(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】マイクロLED用の青色コンバータ
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20241122BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20241122BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C08F2/44 B
H01L33/50
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2023513136
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2021047712
(87)【国際公開番号】W WO2022047005
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, インドン
(72)【発明者】
【氏名】シュ, リソン
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティアッパン, シヴァパキア
(72)【発明者】
【氏名】ウン, ホウ ティ-.
(72)【発明者】
【氏名】クワク, ビョン スン
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ミンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】パティバンドラ, ナグ ビー.
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-176330(JP,A)
【文献】特開2008-174621(JP,A)
【文献】特開2002-173677(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196638(WO,A1)
【文献】特開2011-014697(JP,A)
【文献】特開2004-253747(JP,A)
【文献】特開2019-174562(JP,A)
【文献】特開2017-031398(JP,A)
【文献】特表2014-525683(JP,A)
【文献】特開2014-156422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
H01L33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択された青色フォトルミネッセンス材料であって、前記発光ピークの最大半量における全幅が100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子収率が5%から100%の範囲である、前記青色フォトルミネッセンス材料、
1つ又は複数のモノマー、及び
前記紫外線の吸収に応答して前記1つ又は複数のモノマーの重合を開始する光開始剤
を含
み、
前記青色フォトルミネッセンス材料が、有機材料、有機金属材料、又はポリマー材料である、光硬化性組成物。
【請求項2】
約0.1wt%から約10wt%の前記青色フォトルミネッセンス材料、
約0.5wt%から約5wt%の前記光開始剤、及び
約1wt%から約90wt%の前記1つ又は複数のモノマー
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.1wt%から約10wt%の前記青色フォトルミネッセンス材料、
約0.5wt%から約5wt%の前記光開始剤、
約1wt%から約90wt%の前記1つ又は複数のモノマー、及び
約10wt%から約90wt%の前記溶媒
を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記青色フォトルミネッセンス材料が有機材料であり、前記有機材料がフリーラジカルである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項6】
前記青色フォトルミネッセンス材料が蛍光性である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項7】
前記青色フォトルミネッセンス材料が青の熱活性化遅延蛍光(TADF)分子を含む、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記青色フォトルミネッセンス材料がリン光性である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1つ又は複数のモノマーが(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーマトリックス、
前記ポリマーマトリックスに混合された青色フォトルミネッセンス材料であって、約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択されており、前記発光ピークの最大半量における全幅が100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子収率が5%から100%の範囲である、前記青色フォトルミネッセンス材料、
1つ又は複数のモノマー、及び
重合を開始して前記ポリマーマトリックスを形成する光開始剤の成分
を含み、
前記青色フォトルミネッセンス材料が、有機材料、有機金属材料、又はポリマー材料である、光硬化組成物。
【請求項11】
ポリマーマトリックス、
前記ポリマーマトリックスに混合された青色フォトルミネッセンス材料であって、約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択されており、前記発光ピークの最大半量における全幅が100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子収率が5%から100%の範囲である、前記青色フォトルミネッセンス材料、
1つ又は複数のモノマー、及び
重合を開始して前記ポリマーマトリックスを形成する光開始剤の成分
を含み、
前記ポリマーマトリックスがポリアクリレートを含む、
光硬化組成物。
【請求項12】
前記青色フォトルミネッセンス材料が蛍光性である、請求項
10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記青色フォトルミネッセンス材料がリン光性である、請求項
