(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】載置台及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241125BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241125BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020103142
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】永関 一也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 道茂
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006737(JP,A)
【文献】特開2002-110774(JP,A)
【文献】特開平10-041377(JP,A)
【文献】特開2017-147126(JP,A)
【文献】特開2019-201087(JP,A)
【文献】特開2021-44543(JP,A)
【文献】特開2018-73613(JP,A)
【文献】特開2006-140455(JP,A)
【文献】特開2017-126641(JP,A)
【文献】特表2020-526012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が5.0g/cm
3以下の材料からなる第1の部材と、
前記第1の部材と
接合面を介して接合され、線膨張係数が5.0×10
-6/K以下、かつ熱伝導率が100W/mK以上の材料からなる第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材
に跨って、前記第1の部材及び前記第2の部材の内部に形成された温調媒体の流路と、を有し、
前記接合面は、前記第1の部材の材料と前記第2の部材の材料との配合率を変化させながら形成されている、
載置台。
【請求項2】
前記接合面は、
3Dプリンタにより形成さ
れる、
請求項1に記載の載置台。
【請求項3】
前記第2の部材は、前記第1の部材との接合面と反対側で静電チャックと接合されている、
請求項1または請求項2に記載の載置台。
【請求項4】
前記第1の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、又はチタン合金のいずれかである、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項5】
前記第2の部材は、モリブデン、タングステン、シリコン、炭化ケイ素、又は窒化アルミニウムのいずれかである、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項6】
基板を載置する載置台を有する基板処理装置であって、
前記載置台は、
密度が5.0g/cm
3以下の材料からなる第1の部材と、
前記第1の部材の上にて前記第1の部材と
接合面を介して接合され、線膨張係数が5.0×10
-6/K以下、かつ熱伝導率が100W/mK以上の材料からなる第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材
に跨って、前記第1の部材及び前記第2の部材の内部に形成された温調媒体の流路と、を有し、
前記接合面は、前記第1の部材の材料と前記第2の部材の材料との配合率を変化させながら形成されている、
基板処理装置。
【請求項7】
前記接合面は、
3Dプリンタにより形成さ
れる、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第2の部材は、前記第1の部材との接合面と反対側で静電チャックと接合されている、
請求項6または請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、又はチタン合金のいずれかである、
請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2の部材は、モリブデン、タングステン、シリコン、炭化ケイ素、又は窒化アルミニウムのいずれかである、
請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、載置台及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、基台及び静電チャックを有する載置台を開示する。基台は、例えばアルミニウムやチタン等から形成されている。基台の内部には冷却流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、熱伝導が良く、線膨張係数が低く、かつ軽量な載置台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、密度が5.0g/cm3以下の材料からなる第1の部材と、前記第1の部材と接合面を介して接合され、線膨張係数が5.0×10-6/K以下、かつ熱伝導率が100W/mK以上の材料からなる第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材に跨って、前記第1の部材及び前記第2の部材の内部に形成された温調媒体の流路と、を有し、前記接合面は、前記第1の部材の材料と前記第2の部材の材料との配合率を変化させながら形成されている、載置台が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、熱伝導が良く、線膨張係数が低く、かつ軽量な載置台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図である。
