(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】圧力センサおよび分注装置
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20241122BHJP
G01L 19/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01L9/00 303N
G01L19/06 Z
(21)【出願番号】P 2023557903
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2022036986
(87)【国際公開番号】W WO2023079883
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021181274
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】金丸 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】青野 宇紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-265041(JP,A)
【文献】特開2006-010539(JP,A)
【文献】特開2022-175292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路および第1流路から分岐した第2流路が形成されたセンサ筐体と、
前記第2流路を塞ぐように設けられたダイアフラム部を含み前記センサ筐体に接合されるセンサチップと、
前記センサ筐体の側とは反対側から前記ダイアフラム部を覆うように前記センサチップの上に設置されたキャップ部材と、
前記キャップ部材を前記センサチップに向かって押圧する押圧部材と、
を備え、
前記センサチップにおける前記キャップ部材の設置部位の内周は、前記センサ筐体と前記センサチップとの接合部の内周に対して、前記ダイアフラム部の中央側に位置するように配置される圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記センサチップは薄膜半導体で構成され、
前記接合部は前記センサ筐体と前記センサチップとを接着剤で接合した第1接合部を構成する圧力センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力センサにおいて、
前記キャップ部材と前記センサチップとを接着剤で接合した第2接合部を備え、
前記設置部位の内周は前記第2接合部の内周が前記センサチップに接触する位置で規定される圧力センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力センサにおいて、
前記第2接合部に当該第2接合部を複数の部分に分断する分断部を有する圧力センサ。
【請求項5】
請求項3に記載の圧力センサにおいて、
前記第1接合部、前記センサチップおよび前記第2接合部は、前記センサ筐体の側から前記第1接合部、前記センサチップおよび前記第2接合部の順に配置され、
前記センサチップの法線方向投影面において、前記第2接合部の前記内周の投影線は、前記第1接合部の前記内周の投影線に対して、前記ダイアフラム部の中央側に位置するように配置される圧力センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記押圧部材の押圧力の作用点は前記キャップ部材の中央部である圧力センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記センサ筐体に固定され、前記センサチップ、前記キャップ部材および前記押圧部材を覆うカバーを備え、
前記カバーと前記キャップ部材との間に自然長より圧縮された状態で設置した単一または複数の弾性体を前記押圧部材として用いた圧力センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記キャップ部材の押圧位置に接触させて配置された中間部材と、前記センサ筐体に固定され前記センサチップ、前記キャップ部材および前記押圧部材を覆うカバーと、を備え、
前記カバーと前記中間部材との間に自然長より圧縮された状態で設置した単一または複数の弾性体を前記押圧部材として用いた圧力センサ。
【請求項9】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記キャップ部材の押圧位置に接触させて配置された中間部材を備え、
前記センサ筐体と前記中間部材との間に自然長より伸張された状態で設置した単一または複数の弾性体を前記押圧部材として用いた圧力センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記センサ筐体に固定され、前記センサチップおよび前記キャップ部材を覆うカバーを備え、
前記カバーと一体に形成されたバネ部を前記押圧部材として用いた圧力センサ。
【請求項11】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記キャップ部材の押圧位置に接触させて配置された中間部材と、前記センサ筐体に固定され前記センサチップ、前記キャップ部材および前記押圧部材を覆うカバーと、を備え、
前記カバーと前記中間部材との間に自然長より圧縮された状態で設置した単一または複数の弾性体を前記押圧部材として用い、
前記中間部材は前記弾性体の一端をガイドするガイド穴を備える圧力センサ。
【請求項12】
圧力センサの組立方法において、
当該圧力センサは、
第1流路および第1流路から分岐した第2流路が形成されたセンサ筐体と、
前記第2流路を塞ぐように設けられたダイアフラム部を含み前記センサ筐体に接合されるセンサチップと、
前記センサ筐体の側とは反対側から前記ダイアフラム部を覆うように前記センサチップの上に設置されたキャップ部材と、
前記キャップ部材の押圧位置に接触させて配置された中間部材と、
前記キャップ部材を前記センサチップに向かって押圧する単一または複数の押圧部材と、
前記センサ筐体に固定され、前記センサチップ、前記キャップ部材および前記押圧部材を覆うカバーと、
を備え、
