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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241125BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/00 335
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021077673
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171185
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-093017(JP,A)
【文献】特開2021-012294(JP,A)
【文献】特開2017-156612(JP,A)
【文献】特開2002-162857(JP,A)
【文献】特開平11-282300(JP,A)
【文献】特開2002-244472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
H05B 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と抵抗発熱体とを有する面状の加熱体と、
前記加熱体に接触する加熱部材と、
前記加熱部材を加圧する加圧回転部材と、
一または複数の除電部材とを備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は導電層を有し、
前記加圧回転部材はその外面が導電材により形成され、
前記導電層と前記加圧回転部材の前記外面とにそれぞれ、前記除電部材が接触し、
前記導電層に接触する前記除電部材が第1抵抗を介して接地され、前記加圧回転部材の前記外面に接触する前記除電部材が第2抵抗を介して接地され、
前記第2抵抗の抵抗値が前記第1抵抗の抵抗値よりも大きいことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
基材と抵抗発熱体とを有する面状の加熱体と、
前記加熱体に接触する加熱部材と、
前記加熱部材を加圧する加圧回転部材と、
一または複数の除電部材とを備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は導電層を有し、
前記加圧回転部材はその外面が導電材により形成され、
前記導電層と前記加圧回転部材の前記外面とにそれぞれ、前記除電部材が接触し、
単一の前記除電部材が前記導電層および前記加圧回転部材の前記外面に接触することを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
基材と抵抗発熱体とを有する面状の加熱体と、
前記加熱体に接触する加熱部材と、
前記加熱部材を加圧する加圧回転部材と、
一または複数の除電部材とを備えた加熱装置であって、
前記加熱部材は導電層を有し、
前記加圧回転部材はその外面が導電材により形成され、
前記導電層と前記加圧回転部材の前記外面とにそれぞれ、前記除電部材が接触し、
前記加熱装置は、記録媒体上の画像を熱により定着させる定着装置であり、
前記加圧回転部材の前記外面に接触する前記除電部材が第2抵抗を介して接地され、
前記加熱部材および前記加圧回転部材の間に形成される定着ニップと前記定着ニップの上流側に設けられた転写部との間の記録媒体搬送方向の搬送距離をL〔mm〕、前記第2抵抗の抵抗値をR2〔Ω〕とし、前記記録媒体の搬送方向長さ1mmあたりの抵抗値を1×10 〔Ω/mm〕としたときに、抵抗値R2〔Ω〕を以下の〔数1〕式の範囲で設定することを特徴とする加熱装置。
【数1】
【請求項4】
前記除電部材が抵抗を介して接地される請求項記載の加熱装置。
【請求項5】
前記導電層に接触する前記除電部材と、前記加圧回転部材の前記外面に接触する前記除電部材とが異なる抵抗を介して接地される請求項記載の加熱装置。
【請求項6】
前記導電層に接触する前記除電部材が第1抵抗を介して接地され、前記加圧回転部材の前記外面に接触する前記除電部材が第2抵抗を介して接地されるものと すると、
前記第2抵抗の抵抗値が前記第1抵抗の抵抗値よりも大きい請求項記載の加熱装置。
【請求項7】
単一の前記除電部材が前記導電層および前記加圧回転部材の前記外面に接触する請求項記載の加熱装置。
【請求項8】
記録媒体上の画像を熱により定着させる定着装置である請求項1または2いずれか記載の加熱装置。
【請求項9】
前記除電部材は導電性のブラシである請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加圧回転部材の前記外面の表面抵抗率が1×10[Ω/□]以下である請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記加熱部材は弾性層を有する請求項1から10いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記加熱装置は記録媒体上の画像を熱により定着させる定着装置であり、
請求項1から11いずれか1項に記載の加熱装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置としての定着装置では、定着ベルト(加熱部材)と加圧ローラ(加圧回転部材)との間に形成された定着ニップを用紙が通過することにより、用紙上のトナーが加熱および加圧される。
【0003】
定着ベルトの内側には、定着ベルトを加熱する面状のヒータ(加熱体)が設けられる。このヒータは、基材上に形成された抵抗発熱体にAC電圧を印加されることにより発熱し、ヒータに設けられた絶縁層などを介して定着ベルトの内面に接触し、定着ベルトを加熱する。
