(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20241125BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241125BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B7/04 B
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2021014760
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212561(JP,A)
【文献】特開2020-093318(JP,A)
【文献】特開2018-117013(JP,A)
【文献】特開2010-172999(JP,A)
【文献】特開2010-162665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
該チャックテーブルが上部に装着されるテーブルベースと、
該テーブルベースの下部の中心から垂下する本体部と該本体部の側面から外側に突出する突出部とを有する第1スピンドルと、
該本体部の側面を囲繞し、かつ、該突出部の下面に対向する位置に開口する連通路が内部に設けられているケーシングと、
該連通路に流体を供給する流体供給源と、
該被加工物を研削する複数の研削砥石を備える研削ホイールが装着される下端部を有する第2スピンドルと、
該チャックテーブルと該研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させる鉛直方向移動機構と、
該チャックテーブルと該研削ホイールとを該鉛直方向に直交する水平方向に沿って相対的に移動させる水平方向移動機構と、
を備えた研削装置を使用して該被加工物を研削する研削方法であって、
該チャックテーブルが該研削ホイールの
下方に位置づけられた状態で該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させた後、該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させながら該チャックテーブルと該研削ホイールとを該鉛直方向に沿って相対的に移動させて該被加工物を研削するインフィード研削と、該チャックテーブルと該研削ホイールとが該水平方向において離隔し、かつ、該複数の研削砥石の下面が該被加工物の上面より低く、その下面より高くなるように位置づけられた状態で該研削ホイールを回転させた後、該研削ホイールを回転させながら該チャックテーブルと該研削ホイールとを該水平方向に沿って相対的に移動させて該被加工物を研削するクリープフィード研削と、のいずれで該被加工物を研削するかを選択する選択ステップと、
該選択ステップにおいて該インフィード研削が選択された場合に、該流体供給源から該連通路に流体を供給して該突出部の下面を該ケーシングから分離させる分離ステップと、
該選択ステップにおいて該クリープフィード研削が選択された場合に、該流体供給源から該連通路に流体を供給せずに該突出部の下面を該ケーシングに接触させる接触ステップと、
を備えることを特徴とする研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等の半導体デバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面に多数の半導体デバイスが形成されたウェーハを個々の半導体デバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
近年では、チップの小型化及び軽量化等を目的として、ウェーハを分割する前にウェーハを薄化することが多い。ウェーハを薄化する方法としては、例えば、ウェーハの下面側を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、チャックテーブルの上方に設けられ、かつ、環状に離散して配置された複数の研削砥石を備える研削ホイールとを有する研削装置による研削が挙げられる。
【0004】
このような研削装置においては、インフィード研削とも呼ばれる研削方法によってウェーハ等の被加工物を薄化することが多い。この研削方法においては、まず、チャックテーブルが研削ホイールの下方に位置づけられた状態でチャックテーブルと研削ホイールとを回転させる。
【0005】
そして、チャックテーブルと研削ホイールとを回転させたまま、複数の研削砥石の下面と被加工物の上面とが接触するようにチャックテーブルと研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させる。これにより、複数の研削砥石の下面によって被加工物の上面側の全域が研削される。さらに、チャックテーブルと研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させ続けることで、被加工物の上面側の所定の厚さを有する部分が研削されて被加工物が薄化される。
