ウエスト弾性体23は、外端縁15bに沿って横方向Xに延びる複数条の後上方ウエスト弾性体23Aと、後上方ウエスト弾性体23Aと内端縁15aとの間に位置する後下方ウエスト弾性体23Bとを有する。
【0026】
前下方ウエスト弾性体20Bは、吸収パネル16の前端部19Aの両側部とおむつ10の平面視において互いに重なるように位置し、後下方ウエスト弾性体23Bは、吸収パネル16の後端部19Bの両側部と平面視において互いに重なるように位置している。前後下方ウエスト弾性体20B,23Bは、それぞれ、吸収パネル16の前後端部19A,19Bの中央部において切断、除去されて非弾性化されており、該中央部には前後下方ウエスト弾性体20B,23Bの収縮力が作用しない非弾性域51,52が画成されている。
【0027】
前後ウエスト弾性体20,23において、前後上下方ウエスト弾性体20A,20B,23A,23Bは、縦方向Yにおいて互いに間隔を空けて横方向Xへ延びる複数条の糸状、ストリング状、ストランド状の弾性材料である。複数条の弾性体20A,20B,23A,23Bは、内外層シート17,18,21,22の間において、例えば、1.5~3.0倍、好ましくは、2.2~2.7倍に伸長された状態で取り付けられる。なお、伸長倍率が1.0倍とは、各弾性体の非伸長状態における長さ(自然長)を1としたときの伸び度合いを示したものであって、例えば、伸長倍率が1.5倍とは、非伸長状態における各弾性体の長さから0.5だけ伸長増加されていることを意味する。
【0028】
弾性材料としては、天然ゴムのほか、スチレン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン等の各種公知の合成ゴムを制限なく用いることができる。各弾性体の繊度に特に制限はないが、200~1100dtex,好ましくは、300~1000dtexである。繊度が200dtex以下の場合には、各弾性体20,23間のピッチよってギャザーの形状、大きさをコントロールした状態において所要の伸縮性を発揮することができないおそれがある。各弾性体の繊度が1100dtex以上の場合には、おむつ10の非肌対向面側に位置する外層シート18,22を介して各弾性体が外部から透視しやすくなるので、外層シート18,22を介して肌が透けてしまうおそれがある。
【0029】
各弾性体20,23の離間寸法(ピッチ)は、内外層シート17,18,21,22に形成されるギャザーの断面形状、長さを含む大きさをコントロールするために適宜調整可能とされるものであるから特に制限があるものではないが、ギャザーの着用者の肌に対する食い込みを抑制するためには、例えば、2.0~12.0mm、好ましくは、4.0~10.0mmである。なお、本明細書におけるピッチとは、縦方向Yにおいて互いに隣接する各弾性体の中心間の離間距離を意味する。
【0030】
本実施形態においては、内外層シート17,18,21,22は、それらの間に介在された各弾性体の全周に連続的又は部分的に塗布された接着剤を介して互いに接合されている。したがって、各弾性体間のピッチが、内外層シート17,18,21,22を互いに接合する接合ラインの離間寸法(ピッチ)ともいえる。内外層シート17,18,21,22が各弾性体20,23の全周に塗布された接着剤によってのみ互いに固定されることによって、内外層シート17、18,21,22のいずれか1つが後記の柔軟性不織布で形成されていることと相俟って、内層シート17,18,21,22と前後ウエスト弾性体20,23とからなる伸縮性シートが比較的に柔軟となる。
【0031】
なお、図示していないが、前後ウエストパネル14,15のウエスト開口側にいて、前後上方ウエスト弾性体20A,23Aに加えて又はそれに代えて弾性伸縮性を有するシートを配置してもよい。かかる場合には、糸状の弾性材料を有する場合に比べて、着用者の肌に優しくフィットされる。
【0032】
吸収パネル16は、前後端縁16a,16bと両側縁16c,16dとによって画定された縦長方形状であって、前後端部19A,19Bが、前後ウエストパネル14,15の肌対向面にホットメルト接着剤を塗布してなる前後接合域(図示せず)を介して互いに接合されている。前後接合域におけるホットメルト接着剤の塗布パターンは、例えば、縦方向Yへ延びる複数のライン状のほかに、Ω状、スパイラル状、波状等の各種公知の形状を採用することができる。
【0033】
