(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法及びから揚げ粉
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20241125BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241125BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
(21)【出願番号】P 2020040545
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 龍太
(72)【発明者】
【氏名】間平 由梨佳
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】[この差って何ですか?]カリッとした唐揚げをつくる超簡単な方法!,2016年11月20日,pp.1-9,retrieved on 2024.03.15, retrieved from the internet,<https://www.gr8lodges.com/9533.html>
【文献】きょうの料理レシピ 鶏の柔らかから揚げ,2004年10月06日,pp.1-4,retrieved on 2024.11.11, retrieved from the internet,<https://www.kyounoryouri.jp/recipe/4185_%E9%B6%8F%E3%81%AE%E6%9F%94%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%89%E6%8F%9A%E3%81%92.html>
【文献】[シェフ解説]どれがサクサク?唐揚げ衣レシピ4種の違いを検証。小麦粉・片栗粉・コーンスターチ・米粉…,2017年10月26日,pp.1-7,retrieved on 2024.06.21, retrieved from the internet <https://mi-journey.jp/foodie/41878/#02>
【文献】かりっと香ばしく!からあげ,2014年08月22日,pp.1-2,retrieved on 2024.06.21, retrieved from the internet <https://cookpad.com/recipe/2766522>
【文献】Food Hydrocoll.,2019年,vol.94,pp.217-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/157
A23L 5/10
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉、及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物を具材にまぶす第1工程と、
前記粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置する第2工程と、
を少なくとも行い、
前記特定澱粉のRVA最高粘度が6000mPa・s以下であ
り、
前記第1工程の前にバッターを具材に付着させる前処理工程を行う、から揚げの製造方法。
【請求項2】
前記特定澱粉が、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のから揚げの製造方法。
【請求項3】
前記バッターに油脂を含有させる、請求項
1に記載のから揚げの製造方法。
【請求項4】
前記バッターに、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有させる、請求項
1に記載のから揚げの製造方法。
【請求項5】
コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物を具材にまぶす第1工程と、
前記粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置する第2工程と、
を少なくとも行い、
前記特定澱粉のRVA最高粘度が6000mPa・s以下であ
り、
前記第1工程の前にバッターを具材に付着させる前処理工程を行う、
衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法及びから揚げ粉に関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げは、肉や魚等の具材にから揚げ粉をまぶしたり、バッターを和えたりして、油で揚げたものである。から揚げは、具材表面にから揚げ粉をまぶして油ちょう(油揚げ)する「まぶし処方」や、から揚げ粉に加水してバッターを調製し、それを具材に被覆させて油ちょうする「練りこみ処方」によって製造されている。近年、具材がジューシーで、衣が硬い食感のから揚げのニーズが高くなっている。