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特許7592453銅膜研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法
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  • 特許-銅膜研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】銅膜研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241125BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241125BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241125BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020175255
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2021068898
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130274
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】金 亨默
(72)【発明者】
【氏名】張 根三
(72)【発明者】
【氏名】姜 東憲
(72)【発明者】
【氏名】李 鍾元
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-014840(JP,A)
【文献】特開2009-256184(JP,A)
【文献】特開2007-299942(JP,A)
【文献】特開2019-165226(JP,A)
【文献】特開2010-103409(JP,A)
【文献】特開2002-121541(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170660(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0214443(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106928859(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒、非極性溶媒のうち1種以上;及びシランで改質された研磨粒子を含み、前記シランは下記化学式1で表される、銅膜研磨用CMPスラリー組成物:
【化1】
前記化学式1において、
、R及びRは、それぞれ独立して、水酸基、置換または非置換のアルコキシ基またはハロゲンであり、
は、置換または非置換の2価の有機基であり、
、Xは、それぞれ独立して、水素;-(C=O)O;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の脂肪族炭化水素基;または少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の芳香族炭化水素基であり、前記Mは、Hまたはアルカリ金属の1価陽イオンであり、
、X中の少なくとも一つは、-(C=O)O、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基、または少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基である。
【請求項2】
は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、X、Xの少なくとも一つは、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項3】
前記化学式1のシランは、下記化学式1-1~下記化学式1-4の一つ以上を含む、請求項1または2に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物:
[化学式1-1]
(OCSi-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-2]
(OH)Si-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-3]
(OCHSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
[化学式1-4]
ClSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
前記化学式1-1~前記化学式1-4で、Mは前記化学式1で定義した通りである。
【請求項4】
前記研磨粒子は、シリカを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項5】
前記化学式1のシランで改質された研磨粒子は、前記銅膜研磨用CMPスラリー組成物中に0.001重量%~20重量%の量で含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項6】
前記銅膜研磨用CMPスラリー組成物は、pHが5~9である、請求項1~5のいずれか一項に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項7】