図2及び図3を参照すると、吸収パネル16は、肌対向面側に位置する親水性/透液性の内面シート(身体側ライナ)31と、吸収体33と、吸収体33の非肌対向面側に位置する疎水性の被覆シート40と、吸収体33と被覆シート40との間に位置し、少なくとも吸収体33の底面を被覆する大きさを有する、疎水性又は不透液性のプラスチックフィルムから形成された防漏フィルム34とを有する。吸収体33は、吸液性コア35と吸液性コア35の全体を包被するコアラップシート36とを有する。
【0034】
吸液性コア35は、所要の形状に賦形された半剛性のパネル形状であって、横方向Xへ延びる前後端縁と、前後端縁間において縦断中心線Pに向かって(横方向Xの内側へ向かって)凸曲して延びる両側縁とを有する。また、吸液性コア35は、フラッフ木材パルプと、超吸収性ポリマー粒子(SAP)との混合物から形成されている。
【0035】
被覆シート40は、防漏フィルム34が配置された主体部41と、防漏フィルム34の両側縁に沿って縦方向Yへ延びる折曲ライン73,74よりも横方向Xの外側に位置する両側部42とを有する。両側部42は、折曲ライン73,74に沿って縦断中心線P側へ折り曲げられて主体部41に重ねられる。両側部42と防漏フィルム34との間には、縦方向Yへ延びる複数条のストリング状又はストランド状のレッグ弾性体65が伸長状態で収縮可能に取り付けられている。レッグ弾性体65は、例えば、繊度が470~740dtexであって、収縮又は弛緩された状態から1.7~2.3倍に伸長されて固定された弾性材料を用いることができる。おむつ10のレッグ開口縁部には、レッグ弾性体65が配設されたレッグ弾性域61が形成されており、レッグ弾性域61の収縮作用によってレッグ開口縁部が着用者の大腿部にフィットされて排泄物の横漏れを効果的に抑制しうる。
【0036】
<柔軟性不織布>
おむつ10においては、吸収体33の肌対向面側に位置する内面側シートと、吸収体33の非肌対向面側に位置する外面側シートとのうちの少なくとも一方のシートが柔軟性不織布から形成されている。ここで、「内面側シート」とは、吸収体33の肌対向面側に位置するシートを意味し、本実施形態においては、身体側ライナ31を含む。また、図示していないが、オプションとして、吸収体33と身体側ライナ31との間にクッション性の高いセカンドシートを配置した場合には、セカンドシートも内面側シートに該当する。また、「外面側シート」とは、吸収体33の非肌対向面側に位置するシートであって、本実施形態においては、吸収パネル16の被覆シート40ほかに、前後ウエストパネル14,15を形成する内外層シート17,18,21,22を含む。なお、親水性を有する身体側ライナ31として柔軟性不織布を用いる場合には、親水性繊維を混合したり、別途、疎水性繊維に親水性油剤を塗布する必要がある。
【0037】
また、おむつ10では、前後ウエストパネル14,15を構成する内外層シート17,18,21,22には横方向Xへ延びる複数条の前後ウエスト弾性体20,23が配設されており、製造が容易となるように、横方向Xが内外層シート17,18,21,22の基材となるシートの機械方向MD(不織布製造時のラインの流れ方向)であって、縦方向Yがそれに交差する方向CDとなっている。一方、吸収パネル16においては、縦方向Yへ延びる複数条のレッグ弾性体65が配設されており、製造が容易となるように、縦方向Yがそれを構成する各シート31,34,40の基材となるシートの機械方向MD,横方向Xが交差方向CDなっている。
【0038】
柔軟性不織布は、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布であって、柔軟性不織布としては、スパンメルト繊維不織布、なかでも、スパンボンド繊維不織布、SMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布が好適に使用される。また、これら不織布を構成する連続繊維は、各種公知の合成繊維である、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン系の熱可塑性繊維が好適に使用される。本実施形態においては、柔軟性不織布として、ポリエチレン繊維を主として含むスパンボンド繊維不織布が使用されている。
【0039】