【
図2】一実施形態に係る基板処理装置の載置台の一部を拡大して示す図である。
【
図3】一実施形態に係る載置台の基台を構成する物質の物性値を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る3Dプリンタの構成の一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る基台の製造方法1を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る基台の製造方法2を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る製造方法1、2により造形した基台を模式的に示す図である。
【
図8】一実施形態に係る基台の製造方法3と造形した基台を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
まず、
図1を参照しながら、一実施形態に係る載置台を有する基板処理装置100について説明する。
図1は、一実施形態に係る基板処理装置100の一例を示す断面模式図である。基板処理装置100は、容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0010】
基板処理装置100は、処理容器112及び載置台116を有する。処理容器112は、略円筒形状を有しており、その内部空間を処理室112cとして提供している。処理容器112は、例えば、アルミニウムから構成されている。処理容器112の内部空間側の表面には、アルマイト膜及び/又は酸化イットリウム膜といった耐プラズマ性を有するセラミックス製の皮膜が形成されている。処理容器112は接地されている。処理容器112の側壁には、ウェハWを処理室112cに搬入し、処理室112cから搬出するための開口112pが形成されている。開口112pは、ゲートバルブGVによって開閉することが可能となっている。
【0011】
載置台116は、ウェハWを処理室112c内で支持するように構成されている。載置台116は、静電チャック120にてウェハWを吸着する機能、ウェハWの温度を調整する機能、及び基台117に高周波を伝送する構造を有している。基台117は、第1の部材117a及び第2の部材117bを有する。載置台116の詳細については、後述する。
【0012】
基板処理装置100は、上部電極130を有する。上部電極130は、処理容器112の上部開口内に配置されており、下部電極として機能する載置台116の略平行に配置されている。上部電極130と処理容器112との間には、絶縁性の支持部材132が介在している。
【0013】
上部電極130は、天板134及び支持体136を有している。天板134は、略円盤形状を有している。天板134は、導電性を有し得る。天板134は、例えば、シリコン又はアルミニウムから形成されており、その表面には、耐プラズマ性のセラミックス皮膜が形成されている。この天板134には、複数のガス吐出孔134aが形成されている。ガス吐出孔134aは、略鉛直方向に延びている。
【0014】
支持体136は、天板134を着脱自在に支持している。支持体136は、例えば、アルミニウムから形成されている。支持体136には、ガス拡散室136aが形成されている。ガス拡散室136aからは、複数のガス吐出孔134aにそれぞれ連通する複数の孔136bが延びている。ガス拡散室136aには、ポート136cを介して配管138が接続している。配管138には、ガス供給部139が接続されている。
【0015】
基板処理装置100は、排気装置150を有する。排気装置150は、ターボ分子ポンプ、ドライポンプといった一以上のポンプ、及び圧力調整弁を含んでいる。排気装置150は、処理容器112に形成された排気口149に接続されている。
【0016】
基板処理装置100は、第1制御部151を有する。第1制御部151の記憶部には、基板処理装置100で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラム及びレシピデータが格納されている。例えば、第1制御部151の記憶部には、エッチング処理等のプラズマ処理を基板処理装置100で実行するための制御プログラム及びレシピデータが記憶されている。
【0017】
以下、
図1に加えて、
図2を参照し、載置台116の構成要素について詳細に説明する。
図2は、
図1に示す基板処理装置100の載置台116の一部を拡大して示す断面図である。