【0006】
また、このような研削装置においては、クリープフィード研削とも呼ばれる研削方法によって被加工物を薄化することもある(例えば、特許文献1参照)。この研削方法においては、まず、チャックテーブルと研削ホイールとが水平方向において離隔し、かつ、複数の研削砥石の下面が被加工物の上面より低く、その下面より高くなるように位置づけられた状態で研削ホイールを回転させる。
【0007】
そして、研削ホイールを回転させたまま、複数の研削砥石の外側面と被加工物の側面とが接触するようにチャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させる。これにより、複数の研削砥石の外側面によって被加工物の上面側の所定の厚さを有する端部が研削される。さらに、チャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させ続けることで、被加工物の上面側の全域が研削されて被加工物が薄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
研削装置においてインフィード研削を行う際には、上述のとおり、チャックテーブルを回転させる必要がある。そのため、チャックテーブルは、一般的に、回転可能なスピンドルと共に回転するように、このスピンドルに連結される。
【0010】
ここで、このような研削装置においてクリープフィード研削を行う場合には、インフィード研削を行う場合と比較して、チャックテーブルに大きな振動が生じる。そして、被加工物の研削中にチャックテーブルが振動する場合には、研削される被加工物の被研削面に大きな凹凸及びクラックが形成されるおそれがある。
【0011】
そのため、インフィード研削及びクリープフィード研削に兼用される公知の研削装置には、一般的に、チャックテーブルに連結されているスピンドルを固定するための機構(例えば、ねじ等を用いてスピンドルを固定する機構)が設けられる。しかしながら、このような機構は、研削装置の構造を複雑にし、研削装置の製造コストを増加させるおそれがある。
【0012】
この点に鑑み、本発明の目的は、このような機構を研削装置に設けることなく、クリープフィード研削の際にチャックテーブルに生じる振動を抑制することが可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルが上部に装着されるテーブルベースと、該テーブルベースの下部の中心から垂下する本体部と該本体部の側面から外側に突出する突出部とを有する第1スピンドルと、該本体部の側面を囲繞し、かつ、該突出部の下面に対向する位置に開口する連通路が内部に設けられているケーシングと、該連通路に流体を供給する流体供給源と、該被加工物を研削する複数の研削砥石を備える研削ホイールが装着される下端部を有する第2スピンドルと、該チャックテーブルと該研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させる鉛直方向移動機構と、該チャックテーブルと該研削ホイールとを該鉛直方向に直交する水平方向に沿って相対的に移動させる水平方向移動機構と、を備えた研削装置を使用して該被加工物を研削する研削方法であって、該チャックテーブルが該研削ホイールの下方に位置づけられた状態で該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させた後、該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させながら該チャックテーブルと該研削ホイールとを該鉛直方向に沿って相対的に移動させて該被加工物を研削するインフィード研削と、該チャックテーブルと該研削ホイールとが該水平方向において離隔し、かつ、該複数の研削砥石の下面が該被加工物の上面より低く、その下面より高くなるように位置づけられた状態で該研削ホイールを回転させた後、該研削ホイールを回転させながら該チャックテーブルと該研削ホイールとを該水平方向に沿って相対的に移動させて該被加工物を研削するクリープフィード研削と、のいずれで該被加工物を研削するかを選択する選択ステップと、該選択ステップにおいて該インフィード研削が選択された場合に、該流体供給源から該連通路に流体を供給して該突出部の下面を該ケーシングから分離させる分離ステップと、該選択ステップにおいて該クリープフィード研削が選択された場合に、該流体供給源から該連通路に流体を供給せずに該突出部の下面を該ケーシングに接触させる接触ステップと、を備える研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、クリープフィード研削で被加工物を研削する際にチャックテーブルに連結されているスピンドルの突出部とケーシングとを接触させる。この場合、チャックテーブルに吸引保持された被加工物に対してクリープフィード研削を行う際にスピンドルの突出部の下面側に生じる摩擦力がチャックテーブルの振動に対する抵抗として作用する。そのため、本発明においては、クリープフィード研削の際にチャックテーブルに生じる振動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、研削装置の一例の構成要素の一部を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図3】