前記センサチップにおける前記キャップ部材の設置部位の内周は、前記センサ筐体と前記センサチップとの接合部の内周に対して、前記ダイアフラム部の中央側に位置するように配置される圧力センサであって、
前記中間部材、前記押圧部材及び前記カバーを順に積層して組み立てることを特徴とする圧力センサの組立方法。
【請求項13】
請求項12に記載の圧力センサの組立方法において、
前記中間部材、前記押圧部材及び前記カバーを積層状態で支持し、前記キャップ部材と前記押圧部材とが当接しないように厚さを調整した組み付け部材を備え、
前記中間部材、前記押圧部材及び前記カバーを仮配置後に、前記組み付け部材を取り除き、前記キャップ部材と前記押圧部材とを当接させて位置決めする圧力センサの組立方法。
【請求項14】
ノズル、シリンジポンプ、電磁弁、ギアポンプ、およびシステム水タンクを含んで構成され、
前記ノズル、前記シリンジポンプ、前記電磁弁、前記ギアポンプ、および前記システム水タンクを接続する配管に、請求項1に記載の圧力センサを備える分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置などに搭載するのに好適な圧力センサおよび分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力を検出するセンサチップと、センサチップを支持する台座プレートと、台座プレートに接合されて台座プレートを支持する支持ダイアフラムとを有し、支持ダイアフラムがパッケージに接合され、支持ダイアフラムのみを介してセンサチップおよび台座プレートをパッケージ内に支持する圧力センサが記載されている(要約参照)。
【0003】
特許文献1の圧力センサのセンサチップは、上面視で1cm角以下の大きさを有し、四角角型の薄板からなるスペーサと、スペーサに接合されかつ圧力の印加に応じてひずみが生じるセンサダイアフラムと、センサダイアフラムに接合して真空の容量室(リファレンス室)を形成するセンサ台座と、を有している(段落0028参照)。
【0004】
このセンサチップの上面にはコンタクトパッドが形成され、コンタクトパッドに十分な可撓性を有するコンタクトバネが導通接触することで、センサチップは台座プレートおよび支持ダイアフラムに向けて付勢されている(段落0040および
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の圧力センサでは、センサダイアフラムが圧力を受け、コンタクトバネによる付勢力を受けるセンサ台座がセンサダイアフラムを上方から押さえる構造を有する。そして、センサダイアフラムに接合されるセンサ台座の接合面の内周縁は、接合面に沿う方向において、スペーサに接合されるセンサダイアフラムの接合面の内周縁よりも、外側に設けられている。この場合、受圧部であるセンサダイアフラムが下方から圧力を受けると、センサ台座に接合されるセンサダイアフラムの接合面の内周縁部には、センサ台座から引き剥がす方向の引張応力が生じる。この引張応力がセンサダイアフラムとセンサ台座との接合強度を超えると、センサダイアフラムとセンサ台座との間に剥離が生じる懸念があるが、特許文献1にはこのような剥離を抑制する構造的な配慮はなされていない。以下、センサダイアフラムは単にダイアフラムと呼んで説明する。
【0007】
本発明の目的は、ダイアフラムなどの受圧部における剥離抑制効果を向上した圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、代表的な圧力センサの一つは、
第1流路および第1流路から分岐した第2流路が形成されたセンサ筐体と、
前記第2流路を塞ぐように設けられたダイアフラム部を含み前記センサ筐体に接合されるセンサチップと、
前記センサ筐体の側とは反対側から前記ダイアフラム部を覆うように前記センサチップの上に設置されたキャップ部材と、
前記キャップ部材を前記センサチップに向かって押圧する押圧部材と、
を備え、
前記センサチップにおける前記キャップ部材の設置部位の内周は、前記センサ筐体と前記センサチップとの接合部の内周に対して、前記ダイアフラム部の中央側に位置するように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダイアフラムなどの受圧部における剥離抑制効果を向上した圧力センサを提供することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例(実施例1)に係る圧力センサを含む分注装置の基本構成を示す図。
【
図2】実施例1に係る圧力センサ近傍における吸引直後の配管8内の状態を示す図。
【
図3A】実施例1に係る圧力センサの構造の一例を示す図であり、圧力センサの分解斜視図である。
【
図3B】実施例1に係る圧力センサの構造の一例を示す図であり、センサチップの法線方向と流路の方向に沿った断面図。
【
図4】実施例1に係る圧力センサのセンサチップ周辺の分解斜視図。
【
図5】本発明との比較例である圧力センサの断面図。
【
図7】実施例1の変更例に係る圧力センサのセンサチップ周辺の分解斜視図。
【
図8】本発明の第2実施例(実施例2)に係る圧力センサの断面図。
【
図9】本発明の第3実施例(実施例3)に係る圧力センサの断面図。
【
図10】本発明の第4実施例(実施例4)に係る圧力センサの断面図。
【
図11】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの断面図。
【
図12A】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12B】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12C】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12D】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12E】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12F】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【
図12G】本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサの組み立て方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
