(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】成膜システム、成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241125BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2021023598
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】康 榮太
(72)【発明者】
【氏名】竹永 裕一
(72)【発明者】
【氏名】李 柱炯
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137400(JP,A)
【文献】特開2006-086177(JP,A)
【文献】特開2020-053506(JP,A)
【文献】特開2002-091574(JP,A)
【文献】特開昭60-077414(JP,A)
【文献】特開2009-152433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に膜を成膜する成膜装置と、制御装置と含む成膜システムであって、
前記制御装置は、
前記成膜装置により行われる基板処理工程の手順を規定したレシピを記憶するレシピ記憶部と、
前記レシピに基づく前記基板処理工程の開始から
、前記基板処理工程に含まれる成膜工程の開始前までの間に収集した、前記成膜装置のログ情報を用いて
、前記成膜工程において成膜される膜の膜厚又は膜質を示す制御対象の目標値からの変動量の予測値を算出する予測部と、
前記成膜工程
が開始される前に、前記制御対象の目標値に近づくように、前記予測値に応じて前記レシピを更新する更新部と、を有する、成膜システム。
【請求項2】
前記ログ情報は、
前記成膜工程の開始から成膜工程の完了前までの間に収集されたログ情報をさらに含む、請求項1記載の成膜システム。
【請求項3】
前記ログ情報は、前記膜厚又は膜質と相関がある変動要因パラメータを含み、
前記予測部は、前記変動要因パラメータに起因する前記制御対象の変動量の予測値を算出する、請求項1
又は2記載の成膜システム。
【請求項4】
前記予測値に基づき、前記制御対象を前記目標値に最も近づける条件を導出する制御部を有し、
前記更新部は、
前記レシピにおいて規定された条件を、前記制御部により導出された条件に更新する、請求項
3記載の成膜システム。
【請求項5】
前記変動要因パラメータは、前記成膜装置により制御できない、または、制御しないセンサの値を有する、請求項
4記載の成膜システム。
【請求項6】
前記予測部は、
前記基板処理工程において、前記制御対象との相関が予め決められた閾値よりも高くなるステップとなったとき、前記レシピに基づく前記基板処理工程の開始から、前記相関が予め決められた閾値よりも高くなるステップとなるまでの間に収集されたログ情報を用いて前記予測値を算出する、請求項
5記載の成膜システム。
【請求項7】
前記レシピの更新は、前記基板処理工程の度に行われる、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の成膜システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記ログ情報を入力として、前記制御対象の目標値からの変動量の予測値を出力する予測モデルと、
前記予測モデルから出力された予測値に基づき、前記制御対象を目標値に近づける最適な成膜条件を導出する制御モデルと、を有し、
前記更新部は、
前記成膜工程が開始される前に、前記制御モデルにより導出された前記成膜条件に応じて前記レシピを更新する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の成膜システム。
【請求項9】
基板に膜を成膜する成膜装置と、制御装置と含む成膜システムによる成膜方法であって、
前記制御装置が、
レシピ記憶部に記憶されたレシピで規定された基板処理工程の手順の開始
から、前記基板処理工程に含まれる成膜工程の開始前までの間に収集した、前記成膜装置のログ情報を用いて
、前記成膜工程において成膜される膜の膜厚又は膜質を示す制御対象の目標値からの変動量の予測値を算出する手順と、
前記成膜工程
が開始される前に、前記制御対象の目標値に近づくように、前記予測値に応じて前記レシピを更新する手順と、を有する、成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜システム、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ等の基板に所望の膜を成膜する成膜装置が知られている。また、従来の成膜装置では、プロセスモデルを用いて算出される最適な基板処理条件を用いて、成膜を行うことが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、成膜結果の再現性を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜システムは、基板に膜を成膜する成膜装置と、制御装置と含む成膜システムであって、前記制御装置は、前記成膜装置により行われる基板処理工程の手順を規定したレシピを記憶するレシピ記憶部と、前記レシピに基づく前記基板処理工程の開始から、前記基板処理工程に含まれる成膜工程の開始前までの間に収集した、前記成膜装置のログ情報を用いて、前記成膜工程において成膜される膜の膜厚又は膜質を示す制御対象の目標値からの変動量の予測値を算出する予測部と、前記成膜工程が開始される前に、前記制御対象の目標値に近づくように、前記予測値に応じて前記レシピを更新する更新部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、成膜結果の再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の成膜システムについて説明する図である。