図3は、研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、インフィード研削及びクリープフィード研削に兼用される研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0017】
図1に示される研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。基台4の上面にはX軸方向に沿って延在する長手部を有する開口4aが形成されている。開口4aの内部には、ボールねじ式のX軸方向移動機構(不図示)(水平方向移動機構)が配置されている。X軸方向移動機構は、X軸方向に沿って延在する一対のガイドレール(不図示)を有する。
【0018】
一対のガイドレールの上部には、一対のガイドレールに沿ってスライド可能な態様でX軸移動プレート(不図示)が連結されている。また、一対のガイドレールの間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸(不図示)が配置されている。ねじ軸の一端部には、ねじ軸を回転させるためのモータ(不図示)が連結されている。
【0019】
ねじ軸の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。すなわち、ねじ軸が回転するとボールがナット部内を循環してナット部がX軸方向に沿って移動する。
【0020】
また、このナット部は、X軸移動プレート(不図示)の下面側に固定されている。そのため、モータでねじ軸を回転させれば、ナット部とともにX軸移動プレートがX軸方向に沿って移動する。
【0021】
X軸移動テーブル上には、テーブルカバー6が設けられている。また、テーブルカバー6上には、チャックテーブル8が設けられている。ここで、
図2を参照してチャックテーブル8等について説明する。なお、
図2は、研削装置2の構成要素の一部(チャックテーブル8等)を模式的に示す一部断面側面図である。
【0022】
チャックテーブル8は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料又はセラミックスからなる枠体10を有する。枠体10は、円盤状の底壁と、この底壁の外周部から上方に延在する円環状の側壁とを有する。そして、この側壁によって枠体10の上面側に凹部10aが画定されている。
【0023】
凹部10aには、セラミックスからなる円盤状のポーラス板12が固定されている。ポーラス板12の上面12a(チャックテーブル8の保持面)は、円錐の側面に相当する形状(円錐状)に構成されていてもよいし、平坦に構成されていてもよい。チャックテーブル8の下部には、チャックテーブル8が交換可能に装着される円盤状のテーブルベース14が設けられている。
【0024】
ポーラス板12の下面側は、例えば、枠体10及びテーブルベース14の内部に設けられた流路(不図示)と、バルブ(不図示)とを介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に連通されている。この吸引源が動作した状態でバルブを開けば、ポーラス板12の上面12a(チャックテーブル8の保持面)には負圧が生じて被加工物を吸引保持することが可能になる。
【0025】
テーブルベース14の下部には、スピンドル(第1スピンドル)16の上部が固定されている。そして、後述するモータ26が動作すると、チャックテーブル8の保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向又はZ軸方向から僅かに傾いた方向に沿う直線を回転軸として、チャックテーブル8、テーブルベース14及びスピンドル16が
図2に示される矢印Aの方向に回転する。
【0026】
スピンドル16は、テーブルベース14の下部の中心から垂下する円柱状の本体部16aと、本体部16aの側面から外側に突出する環状の突出部16bとを有する。スピンドル16は、支持機構(不図示)を介してX軸移動プレートに固定されている管状のケーシング18に収容されている。
【0027】
ケーシング18の内周面には、突出部16bに対応する形状を備える凹部18aが設けられている。例えば、凹部18aの底面(Z軸方向に概ね平行な面、
図2において上下方向に延在する面)と、突出部16bの側面とは、平面視において、チャックテーブル8等の回転軸を中心として同心円状になっている。この場合、平面視における凹部18aの底面の直径は、平面視における突出部16bの側面の直径よりも僅かに長い。