前記組成物は、錯化剤、腐食防止剤、酸化剤、pH調節剤の1種以上をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の銅膜研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む、銅膜研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅膜研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法に関するものである。より詳しくは、本発明は銅膜研磨時の銅膜のディッシングを改善し、銅膜研磨速度が高い、銅膜研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化、高性能化に伴い、現在脚光を浴びている微細加工技術であるCMP(chemical mechanical polishing)は、層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線の形成において頻繁に用いられる技術である。また、近年、配線材料として使用されている導電性物質として、銅および銅合金を挙げることができる。銅または銅合金は、アルミニウム及びその他の金属物質よりも低い抵抗値を有しているため、集積回路の性能を大きく向上させることができる長所を有している。
【0003】
銅膜研磨用CMP組成物は、一般的に酸化剤を用いて膜質を酸化させ、研磨材で膜質を研磨し、リガンド又はキレート剤が溶出した銅イオンを錯体形態で取り除く。この程度を調節するために、腐食防止剤を使用して腐食を抑える。研磨材粒子としては、コロイダルシリカを使用する。半導体の生産性向上のために高い研磨速度が要求される。CMPスラリー組成物を用いて高い研磨速度を出すためには、研磨材の含量を多くして物理的衝突回数を増やす方法、キレート剤の含量を多くして溶出速度を上げる方法等がある。しかし、前者はスクラッチ欠陥(scratch defect)の個数の増加をもたらし、後者は、多量に含ませる場合は研磨面の平坦度に悪影響を及ぼし、加えてキレート剤の溶解度のため使用量に限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、銅膜のディッシングを改善して研磨平坦度を高めた銅膜研磨用CMPスラリー組成物を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、銅膜研磨速度の速い銅膜研磨用CMPスラリー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の銅膜研磨用CMPスラリー組成物は、極性溶媒、非極性溶媒のうち1種以上;及びシランで改質された研磨粒子を含み、前記シランは下記化学式1で表される:
【化1】
【0007】
前記化学式1で、R、R及びRは、それぞれ独立して、水酸基、置換または非置換のアルコキシ基またはハロゲンであり、
は、置換または非置換の2価の有機基であり、
、Xは、それぞれ独立して、水素;-(C=O)O;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の脂肪族炭化水素基;または少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の芳香族炭化水素基であり、前記MはHまたはアルカリ金属の1価陽イオンであり、
、Xの少なくとも一つは、-(C=O)O、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基、または少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基である。
【0008】
一具体例において、Rは、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、X、Xの少なくとも一つは、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基になり得る。
【0009】
一具体例において、前記化学式1のシランは、下記化学式1-1~下記化学式1-4の一つ以上を含み得る:
[化学式1-1]
(OCSi-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-2]
(OH)Si-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-3]
(OCHSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
[化学式1-4]
ClSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
【0010】
前記化学式1-1~前記化学式1-4で、Mは前記化学式1で定義した通りである。
【0011】
一具体例において、前記研磨粒子は、シリカを含み得る
【0012】
一具体例において、前記化学式1のシランで改質された研磨粒子は、前記銅膜研磨用CMPスラリー組成物中に0.001重量%~20重量%の量で含まれ得る。
【0013】
一具体例において、前記銅膜研磨用CMPスラリー組成物は、pHが5~9であり得る。
【0014】
一具体例において、前記組成物は、錯化剤、腐食防止剤、酸化剤、pH調節剤の1種以上をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の銅膜研磨方法は、本発明の銅膜研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、銅膜のディッシングを改善して研磨平坦度を高めた銅膜研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【0017】