柔軟性不織布は、連続繊維からなるスパンメルト不織布から形成されることによって、短繊維を含むエアレイド不織布等と異なり、繊維の自由末端が着用者の肌に直接触れることはない。特に、着用者の指先が触れたときに指紋に繊維の自由末端が当たることなく、かつ、連続繊維であって自由度が高いことから指の指紋にまとわりつくように触れて柔らかかつ良好な肌触り性を与えることができる。また、複合繊維等を用いる場合と異なり、繊維の解繊工程を要しないので、製造工程が少なく、製造コストを抑えることができる。
【0040】
柔軟性不織布は、連続繊維から構成されるスパンボンド繊維不織布又はSMS繊維不織布が用いられることによって、短繊維からなるその他の合成繊維に比べて、シート表面において毛羽立ちがなく、滑らかな、かつ、柔らかくてソフトな触感を与えることができる。また、スパンボンド繊維不織布は、他の繊維不織布に比べて繊維配向性をコントロールしやすい。したがって、例えば、前後ウエスト弾性体20,23が介在された内外層シート17,18,21,22としてステープル(短繊維)繊維不織布を用いた場合には、柔軟性及び伸長性に優れるがシート引張強度に劣るのに対し、スパンボンド繊維不織布を用いることによって、所望のシート引張強度と伸度とを備えたバランスの良い複合的な伸縮性シートを得ることができる。
【0041】
ここで、柔軟性不織布の「滑らかな、かつ、柔らかくてソフトな触感」は、おむつ10を着用する着用者による触感のほかに、着用者が乳幼児等の場合には、その着用を補助する母親等の着用補助者による触感を含む。特に、着用補助者は、着用を補助する際に、その指先におむつ10の内外面側シートの一部が触れたときの触感によって、そのおむつ10の柔軟性や良好な肌触り性を判断する。具体的には、着用補助者に対して、おむつ10の内外面側シートを形成する柔軟不織布に触れたときに、指の指紋に繊維がまとわり付くような触感を与えることによって、そのおむつ10が柔軟性及び肌触り性に優れたものであると認識させることができる。
【0042】
柔軟性不織布は、主としてポリエチレン繊維を含む繊維不織布であって、シート全体に対するポリエチレン繊維の含有率は、70~100質量%である。ポリエチレン繊維は、ポリプロピレン繊維やPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等の他の熱可塑性樹脂繊維に比べて柔軟であるから、ポリエチレン繊維の含有率が少なくとも70質量%であることによって、ポリエチレン繊維の含有率が70質量%以下である従来の不織布に比べて、柔軟性に優れる。また、ポリエチレン繊維は、繊維径が比較的に大きいことから、繊維間隙が比較的に大きく、通気性に優れる。したがって、おむつ10の内外面側シートとして柔軟性不織布を使用することによって着用者の肌に優しくフィットするとともに、おむつ10内部の蒸れを抑制することができる。
【0043】
柔軟性不織布が連続したポリエチレン繊維を用いたスパンボンド不織布から形成される場合には、カレンダーエンボス方式による熱処理によって連続繊維が互いに熱融着された複数の融着部分を有する。融着部分では、各構成繊維が熱融着されて繊維形状を維持しておらず、一部がフィルム化しており、各構成繊維の非融着部分に比べて剛性が高くなっている。
【0044】
柔軟性不織布の面積に対する融着部分の総面積率は、柔軟性不織布の風合いやシート強度に関連するが、かかる観点から、融着部分の総面積率は5~25%であることが好ましい。総面積率が5%以下の場合には、シート強度が低くなって吸収性着用物品の着用中に一部が破れてしまうおそれがあり、一方、総面積率が25%以上の場合には、柔軟性不織布が全体的に硬くなって、風合いを損ねるおそれがある。
【0045】
この種の分野において通常使用される、熱可塑性樹脂による連続繊維不織布は、繊維の自由末端が存在ないことから毛羽立ちがなく平滑性に優れる一方、一般的に風合いが硬く、柔軟性に欠ける。製造時の熱処理条件等の設計を適宜変更することによって多少の改善は可能であるが、十分な柔らかさと滑らかさと通気性とを併せ持つ不織布を得ることはできなかった。本願人は、おむつ10の内外面側シートとして、主としてポリエチレン繊維を用いて、所定範囲の繊維径、KES法による摩擦係数の変動係数を有するスパンメルト不織布製の柔軟性不織布を使用することによって、毛羽立ちがなく平滑性に優れ、着用者及び着用補助者に対して、滑らかな、かつ、柔らかくてソフトな触感を与えることを知見した。
【0046】