10又は11に記載の組成物。
【請求項14】
背面配線板と、前記背面配線板の背面配線板回路網と電気的に統合された紫外線発光ダイオードのアレイとを有するディスプレイの上に第1の光硬化性流体を分配することであって、前記第1の光硬化性流体が、
約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択された青色フォトルミネッセンス材料であって、前記発光ピークの最大半量における全幅が100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子収率が5%から100%の範囲である、前記青色フォトルミネッセンス材料、
1つ又は複数のモノマー、及び
前記紫外線の吸収に応答して前記1つ又は複数のモノマーの重合を開始する光開始剤
を含む、前記第1の光硬化性流体を分配すること、
前記紫外線発光ダイオードのアレイ内の第1の複数の発光ダイオードを活性化して前記1つ又は複数のモノマーを照明及び重合し、前記第1の複数の発光ダイオードの各々の上に、前記第1の複数の発光ダイオードからの光を青色光に変換するための第1の色変換層を形成することであって、各色変換層が、ポリマーマトリックスに混合された前記青色フォトルミネッセンス材料を含む、前記第1の複数の発光ダイオードを活性化すること、並びに
前記第1の光硬化性流体の未硬化の残部を除去すること
を含む、発光デバイスを製造する方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数のモノマーが(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の光硬化性流体が、
約0.1wt%から約10wt%の前記青色フォトルミネッセンス材料、
約0.5wt%から約5wt%の前記光開始剤、及び
約1wt%から約90wt%の前記1つ又は複数のモノマー
を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の光硬化性流体が溶媒をさらに含み、前記方法が、前記溶媒を蒸発させることを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記青色フォトルミネッセンス材料が、有機材料、有機金属材料、又はポリマー材料である、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、マイクロLEDの自己整合インシトゥ硬化によって取り付けられる青色コンバータの製造方法、並びに青色コンバータを含むシステム及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)パネルはLEDのアレイを使用し、個々のLEDは個別に制御可能なピクセル要素を提供する。このようなLEDパネルは、コンピュータ、タッチパネルデバイス、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、及びテレビのモニタなどに使用することができる。
【0003】
III-V族半導体技術に基づくミクロンスケールのLEDを使用するLEDパネル(マイクロLEDとも呼ばれる)は、OLEDと比較して様々な利点、例えば、より高いエネルギー効率、輝度、及び寿命、並びに製造を単純化することのできるディスプレイスタック内のより少ない材料層を有する。しかしながら、マイクロLEDパネルの製造には課題が存在する。異なる発色を有するマイクロLED(例えば、赤、緑及び青のピクセル)は、別個のプロセスを通して異なる基板上で製造する必要がある。マイクロLEDデバイスの複数の色を単一のパネルへと統合することは、一般的に、マイクロLEDデバイスをその元のドナー基板から移送先基板へと移送するピックアンドプレースステップを必要とする。これには多くの場合、ダイの放出を容易にするための犠牲層の導入といったLED構造又は製造プロセスの修正が伴う。加えて、配置の精度に対するストリンジェントな要件は、スループット、最終収率、又はそれら両方を制限し得る。
【0004】
ピックアンドプレースステップを回避する代替的な手法は、モノクロLEDを用いて製造された基板上の特定のピクセル位置に、色変換剤(例えば、量子ドット、ナノ構造、フォトルミネッセンス材料、又は有機物質)を選択的に堆積させることである。モノクロLEDは、比較的短い波長の光、例えば、紫又は青色光を生成することができ、色変換剤は、この短い波長の光をより長い波長の光、例えば、赤又は緑のピクセルのための赤色光又は緑色光へと変換することができる。色変換剤の選択的堆積は、高解像度のシャドウマスク又は制御可能なインクジェット若しくはエアロゾルジェットプリンティングを使用して実施することができる。
【0005】
しかしながら、シャドウマスクには、位置合わせの精度及びスケーラビリティに関する問題が生じやすく、インクジェット及びエアロゾルジェット技術は、解像度(インクジェット)、精度(インクジェット)及びスループット(エアロゾルジェット)の問題を有する。マイクロLEDディスプレイを製造するために、大面積基板又はフレキシブル基板などの基板上の異なるピクセル上に、異なる色の色変換剤を精密にかつ費用効率的に提供する新しい技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、マイクロLEDの自己整合インシトゥ硬化によって取り付けられる青色コンバータの製造方法、並びに青色コンバータを含むシステム及びデバイスに関する。
【0007】
一般的な態様では、光硬化性組成物は、青色フォトルミネッセンス材料、1つ又は複数のモノマー、及び紫外線の吸収に応答しての吸収に応答して1つ又は複数のモノマーの重合を開始する光開始剤を含む。青色フォトルミネッセンス材料は、約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、青色光を発するように選択される。青色フォトルミネッセンス材料はまた、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する。発光ピークの最大半量における全幅は100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子の収率は5%から100%の範囲である。
【0008】