【
図2】本実施形態の成膜システムの動作の概要を説明する図である。
【
図3】本実施形態の制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の制御装置の機能について説明する図である。
【
図5】本実施形態の多変量解析の結果の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の変動要因パラメータの値と、膜厚の変動との相関を示す図である。
【
図7】本実施形態の基板処理工程に含まれるステップと、変動要因パラメータと膜厚の相関との関係を説明する図である。
【
図8】本実施形態の予測モデルと制御モデルの関係について説明する図である。
【
図9】本実施形態の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図10】本実施形態の制御装置の処理を説明する第一の図である。
【
図11】本実施形態の制御装置の処理を説明する第二の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の成膜システムについて説明する図である。
【0009】
本実施形態の成膜システム1は、制御装置100と、成膜装置200と、を含む。成膜システム1において、制御装置100と成膜装置200とは、任意の通信手段によって接続される。
【0010】
本実施形態の成膜システム1において、制御装置100は、成膜装置200の動作を制御するコンピュータである。成膜装置200は、制御装置100による制御にしたがって、半導体ウエハ等の基板に所望の膜厚と膜質を有する膜を成膜する。
【0011】
つまり、制御装置100は、成膜装置200を制御することで、成膜される膜の膜厚と膜質とを制御する。以下の説明では、成膜される膜の膜厚と膜質とを、制御対象と表現する場合がある。膜厚とは、例えば、膜の中心の厚さを示す値であってよいし、平均膜厚であってもよい。膜質とは、膜の屈折率(RI:Refractive Index)、又は膜密度、ドーパント量などを含んでよい。
【0012】
以下に、本実施形態の成膜装置200の構成の概略について説明する。本実施形態の成膜装置200は、長手方向が垂直方向である略円筒形の処理容器4を有する。処理容器4は、円筒体の内筒6と、内筒6の外側に同心的に配置された天井を有する外筒8とを備える二重管構造を有する。内筒6及び外筒8は、例えば石英等の耐熱性材料により形成されている。
【0013】
内筒6及び外筒8は、ステンレス鋼等により形成されるマニホールド10によって、その下端部が保持されている。マニホールド10は、例えば、図示しないベースプレートに固定されている。尚、マニホールド10は、内筒6及び外筒8と共に略円筒形の内部空間を形成しているため、処理容器4の一部を形成しているものとする。
【0014】
即ち、処理容器4は、例えば、石英等の耐熱性材料により形成される内筒6及び外筒8と、ステンレス鋼等により形成されるマニホールド10とを備え、マニホールド10は、内筒6及び外筒8を下方から保持するように処理容器4の側面下部に設けられている。
【0015】
マニホールド10は、処理容器4内に、成膜処理に用いられる成膜ガス、エッチング処理に用いられるエッチングガス等の処理ガス、パージ処理に用いられるパージガス等の各種ガスを導入するガス導入部20を有する。尚、
図1では、ガス導入部20が1つ設けられる形態を示しているが、これに限定されず、使用するガスの種類等に応じて、ガス導入部20が複数設けられていてもよい。
【0016】
成膜ガスの種類は、特に限定されず、成膜する膜の種類等に応じて適宜選択される。例えば、ウエハWにポリシリコン膜を成膜する場合、例えば、モノシラン(SiH4)を含むガスを成膜ガスとして用いることができる。
【0017】
エッチングガスの種類は、特に限定されず、エッチング対象の成膜物質の種類等に応じて適宜選択される。パージガスの種類は、特に限定されず、例えば、窒素(N2)ガス等の不活性ガスが用いられてもよい。
【0018】
ガス導入部20には、各種ガスを処理容器4内に導入するための導入配管22が接続される。尚、導入配管22には、ガス流量を調整するためのマスフローコントローラ等の流量調整部24や図示しないバルブ等が介設されている。
【0019】
また、マニホールド10は、処理容器4内を排気するガス排気部30を有する。ガス排気部30には、処理容器4内を減圧制御可能な真空ポンプ32、開度可変弁34等を含む排気配管36が接続されている。
【0020】
マニホールド10の下端部には、炉口40が形成されており、炉口40には、例えばステンレス鋼等により形成される円盤状の蓋体42が設けられている。蓋体42は、例えば、ボートエレベータとして機能する昇降機構44により昇降可能に設けられており、炉口40を気密に封止可能に構成されている。
【0021】
蓋体42の上には、例えば、石英製の保温筒46が設置されている。保温筒46の上には、例えば、50枚から175枚程度のウエハ(基板)Wを水平状態で所定の間隔で多段に保持する、例えば石英製のウエハボート48が載置されている。
【0022】