柔軟性不織布をおむつ10の内外面側シートとして使用することの優位性を示すものとして、「滑らかさ」、「柔らかくてソフトな触感」及び「良好な通気性」を挙げることができるが、これらの優位性については、柔軟性不織布における表面特性、曲げ特性、繊維密度、繊維径、比容積、圧縮特性等によって確認することができる。
【0047】
柔軟性不織布の質量は、例えば、10~30g/mであって、好ましくは、12~25g/m、微荷重(0.49hPa)下の厚さ寸法は、0.10~0.60mmである。柔軟性不織布の質量が10g/m未満である場合には、柔軟性に優れるものの十分な引張強度を得ることが困難になる。柔軟性不織布の質量が30g/mを超える場合には、比較的に高い引張強度を得ることができるが、十分な柔軟性を得ることができず、また、通気性が低下するおそれがある。
【0048】
柔軟性不織布の0.49hPa(≒0.5gf/cm)荷重下における見掛け密度は、0.02~0.1g/cm、好ましくは、0.04~0.08g/cm、49.03hPa荷重下における見掛け密度は、0.1~0.2g/cm、好ましくは、0.12~0.18g/cmである。また、柔軟性不織布の0.49hPa荷重下における比容積は、10~50cm/g、好ましくは、12.0~18.0cm/g,49.03hPa荷重下における比容積は、5.0~10cm/g、好ましくは4.0~8.0cm/gである。
【0049】
柔軟性不織布の0.49hPa荷重下の見掛け密度が0.02g/cm未満である場合には、柔軟性不織布の融着部分が少なくなることで毛羽立ちやすくなるおそれがある。一方、0.49hPa荷重下の見掛け密度が0.1g/cmを超える場合には、柔軟性不織布の剛性が比較的に高くなって、特に、内面側シートとして着用者の鼠蹊部等の肌の弱い部位と接触する部位に使用された場合には、着用者にゴワゴワとした触感を与えるおそれがあるとともに、通気性が低下するおそれがある。
【0050】
柔軟性不織布の49.03hPa(≒50gf/cm)荷重下における比容積が所定の範囲内であって、指先に押されて繊維が圧縮されたときに、潰れやすく反撥性が比較的に低いことから密度が高くなり、指先と繊維との接触面積が比較的に多くなって繊維が指先にまとわり付きやすく、ソフトな触感を与えることができる。
【0051】
柔軟不織布の質量は、JISL1096法に基づいて測定した。見掛け密度は、これらの測定によって得られた質量と厚さ寸法とによって算出された平均値(N=3)から求めた。柔軟性不織布の比容積は、不織布の質量をその厚さで除することによって、算出した。
【0052】
柔軟性不織布の構成繊維(主としてポリエチレン繊維)の平均繊維径は、14~22μmである。柔軟性不織布の繊維径が比較的に大きいことから、単位面積当たりの繊維本数が比較的に少なく、繊維密度が低く抑えられることによって繊維間隙が多く形成され、良好な通気性を有するといえる。
【0053】
<曲げ特性>
柔軟性不織布のKES法に基づく曲げ剛性値Bは、例えば、0.003~0.01N・m/m×10^-4である。柔軟性不織布の曲げ剛性値Bが、0.003N・m/m×10^-4未満の場合には、柔軟性不織布の引張強度が低くなり、おむつ10の着用中に一部が破断するおそれがある。0.01N・m/m×10^-4を超える場合には、シート剛性が高くなって着用者の身体形状に順応し難くなり、身体に対するフィット性が低下するおそれがある。また、かかる曲げ剛性値Bが0.01N・m/m×10^-4以下であることによって、繊維が曲がり易く、繊維とそれに触れる指先との接触距離が長くなって、摩擦係数MIUが高くなる。その結果として、摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が2~6%となることで、バラつきが小さくなって滑らかになる。すなわち、指先の指紋にまとわりつく繊維を増やして、なめらかな触感を実現することができるといえる。
【0054】
<圧縮特性>
柔軟性不織布のKES法に基づく圧縮仕事量WCは、0.14~0.2N・m/m、圧縮回復率RCは15~50%である。圧縮仕事量WC及び圧縮回復率RCともに比較的に低い数値であることから、柔軟性不織布は外力によって容易に圧縮され易く、圧縮後の形状復元性が低いといえる。したがって、例えば、内層シート17,21が柔軟性不織布から形成され、前後ウエスト弾性体20,23の収縮作用によって内層シート17,21の表面に複数の小さなギャザーが形成されたときには、着用者の肌に接触した際に容易に該ギャザーが圧縮されるとともに、圧縮後の形状復元性が低いことから肌に対して反発する力が低く、接触圧の分散と相俟って、肌にギャザー痕が形成されるのを抑制することができる。
