(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20241125BHJP
B24B 55/04 20060101ALI20241125BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241125BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241125BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20241125BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B55/04 Z
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B23Q11/08 E
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020187880
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】守屋 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】白濱 智宏
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130607(JP,A)
【文献】特開2002-059361(JP,A)
【文献】特開2017-087383(JP,A)
【文献】特開2014-50899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/04 - 55/06
B24B 41/06
B24B 7/04
B23Q 11/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
該チャックテーブルの周囲を囲み、該チャックテーブルの該保持面が突出可能な開口を有するチャックテーブルカバーと、
スピンドルと、該スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングから突出する該スピンドルの下端部に設けられた円盤状のマウント部と、を含み、該マウント部の下部に装着された加工工具で該被加工物を加工する加工ユニットと、
該加工ユニットを上下方向に加工送りする加工送り機構と、
該チャックテーブル及び該マウント部を覆う加工室形成カバーと、
該加工室形成カバーの内部に位置する該スピンドルハウジングに装着され、該スピンドルの該下端部が挿入可能な挿入孔を有する上壁と、該上壁に接続され、且つ、該上壁よりも下方に突出している側壁と、を有し、該加工室形成カバーの内部に配置され、該上壁及び該側壁により該加工工具の上方及び側方を覆う加工工具カバーと、
を備え
、
該加工工具カバーの該側壁の該下端部は一部に切り欠きを有し、該切り欠きは、該チャックテーブルカバーの該開口を横断する範囲に設けられており、
該加工工具カバーの該側壁の該下端部に位置する該加工工具カバーの底部の全体が開放されており、
該切り欠きの上端の高さ位置は、研削面よりも上に位置し、該側壁のうち該切り欠きが設けられていない領域の下端の高さ位置は、該被加工物の加工時に該保持面よりも下方に配置されることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該加工工具カバーは、
該スピンドルハウジングから取り外し可能な態様で、該スピンドルハウジングに対して装着されていることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
一端部が該加工工具カバーに接続され、他端部が吸引源に接続されている排気ダクトを含む排気ユニットを更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の加工装置。
【請求項4】
該保持面の上方且つ該加工工具カバーの外に設けられ、該保持面で保持された該被加工物の厚さを測定する厚さ測定器を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルと、スピンドルの下端部に設けられた円盤状のマウント部と、を含み、マウント部の下部に装着された加工工具で被加工物を加工する加工ユニットを備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、例えば、まず、半導体ウェーハの表面側に、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の回路を形成した後、半導体ウェーハの裏面側を研削装置で研削する。次に、研削により薄化した半導体ウェーハを切削装置で切削することで、半導体ウェーハを個々の半導体デバイスに分割する。