ウエハボート48は、昇降機構44を用いて蓋体42を上昇させることで処理容器4内へとロード(搬入)され、ウエハボート48内に保持されたウエハWに対して各種の基板処理が行われる。各種の基板処理が行われた後には、昇降機構44を用いて蓋体42を下降させることで、ウエハボート48は処理容器4内から下方のローディングエリアへとアンロード(搬出)される。
【0023】
本実施形態では、ウエハボート48を処理容器4内へのロード(搬入)するロード工程から、ウエハボート48を処理容器4内から下方のローディングエリアへとアンロード(搬出)するアンロード工程までを、基板処理工程と表現する。
【0024】
つまり、本実施形態の基板処理工程は、ロード工程(搬入工程)と、アンロード工程(搬出工程)と、ロード工程とアンロード工程との間に行われる複数の工程とを含む。ロード工程とアンロード工程との間に行われる複数の工程には、成膜工程が含まれる。
【0025】
処理容器4の外周側には、処理容器4を所定の温度に加熱制御可能な、例えば円筒形状のヒータ60が設けられている。
【0026】
ヒータ60は、複数のゾーンに分割されており、鉛直方向上側から下側に向かって、ヒータ60a~60fが設けられている。ヒータ60a~60fは、それぞれ電力制御機62a~62fによって独立して発熱量を制御できるように構成される。また、内筒6の内壁及び/又は外筒8の外壁には、ヒータ60a~60fに対応して、温度センサ65a~65fが設置されている。
【0027】
ウエハボート48に載置された複数枚のウエハWは、1つのバッチを構成し、1つのバッチ単位で各種の基板処理が行われる。また、ウエハボート48に載置されるウエハWの少なくとも1枚以上は、モニタウエハであることが好ましい。また、モニタウエハはヒータ60a~60fのそれぞれに対応して配置されることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態の成膜システム1は、例えば、成膜システム1による成膜の環境を監視する監視センサ群を有する。監視センサ群には、例えば、
図1に示すセンサ63やセンサ64等が含まれる。以下の説明では、監視センサ群のそれぞれの出力値を含む情報を、環境情報と表現する場合がある。センサ63やセンサ64の値は、成膜装置200により制御できない、または、制御しない環境情報の一例である。
【0029】
成膜システム1では、基板処理工程を行う前に、監視センサ群のそれぞれの出力値が予め決められた値となるように、環境が整えられる。したがって、監視センサ群それぞれの出力値は、基板処理工程の実行中に調整されない。言い換えれば、環境情報は、基板処理工程の実行中に調整されない。
【0030】
次に、
図2を参照して、本実施形態の成膜システム1の動作の概要について説明する。
図2は、成膜システムの動作の概要を説明する図である。
【0031】
本実施形態の成膜システム1において、制御装置100は、基板処理工程の実行中の環境情報に基づき、制御対象の目標値からの変動量を予測し、予測結果を用いて、制御対象を目標値に近づけるように成膜装置200を制御する。
【0032】
このため、本実施形態では、基板処理工程の実行中に環境情報に変動が生じた場合であっても、成膜結果に対する環境情報の変動による影響を抑制し、成膜結果の再現性を向上させることができる。
【0033】
環境情報に変動が生じる場合とは、例えば、処理容器4を開放するような成膜装置200のメンテナンスを行った場合等である。
【0034】
具体的には、制御装置100は、膜厚変動予測モデルM1(以下、予測モデルM1)と、制御モデルM2とを有する。
【0035】
制御装置100は、予測モデルM1に成膜装置200のログ情報を入力として、ログ情報に含まれる環境情報の変動に起因する制御対象の目標値からの変動量を予測し、予測値を出力する。つまり、本実施形態の予測モデルM1は、基板処理工程の実行中は調整(制御)することができない、または調整(制御)しない環境情報の影響による、制御対象の目標値からの変動量を予測し、予測値を出力するために使用される。ただし、予測モデルM1は、基板処理工程の実行中に調整できる環境情報の影響による、制御対象の目標値からの変動量を予測し、予測値を出力するために使用されてもよい。
【0036】
制御装置100は、制御モデルM2を用いて、予測モデルM1から出力された予測値に基づき、制御対象を目標値に近づける最適な成膜条件を導出する。成膜条件は、基板処理工程の手順を定義するレシピにおいて規定された条件であり、基板処理工程の実行中に調整される。つまり、制御モデルM2は、基板処理工程の実行中に調整することができる成膜条件の調整を行うために使用される。
【0037】
ここで、本実施形態のログ情報について説明する。
【0038】
本実施形態のログ情報は、成膜装置200が稼働している限り、収集し続けられる成膜装置200の状態を示す情報である。具体的には、ログ情報は、ロード工程、成膜工程、アンロード工程等の各種工程で得られる情報、及び成膜装置200に設けられた各種のセンサ群の出力値を含む情報であり、監視センサ群のそれぞれの出力値を含む。つまり、ログ情報は、環境情報を含む。
【0039】
以下の説明では、成膜装置200から検出される検出項目をパラメータと表現し、各種のセンサの出力値をパラメータの値と表現する場合がある。また、パラメータには、レシピで調整不可能な環境情報の項目も含まれ、環境情報を得るための各種のセンサの出力値もパラメータの値に含まれる。したがって、ログ情報には、センサ群と対応する数のパラメータと、パラメータの値との組み合わせが含まれる。
【0040】
パラメータとパラメータの値の組み合わせの具体例としては、例えば、「基板の温度」と「温度センサの出力値」等が挙げられる。