【0004】
ところで、このような定着装置を備えた画像形成装置においては、いくつかの電気的な問題が存在する。
【0005】
例えば、帯電した用紙が定着ニップを通過したり、定着ベルトと加圧ローラとの回転による摩擦帯電により、定着ベルトと加圧ローラとの表層が帯電する。このような帯電を抑制しないと、定着過程において用紙上のトナー画像が静電オフセットし、異常画像の原因となる。特に、低湿環境下や、コート剤でその表面が低抵抗となった用紙への画像形成時に、上記の問題が顕著になる。
【0006】
また、ヒータにAC電圧を印加する構成では、ヒータに設けられた絶縁層や定着ベルトのゴム層がコンデンサと等価になり、定着ベルトを介して定着ニップに交流電圧が印加される。そして、用紙が転写ニップと定着ニップとの両方に接触している状態では、この交流電圧が、用紙を介して転写ニップに伝播する。これにより、交流電圧が転写電界に影響を与えて、転写画像に周期的な濃度ムラが生じる、いわゆるバンディング画像の原因となってしまう。特に、高湿環境下や用紙に薄紙を用いた場合等、用紙が低抵抗の場合には、上記の問題が顕著になる。
【0007】
例えば特許文献1(特開2015-84084号公報)では、定着ニップの用紙搬送方向上流側に定着入口ガイドが配置される。定着入口ガイドには、抵抗体とコンデンサとが並列に接続されており、定着入口ガイドがこれらの抵抗体とコンデンサを介してそれぞれ接地されている。これにより、定着ベルトから紙を介して転写ニップ側へ流れるAC電圧を定着入口ガイドの側へ流すことができ、AC電圧の転写側への伝播によるバンディング画像の発生を防止できる。
【0008】
しかし、特許文献1の構成では、上記の電気的な問題をすべて解決することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
加熱装置やその周辺に生じる電気的な問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、基材と抵抗発熱体とを有する面状の加熱体と、加熱部材と、前記加熱部材を加圧する加圧回転部材と、一または複数の除電部材とを備えた加熱装置であって、前記加熱部材は導電層を有し、前記加圧回転部材はその外面が導電材により形成され、前記導電層と前記加圧回転部材の前記外面とにそれぞれ、前記除電部材が接触し、前記導電層に接触する前記除電部材が第1抵抗を介して接地され、前記加圧回転部材の前記外面に接触する前記除電部材が第2抵抗を介して接地され、前記第2抵抗の抵抗値が前記第1抵抗の抵抗値よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱装置によれば、加熱装置やその周辺に生じる電気的な問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】ヒータを示す図で、(a)図が平面図、(b)図が(a)図のA-A断面図である。
図4】ヒータ及びヒータホルダにコネクタを装着した状態を示す図である。
図5】ヒータへの電力供給を示す図である。
図6】本実施形態と異なる定着装置において、定着ニップから転写ニップへの交流電圧の伝搬を示す図である。
図7】定着ベルトおよび加圧ローラに接触する除電部材を示す斜視図である。
図8】定着ベルトおよび加圧ローラに接触する除電部材を示す概略図である。
図9】異なる除電部材の形態を示す斜視図である。
図10】除電部材を保持する保持部材を設けた構成の定着装置の斜視図である。
図11】均熱板を有する定着装置の側面断面図である。
図12】モノクロの画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下の説明では、加熱装置の一例として、トナー画像を用紙表面に定着させる定着装置を説明する。
【0014】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備える 。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0015】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、給紙装置7と、転写装置8と、加熱装置としての定着装置9と、排紙装置10とを備える。露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は、記録媒体としての用紙Pを用紙搬送路Bに供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置9は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置10は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0016】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13と、対向ローラ14とを有する。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架される。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して、対向ローラ14に接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には、ニップ部あるいは転写部としての二次転写ニップN1が形成されている。対向ローラ14は、中間転写ベルト11を張架するローラである。
【0017】