【0018】
載置台116は、基台117及び静電チャック120を有している。基台117は、第1の部材117a及び第2の部材117bを有する。第1の部材117a及び第2の部材117bは、シート状又は板状である。シート状と板状との間に厳密な区別はないが、第1の部材117a及び第2の部材117bがシート状の場合、これらの部材が板状の場合よりも一般的に薄い。第1の部材117aの上面と第2の部材117bの下面が接合し、第2の部材117bは、第1の部材117aとの接合面と反対側で静電チャック120と接合されている。これにより、第1の部材117aの上に第2の部材117bが積層され、その上に静電チャック120が積層される。
【0019】
基台117は、処理容器112の底部から上方に延びる支持部材114によって支持されている。支持部材114は、絶縁性の部材であり、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)から形成されている。また、支持部材114は、略円筒形状を有している。第1の部材117a、第2の部材117b及び静電チャック120は、いずれも軸Zの周りに略円盤形状を有している。
【0020】
基台117の下面には、給電体119が接続されている。給電体119は、例えば給電棒である。給電体119は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。給電体119には、第1の高周波電源62が整合器66を介して接続されている。また、給電体119には、第2の高周波電源64が整合器68を介して接続されている。
【0021】
基台117には、温調媒体の流路117fが形成されている。流路117fは、基台117内において、例えば渦巻状に延在している。この流路117fには、チラーユニットから温調媒体が供給される。流路117fに供給される温調媒体は、一実施形態では、その気化によって吸熱し、冷却を行う冷媒である。この冷媒は、例えば、ハイドロフルオロカーボン系の冷媒であり得る。流路117fは、第1の部材117a及び第2の部材117bの少なくともいずれかの内部に形成されればよい。つまり、流路117fは、本実施形態のように第1の部材117a及び第2の部材117bに跨って設けられてもよいし、第2の部材117bの内部に設けられてもよいし、第1の部材117aの内部に設けられてもよい。ただし、静電チャック120の冷却性能を高めるためには、静電チャック120に距離が近い第2の部材117b内に流路117fの少なくとも一部が形成されることが好ましい。
【0022】
静電チャック120は、吸着部123を有している。吸着部123は、第2の部材117bの上の静電チャック120に設けられている。吸着部123は、略円盤形状を有しており、セラミックスから形成されている。吸着部123を構成するセラミックスは、室温(例えば、20度)以上、400℃以下の温度範囲において、1×1015Ω・cm以上の体積抵抗率を有するセラミックスであり得る。このようなセラミックスとして、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられ得る。吸着部123と第2の部材117bとの間には境界層129が形成されている。
【0023】
静電チャック120の吸着部123は、電極膜125を内蔵している。電極膜125には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源からの直流電圧が電極膜125に与えられると、吸着部123はクーロン力といった静電力を発生し、当該静電力によってウェハWを保持する。
【0024】
吸着部123は、ヒータ156を更に内蔵している。ヒータ156は、静電チャック120の電極膜125の下方に配置されている。ヒータ156は、ヒータ電源に接続されている。
【0025】
締付部材171は、金属から形成されており、第1の部材117aと第2の部材117bとの間の当該締付部材171を介した熱伝導を抑制するために、低い熱伝導率を有する材料、例えば、チタンから形成される。第1の部材117aは、周縁部にてねじ173によって締付部材171に固定される。
【0026】
締付部材171の上には、ヒータ176が設けられている。このヒータ176は、周方向に延在しており、フィルタを介してヒータ電源に接続されている。フィルタは、高周波がヒータ電源に侵入することを防止するために、設けられている。
【0027】
ヒータ176は、第1の膜180と第2の膜182との間に設けられている。第1の膜180は、第2の膜182に対して締付部材171側に設けられている。第1の膜180は、第2の膜182の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有している。例えば、第1の膜180は、ジルコニア製の溶射膜であり、第2の膜182は酸化イットリウム(イットリア)製の溶射膜であり得る。また、ヒータ176は、タングステンの溶射膜であり得る。
【0028】