【0041】
また、パラメータとパラメータの値の組み合わせの具体例としては、例えば、「ローディングエリア内の圧力」と「圧力センサの値」や、「ガスの供給量」と「流量計の値」、「ガスを供給する時間」と「供給開始から供給停止までの時間を計時するタイマの値」等がある。また、パラメータとパラメータの値の組み合わせの具体例としては、「ローディングエリア内の露点の温度」と「露点検出用の温度センサ」等であってもよい。
【0042】
以下に、本実施形態の成膜システム1における基板処理工程について説明する。
【0043】
制御装置100は、基板処理工程の手順を定義したレシピの実行を開始する(手順S1)。レシピの実行開始から、制御装置100は、成膜装置200のログ情報を収集し、予測モデルM1による予測を行うタイミングとなったとき、収集したログ情報を予測モデルM1に入力する(手順S2)。予測モデルM1による予測を行うタイミングの詳細は後述する。レシピの実行開始から収集されたログ情報は、今回のレシピの実行開始と同時又はレシピの実行開始直後から収集されたログ情報であり、前回及びそれ以前のレシピの実行開始から収集されたログ情報を含まない。
【0044】
予測モデルM1は、ログ情報を用いて制御対象の目標値からの変動量を予測し(手順S3)、予測値を出力する(手順S4)。言い換えれば、予測モデルM1は、ログ情報に含まれる環境情報の変動に起因する、制御対象の目標値からの変動量を予測する。
【0045】
制御装置100は、予測値を得ると、予測値を制御モデルM2に入力し、制御モデルM2により、制御対象が最も目標値に近づく最適な成膜条件を導出する(手順S5)。次に、制御装置100は、制御モデルM2から導出された最適な成膜条件を取得し(手順S6)レシピに規定された成膜条件を、手順S5で導出された成膜条件に更新する(手順S7)。
【0046】
続いて、制御装置100は、更新されたレシピに基づき成膜装置200による成膜工程を実行し(手順S8)、成膜を完了させて(手順S9)、レシピの実行を終了する(手順S10)。
【0047】
このように、本実施形態の制御装置100は、基板処理工程を行う度に、レシピの実行開始から収集されたログ情報を用いて制御対象の変動量を予測し、予測結果に基づき、最適な成膜条件を導出して、レシピを更新する。そして、制御装置100は、更新されたレシピにしたがって成膜を行う。
【0048】
このため、本実施形態によれば、同じ条件で基板処理工程を実行した場合における、基板処理工程毎の成膜結果の再現性を高めることができる。
【0049】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態の制御装置100について説明する。
図3は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0050】
CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、I/Oポート104、操作パネル105、HDD106(Hard Disk Drive)を有し、それぞれがバスBによって接続されている。
【0051】
CPU101は、HDD106等の記憶装置に格納されたモデルやレシピ等に基づき、
制御装置100の動作を制御する。
【0052】
ROM102は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU101の動作プログラム等を記憶する記憶媒体である。
【0053】
RAM103は、CPU101のワークエリア等として機能する。
【0054】
I/Oポート104は、温度、圧力、ガス流量等を検出するセンサの出力値を成膜装置200から取得し、CPU101に供給する。また、I/Oポート104は、CPU101が出力する制御信号を成膜装置200の各部(電力制御機62、開度可変弁34の図示しないコントローラ、流量調整部24等)へ出力する。また、I/Oポート104には、操作者が成膜装置200を操作する操作パネル105が接続されている。
【0055】
HDD106は、補助記憶装置であり、基板処理工程の手順を規定した情報であるレシピや、後述する制御装置100の機能を実現するプログラム、上述した予測モデルM1、制御モデルM2を含む各種のモデル等が格納されてもよい。
【0056】
次に、
図4を参照して、本実施形態の制御装置100の機能について説明する。
図4は、制御装置の機能について説明する図である。
【0057】
本実施形態の制御装置100は、レシピ記憶部110、レシピ読み出し部120、装置制御部130、ステップ判定部140、ログ情報取得部150、予測部160、制御部170、レシピ更新部180、予測モデル更新部190を有する。
【0058】
レシピ記憶部110には、レシピ111が格納される。レシピ111は、基板処理工程の手順を規定した情報である。具体的には、レシピ111は、成膜装置200へのウエハWの搬入から、処理済みのウエハWの搬出までの、温度変化、圧力変化、各種ガスの供給の開始及び停止のタイミング、各種ガスの供給量等を規定するものである。
【0059】
また、レシピ111に規定される基板処理工程は、複数の工程を含み、レシピ111では、基板処理工程に含まれる工程毎に、手順と、手順を実行するときの成膜装置200の条件と、が規定されている。基板処理工程に含まれる工程には、ガス供給工程、ロード工程、成膜工程、アンロード工程等が含まれる。成膜装置200の条件には、基板処理工程に含まれる成膜工程における成膜装置200の条件である成膜条件を含む。
【0060】
