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特許7592586電解めっき液用添加剤、電解めっき液及び電解めっき方法
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  • 特許-電解めっき液用添加剤、電解めっき液及び電解めっき方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電解めっき液用添加剤、電解めっき液及び電解めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
C25D3/38 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522229
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2020019591
(87)【国際公開番号】W WO2020241338
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2019100090
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石渡 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】廿日出 朋子
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100260(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102675535(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110734735(CN,A)
【文献】国際公開第2019/044651(WO,A1)
【文献】YANG, Xiaoyan et al.,Journal of Applied Polymer Science,2020年01月25日,Vol.137, No.36,49078
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する電解めっき液用添加剤。
【化1】
(式中、R~Rは、各々独立に、下記一般式(2)で表される基を表し、Aは炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、nは0又は1を表す。)
【化2】
(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A及びAは、各々独立に、炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、mは1~4の整数を表し、*は結合手を表す。)
【請求項2】
電解銅めっき液用添加剤である請求項1に記載の電解めっき液用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液。
【請求項4】
メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールから選択される少なくとも1種のアルコール化合物を含有する請求項3に記載の電解めっき液。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物1gに対して、1g~100gの前記アルコール化合物を含有する請求項4に記載の電解めっき液。
【請求項6】
金属塩と、電解質とを含有する請求項3~5のいずれか一項に記載の電解めっき液。
【請求項7】
前記金属塩が硫酸銅であり、前記電解質が硫酸である請求項6に記載の電解めっき液。
【請求項8】
塩化物イオン源を含有する請求項3~7のいずれか一項に記載の電解めっき液。
【請求項9】
前記塩化物イオン源が塩化水素である請求項8に記載の電解めっき液。
【請求項10】
請求項3~9のいずれか一項に記載の電解めっき液を用いる電解めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する化合物を含有する電解めっき液用添加剤、該電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液、該電解めっき液を用いた電解めっき方法及び新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高集積化電子回路における微細配線、シリコン貫通電極(Through Silicon Via:TSV)及びバンプの形成では、溝、穴などのパターンに対して金属を埋め込む手法が用いられる。電解めっきは、金属を埋め込む代表的な手法の一つである。中でも、金属として銅を埋め込む電解銅めっきが広く知られている。電解銅めっきによる回路形成では、高い接続信頼性を得るために、表面の平坦性、高さの均一性などにおいて仕上がりが良好となることが求められる。表面の平坦性、高さの均一性などを制御するために、電解めっき液には、促進剤、抑制剤、平滑剤などが添加される。
【0003】
近年、電子デバイスの銅層形成工程において、低コスト化・生産性向上のために、銅層を高速で形成する電解めっき方法及びその方法に適した電解めっき液が必要とされている。特に、工程時間短縮の要求が厳しい場合においては、電解めっき液中の銅イオンの供給が律速となって銅の析出ができなくなる限界電流密度付近にまで電流密度を高める必要が生じている。しかしながら、従来の添加剤を含有する電解めっき液を用いた場合には、限界電流密度に近づくにつれて、銅層上面の平坦性が損なわれたり、銅層側壁に欠陥が生じたりして接続信頼性に悪影響を及ぼすことが大きな問題となっている。
【0004】
そこで、特許文献1には、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドンなどの平滑剤を微細銅配線埋め込み用電気銅めっき水溶液に添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5809055号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているポリエチレンイミンなどの平滑剤が添加された電解めっき液を用いて高速で電解めっきを行うと、表面平坦性に優れた金属層を得ることができず、さらに金属層側壁に欠陥が生じるという問題があった。よって、金属層側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた金属層を得ることができる電解めっき液用添加剤が求められている。特に、電流密度が高い場合であっても、金属層側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた金属層を得ることができる電解めっき液用添加剤が求められている。
【0007】
また、上記特許文献1には、本発明の電解めっき液用添加剤、及び該添加剤を含有する電解めっき液を用いた場合の効果について、開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検討を重ねた結果、特定の構造を有する化合物を電解めっき液用添加剤として用いることにより、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する電解めっき液用添加剤である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1~R3は、各々独立に、下記一般式(2)で表される基を表し、A1は炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、nは0又は1を表す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A2及びA3は、各々独立に、炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、mは1~4の整数を表し、*は結合手を表す。)