本発明は、銅膜研磨速度の速い銅膜研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例の化学式1のシランで改質されたシリカの概念図である。
図2】本発明の他の実施例の化学式1のシランで改質されたシリカの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、銅膜研磨用CMPスラリー組成物において、下記化学式1のシランで改質された研磨粒子を研磨剤に含むことにより、銅膜のディッシングの改善と研磨速度の改善を同時に得られることを確認し、本発明を完成させた。
【0020】
本発明のCMPスラリー組成物は、極性溶媒、非極性溶媒中の1種以上;及び下記化学式1のシランで改質された研磨粒子を含む。以下、本発明にかかるCMPスラリー組成物中の構成成分に対して詳しく説明する。
【0021】
極性溶媒、非極性溶媒のうち1種以上は、銅膜を研磨粒子で研磨する際の摩擦を減らすことができる。極性溶媒、非極性溶媒のうち1種以上は、水(例えば、超純水または脱イオン水)、有機アミン、有機アルコール、有機アルコールアミン、有機エーテル、有機ケトン等になり得る。好ましくは、超純水または脱イオン水を使用することができる。極性溶媒、非極性溶媒のうち1種以上は、CMPスラリー組成物中においてバランス量(残量)として含まれ得る。
【0022】
研磨剤はシランで改質された研磨粒子を含み、前記シランは下記化学式1で表される:
【化2】
【0023】
前記化学式1で、R、R及びRは、それぞれ独立して、水酸基、置換または非置換のアルコキシ基またはハロゲンであり、
は、置換または非置換の2価の有機基であり、
、Xは、それぞれ独立して、水素;-(C=O)O;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基;少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の脂肪族炭化水素基;または少なくとも1個の-(C=O)Oを有さない置換または非置換の芳香族炭化水素基であり、前記Mは、Hまたはアルカリ金属の1価陽イオンであり、
、X中の少なくとも一つは、-(C=O)O、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基、または少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基である。
【0024】
前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。
【0025】
研磨粒子は、シランで改質されることにより、改質されない研磨粒子に比べて粒子表面が相対的にソフト(soft)な状態になり、銅膜研磨時に研磨面のディッシングを改善することにより、研磨平坦度を高めることができる。
【0026】
化学式1のシランは、少なくとも1個の-C(=O)Oを含有する。本発明の銅膜CMPスラリー組成物は、pHが5~9、具体的には5~8であり得る。このpHで化学式1のシランは、カルボン酸陰イオン(-C(=O)O)を備える。カルボン酸陰イオン(-C(=O)O)は、銅膜研磨組成物中の錯化剤(キレート剤)効果を提供することができる。例えば、前記銅膜CMPスラリー組成物は、pHが5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5又は9であり得る。
【0027】
化学式1のシランは、窒素(N)を含有する。具体的には、X、Xのうち少なくとも1つは、少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の脂肪族炭化水素基、又は少なくとも1個の-(C=O)Oを有する置換または非置換の芳香族炭化水素基であり得る。これにより、研磨粒子は、フレキシブルな官能基が導入されて研磨粒子がソフトになるため、ディッシングを減らす効果がより大きくなり得、立体障害(steric effect)又は同一負電荷を有する粒子間の静電気的反発力に起因する研磨粒子間の凝集によって生じる巨大粒子によって引き起こされる、研磨面におけるスクラッチの発生を減らす一方で、組成物の貯蔵安定性、分散安定性を高めることができる。
【0028】
窒素は、銅膜研磨時に溶出される銅イオンをキレート化(chelating)することにより、銅膜研磨時の銅の溶出速度を上げ、研磨速度を速めることができる。
【0029】
また、一般的に、銅膜研磨用CMPスラリー組成物では、溶出される銅イオンをキレート化するための錯化剤を含む。しかし、本発明のCMPスラリー組成物は、錯化剤を含まないか、錯化剤を含む場合は錯化剤の量を減らすことができる長所がある。一般的に、錯化剤を多量含ませる場合は、錯化剤による腐食性が増加するおそれがあるところ、腐食性を制御するためには腐食防止剤も多量に使用する必要がある。特に、錯化剤として多く使用されるグリシンは、CMPスラリー組成物中への溶解度が低くCMPスラリー組成物に含ませる使用量に限界がある。しかし、本発明のCMPスラリー組成物はグリシンを始めとする錯化剤、腐食防止剤の使用量を減らすことができるため、CMPスラリー組成物中のCMPスラリー濃度を高めることができる。
【0030】
図1図2は、それぞれ本発明の一実施例として、(改質前の)研磨粒子としてのシリカが、化学式1のシランの一具体例の化合物によって改質されて得られるシリカ研磨粒子の作用模式図である。図1図2を参照すると、(改質前の)シリカ表面に、化学式1のシランのケイ素原子が結合することにより、シリカ表面が改質される。化学式1のシランにおいて、窒素原子が溶出された銅イオンをキレート化する。研磨粒子がシリカである場合、シリカ表面のSi-OH基と化学式1のSi(R)(R)(R)-は、加水分解および縮合反応(共有結合)し得るため、化学式1のシランは研磨粒子に安定して結合され得る。