レシピ111に含まれる成膜装置200の条件とは、例えば、基板処理工程の実行中に調整されるパラメータの値の目標値と、このパラメータの値を調整するために基板処理工程中に調整される対象及び制御内容と、の組み合わせを規定したものである。例えば、レシピ111には、成膜装置200の条件として、処理容器4内の温度、圧力、ガス流量、処理時間等の各項目について目標値(制御値)が設定されている。
【0061】
以下の説明では、基板処理工程中に調整される対象を、制御ノブと表現する場合がある。本実施形態において、基板処理工程の実行中に調整されるパラメータの値は、制御ノブを有する値であり、制御ノブによって調整することができる値である。本実施形態では、パラメータの制御ノブの調整量は、基板処理工程の実行中に、制御モデルM2によって算出される。
【0062】
成膜装置200の条件の一例として、例えば、温度センサ65a~65fによって検出されるウエハWの温度の目標値と、ヒータ60a~60fの出力値との組み合わせ等がある。
【0063】
この場合、温度センサ65a~65fにより検出される検出項目がパラメータに対応し、温度センサ65a~65fによって検出される温度がパラメータの値に対応する。また、ヒータ60a~60fが制御ノブに対応し、ヒータ60a~60fの出力値が制御ノブの制御内容に対応する。
【0064】
また、成膜装置200の条件の一例として、圧力センサの値によって検出される処理容器4内の圧力と、真空ポンプ32の回転数及び開度可変弁34の開度との組み合わせ、流量計によって検出されるガス流量と、流量調整部24の調整量との組み合わせ等がある。
【0065】
レシピ読み出し部120は、レシピ記憶部110に格納されたレシピ111を読み出す。装置制御部130は、読み出されたレシピ111に規定された基板処理工程を実行する。以下の説明では、レシピ111に規定された基板処理工程を実行することを、レシピ111を実行する、と表現する場合がある。具体的には、装置制御部130は、レシピ111に基づき成膜装置200を制御する。
【0066】
ステップ判定部140は、レシピ111の実行が開始されてから、特定のステップまで処理が進んだか否かを判定する。特定のステップは、レシピ111の実行が開始されてから、成膜工程が開始されるまでの間のステップである。特定のステップの詳細は後述する。
【0067】
ログ情報取得部150は、レシピ111の実行を開始してから、I/Oポート104を介して成膜装置200の有するセンサ群の出力値を取得する。言い換えれば、ログ情報取得部150は、レシピ111の実行を開始した直後から、又はレシピ111の実行開始と同時に成膜装置200のログ情報を収集する。
【0068】
また、ログ情報取得部150は、ステップ判定部140により、特定のステップまで処理が進んだと判定された場合に、収集したログ情報を、予測部160に入力する。
【0069】
予測部160は、予測モデル(膜厚変動予測モデル)M1を予め記憶し、成膜装置200のログ情報を入力として、ログ情報に含まれる環境情報の変動に起因する制御対象の目標値からの変動量を予測し、予測値を算出して出力する。つまり、予測部160は、予測モデルM1によって実現される機能部と言える。
【0070】
制御部170は、制御モデルM2を予め記憶する。制御部170は、予測部160から出力された予測値を取得すると、この予測値を制御モデルM2に入力し、制御モデルM2から出力される、最適な成膜条件を取得する。つまり、制御部170は、制御モデルM2によって実現される機能部と言える。
【0071】
より具体的には、制御部170は、制御モデルM2から出力される制御ノブの調整内容を示す値を、補正量として取得する。例えば、制御部170は、制御ノブがヒータ60a~60fである場合には、ヒータ60a~60fの出力値の調整量を、補正量として取得する。
【0072】
レシピ更新部180は、レシピ111に含まれる成膜条件を、制御部170により導出された最適な成膜条件に更新する。具体的には、レシピ更新部180は、成膜条件に含まれる制御ノブの制御内容を、最適な成膜条件に基づき算出された補正量にしたがって更新する。
【0073】
予測モデル更新部190は、成膜システム1による成膜結果に応じて、予測モデルM1を更新する。
【0074】
以下に、本実施形態の予測モデルM1の作成について説明する。尚、予測モデルM1の作成は、予め制御装置100で行われてもよいし、制御装置100以外の情報処理装置等で行われてもよい。
【0075】
本実施形態では、過去に成膜を行ったときの成膜装置200のログ情報と、成膜された膜の膜厚と、を含むプロセスデータを用いて多変量解析を行い、ログ情報の中から、膜厚の変動に対する寄与度が大きいパラメータを特定する。言い換えれば、本実施形態では、ログ情報の中から、膜厚の変動と相関があるパラメータを特定する。
【0076】
そして、本実施形態では、特定されたパラメータのステップ情報を用いて予測モデルM1を作成する。パラメータのステップ情報とは、基板処理工程に含まれる全てのステップにおけるパラメータの値を示す情報である。尚、ログ情報の中から、膜質の変動と相関があるパラメータを特定し、特定されたパラメータのステップ情報を用いて予測モデルM1を作成してもよい。
【0077】
本実施形態では、ログ情報に含まれる全てのパラメータについて、ステップ毎の値と、膜厚の変動との相関を分析し、膜厚の変動と相関がるパラメータを特定する。以下の説明では、膜厚の変動と相関があるパラメータを、変動要因パラメータと呼ぶ。つまり、変動要因パラメータは、ログ情報に含まれるパラメータのうち、過去の成膜工程における条件と同一の条件で成膜を行った場合に、膜厚の変動に対する寄与度が大きくなるパラメータである。