別の態様では、光硬化組成物は、ポリマーマトリックス、ポリマーマトリックスに混合された青色フォトルミネッセンス材料、及び重合を開始してポリマーマトリックスを形成する光開始剤の成分を含む。青色フォトルミネッセンス材料は、約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択され、発光ピークの最大半量における全幅は100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子の収率は5%から100%の範囲である。
【0009】
別の態様では、発光デバイスを製造する方法は、背面配線板及び背面配線板の背面配線板回路網と電気的に統合された紫外線発光ダイオードのアレイを有するディスプレイの上に第1の光硬化性流体を分配することと、発光ダイオードのアレイ内の第1の複数の発光ダイオードを活性化して1つ又は複数のモノマーを照明及び重合し、第1の複数の発光ダイオードの各々の上に、第1の複数の発光ダイオードからの光を青色光へと変換するための第1の色変換層を形成することであって、各色変換層がポリマーマトリックスに混合された青色フォトルミネッセンス材料を含む、発光ダイオードを活性化することと、第1の光硬化性流体の未硬化の残部を除去することとを含む。第1の光硬化性流体は、約300nmから約430nmの範囲の最大波長を有する紫外線を吸収し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択された青色フォトルミネッセンス材料であって、発光ピークの最大半量における全幅が100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子の収率が5%から100%の範囲である、青色フォトルミネッセンス材料と、1つ又は複数のモノマーと、紫外線の吸収に応答して1つ又は複数のモノマーの重合を開始する光開始剤とを含む。
【0010】
これら態様の実装態様は、下記の特徴のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0011】
組成物は、一般的に、約0.1wt%から約10wt%の青色フォトルミネッセンス材料、約0.5wt%から約5wt%の光開始剤、及び約1wt%から約90wt%の1つ又は複数のモノマーを含む。いくつかの事例では、組成物は溶媒を含む。溶媒を含む組成物は、一般的に、約0.1wt%から約10wt%の青色フォトルミネッセンス材料、約0.5wt%から約5wt%の光開始剤、約1wt%から約90wt%の1つ又は複数のモノマー、及び約10wt%から約90wt%の溶媒を含む。
【0012】
青色フォトルミネッセンス材料は、有機材料、有機金属材料、又はポリマー材料を含むことができる。いくつかの事例では、青色フォトルミネッセンス材料は有機材料であり、有機材料はフリーラジカルである。青色フォトルミネッセンス材料は、蛍光性又はリン光性とすることができる。
【0013】
青色コンバータ並びに青色コンバータを含むシステム及びデバイスの利点には、高いフォトルミネッセンス量子収率、長寿命、及び長い貯蔵寿命が含まれる。
【0014】
本開示の主題の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面及び記載に示される。主題の他の特徴、態様、及び利点は、記載、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1B-1】青色熱活性化遅延蛍光分子の構造式を示している。
【
図1B-2】青色熱活性化遅延蛍光分子の構造式を示している。
【
図1C】青色リン光性有機錯体及び有機金属錯体の構造式を示している。
【
図2】背面配線板と既に統合されているマイクロLEDアレイの概略上面図である。
【
図3】
図3Aは、マイクロLEDアレイの一部分の概略上面図である。
図3Bは、
図3AのマイクロLEDアレイの部分の概略断面図である。
【
図4A-4D】マイクロLEDアレイの上に色変換層を選択的に形成する方法を示している。
【
図4E-4H】マイクロLEDアレイの上に色変換層を選択的に形成する方法を示している。
【
図6】背面配線板上にマイクロLEDアレイ及び隔離壁を製造する方法を示している。
【
図7】背面配線板上にマイクロLEDアレイ及び隔離壁を製造する別の方法を示している。
【0016】
種々の図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
量子ドットは、インクジェットプリンティングのためのアクリレート配合物中に分散させることができる。続いてUV硬化が行われ、ポリアクリレートマトリックス中に閉じ込められた量子ドットは、進化型ディスプレイ用の色変換層として使用することができる。しかしながら、赤色光と緑色光は量子ドットによって達成することができる一方で、UV光を青色光へと変換する量子ドット(例えば、ZeS/Se/Te量子ドット)は一般的に、低いフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、短い耐用年数、及び短い貯蔵寿命という欠点を有している。
【0018】
UVバックライトを備えたマイクロLEDのための青色変換剤の欠如に伴う問題に対処し得る技法は、青色変換剤用の量子ドット以外の材料を使用することを含む。これら青色変換剤は、本開示に記載される自己整合硬化によって形成されるマイクロLED青色変換層のための配合物に含めることができる。
【0019】
マイクロLED青色変換層のための配合物は、一般的に、青色変換剤(例えば、量子ドットを含まない)、反応成分、及び光開始剤を含む。配合物は、任意選択的に、溶媒、機能性成分(例えば、高屈折率の添加物、界面活性剤、迷光吸収剤又はUVブロッカー)のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0020】
適切な青色変換剤は、蛍光性及びリン光性の有機分子、有機ラジカル、有機金属錯体、及びこれら色変換剤のうちの1つ又は複数を含むポリマーを含む。青色変換剤は、約300nmから約430nmの範囲の最大波長(λmax)を有するUV光の強力な吸収を有し、約420nmから約480nmの範囲の発光ピークを有する青色光を発するように選択される。発光ピークの最大半量(FWHM)における全幅は、一般的に、100nm未満であり、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、一般的に、5%から100%の範囲である。
【0021】