【0031】
研磨粒子少なくとも一部分が、化学式1のシランで改質され得る。具体的に、研磨粒子は、研磨粒子の全体表面積中の1%~100%、具体的には10%~90%が改質され得る。前記範囲内では、ディッシングの改善および研磨速度の改善効果が同時に達成され得る。
【0032】
化学式1のシランで改質された研磨粒子は、球形または非球形の粒子として、一次粒子の平均粒径(D50)が10nm~150nm、例えば、20nm~120nmであり得る。前記範囲では、銅膜に対する研磨速度を高めることができ、またスクラッチが発生しなくなり、研磨後の銅膜の平坦度を高めることができる。前記「平均粒径(D50)」は、当業者に知られている通常の粒径を意味し、研磨粒子を重量基準で分布させたとき、50重量%に該当する粒子の粒径を意味する。
【0033】
化学式1のシランで改質された研磨粒子は、研磨用組成物中に0.001重量%~20重量%、好ましくは0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは0.01重量%~5重量%、最も好ましくは0.01重量%~1重量%で含まれ得る。前記範囲では、銅膜を十分な研磨速度で研磨することができ、スクラッチを発生させないようにすることが可能であり、組成物の分散安定性が良くなる。例えば、前記化学式1のシランで改質された研磨粒子は、研磨用組成物中に0.001,0.002,0.003,0.004,0.005,0.006,0.007,0.008,0.009,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19又は20重量%含まれ得る。
【0034】
化学式1のシランで改質された研磨粒子は、(改質前の)研磨粒子と化学式1のシランとを混合した後、次の通常の方法によって製造することができる。例えば、(改質前の)研磨粒子と化学式1のシランとを混合し、常温または加熱して撹拌処理することにより製造することができる。具体的には、研磨粒子1g当たり化学式1のシラン0.001mmol~1mmol、具体的には0.01mmol~0.5mmolと混合されることによって、研磨粒子は改質される。前記範囲で、ディッシングの改善および研磨速度の改善効果が同時に達成され得る。例えば、前記研磨粒子1g当たり、化学式1のシラン0.001,0.002,0.003,0.004,0.005,0.006,0.007,0.008,0.009,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1mmolが含まれ得る。
【0035】
(改質前の)研磨粒子は、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア中の1種以上を含むことができる。好ましくは、(改質前の)研磨粒子としてシリカを使用することにより、化学式1のシランによる改質が容易になり得る。
【0036】
化学式1のシランを、より詳しく説明する。
【0037】
,R,Rは、それぞれ独立して、水酸基あるいは置換または非置換のアルコキシ基、又はハロゲンであり、具体的には、水酸基あるいは置換または非置換の炭素数1~炭素数5のアルコキシ基、又はハロゲンであり得る。本明細書で「置換または非置換の」における「置換」は、当該官能基の水素原子が、アミノ基、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基等で置換されることを意味する。
【0038】
は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基、具体的には置換または非置換の炭素数1~5のアルキレン基であり得る。
【0039】
,Xにおいて「脂肪族炭化水素基」は、直線型または分枝鎖型の炭素数1~10のアルキル基、環型の炭素数3~10のアルキル基、具体的には直線型または分枝鎖型の炭素数1~5のアルキル基または環型の炭素数3~6のアルキル基である得る。X,Xにおいて「芳香族炭化水素基」は、炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアリールアルキル基、具体的には炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアリールアルキル基であり得る。
【0040】
化学式1においてMは、H,Li,Na,K,Rb,CsまたはFrであり得る。
【0041】
一具体例において、化学式1のシランは、下記化学式1-1~1-4中の一つ以上を含み得るが、これに制限されるものではない:
[化学式1-1]
(OCSi-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-2]
(OH)Si-CHCHCH-NH(CH-C(=O)O
[化学式1-3]
(OCHSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
[化学式1-4]
ClSi-CHCHCH-N(CH-C(=O)O
【0042】
前記化学式1-1~前記化学式1-4において、Mは前記化学式1で定義した通りである。
【0043】
本発明の銅膜研磨用CMPスラリー組成物は、錯化剤を含まない場合もあるが、錯化剤をさらに含むことにより、研磨速度をさらに改善することができる。
【0044】
錯化剤は、当業者に知られている通常の種類のものを含むことができる。例えば、錯化剤は、グリシン、ヒスチジン等のアミノ酸、イミダゾール、アンモニア、アミノアルコール、ポリアミン、ポリアルコール(例:ジアルコール、トリアルコール又はポリアルコール、エチレングリコール、ピロカテコール、ピロガロール等)等を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0045】