このようなニーズに対応するため、従来から、から揚げの衣の硬さを改善する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、酸処理アセチル化澱粉および酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する、フライ食品用衣材が提案され、から揚げ粉に使用する澱粉について検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の「まぶし処方」によってから揚げを製造すると、具材のジューシー感が失われやすく、衣も硬くなりにくい。また、従来の「練りこみ処方」によってから揚げを製造すると、具材のジューシー感は維持されるものの、衣を硬い食感にするのが困難であった。さらに、特許文献1に記載された澱粉の種類を特定するだけでは、得られたから揚げの衣を十分に硬い食感にすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、特定の種類の澱粉を含有する粉粒状組成物を具材にまぶし、粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置することにより、衣が硬い食感のから揚げを得られることを見出し、本技術を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本技術は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物を具材にまぶす第1工程と、前記粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置する第2工程と、を少なくとも行う、から揚げの製造方法である。
また、本技術においては、前記第1工程の前にバッターを具材に付着させる前処理工程を行ってもよい。
また、本技術においては、前記バッターに油脂を含有させてもよい。
また、本技術においては、前記バッターにコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有させてもよい。
また、本技術は、前記特定澱粉のRVA最高粘度が6000mPa・s以下であってもよい。
また、本技術は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物を具材にまぶす第1工程と、前記粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置する第2工程と、を少なくとも行う、衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法用から揚げ粉を提供する。
また、本技術は、前記から揚げの製造方法用から揚げ粉を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0010】
<1.特定澱粉>
本技術では、衣が硬い食感のから揚げを得るために、特定澱粉を使用する。特定澱粉とは、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の澱粉である。本技術に係る特定澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。なお、加工澱粉とは、澱粉に、化学的な処理、物理的な処理、酵素的な処理を単独又は複数組み合わせて施したものをいう。澱粉に施す化学的な処理としては、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理等が挙げられ、例えば、酢酸澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。澱粉に施す物理的な処理としては、乾燥処理、α化処理、湿熱処理、油脂加工処理、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理等が挙げられる。澱粉に施す酵素的な処理としては、α-アミラーゼ又はα-グルコシダーゼなどによる酵素処理が挙げられる。また、前記特定澱粉が加工澱粉である場合、リン酸架橋澱粉、酸化処理澱粉、油脂加工澱粉、漂白澱粉が好ましい。酸化澱粉処理澱粉は焦げが生じやすいため、より好ましくはリン酸架橋澱粉、漂白澱粉である。
【0011】
また、特定澱粉のRVA最高粘度が、6000mPa・s以下であるものが好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、4000mPa・s以下がさらに好ましい。RVA粘度が高い澱粉を用いると、衣の硬さは向上するが歯切れが悪い食感になる傾向があるためである。なお、RVA最高粘度とは、次に示す手順で測定することができる。固形分6%の澱粉懸濁液を調製し、ラピッドビスコアナライザー(RVA4500、Perten社製)にて、50℃から95℃まで7℃/minで昇温した後95℃で3分間保持する温度プログラムで加熱する。加熱中の澱粉懸濁液の粘度をパドル回転数160rpmで測定し、粘度の最高値をRVA最高粘度とする。
【0012】
<2.粉粒状組成物>