【0055】
また、柔軟性不織布が主として柔軟なポリエチレン繊維から構成され、かつ、圧縮回復率RCが50%未満であることによって、着用補助者の指先がシートの表面に触れたときに繊維が潰れて繊維密度が上がり、指と接触する繊維が増えることによって、柔らかくてソフトな触感を与えることができる。
【0056】
<表面特性>
柔軟性不織布は、主としてポリエチレン繊維からなる連続繊維を互いに熱融着させることによって形成された繊維ウエブであって、繊維の自由末端が表面に存在しないことから毛羽立ちが少なく、シート表面が良好な滑らかさを有するといえる。さらに、ポリエチレン繊維は、ポリプロピレン繊維に比して柔軟であるから、表面が柔軟性に優れ、僅かな荷重下においても変形して着用者の身体が動いたときに、その動きに柔らかく追従、フィットすることができる。
【0057】
柔軟性不織布の表面は、その摩擦係数MIUが0.15~0.40、好ましくは0.25~0.35、摩擦係数の平均偏差MMDが0.008~0.01である。摩擦係数MIUが0.15を超えることから、摩擦抵抗が比較的に高く、着用者がシート表面に触れたときに、肌にまとわりつくような滑らかな触感を与えることができる。また、摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)は、2.0~6.0%である。既述のとおり、圧縮回復率RCが50%未満であることによって、着用者の指先が触れたときの僅かな荷重下においても繊維が潰れて繊維密度が上がり、指先と接触する繊維量が増えて摩擦係数MIUが高くなる。その結果、摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が比較的に小さな所定値の範囲内となることから、摩擦係数のバラつきが小さくなって全体として良好な滑らかさを有し、着用補助者の指先の指紋へまとわりつくように接触する繊維が比較的に多くなり、滑らかな、かつ、柔らかくてソフトな触感を与えることができる。
【0058】
柔軟性不織布における曲げ特性及び表面特性の所定値の範囲は、不織布の製造時の機械方向MD又は交差方向CDのどちらか一方において満たされており、好ましくは、不織布の製造時における機械方向MD又と交差方向CDとの両方において満たされている。特に、着用者の胴回りの肌と接する前後ウエストパネル14,15の内層シート17,21の表面特性については、不織布の機械方向MD(製品としてのおむつの横方向X)における摩擦抵抗が所定値の範囲内にあることが好ましい。かかる場合には、横方向Xの摩擦係数の変動係数が比較的に小さいことから、腹部が膨らんだ体型を有する乳幼児がおむつを着用する際、前後ウエストパネル14,15が胴回り方向へ伸長されたときに、内層シート17,21が身体に引っ掛かることなくスムーズに着用操作を行うことができる。また、内層シート17,21を形成する不織布の交差方向CD(製品としてのおむつの縦方向Y)の摩擦係数の変動係数が比較的に小さいときには、乳幼児等の着用者の両脚に通したおむつ10を上方へ引き上げる際に、柔軟性不織布からなる内面側シートと大人に比べて柔らかな乳幼児の肌とが摺接しても刺激が与えられることなく、スムーズに着用させることができる。一方、着用補助者の指先が、柔軟性不織布から形成された、おむつのウエスト域の非肌対向面側に位置する外面側シートに触れるときには、縦方向Yと横方向Xとに関係なくランダムな平面方向へ指先がシート表面上を移動するので、両方向X,Yのいずれかに曲げ特性及び表面特性が所定値の範囲内であればよい。
【0059】
以上のとおり、本実施形態に係る柔軟性不織布は、繊維径、繊維密度及び比容積が所定の範囲内にあることから、繊維本数が比較的に少なく、通気性に優れる。また、柔軟性不織布の構成繊維の繊維径が比較的に大きい場合であっても、主として柔軟なポリエチレン繊維から形成されていることによって、シート表面の凹凸が潰れやすく、摩擦係数が高い割に摩擦係数の分布が少ないために、着用者及び着用補助者には、肌にまとわりつくような滑らかでソフトな触感を与えることができる。
【0060】
本明細書のKES法に基づく各力学的測定に関しては、「風合い評価の標準化と解析」第2版(社団法人日本繊維機械学会、風合い計量と規格化研究委員会 昭和55年7月10日発行)に詳細が説明されている。