また、用紙搬送路Bにおける給紙装置7から二次転写ニップN1に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0018】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0019】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0020】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0021】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0022】
続いて、定着装置の構成について、より詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいは定着部材としての無端状の定着ベルト20と、加圧回転部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、加熱体としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知手段としてのサーミスタ25等を備えている。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に当接して、ニップ部としての定着ニップN2を形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23をその背面側から支持する。定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、およびステー24は、図2の紙面に垂直な方向に延在しており、以下この方向を各部材の長手方向、あるいは単に長手方向とも呼ぶ。この長手方向は加圧ローラ21の回転軸方向でもあり、定着装置9に通紙される用紙Pの幅方向でもある。
【0024】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが50~70μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、厚みが7~20μmの離型層が形成される。また、基体と離型層との間には、厚さ100~300μmのゴム等からなる弾性層が設けられる。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面にポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。定着ベルト20は、ヒータ22に加熱される被加熱部材であり、定着ニップN2において用紙(上のトナー)を加熱する加熱部材である。
【0025】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmである。加圧ローラ21は中実の鉄製芯金21aと、弾性層21bと、離型層21cとで構成されている。弾性層21bは芯金21aの表面に形成される。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5~4.0mmである。離型層21cは弾性層21bの外側に形成される。離型層21cは、加圧ローラ21表面の離型性を高めるために、厚みが例えば30~50μm程度のフッ素樹脂層とするのが望ましい。
【0026】
加圧ローラ21は、付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップN2が形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されている。加圧ローラ21が図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0027】
ヒータ22は、長手方向にわたって設けられた面状の加熱体である。ヒータ22は、基材30上に設けられた抵抗発熱体40の発熱により定着ベルト20の内面を加熱する。ヒータ22の詳細な構成については後述する。
【0028】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によって、ヒータホルダ23と、ヒータホルダ23に保持されるヒータ22とが支持される。これにより、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップN2を安定して形成する。
【0029】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱することができる。
【0030】
またヒータホルダ23は、その短手方向に部分的に設けられ、ヒータ22側へ突出する突起部23aを有する。ヒータホルダ23は突起部23aによりヒータ22に当接する。突起部23aを設けることにより、ヒータホルダ23のヒータ22に対する接触面積を少なくし、ヒータ22からヒータホルダ23へ伝わる熱量を低減できる。ただし、ヒータホルダ23に突起部23aを設けず、あえて短手方向の全面でヒータ22に接触させてもよい。これにより、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱量を増やし、ヒータ22や定着ベルト20の温度上昇を抑制できる。
【0031】
サーミスタ25は、基材30の裏面に接触してその温度を検知する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9が印刷動作を開始すると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。また、ヒータ22の抵抗発熱体40に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN2)に搬送される。これにより、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