本技術では、具材を被覆して油ちょうされた後に衣となる粉粒状組成物は、前記特定澱粉を少なくとも含有するものである。衣が硬い食感のから揚げを製造するため、粉粒状組成物中の特定澱粉の含有量は25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がよりさらに好ましい。
【0013】
また、本技術に係る粉粒状組成物は、他の材料を含有させずに、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉のみとすることができる。
【0014】
また、衣が硬いから揚げを得るという効果を損なわない限り、粉粒状組成物は、前記特定澱粉と他の材料を混合して使用してもよい。粉粒状組成物に含有させる他の材料として、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉;米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉、トウモロロコシ粉等の穀粉類、これらの穀粉類を加熱処理した加熱処理穀粉、本発明における特定澱粉以外の澱粉類、デキストリン、粉末水飴、オリゴ糖、砂糖、ブドウ糖、トレハロース、糖アルコール等の糖質;液状油、固形脂、粉末油脂等の油脂;卵白粉、小麦蛋白、乳蛋白、大豆蛋白等の蛋白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;食塩、グルタミン酸ナトリウム、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜具材又は魚介由来エキス等のエキス類;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;キサンタンガム、グアガム、及びローカストビーンガム等の増粘剤;かぼちゃ粉、卵黄粉、全卵粉、乳化剤、着色料、香料、香辛料、品質改良剤等が挙げられる。
【0015】
さらに、本技術では、後記する第1工程と第2工程とを、少なくとも行う、衣の硬さを向上させるから揚げの製造方法において、から揚げ粉として、前記粉粒状組成物を使用することができる。また、本技術では、前記から揚げの製造方法用から揚げ粉として、前記粉粒状組成物を使用することができる。
【0016】
<3.から揚げの製造方法>
(3-1)第1工程
本技術では、第1工程において、特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物を具材にまぶす。具材は、特に限定されないが、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉等の畜肉類;エビ、カニ、イカ、タコ、ホタテ、アジ、サンマ等の魚介類;タマネギ等の野菜類等が挙げられる。具材は、適宜、下処理することができ、粉粒状組成物をまぶす前に、醤油や酒等の調味料類、卵液、水、油脂等と和えておくこともできる。粉粒状組成物を具材にまぶす方法は、例えば、具材表面の水分を利用して、具材と粉粒状組成物を容器内で混合することで具材の全表面に粉粒状組成物を付着させたり、衣を付着させたい部分だけに粉粒状組成物を振りかけたり、まぶしつけたりすることによって行われる。なお、具体的には、具材100質量部に対して、粉粒状組成物が1~30質量部の範囲となるような量で使用するのが好ましく、3~20質量部の範囲となるような量で使用するのがより好ましい。
【0017】
(3-2)第2工程
第2工程では、第1工程で粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置する。粉粒状組成物がまぶされた具材を30分以上静置することにより、具材の水分が、粉粒状組成物に移行してなじみ、水分を適度に含んだ粉粒状組成物によって具材表面が均一に被覆された状態が維持される。静置時の温度は、具材の水分が粉粒状組成物に移行し、かつ粉粒状組成物に含まれる澱粉が糊化しない温度であれば特に制限されず、例えば冷蔵、常温などで静置することができる。衛生面の観点から、冷蔵(例えば10℃以下)で静置することが好ましい。静置後に、粉粒状組成物がまぶされた具材を油で揚げることにより、衣が硬いから揚げを得ることができる。静置時間が30分に満たない場合、衣を十分な硬さとすることができない。
【0018】
なお、具材の水分を粉粒状組成物に移行させてなじませるため、40分以上静置させるのが好ましく、1時間以上静置させるのがより好ましい。また、衛生面と、水分蒸発による具材の乾燥防止と、衣となる粉粒状組成物からの水分の過剰蒸発防止の観点から、静置を24時間以内とするのが好ましく、12時間以内とするのがより好ましく、8時間以内とするのがさらに好ましく、2時間以内とするのがよりさらに好ましい。
【0019】
(3-3)前処理
本技術では、第1工程の前に、前処理として、バッターを具材に付着させてもよい。第1工程の前に、前処理としてバッターを具材に付着させることにより、衣の硬さを有しつつ、具材のジューシー感を向上させることができる。バッターとは、穀粉類や澱粉類等の粉粒状の原料と、水や油脂等の液状の原料とを混合した、スラリー状または液状の衣材をいう。バッターにおける、粉粒状の原料と液状の原料の混合割合は、粉粒状の原料100質量部に対して、液状の原料を20~600質量部混合することが好ましく、40~500質量部混合することがより好ましく、60~300質量部混合することがさらに好ましい。バッターを具材に付着させるには、バッターに具材を漬け込むことや、刷毛等でバッターを具材に塗布させることによって行われてもよい。
