(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20241122BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20241122BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20241122BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241122BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/00
C08L33/14
C08L53/02
C08J3/20 Z CEZ
(21)【出願番号】P 2020111769
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】北川 翔
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094494(JP,A)
【文献】特開平10-017760(JP,A)
【文献】特開2012-077240(JP,A)
【文献】特開2000-053851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 67/00
C08L 33/14
C08L 53/02
C08J 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)芳香族ポリカーボネートと、
(b)ポリエステルと、
(c)エポキシ基を有する重合体と、
(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体と、
を含有する、ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と飽和二価アルコールとの縮合重合体である芳香族ポリエステルであり、前記ポリエステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、4.0質量%以下であ
り、
前記芳香族ポリカーボネートの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、75質量%以上98質量%以下であり、
前記芳香族ポリカーボネート100質量部に対して、前記エポキシ基を有する重合体の含有量が、0.1質量部以上20質量部以下であり、前記共重合体の含有量が、1質量部以上30質量部以下である、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記共重合体が、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との共重合体又は水添共重合体を含む、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合体が、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との水添共重合体を含む、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記水添共重合体が、水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又は水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体である、請求項3又は4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する重合体が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
(b)ポリエステルと、(c)エポキシ基を有する重合体と、(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体と、を溶融混練して混合物を得る工程と、
前記混合物と、(a)芳香族ポリカーボネートとを混練してポリカーボネート樹脂組成物を作製する工程と、を備え、
前記ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と飽和二価アルコールとの縮合重合体である芳香族ポリエステルであり、前記ポリエステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、4.0質量%以下であ
り、
前記芳香族ポリカーボネートの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、75質量%以上98質量%以下であり、
前記芳香族ポリカーボネート100質量部に対して、前記エポキシ基を有する重合体の含有量が、0.1質量部以上20質量部以下であり、前記共重合体の含有量が、1質量部以上30質量部以下である、ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートを含有する樹脂組成物の耐衝撃性を改善するために、例えば、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとから主として成る共重合体が樹脂組成物に配合されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芳香族ポリカーボネートを主成分として含有するポリカーボネート樹脂組成物は、耐加水分解性が不足する場合がある。また、ポリカーボネート樹脂組成物には、剛性と耐衝撃性のバランスを向上して、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を形成することが望まれる。
【0005】
本発明の一側面の目的は、耐加水分解性を有し、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を形成することができるポリカーボネート樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、(a)芳香族ポリカーボネートと、(b)ポリエステルと、(c)エポキシ基を有する重合体と、(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体と、を含有する、ポリカーボネート樹脂組成物であって、前記ポリエステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、9.0質量%以下である、ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明の別の一側面は、(b)ポリエステルと、(c)エポキシ基を有する重合体と、(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体と、を溶融混練して混合物を得る工程と、前記混合物と、(a)芳香族ポリカーボネートとを混練してポリカーボネート樹脂組成物を作製する工程と、を備え、ポリエステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリエステル、前記エポキシ基を有する重合体、及び前記共重合体の総量を基準として、9.0質量%である、ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、耐加水分解性を有し、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を形成することができるポリカーボネート樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[ポリカーボネート樹脂組成物]