【0003】
研削装置を用いた研削では、通常、チャックテーブルの保持面で保持された半導体ウェーハの裏面側に研削水を供給しながら、複数の研削砥石を有する環状ホイールで、半導体ウェーハの裏面側を研削する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
研削時には、チャックテーブル及び研削ホイールの側部及び上部は、カバー部材によって覆われ、カバー部材によって規定される所定の空間(加工室)に配置される。なお、研削時には、研削ホイールに研削水を供給しながら研削が行われるので、加工室の内壁には、研削屑を含んだ研削水が飛び散って付着する。
【0005】
それゆえ、研削ホイールの交換、加工室の清掃などのメンテナンス時にカバー部材を開放すると、作業者の手、服等に研削屑が付着することがある。また、メンテナンス時には、研削屑がチャックテーブルの保持面に落下することがある。
【0006】
仮に、保持面に研削屑が付着した状態で新たな被加工物の研削が行われると、保持面での吸着不良が生じ、研削時に、被加工物が割れたり欠けたりする不具合が生じ得る。この様に、研削屑等の加工屑は、加工装置において様々な問題につながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、加工室の内壁に付着する加工屑の量を低減可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの周囲を囲み、該チャックテーブルの該保持面が突出可能な開口を有するチャックテーブルカバーと、スピンドルと、該スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングから突出する該スピンドルの下端部に設けられた円盤状のマウント部と、を含み、該マウント部の下部に装着された加工工具で該被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットを上下方向に加工送りする加工送り機構と、該チャックテーブル及び該マウント部を覆う加工室形成カバーと、該加工室形成カバーの内部に位置する該スピンドルハウジングに装着され、該スピンドルの該下端部が挿入可能な挿入孔を有する上壁と、該上壁に接続され、且つ、該上壁よりも下方に突出している側壁と、を有し、該加工室形成カバーの内部に配置され、該上壁及び該側壁により該加工工具の上方及び側方を覆う加工工具カバーと、を備え、該加工工具カバーの該側壁の該下端部は一部に切り欠きを有し、該切り欠きは、該チャックテーブルカバーの該開口を横断する範囲に設けられており、該加工工具カバーの該側壁の該下端部に位置する該加工工具カバーの底部の全体が開放されており、該切り欠きの上端の高さ位置は、研削面よりも上に位置し、該側壁のうち該切り欠きが設けられていない領域の下端の高さ位置は、該被加工物の加工時に該保持面よりも下方に配置されることを特徴とする加工装置が提供される。
【0010】
好ましくは、該加工工具カバーは、該スピンドルハウジングから取り外し可能な態様で、該スピンドルハウジングに対して装着されている。
【0011】
また、好ましくは、加工装置は、一端部が該加工工具カバーに接続され、他端部が吸引源に接続されている排気ダクトを含む排気ユニットを更に備える。また、好ましくは、加工装置は、該保持面の上方且つ該加工工具カバーの外に設けられ、該保持面で保持された該被加工物の厚さを測定する厚さ測定器を更に備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る加工装置は、チャックテーブルと、チャックテーブルカバーと、加工ユニットと、加工送り機構と、加工室形成カバーと、に加えて更に、加工工具カバーを備える。加工工具カバーは、加工室形成カバーの内部に配置されており、加工工具カバーの上壁及び側壁により、加工工具の上方及び側方が覆われる。
【0013】
この様に、加工工具は、加工室形成カバーの内部に配置された加工工具カバーにより覆われているので、加工屑等は、その飛散範囲が制限され、主として加工工具カバーの内壁に付着する。それゆえ、加工室形成カバーの内壁に付着する加工屑の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る研削装置の一部断面側面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る研削装置の一部断面側面図である。
【
図4】第3の実施形態に係る研磨装置の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る研削装置(加工装置)2の一部断面側面図である。なお、
図1に示すX軸方向、Y軸方向(前後方向)、及び、Z軸方向(上下方向、鉛直方向、研削送り方向)は互いに直交する。
【0016】