薄膜半導体ひずみセンサを用いた圧力センサの圧力検出感度を向上するためには、ひずみ検出部(受圧部)のダイアフラム部31aを薄膜化し、圧力に対するダイアフラム部31aのひずみを増加させることが有効である。そのためには、ひずみ検出部自体が直接測定対象流体に接する構造とすることが望ましい。しかし、この構造の弊害として、流路を形成する筐体とひずみ検出部(ダイアフラム部31a)との接合面端部も直接流体に接するため、受圧時に接合面端部を引き剥がす方向の引張応力が生じ、剥離が生じる懸念がある。
【0013】
接合面の剥離は、センサ感度の低下や液漏れの原因となる。この課題を解決するためには、受圧時にも接合面端部が圧縮応力となるよう、外部から押圧することが有効である。本発明に係る実施例では、キャップ部材34をダイアフラム部31aに接合することによってダイアフラム部31aを保護しつつ、高感度な圧力センサを実現する。また、センサ感度の低下や液漏れの可能性を低減した高信頼な圧力センサを提供することができる。
【0014】
[実施例1]
本発明の第1実施例を
図1から
図7を参照し説明する。本実施例では、本発明に係る圧力センサ15が分注装置1に適用される例について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施例(実施例1)に係る圧力センサ15を含む分注装置1の基本構成を示す図である。
図1では、本発明に係る圧力センサ15およびそれが搭載される分注装置1の基本構成を示しており、
図1では圧力センサ15の配置を模式的に図示している。
【0016】
分注装置1の流路系は、ノズル2と、シリンジポンプ4と、電磁弁5と、ギアポンプ6と、システム水タンク7と、を含んで構成されており、各部品は配管8で接続されている。また、シリンジポンプ4は、容器9と、プランジャ10と、ボールねじ11と、駆動モータ12と、で構成される。駆動モータ12は、サンプル分注機構13などを駆動するモータ13a,13bと同様に、制御基板14により制御される。アーム16内には圧力センサ15を備える。
【0017】
アーム16は、液体を吸引・吐出する位置に移動するため、回転動作と上下動作とが可能である。アーム16の回転動作はモータ13aにより行われ、上下動作はモータ13bにより行われる。
【0018】
このように本実施例の分注装置1は、ノズル2、シリンジポンプ4、電磁弁5、ギアポンプ6、およびシステム水タンク7を含んで構成され、ノズル2、シリンジポンプ4、電磁弁5、ギアポンプ6、およびシステム水タンク7を接続する配管8に、以下で説明する圧力センサ15を備える。
【0019】
図2は、実施例1に係る圧力センサ近傍における吸引直後の配管8内の状態を示す図である。
図2では圧力センサ15の配置を模式的に図示している。
【0020】
配管8内はシリンジ圧力伝達用の水であるシステム水21で満たされており、シリンジポンプ4による圧力を伝達することにより、ノズル2から液体22を吸引・吐出することができる。ノズル2から液体22を吸引するときは、電磁弁5を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を引く。反対にノズル2から液体を吐出するときは、電磁弁5を閉にした状態で、シリンジポンプ4内のプランジャ10を容器9に押し込む。サンプルなどの液体22を吸引する場合は、液体22が配管8内のシステム水21と混ざらないように、ノズル2で、分節するための分節空気23を吸引した後で、液体22の吸引を行う。
【0021】
また、吐出後にはノズル2の洗浄を行う。ノズル2の洗浄では、ノズル2の外壁に洗浄用の水をあてると同時に、流路内部のシステム水21を押し出す。洗浄時のノズル2内のシステム水21の押し出しには、電磁弁5を開にしてギアポンプ6の圧力を利用することで、シリンジポンプ4で押し出すときよりも高圧でシステム水21が送り出される。
【0022】
上述した電磁弁5の開閉動作は制御基板14により制御される。また制御基板14はギアポンプ6の駆動を制御する。
【0023】
分注動作中に生じる可能性のあるノズルの詰まりや空吸い等の異常を検知するため、分注装置1は配管8に圧力センサ15を備えている。圧力センサ15は、システム水21の圧力をモニタリングし、ノズル2の詰まりや空吸い等の異常が生じたときに発生する圧力変化を検知する。本実施例では、圧力センサ15は、ノズル2の圧力変化を敏感にとらえるため、なるべくノズル2の近くに配置することが好ましい。このために本実施例では、アーム16内に圧力センサ15を設置している。しかし、圧力センサ15の設置位置はアーム16内に限定される訳ではなく、例えばサンプル分注機構13の側面に設置してもよい。
【0024】
【0025】
図3Aは、実施例1に係る圧力センサ15の構造の一例を示す図であり、圧力センサ15の分解斜視図である。
図3Bは、実施例1に係る圧力センサ15の構造の一例を示す図であり、センサチップ31の法線方向と流路33の方向に沿った断面図である。ここで、センサチップ31は薄板形状を成し、厚み方向(
図3Aの上下方向)の両端に平坦な板面(端面)が形成される。センサチップ31の法線方向は、センサチップ31が成す薄板形状の板面(端面)に垂直な方向であり、薄板形状の厚み方向に一致する。センサチップ31にはダイアフラム部31aが構成され、ダイアフラム部31aを構成する板面(端面)は受圧面となる。すなわちセンサチップ31の法線方向は、ダイアフラム部31aによって構成される受圧面の法線方向である。
【0026】
センサ筐体32の内部に形成された流路33の両端には、図示しないネジ部が設けられ、流路33を分注装置1の配管8と継手を介して接続可能となっている。また、流路33には、センサ筐体32の外面に向かって分岐した流路である分岐流路35が設けられており、分岐流路35の終端を塞ぐようにセンサチップ31が配置されている。すなわち、センサチップ31のダイアフラム部31aが分岐流路35を塞ぐようにセンサチップ31が配置されている。センサチップ31はセンサチップ接合剤36でセンサ筐体32に接合される。
【0027】