一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、(a)芳香族ポリカーボネート(以下、場合により「(a)成分」という。)と、(b)ポリエステル(以下、場合により「(b)成分」という。)と、(c)エポキシ基を有する重合体(以下、場合により「(c)成分」という。)と(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体(以下、場合により「(d)成分」という。)と、を含有する。ポリカーボネート樹脂組成物におけるポリエステルの含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の総量を基準として、9.0質量%以下である。
【0011】
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を必須成分として含有し、かつ(b)成分の含有量を特定の範囲とすることで、耐加水分解性を有し、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を形成することができる。
【0012】
ポリカーボネート樹脂組成物から形成される成形体の引張弾性率は、例えば、23℃で1500MPa以上、1800MPa以上、又は2000MPa以上であってもよい。引張弾性率の上限値は、例えば、2800MPa以下であってもよい。
【0013】
以下、ポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分の詳細について説明する。
【0014】
((a)成分)
ポリカーボネート樹脂組成物は、(a)芳香族ポリカーボネートを主成分として含有する。ポリカーボネート樹脂組成物の剛性を維持する観点から、芳香族ポリカーボネートの含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の総量を基準として、75質量%以上、80質量%以上、又は85質量%以上であってもよい。ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性を向上する観点から、芳香族ポリカーボネートの含有量は、98質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってもよい。
【0015】
芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するモノマー単位及びカルボニル基を含む、直鎖状又は分岐していてもよい重合体である。芳香族ポリカーボネートは、一般に、芳香族ジヒドロキシ化合物と、塩化カルボニル(ホスゲン)、炭酸ジエステル(例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート)、又は一酸化炭素若しくは二酸化炭素との重合反応により生成する。
【0016】
芳香族ポリカーボネートを構成する芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、カルド構造含有ビスフェノール、ジヒドロキシジアリールエーテル、ジヒドロキシジアリールスルフィド、ジヒドロキシジアリールスルホキシド、ジヒドロキシジアリールスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0017】
ビス(ヒドロキシアリール)アルカンの例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1-トリクロロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパンが挙げられる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、それぞれ、ビスフェノールA及びテトラブロモビスフェノールAと称されることもある。
【0018】
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンの例としては、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0019】
カルド構造含有ビスフェノールの例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0020】
ジヒドロキシジアリールエーテルの例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテルが挙げられる。
【0021】
ジヒドロキシジアリールスルフィドの例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィドが挙げられる。
【0022】
ジヒドロキシジアリールスルホキシドの例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシドが挙げられる。
【0023】
ジヒドロキシジアリールスルホンの例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホンが挙げられる。
【0024】
芳香族ポリカーボネートは、これらから選ばれる1種又は2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。芳香族ポリカーボネートは、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。
【0025】
分岐した芳香族ポリカーボネートは、例えば、フロログリシン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-3-ヘプテン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ヘプテン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、及びα,α’,α’’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン等のポリヒドロキシ化合物、又は3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインドール(イサチンビスフェノール)、5-クロルイサチンビスフェノール、5,7-ジクロルイサチンビスフェノール、若しくは5-ブロムイサチンビスフェノールに由来するモノマー単位を含む。
【0026】
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量が、10000~100000、14000~50000、又は16000~30000であってもよい。ここでの粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度20℃で測定された溶融粘度からの換算値である。
【0027】
芳香族ポリカーボネートは、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法等の通常の方法により合成することができる。芳香族ポリカーボネートの市販品を用いることもできる。
【0028】
((b)成分)
ポリカーボネート樹脂組成物における(b)ポリエステルの含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物の耐加水分解性を向上する観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の総量を基準として、9.0質量%以下であり、8.0質量%未満、5.0質量%未満、又は4.0質量%未満であってもよい。(b)ポリエステルの含有量は、成形体の表層剥離を低減し、面衝撃強度を向上する観点から、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上であってもよい。
【0029】
(b)ポリエステルは、特に、芳香族ジカルボン酸と飽和二価アルコールとの縮合重合体である芳香族ポリエステルであってもよい。芳香族ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート(「ポリブチレンテレフタレート」ともいう。)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン-1,4-ジメチロールテレフタレート、及びポリネオペンチルテレフタレートが挙げられる。