本実施形態の研削装置2は、被加工物11の搬入、研削、洗浄及び搬出を自動的に行うフルオート式である。但し、研削装置2は、フルオート式に限定されるものではない。研削装置2は、被加工物11の研削のみを行うマニュアル式であってもよい。この場合、被加工物11の搬入、搬出等は、作業者により行われる。
【0017】
研削装置2により研削される被加工物11は、例えば、表面11a側に複数のデバイス(不図示)が形成されたシリコン製の円盤状のウェーハである。ただし、被加工物11は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等の化合物で形成されてもよく、その他の材料で形成されてもよい。
【0018】
被加工物11は、その表面11a側に樹脂製の保護テープ13が貼り付けられた状態で、表面11aとは反対側に位置する裏面11b側が研削される。被加工物11を研削する際には、裏面11b側がチャックテーブル4の保持面4aで吸引保持される。
【0019】
チャックテーブル4は、セラミックスで形成された円盤状の枠体6を有する。枠体6の上面側には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部には多孔質セラミックスで形成された円盤状のポーラス板8が固定されている。
【0020】
ポーラス板8は、略平坦な底面と、外周から中央に向かうにつれて厚さが増加する上面と、を有する。つまり、ポーラス板8の上面は、外周部に比べて中央部が僅かに突出する円錐面である。
【0021】
枠体6の凹部の底面には、放射状に形成された複数の流路(不図示)が形成されている。また、枠体6には、当該複数の流路に接続し、枠体6の底面の中心を貫通する様に、中央流路(不図示)が形成されている。
【0022】
中央流路には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されており、吸引源を動作させるとポーラス板8の上面には負圧が伝達される。それゆえ、ポーラス板8の上面は、保護テープ13を介して被加工物11を吸引保持する保持面4aとして機能する。
【0023】
チャックテーブル4は、円盤状のテーブルベース10の上に、ベアリング(不図示)を介して回転可能に連結されている。テーブルベース10には、貫通孔(不図示)が形成されており、テーブルベース10の下方には、モータ等の回転駆動源12が配置されている。
【0024】
回転駆動源12の回転軸12aは、貫通孔を介してチャックテーブル4の底部に連結されている。回転駆動源12を動作させると、チャックテーブル4は、回転軸12aの周りに回転する。
【0025】
テーブルベース10の下部、且つ、回転駆動源12の周囲には、テーブルベース10を支持し、Z軸方向に対する回転軸12aの傾きを調整する傾き調整機構14が設けられている。傾き調整機構14は、1つの固定軸16aと、2つの可動軸16bと、を有する。
【0026】
1つの固定軸16aと、2つの可動軸16bとは、テーブルベース10の周方向に沿って略等間隔で設けられている。なお、
図1では、1つの可動軸16bが示されている。可動軸16bは、テーブルベース10をZ軸方向に押し上げ、又は、引き下げることができる。
【0027】
可動軸16bによりテーブルベース10を支持する高さ位置を調整することで、Z軸方向に対する回転軸12aの傾きが決定される。回転軸12aは、保持面4aの一部がX-Y平面と略平行になる様に、その傾き角度が調整される。
【0028】
傾き調整機構14は、円盤状のターンテーブル18で支持されている。ターンテーブル18上には、上述のチャックテーブル4、テーブルベース10、回転駆動源12及び傾き調整機構14をそれぞれ含む、複数のテーブルユニット20が配置されている。
【0029】
例えば、ターンテーブル18上には、ターンテーブル18の周方向に沿って互いに略120度だけ離れる様に、3つのテーブルユニット20が配置されている。ターンテーブル18が回転することにより、各テーブルユニット20は、被加工物11の搬入搬出領域、粗研削領域及び仕上げ研削領域のいずれかに配置される。
【0030】
図1に示すテーブルユニット20は、粗研削領域に配置されている。各テーブルユニット20の周囲は、チャックテーブル4の保持面4aが露出する様に、チャックテーブルカバー22で覆われている。
【0031】
チャックテーブルカバー22は、例えば金属で形成されており、枠体6の外径よりも僅かに大きい径の開口22a(
図2参照)を有する。開口22aからは、保持面4aを含む枠体6の上部が突出している。
【0032】
チャックテーブルカバー22及びチャックテーブル4の上部は、金属等で形成された加工室形成カバー24で覆われている。つまり、チャックテーブル4の上部は、加工室24a内に配置されている。
【0033】
チャックテーブル4の上部の近傍には、被加工物11の厚さを測定するための厚さ測定器(ハイトゲージ)26が設けられており、この厚さ測定器26も、加工室24a内に配置されている。