【0020】
バッターの具材に対する付着量は、具材100質量部に対して1~30質量部の範囲が好ましく、3~25質量部の範囲がより好ましく、5~20質量部の範囲がさらに好ましい。
【0021】
本技術に係るバッターは、油脂を含むことが好ましい。油脂を含むことにより、更に衣の硬さを向上させることができる。混合させる油脂としては、例えば、大豆油、高オレイン酸大豆油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、菜種油、高オレイン酸菜種油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、パーム油、パーム核油、米ぬか油、綿実油、紅花油、高オレイン酸紅花油、カポック油、ヤシ油、アマニ油、エゴマ油、シソ油、落花生油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アーモンド油、カシューナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、あんず油、椿油、茶実油、カラシ油、小麦胚芽油、ボラージ油、アボカド油、カヤ油、藻類油等の植物油脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物油脂、およびこれらの油脂に分別、水素添加、エステル交換等の加工処理を行った加工油脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
バッターに配合する粉粒状の原料は、特に限定されず、通常バッターに使用される穀粉類、澱粉類等を用いることができる。コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉及びそれらの加工澱粉からなる群から選択される少なくとも1種の特定澱粉を少なくとも含有する粉粒状組成物であってもよい。前記粉粒状組成物を使用することにより、更に衣の硬さを向上させることができる。
【0023】
また、バッターには、本技術の効果を損なわない限り、前記粉粒状組成物で説明した、その他の材料を混合させてもよい。
【0024】
(3-4)油ちょう
本技術では、第1工程及び第2工程を行って調製された具材を、油ちょう(油揚げ)により加熱調理する。油ちょうの温度及び時間は、特に限定されないが、例えば、140~190℃で1~10分間油ちょうすればよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
本実施例で使用した原料の一部を以下に示す。
コーンスターチ:昭和コーンスターチ(昭和産業株式会社)
小麦澱粉:白木蓮(青)(昭和産業株式会社)
馬鈴薯澱粉:馬鈴しょでん粉(美幌)(美幌地方農産加工業協同組合連合会)
リン酸架橋馬鈴薯澱粉:パーフェクトアミールP10X(松谷化学工業株式会社)
油脂加工馬鈴薯澱粉:ニッショク銀玲(日本食品化工株式会社)
酸化馬鈴薯澱粉:スタビローズK(松谷化学工業株式会社)
漂白タピオカ澱粉:SF-2050(昭和産業株式会社)
緑豆澱粉:緑豆澱粉(松谷化学工業株式会社)
漂白エンドウ豆澱粉:スターチEH(日澱化学株式会社)
米澱粉:ファインスノウ(上越スターチ株式会社)
ワキシーコーンスターチ:J-オイルミルズワキシーコーンスターチY(株式会社J-オイルミルズ)
ハイアミロースコーンスターチ:SF-200(昭和産業株式会社)
【0027】
<分析方法>
[RVA最高粘度]
特定澱粉を蒸留水に懸濁し、固形分6%の澱粉懸濁液を調製した。澱粉懸濁液を、ラピッドビスコアナライザー(RVA4500、Perten社製)にて、50℃から95℃まで7℃/minで昇温した後95℃で3分間保持する温度プログラムで加熱した。加熱中の澱粉懸濁液の粘度をパドル回転数160rpmで測定し、粘度の最高値をRVA最高粘度とした。
【0028】
<試験例1>(方法の検討、澱粉種の検討)
[実施例1~12、比較例3~4]
下記表1に示す配合で、粉粒状組成物を調製した。容器に鶏肉25切れ(約1000g)と調味液150gを入れ、揉みこんで下味をつけた。粉粒状組成物100gを下味のついた鶏肉にまぶして付着させた後、容器を密閉し、4℃の冷蔵庫にて表1に記載の時間、静置した。静置後、170℃のサラダ油で5分間油ちょうしてから揚げを得た。
【0029】
[比較例1]
下記表1に示す配合の粉粒状組成物を用いた。鶏肉25切れ(約1000g)に調味液150gを揉みこんで下味をつけた。粉粒状組成物100gに水80gを添加し、バッターを調製した。バッター180gと下味をつけた鶏肉を混合した。実施例1と同じように1時間静置した。静置後、170℃のサラダ油で5分間油ちょうしてから揚げを得た。
【0030】
[比較例2]
下記表1に示す配合の粉粒状組成物を用いた。粉粒状組成物を鶏肉にまぶした後、静置することなく、直ちに油ちょうする以外は、実施例1と同じ条件でから揚げを得た。