【0030】
(b)ポリエステルは、ポリカーボネート樹脂組成物の耐加水分解性をより高める観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせを含んでよく、ポリブチレンテレフタレートを含むことが好ましい。ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来するモノマー単位を更に含んでいてもよく、その例としては、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、及びポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来するモノマー単位を更に含んでいてもよく、その例としては、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナフタレート)、及びポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレートが挙げられる。
【0031】
ポリエステルの固有粘度が、0.50~2.00dl/g、0.60~1.90dl/g、又は0.80~1.80dl/gであってもよい。ここでの固有粘度は、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒(質量比5:5)中にポリエステルが溶解した溶液の粘度を30℃で測定することにより求められる値である。
【0032】
ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸及び飽和二価アルコールを用いた通常の重合方法で合成することができる。ポリエステルの市販品を用いることもできる。
【0033】
((c)成分)
(c)エポキシ基を有する重合体は、一般に熱可塑性樹脂であり、例えば、エポキシ基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む共重合体であってもよい。エポキシ基を有するモノマーの例としては、α,β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル、及び不飽和基を有するグリシジルエーテルが挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルは、下記式(1)で表される化合物であってもよい。式(1)中、R
1は、1以上の置換基を有していてもよい炭素原子数2~18のアルケニル基を示す。式(1)で表される化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びイタコン酸グリシジルエステルが挙げられる。
【化1】
【0035】
不飽和基を有するグリシジルエーテルは、下記式(2)で表される化合物であってもよい。式(2)中、R
2は、1以上の置換基を有していてもよい炭素原子数2~18のアルケニル基を示し、XはCH
2-O(CH
2がR
2に結合している。)又は酸素原子を示す。式(2)で表される化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル及びスチレン-p-グリシジルエーテルが挙げられる。
【化2】
【0036】
エポキシ基を有するモノマーと共重合している共重合モノマーは、例えば、エチレン、α-オレフィン、スチレン、アクリロニトリル、不飽和カルボン酸エステル(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等)、アクリル酸、不飽和ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
エポキシ基を有する重合体は、エポキシ基を有するモノマー単位と、エチレン又はα-オレフィン(プロピレン等)から誘導されるモノマー単位とを含むオレフィン系共重合体であってもよい。エチレン又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の割合(エチレンから誘導されるモノマー単位及びα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の合計の割合)は、エポキシ基を有する重合体の質量を基準として、50~99.9質量%であってもよい。
【0038】
エポキシ基を有するオレフィン系共重合体の例としては、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルマルプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルマルブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-2-エチルへキシル(メタ)アクリレート共重合体、及びエチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。(c)成分は、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体を含むことが好ましい。エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体の市販品の例として、住友化学製「ボンドファースト」(商品名)がある。
【0039】
エポキシ基を有するモノマー単位を含む共重合体のその他の例としては、グリシジルメタアクリレート-スチレン共重合体、グリシジルメタアクリレート-アクリロニトリル-スチレン共重合体、及びグリシジルメタアクリルレート-プロピレン共重合体が挙げられる。
【0040】
エポキシ基を有する重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、又は水添若しくは非水添のスチレン-共役ジエン系重合体からなる重合体鎖と、この重合体鎖に結合した、エポキシ基を有する単量体を含むグラフト鎖とを有していてもよい。エポキシ基を有する単量体は、例えば、溶液若しくは溶融混練によってグラフト重合させることができる。
【0041】
エポキシ基を有する重合体における、エポキシ基を有するモノマー単位の割合は、エポキシ基を有する重合体の質量を基準として0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。エポキシ基を有するモノマー単位の割合は、エポキシ基を有する重合体の質量を基準として30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってもよく、6質量%より多くてもよい。エポキシ基を有するモノマー単位の割合が高いと、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体の耐加水分解性がより向上する傾向がある。
【0042】
エポキシ基を有する重合体の製造方法としては、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体と他の単量体とを共重合する方法、エチレン系重合体等にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0043】
ポリカーボネート樹脂組成物における(c)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物の耐加水分解性をより向上する観点から、(a)成分100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、又は1質量部以上であってもよく、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。
【0044】
((d)成分)