適切な青色変換剤の例には、LUMILUX Blue CD 310、LUMILUX Blue CD 710、及びLUMILUX Dispersion Blue CD 910(Honeywell International Inc.から入手可能)が含まれる。
図1Aは、青色蛍光分子4P-NPD、Bepp2、TPA-SBFF、DPAFVF、Ban-(3,5)-CF3、TBPe、DBzA、BITPI、BiPI-1、4PF、TPI-Py、及びPhImAの構造式を示している。
図1Bは、青色熱活性化遅延蛍光(TADF)分子ν-DABNA、DMAC-DPS、CZ-PS、DMTDAc、DMAC-TRZ、Cab-ペーハー-TRZ、Ca-TRZ2、Cz-TRZ3、Cz-TRZ4、BCC-TPTA、DDCzTrz、DPCC-TPTA、DCzTrz、BDPCC-TPTA、Phen-TRZ、TCzTrz、Cz-VPN、CPC、2PXZ-TAZ、及びCC2BPの構造式を示している。
図1Cは、メタロイド(ホウ素)及び金属(ベリリウム及びイリジウム)を含む青色リン光性有機錯体並びに有機金属錯体の構造式を示している。
【0022】
マイクロLEDの赤色変換層及び緑色変換層のための配合物は、一般的に、それぞれ赤色変換剤又は緑色変換剤、反応成分、及び光開始剤を含む。配合物は、任意選択的に、溶媒、機能性成分(例えば、高屈折率の添加物、界面活性剤、迷光吸収剤又はUVブロッカー)のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0023】
赤色変換剤及び緑色変換剤は、UV照射又は第2の可視波長域の可視光の吸収に応答して、第1の可視波長域の可視光を発する物質である。UV照射は、一般的に、200nmから400nmの範囲の波長を有する。可視光は、一般的に、500nmから800nmの範囲の波長又は波長域を有する。第1の可視波長域は、第2の可視波長域とは異なる(例えば、エネルギーが高い)。つまり、色変換剤は、マイクロLEDからのより短い波長光をより長い波長光へと変換することのできる材料である。
【0024】
赤色変換剤及び緑色変換剤は、フォトルミネッセンス材料、例えば有機分子又は無機分子、ナノ材料(例えば、ナノ粒子、ナノ構造、量子ドット)、又は他の適切な材料を含むことができる。適切なナノ材料には、一般的に、1つ又は複数のIII-V族化合物が含まれる。適切なIII-V族化合物の例には、CdSe、CdS、InP、PbS、CuInP、ZnSeS、及びGaAsが含まれる。いくつかの事例では、ナノ材料は、カドミウム、インジウム、銅、銀、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ化物、アルミニウム、ホウ素、ヨウ化物、臭化物、塩素、セレン、テルル、及びリンからなる群から選択される1つ又は複数の元素を含む。一部の事例では、ナノ材料は1つ又は複数のペロブスカイトを含む。
【0025】
量子ドットは、均一にすることができるか、又はコアシェル構造を有することができる。量子ドットは、約1nmから約10nmの範囲の平均直径を有することができる。1つ又は複数の有機リガンドは、一般的に、量子ドットの外面に結合される。有機リガンドは、溶媒中での量子ドットの分散を促進する。適切な有機リガンドは、脂肪族アミン、チオール又は酸化合物を含み、その脂肪族部分は、一般的に、6から30個の炭素原子を有する。適切なナノ構造の例には、ナノプレートレット、ナノ結晶、ナノロッド、ナノチューブ、及びナノヤワイヤが含まれる。
【0026】
反応成分は、モノマー、例えば(メタ)アクリレートモノマーを含み、1つ又は複数のモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせを含むことができる。反応成分は、ネガティブフォトレジスト、例えば、SU-8 フォトレジストによって提供され得る。適切なモノ(メタ)アクリレートの例には、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが含まれる。反応成分は、架橋剤又は他の反応性化合物を含み得る。適切な架橋剤の例には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート)、N,N’-メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。適切な反応性化合物の例には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、スチレンスルホネート,(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチルアクリレート、及びビニルホルムアミドが含まれる。
【0027】
光開始剤は、UV照射、UV-LED照射、可視光、及び電子ビーム照射といった照射に応答して重合を開始する。いくつかの事例では、光開始剤は、UV照射又は可視光に応答性である。適切な光開始剤は、バルク硬化光開始剤及び表面硬化光開始剤といったフリーラジカル光開始剤を含む。
【0028】
バルク硬化光開始剤はUV照射への曝露時に切断してフリーラジカルを産み、それにより重合が開始される。バルク硬化光開始剤は、分配された液滴の、表面硬化、及び全体又はバルク硬化の両方に有用である。バルク硬化光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセチルフェノン、アルキルフェノン、ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン化合物、及びチオキサン化合物を含む。
【0029】
表面硬化光開始剤は、UV照射によって活性化され、第2の化合物からの水素引き抜きによってフリーラジカルを形成し、それが実際の開始フリーラジカルになる。この第2の化合物は、しばしば共開始剤又は重合相乗剤と呼ばれ、アミン相乗剤であってよい。アミン相乗剤は酸素阻害を減少させるために使用され、したがって、表面硬化光開始剤は迅速な表面硬化のために有用であり得る。表面硬化開始剤は、ベンゾフェノン化合物及びチオキサントン化合物を含む。アミン相乗剤は活性水素を含むアミンである。アミン含有アクリレートなどのアミン相乗剤は、樹脂前駆体組成配合物中でベンゾフェノン光開始剤と組み合わせられて、a)酸素阻害を制限し、b)液滴又は層表面を迅速に硬化させて液滴又は層表面の寸法を固定し、c)硬化プロセスを通して層の安定性を高めることができる。
【0030】
