(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/02 20060101AFI20241125BHJP
B24B 53/02 20120101ALI20241125BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241125BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B24B7/02
B24B53/02
B24B7/04 A
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2021035936
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】首藤 大地
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016181(JP,A)
【文献】特開2009-142906(JP,A)
【文献】特開2017-056522(JP,A)
【文献】特開2019-141949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0176350(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105965392(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00-7/30
B24B53/00-57/04
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有し、該保持面の中心を通り、かつ、該保持面に垂直な回転軸で回転するチャックテーブルと、
複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールが先端に装着されるスピンドルを有し、該スピンドルを介して該研削ホイールを回転させて該複数の研削砥石で該被加工物を研削する研削ユニットと、
該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面に平行な第1方向に沿って相対的に移動させる第1移動機構と、
該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面に垂直な第2方向に沿って相対的に移動させる第2移動機構と、
を備える研削装置を用いて、該チャックテーブルに保持される該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該保持面にドレッシングボードを保持させる第1保持ステップと、
該第1保持ステップ後、該研削ホイールを回転させた時の該複数の研削砥石の回転軌道が該保持面からみて該第2方向に位置付けられるように、該チャックテーブル及び該研削ユニットを位置付けてから、該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させながら、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該第2方向に沿って相対的に移動させることによって、該ドレッシングボードで該複数の研削砥石をドレッシングするインフィードドレッシングステップと、
該インフィードドレッシングステップ後、該ドレッシングボードを該保持面から取り外してから、該保持面に該被加工物を保持させる第2保持ステップと、
該第2保持ステップ後、該第1方向において該保持面から該研削ホイールが離隔した状態で、該第2方向において該被加工物の表面と裏面との間に該複数の研削砥石のそれぞれの端面を位置付けてから、該研削ホイールを回転させながら、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該第1方向に沿って相対的に移動させることによって、該複数の研削砥石で該被加工物の該保持面から遠い側を研削するクリープフィード研削ステップと、
を備えることを特徴とする被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面に多数のデバイスが形成されたウェーハ等の被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
近年では、チップの小型化及び軽量化等を目的として、被加工物を分割する前に被加工物が薄化されることが多い。被加工物を薄化する方法としては、例えば、被加工物の表面(下面)側を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、チャックテーブルの上方に設けられ、かつ、環状に離散して配置された複数の研削砥石を備える研削ホイールとを有する研削装置による研削が挙げられる。
【0004】
このような研削装置においては、インフィード研削とも呼ばれる研削方法によってウェーハ等の被加工物を薄化することが多い。この研削方法においては、まず、チャックテーブルが研削ホイールの上方に位置付けられた状態でチャックテーブルと研削ホイールとを回転させる。
【0005】
そして、チャックテーブルと研削ホイールとを回転させたまま、複数の研削砥石の端面(下面)と被加工物の裏面(上面)とを接触させるように、チャックテーブルと研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させる。これにより、複数の研削砥石の端面(下面)によって被加工物の裏面(上面)側の全域が研削される。さらに、チャックテーブルと研削ホイールとを鉛直方向に沿って相対的に移動させ続けることで、被加工物の裏面(上面)側の所定の厚さを有する部分が除去されて被加工物が薄化される。
【0006】