ポリカーボネート樹脂組成物は、成形体の面衝撃強度を高め、表層剥離を低減する観点から、(d)成分として共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体を含有する。該共重合体は、水添共重合体であってもよい。(d)成分は、エポキシ基を有しない共重合体であり、(c)成分とは異なる成分である。
【0045】
共役ジエンの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、及び1,3-ヘキサジエンが挙げられる。共役ジエン化合物として、好ましくは1,3-ブタジエンである。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、及びジビニルナフタレンが挙げられる。芳香族ビニル炭化水素として、好ましくはスチレンである。
【0046】
(d)成分は、α-オレフィン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、環状オレフィン、及びシアン化ビニル化合物からなる選ばれる単量体に基づく単量体を更に有してもよい。
【0047】
α-オレフィンの例としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、ウンデセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、エイコセン-1、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、及び12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニルが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸エチルが挙げられる。環状オレフィンの例としては、2-ノルボルネン及び5-メチル-2-ノルボルネンが挙げられる。シアン化ビニル化合物の例としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが挙げられる。
【0048】
(d)成分は、成形体の面衝撃強度をより高める観点から、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との共重合体又は水添共重合体を含むことが好ましく、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との水添共重合体を含むことがより好ましい。すなわち、(d)成分は、共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位のみを有する共重合体、又は該共重合体を水添した水添重合体を含んでよい。水添共重合体の例としては、水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体及び水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体が挙げられる。
【0049】
(d)成分の含有量は、剛性と耐衝撃性のバランスの観点から、(a)成分100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってもよく、30質量部以下、20質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。
【0050】
共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中、アルカリ金属触媒の存在下、共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素とを共重合する方法により合成することができる。水添共重合体は、水添触媒の存在下で共重合体に水素添加することで作製することができる。(d)成分は、市販品を用いることもできる。
【0051】
(その他の成分)
一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分に加えて、その他の成分を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で更に含有することができる。その他の成分の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、染料、難燃剤等の各種添加剤が挙げられる。ポリカーボネート樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分以外のポリマーを更に含有してもよい。難燃性の重要度が高くない用途に用いられるポリカーボネート樹脂組成物の場合、難燃剤の含有量が0~20質量部であってもよく、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び難燃剤の合計の含有量が、(a)成分100質量部に対して25質量部未満であってもよい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂組成物におけるTi(チタン)の含有量が、ポリカーボネート樹脂組成物の質量を基準として、0.01~30ppmであってもよい。Tiの含有量がこの範囲にあると、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体の耐加水分解性及び傷付き復元性がより向上する傾向がある。Tiは、例えば、ポリエステルの重合触媒に由来する微量成分であり得る。
【0053】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、各成分を溶融混錬することを含む方法により、得ることができる。一実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、(b)ポリエステルと、(c)エポキシ基を有する重合体と、(d)共役ジエンに由来する単量体単位及び芳香族ビニル炭化水素に由来する単量体単位を有する共重合体と、を溶融混練して混合物を得る工程(1)と、前記混合物と、(a)芳香族ポリカーボネートとを混練してポリカーボネート樹脂組成物を作製する工程(2)と、を備える。(d)成分の含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の総量を基準として、9.0質量%以下であり、5.0質量%未満であってもよい。
【0054】
このような製造方法を用いることで、耐加水分解性を有し、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を形成することができるポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0055】
工程(1)では、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の混合物を得ることができる。工程(1)における混練温度は、例えば、230~300℃であってよい。工程(2)では、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有するポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。工程(2)における混練温度は、特に限定されず、例えば、230~350℃であってよい。各成分の混練には、例えば、二軸混練押出機を用いることができる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂組成物はペレット状であってもよい。本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、例えば、ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形等の通常の手段で所望の形状に成形することを含む方法により、製造することができる。成形体の形状は特に制限されない。成形体は、例えば、電気・電子機器、通信機器、精密機械、自動車部品等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