錯化剤は、CMPスラリー組成物中に0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~5重量%、さらに好ましくは0.1重量%~5重量%で含まれ得る。前記範囲で、研磨速度、スラリーの分散安定性が良くなり、銅膜の表面特性が良くなり得る。例えば、前記錯化剤はCMPスラリー組成物中に0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4又は5重量%で含まれ得る。
【0046】
CMPスラリー組成物は、腐食防止剤をさらに含んでもよい。腐食防止剤は、銅膜研磨時のディッシングを改善することができる。
【0047】
腐食防止剤は、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物中の1種以上を含むことができる。
【0048】
例えば、トリアゾールは、ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール等を含むメチルベンゾトリアゾール(トリルトリアゾール)、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール等を含むベンゾトリアゾール系化合物、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等であり得る。トリアゾールは、トリアゾール自体またはトリアゾールの塩としてCMPスラリー組成物に含まれていてもよい。
【0049】
例えば、テトラゾールは、5-アミノテトラゾール、5-メチルテトラゾール、5-フェニルテトラゾールのうち一つ以上を含むことができる。前記テトラゾールは、テトラゾール自体またはテトラゾールの塩としてCMPスラリー組成物に含まれていてもよい。
【0050】
腐食防止剤は、CMPスラリー組成物中に0.001重量%~5重量%、好ましくは0.005重量%~1重量%、さらに好ましくは0.01重量%~0.1重量%で含まれ得る。前記範囲で、銅膜に対する研磨速度も上げながら研磨時に銅膜におけるディッシングを改善することができる。例えば、前記腐食防止剤は、CMPスラリー組成物中に0.001,0.002,0.003,0.004,0.005,0.006,0.007,0.008,0.009,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4又は5重量%含まれ得る。
【0051】
CMPスラリー組成物は、酸化剤をさらに含むことができる。酸化剤は、銅膜を酸化させて銅膜研磨が容易になるようにし、銅膜の表面を均一にして研磨以降の表面粗さを改善する。
【0052】
酸化剤は、無機過化合物、有機過化合物、臭素酸またはその塩、硝酸またはその塩、塩素酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ヨウ素酸またはその塩、鉄またはその塩、銅またはその塩、希土類金属酸化物、遷移金属酸化物、重クロム酸カリウムのうち一つ以上を含むことができる。前記「過化合物」は、一つ以上の過酸化基(-O-O-)を含むか、最高酸化状態の元素を含む化合物である。好ましくは、酸化剤として過化合物を使用できる。例えば、過化合物は、過酸化水素、過ヨウ素化カリウム、過硫酸カルシウム、フェリシアンカリウムのうち一つ以上、好ましくは過酸化水素であり得る。
【0053】
酸化剤は、CMPスラリー組成物中に0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%、さらに好ましくは0.1重量%~3重量%で含まれ得る。前記範囲で、銅膜の研磨選択比を向上させることができる。例えば、前記酸化剤はCMPスラリー組成物中に0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4又は5重量%含まれ得る。
【0054】
CMPスラリー組成物は、pHが5~9、好ましくは6~8であり得る。前記範囲で、銅膜の腐食を防止することができる。例えば、前記CMPスラリー組成物はpHが5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5又は9であり得る。
【0055】
CMPスラリー組成物は、前記pHを合わせるためにpH調節剤をさらに含んでもよい。pH調節剤は、無機酸、例えば硝酸、リン酸、塩酸、硫酸のうち一つ以上を含むことができ、有機酸、例えばpKa値が6以下の有機酸、例えば酢酸、クエン酸のうち1種以上を含むこともできる。pH調節剤は、塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのうち1種以上を含むこともできる。
【0056】
CMPスラリー組成物は、微生物の繁殖および/または汚染を防ぐために、殺虫剤、殺菌剤のうち1種以上をさらに含むことができる。殺虫剤、殺菌剤は、それぞれCMPスラリー組成物で通常使用される材料を含むことができる。
【0057】
CMPスラリー組成物は、界面活性剤、分散剤、改質剤、表面活性剤等の通常の添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の銅膜研磨方法は、本発明の銅膜研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む。
【0059】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をさらに詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【実施例
【0060】
下記実施例と比較例で使用した成分の具体的な仕様は次の通りである。