また、このような研削装置においては、クリープフィード研削とも呼ばれる研削方法によって被加工物を薄化することもある(例えば、特許文献1参照)。この研削方法においては、まず、チャックテーブルと研削ホイールとが水平方向において離隔し、かつ、複数の研削砥石の端面(下面)が被加工物の裏面(上面)よりも低く、その表面(下面)よりも高くなるように位置付けられた状態で、研削ホイールを回転させる。
【0007】
そして、研削ホイールを回転させたまま、複数の研削砥石の外側面の端面(下面)側と被加工物の側面とを接触させるように、チャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させる。これにより、複数の研削砥石のそれぞれの外側面の端面(下面)側と端面(下面)とによって、被加工物の裏面(上面)側の所定の厚さを有する端部が研削される。さらに、チャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させ続けることで、被加工物の裏面(上面)側の全域が除去されて被加工物が薄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
研削砥石は、例えば、気孔が内在するビトリファイドボンド又はレジンボンド等のボンド材と、ボンド材に分散されたダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等の砥粒とを有する。そして、クリープフィード研削においては、複数の研削砥石のそれぞれの外側面の端面(下面)側と端面(下面)とに露出した砥粒によって被加工物が削られる。
【0010】
ただし、クリープフィード研削によって生じた研削屑が研削砥石の外側面の端面(下面)側と端面(下面)とに付着すると、研削砥石の外側面の端面(下面)側と端面(下面)とに砥粒が十分に露出しない(目詰まりする)ことがある。また、クリープフィード研削を繰り返し行うことで、研削砥石の外側面の端面(下面)側と端面(下面)とに露出した砥粒が摩耗する(目潰れする)こともある。
【0011】
これらの場合、研削装置における研削効率が低下するおそれがある。そのため、研削装置においては、適宜のタイミングで、複数の研削砥石の端面(下面)側を削って研削に適した状態に整える処理(ドレッシング)が行われることが多い。このような研削砥石のドレッシングは、円板状のドレッシングボードがチャックテーブルに吸引保持された状態で、被加工物を研削する時と同様に研削装置が動作することによって行われる。
【0012】
具体的には、クリープフィード研削を行う研削装置においては、まず、チャックテーブルと研削ホイールとが水平方向において離隔し、かつ、複数の研削砥石の端面(下面)がドレッシングボードの上面より低く、その下面より高くなるように位置付けられた状態で、研削ホイールを回転させる。そして、研削ホイールを回転させたまま、複数の研削砥石のそれぞれの外側面の端面(下面)側と被加工物の側面とを接触させるように、チャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させる。
【0013】
これにより、ドレッシングボードの側面の上面側と上面とによって、複数の研削砥石のそれぞれの端面(下面)側の所定の厚さを有する端部が削られる。さらに、チャックテーブルと研削ホイールとを水平方向に沿って相対的に移動させ続けることで、複数の研削砥石のそれぞれの端面(下面)側の全域が削られて複数の研削砥石がドレッシング(クリープフィードドレッシング)される。
【0014】
しかしながら、このようなクリープフィードドレッシング後に被加工物に対してクリープフィード研削を行うと、上面がうねるような(厚みが周期的かつ微細にばらつくような)研削痕が被加工物に形成されることが判明した。
【0015】
この点に鑑み、本発明の目的は、研削砥石のドレッシング後に被加工物に対してクリープフィード研削を行った場合であっても、このような研削痕が被加工物に形成される蓋然性を低減できる被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有し、該保持面の中心を通り、かつ、該保持面に垂直な回転軸で回転するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールが先端に装着されるスピンドルを有し、該スピンドルを介して該研削ホイールを回転させて該複数の研削砥石で該被加工物を研削する研削ユニットと、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面に平行な第1方向に沿って相対的に移動させる第1移動機構と、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該保持面に垂直な第2方向に沿って相対的に移動させる第2移動機構と、を備える研削装置を用いて、該チャックテーブルに保持される該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該保持面にドレッシングボードを保持させる第1保持ステップと、該第1保持ステップ後、該研削ホイールを回転させた時の該複数の研削砥石の回転軌道が該保持面からみて該第2方向に位置付けられるように、該チャックテーブル及び該研削ユニットを位置付けてから、該チャックテーブルと該研削ホイールとを回転させながら、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該第2方向に沿って相対的に移動させることによって、該ドレッシングボードで該複数の研削砥石をドレッシングするインフィードドレッシングステップと、該インフィードドレッシングステップ後、該ドレッシングボードを該保持面から取り外してから、該保持面に該被加工物を保持させる第2保持ステップと、該第2保持ステップ後、該第1方向において該保持面から該研削ホイールが離隔した状態で、該第2方向において該被加工物の表面と裏面との間に該複数の研削砥石のそれぞれの端面を位置付けてから、該研削ホイールを回転させながら、該チャックテーブルと該研削ユニットとを該第1方向に沿って相対的に移動させることによって、該複数の研削砥石で該被加工物の該保持面から遠い側を研削するクリープフィード研削ステップと、を備える被加工物の研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、インフィード研削する際と同様に研削装置を動作させることによって、ドレッシングボードで複数の研削砥石のドレッシング(インフィードドレッシング)が行われた後に、被加工物に対してクリープフィード研削が行われる。