【0031】
油ちょう後3時間室温で放冷したから揚げについて、専門パネル10名にて、以下の評価基準を使用して衣の硬さ、肉のジューシー感を試食評価した。専門パネル10名の評価点の平均値を算出し、評価点とした。評価結果を表1に示す。
【0032】
(衣の硬さ)
5:衣が非常に硬い
4:衣に硬さがある
3:衣にやや硬さがあり、許容範囲
2:衣が柔らかい
1:衣が非常に柔らかい
(肉のジューシー感)
5:肉のジューシー感を強く感じ、非常に良好
4:肉のジューシー感を感じ、良好
3:肉のジューシー感をやや感じ、許容範囲
2:肉がややパサついており、悪い
1:肉がパサついており、非常に悪い
【0033】
【0034】
特定澱粉を少なくとも1種含有する粉粒状組成物を鶏肉にまぶし、1時間静置させた実施例1~2、4~12のから揚げは、衣が硬く、良好な食感を有しており、肉のジューシー感も感じられるものであった。馬鈴薯澱粉を用いた実施例3のから揚げは、衣の食感は硬かったが、歯切れが悪く、やや食感が悪かった。特定澱粉のRVA最高粘度を測定したところ、コーンスターチ:299mPa・s、小麦澱粉:88mPa・s、馬鈴薯澱粉:6240mPa・s、リン酸架橋馬鈴薯澱粉:2550mPa・s、油脂加工馬鈴薯澱粉:3721mPa・s、酸化馬鈴薯澱粉:20mPa・s、漂白タピオカ澱粉:540mPa・s、緑豆澱粉:444mPa・s、漂白エンドウ豆澱粉:146mPa・s、米澱粉:280mPa・sあったことから、特定澱粉としては、RVA最高粘度が6000mPa・s以下であるものが好ましいことが示唆された。また、酸化馬鈴薯澱粉を使用した実施例8は、衣の食感は硬さがあり良好であったが、焦げが生じやすかったため、特定澱粉として加工澱粉を用いる場合は、リン酸架橋澱粉、油脂加工澱粉、漂白澱粉がより好ましいことが示唆された。
【0035】
比較例1においては、本技術に係る第1工程を行わないで第2工程のみを行った場合の結果を確認するために、粉粒状組成物を肉にまぶさずに、バッターを肉に被覆させて油ちょうした。比較例1で得られたから揚げは、衣が柔らかく、硬い食感を得られなかった。また、比較例2においては、本技術に係る第2工程を行わないで第1工程のみを行った場合の結果を確認するために、粉粒状組成物を肉にまぶした後、静置することなく、直ちに油ちょうした。比較例2で得られたから揚げは衣が非常に柔らかく、また、肉がややパサついたジューシー感の乏しいものであった。さらに、比較例3~4においては、特定澱粉を含有しない粉粒状組成物を使用して、第1工程及び第2工程を行った場合の結果を確認するために、特定澱粉が配合されていない粉粒状組成物を肉にまぶした後、肉を1時間静置して、油ちょうした。比較例3~4のから揚げは、衣を十分な硬さとすることができなかった。
【0036】
<試験例2>(特定澱粉の配合量の検討)
[実施例13~17]
下記表2に示す配合で澱粉を混合し、粉粒状組成物を調製した。試験例1の実施例1と同様の手順でから揚げを製造し、試験例1と同様に衣の硬さと肉のジューシー感を評価した。
【0037】
【0038】
粉粒状組成物中において、特定澱粉であるコーンスターチの配合割合が増加するにつれて、得られたから揚げの衣の硬さを向上させることができた。
【0039】
<試験例3>(静置時間の検討)
[実施例18~23、比較例5]
下記表3に示すとおり、小麦澱粉を粉粒状組成物として用いた。粉粒状組成物がまぶされた肉の静置時間を変更する以外は、試験例1の実施例1と同様の手順でから揚げを製造し、試験例1と同様に衣の硬さと肉のジューシー感を評価した。
【0040】
【0041】
静置時間を30分以上とすることにより、得られたから揚げの衣の硬さを向上させることができた。なお、静置時間が30分に満たない比較例5のから揚げは、衣を十分な硬さとすることができなかった。
【0042】
<試験例4>(前処理工程、第1工程及び第2工程を行った場合の検討)
[実施例24~27]
容器に鶏肉25切れ(約1000g)と調味液150gを入れ、揉みこんで下味をつけた。前処理として、下記表4に示す配合でバッターを調製し、バッター200gと下味をつけた鶏肉を混合した。表4に示す原料の粉粒状組成物100gを、バッターの付着した鶏肉にまぶした。その後、容器を密閉し、4℃の冷蔵庫にて鶏肉を1時間静置した。静置後、170℃のサラダ油で5分間油ちょうしてから揚げを製造し、試験例1と同様に衣の硬さと肉のジューシー感を評価した。評価結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
第1工程の前に、前処理として、バッターを鶏肉に付着させ、その後、第1工程と第2工程を行った実施例24~27のから揚げは、衣が硬く、非常に良好な食感を有するとともに肉のジューシー感を更に向上させることができた。バッターに水を使用した実施例24と比べて、バッターに油脂を使用した実施例25は、より衣の硬さが向上する傾向があった。また、バッターに小麦粉を使用した実施例24と比べて、特定澱粉であるコーンスターチを使用した実施例26は、より衣の硬さが向上する傾向があった。