第2の膜182上には、エッジリング185が設けられている。エッジリング185は、例えばシリコンから形成されている。エッジリング185は、ヒータ176からの熱によって加熱される。また、ヒータ176からの熱流束の多くは、第1の膜180よりも第2の膜182に向かい、当該第2の膜182を介してエッジリング185に向かう。したがって、エッジリング185が効率的に加熱される。
【0029】
また、基台117、締付部材171等は、それらの外周側において一以上の絶縁性部材186によって覆われている。一以上の絶縁性部材186は、例えば、酸化アルミニウム又は石英から形成されている。
【0030】
[第1の部材及び第2の部材]
以上説明したように、載置台116の基台117は、第1の部材117aと第2の部材117bとの2層構造になっている。
【0031】
第1の部材117a及び第2の部材117bは異種材料から形成されている。
図3は、一実施形態に係る第1の部材117a又は第2の部材117bになり得る材料を例示し、線膨張係数、熱伝導率、密度を示す図である。
【0032】
第1の部材117aは、密度が5.0g/cm
3以下の材料として、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、又はチタン合金のいずれかから形成されてもよい。これらの材料は、
図3の点線枠A内に示すように、密度が5.0g/cm
3以下であり、モリブデン等と比較して軽量であるため、これにより、基台117の全体を軽量化することができる。
【0033】
第2の部材117bの下面は第1の部材117aと接合され、第2の部材117bの上面は静電チャック120と接合される。第2の部材117bは、点線枠B内に示すように、線膨張係数が5.0×10-6/K以下であり、かつ点線枠C内に示すように、熱伝導率が100W/mK以上の材料から形成されている。第2の部材117bは、たとえばモリブデン、タングステン、シリコン、炭化ケイ素、又は窒化アルミニウムのいずれかから形成されてもよい。これらの材料は、線膨張係数が5.0×10-6/K以下であり、チタン等と比較して線膨張係数が低い。また、これらの材料は、熱伝導率が100W/mK以上であり、チタン等と比較して熱伝導率が高い。以上から、第2の部材117bには、線膨張係数が5.0×10-6/K以下であり、かつ熱伝導率が100W/mK以上の材料を使用することで、冷却性能を高めることができる。また、第1の部材117aに密度が5.0g/cm3以下の軽量な材料を使用することで、基台117の全体を軽量にすることができる。
【0034】
つまり、静電チャック120に近い第2の部材117bを熱伝導率が100W/mK以上の冷却性能が高い材料から形成する。これにより、静電チャック120の冷却効果を高めることができる。加えて、第2の部材117bを線膨張係数が5.0×10-6/K以下の材料から形成する。これにより、セラミックスの静電チャック120と第2の部材117bとの線膨張係数差を小さくすることによって温度変動によっても静電チャック120と第2の部材117bとの間で摩擦が生じ、静電チャック120が割れたり損傷したりすることを防止できる。
【0035】
更に、第1の部材117aを軽量な材料から形成する。これにより、基台117の全体の重量を軽量化することができる。例えば、
図3に示すタングステン(W)は、チタンよりも熱伝導がよく線膨張係数が低いが、チタンの約4倍の重さである。そこで、第2の部材117bにはタングステンを採用し、熱伝導率と線膨張係数に関する機能性を高め、第1の部材117aにはチタンを採用することで、機能性と軽量性とを兼ね備えた基台117を形成することができる。
【0036】
係る基台117を有する載置台116を備えた基板処理装置100によれば、低温から高温まで広い温度帯において、静電チャック120が損傷することなく静電チャック120の冷却効率を高め、基板Wに対する良好なプラズマ処理を行うことができる。
【0037】
[製造方法]
次に、3Dプリンタを使用した場合の一実施形態に係る基台117の製造方法1、2について、
図4~
図7を参照しながら説明する。
図4は、一実施形態に係る3Dプリンタの構成の一例を示す図である。
図5は、一実施形態に係る基台117の製造方法1を示すフローチャートである。
図6は、一実施形態に係る基台117の製造方法2を示すフローチャートである。
図7(a)は、一実施形態に係る製造方法1により造形した基台117を模式的に示す図である。
図7(b)は、一実施形態に係る製造方法2により造形した基台117を模式的に示す図である。
【0038】
(3Dプリンタの構成)
本実施形態に係る3Dプリンタ200は、基台117を造形(製造)する装置の一例である。後述する基台117の製造方法1,2では、
図4に示す3Dプリンタ200を使用する。ただし、基台117を造形する装置は、
図4に示す3Dプリンタ200の構成に限られない。
【0039】
3Dプリンタ200は、チャンバ210にて3次元形状の造形物を形成することが可能である。本実施形態に係る3Dプリンタ200では、3次元形状の造形物として基台117を形成するための3次元データをRAM256等の記憶部に記憶し、3次元データに基づき基台117を製造する。基台117は、テーブルに備えられたステージ202の載置面上で形成される。ステージ202は、基台117の形成の進行に応じて、例えば除々に下降させるように昇降可能である。