適切な光開始剤の例には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-イソプロピルフェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシ-アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオンフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-2,4,6トリメチルフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノ-プロピオニル)-9-n-オクチルカルバゾール、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1フェニル-1-プロパノンが含まれる。市販されている光開始剤の適切なブレンド物は、Darocur 4265、Irgacure 184、Irgacure 250、Irgacure 270、Irgacure 295、Irgacure 369、Irgacure 379、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 754、Irgacure 784、Irgacure 819、Irgacure 907、Irgacure 1173、Irgacure 2100、Irgacure 2022、Irgacure 4265、Irgacure TPO、Irgacure TPO-L、Esacure KT37、Esacure KT55、Esacure KTO046、Omnicat 250、及びOmnicat 550を含む。適切なアミン相乗剤は、アクリル基を含むか又は含まない二級及び三級アミン化合物、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びGenomer 5142を含む。
【0031】
任意選択的に、光硬化性組成物は、溶媒を含むことができる。溶媒は、有機又は無機とすることができる。適切な溶媒の例には、水、エタノール、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、又はこれらの組み合わせが含まれる。溶媒は、光硬化性組成物に所望の表面張力又は粘度を提供するように選択することができる。溶媒は、他の成分の化学安定性を向上させることもできる。
【0032】
任意選択的に、光硬化性組成物は、迷光吸収剤又はUVブロッカーを含むことができる。適切な迷光吸収剤の例には、Disperse Yellow 3、Disperse Yellow 7、Disperse Orange 13、Disperse Orange 3、Disperse Orange 25、Disperse Black 9、Disperse Red 1アクリレート、Disperse Red 1メタクリレート、Disperse Red 19、Disperse Red 1、Disperse Red 13、及びDisperse Blue 1が含まれる。適切なUVブロッカーの例には、ベンゾトリアゾリルヒドロキシフェニル化合物が含まれる。
【0033】
任意選択的に、第1の光硬化性組成物は、1つ又は複数の他の機能性成分を含むことができる。一例として、機能性成分は、色変換層の光学特性に影響を与えることができる。例えば、機能性成分は、十分に高い屈折率(例えば、少なくとも約1.7)を有するナノ粒子を含むことができるので、色変換層は、出力光の光路を調節する光学層として機能し、例えば、マイクロレンズを提供する。適切なナノ粒子の例には、TiO2、ZnO2、ZrO2、CeO2、又はこれら酸化物のうちの2つ以上の混合物が含まれる。代替的に、加えて、ナノ粒子は、色変換層が全反射損失を減少させる光学層として機能するように選択された屈折率を有することができ、それにより光取り出しを向上させる。他の例として、機能性成分は、光硬化性組成物の表面張力を調節する分散剤又は界面活性剤を含むことができる。適切な分散剤又は界面活性剤の例には、シロキサン及びポリエチレングリコールが含まれる。また別の例として、機能性成分は、可視光を発するフォトルミネッセンス顔料を含むことができる。適切なフォトルミネッセンス顔料の例には、硫化亜鉛及びアルミン酸ストロンチウムが含まれる。
【0034】
いくつかの事例では、光硬化性組成物は、凡そ最大約90wt%の反応成分(例えば、約10wt%から約90wt%)、約0.5wt%から約5wt%の光開始剤、及び約0.1wt%から約10wt%(例えば、約1wt%から約2wt%)の色変換剤を含む。光硬化性組成物は、溶媒(例えば、最大約10wt%の溶媒)も含み得る。
【0035】
光硬化性組成物は、任意選択的に、最大約5wt%の界面活性剤又は分散剤、約0.01wt%から約5wt%(例えば、約0.1wt%から約1wt%)の迷光吸収剤、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0036】
光硬化性組成物の粘度は、一般的に、室温で約10cP(センチポアズ)から約2000cP(例えば、約10cPから約150cP)の範囲である。光硬化性組成物の表面張力は、一般的に、約20ミリニュートン/メートル(mN/m)から約60mN/m(例えば、約40mN/mから約60mN/m)の範囲である。硬化後、硬化した光硬化性組成物の破断の際の伸び率は、一般的に、約1%から約200%の範囲である。硬化した光硬化性組成物の引張強さは、一般的に、約1メガパスカル(MPa)から約1ギガパスカル(GPa)の範囲である。光硬化性組成物は、1つ又は複数の層に適用することができ、硬化した光硬化性組成物の厚さは、一般的に、約10nmから約100ミクロン(例えば、約10nmから約20ミクロン、約10nmから約1000nm、又は約10nmから約100nm)の範囲である。
【0037】
本開示に記載される光硬化性組成物は、ディスプレイ、例えば
図2~7を参照して記載されるマイクロLEDディスプレイの色変換層として実装される。
【0038】
図2は、背面配線板16上に配置された単一のマイクロLED14(
図3A及び3B参照)のアレイ12を含むマイクロLEDディスプレイ10を示している。マイクロLED14は、各マイクロLED14が個々にアドレス指定され得るように、背面配線板回路網18と既に統合されている。例えば、背面配線板回路網18は、各マイクロLEDのための薄膜トランジスタ及びストレージキャパシタ(図示しない)、列アドレスライン及び行アドレスライン18a、列ドライバ及び行ドライバ18bなどを備えたTFTアクティブマトリックスアレイを含み、マイクロLED14を駆動することができる。代替的に、マイクロLED14は、背面配線板回路網18内のパッシブマトリックスによって駆動することができる。背面配線板16は、従来のCMOSプロセスを使用して製造することができる。