1.原材料
ポリカーボネート樹脂組成物を調製するための原材料として以下を準備した。
(a)成分
・芳香族ポリカーボネート(PC):SD POLYCA200-13(商品名、住化ポリカーボネート株式会社製、粘度平均分子量:21000)
(b)成分
・ポリブチレンテレフタレート(PBT):トレコン1401 X06(商品名、東レ株式会社製、固有粘度:1.74)
(c)成分
・E-GMA-1:ボンドファーストE(商品名、住友化学株式会社製、エチレン88質量部とグリシジルメタクリレート12質量部との共重合体)
・E-GMA-2:ボンドファースト7M(商品名、住友化学株式会社製、エチレン67質量部とグリシジルメタクリレート6質量部とメチルアクリレート27質量部の共重合体)
(d)成分
・SEBS-1:Kraton G1651(商品名、クレイトン・コーポレーション製、水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)
・SEBS-2:Kraton G1633(商品名、クレイトン・コーポレーション製、水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)
(その他)
・EOR:Engage 8842(商品名、ダウ・ケミカル・カンパニー製、エチレン-オクテン-1共重合体、密度:0.857g/cm3)
【0059】
2.ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体
(実施例1)
主フィーダー及び副フィーダーと、押出機側に設けられたノズルヘッドとを有する同方向二軸混練押出機(KZW20TW、テクノベル社製)を準備した。この二軸混練押出機は、ホッパー側から押出方向に沿って設けられた9個のバレルC1~C9を有する。各バレルの温度を以下のように設定した。
C1:50℃
C2:200℃
C3~C9:260℃
二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に、主フィーダーからは50質量部のSEBS―1を、副フィーダーからは40質量部のE-GMA-1及び10質量部のPBTを投入した。ノズルヘッドの温度を260℃に、スクリューの回転数を300rpmに、吐出量を3kg/時間にそれぞれ設定し、SEBS―1、E-GMA-1及びPBTを溶融混練した。二軸押出機から吐出された溶融混練物をペレタイザで切断して、SEBS―1、E-GMA-1及びPBTの混合物のペレットを得た。
【0060】
次いで、二軸混練押出機の各バレルの温度を以下のように設定した。
C1:100℃
C2:240℃
C3~C9:280℃
二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に、主フィーダーからは90質量部のPCを、副フィーダーからは10質量部の上記混合物のペレットを投入した。ノズルヘッドの温度を280℃に、スクリューの回転数を300rpmに、吐出量を5kg/時間にそれぞれ設定し、PC、SEBS―1、E-GMA-1及びPBTを溶融混練した。二軸押出機から吐出された溶融混練物をペレタイザで切断して、ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を得た。
【0061】
ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を、射出成形機(住友重機械工業製、SE100EV)を用いて、金型温度90℃、シリンダー温度300℃、射出速度15mm/秒の条件の射出成形により成形して、厚み3.2mmの成形体Aを作製した。また、ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を、射出成型機を用いて、金型温度80℃、シリンダー温度300℃、射出速度30mm/秒の条件の射出成形により成形して、長さ150mm、幅90mm、厚み2mmの成形体Bを作製した。
【0062】
(実施例2)
SEBS-1をSEBS-2に変更し、E-GMA-1をE-GMA-2に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0063】
(実施例3)
SEBS-1とSEBS-2との配合量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0064】
(実施例4~5)
PCとPBTとの配合量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0065】
(比較例1)
PCを単独で実施例1と同様の条件で成形して成形体を作製した。
【0066】
(比較例2)
SEBS-1をEORに変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0067】
(比較例3)
PBTを用いず、配合量比を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0068】
(比較例4)
E-GMA-1を用いず、配合量比を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0069】
(比較例5)
PCとPBTとの配合量比を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で、ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を作製した。
【0070】
3.評価
表1及び2に、各ポリカーボネート樹脂組成物の配合量比(質量部)、及び評価結果を示す。
【0071】
(耐加水分解性)
ペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を、プレッシャークッカー(エスペック製、EHS-221(M))を用いて、試験温度120℃、湿度100%RHの条件で、72時間保管した。保管前及び保管後のペレットのメルトフローインデックス(MFR)を、メルトフローテスターを用いて測定した。メルトフローインデックスは、温度280℃、荷重2.16kgfの条件で測定した。プレッシャークッカーによる保管後のペレットのMFRの、保管前のペレットのMFRに対する増加の有無、及びMFRの増加率を測定した。MFRの増加が認められない、又は増加率が小さければ、ポリカーボネート樹脂組成物が優れた耐加水分解性を有するといえる。
【0072】
(Izod衝撃試験)
成形体Aから、長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mmのノッチ付試験片を作製した。この試験片を用い、ASTM D 256に準拠したIzod衝撃試験により、Izod衝撃強度(kJ/m2)を測定した。Izod衝撃試験は、23℃の雰囲気下、試験片温度-40℃の条件で行った。
【0073】
(引張試験)
成形体Aから、ASTM D 638 Type1に準拠した引張試験用の試験片を作製した。この試験片を用いた引張試験を、23℃の雰囲気下、引張速度1mm/分で行い、引張弾性率(MPa)を測定した。
【0074】
(面衝撃試験)
成形体Bを用い、撃針径1/2インチ、サンプル押え板1インチ、撃針速度7m/秒、温度23℃の条件で面衝撃試験を行い、トータルエネルギー(J)を測定した。
【0075】
(表層剥離試験)
成形体Bを用い、表層剥離試験を行った。成形体Bの樹脂流入部に2mm×2mmの100マスの切れ込みをカッターで入れたのち、切れ込み箇所にニチバン製セロテープ(CT405AP-24)を貼り付けた。セロテープを勢いよく剥がした後の切れ込み箇所の剥がれたマスの数を測定した。剥がれたマスの数が少なければ、ポリカーボネート樹脂組成物の表層剥離が少ないということができる。
【0076】
【0077】
【0078】
各実施例のポリカーボネート樹脂組成物は、耐加水分解性を有し、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、面衝撃強度が高く、表層剥離が少ない成形体を作製できることが確認された。