【0040】
チャンバ210内のテーブルの上には2枚のブレード205が離間して設けられている。原料格納部203は、チャンバ210の上部であって2枚のブレード205の上に配置されている。原料格納部203には、造形物を形成する原料、すなわち、基台117の第2の部材117bを形成するシリコン(Si)の粉末材料が格納されている。本実施形態では、第1の部材117aはすでにシート状又は板状に形成されていて、ステージ202の上に配置される。ただし、第1の部材117aについても3Dプリンタ200で造形してもよい。この場合であって、第1の部材117aをアルミニウムにより形成し、第2の部材117bをシリコンにより形成する場合、原料格納部203にはアルミニウム粉末とシリコン粉末とが分けて格納される。
【0041】
なお、第1の部材117aと、第2の部材117bとを構成する各材料の原料は粉末状に限られず、ワイヤ状であってもよい。第1の部材117aと第2の部材117bとは異種材料にて形成される。
【0042】
原料格納部203から2枚のブレード205の間に原料が投入される。投入された原料は、ブレード駆動部207によって駆動する2枚のブレード205を使用して粉状に形成される。所定量の粉状の原料(以下、「粉末材料5」ともいう。)は、レーザ光走査スペース209に供給される。
図1は、テーブルの上のレーザ光走査スペース209に粉末材料5が敷き詰められた状態を示す。
【0043】
このようにして、シリコンの粉末材料5を供給しながらエネルギービームを照射し、粉末材料5を溶かす。本実施形態では、照射するエネルギービームとしてレーザ光A(光学レーザ)が用いられる。
【0044】
レーザ光Aは、光源206から出力され、ガルバノミラー208により照射角度を変えてレーザ透過窓211を介してステージ202上の照射領域の所定の位置に照射される。光源206及びガルバノミラー208は、チャンバ210の外部に配置されることが好ましい。
【0045】
これにより、ステージ202上でレーザ光Aを少なくとも2次元(XY)方向に走査できる。例えばガルバノミラー208は、造形物の3次元構造を示す3次元データに応じてステージ202上でレーザ光Aの照射スポットを移動させるよう制御される。具体的には、第2制御部250の制御により、ガルバノミラー208により照射角度を変えて造形物の形成の進行に応じてレーザ光Aを2次元(XY)方向に走査する。レーザ光Aは、ステージ202上のシリコンの粉末を融解する。その後、材料は冷却され、固化されて造形物3が形成される。ここでは、第1の部材117aの上面に第2の部材117bが形成され、造形物3としての基台117が製造される。
【0046】
第2の部材117bを形成中、第1の部材117aの上面のアルミニウムもレーザ光Aにより溶融され、第1の部材117aと第2の部材117bとの界面では、アルミニウムとシリコンの両者が混ざり合った状態になる。
【0047】
そして、3Dプリンタ200による基台117の造形が進むにつれて第1の部材117aを形成するアルミニウムに対するシリコン濃度が上がり、第2の部材117bの物質は、最終的にシリコン粉末と同組成の造形物になる。このようにして第1の部材117aと第2の部材117bとの接合面は、第1の部材117aの材料と第2の部材117bの材料との配合率を変化させながら形成され得る。
【0048】
なお、以上の説明では、第1の部材117aを形成する固体の板状部材をステージ202に用意し、その上にシリコン粉末を供給したが、これに限られない。例えば、第2の部材117bの板状部材を用意し、その上にアルミニウム粉末を供給し、第1の部材117aを造形してもよい。
【0049】
第2制御部250は、CPU252、ROM254及びRAM256を有する。第2制御部250は、原料格納部203からの原料粉末の供給制御、ステージ202の昇降制御を行う。また、第2制御部250は、光源206の点灯制御、ガルバノミラー208によるレーザ照射角度の変更等の制御を行う。これにより、第2制御部250は、基台117を製造する動作を制御する。
【0050】
CPU252が実行する制御プログラムは、例えばROM254に格納されている。CPU252は、例えばRAM256に格納された3次元データに基づき、制御プログラムを実行することで、造形物3(基台117)の製造を制御する。なお、制御プログラムは、固定的な記録媒体に格納してもよいし、各種フラッシュメモリや光(磁気)ディスク等の着脱可能であって、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【0051】
さらに、第2制御部250は、ディスプレイ258及びキーボードやポインティングデバイスなどの入力装置260を有する。ディスプレイ258は、基台117の造形の進行状態等を表示するために用いられる。入力装置260は、基台117の造形動作の開始、停止などの指令や設定時の制御パラメータの入力などに用いられる。
【0052】
3次元データは、RAM256等の記憶部に記憶される。3次元データには、基台117の立体構造と基台117内の流路117f等の中空構造を構成する各種部分に関するデータが含まれる。