【0039】
図3A及び3Bは、個別のマイクロLED14を有するマイクロLEDアレイ12の一部分12aを示している。マイクロLED14のすべては、同じ波長範囲を生成するために同じ構造を有するように製造される(これは「モノクローム」マイクロLEDと呼ぶことができる)。例えば、マイクロLED14は、紫外(UV)域、例えば、近紫外域の光を生成することができる。例えば、マイクロLED14は、365から405nmの範囲の光を生成することができる。他の例として、マイクロLED14は、紫又は青の範囲の光を生成することができる。マイクロLEDは、20から60nmのスペクトルバンド幅を有する光を生成することができる。
【0040】
図3Bは、単一のピクセルを提供することのできるマイクロLEDアレイの一部分を示している。マイクロLEDディスプレイが三色ディスプレイであると仮定すると、各ピクセルは、各色に1つずつ、例えば、青色チャネル、緑色チャネル及び赤色のチャネルの各々に1つずつの、3つのサブピクセルを含んでいる。したがって、ピクセルは、3つのマイクロLED14a、14b、14cを含むことができる。例えば、第1のマイクロLED14aは、青のサブピクセルに対応することができ、第2のマイクロLED14bは、緑のサブピクセルに対応することができ、第3のマイクロLED14cは、赤のサブピクセルに対応することができる。しかしながら、以下に説明される技法は、多数の色、例えば、4色又は5色を使用するマイクロLEDディスプレイに適用可能である。この場合、各ピクセルは、各マイクロLEDがそれぞれの色に対応する4つ以上のマイクロLEDを含むことができる。加えて、以下に説明される技法は、2色のみを使用するマイクロLEDディスプレイに適用可能である。
【0041】
一般に、モノクロマイクロLED14は、ディスプレイに意図された最も高い周波数の色、例えば、紫色光又は青色光の波長以下の波長のピークを有する波長範囲の光を生成することができる。色変換剤は、この短い波長の光をそれよりも長い波長の光、例えば、赤又は緑のサブピクセルのための赤色光又は緑色光に変換することができる。マイクロLEDがUV光を生成する場合、色変換剤を使用してUV光を青いサブピクセルのための青色光へと変換することができる。
【0042】
垂直隔離壁20は、隣り合うマイクロLED間に形成される。隔離壁は、重合を局在化して、後述されるインシトゥ重合中の光クロストークを低減することを助ける光学的アイソレーションを提供する。隔離壁20は、フォトレジスト又は金属とすることができ、従来のリソグラフィプロセスによって堆積させることができる。
図3Aに示されるように、壁20は、壁20によって画定された個々の凹部22内に各マイクロLED14を有する矩形のアレイを形成することができる。他のアレイ形状寸法、例えば、六角形又はオフセットされた矩形のアレイも可能である。背面配線板統合及び隔離壁形成のための可能なプロセスが、以下でさらに詳細に説明される。
【0043】
壁は、約3から20μmの高さHを有し得る。壁は、約2から10μmの幅Wを有し得る。高さHは、幅Wより大きくすることができ、例えば、壁は、1.5:1から5:1のアスペクト比を有することができる。壁の高さHは、光が1つのマイクロLEDから隣接するマイクロLEDに到達することをブロックするために十分である。
【0044】
図4A~4Hは、マイクロLEDアレイの上に色変換層を選択的に形成する方法を示している。まず、
図4Aに示されるように、第1の光硬化性組成物30aが、背面配線板回路網と既に統合されているマイクロLED14のアレイの上に堆積される。第1の光硬化性組成物30aは、隔離壁20の高さHより大きな深さDを有することができる。
【0045】
図5A~5Cに示すように、光硬化性組成物(例えば、第1の光硬化性組成物30a、第2の光硬化性組成物30b、第3の光硬化性組成物30cなど)は、重合性成分32、マイクロLED14の発光に対応する波長の照明下で重合をトリガーする光開始剤34、及び色変換剤36aを含む。重合性成分32は、本明細書に記載される抗酸素阻害添加物及び反応成分を含む。
【0046】
光硬化性組成物の硬化後、光開始剤34の成分は、硬化した光硬化性組成物(光ポリマー)中に存在してよく、その場合この成分は、光開始プロセスにおいて光開始剤の結合が破断する間に形成された光開始剤の断片である。
【0047】
図4Aに戻ると、第1の光硬化性組成物30aは、スピンオン法、浸漬、スプレー吹き付け、又はインクジェットプロセスによってマイクロLEDアレイの上のディスプレイ上に堆積させることができる。インクジェットプロセスは、第1の光硬化性組成物30aの消費においてより効率的であり得る。
【0048】
次に、
図4Bに示されるように、背面配線板16の回路網は、第1の複数のマイクロLED14aを選択的に活性化するために使用される。この第1の複数のマイクロLED14aは、第1の色のサブピクセルに対応する。特に、第1の複数のマイクロLED14aは、光硬化性組成物30a中の色変換剤によって生成される光の色のためのサブピクセルに対応している。例えば、流体30a中の色変換剤がマイクロLED14からの光を青色光へと変換すると仮定すると、青のサブピクセルに対応するこれらマイクロLED14aのみがオンにされる。マイクロLEDアレイが既に背面配線板回路網18と統合されているので、電力をマイクロLEDディスプレイ10に供給することができ、マイクロプロセッサによって制御信号を適用してマイクロLED14aを選択的にオンにすることができる。
【0049】
図4B及び4Cに示すように、第1の複数のマイクロLED14aの活性化によって、第1の光硬化性組成物30aのインシトゥ硬化が引き起こされて、各活性化マイクロLED14aの上に第1の固化された色変換層40a(
図4C参照)を形成する照明A(
図4B参照)が生成される。すなわち、流体30aは、硬化されて、色変換層40aを、ただし選択されたマイクロLED14a上にのみ形成する。例えば、青色光を変換するための色変換層40aは、各マイクロLED14a上に形成することができる。
【0050】