【0028】
また、チャックテーブル8等の回転軸に沿った方向における凹部18aの底面の幅は、この方向における突出部16bの側面の幅よりも広い。そして、凹部18aは、突出部16bの上面、側面及び下面を囲繞する。
【0029】
平面視におけるケーシング18の凹部18a以外の内周面の内径は、平面視における本体部16aの直径よりも僅かに長い。そして、この内周面は、本体部16aの側面を囲繞する。また、ケーシング18の外周面には、凸部18bが設けられている。
【0030】
さらに、ケーシング18の内部には、複数の連通路18cが設けられている。複数の連通路18cのそれぞれの一端は、凸部18bにおいて開口し、例えば、配管(不図示)及びバルブ(不図示)を介して流体供給源(不図示)に接続されている。この流体供給源は、空気等の気体又は水等の液体を複数の連通路18cのそれぞれの一端に供給可能である。
【0031】
連通路18cは、ケーシング18の内部において分岐し、分岐した連通路18cの先端が凹部18aの突出部16bの上面に対向する位置及び下面に対向する位置のそれぞれにおいて開口する。そのため、流体供給源から複数の連通路18cに流体が供給されると、この流体が突出部16bの上面及び下面に供給される。
【0032】
そして、所定の圧力を超える流体が突出部16bの下面に供給されると、突出部16bの下面が凹部18aから分離する。また、突出部16bの上面及び下面に供給された流体は、スピンドル16とケーシング18との隙間を通って、研削装置2の外側へと排出される。
【0033】
他方、突出部16bの下面に流体が供給されない場合には、重力の作用によって突出部16bの下面が凹部18aにおいてケーシング18と接触する。この場合、スピンドル16は、ケーシング18を介してX軸移動プレートに支持される。
【0034】
すなわち、スピンドル16においては、流体供給源から複数の連通路18cに所定の圧力を超える流体が供給された場合に突出部16bの下面がケーシング18の凹部18aから分離し、また、流体が供給されない場合に突出部16bの下面がケーシング18の凹部18aに接触する。
【0035】
本体部16aの下部には、従動プーリ20が固定されている。従動プーリ20は、シャフト20aと、シャフト20aの上端部及び下端部のそれぞれに設けられるフランジ20bとを有する。そして、シャフト20aには、所定の張力が付与されているベルト22が巻かれている。
【0036】
従動プーリ20の近傍には、水平方向において従動プーリ20から離隔する伝動プーリ24が設けられている。そして、伝動プーリ24にもベルト22が巻かれている。また、伝動プーリ24の一端部は、モータ26に連結されている。そして、モータ26が動作すると、Z軸方向に沿った直線又はZ軸方向から僅かに傾いた方向に沿う直線を回転軸として、伝動プーリ24が
図2に示される矢印Bの方向に回転する。
【0037】
この時、伝動プーリ24とベルト22との間の摩擦力の作用によってベルト22も回転し、また、ベルト22とシャフト20aとの間の摩擦力の作用によって従動プーリ20も回転する。その結果、チャックテーブル8、テーブルベース14及びスピンドル16が
図2に示される矢印Aの方向に回転する。
【0038】
再び
図1を参照して、研削装置2のその他の構成要素について説明する。開口4aには、テーブルカバー6を挟む様に、X軸方向に伸縮可能な蛇腹状の防塵防滴カバー28が設けられている。開口4aの前端近傍には、研削条件等を入力するための操作パネル30が設けられている。
【0039】
また、開口4aの後端近傍には、上方に延在する直方体状の支持構造32が設けられている。支持構造32の前面側(すなわち、操作パネル30側)には、Z軸方向移動機構(鉛直方向移動機構)34が設けられている。Z軸方向移動機構34は、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール36を備える。
【0040】
一対のZ軸ガイドレール36の前面側には、一対のZ軸ガイドレール36に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート38が連結されている。また、一対のZ軸ガイドレール36の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸40が配置されている。ねじ軸40の一端部には、ねじ軸40を回転させるためのモータ42が連結されている。
【0041】
ねじ軸40の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸40の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。すなわち、ねじ軸40が回転するとボールがナット部内を循環してナット部がZ軸方向に沿って移動する。