【0078】
本実施形態では、ログ情報のうち、環境情報に含まれるパラメータの中から、変動要因パラメータを特定してよい。環境情報に含まれるパラメータとは、成膜装置200により制御できない、または、制御しないパラメータである。言い換えれば、環境情報に含まれるパラメータとは、制御ノブを有してしないパラメータである。
【0079】
図5は、変動要因パラメータの特定について説明する図である。
図5の例では、ステップ毎のパラメータの値として、センサA~センサHのそれぞれの値が示されている。
図5の例では、ステップ番号45におけるセンサAの値が最も膜厚の変動に対する寄与度が大きいことがわかる。
【0080】
したがって、ここでは、センサAと対応する検出項目(センサAにより検出される温度)が、変動要因パラメータとして特定される。
【0081】
以下の説明では、変動要因パラメータを、監視センサ群の1つであるセンサAにより検出される温度として、予測モデルM1を作成する場合について説明する。
【0082】
尚、本実施形態では、膜厚の変動に対する寄与度が所定の閾値以上となるパラメータを、変動要因パラメータとしてもよい。したがって、例えば、
図5では、センサB、C、Dと対応する検出項目も、変動要因パラメータとして特定されてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、複数の変動要因パラメータが存在する場合には、変動要因パラメータ毎に、変動要因パラメータに対応した予測モデルM1が作成されてもよい。
【0084】
図6は、変動要因パラメータの値と、膜厚の変動との相関を示す図である。
図6(A)では、基板処理工程の実行回数(成膜回数)と、センサAの値及び膜厚との関係を示す図である。
図6(B)は、センサAの値と膜厚との関係を示す図である。
【0085】
図6(A)では、横軸が基板処理工程の実行回数(成膜回数)を示し、左側の縦軸が膜厚を示し、右側の縦軸がセンサAの値を示す。尚、本実施形態の膜厚とは、膜の中心の膜厚(中心膜厚)である。
【0086】
図6(A)から、センサAの値が上昇すると、膜厚の値が小さくなり、センサAの値が下降すると、膜厚の値が大きくなることがわかる。したがって、センサAの値と膜厚との関係は、
図6(B)に示すように、センサAの値が大きくなるほど膜厚の値が小さくなるという、負の相関があることがわかる。
【0087】
本実施形態では、このように、環境情報に含まれるパラメータの中から変動要因パラメータを特定し、変動要因パラメータと膜厚との相関を用いて予測モデルM1を作成することで、制御ノブが存在しないパラメータの変動による膜厚及び膜質への影響を予測できる。
【0088】
このため、本実施形態では、制御モデルM2により、基板処理工程の実行中に、環境情報に基づき予測される膜厚及び膜質の変動が最小となるように、レシピを更新することができる。
【0089】
尚、本実施形態では、変動要因パラメータは、環境情報に含まれるパラメータの中から特定されるものとしたが、これに限定されない。変動要因パラメータは、環境情報に含まれないパラメータの中から特定されてもよい。つまり、変動要因パラメータは、制御ノブが存在するパラメータであってもよい。
【0090】
次に、
図7を参照して、予測モデルM1による予測を開始する特定のステップについて説明する。
図7は、基板処理工程に含まれるステップと、変動要因パラメータの値と膜厚の相関との関係を説明する図である。
【0091】
図7において、縦軸は、変動要因パラメータの値と膜厚との相関係数を示し、横軸は、基板処理工程に含まれる全てのステップ番号を示す。
【0092】
また、
図7では、センサAが処理容器4の下部と、中央部と、上部とに設けられており、3つのセンサA毎に、膜厚との相関係数とステップ番号との関係が示されている。
【0093】
図7における実線は、基板処理工程に含まれる各ステップの、処理容器4の下部に設けられたセンサAの値と膜厚との相関係数との関係を示す。また、
図7に示す破線は、処理容器4の中央部に設けられたセンサAの値と膜厚との相関係数との関係を示す。
図7に示す一点鎖線は、処理容器4の上部に設けられたセンサAの値と膜厚との相関係数との関係を示す。
【0094】
また、
図7において、ステップ番号1からステップ番号3までの工程は、ロード工程であり、ステップ番号58からステップ番号69までの工程は、アンロード工程であり、ステップ番号48が、成膜工程の最初のステップである。
【0095】
図7の例では、ステップ番号45以降に、実線、破線、一点鎖線のそれぞれが示す相関係数の値が大きくなる。つまり、
図7は、ステップ番号45以降の工程におけるセンサAの値が、ステップ番号48から開始される成膜工程でウエハWに成膜される膜の膜厚の変動に大きく寄与することを示している。
【0096】
そこで、本実施形態では、センサAと対応する予測モデルM1による予測を開始する特定のステップを、ステップ番号45とする。
【0097】
この場合、制御装置100は、レシピ111の実行を開始してからステップ番号47まで処理を行うと、ステップ番号45からステップ番号47までの間に収集したログ情報を予測モデルM1に入力し、予測モデルM1から予測値を取得する。
【0098】
そして、制御装置100は、制御モデルM2による予測値を用いた最適な成膜条件の導出と、レシピ111の更新を、ステップ番号48までに行う。言い換えれば、制御装置100は、予測値に基づく最適な成膜条件の導出と、導出された成膜条件に基づくレシピ111の更新を、成膜工程が始まるステップまでに行う。
【0099】