本実施例では、分岐流路35は流路(主流路)33に対して直交するように設けられている。センサ筐体32の外周面には平面32aが形成されており、分岐流路35は平面32aに開口するように設けられる。センサチップ31は平面32aに接合されることで、分岐流路35の平面32a側の開口を塞ぐ。流路(主流路)33を第1流路とした場合、分岐流路35は第1流路33から分岐した第2流路となる。
【0028】
センサチップ31の表面(
図3Bの上面)には、ダイアフラム部31aを保護するキャップ部材34が接合されている。キャップ部材34は、センサ筐体32の側とは反対側からダイアフラム部31aを覆うようにセンサチップ31の上に設置される。キャップ部材34はキャップ部材接合剤37でセンサチップ31に接合される。
【0029】
キャップ部材34の上部には、キャップ部材34の押圧手段として圧縮コイルバネ60が配置されている。キャップ部材34にはガイド穴40aが形成されており、圧縮コイルバネ60はその一部がガイド穴40aに収容され、センサチップ31の法線方向に沿う伸縮がガイド穴40aによりガイドされている。センサチップ31およびキャップ部材34の周囲を覆うように、カバー40がセンサ筐体32に固定されている。カバー40の固定方法としては、接着、ねじ止め、スナップフィット等がある。
【0030】
本実施例の圧力センサ15は、センサ筐体32に固定され、センサチップ31、キャップ部材34および圧縮コイルバネ(押圧部材)60を覆うカバー40を備え、カバー40とキャップ部材34との間に自然長より圧縮された状態で設置した単一または複数の弾性体を押圧部材として用いる。
【0031】
圧縮コイルバネ60は、キャップ部材34をセンサチップ31に向かって押圧する押圧部材として設けられる。圧縮コイルバネ60は、カバー40とキャップ部材34とに挟まれて圧縮状態にあり、その復元力によりキャップ部材34の中央部をセンサチップ31の側(
図3Bの下方)に向けて押圧している。すなわち、圧縮コイルバネ(押圧部材)60の押圧力の作用点はキャップ部材34の中央部である。
【0032】
圧力センサ15では、流路33を流れるシステム水21の圧力変化で、センサチップ31の変形部であるダイアフラム部31aがたわむように変形する。圧力センサ15は、ダイアフラム部31aのたわみ変形による歪みをセンサチップ31で測定することによって、センサ筐体32内を流れるシステム水21の圧力を測定する。歪みの測定は、ダイアフラム部31aの中央部表面に実装された歪みゲージ部31bによって行われる。ダイアフラム部31aはセンサチップ31の中央部に設けられており、歪みゲージ部31bはセンサチップ31の中央部に設けられる。
【0033】
本実施例では、角形の薄板形状を成す薄膜半導体によりダイアフラム部31aが構成され、ダイアフラム部31aに歪みゲージ部31bが設けられる。センサチップ31は、センサチップ31の本体部となる薄膜半導体31sと、本体部31sに構成されるダイアフラム部31aと、ダイアフラム部31aのひずみを検出する歪みゲージ部31bと、を含んで構成される。
【0034】
センサチップ31からの出力を取り出すため、センサ筐体32にはプリント基板45が設置され、プリント基板45はセンサチップ31上の電極部とボンディングワイヤ46で電気的に接続されている。プリント基板45としては、ガラスエポキシ基板やフレキシブルプリント基板等が考えられる。
【0035】
図4は、実施例1に係る圧力センサ15のセンサチップ31周辺の分解斜視図である。
分岐流路35の周辺に塗布されたセンサチップ接合剤36により、センサチップ31がセンサ筐体32に接合される。
図4におけるセンサチップ接合剤36は、分岐流路35の周辺に塗布されたセンサチップ接合剤(接着剤)が硬化した後の状態(形状)を図示したものであり、センサ筐体32とセンサチップ31との接合部に相当する。この接合部36はセンサ筐体32とセンサチップ31とを接合剤(接着剤)で接合した第1接合部を構成する。
【0036】
分岐流路35はセンサ筐体32の平面32aに開口面35bを形成し、センサ筐体32の平面32aに開口面35bの外縁(開口縁)35aが形成される。センサ筐体32とセンサチップ31との接合部であるセンサチップ接合剤36は、開口面35bに対向する部位に開口面36bを有し、開口面36bの外縁(開口縁)36aが形成される。センサチップ接合剤36の開口縁36aは、センサチップ接合剤36の内周(内周縁)を構成する。
【0037】
なお本実施例では、分岐流路35の開口面35bとセンサチップ接合剤36の開口面36bとは、センサチップ31の法線方向から見た場合に、重なるように配置される。すなわち、分岐流路35の開口縁35aとセンサチップ接合剤36の開口縁36aとは、センサチップ31の法線方向から見た場合に、重なるように配置される。
【0038】
センサチップ31のうち分岐流路35の開口縁35aに沿う部分の内側に、センサチップ31のダイアフラム31aが形成され、ダイアフラム31aは分岐流路35の開口面35bに対向する。本実施例では、センサチップ31の法線方向から見た場合に、分岐流路35の開口縁35aとセンサチップ接合剤36の開口縁36aとが重なるように配置されているため、ダイアフラム31aはセンサチップ接合剤36の開口縁36aに沿う部分の内側に形成される。すなわちダイアフラム31aは、センサチップ31とセンサ筐体32との接合部の内周縁36aに囲まれた内側の範囲に、形成される。
【0039】
センサチップ31の表面中央部には歪みを検知する歪みゲージ部31bが実装されている。ここで、分岐流路35及びそれに沿ったダイアフラム31aは、長手方向と短手方向とを有する。ダイアフラム31aがシステム水21からの圧力を受け変形したとき、ダイアフラム31aは長手方向と短手方向とを有するために、歪みゲージ部31bの長手方向の歪みの大きさと短手方向の歪みの大きさとの間に差が生じる。歪みゲージ部31bは長手方向と短手方向とにおけるそれぞれの歪みを検知し、その差を出力する。これは、歪みゲージ31bの温度特性を相殺するためである。
【0040】
センサチップ31の上側(センサ筐体32の側とは反対側)にはキャップ部材34が接合される。センサチップ31とキャップ部材34との接合手段としては、熱硬化型接着剤、UV付加型接着剤、低融点ガラス等がある。以下、センサチップ31とキャップ部材34とを接合する接着剤(接着部材)を、キャップ部材接合剤と呼んで説明する。