【0034】
図1に示す厚さ測定器26は、接触式であり、保持面4aのうち枠体6の上面に接触可能な第1測定器26aと、ポーラス板8の外周部の上方に位置しており、保持面4aで保持された被加工物11の裏面11bに接触可能な第2測定器26bと、を有する。
【0035】
保持面4aのうち厚さ測定器26が配置された領域と異なる領域の上方には、粗研削ユニット(加工ユニット)28が設けられている。粗研削ユニット28は、加工送り機構30によりZ軸方向に沿って加工送りされる。
【0036】
加工送り機構30は、Z軸方向に略平行な態様で研削装置2の基台に対して固定された一対のガイドレール(不図示)を有する。一対のガイドレールには、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0037】
Z軸移動プレート32の後方(裏面)側には、ナット部34が設けられている。ナット部34には、一対のガイドレールの間においてZ軸方向に沿って設けられたボールねじ36が、回転可能な態様で連結している。
【0038】
ボールねじ36の上端部には、パルスモーター等の駆動源(不図示)が連結されている。パルスモーターでボールねじ36を回転させれば、Z軸移動プレート32は、ガイドレールに沿ってZ軸方向に移動する。
【0039】
Z軸移動プレート32の前面(表面)には、上述の粗研削ユニット28が固定されている。粗研削ユニット28は、Z軸移動プレート32に固定されている円筒状の保持部材40を有する。
【0040】
保持部材40の内部には、Z軸方向に略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング42が設けられている。スピンドルハウジング42内には、Z軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル44の一部が回転可能に保持されている。
【0041】
スピンドル44の上端部には、サーボモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。スピンドル44の下端部は、スピンドルハウジング42の下端よりも下方に突出しており、スピンドル44の下端部には、円盤状のマウント部(ホイールマウント)46が固定されている。
【0042】
マウント部46は、加工室24a内に位置しており、加工室形成カバー24により覆われている。マウント部46の下部には、ねじ等の固定部材(不図示)により、環状の粗研削ホイール(加工工具)48が装着されている。
【0043】
粗研削ホイール48は、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状のホイール基台48aを有する。ホイール基台48aの径は、マウント部46と略同径であり、ホイール基台48aの下面側には、複数の粗研削砥石48bが装着されている。
【0044】
複数の粗研削砥石48bは、ホイール基台48aの下面の周方向に沿って、隣り合う粗研削砥石48b同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。粗研削砥石48bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合した後、成型、焼成等を経て形成される。
【0045】
ホイール基台48aの粗研削砥石48bよりも内側には、ホイール基台48aの下面の周方向に沿って離散的に、複数の研削水供給口(不図示)が設けられている。また、ホイール基台48a、マウント部46、スピンドル44等には、各研削水供給口に、純水等の研削水41を供給するための流路(不図示)が設けられている。
【0046】
当該流路の一端には、研削水供給ユニット(不図示)が接続されている。研削時には、研削水供給ユニットから粗研削砥石48bへ、研削水41が供給される。それゆえ、粗研削ホイール48で被加工物11を研削(加工)する場合には、研削屑(加工屑)を含んだ研削水41が周囲に飛散する。
【0047】
本実施形態では、研削屑を含んだ研削水41が飛散する範囲を制限するために、加工室形成カバー24の内部に、円筒状の加工工具カバー50が配置されている。
図2は、加工工具カバー50等の斜視図である。なお、
図2では、被加工物11、加工室形成カバー24、厚さ測定器26等を省略している。
【0048】
加工工具カバー50は、アクリル樹脂等の可視光に対して透明な材料で形成されている。加工工具カバー50は、円形の上壁50aを有し、この上壁50aは、例えば、粗研削ホイール48の直径よりも1cmから2cm程度だけ大きい径を有する。
【0049】
上壁50aは、スピンドルハウジング42の下端部に位置するフランジ部42aに、ねじ等の固定部材を介して装着されている。上壁50aは、スピンドル44の下端部を挿入可能な挿入孔50bを有する。