【0033】
次に、ヒータ22のより詳細な構成について、図3を用いて説明する。図3(a)はヒータ22の平面図、図3(b)は図3(a)のA-A断面図である。
【0034】
ヒータ22は、ヒータホルダ23側(図2の左側)から順に、第1絶縁保護層31と、第1絶縁ガラス層32と、基材30と、第2絶縁保護層33と、導体層34と、第2絶縁ガラス層35とを備える。
【0035】
基材30は長手方向に延びる板状の部材である。本実施形態では、基材30の長手方向の幅が270mm、短手方向の幅が8mm、厚さが0.3mmに設定される。なお、ヒータ22の長手方向は図3(a)の両矢印X方向、短手方向は両矢印Y方向である。ヒータ22の短手方向は、基材30の抵抗発熱体40等が設けられた面に沿う方向で、長手方向に交差する方向(本実施形態では直交する方向)である。
【0036】
基材30は、本実施形態ではステンレスにより形成される。この他、基材30を、鉄系合金、アルミニウム合金、銅合金により形成できる。また、基材30を、アルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックにより形成することもできる。
【0037】
基材30上に、第2絶縁保護層33を介して導体層34が形成される。これにより、導体層34と基材30との絶縁性が確保される。導体層34には、抵抗発熱体40、電極部41(41a、41b)、給電線42が設けられる。
【0038】
抵抗発熱体40は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成できる。本実施形態では、抵抗発熱体40の抵抗値を常温で10Ωとしている。抵抗発熱体40の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。給電線42や電極部41の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。給電線42は、抵抗発熱体40よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。
【0039】
第1絶縁保護層31、第1絶縁ガラス層32、第2絶縁保護層33、導体層34、そして 第2絶縁ガラス層35は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。
【0040】
第2絶縁ガラス層35によって抵抗発熱体40と給電線42とを被覆し、これらを絶縁、保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。また、電極部41は第2絶縁ガラス層35によって被覆されていない。
【0041】
図4は、ヒータ22およびヒータホルダ23にコネクタ70を装着した状態を示す斜視図である。図4に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に固定された板バネのコンタクト端子72と、を有している。コンタクト端子72はヒータ22の各電極部41に接触する一対の接点部72aを有する。また、コネクタ70(コンタクト端子72)には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0042】
コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側とから一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、コンタクト端子72の各接点部72aが電極部41に対して弾性的に接触(圧接)する。これにより、コネクタ70を介して抵抗発熱体40と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続され、電源から抵抗発熱体40へ電力が供給可能な状態となる。
【0043】
図5は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体40に電力を供給するための電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部41とを電気的に接続することで構成されている。
【0045】
また、交流電源200と電極部41との間にはスイッチ210が設けられる。スイッチ210のONOFFにより抵抗発熱体40への通電の有無を切り替えできる。
【0046】
制御部220は、サーミスタ25(図2参照)の検知温度に基づいて、また通紙時には用紙への伝熱分も考慮して、抵抗発熱体40への通電を制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。本実施形態では、制御部220は画像形成装置本体に設けられるが、定着装置に設けられていてもよい。
【0047】
ところで、上記の定着装置を備えた画像形成装置においては、電気的な問題が生じて異常画像の原因となる課題がある。
【0048】
例えば、二次転写の過程で帯電した用紙Pが定着ニップN2を通過すること等が原因で、定着ベルト20と加圧ローラ21との表層が帯電する。また、定着ベルト20と加圧ローラ21との回転により両者の表面が摩擦帯電する。そして、定着ベルト20と加圧ローラ21との表層が帯電した状態で、用紙Pが定着ニップN2を通過することで、用紙P上のトナー画像が静電オフセットし、異常画像の原因となる。特に、低湿環境下や、コート剤でその表面が高抵抗となった用紙への画像形成時に、上記の問題が顕著になる。
【0049】