【0018】
このインフィードドレッシングにおいては、研削ホイールのみならず、ドレッシングボードを吸引保持するチャックテーブルを回転させながら、複数の研削砥石とドレッシングボードとが接触する。これにより、ドレッシングボードに面内ばらつきが存在する場合であっても複数の研削砥石のそれぞれの端面(下面)側が同程度削られる。
【0019】
また、このインフィードドレッシングにおいては、ドレッシングボードと接触しながら移動する距離(ドレッシング長)が複数の研削砥石のそれぞれにおいて実質的に一定となる。他方、上記のクリープフィードドレッシングにおいては、ドレッシング長が複数の研削砥石のそれぞれにおいて僅かに変化する。
【0020】
これらの理由から、インフィードドレッシングを行う場合には、クリープフィードドレッシングを行う場合と比較して、ドレッシング後の複数の研削砥石の状態のばらつきを抑制することができる。その結果、本発明においては、研削砥石のドレッシング後に被加工物に対してクリープフィード研削を行った場合であっても、上面がうねるような(厚みが周期的かつ微細にばらつくような)研削痕が被加工物に形成される蓋然性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図2】
図2は、研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図3】
図3(A)は、第1保持ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、第1保持ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図4】
図4(A)は、インフィードドレッシングステップの際の研削装置の様子を模式的に示す斜視図であり、
図4(B)は、インフィードドレッシングステップの際の研削装置の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5(A)は、第2保持ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す斜視図であり、
図5(B)は、第2保持ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図6】
図6(A)は、クリープフィード研削ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す斜視図であり、
図6(B)は、クリープフィード研削ステップの際の研削装置の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、研削装置の一例を模式的に示す一部断面側面図である。なお、
図1に示されるX軸方向(前後方向、第1方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに垂直な方向であり、また、Z軸方向(上下方向、第2方向)は、X軸方向及びY軸方向に垂直な方向(鉛直方向)である。
【0023】
図1に示される研削装置2は、研削装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。基台4の上面側には、直方体状の開口4aが設けられている。そして、開口4aの内側には、チャックテーブル6が設けられている。チャックテーブル6の上面は、X軸方向及びY軸方向に概ね平行な面であり、被加工物又はドレッシングボードを保持する円形の保持面6aを構成する。
【0024】
また、開口4aの内側には、X軸方向移動機構(第1移動機構)8が設けられている。X軸方向移動機構8は、チャックテーブル6に連結されており、チャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる。このX軸方向移動機構8は、X軸方向に沿って延在するねじ軸10を備える。
【0025】
ねじ軸10の一端部には、ねじ軸10を回転させるためのモータ12が連結されている。また、ねじ軸10の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸10の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0026】
すなわち、ねじ軸10が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がX軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、チャックテーブル6に連結されている。そのため、モータ12でねじ軸10を回転させれば、このナット部とともにチャックテーブル6がX軸方向に沿って移動する。
【0027】
さらに、チャックテーブル6には、チャックテーブル6を回転させるためのモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。この回転駆動源は、保持面6aの中心を通り、かつ、保持面6aに垂直な直線を中心としてチャックテーブル6を回転させる。すなわち、チャックテーブル6の回転軸は、保持面6aの中心を通り、かつ、保持面6aに垂直な方向に沿うように設定されている。
【0028】