【0050】
上壁50aの外周部には、上壁50aよりも下方に突出する態様で側壁50cが接続されている。
図1及び
図2に示す様に、上壁50a及び側壁50cは、粗研削ホイール48の上方及び側方を覆う。
【0051】
側壁50cは、略一様な高さを有するが、側壁50cの下端部の一部には、切り欠き50dが形成されている。切り欠き50dは、チャックテーブルカバー22の開口22aを横断する範囲に形成されている。
【0052】
切り欠き50dの上端の高さ位置は、粗研削ホイール48の研削面(即ち、粗研削砥石48bの下面)の高さ位置よりも、僅かに上方に位置する。例えば、研削面で被加工物11を研削する際に、切り欠き50dの上端の高さ位置は、保持面4aで吸引保持された被加工物11の裏面11bよりも約5mmだけ上方に位置する。
【0053】
これに対して、側壁50cのうち切り欠き50dが設けられていない領域の下端の高さ位置は、保持面4aよりも下方に位置する。この様に、側壁50cの下端部に切り欠き50dを設けることで、保持面4aで保持された被加工物11を粗研削領域へ搬送する際に、側壁50cと被加工物11との干渉を防止すると共に、粗研削ユニット28で被加工物11を研削(加工)する場合に被加工物11を覆うことができる。
【0054】
加工工具カバー50は、フランジ部42aに対して取り外し可能な態様で装着されている。加工工具カバー50は、例えば、上壁50aを二等分する様に分解可能である。それゆえ、フランジ部42aと加工工具カバー50とを固定している固定部材を取り外せば、加工工具カバー50を分解してフランジ部42aから取り外すことができる。
【0055】
粗研削ホイール48の直下は、上述の粗研削領域に対応する。粗研削ユニット28で被加工物11を研削するときには、まず、粗研削領域に配置されたチャックテーブル4で、被加工物11の表面11a側を吸引保持する。
【0056】
この状態で、粗研削砥石48bに研削水41を供給すると共に、チャックテーブル4及び粗研削ホイール48をそれぞれ所定の方向に回転させながら、加工送り機構30で粗研削ユニット28を下方に研削送りする。粗研削砥石48bが被加工物11の裏面11b側に接触すると、裏面11b側の接触領域が研削される。
【0057】
本実施形態では、加工室形成カバー24の内部に別途独立して配置された加工工具カバー50により粗研削ホイール48が覆われている。それゆえ、研削屑を含んだ研削水41等は、加工工具カバー50を設けない場合に比べてその飛散範囲がより制限され、主に加工工具カバー50の内壁に付着する。
【0058】
従って、加工室形成カバー24の内壁に付着する研削屑の量を低減できる。加えて、加工室24aのメンテナンス時に加工室形成カバー24を開けたとき、加工工具カバー50を設けない場合に比べて、保持面4aに落下する研削屑の量を十分に低減できる。
【0059】
加工工具カバー50を設けない場合、研削屑を含んだ研削水41は、加工室形成カバー24の内壁に加えて、加工室24a内に配置された厚さ測定器26等の機器にも付着する。加工室24a内の機器に研削屑が付着すると、機器の動作に不具合が生じ得る。
【0060】
例えば、厚さ測定器26に研削屑が付着すると、厚さ測定器26で、被加工物11の厚さを正確に測定できなくなる。しかし、加工工具カバー50により加工室24a内の機器に付着する研削屑の量を低減できるので、機器の動作に不具合が生じ得る可能性を低減できる。
【0061】
ところで、上述の仕上げ研削領域にも、同様の加工室形成カバー24及び加工工具カバー50を設けてよい。また、マニュアル式の研削装置2においても、同様の加工室形成カバー24及び加工工具カバー50を設けてよい。
【0062】
次に、第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態に係る研削装置52の一部断面側面図である。研削装置52は、加工工具カバー50の内部を吸引可能な排気ユニット54を更に備える。
【0063】
排気ユニット54は、可撓性を有する排気ダクト56を含む。排気ダクト56の一端部56aは、加工工具カバー50の内部に接続され、排気ダクト56の他端部56bは、エジェクタ等の吸引源58に接続されている。
【0064】
吸引源58としては、通常、加工室24a内の研削屑を吸引する際に使用される吸引源を使用してよい。第2の実施形態では、加工室24aよりも狭い空間である加工工具カバー50の内部を吸引源58で吸引するので、加工室24aを吸引するための既存の吸引源58を使用しても、研削屑を含んだ研削水41を十分に吸引できる。
【0065】
次に、第3の実施形態について説明する。
図4は、第3の実施形態に係る研磨装置62の一部断面側面図である。研磨装置62は、所謂マニュアル式の湿式研磨装置であり、チャックテーブル4に比べて小径のチャックテーブル64を有する。