【0061】
表1は、様々な条件下において、複数の柔軟性不織布を製造し、この種の分野において従来使用されている不織布と比較するために、その特性及び性能を評価したものである。実施例1~5の柔軟性不織布は、連続繊維であるポリエチレン繊維を100質量%含むスパンボンド不織布、比較例1の不織布は、連続繊維であるポリプロピレン繊維を100質量%含むスパンボンド不織布から形成されている。また、実施例1~5の柔軟性不織布及び比較例1,2の不織布は、製造工程において熱エンボスロールによるカレンダー方式の熱処理を施した。
【0062】
【表1】
【0063】
<実施例1>
実施例1の柔軟性不織布として、質量20.40g/mであって平均繊維径が14.83μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0064】
<実施例2>
実施例2の柔軟性不織布として、質量18.98g/mであって平均繊維径が16.89μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0065】
<実施例3>
実施例3の柔軟性不織布として、質量20.84g/mであって平均繊維径が20.28μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0066】
<実施例4>
実施例4の柔軟性不織布として、質量25.12g/mであって平均繊維径が16.77μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0067】
<実施例5>
実施例5の柔軟性不織布として、質量15.14g/mであって平均繊維径が16.77μmのポリエチレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0068】
<比較例1>
比較例1の不織布として、質量20.37g/mであって平均繊維径が12.19μmのポリプロピレン繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。
【0069】
<比較例2>
比較例2の不織布として、質量15.08g/mであって平均繊維径が17.35μmの複合繊維から構成されたスパンボンド不織布を使用した。複合繊維は、連続繊維であって、芯部をポリプロピレン、鞘部をポリエチレンとする芯鞘型複合繊維を使用した。
【0070】
<比較例3>
比較例4の不織布として、質量23.52g/mであって、平均繊維径が16.64μmの複合繊維から構成されたエアスルー不織布を使用した。複合繊維には、繊維長が51mmの短繊維であって、芯部をポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘部をポリエチレンとする芯鞘型複合繊維を使用した。
【0071】
各不織布の質量、繊維径、表面特性(MIU,MMD,MMD/MIU)、曲げ特性(B)、圧縮特性(T0,Tm,WC,RC)、通気性(通気抵抗値)の各測定については、以下の方法を用いた。
【0072】
<質量の測定方法>
各不織布から幅100mm×長さ200mmのサンプル(N=10)を得て、それらのサンプルの質量を求めてその平均値を各不織布の質量とした。
【0073】
<平均繊維径の測定方法>
まず、各不織布の10mm×10mmのサンプルを切り出して準備して、プレパラートの上に配置した。次に、各サンプルにグリセリンを適量滴下して、サンプル全体がグリセリンで浸された状態にして、その上からカバーガラスを置いた。次に、公知の光学顕微鏡(例えば、KEYENCE製VHC-100 Digital Microscope Lens VH-Z450)を用いてサンプルのシート表面を倍率1000倍で観察して、シート表面に露出している繊維(N=50)の繊維径を測定し、平均値を平均繊維径とした。
【0074】
<表面特性の測定方法>
表面特性の測定は、カトーテック(株)製KES-FB4-A-AUTO(自動化表面試験機)を用いて、各不織布の所与領域における100mm*100mmの範囲を試料とし、平滑な金属平面の試験台に配置して行った。各試料を0.1cm/secの一定速度で水平に各不織布の製造時の機械方向(繊維の配向する方向)へ0~2cm移動させ、外形寸法5mm×5mmの摩擦子(測定子)を用いて、初期荷重50gfの条件下において、移動区間内の平均摩擦係数をMIU,そのときの摩擦係数の標準偏差をMMDとして各数値を算出した。各試料ごとに同様の測定を5回行い、その平均を各試料のMIU、MMDの値とした。