また、ヒータ22にAC電圧を印加する本実施形態の定着装置9では、ヒータ22に設けられた絶縁層や定着ベルトのゴム層がコンデンサと等価になる。従って、ヒータ22と定着ベルト20とが物理的に接触する構成では、定着ベルト20を介して定着ニップN2に交流電圧が印加される。そして図6に示すように、用紙Pが転写ニップN1と定着ニップN2との両方に接触している状態では、この交流電圧が用紙Pを介して転写ニップN1に伝播する(図6の矢印方向参照)。この交流電圧が転写電界に影響を与えることで、転写画像に周期的な濃度ムラが生じる、いわゆるバンディング画像の原因となってしまう。特に、高湿環境下や用紙Pに薄紙を用いた場合等、用紙Pが低抵抗の場合には、上記の問題が顕著になる。また、AC電源が220-240〔V〕の地域で上記の問題が顕著になる。このバンディング画像の問題は、転写ニップN1(の中央位置)と定着ニップN2(の中央位置)との用紙搬送距離Lよりも搬送長さの大きい用紙Pを通紙した場合に生じる。なお、便宜上、図6では転写ニップN1と定着ニップN2とが一直線上に配置される場合を示したが、これに限るものではなく、経路が途中で曲がっていてもよい。この場合、両ニップの間で用紙が搬送される距離の合計を搬送距離Lとする。また、図6は後述する本実施形態の除電部材が設けられていない構成の定着装置を示している。二次転写ローラ13には二次転写電源230が接続されている。
【0050】
次に、上記の電気的な問題に対する本実施形態の定着装置の構成について説明する。
【0051】
図6に示すように、定着ベルト20は、その内側から、導電層としての基体20aと、弾性層20bと、離型層20cとを有する。基体20aの内面が定着ベルト20の内周面を構成する。離型層20cの外面は定着ベルト20の外周面を構成する。本実施形態の離型層20cは、耐久性を高めて離型性を確保する観点から、PFAにより形成された非導電層である。その他、離型層20cとしてPTFE等のフッ素系樹脂を用いることができる。
【0052】
加圧ローラ21の離型層21cは、PFAにカーボン等の導電材フィラーを付与して形成された導電層である。離型層21cの外面は加圧ローラ21の外周面を構成する。加圧ローラ21の外周面は、その表面抵抗率が1×10[Ω/□]以下に設定される。表面抵抗率の計測は、高抵抗抵抗率計(商品名:Hiresta IP[MCP-HT450] 、三菱化学アナリテック製)を用い、下記条件で計測した。
使用プローブ:Type HA(2ピンタイプ:ピッチ20mm)
測定モード:ρs
測定時間:10sec
印可電圧:250V
測定箇所:円周方向4か所(90°間隔)、軸方向3か所(中央、両端部より20mm内側)の計12か所
表面抵抗率:上記12か所の平均値
【0053】
図7に示すように、定着ベルト20の長手方向一端側には露出部20dが設けられる。露出部20dは、定着ベルト20において、弾性層20bおよび離型層20cが設けられておらず、導体層である基体20aが外側へ露出した部分である。露出部20dは長手方向の通紙領域外に設けられ、本実施形態では定着ベルト20の一端から5mmの範囲で設けられる。
【0054】
定着ベルト20の露出部20dに、除電部材としての第1除電ブラシ26が接触する。また、加圧ローラ21の長手方向一端側で通紙領域外に、除電部材としての第2除電ブラシ27が接触する。本実施形態では、第1除電ブラシ26および第2除電ブラシ27はステンレスにより構成される。
【0055】
第1除電ブラシ26は第1抵抗45を介して接地される。第2除電ブラシ27は第2抵抗46を介して接地される。第1抵抗45はその抵抗値が3×10〔Ω〕以下に設定される。また第2抵抗46は1.1×10~160×10〔Ω〕の範囲で設定される。
【0056】
本実施形態では、定着ベルト20と加圧ローラ21との表層に帯電した電荷が、加圧ローラ21の表層を通じて、第2除電ブラシ27により除電される。これにより、定着ベルト20および加圧ローラ21の表層への帯電を抑制し、定着過程における用紙P上のトナー画像の静電オフセットを防止できる。
【0057】
ところで、上記のように加圧ローラ21の表層に第2除電ブラシ27を接触させる構成では、用紙Pが転写ニップN1と定着ニップN2との両方に接触している状態(図6参照)で、二次転写ローラ13から、用紙P、加圧ローラ21、第2除電ブラシ27を介して、接地側へ二次転写電流が漏れてしまう場合がある。これにより、二次転写に必要な電界が得られず、二次転写不良を生じてしまう。特に相対湿度が高い環境下では、用紙Pの抵抗値が低下してこのような問題が顕著になる。
【0058】
これに対して本実施形態では、第2除電ブラシ27を、第2抵抗46を介して接地することにより、第2除電ブラシ27側へ流れる電流を抑制し、上記の二次転写電流の漏れを抑制している。
【0059】
第2抵抗46の抵抗値は、その値が大きいほど二次転写電流の漏れを抑制できる。しかし一方で、第2抵抗46の抵抗値が大きくなるほど、定着ベルト20および加圧ローラ21の表層に対する除電能力が低下してしまう。従って、これらのバランスを考慮し、第2抵抗46に適正な抵抗値を設定することが必要である。
【0060】
そこで本実施形態では、実際に画像形成装置で使用される用紙の抵抗値を測定し、この測定結果に基づいて第2抵抗46の抵抗値を設定するものとした。具体的には、27℃80%RHの環境下で、複数の銘柄のPPC用紙を24時間以上放置した。そして、三菱化学アナリテック製Hiresta IP(MCP-HT450)の計測器を用いて、Type HAプローブで表面抵抗率を測定した。この結果、最も抵抗率の低い用紙で、100×10〔Ω/□〕(100V印可、10sec値)であった。従って、用紙の搬送方向の長さ1mm当たりの抵抗値が1×10〔Ω/mm〕となる。そして、図6の長さLが80mmであるため、紙の抵抗値が80×10〔Ω〕となる。