図4におけるキャップ部材接合剤37は、ダイアフラム31aの周辺に塗布されたキャップ部材接合剤37が硬化した後の状態(形状)を図示したものであり、センサチップ31とキャップ部材34との接合部(第2接合部)に相当する。
【0041】
なおキャップ部材34は、キャップ部材接合剤37を用いることなく、接着力を持たないOリングやガスケットなどの弾性体を介して、センサチップ31に押し付けられて設置されてもよい。もしくは、キャップ部材34はセンサチップ31に直接押し付けられて設置されてもよい。
【0042】
キャップ部材34におけるセンサチップ31との対向面(下面)34u側には、下面34uから上面34t側に向かって窪んだ凹部34cが設けられている。すなわちキャップ部材34は、下面34uの中央部に、上面34t側に向かって窪んだ凹部34cを有する。凹部34cは、センサチップ31との接触を避けるように設けられ、センサチップ31に対する非接触部を構成する。これによりキャップ部材34は、凹部34cの外周側に位置する下面34uが、キャップ部材接合剤37を介してセンサチップ31と対向する。本実施例では、キャップ部材34の下面34u全体がセンサチップ31に接合される。このために、キャップ部材接合剤37は凹部34cの外周側に位置する下面34uの全面に設けられ、キャップ部材接合剤37と下面34uとが同じ形状を有する。
【0043】
上述した様に、キャップ部材34の下面34uはキャップ部材接合剤37を介してセンサチップ31に接合され、下面34uに対向するセンサチップ31側の対向部位がキャップ部材34の設置面(設置部位)となる。この場合、圧力センサ15は、キャップ部材34とセンサチップ31とを接着剤(キャップ部材接合剤)37で接合した第2接合部を備え、キャップ部材34の設置部位の内周は第2接合部37の内周がセンサチップ31に接触する位置で規定される。
【0044】
凹部34cはキャップ部材34の下面34uに開口面34bを形成し、キャップ部材34の下面34uに開口面34bの外縁(開口縁)34aが形成される。開口面34bの外縁(開口縁)34aは、下面34uの内周(内周縁)を構成する。
【0045】
キャップ部材34とセンサチップ31との接合部であるキャップ部材接合剤37は、開口面34bに対向する部位に開口面37bを有し、開口面37bの外縁(開口縁)37aが形成される。キャップ部材接合剤37の開口縁37aは、キャップ部材接合剤37の内周(内周縁)を構成する。
【0046】
なお本実施例では、凹部34cの開口面34bとキャップ部材接合剤37の開口面37bとは、センサチップ31の法線方向から見た場合に、重なるように配置される。すなわち、凹部34cの開口縁34aとキャップ部材接合剤37の開口縁37aとは、センサチップ31の法線方向から見た場合に、重なるように配置される。
【0047】
キャップ部材34における上面(センサチップ31の側とは反対側の端面)34tの中央部には、圧縮コイルバネ60から受ける押圧力が加えられる。この押圧力はキャップ部材接合剤37およびセンサチップ接合剤36を圧縮する方向に作用している。この場合センサチップ31は、キャップ部材34の下面34uと対向する部位(範囲)に、圧縮コイルバネ60からの押圧力を受ける。このため凹部34cの内周(下面34uの内周)は、圧縮コイルバネ60からの押圧力がセンサチップ31に加えられる範囲の内周縁を規定する。
【0048】
図4において、センサチップ31の法線方向に垂直な平面を仮想し、この平面を仮想平面と呼ぶ。また
図4では、この仮想平面はセンサチップ31の上面31tに平行で、且つ上面31tを含む平面として仮想されるものとする。
【0049】
センサチップ接合剤36の内周36aを法線方向に仮想平面31tに投影すると、内周36aの投影線(内周投影線)は点線50になる。キャップ部材接合剤37の内周37aを法線方向に仮想平面31tに投影すると、内周37aの投影線(内周投影線)は破線51になる。この場合、内周投影線51は、キャップ部材34を介して圧縮コイルバネ60(押圧部材)による押圧力を受ける、センサチップ31におけるキャップ部材34の設置部位の内周(内周縁)に一致する。
【0050】
本実施例の特徴は、キャップ部材接合剤37の内周投影線51がセンサチップ接合剤36の内周投影線50よりも内側に位置するような構成としたことである。すなわち、センサチップ31におけるキャップ部材34の設置部位の内周51は、センサ筐体32とセンサチップ31との接合部36の内周36aに対して、ダイアフラム部31aの中央側に位置するように配置される。
【0051】
具体的に説明すると、本実施例の圧力センサ15は、
第1流路33および第1流路33から分岐した第2流路35が形成されたセンサ筐体32と、
第2流路35を塞ぐように設けられたダイアフラム部31aを含みセンサ筐体32に接合されるセンサチップ31と、
センサ筐体32の側とは反対側からダイアフラム部31aを覆うようにセンサチップ31の上に設置されたキャップ部材34と、
キャップ部材34をセンサチップ31に向かって押圧する押圧部材60と、
を備え、
センサチップ31におけるキャップ部材34の設置部位の内周51は、センサ筐体32とセンサチップ31との接合部36の内周に対して、ダイアフラム部31aの中央側に位置するように配置される。
【0052】
この場合、第1接合部36、センサチップ31および第2接合部37は、センサ筐体32の側から第1接合部36、センサチップ31および第2接合部37の順に配置され、センサチップ31の法線方向投影面において、第2接合部37の内周37aの投影線51は、第1接合部36の内周36aの投影線50に対して、ダイアフラム部31aの中央側に位置するように配置される。
【0053】
本発明の特徴である上記の構成の効果を、
図5および
図6を用いて説明する。
【0054】
図5は、本発明との比較例である圧力センサの断面図である。
図5では、キャップ部材接合剤37の内周投影線51が、センサチップ接合剤36の内周投影線50よりも外側に位置する、本発明との比較例における圧力センサ15’において、センサチップ31がシステム水21からの圧力pを受けて変形した状態を示す。なお
図5の断面は、長手方向およびセンサチップ31の法線方向に沿い、キャップ部材34の中央を通る断面である。以降、単に断面図と表記したとき、その断面は
図5と同様に、長手方向およびセンサチップ31の法線方向に沿い、キャップ部材34の中央を通る断面とする。
【0055】