【0066】
チャックテーブル64は、チャックテーブル4と同様に、枠体66及びポーラス板68を有する。但し、ポーラス板68の上面は、円錐面ではなく、略平坦な面である。枠体66の上面及びポーラス板68の上面は、略面一となっており、保持面64aを構成する。
【0067】
チャックテーブル64の上方には、研磨ユニット(加工ユニット)70が配置されている。研磨ユニット70は、粗研削ユニット28と同様に、保持部材40、スピンドルハウジング42、スピンドル44、マウント部46等を有する。また、研磨ユニット70の保持部材40は、加工送り機構30に連結されている。
【0068】
但し、マウント部46の下面側には、円盤状の基台72が装着されている。また、基台72の下面側には、円盤状の研磨パッド74が固定されている。基台72及び研磨パッド74は、加工工具を構成する。
【0069】
なお、マウント部46、スピンドル44、基台72等には、研磨液81を供給するための流路(不図示)が設けられている。当該流路の一端には、研磨液供給ユニット(不図示)が接続されている。
【0070】
研磨時には、研削液供給ユニットから研磨パッド74及び被加工物11へ、研磨液81が供給される。それゆえ、研磨(加工)時には、研磨屑(加工屑)を含んだ研磨液81が周囲に飛散する。
【0071】
スピンドルハウジング42のフランジ部42aには、加工工具カバー80が装着されている。加工工具カバー80は、円盤状の上壁80aを有する。上壁80aにはスピンドル44を挿入するための挿入孔80bが形成されている。
【0072】
また、上壁80aよりも下方に突出する様に、上壁80aの外周部には、側壁80cが接続されている。加工工具カバー80は、その上壁80a及び側壁80cにより、基台72及び研磨パッド74(加工工具)の上方及び側方を覆う。
【0073】
特に、第3の実施形態の加工工具カバー80は、切り欠き50dを有しておらず、基台72及び研磨パッド74に加えて、被加工物11の側方も覆う。但し、研磨時においても、加工工具カバー80の下端と、チャックテーブルカバー22の上面とには、僅かな(例えば、数mm)の隙間が形成される。
【0074】
加工工具カバー80も、加工工具カバー50と同様に、フランジ部42aに対して取り外し可能な態様で装着されている。加工工具カバー80は、例えば、上壁80aを二等分する様に分解可能である。
【0075】
第3の実施形態では、研磨屑を含有した研磨液81が飛散したとしても、その飛散範囲が加工工具カバー80内に制限される。従って、加工室形成カバー24の内壁に付着する研磨屑の量を十分に低減できる。
【0076】
加えて、加工室24aのメンテナンス時に加工室形成カバー24を開けても、保持面64aには研磨屑が落下しない。更に、加工室24aよりも狭い空間である加工工具カバー80の内部を吸引源58で吸引するので、既存の吸引源58を使用しても、研磨屑を含んだ研磨液81を十分に吸引できる。
【0077】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、粗研削、仕上げ研削及び研磨を行うフルオート式の加工装置の研磨領域に、研磨装置62を設けることもできる。
【0078】
但し、フルオート式の場合、ポーラス板68の上面は、外周部に比べて中央部が僅かに突出する円錐面とされる。更に、回転軸12aは、保持面64aの一部がX-Y平面と略平行になる様に、その傾き角度が調整される。また、研磨時には、保持面64aで保持された被加工物11の一部に、研磨パッド74が接触する。
【符号の説明】
【0079】
2,52:研削装置
4:チャックテーブル、4a:保持面、6:枠体、8:ポーラス板
10:テーブルベース、12:回転駆動源、12a:回転軸
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、13:保護テープ
14:傾き調整機構、16a:固定軸、16b:可動軸
18:ターンテーブル、20:テーブルユニット
22:チャックテーブルカバー、22a:開口
24:加工室形成カバー、24a:加工室
26:厚さ測定器、26a:第1測定器、26b:第2測定器
28:粗研削ユニット、30:加工送り機構、32:Z軸移動プレート
34:ナット部、36:ボールねじ、40:保持部材、41:研削水
42:スピンドルハウジング、42a:フランジ部
44:スピンドル、46:マウント部
48:粗研削ホイール、48a:ホイール基台、48b:粗研削砥石
50:加工工具カバー、50a:上壁、50b:挿入孔
50c:側壁、50d:切り欠き
54:排気ユニット、56:排気ダクト、56a:一端部、56b:他端部
58:吸引源
62:研磨装置
64:チャックテーブル、64a:保持面、66:枠体、68:ポーラス板
70:研磨ユニット、72:基台、74:研磨パッド
80:加工工具カバー、80a:上壁、80b:挿入孔、80c:側壁、81:研磨液