また、チャックテーブル6の内部には、チャックテーブル6の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が連結された吸引路(不図示)が形成されている。そして、保持面6aに被加工物又はドレッシングボードが置かれた状態で、この吸引源を動作させると、被加工物又はドレッシングボードがチャックテーブル6に吸引保持される。
【0029】
チャックテーブル6及びX軸方向移動機構8の後方(
図1の紙面右側)には、直方体状の支持構造14が設けられている。そして、支持構造14の表面(前面)側には、Z軸方向移動機構(第2移動機構)16が設けられている。Z軸方向移動機構16は、後述の研削ユニット28に連結されており、研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させる。
【0030】
このZ軸方向移動機構16は、支持構造14の表面側に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール18を備える。一対のガイドレール18の前面側には、一対のガイドレール18に沿ってスライド可能な態様で移動プレート20が連結されている。
【0031】
一対のガイドレール18の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸22が配置されている。ねじ軸22の一端部には、ねじ軸22を回転させるためのモータ24が連結されている。また、ねじ軸22の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸22の表面を転がるボールを収容するナット部26が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0032】
すなわち、ねじ軸22が回転すると、ボールがナット部26内を循環して、ナット部26がZ軸方向に沿って移動する。また、ナット部26は、移動プレート20の裏面(後面)側に固定されている。そのため、モータ24でねじ軸22を回転させれば、ナット部26とともに移動プレート20がZ軸方向に沿って移動する。
【0033】
移動プレート20の表面(前面)側には、研削ユニット28が装着されている。研削ユニット28は、移動プレート20の表面側に固定された中空の円柱状の支持部材30を備える。支持部材30には、円柱状のハウジング32が収容されている。ハウジング32は、その下面に設けられた接続部材34を介して、支持部材30の底壁に固定されている。
【0034】
ハウジング32には、Z軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル36が回転可能な態様で収容されている。スピンドル36の先端(下端)部は、ハウジング32から露出しており、支持部材30の底壁に設けられた開口を通って支持部材30の底面から下方に突出している。スピンドル36の先端部には、金属等からなる円盤状のマウント38が固定されている。
【0035】
このマウント38の下面側に、環状の研削ホイール40が装着されている。研削ホイール40は、例えば、ボルト等の固定具によってマウント38に固定される。研削ホイール40は、アルミニウム又はステンレス等の金属からなり、かつ、マウント38と概ね同径に形成された環状の基台42を備える。
【0036】
基台42の上面側は、マウント38の下面側に固定される。また、基台42の下面側には、複数の研削砥石44が固定されている。例えば、複数の研削砥石44は直方体状に形成され、基台42の周方向に沿って概ね等間隔で環状に配列されている。
【0037】
研削砥石44は、ダイヤモンド又はcBN(cubic Boron Nitride)等からなる砥粒を、メタルボンド、レジンボンド又はビトリファイドボンド等からなる結合材(ボンド材)で固定することによって形成される。ただし、研削砥石44の材質、形状、構造又は大きさ等に制限はない。また、複数の研削砥石44の数は任意に設定される。
【0038】
また、スピンドル36の基端(上端)部には、スピンドル36を回転させるためのモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。この回転駆動源がZ軸方向に沿った回転軸でスピンドル36を回転させると、スピンドル36とともにマウント38及び研削ホイール40が回転する。
【0039】
そして、研削ホイール40が回転した状態でチャックテーブル6に保持された被加工物に複数の研削砥石44が接触すると、被加工物の上面側が研削される。また、研削ホイール40が回転した状態でチャックテーブル6に保持されたドレッシングボードに複数の研削砥石44が接触すると、複数の研削砥石44がドレッシングされる。
【0040】
ただし、上記のクリープフィードドレッシング後に被加工物に対してクリープフィード研削を行うと、上面がうねるような(厚みが周期的かつ微細にばらつくような)研削痕が被加工物に形成されることが判明した。例えば、クリープフィード研削における研削ホイール40の回転速度を2500rpmとし、かつ、加工送り速度(チャックテーブル6と研削ホイール40とのX軸方向における相対的な移動速度)を10mm/sとすると、上面が約0.24mm周期でうねるような研削痕が被加工物に形成されることが判明した。
【0041】
ここで、上記のクリープフィード研削の条件においては、研削ホイール40が一回転する間にチャックテーブル6と研削ホイール40とがX軸方向に沿って相対的に0.24(=10/(2500/60))mm移動する。すなわち、複数の研削砥石44のそれぞれは、X軸方向において、0.24mm周期で被加工物に接触して、その上面側を研削することになる。
【0042】
このことから、本発明者らは、複数の研削砥石44の状態がばらつくことが上記のような研削痕が形成される原因になっていることを見出した。そして、本発明者らは、このような状態のばらつきがクリープフィードドレッシングに起因することを見出し、