【0042】
また、このナット部は、Z軸移動プレート38の裏面側に固定されている。そのため、モータ42でねじ軸40を回転させれば、ナット部とともにZ軸移動プレート38がZ軸方向に沿って移動する。
【0043】
Z軸移動プレート38の前面側には、支持具44が設けられている。支持具44は、研削ユニット46を支持している。研削ユニット46は、支持具44に固定された円筒状のスピンドルハウジング48を有する。スピンドルハウジング48には、Z軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル(第2スピンドル)50が、回転可能な状態で部分的に収容されている。
【0044】
スピンドル50の上端部には、スピンドル50を回転させるためのモータ52が連結されている。スピンドル50の下端部は、スピンドルハウジング48から露出しており、この下端部には、ステンレス鋼等の金属材料で形成された円盤状のホイールマウント54の上部が固定されている。
【0045】
ホイールマウント54の下部には、ホイールマウント54と概ね等しい径を備える環状の研削ホイール56が装着されている。研削ホイール56は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された円環状のホイール基台58を有する。ホイール基台58の下面側には、複数の研削砥石60が固定されている。
【0046】
複数の研削砥石60のそれぞれは、直方体状であり、ホイール基台58の周方向に沿って離散して配置されている。さらに、研削ホイール56の近傍又はその内部には、被加工物を研削する際に研削面に水等の研削液を供給するノズル(不図示)が設けられている。
【0047】
なお、研削装置2においては、インフィード研削で被加工物を研削する際には、主に複数の研削砥石60の下面が被加工物を研削する研削面となり、また、クリープフィード研削で被加工物を研削する際には、主に複数の研削砥石60の外側面が被加工物を研削する研削面となる。
【0048】
そのため、研削ホイール56の近傍又はその内部には、複数の研削砥石60の下面に研削液を供給するノズルと、複数の研削砥石60の外側面に研削液を供給するノズルとが個別に設けられていてもよい。
【0049】
そして、モータ52が動作すると、Z軸方向又はZ軸方向から僅かに傾いた方向に沿う直線を回転軸としてスピンドル50、ホイールマウント54及び研削ホイール56が回転する。
【0050】
図3は、
図1に示される研削装置2を用いて被加工物を研削する研削方法の一例を示すフローチャートである。この方法においては、まず、クリープフィード研削で被加工物を研削するか否か、すなわち、インフィード研削又はクリープフィード研削のいずれで被加工物を研削するかが選択される(選択ステップ:S1)。
【0051】
クリープフィード研削で被加工物を研削しないこと、すなわち、インフィード研削で被加工物を研削することが選択された場合(選択ステップ(S1):NO)には、チャックテーブル8を回転させるためのスピンドル(テーブルベース14に固定されているスピンドル)16をケーシング18から分離させる(分離ステップ:S11)。具体的には、所定の圧力を超える流体を流体供給源からケーシング18の複数の連通路18cのそれぞれの一端に供給する。
【0052】
次いで、インフィード研削で被加工物を研削する(研削ステップ:S12)。このインフィード研削は、例えば、以下の順序で行われる。まず、被加工物をチャックテーブル8に吸引保持させる。具体的には、この被加工物をチャックテーブル8の保持面に載置した後、チャックテーブル8の枠体10及びテーブルベース14の内部に設けられた流路にバルブを介して連通する吸引源を動作させた状態で、このバルブを開く。
【0053】
次いで、チャックテーブル8及び研削ホイール56を所定の位置に移動させる。具体的には、チャックテーブル8が研削ホイール56の下方に位置づけられるようにX軸方向移動機構(不図示)及びZ軸方向移動機構34を動作させる。これにより、研削ホイール56の複数の研削砥石60のいずれかが、例えば、チャックテーブル8の保持面の中心の直上に位置付けられる。
【0054】
次いで、チャックテーブル8及び研削ホイール56を回転させる。具体的には、スピンドル16を回転させるようにモータ26を動作させ、かつ、スピンドル50を回転させるようにモータ52を動作させる。
【0055】
次いで、チャックテーブル8及び研削ホイール56をZ軸方向に沿って相対的に移動させて被加工物を研削する。具体的には、チャックテーブル8に吸引保持された被加工物の上面と複数の研削砥石60の下面とが接触するようにZ軸方向移動機構34を動作させる。
【0056】
これにより、複数の研削砥石60の下面によって被加工物の上面側の全域が研削される。さらに、Z軸方向移動機構34を動作させ続けることで、被加工物の上面側の所定の厚さを有する部分が研削されて被加工物が薄化される。
【0057】