キャップ部材34は、圧縮コイルバネ60の押圧力により、キャップ部材接合剤37とセンサチップ31とを介して、センサチップ接合剤36を法線方向に圧縮する。しかし、キャップ部材接合剤37の内周投影線51がセンサチップ接合剤36の内周投影線50よりも外側に位置するために、センサチップ接合剤36の内周(内側端部)36aよりも外側のみが圧縮される。
【0056】
この状態においてシステム水から圧力pを受けてセンサチップ31が変形した場合、センサチップ接合剤36の内周36aにはセンサ筐体32とセンサチップ31との接合面(接合部)を引き剥がす方向の力が生じるため、過大圧力や繰り返し圧力によるセンサ筐体32とセンサチップ31との剥離が生じる懸念がある。
【0057】
図6は、実施例1に係る圧力センサ15の断面図である。
図6では、キャップ部材接合剤37の内周投影線51がセンサチップ接合剤36の内周投影線50よりも内側に位置する本発明の圧力センサ15において、センサチップ31がシステム水21からの圧力pを受けて変形した状態を示す。
【0058】
図5と同様に、キャップ部材34は、圧縮コイルバネ60の押圧力により、キャップ接合剤37とセンサチップ31とを介して、センサチップ接合剤36を法線方向に圧縮する。ここで、キャップ部材接合剤37の内周投影線51がセンサチップ接合剤36の内周投影線50よりも内側に位置するために、センサチップ接合剤36の内周(内側端部)36aを含む範囲が圧縮される。
【0059】
この状態においてシステム水から圧力pを受けてセンサチップ31が変形しても、圧縮コイルバネ60の押圧によるセンサチップ接合剤36の圧縮力が荷重pよりも大きければ、センサチップ接合剤36の内周36aでは圧縮状態が保たれる。すなわちセンサ筐体32とセンサチップ31との接合面(接合部)を引き剥がす方向の力が生じないため、過大圧力や繰り返し圧力によるセンサ筐体32とセンサチップ31との剥離は生じない。従って、センサ筐体32とセンサチップ31との剥離に起因する感度低下や水漏れを防止することができる。
【0060】
必要な押圧力は、例えば応力解析によって求めることができる。押圧力の位置はキャップ部材34の中央部に限らず任意に定めて良いが、
図5に示すようにキャップ部材34の中央部を押圧することが望ましい。キャップ部材34のたわみにより、キャップ部材接合剤37に生じる圧縮力が内側ほど大きくなり、センサチップ接合剤36の内周36aを効率的に圧縮できるためである。
【0061】
次に、
図7を用いて、実施例1の変更例を説明する。
図7は、実施例1の変更例に係る圧力センサ15のセンサチップ31周辺の分解斜視図である。
【0062】
本変更例では、実施例1のキャップ部材接合剤37の構成を一部変更している。以下、本変更例のキャップ部材接合剤37における、実施例1のキャップ部材接合剤と異なる部分(相違点)について説明する。以下で説明する相違点以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と共通する構成には実施例1と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例1と同様な構成は実施例1と同様な作用効果を奏する。
【0063】
キャップ部材接合剤37には、隙間(離間部)37cが複数個所設けられている。離間部37cはキャップ部材接合剤37を複数の部分に分断する分断部を構成する。すなわち本実施例の圧力センサ15は、キャップ部材接合剤(第2接合部)37に第2接合部37を複数の部分に分断する分断部37cを有する。
【0064】
この場合、キャップ部材接合剤37の内周投影線51は離間部37cに相当する部分が途切れた線となる。離間部37cの直下には圧縮力が生じないが、それ以外の部分には圧縮力が生じるため、実施例1の効果は同様に達成される。
【0065】
実施例1およびその変更例では、押圧手段(押圧部材)として圧縮コイルバネ60を用いた例を示したが、ねじりコイルバネ、板バネ、ゴム等の弾性体を押圧手段として用いても同様に目的は達成される。また、押圧手段は複数個用いてもよい。また、上述のように、キャップ部材34は接着力を持たないOリングやガスケットなどの弾性体を介して、もしくは直接、センサチップ31に押し付けられて、設置されていてもよい。その場合は、キャップ部材接合剤37による接合部(接合面)を、センサチップ31に対するキャップ部材34の設置面(設置部位)、すなわちキャップ部材34とセンサチップ31との接触面として解釈し、この設置面(設置部位)或いは接触面を、実施例1およびその変更例のキャップ部材接合剤37による接合部と同様に構成することにより、本発明の目的は達成される。
【0066】
[実施例2]
本発明の第2実施例を、
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第2実施例(実施例2)に係る圧力センサ15の断面図である。
図8では、センサチップ31周辺の断面を示す。以下、実施例1と異なる部分(相違点)について説明する。以下で説明する相違点以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と共通する構成には実施例1と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例1と同様な構成は実施例1と同様な作用効果を奏する。
【0067】
本実施例では、キャップ部材34の中央部を押圧する押圧手段(押圧部材)として、2個の圧縮コイルバネ60と中間部材61とを用いている。すなわち本実施例では、2個の圧縮コイルバネ60と中間部材61とを用いた点が、実施例1と異なる。
【0068】
本実施例の圧力センサ15では、2個の圧縮コイルバネ60がカバー40と中間部材61との間に圧縮状態で設置され、中間部材61に形成された突起部61aでキャップ部材34の中央(中央部)を押圧している。突起部61aは、中間部材61の下面(キャップ部材34に対向する面)に、下方に向けて突出するように設けられている。
【0069】
すなわち本実施例の圧力センサ15は、キャップ部材34の押圧位置に接触させて配置された中間部材61と、センサ筐体32に固定されセンサチップ31、キャップ部材34および押圧部材60を覆うカバー40と、を備え、カバー40と中間部材61との間に自然長より圧縮された状態で設置した単一または複数の圧縮コイルバネ(弾性体)60を押圧部材として用いる。