図2に示されるような研削方法を発明した。
【0043】
図2は、研削装置2を用いて、チャックテーブル6に保持される被加工物を研削する研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、チャックテーブル6の保持面6aにドレッシングボードを保持させる(第1保持ステップ:S1)。
【0044】
図3(A)は、第1保持ステップ(S1)の際の研削装置2の様子を模式的に示す斜視図であり、また、
図3(B)は、第1保持ステップ(S1)の際の研削装置2の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
図3(A)及び
図3(B)に示されるドレッシングボード1は、保持面6aよりも径が短い円盤状の形状を有する。
【0045】
このドレッシングボード1は、例えば、炭化珪素(SiC)又は酸化アルミニウム(Al2O3)等からなる砥粒をビトリファイドボンド又はレジンボンド等からなる結合材に混錬した後に焼成することによって形成される。さらに、ドレッシングボード1は、支持プレート3と一体化されている。
【0046】
この支持プレート3は、ドレッシングボード1よりも径が長く、かつ、保持面6aよりも径が短い円盤状の形状を有する。また、支持プレート3は、例えば、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなり、その上面の中央にドレッシングボード1が接着剤を介して貼着されている。なお、ドレッシングボード1及び支持プレート3の材質、形状、構造又は大きさ等に制限はない。
【0047】
第1保持ステップ(S1)においては、まず、
図1に示される状態よりもチャックテーブル6を研削ユニット28から離隔させるように、X軸方向移動機構8がチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる。次いで、支持プレート3を下にして、ドレッシングボード1を保持面6aに搬入する(
図3(A)及び
図3(B)参照)。
【0048】
次いで、チャックテーブル6の内部に形成された吸引路の一端に連結された吸引源を動作させる。これにより、支持プレート3を介してドレッシングボード1がチャックテーブル6に吸引保持される。すなわち、第1保持ステップ(S1)が完了する。
【0049】
図2に示される方法においては、第1保持ステップ(S1)後、上記のインフィード研削の際と同様に研削装置2を動作させることによって、ドレッシングボード1で複数の研削砥石44をドレッシングする(インフィードドレッシングステップ:S2)。
【0050】
図4(A)は、インフィードドレッシングステップ(S2)の際の研削装置2の様子を模式的に示す斜視図であり、また、
図4(B)は、インフィードドレッシングステップ(S2)の際の研削装置2の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0051】
インフィードドレッシングステップ(S2)においては、まず、研削ホイール40を回転させた時の複数の研削砥石44の回転軌道が保持面6aの中心からみてZ軸方向に位置付けられるように、X軸方向移動機構8がチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる。次いで、チャックテーブル6に連結されている回転駆動源がチャックテーブル6を回転させ、かつ、スピンドル36の基端部に連結されている回転駆動源がスピンドル36を介して研削ホイール40を回転させる。
【0052】
次いで、チャックテーブル6と研削ホイール40とを回転させたまま、複数の研削砥石44の端面(下面)とドレッシングボード1の上面とを接触させるように、Z軸方向移動機構16が研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させる(
図4(A)及び
図4(B)参照)。これにより、ドレッシングボード1の上面によって複数の研削砥石44のそれぞれの端面(下面)側が削られる。さらに、Z軸方向移動機構16が研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させ続けることで、複数の研削砥石44の端面(下面)側の所定の厚さを有する部分が削られて、複数の研削砥石44がドレッシングされる。
【0053】
このように複数の研削砥石44のドレッシングが完了すれば、チャックテーブル6と研削ホイール40との回転を停止させ、かつ、複数の研削砥石44の端面(下面)とドレッシングボード1の上面とを離隔させるように、Z軸方向移動機構16が研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させる。以上によって、インフィードドレッシングステップ(S2)が完了する。
【0054】
図2に示される方法においては、インフィードドレッシングステップ(S2)後、チャックテーブル6の保持面6aに被加工物を保持させる(第2保持ステップ:S3)。
図5(A)は、第2保持ステップ(S3)の際の研削装置2の様子を模式的に示す斜視図であり、また、
図5(B)は、第2保持ステップ(S3)の際の研削装置2の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0055】
図5(A)及び
図5(B)に示される被加工物11は、保持面6aよりも径が短い円盤状の形状を有する。この被加工物11は、例えば、Si(シリコン)、SiC(炭化シリコン)又はGaN(窒化ガリウム)等の半導体材料からなる円盤状のウェーハであり、その表面にはIC又はLSI等の多数のデバイスが形成されている。
【0056】
なお、この被加工物11の表面には、被加工物11と同径の円盤状の保護テープが貼着されていてもよい。このように被加工物11の表面に保護テープが貼着されている場合、被加工物11が研削される際にデバイスに加わる衝撃が緩和されてデバイスが破損する蓋然性を低減することができる。また、被加工物11には、デバイスが形成されていなくてもよい。