このインフィード研削においては、チャックテーブル8を回転させるよりも前にスピンドル16の突出部16bの下面をケーシング18から分離させている。これにより、チャックテーブル8を回転させる際にスピンドル16の突出部16bの下面側に大きな摩擦力が生じることがなく、チャックテーブル8を容易に回転させることができる。
【0058】
他方、クリープフィード研削で被加工物を研削することが選択された場合(選択ステップ(S1):YES)には、チャックテーブル8を回転させるためのスピンドル(テーブルベース14に固定されているスピンドル)16をケーシング18に接触させる(接触ステップ:S21)。具体的には、流体供給源からケーシング18の複数の連通路18cのそれぞれの一端への流体の供給を停止する。
【0059】
次いで、クリープフィード研削で被加工物を研削する(研削ステップ:S22)。このクリープフィード研削は、例えば、以下の順序で行われる。まず、被加工物をチャックテーブル8に吸引保持させる。具体的には、この被加工物をチャックテーブル8の保持面に載置した後、チャックテーブル8の枠体10及びテーブルベース14の内部に設けられた流路にバルブを介して連通する吸引源を動作させた状態で、このバルブを開く。
【0060】
次いで、チャックテーブル8及び研削ホイール56を所定の位置に移動させる。具体的には、チャックテーブル8と研削ホイール56とがX軸方向において離隔し、かつ、複数の研削砥石60の下面がチャックテーブル8に吸引保持された被加工物の上面より低く、その下面より高くなるようにX軸方向移動機構(不図示)及びZ軸方向移動機構34を動作させる。
【0061】
次いで、研削ホイール56を回転させる。具体的には、スピンドル50を回転させるようにモータ52を動作させる。次いで、チャックテーブル8及び研削ホイール56をX軸方向に沿って相対的に移動させて被加工物を研削する。具体的には、チャックテーブル8に吸引保持された被加工物の外側面と複数の研削砥石60の側面とが接触するようにX軸方向移動機構(不図示)を動作させる。
【0062】
これにより、複数の研削砥石60の外側面によって被加工物の上面側の所定の厚さを有する端部が研削される。さらに、X軸方向移動機構を動作させ続けることで、被加工物の上面側の全域が研削されて被加工物が薄化される。
【0063】
このクリープフィード研削においては、被加工物を研削するよりも前にスピンドル16の突出部16bの下面をケーシング18に接触させている。これにより、スピンドル16の突出部16bの下面側に生じる摩擦力が抵抗となって被加工物を研削する際にチャックテーブル8に生じる振動が抑制される。
【0064】
なお、上述した実施形態かかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、ケーシング18の凸部18bにおいて開口する複数の連通路18cのそれぞれの一端が配管(不図示)及びバルブ(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源に接続されていてもよい。
【0065】
この吸引源は、例えば、スピンドル16をケーシング18に接触させる際(
図3に示される接触ステップ(S21))において動作する。この場合、スピンドル16とケーシング18との隙間の流体を素早く排気することができる。これにより、クリープフィード研削で被加工物を研削する際に必要な時間を短縮することができる。
【0066】
あるいは、この吸引源は、クリープフィード研削で被加工物を研削する際(
図3に示される研削ステップ(S22))において動作してもよい。この場合、スピンドル16がケーシング18に吸引された状態でクリープフィード研削が行われる。これにより、被加工物を研削する際にチャックテーブル8に生じる振動をさらに抑制することができる。
【0067】
さらに、この吸引源は、
図3に示される接触ステップ(S21)及び研削ステップ(S22)の双方において動作してもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 :研削装置
4 :基台 (4a:開口)
6 :テーブルカバー
8 :チャックテーブル
10 :枠体 (10a:凹部)
12 :ポーラス板 (12a:上面)
14 :テーブルベース
16 :スピンドル (16a:本体部、16b:突出部)
18 :ケーシング (18a:凹部、18b:凸部、18c:連通路)
20 :従動プーリ (20a:シャフト、20b:シリンダ)
22 :ベルト
24 :伝動プーリ
26 :モータ
28 :防塵防滴カバー
30 :操作パネル
32 :支持構造
34 :Z軸方向移動機構(鉛直方向移動機構)
36 :Z軸ガイドレール
38 :Z軸移動プレート
40 :ねじ軸
42 :モータ
44 :支持具
46 :研削ユニット
48 :スピンドルハウジング
50 :スピンドル
52 :モータ
54 :ホイールマウント
56 :研削ホイール
58 :ホイール基台
60 :研削砥石