【0053】
(製造方法1)
次に、3Dプリンタ200を動作させて基台117を造形する、本実施形態に係る製造方法1について、
図5を参照しながら説明する。以下の説明では、第1の部材117aの材料としてアルミニウムを挙げ、第2の部材117bの材料としてシリコンを挙げて説明するが、材料はこれらに限らない。
【0054】
本処理が開始されると、第2制御部250(CPU252)は、RAM256に格納された3次元データを取得する(ステップS10)。次に、アルミニウムから形成された第1の部材117aをステージ202に配置する(ステップS12)。
【0055】
第2制御部250は、3次元データに基づき、シリコン粉末をレーザ光走査スペース209に供給しながら該粉末にレーザ光を照射する(ステップS14)。その際、第2制御部250は、ブレード駆動部207によって駆動する2枚のブレード205を使用して粉末材料5であるシリコン粉末をレーザ光走査スペース209に供給する。また、第2制御部250は、ガルバノミラー208によるレーザ照射角度の変更等を行い、レーザ光をシリコン粉末に照射する。第2制御部250は、シリコン粉末を供給し、供給された粉末にレーザ光を照射し、融解固化させる動作を繰り返し実行する。これにより、第2制御部250は、第1の部材117aに一体化させて第2の部材117bの形成を完了させ(ステップS16)、本処理を終了する。
【0056】
(製造方法2)
次に、3Dプリンタ200を動作させて基台117を造形する、本実施形態に係る製造方法2について、
図6を参照しながら説明する。製造方法2では、第2の部材117b、傾斜積層、第1の部材117aの順に造形する。本処理が開始されると、第2制御部250は、RAM256に格納された3次元データを取得する(ステップS10)。
【0057】
次に、第2制御部250は、シリコン粉末とアルミニウム粉末との配合率を変えてレーザ光走査スペース209に供給しながら該粉末にレーザ光を照射する(ステップS20)。その際、第2制御部250は、3次元データに基づきシリコン粉末の配合率を0%から徐々に増やし、100%まで連続的又は段階的に変えて供給する。また、第2制御部250は、3次元データに基づきアルミニウム粉末の配合率を100%から徐々に減らし、0%まで連続的又は段階的に変えて供給する。
【0058】
これにより、レーザ光走査スペース209に供給されるシリコン粉末とアルミニウム粉末との配合率が、アルミニウム粉末が多い状態からシリコン粉末が多い状態へと変化する。第2制御部250は、所定の比率に配合されたシリコン粉末とアルミニウム粉末とをレーザ光走査スペース209に供給し、供給された粉末にレーザ光を照射し、融解固化させる動作を繰り返し実行する。これにより、第2制御部250は、傾斜積層を含む第1の部材117a及び第2の部材117bの造形を完了させ(ステップS22)、本処理を終了する。
【0059】
図7(a)は、本実施形態に係る製造方法1により造形された基台117の一例を示す。
図7(b)は、本実施形態に係る製造方法2により造形された基台117の一例を示す。これによれば、3次元データに基づき内部の流路117fの中空構造も含めて異種材料からなる基台117を造形することができる。
【0060】
図7(a)に示す製造方法1では、板状の第1の部材117aの上にシリコン粉末を供給し、レーザ光Aでシリコン粉末を溶融しながら第1の部材117aの上に第2の部材117bを造形する。第1の部材117aと第2の部材117bとの界面では、レーザ光Aにより第2の部材117bの表面のアルミニウムが溶融し、溶融したシリコン粉末と混ざり合った物質(Al+Si)の層ができるが、造形が進むにつれシリコン粉末と同組成の造形物になる。これにより、第1の部材117aと第2の部材117bとの異種材料から形成された基台117を製造できる。また、第1の部材117aと第2の部材117bとを接着する接着層をなくすことで製造の工数を減らすことができ、製造のリードタイムを短縮できる。
【0061】
なお、製造方法1では、板状の第2の部材117bの上にアルミニウム粉末を供給し、レーザ光Aによりアルミニウム粉末を溶融しながら第2の部材117bの上に第1の部材117aを造形してもよい。これによっても
図7(a)に示す第1の部材117aと第2の部材117bとの異種材料から形成された基台117を製造できる。
【0062】
図7(b)に示す製造方法2では、第1の部材117aと第2の部材117bとの間に傾斜積層117cが形成された基台117が造形される。製造方法2では、まず、アルミニウム粉末のみを供給し、レーザ光Aでアルミニウム粉末を溶融しながら第1の部材117aを造形する。次に、アルミニウム粉末の配合率を100%から0%に徐々に減らして供給し、シリコン粉末の配合率を0%から100%に徐々に増やして供給し、レーザ光Aでアルミニウム粉末及びシリコン粉末を溶融しながら傾斜積層117cを造形する。最後に、シリコン粉末のみを供給し、レーザ光Aでシリコン粉末を溶融しながら第2の部材117bを造形する。
【0063】