いくつかの実装態様では、選択されたマイクロLED14aからの照明は、他のマイクロLED14b、14cに到達しない。このような状況では、隔離壁20は不要である場合がある。しかしながら、マイクロLED14間の間隔が十分に小さい場合にも、隔離壁20は、選択されたマイクロLED14aからの照明Aが、他のマイクロLEDからの照明の浸透深さ内にあるそれら他のマイクロLEDの上のエリアに到達することをうまくブロックすることができる。隔離壁20も、例えば、単純に照明が他のマイクロLEDの上のエリアに到達することを防ぐ保険として、含めることができる。
【0051】
第1の複数のマイクロLED14aの駆動電流及び駆動時間は、光硬化性組成物30aのための適切な光子適用量のために選択することができる。流体30aを硬化させるためのサブピクセルあたりの電力は、マイクロLEDディスプレイ10の表示モードでのサブピクセルあたりの電力と必ずしも同じではない。例えば、硬化モードの場合のサブピクセルあたりの電力は、ディスプレイモードの場合のサブピクセルあたりの電力より高くすることができる。
【0052】
図4Dに示すように、硬化が完了して第1の固化された色変換層40aが形成されると、残った未硬化の第1の光硬化性組成物がディスプレイ10から除去される。これにより、他のマイクロLED14b、14cが次の堆積ステップのために露出した状態で残る。いくつかの実装態様では、未硬化の第1の光硬化性組成物30aは、溶媒、例えば、水、エタノール、トルエン、ジメチルホルムアミド、若しくはメチルエチルケトン、又はこれらの組み合わせを用いてディスプレイから簡単に洗い流される。光硬化性組成物30aがネガティブフォトレジストを含む場合、洗い流し流体は、フォトレジスト用のフォトレジストデベロッパを含むことができる。
【0053】
図4E及び5Bに示すように、
図4A~4Dを参照して上述した処理が繰り返されるが、ただし第2の光硬化性組成物30bが用いられ、第2の複数のマイクロLED14bが活性化される。洗い流しの後、第2の色変換層40bが、第2の複数のマイクロLED14bの各々の上に形成される。
【0054】
第2の光硬化性組成物30bは、第1の光硬化性組成物30aと類似であるが、マイクロLED14からのより短い波長光を異なる第2の色のより長い波長光へと変換する色変換剤36bを含んでいる。第2の色は、例えば、緑とすることができる。
【0055】
第2の複数のマイクロLED14bは、第2の色のサブピクセルに対応する。特に、第2の複数のマイクロLED14bは、第2の光硬化性組成物30b中の色変換剤によって生成される光の色のためのサブピクセルに対応している。例えば、流体30a中の色変換剤がマイクロLED14からの光を緑色光へと変換すると仮定すると、緑のサブピクセルに対応するこれらマイクロLED14bのみがオンにされる。
【0056】
図4F及び5Cに示すように、任意選択的に、
図4A~4Dを参照して上述した処理が繰り返されるが、ただし第3の光硬化性組成物30cが用いられ、第3の複数のマイクロLED14cが活性化される。洗い流しの後、第3の色変換層40cが、第3の複数のマイクロLED14cの各々の上に形成される。
【0057】
第3の光硬化性組成物30cは、第1の光硬化性組成物30aと類似であるが、マイクロLED14からのより短い波長光を異なる第3の色のより長い波長光へと変換する色変換剤36cを含む。第3の色は、例えば、赤とすることができる。
【0058】
第3の複数のマイクロLED14cは、第3の色のサブピクセルに対応する。特に、第3の複数のマイクロLED14cは、第3の光硬化性組成物30c中の色変換剤によって生成される光の色のためのサブピクセルに対応している。例えば、流体30c中の色変換剤がマイクロLED14からの光を赤色光へと変換すると仮定すると、赤のサブピクセルに対応するこれらマイクロLED14cのみがオンにされる。
【0059】
図4A~4Fに示されるこの具体的な実施例では、色変換層40a、40b、40cは、各色のサブピクセルについて堆積されている。これは、例えば、マイクロLEDが紫外線を生成するときに必要である。
【0060】
しかしながら、マイクロLED14は、UV光ではなく青色光を生成してもよい。この場合、青色変換剤を含有する光硬化性組成物によるディスプレイ10のコーティングはスキップすることができ、プロセスは、緑及び赤のサブピクセルのための光硬化性組成物を使用して実施することができる。例えば、
図4Eに示されるように、1組の複数のマイクロLEDは色変換層なしで残される。
図4Fによって示されるプロセスは実施されない。例えば、第1の光硬化性組成物30aが緑のCCAを含んでマイクロLEDの第1の複数の14aが緑のサブピクセルに対応することができ、第2の光硬化性組成物30bが赤のCCAを含んでマイクロLEDの第2の複数の14bが赤のサブピクセルに対応することができる。
【0061】
流体30a、30b、30cが溶媒を含むと仮定すると、いくつかの溶媒は色変換層40a、40b、40c中に捕捉され得る。
図4Gに示すように、この溶媒は、例えば、マイクロLEDアレイを、IRランプなどによる熱に曝露することにより、蒸発させることができる。色変換層40a、40b、40cからの溶媒の蒸発は、最終層がより薄くなるように、これらの層を収縮させることができる。
【0062】
溶媒の除去及び色変換層40a、40b、40cの収縮は、色変換剤、例えば、量子ドットの濃度を上昇させることができ、それにより色変換効率を高める。一方で、溶媒を含めることで、光硬化性組成物の他の成分の化学配合物、例えば、色変換剤又は架橋性成分の柔軟性を高めることができる。
【0063】
任意選択的に、
図4Hに示されるように、UVブロッキング層50を、マイクロLED14のすべての上に堆積させることができる。UVブロッキング層50は、色変換層40によって吸収されないUV光をブロックすることができる。UVブロッキング層50は、ブラッグリフレクタとすることができるか、又は単純に、UV光を選択的に吸収する材料(例えば、ベンゾトリアゾリルヒドロキシフェニル化合物)とすることができる。ブラッグリフレクタは、UV光を反射してマイクロLED14へと戻すことができ、よってエネルギー効率を上昇させる。迷光吸収層、フォトルミネッセンス層、及び高屈折率層といった他の層は、任意選択的にやはりマイクロLED14上に堆積され得る材料を含む。
【0064】
したがって、本明細書に記載されるように、光硬化性組成物は、UV光又は可視光範囲の第2の波長域の照射の吸収に応答して可視光範囲の第1の波長域の照射を放出するように選択された色変換剤と、反応成分(例えば、1つ又は複数のモノマー)と、第2の波長域の照射の吸収に応答して活性成分の重合を開始する光開始剤とを含む。第2の波長域は、第1の波長域とは異なる。
【0065】