【0061】
そして本実施形態では、上記のバランスを考慮して、紙の抵抗値の0.5倍~2倍の範囲で第2抵抗46の抵抗値を設定するものとした。つまり、第2抵抗46の抵抗値を、40×10〔Ω〕より大きく160×10〔Ω〕より小さい範囲で設定することが好ましく、具体的には、100×10〔Ω〕に設定した。これにより、二次転写電流の漏れを抑制すると共に、定着ベルト20と加圧ローラ21との表層に対する適切な除電能力を得ることができる。
【0062】
このように、紙の1mm当たりの抵抗値を1×10〔Ω/mm〕と仮定し、転写ニップと定着ニップとの距離L〔mm〕とすると、下記数2の式の範囲を満たすように第2抵抗46の抵抗値R2〔Ω〕を設定できる。これにより、上記のように第2抵抗46側への二次転写電流の漏れを抑制すると共に、定着ベルト20および加圧ローラ21の表層に対する除電能力を確保できる。
【0063】
【数2】
【0064】
また、紙の搬送方向長さ1mm当たりの抵抗値をRA〔Ω/mm〕とし、下記数3により第2抵抗46の抵抗値R2〔Ω〕を設定してもよい。これにより、第2抵抗46側への二次転写電流の漏れを抑制すると共に、定着ベルト20および加圧ローラ21の表層に対する除電能力を確保できる。
【0065】
【数3】
【0066】
また本実施形態では、図8に示すように、ヒータ22と定着ベルト20の表層との間に配置された定着ベルト20の基体20aに、第1除電ブラシ26が接触する。これにより、交流電源200の交流成分(50Hz)のうち、ヒータ22の抵抗発熱体40から定着ベルト20、そして用紙Pを介して転写ニップN1へ伝播する成分の一部を、第1除電ブラシ26を介して接地側へ逃がすことができる。つまり、交流成分の、抵抗発熱体40~第2絶縁ガラス層35~定着ベルト20(筒状基体20a~弾性層20b~離型層20c)~用紙P~二次転写ニップN1への伝播を抑制し、抵抗発熱体40~第2絶縁ガラス層35~筒状基体20a~第1除電ブラシ26へと伝播させて接地側へ逃がすことができる。これにより、上記バンディング画像の発生を防止できる。
【0067】
以上のように、本実施形態の第1除電ブラシ26および第2除電ブラシ27により、定着装置9およびその周辺の転写装置における電気的な課題を解決できる。
【0068】
また、ヒータ22の第2絶縁ガラス層35の容量リアクタンスXcが5×10~12×10〔Ω〕であることを考慮して、第1抵抗45の抵抗値は3×10〔Ω〕以下に設定されることが好ましい。これにより、交流成分の二次転写側への伝播を抑制できる。特に本実施形態では、第1抵抗45の抵抗値を3×10〔Ω〕に設定している。
【0069】
このように本実施形態では、第1除電ブラシ26と第2除電ブラシ27とを、それぞれ異なる第1抵抗45、第2抵抗46を介して接地することにより、それぞれのブラシに必要な抵抗値を介して接地することができる。従って、上記の電気的な問題を適切に防止できる。特に、二次転写側からの電流の漏れを防止するために、第2抵抗46はより大きな抵抗値が必要とされる。従って、第2抵抗46の抵抗値は第1抵抗45の抵抗値よりも上記のように大きく設定している。ただし、紙の搬送距離Lや第2絶縁ガラス層35の容量リアクタンスXcなどに応じて、第1抵抗45と第2抵抗46とに求められる抵抗値が変化することはもちろんである。
【0070】
また、第1抵抗45と第2抵抗46とを同じ抵抗値に設定できる場合には、単一の除電ブラシを定着ベルト20および加圧ローラ21に接触させてもよい。つまり、図9に示すように、単一の除電ブラシ28が、定着ベルト20の露出部20dと加圧ローラ21の外周面とに接触している。除電ブラシ28は、抵抗47を介して接地されている。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0072】
以上の説明では、定着ベルト20に、導体層である基体20aが外側へ露出した露出部20dを設け、この露出部20dに第1除電ブラシ26を接触させる場合を示した。しかし、定着ベルト20に露出部20dを設けず、例えば定着ベルト20の内面である筒状基体20aの内面に除電部材を接触させてもよい。
【0073】
図10に示す定着装置9のように、第1除電ブラシ26および第2除電ブラシ27を、共通の保持部29により保持する構成としてもよい。保持部29は絶縁性のシートにより構成される。
【0074】
また以上の説明では、ヒータ22の第2絶縁ガラス層35が、直に定着ベルト20の内面に接触する場合を示したが、間に他の導電性部材を介していてもよい。例えば図11に示すように、定着装置9は、高熱伝導部材としての均熱板50を、第2絶縁ガラス層35と定着ベルト20との間に有する。
【0075】
均熱板50は、定着ベルト20にその内周面側から当接する部材である。均熱板50は基材30よりも熱伝導率の高い部材によって構成される。均熱板50の材料として、本実施形態ではアルミニウムが用いられ、例えばその熱伝導率は236W/m・K程度に設定される。また、均熱板50にSUS(熱伝導率は16.7~20.9W/m・K)や銅系材質(例えば熱伝導率381W/m・K)を用いることもできる。
【0076】
次に、上記の熱伝導率の算出方法について説明する。熱伝導率を算出する際には、まず、対象の物体の熱拡散率を測定し、この熱拡散率を用いて熱伝導率を算出する。
【0077】
熱拡散率の計測は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u、株式会社アイフェイズ性)を用いた。
【0078】