【0070】
本実施例のカバー40にはガイド穴40bが形成されており、中間部材61はカバー40に形成されたガイド穴40b内に配置されている。これは、圧縮コイルバネ60の圧縮・伸張時に中間部材61が傾くのを防止し、組立性を向上するためである。この構成により、複数の圧縮コイルバネ60を用いた場合でもキャップ部材34の中央部を押圧することができるため、バネの選定が容易になる等、設計における制約の緩和が可能になる。
【0071】
なお、圧縮コイルバネ60の代わりにねじりコイルバネ、板バネ、ゴム等の弾性体を用いてもよい。また、弾性体(バネ)は何個用いてもよい。また、中間部材61に突起部61aを設ける代わりに、キャップ部材34の上面に、上方に向けて突出する突起部を設けてもよい。
【0072】
[実施例3]
本発明の第3実施例を、
図9を用いて説明する。
【0073】
図9は、本発明の第3実施例(実施例3)に係る圧力センサの断面図である。
図9では、センサチップ31周辺の断面を示す。以下、実施例1と異なる部分(相違点)について説明する。以下で説明する相違点以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と共通する構成には実施例1と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例1と同様な構成は実施例1と同様な作用効果を奏する。
【0074】
本実施例では、キャップ部材34の中央部を押圧する押圧手段(押圧部材)として、カバー40の一部を折り曲げた板バネ40cを用いている。すなわち本実施例では、圧縮コイルバネ60をカバー40に形成した板バネ40cに替えた点が、実施例1および実施例2と異なる。
【0075】
本実施例の圧力センサ15では、板バネ40cは圧縮状態で設置されており、キャップ部材34の中央部を押圧している。
【0076】
すなわち本実施例の圧力センサ15は、センサ筐体32に固定され、センサチップ31およびキャップ部材34を覆うカバー40を備え、カバー40と一体に形成された板バネ(バネ部)40cを押圧部材として用いる。
【0077】
このように、押圧手段としてカバー40と一体になった板バネ40cを押圧手段として用いることにより、部品点数の削減や組立性の簡易化が可能になり、安価で組立性の良い圧力センサを提供できる。
【0078】
なお、板バネ40cの形状は
図9に示した構造に限定されず、様々な形状が考えられる。また、カバー40の材料としてゴムを用い、一部を圧縮するような構造としても、圧縮コイルバネ60や板バネ40cと同様に、目的は達成される。
【0079】
また本実施例のキャップ部材接合剤37として、実施例1の変更例におけるキャップ部材接合剤37を用いることもできる。
【0080】
[実施例4]
本発明の第4の実施例を、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の第4実施例(実施例4)に係る圧力センサの断面図である。
図10では、センサチップ31周辺の断面を示す。以下、実施例1と異なる部分(相違点)について説明する。以下で説明する相違点以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と共通する構成には実施例1と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例1と同様な構成は実施例1と同様な作用効果を奏する。
【0081】
本実施例では、キャップ部材34の中央部を押圧する押圧手段(押圧部材)として、2個の引張コイルバネ62と中間部材61とを用いている点が、実施例1と異なる。言い換えれば、本実施例は、実施例2の2個の圧縮コイルバネ60を2個の引張コイルバネ62に替えた構造を有する。
【0082】
すなわち本実施例の圧力センサ15は、キャップ部材34の押圧位置に接触させて配置された中間部材61を備え、センサ筐体32と中間部材61との間に自然長より伸張された状態で設置した単一または複数の引張コイルバネ(弾性体)62を押圧部材として用いる。
【0083】
本実施例の圧力センサ15では、2個の引張コイルバネ62はセンサ筐体32に形成されたバネ保持部32bと中間部材61との間に引張状態で設置され、中間部材61に形成された突起部61aでキャップ部材34の中央を押圧している。バネ保持部32bは、センサ筐体32の表面から掘り込んで形成されている。これは、引張コイルバネ62の引張代を大きく取る効果がある。
【0084】
本実施例では、上述した構成により、中間部材61の上部にバネを配置する必要がないため、部品の配置効率が良くなり、小型・薄型な圧力センサを提供することができる。なお、引張コイルバネ62の代わりにねじりコイルバネ、板バネ、ゴム等の弾性体を用いてもよい。また、弾性体(バネ)は何個用いてもよい。また、中間部材61に突起部を設ける代わりに、キャップ部材34に突起部を設けてもよい。
【0085】
また本実施例のキャップ部材接合剤37として、実施例1の変更例におけるキャップ部材接合剤37を用いることもできる。
【0086】
[実施例5]
本発明の第5実施例を、
図11を用いて説明する。
図11は、本発明の第5実施例(実施例5)に係る圧力センサ15の断面図である。
図11では、センサチップ31周辺の断面を示す。以下、実施例2と異なる部分(相違点)について説明する。以下で説明する相違点以外の構成は実施例2と同様であり、実施例2と共通する構成には実施例2と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例2と同様な構成は実施例2と同様な作用効果を奏する。
【0087】
本実施例では、キャップ部材34の中央部を押圧する押圧手段(押圧部材)として、2個の圧縮コイルバネ60と中間部材63と、を用いている。中間部材63の長手方向長さは、センサチップ31の長手方向長さよりも長く構成されている。さらに、中間部材63は、2個の圧縮コイルバネ60の一端をガイドするガイド穴40aに対向して、圧縮コイルバネの他端をガイドするガイド穴63bを有する。すなわち本実施例では、中間部材63を用いた点が、実施例2と異なる。
【0088】