本実施形態では、このように、変動要因パラメータと膜厚との相関係数が大きくなるステップ番号を、特定のステップとすることで、特定のステップの直前の成膜装置200の状態を示すログ情報に基づき、制御対象の変動量の予測値を予測することができる。したがって、本実施形態では、環境情報の影響による制御対象の変動量の予測の精度を向上させることができる。
【0100】
尚、本実施形態では、相関係数の値が、所定の閾値以上となるステップ番号を、特定のステップとしてもよい。また、予測モデルM1における特定のステップを示すステップ番号は、ステップ判定部140によって保持されていてもよい。
【0101】
以下に、
図8を参照して、本実施形態の制御モデルM2による最適な成膜条件の導出について説明する。
図8は、予測モデルと制御モデルの関係について説明する図である。
【0102】
本実施形態の制御モデルM2は、予測モデルM1により変動量の予測値が出力されると、この変動量を最小とするために値を調整するパラメータを特定する。そして、制御モデルM2は、特定されたパラメータと対応する制御ノブの調整量を算出する。
【0103】
図8では、温度センサ65aにより検出される温度がパラメータとして特定された場合を示しており、
図8のグラフ81は、縦軸が温度センサ65aの出力値を示し、横軸が時間を示す。
【0104】
図8の例では、ロード工程が開始されてから成膜工程が開始される前に、予測モデルM1による膜厚の変動量の予測値を算出し、制御モデルM2により、膜厚を予測値に近づけるための制御ノブの調整量を算出する。尚、このときの予測モデルM1は、センサAによる検出項目を変動要因パラメータとして作成した予測モデルM1である。
【0105】
温度センサ65aに対応する制御ノブはヒータ60aであるため、制御モデルM2は、ヒータ60aの出力値の調整量を、制御ノブの調整量として算出する。
【0106】
ここで、センサAは監視センサ群に含まれる制御ノブを有してしないセンサであり、温度センサ65aは制御ノブを有するセンサである。つまり、本実施形態では、制御対象の目標値からの変動の要因となり得る変動要因パラメータと、予測された変動を目標値に近づけるために値を調整するパラメータとが異なる。
【0107】
より具体的には、変動要因パラメータは、制御ノブを有しておらず、基板処理工程の実行中に値を調整することができないパラメータであり、制御モデルM2によって特定されるパラメータは、制御ノブを有し、基板処理工程の実行中に値が調整されるパラメータである。
【0108】
本実施形態では、このように、制御ノブを有するパラメータを調整することで、膜厚と相関が高い変動要因パラメータを用いて予測された制御対象の変動を低減させることができる。
【0109】
次に、
図9を参照して、本実施形態の制御装置100の動作について説明する。
図9は、制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【0110】
本実施形態の制御装置100は、レシピ読み出し部120により、レシピ記憶部110からレシピ111を読み出して、装置制御部130により、基板工程処理を開始し、ウエハW(基板)をロードする(ステップS901)。
【0111】
続いて、制御装置100は、ログ情報取得部150により、成膜装置200から出力されるログ情報の収集を開始する(ステップS902)。ステップS901とステップS902との処理は同時に開始してもよいし、ステップS902の処理をステップS901の処理の直後に開始してもよい。
【0112】
続いて、制御装置100は、ステップ判定部140により、特定のステップまで基板処理工程が進んだか否かを判定する(ステップS903)。ステップS903において、特定のステップまで基板処理工程が進んでいない場合、制御装置100は、特定のステップに進むまで待機する。
【0113】
ステップS903において、基板処理工程が特定のステップまで進んだ場合、制御装置100は、予測部160に、ログ情報取得部150が収集したログ情報を入力し、予測部160により、制御対象の目標値からの変動量の予測値を算出する(ステップS904)。
【0114】
具体的には、予測部160は、ログ情報取得部150からログ情報を取得すると、取得したログ情報を予測モデルM1に入力し、予測モデルM1に予測値を算出させ、予測モデルM1によって算出された予測値を出力する。
【0115】
続いて、制御装置100は、制御部170に、予測部160から出力された予測値を入力し、予測値をゼロに近づけるための制御ノブの補正量を取得する(ステップS905)。
【0116】
具体的には、制御部170は、予測部160から出力された予測値を制御モデルM2に入力し、制御モデルM2に予測値をゼロに近づけるための制御ノブの補正量を算出させ、制御モデルM2によって算出された補正量を出力する。
【0117】
続いて、制御装置100は、レシピ更新部180により、レシピ111に含まれる制御ノブの調整量を、ステップS905で取得した補正量に基づき補正する(ステップS906)。
【0118】
続いて、制御装置100は、装置制御部130により、ステップS906で更新された更新後のレシピ111に基づき成膜装置200を制御し、成膜を行う(ステップS907
)。
【0119】
続いて、制御装置100は、装置制御部130により、ウエハWをアンロードして(S908)、基板処理工程の実行を終了する。
【0120】
尚、本実施形態の制御装置100は、予測モデル更新部190により、
図9に示す処理によって成膜された膜の膜厚の測定結果と、ログ情報とに基づき、予測モデルM1を更新してもよい。
【0121】
以下に、
図10及び