上記熱拡散率を熱伝導率に換算するためには、密度と比熱容量の値が必要である。 密度の計測には、乾式自動密度計(商品名:Accupyc 1330、株式会社島津製作所製)を用いた。 また、比熱容量の計は、示差走査型熱量測定装置(商品名:商品名:DSC-60 株式会社島津製作所製)を用い、比熱容量が既知の基準物質としてサファイアを用いて測定した。本実施例では比熱容量測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。密度および比熱容量をそれぞれρ、Cとすると、上記熱拡散率測定で得られた熱拡散率αとから、熱伝導率λは、以下の数4の式により得ることができる。
【0079】
【数4】
【0080】
また、均熱板50を定着ベルト20に対して長手方向にわたって当接させることで、定着ベルト20の熱をその長手方向に移動させて均一化できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制できる。
【0081】
このような定着装置においても、上記と同様に除電ブラシを設けることにより、前述の実施形態と同様、定着装置やその周辺に生じる電気的な問題を解決できる。
【0082】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0083】
例えば図12に示すモノクロの画像形成装置100は、感光体110を有する。感光体110の周囲には、帯電ローラ111、現像装置112、クリーニングブレード113等が設けられる。現像装置112は現像ローラ115等を有する。用紙搬送路Bを挟んで感光体110に対向する位置に転写手段116が設けられる。感光体110と転写手段116との対向位置が転写部Cである。
【0084】
また画像形成装置100は、露光装置102と、給紙装置103と、定着装置9とを備える。露光装置102はミラー117を有する。給紙装置103は、給紙トレイ118と給紙ローラ119とを有する。感光体110、帯電ローラ111、現像装置112、転写手段116、定着装置9等は、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0085】
以下、図12を参照して上記画像形成装置100の基本的動作について説明する。
【0086】
画像形成動作が開始されると、まず帯電ローラ111が感光体110の表面を帯電させる。そして、画像データに基づいて露光装置102からレーザービームLbが感光体110に照射される。これにより、感光体110の照射された部分の電位が低下し、その部分に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体110には、現像装置112から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体110に残されたトナー等は、クリーニングブレード113によって感光体110表面から取り除かれる。
【0087】
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置100の下部では、給紙装置103の給紙ローラ119が回転駆動することによって、給紙トレイ118に収容された用紙Pが搬送路Bに送り出される。
【0088】
搬送路Bに送り出された用紙Pは、レジストローラ120によってタイミングを計られ、感光体110表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写位置Cへ搬送される。転写手段116による転写バイアス印加により、用紙Pの表面にトナー画像が転写される。
【0089】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送される。加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって用紙Pを加熱および加圧し、用紙Pの表面にトナー画像を定着させる。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送されて排紙トレイへと排出される。排紙トレイは装置外側に設けられる。
【0090】
以上の画像形成装置1に、前述の第1除電ブラシ26および第2除電ブラシ27(あるいは除電ブラシ28)を有する定着装置9の構成を適用することにより、定着装置9やその周辺(上流側の転写位置C)における電気的な問題を解決できる。具体的には、交流電源の交流成分の転写部Cの側への伝播を抑制できる。また、定着ベルト20と加圧ローラ21との表層に帯電した電荷を取り除くことができる。さらに、転写部Cから加圧ローラ21側への転写電流の漏れを抑制できる。
【0091】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0092】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。これにより、加熱装置やその周辺に生じる電気的な問題を解決できる。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(加熱部材)
20a 基体(導体層)
20b 弾性層
20c 離型層
21 加圧ベルト(加圧回転部材)
21c 離型層
22 ヒータ(加熱体)
26 第1除電ブラシ(除電部材)
27 第2除電ブラシ(除電部材)
30 基材
40 抵抗発熱体
45 第1抵抗
46 第2抵抗
N1 定着ニップ(ニップ部)
N2 転写ニップ(ニップ部あるいは転写部)
X 長手方向
Y 短手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【文献】特開2015-84084号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12