【0075】
<厚さ寸法T0,Tm及び圧縮特定の測定方法>
各不織布の厚さ寸法の測定には、カトーテック(株)製KES-FB3-AUTO-A圧縮試験機を用いた。まず、 各不織布を100mm*100mmの大きさに切り出して試料とし、試料の中心を上下に位置する円盤で静かに挟み込み圧縮面積(円盤の面積)2.0cm、0.49hPa荷重下における各試料の厚さ寸法T0を測定する。次に、加圧速度0.02mm/秒で49.03hPa荷重下になるまで測定サンプルを圧縮し、49.03hPa荷重下における厚さ寸法Tmを測定した。また、厚さ寸法T0から厚さ寸法Tmまで圧縮時に要した仕事量[N・m/m]をWC,厚さ寸法Tmから厚さ寸法T0に復元時に要した仕事量をWC2として、下記の計算式に基づいて圧縮回復率RC[%]を求めた。
RC(%)=WC2/WC*100
【0076】
<通気性(通気抵抗値)の測定>
まず、各不織布から直径100mmの円形にカットして切り出して試料とした。公知の通気性試験機、例えば、カトーテック(株)製通気性試験機:KES-F8-APLを使用し、標準通気速度:2cm/sに設定して試料の通気抵抗値を測定した。かかる測定を5回行い、その平均値を各不織布の通気抵抗値とした。通気抵抗値が高いほど通気性が悪いといえる。
【0077】
<測定結果>
表1に示すとおり、繊維径14.83μmのポリエチレン繊維から構成された柔軟性不織布である実施例1と繊維径12.19μmのポリプロピレン繊維から構成された不織布である比較例1とを対比すると、実施例1のMIUが0.335であるのに対し、比較例1のMIUが0.238であり、かつ、実施例1の摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が2.57%であるのに対し、比較例1の摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が3.28%であった。このことから、柔軟性不織布が比較的に柔軟なポリエチレン繊維から構成されていることによって、摩擦係数MIUが比較的に高くなる結果、摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が低くなり、摩擦係数のバラつきが小さくなってシート表面が滑らかであるといえる。それによって、着用補助者が柔軟性不織布の表面に対して平面方向へ指先を移動させたときには、指紋へまとわりつくように接触する繊維量が比較的に多くなり、なめらかな触感を与えることができる。
【0078】
また、不織布の質量がほぼ同じである実施例1と比較例1とを対比すると、実施例1の通気抵抗値が0.0324であるのに対し、比較例1の通気抵抗値が0.0356となっており、実施例1の柔軟性不織布は、比較例1の不織布に比べて通気性に優れるといえる。これは、実施例1の柔軟性不織布を構成するポリエチレン繊維の繊維径が比較例1の不織布を構成するポリプロピレン繊維の繊維径よりも大きいことから、繊維間の空隙が多く形成されて、通気性が向上したことによるものと考えられる。また、実施例1~5と比較例2,3とを比較すると、実施例1~5の摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)が6%未満であるのに対し、比較例2,3の摩擦係数の変動係数MMD/MIU*100(%)は6%を超えており、複合繊維から構成された不織布の場合には、ポリエチレン繊維の単繊維からなる柔軟性不織布に比べて摩擦係数の分布にバラつきがあり、シート表面の滑らかさに劣るといえる。
【0079】
本明細書、図面及び特許請求の範囲の記載から当業者をして理解できるようなすべての特徴構成は、特定の他の特徴に関連してのみ組み合わされて説明されていたとしても、独立して、または、他の1つまたは複数の特徴構成と任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 使い捨ておむつ(吸収性物品)
17 内層シート(柔軟性不織布)
18 外層シート(柔軟性不織布)
21 内層シート(柔軟性不織布)
22 外層シート(柔軟性不織布)
31 身体側ライナ(柔軟性不織布)
40 被覆シート(柔軟性不織布)
図1
図2
図3