本実施例の圧力センサ15では、2個の圧縮コイルバネ60がカバー40と中間部材63との間に圧縮状態で設置され、中間部材63に形成された突起部63aでキャップ部材34の中央(中央部)を押圧している。突起部63aは、中間部材63の下面(キャップ部材34に対向する面)に、下方に向けて突出するように設けられている。
【0089】
本実施例では、2個の圧縮コイルバネ60がカバー40と中間部材63との間に圧縮状態で設置するための手段として、ねじ70でカバー40とセンサ筐体32を連結することを示している。なお、コイルバネ60を圧縮状態で設置するための手段は、前述した構成に限定されるものではなく、カバー40とセンサ筐体32の接触端面において接着したり、カバー40とセンサ筐体32とが当接するように他の部材を用いたりしても良い。
【0090】
本実施例において、中間部材63がセンサチップ31の長手方向長さより長く構成されていることにより、センサチップ31が小型化しても、2個の圧縮コイルバネを配置することができ、バネの選定や配置の設計を容易にすることができる。
【0091】
本実施例において、中間部材63にガイド穴63bを有することにより、中間部材63の上面において、圧縮コイルバネ60を位置決めすることができるため、バネの倒れの発生を抑止することができる。さらに、カバー40と中間部材63との位置がずれることを抑止することができるため、突起部63aがキャップ部材34の中央部を押圧することができる。
【0092】
本発明の第5の実施例の組み付け手順(組立方法)を、
図12Aから
図12Gを用いて説明する。
図12Aから
図12Gは、押圧手段(押圧部材)を組み付ける手順を説明するための、短手方向の断面図である。
【0093】
センサ筐体32に設置された分岐流路35の終端を塞ぐように、センサチップ接合剤36によりセンサチップ31がセンサ筐体32に接合されている。さらにセンサチップ31の上面に、センサチップ31を保護するキャップ部材40がキャップ部材接合剤37により、センサチップ31に接合されている(この状態をセンサチップ接合済み筐体、と呼ぶ)。
【0094】
センサチップ接合済み筐体のセンサ筐体32の上面に、押圧手段(押圧部材)を組み付けるために、組み付け部材71を当接させる(
図12A)。組み付け部材71は、後述するが、種々の部材を組み付けるために、長手方向に複数の切り欠きを有している。例えば、
図12Aでは、チップセンサ31に干渉しないように長手方向に切り欠きを有する。
【0095】
次に、中間部材63を組み付け部材71の上面に、且つキャップ部材34の略中央部に位置するように配置する(
図12B)。中間部材63の突起部下端は、前述の切り欠き部にあるため、組み付け部材71の上面より下にある。また、組み付け部材71の厚さは、キャップ部材34と中間部材63の突起部が当接せず、すきまができるように調整されている。
【0096】
次に、圧縮コイルバネ60を中間部材63のガイド穴63bに配置する(
図12C)。
【0097】
次に、カバー40を、圧縮コイルバネ60が、カバー40に設けられたガイド穴40aに嵌装されるように、また、中間部材63がガイド穴40bに嵌装されるように、配置する(
図12D)。
【0098】
次に、ねじ70を図示していないカバー40のねじ通し穴に通し、センサ筐体32のねじ穴(図示せず)に仮止めする(
図12E)。この状態で、中間部材63の突起部は、カバー40の略中央に配置される。さらに、組み付け部材71を矢印Aの方向に引き抜く。この時、圧縮コイルバネ60は、圧縮されていないために容易に組み付け部材71を引き抜くことが可能である。さらに、中間部材63は、カバー40のガイド穴40b内に配置される。
【0099】
次に、組み付け部材71を取り除くことで、中間部材63の突起部は、キャップ部材34と当接し、さらに、ねじ70をねじ込むことで、圧縮コイルバネが圧縮状態になり、キャップ部材34を押圧する(
図12F)。さらに、ねじ70をねじ込むことで、カバー40の下端とセンサ筐体32の上面を当接させて、所望の押圧力を付勢する(
図12G)。
【0100】
前述の本発明の第5の実施例の組み付け手順の他の一例を以下に示す。
中間部材63、圧縮コイルバネ60、カバー40が磁性を有する材料から成る場合、中間部材63、圧縮コイルバネ60、カバー40を下から順にあらかじめ積層する。カバー40の上面に磁石を接触させると、磁力により、中間部材63、圧縮コイルバネ60、カバー40が相互に付着して一体となる(この状態を一体化した押圧手段、と呼ぶ)。一体化した押圧手段をセンサチップ接合済み筐体の直上に配置し、ねじ(例えば、樹脂やセラミック、非磁性のステンレス)をカバー40に配置してセンサチップ接合済みの筐体に仮止めする。その後、磁石をカバー40上面から取り外して、ねじを本締めする。
【0101】
上述の本発明の第5の実施例の組み付け手順によれば、各部材を順番に積層していくのみで良い。また、各部材を順番に積層していく過程で、キャップ部材34の中央に中間部材63の突起部を配置することができる。さらに、組み付け時に押圧手段(押圧部材)をキャップ部材34に誤って当接させて破損させるリスクを軽減できる。さらに、中間部材63を配置するときに、センサチップ31とプリント基板45とを接続するボンディングワイヤ46に中間部材63が接触し、ボンディングワイヤ46を切断するリスクを軽減できる。
【0102】
なお、上述した第5の実施例の組み付け手順(組立方法)は、圧縮コイルバネ60の組み付け手順は異なるものの、その他の手順は第4実施例の圧力センサ15にも適用可能である。
【0103】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…分注装置、2…ノズル、4…シリンジポンプ、5…電磁弁、6…ギアポンプ、7…タンク、8…配管、15…圧力センサ、31…センサチップ、31a…ダイアフラム部、32…センサ筐体、33…流路(第1流路)、34…キャップ部材、35…分岐流路(第2流路)、36…センサチップ接合剤(第1接合部)、37…キャップ部材接合剤(第2接合部)、40…カバー、40c…板バネ(バネ部、押圧部材)、50…センサチップ接合剤(第1接合部)36の内周投影線、51…キャップ部材接合剤37の内周投影線(センサチップ31におけるキャップ部材34の設置部位の内周)、60…圧縮コイルバネ(押圧部材)、61…中間部材、62…引張コイルばね(弾性体、押圧部材)、63…中間部材、70…ねじ、71…組み付け部材。