これによれば、第1の部材117aと第2の部材117bとの間に各部材の材料の配合率を変えて形成した傾斜積層117cが設けられる。その際、異種材料の配合率を徐々に変化させることにより傾斜積層117cを形成することで異種材料間における熱伝達を向上させ、温度制御性をより高めることができる。また、第1の部材117aと第2の部材117bとを接着する接着層をなくすことで製造の工数を減らすことができ、製造のリードタイムを短縮できる。
【0064】
なお、製造方法2では、第2の部材117b、傾斜積層117c、第1の部材117aの順に造形してもよい。また、傾斜積層117cは、アルミニウム粉末とシリコン粉末との配合率を線形的に変化させてグラディエーション状に造形してもよいし、段階的に変化させてステップ状に造形してもよい。
【0065】
なお、3Dプリンタ200は、かかる構成の3Dプリンタに限られず、例えば指向性エネルギー型の3Dプリンタであってもよいし、それ以外の方法を用いる3Dプリンタであってもよい。エネルギー源に関しても、前記のレーザ光以外に電子ビームや粒子自体に運動エネルギーを与える方式でも構わない。前記以外の方法を用いる3Dプリンタとしては、結合剤噴射型の3Dプリンタ、シート積層型の3Dプリンタ、光重合硬化(光造形)形の3Dプリンタ、材料押出し(熱溶融積層)形の3Dプリンタやコールドスプレー形の3Dプリンタが一例として挙げられる。
【0066】
(製造方法3)
次に、拡散接合を使用して基台117を造形する、本実施形態に係る製造方法3について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、一実施形態に係る基台117の製造方法3の過程と製造した基台117を模式的に示す図である。以下の説明では、第1の部材117aの材料としてチタンを挙げ、第2の部材117bの材料としてタングステンを挙げて説明するが、材料はこれらに限らない。
【0067】
製造方法3では、
図8(a)に示すように、チタンのシート状又は板状部材11の上に、流路が形成されたチタンのシート状部材12~14を順に重ねる。次に、流路が形成された、チタンとタングステンとの混合材料からなるシート状部材15を重ねる。
【0068】
次に、流路が形成された、タングステンのシート状部材16~18を重ねる。次に、タングステンのシート状又は板状部材19を重ねる。この状態で拡散接合を実行し、全体を加熱しながら圧着させる。これにより、
図8(b)に示すように、すべてのシート状又は板状の部材の界面同士が圧着され、一体化する。この結果、第1の部材117a、中間層117d及び第2の部材117bが一体化された基台117が製造される。
【0069】
なお、製造方法3では、第2の部材117b、中間層117d、第1の部材117aのシート状又は板状部材の順に重ね、拡散接合を実行してもよい。このとき、拡散接合前の第1の部材117aを構成するシート状又は板状部材は複数層又は単層のいずれでもよい。同様に中間層117d、第2の部材117bを構成するシート状又は板状部材は、それぞれ複数層又は単層のいずれでもよい。
【0070】
中間層117dはなくてもよい。ただし、第1の部材117a及び第2の部材117bの混合材料からなる中間層117dを第1の部材117aと第2の部材117bとの間に設けることで、第1の部材117aと第2の部材117bとの接合性を良くし、熱伝導性をより高めることができる。特に、第1の部材117aの材料及び第2の部材117bの材料に接合性が悪い組成を接合性するときに中間層117dを設けることが好ましい。
【0071】
以上、本実施形態に係る載置台116が有する基台117を、所望の条件を満たす異種材料の第1の部材117a及び第2の部材117bから形成することで、熱伝導性が良く、線膨張係数が低く、かつ軽量化された載置台116を提供することができる。これにより、静電チャック120の割れを防止し、静電チャック120の抜熱を良好にして、基板Wの温度制御性を高めることができる。
【0072】
今回開示された一実施形態に係る載置台及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0073】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0074】
また、基板処理装置は、プラズマを用いて基板に所定の処理(例えば、成膜、エッチング等)を施す装置であれば、エッチング装置に限られず、成膜装置、アッシング装置、ドーピング装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
62 第1の高周波電源
64 第2の高周波電源
100 基板処理装置
112 処理容器
112c 処理室
116 載置台
117 基台
117a 第1の部材
117b 第2の部材
117f 流路
120 静電チャック
123 吸着部
125 電極膜
129 境界層
130 上部電極
139 ガス供給部
150 排気装置
151 第1制御部
156 ヒータ
200 3Dプリンタ
202 ステージ
203 原料格納部
205 ブレード
206 光源
207 ブレード駆動部
208 ガルバノミラー
209 レーザ光走査スペース
210 チャンバ
250 第2制御部