【0057】
第2保持ステップ(S3)においては、まず、チャックテーブル6を研削ユニット28から離隔させるように、X軸方向移動機構8がチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる。次いで、チャックテーブル6の内部に形成された吸引路の一端に連結された吸引源の動作を停止させる。次いで、支持プレート3と一体化されたドレッシングボード1を保持面6aから搬出する。
【0058】
次いで、表面が下になるように、被加工物11を保持面6aに搬入する(
図5(A)及び
図5(B)参照)。次いで、チャックテーブル6の内部に形成された吸引路の一端に連結された吸引源を動作させる。これにより、被加工物11がチャックテーブル6に吸引保持される。すなわち、第2保持ステップ(S3)が完了する。
【0059】
図2に示される方法においては、第2保持ステップ(S3)後、複数の研削砥石44で被加工物11の保持面6aから遠い側(裏面(上面)側)を研削(クリープフィード研削)する(クリープフィード研削ステップ:S4)。
図6(A)は、クリープフィード研削ステップ(S4)の際の研削装置2の様子を模式的に示す斜視図であり、また、
図6(B)は、クリープフィード研削ステップ(S4)の際の研削装置2の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0060】
クリープフィード研削ステップ(S4)においては、まず、複数の研削砥石44の端面(下面)が被加工物11の裏面(上面)よりも低く、その表面(下面)よりも高くなるように、Z軸方向移動機構16が研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させる。次いで、スピンドル36の基端部に連結されている回転駆動源がスピンドル36を介して研削ホイール40を回転させる。
【0061】
次いで、研削ホイール40を回転させたまま、複数の研削砥石44の外側面の端面(下面)側と被加工物11の側面とを接触させるように、X軸方向移動機構8がチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させる(
図6(A)及び
図6(B)参照)。これにより、複数の研削砥石44のそれぞれの外側面の端面(下面)側と端面(下面)とによって、被加工物11の裏面(上面)側の所定の厚さを有する端部が研削される。さらに、X軸方向移動機構8がチャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させ続けることで、被加工物11の裏面(上面)側の全域が研削されて、被加工物11が薄化される。
【0062】
このように被加工物11が薄化されれば、研削ホイール40の回転を停止させ、かつ、複数の研削砥石44の端面(下面)とドレッシングボード1の上面とを離隔させるように、Z軸方向移動機構16が研削ユニット28をZ軸方向に沿って移動させる。以上によって、クリープフィード研削ステップ(S4)が完了する。
【0063】
図2に示される方法においては、ドレッシングボード1で複数の研削砥石44のインフィードドレッシングが行われた後に、被加工物11に対してクリープフィード研削が行われる。
【0064】
このインフィードドレッシングにおいては、研削ホイール40のみならず、ドレッシングボード1を吸引保持するチャックテーブル6を回転させながら、複数の研削砥石44とドレッシングボード1とが接触する。これにより、ドレッシングボード1に面内ばらつきが存在する場合であっても複数の研削砥石44のそれぞれの端面(下面)側が同程度削られる。
【0065】
また、このインフィードドレッシングにおいては、ドレッシングボード1と接触しながら移動する距離(ドレッシング長)が複数の研削砥石44のそれぞれにおいて実質的に一定となる。他方、クリープフィード研削する際と同様に研削装置2を動作させることによって、複数の研削砥石44がドレッシング(クリープフィードドレッシング)される場合には、ドレッシング長が複数の研削砥石44のそれぞれにおいて僅かに変化する。
【0066】
これらの理由から、インフィードドレッシングを行う場合には、クリープフィードドレッシングを行う場合と比較して、ドレッシング後の複数の研削砥石44の状態のばらつきを抑制することができる。その結果、
図2に示される方法においては、研削砥石44のドレッシング後に被加工物11に対してクリープフィード研削を行った場合であっても、上面がうねるような(厚みが周期的かつ微細にばらつくような)研削痕が被加工物11に形成される蓋然性を低減できる。
【0067】
なお、上述した方法は本発明の一態様であって、本発明は上述した方法に限定されない。例えば、本発明においては、チャックテーブル6がY軸方向及び/又はZ軸方向に移動可能なように構成されていてもよく、また、研削ユニット28がX軸方向及び/又はY軸方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0068】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0069】
2 :研削装置
4 :基台(4a:開口)
6 :チャックテーブル(6a保持面)
8 :X軸方向移動機構(第1移動機構)
10 :ねじ軸
12 :モータ
14 :支持構造
16 :Z軸方向移動機構(第2移動機構)
18 :ガイドレール
20 :移動プレート
22 :ねじ軸
24 :モータ
26 :ナット部
28 :研削ユニット
30 :支持部材
32 :ハウジング
34 :接続部材
36 :スピンドル
38 :マウント
40 :研削ホイール
42 :基台
44 :研削砥石
1 :ドレッシングボード
3 :支持プレート
11 :被加工物