図11を参照して、制御装置100の処理を具体的に説明する。
図10は、制御装置の処理を説明する第一の図であり、
図11は、制御装置の処理を説明する第二の図である。
【0122】
図10及び
図11の例では、予測モデルM1をセンサAにより検出される検出項目を変動要因パラメータとした予測モデルM1とし、制御モデルM2により値が調整されるパラメータをヒータ温度とする場合を示す。
【0123】
図10及び
図11に示すグラフにおいて、左側の縦軸はヒータ温度を示し、右側の縦軸はセンサAの温度を示し、横軸は時間を示す。
【0124】
また、
図10及び
図11において、タイミングT1は、予測モデルM1における特定のステップが開始されるタイミングを示し、タイミングT2において、成膜工程が開始されるタイミングを示す。
【0125】
本実施形態の制御装置100は、基板処理工程が開始されてウエハWがロードされると、センサAの出力値を含むログ情報の収集が開始される。このとき、レシピ111の成膜条件では、ヒータ温度の値がH1[℃]に設定されている。
【0126】
制御装置100は、基板処理工程が進み、タイミングT1となると、それまでに収集されたログ情報を予測モデルM1に入力し、制御モデルM2により、予測モデルM1から出力された予測値に基づき、成膜条件を更新する。ここでは、制御モデルM2により導出された最適な成膜条件に含まれるヒータ温度の値がH2であった場合を示す。
【0127】
この場合、制御装置100は、レシピ111の成膜条件に含まれるヒータ温度の値をH1からH2に更新する。
【0128】
図11に示すように、この更新によって、ヒータ温度は、成膜工程が開始されるタイミングT2までの間にH2[℃]に設定され、ヒータ温度の値がH2[℃]に更新された状態で、成膜工程が行われる。
【0129】
尚、本実施形態では、レシピ111において、レシピ更新部180により更新される値がヒータ温度の値である場合を説明したが、更新される値はこれに限定されない。レシピ更新部180によって更新される値は、制御部170によって導出される最適な成膜条件に応じて変わるものであり、レシピ111において規定される値であれば、どの値であっても更新される可能性がある。したがって、本実施形態では、例えば、ガスの流量や、ガスの供給時間、処理容器4内の圧力等が更新されてもよい。
【0130】
このように、本実施形態では、基板処理工程の実行が開始されてから特定のステップまでの間に収集したログ情報に基づき、レシピ111に規定された成膜条件を更新する。本実施形態では、この処理を、基板処理工程を実行する毎に行うため、成膜工程が開始される前の成膜システム1の環境に依存しない最適な成膜条件で成膜を行うことができる。したがって、本実施形態によれば、成膜結果の再現性を向上させることができる。
【0131】
尚、上述した実施形態では、予測モデルM1に入力されるログ情報は、基板処理工程の実行が開始されてから(レシピの実行が開始されてから)、特定のステップまでの間に収集されたログ情報としたが、これに限定されない。予測モデルM1に入力されるログ情報は、例えば、特定のステップの直前のステップにおいて取得された各センサ群の出力値であってもよい。
【0132】
また、上述した実施形態では、制御モデルM2によって導出される条件を最適な成膜条件としたが、これに限定されない。制御モデルM2によって導出される条件は、成膜条件以外の条件であってよいもよい。言い換えれば、制御モデルM2は、成膜工程以外に工程における、最適な条件を導出してもよい。
【0133】
また、制御モデルM2は、予測値をゼロに近づけるための制御ノブの補正量を出力するものとしたが、これに限定されない。制御モデルM2は、制御ノブの調整量の最適値を出力してもよい。この場合、制御装置100は、現在のレシピ111に規定された制御ノブの調整量を、制御モデルM2から出力された調整量に更新すればよい。
【0134】
また、本実施形態では、基板処理工程の実行が開始されてから、成膜工程が開始される直前までのログ情報を収集して予測モデルM1に入力するものとしたが、これに限定されない。
【0135】
本実施形態では、予測モデルM1の入力とするログ情報に、成膜工程の実行中に収集したログ情報が含まれてもよい。本実施形態では、成膜工程の実行中に取得したログ情報を予測モデルM1の入力に含めることで、成膜工程の実行中における環境の変化による、制御対象に対する影響を低減させることができる。
【0136】
また、上述した実施形態では、制御装置100は、1台の情報処理装置としたが、これに限定されない。制御装置100は、複数の情報処理装置によって実現されてもよい。また、制御装置100は、成膜装置200に含まれても良い。
【0137】
また、本実施形態では、ウエハボート48に載置された多数枚のウエハWにより1つのバッチを構成し、1つのバッチ単位で成膜処理を行うバッチ式の装置を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、ホルダ上に載置した複数のウエハWに対して一括して成膜処理を行うセミバッチ式の装置であってもよく、一枚ずつ成膜処理を行う枚葉式の装置であってもよい。
【0138】
今回開示された実施形態に係る成膜システム、成膜方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 成膜システム
100 制御装置
110 レシピ記憶部
111 レシピ
120 レシピ読み出し部
130 装置制御部
140 ステップ判定部
150 ログ情報取得部
160 予測部
170 制御部
180 レシピ更新部
190 予測モデル更新部
200 成膜装置