(1)改質前の研磨粒子:平均粒径(D50)が53nmのシリカ(Nalco社,DVSTS006)
(2)pH調節剤:硝酸、水酸化カリウム
【0061】
[実施例1]
3-アミノプロピルトリエトキシシラン221.37g(1モル)と、エチルクロロアセテート(ClCHCOO-C)122.55g(1モル)を溶媒であるエタノール中で混合し、撹拌しながらトリエチルアミン(N(C)101.9g(1モル)をさらに添加した後、90℃で12時間反応させた。冷却後、生成された不溶性塩をろ過し、溶媒を蒸留させて(OCSi-CHCHCH-NH(CH-COO-C)を製造した。
【0062】
製造した(OCSi-CHCHCH-NH(CH-COO-C)30.75g(0.1モル)と前記改質前の研磨粒子含有水溶液4kg(固形分30重量%)とを混合し、塩基性pH条件で85℃で18時間反応させ、末端が-Si-CHCHCH-NH(CH-COOH)に改質されたシリカを製造した。
【0063】
CMPスラリーの総重量に対して、研磨粒子として製造された、改質されたシリカ0.2重量%、グリシン1.2重量%、ヒスチジン0.4重量%、腐食防止剤としてベンゾトリアゾール0.02重量%を含有し、残りは超純水を含ませて、CMPスラリー組成物を製造した。CMPスラリー組成物のpH調節は、硝酸または水酸化カリウムを使用し、pHは7になるようにした。
【0064】
[実施例2]
実施例1で、3-アミノプロピルトリエトキシシラン221.37g(1モル)、エチルクロロアセテート(ClCHCOO-C)245.1g(2モル)、トリエチルアミン(N(C)203.8g(2モル)を反応させた点を除いては、実施例1と同じ方法を実施して、(OCSi-CHCHCH-N(CH-COO-Cを製造した。(OCSi-CHCHCH-N(CH-COO-C39.32 g(0.1モル)と前記改質前の研磨粒子含有水溶液4kg(固形分30重量%)とを混合し、塩基性pH条件で85℃で18時間反応させ、末端が-Si-CHCHCH-N(CH-COOH)に改質されたシリカを製造した。製造された、改質されたシリカを研磨粒子として使用して、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0065】
[実施例3]
実施例1で、グリシン含量を1.2重量%から1.0重量%に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0066】
[比較例1]
実施例1で、研磨粒子として前記改質前の研磨粒子を使用し、研磨粒子を変更したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0067】
[比較例2]
3-アミノプロピルトリエトキシシランで改質されたシリカ粒子を製造した。3-アミノプロピルトリエトキシシランで改質されたシリカ粒子は、改質剤22.14g(0.1モル)と改質前のシリカ粒子含有水溶液4kg(固形分30重量%)とを25℃で18時間反応させて得た。製造された、改質されたシリカを研磨粒子として使用し、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0068】
[比較例3]
(OCHSi-CHCH-COOで改質されたシリカ粒子を製造した。(OCHSi-CHCH-COOで改質されたシリカ粒子は、改質剤23.24g(0.1モル)と改質前のシリカ粒子含有水溶液4kg(固形分30重量%)を25℃で18時間反応させて得た。製造された、改質されたシリカを研磨粒子として使用し、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0069】
実施例と比較例で製造した銅膜研磨用CMPスラリー組成物に対して、研磨評価を行った。
【0070】
(1)銅膜研磨速度(単位:Å/分):研磨評価は、AMAT社の200mm研磨装備であるMirra装備を用いて、93rpm定盤回転速度、87rpmヘッド回転速度、1.5psi研磨圧力、スラリー供給流量150ml/分、及び研磨時間60秒の同一条件で銅膜を研磨し、研磨パッドとしてはRodel社のIC1010を使用した。研磨速度は、研磨前後の膜厚の差を電気抵抗値から換算して求めた。
【0071】
(2)ディッシング(単位:Å):(1)と同じ研磨工程条件でパターン評価を行った。ディッシングは、銅及び酸化膜の幅が100μmの領域で測定した。
【0072】
【表1】
【0073】
*表1で、
Aは、(OCSi-CHCHCH-NH(CH-COOH)で改質されたシリカ、
Bは、(OCSi-CHCHCH-N(CH-COOH)で改質されたシリカ、
Cは、改質されていないシリカ、
Dは、3-アミノプロピルトリメトキシシランで改質されたシリカ、
Eは、(OCHSi-CHCH-COOで改質されたシリカ
である。
【0074】
前記表1から明らかなとおり、本発明のCMPスラリー組成物は、銅膜に対する研磨速度が著しく速く、ディッシングを著しく改善した。特に、実施例3は錯化剤であるグリシン含量が比較例よりも低かったが、より高い研磨速度と低いディッシングを示した。
【0075】
その反面、改質されていないシリカを研磨粒子として含む比較例1は、銅膜の研磨速度が遅く、ディッシングが激しく起こった。カルボキシレート陰イオンを含有せず、窒素だけを含有するシランで改質された研磨粒子を含む比較例2は、研磨速度が最も遅く、ディッシングにも大きな問題があった。窒素を含有せず、カルボキシレート陰イオンを有するシランで改質された粒子を研磨粒子として含む比較例3は、実施例1~実施例3よりも研磨速度が遅く、ディッシングに大きな問題があった。
【0076】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるものと見なす。
図1
図2