いくつかの実装態様では、発光デバイスは、複数の発光ダイオードと、発光ダイオードの各々から放出されたUV光又は可視光範囲の第1の波長域の照射が通過する表面と接する硬化された組成物とを含む。硬化された組成物は、発光ダイオードの各々からの第1の波長域の照射の吸収に応答して可視光範囲の第2の波長域の照射を放出するように選択されたナノ材料と、光ポリマーと、第1の波長域の照射の吸収に応答して光ポリマーの重合を開始する光開始剤の成分(例えば、断片)とを含む。第2の波長域は、第1の波長域とは異なる。
【0066】
一部の実装態様では、発光デバイスは、追加の複数の発光ダイオードと、追加の発光ダイオードの各々から放出された第1の波長域の照射が通過する表面と接する追加の硬化された組成物とを含む。追加の硬化された組成物は、発光ダイオードの各々からの第1の波長域の照射の吸収に応答して可視光範囲の第3の波長域の照射を放出するように選択された追加のCCAと、追加の光ポリマーと、第1の波長域の照射の吸収に応答して光ポリマーの重合を開始する追加の光開始剤の成分とを含む。第3の波長域は、第2の波長域とは異なってよい。
【0067】
図6A~6Eは、背面配線板上にマイクロLEDアレイ及び隔離壁を製造する方法を示している。
図6Aに示すように、プロセスは、マイクロLEDアレイを提供するウエハ100を用いて開始される。ウエハ100は、上に第1のドーピングを有する第1の半導体層104、活性層106、及び第2の逆ドーピングを有する第2の半導体層108が堆積される基板102、例えば、シリコン又はサファイアのウエハを含む。例えば、第1の半導体層104は、N型ドープされた窒化ガリウム(n-GaN)層とすることができ、活性層106は、多重量子井戸(MQW)層106とすることができ、第2の半導体層107は、P型ドープされた窒化ガリウム(p-GaN)層108とすることができる。
【0068】
図6Bに示すように、ウエハ100は、エッチングされて、層104、106、108を、第1、第2、及び第3の色に対応する第1、第2、及び第3の複数のマイクロLED14a、14b、14cを含む個別のマイクロLED14に分割する。加えて、導電コンタクト110を堆積させることができる。例えば、p型コンタクト110a及びn型コンタクト110bは、それぞれn-GaN層104及びp-GaN層108の上に堆積させることができる。
【0069】
同様に、背面配線板16は、回路網18、並びに電気的コンタクト120を含むように製造される。電気的コンタクト120は、第1のコンタクト120a、例えば、駆動コンタクトと、第2のコンタクト120b、例えば、接地コンタクトとを含むことができる。
【0070】
図6Cに示すように、マイクロLEDウエハ100は、背面配線板16と整列されて、背面配線板16と接触するように配置される。例えば、第1のコンタクト110aは第1のコンタクト120aと接することができ、第2のコンタクト110bは第2のコンタクト120bと接することができる。マイクロLEDウエハ100は、背面配線板と接触するように下げることができるか、又はその逆が可能である。
【0071】
次に、
図6Dに示すように、基板102が除去される。例えば、シリコン基板は、基板102から研磨により、例えば、化学機械的研磨により取り去ることができる。別の実施例として、サファイア基板は、レーザリフトオフプロセスによって除去することができる。
【0072】
最後に、
図6Eに示すように、隔離壁20が、背面配線板16(既にマイクロLED14が取り付けられている)上に形成される。隔離壁は、フォトレジストの堆積、フォトリソグラフィによるフォトレジストのパターン形成、及び凹部22に対応するフォトレジストの部分を除去するためのディベロップメントといった従来のプロセスにより形成することができる。その結果得られる構造は、
図4A~4Hについて記載されたプロセスのためのディスプレイ10として使用することができる。
【0073】
図7A~7Dは、背面配線板上にマイクロLEDアレイ及び隔離壁を製造する別の方法を示している。このプロセスは、
図6A~6Eについて上述したプロセスと同様とすることができるが、以下の点が違っている。
【0074】
図7Aに示すように、プロセスは、上述のプロセスと同様に、マイクロLEDアレイ及び背面配線板16を提供するウエハ100を用いて開始される。
【0075】
図7Bに示すように、隔離壁20が、背面配線板16(マイクロLED14がまだ取り付けられていない)上に形成される。
【0076】
加えて、ウエハ100は、エッチングされて、層104、106、108を、第1、第2、及び第3の複数のマイクロLED14a、14b、14cを含む個別のマイクロLED14に分割する。しかしながら、このエッチング処理によって形成された凹部130は、隔離壁20を収容するために十分に深い。例えば、エッチングは、凹部130が基板102中へと延びるように継続することができる。
【0077】
次に、
図7Cに示されるように、マイクロLEDウエハ100は、背面配線板16と整列されて、背面配線板16と接触するように配置される(又は逆も可能)。隔離壁20は凹部130に嵌り込む。加えて、マイクロLEDのコンタクト110は、背面配線板16のコンタクト120に電気的に接続される。
【0078】
最後に、
図7Dに示すように、基板102が除去される。これにより、マイクロLED14及び隔離壁20が背面配線板16に残る。その結果得られる構造は、
図4A~4Hについて記載されたプロセスのためのディスプレイ10として使用することができる。
【0079】
垂直及び側方といった配置に関する用語が使用された。しかしながら、このような用語は相対的な配置に言及しているのであって、重力を基準とする絶対的な配置に言及しているのではない。例えば、側方にとは、基板表面に平行な方向であり、垂直にとは、基板表面に直角の方向である。
【0080】
前述した実施例は例示的なものであって限定的なものではないことが、当業者には認識されよう。例えば:
・上記の記載はマイクロLEDに焦点を当てているが、本技法は、他の種類の発光ダイオードを備える他のディスプレイ、特に、他のマイクロスケール発光ダイオード、例えば、幅約10ミクロン未満のLEDを備えるディスプレイに適用することができる。
・上記の記載は、色変換層が形成される順序が青、緑、赤の順であると仮定しているが、他の順序、例えば、青、赤、緑の順も可能である。加えて、他の色、例えば、オレンジ及び黄が可能である。
【0081】
本開示の精神及び範囲から逸脱せずに、様々な修正を行うことができることを理解されたい。