【0014】
また、本発明は、上記電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液である。
【0015】
更に、本発明は、上記電解めっき液を用いる電解めっき方法である。
【0016】
更に、本発明は、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R11~R13は、各々独立に、下記一般式(4)で表される基を表し、A11は炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、pは0又は1を表す。)
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、R14及びR15は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A12及びA13は、各々独立に、炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、qは1~4の整数を表し、*は結合手を表す。但し、A11が炭素原子数2のアルカンジイル基である場合、qは2~4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属層側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた金属層を得ることができる電解めっき液用添加剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】評価試験において、被めっき基体の表面に電解めっき方法により銅層を形成した後の被めっき基体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<電解めっき液用添加剤>
本発明の電解めっき液用添加剤は、上記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0024】
上記一般式(1)において、R1~R3は、各々独立に、上記一般式(2)で表される基を表し、A1は炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、nは0又は1を表す。A1で表される炭素原子数2~4のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。より表面平坦性に優れた金属層を形成することができることから、A1はエチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(2)において、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A2及びA3は、各々独立に、炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、mは1~4の整数を表し、*は結合手を表す。R4及びR5で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基などが挙げられる。A2及びA3で表される炭素原子数2~4のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。より表面平坦性に優れた金属層を形成することができることから、R4及びR5は水素原子又はメチル基であることが好ましく、A2及びA3はエチレン基であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.1~No.24が挙げられる。なお、下記化合物中の「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えば、アルケン酸メチルと、対応する構造のアミン化合物とを反応させた後、更に別の対応する構造のアミン化合物を反応させることで、上記一般式(1)で表される化合物を得ることができる。具体的には、例えば、アクリル酸メチルとジエチレントリアミンとを反応させた後、更にエチレンジアミンを反応させることで、化合物No.1を得ることができる。
【0031】
本発明の電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液を用いて電解めっき方法により被めっき基体上に金属層を形成する工程を行うと、被めっき基体の表面が微細な構造を有していても溝や穴に金属を表面平坦性よく埋め込むことができ、側壁に深さ10μm以上の欠陥が生じることが少なく、表面平坦性に優れた金属層を形成することができる。また、本発明の電解めっき液用添加剤を含有する電解銅めっき液を用いて電解めっき方法により被めっき基体上に銅層を形成する工程を行うと、得られる銅層の側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性が非常に優れた銅層を形成することができる。そのため、本発明の電解めっき液用添加剤は、電解銅めっき液用添加剤として特に適している。また、本発明の電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液を用いて電解めっき方法により金属層を高速で形成しても、側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた金属層を形成することができる。
【0032】
<電解めっき液>
次に、本発明の電解めっき液について説明する。本発明の電解めっき液は、上記一般式(1)で表される化合物を含有する電解めっき液用添加剤を必須の有効成分として含有する水溶液である。本発明の効果をより向上させる観点から、上記一般式(1)で表される化合物の濃度は、電解めっき液中において、0.01mg/L~100mg/Lであることが好ましく、0.1mg/L~30mg/Lであることがより好ましく、0.5mg/L~10mg/Lであることが最も好ましい。
【0033】
また、電解めっき方法により形成された金属層の表面平坦性をより向上させるため、本発明の電解めっき液は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールから選択される少なくとも1種のアルコール化合物を含有することが好ましい。上記アルコール化合物の中でも、表面平坦性が特に優れた金属層を形成することができることから、メタノールが好ましい。上記アルコール化合物は、上記一般式(1)で表される化合物1gに対して、1g~100g配合することが好ましく、5g~50g配合することがより好ましい。
【0034】
本発明の電解めっき液は、上記電解めっき液用添加剤以外の成分として、従来公知の電解めっき液と同様に、金属の供給源である金属塩、電解質の他、塩化物イオン源、めっき促進剤、めっき抑制剤等を含有してもよい。
【0035】
本発明の電解めっき液に用いられる金属塩の金属としては、電解めっき方法により成膜が可能な金属であれば特に限定されることなく、銅、錫、銀などが挙げられる。特に、本発明の電解めっき液を電解銅めっき液として用いると、表面平坦性が優れる銅層を形成することができる。電解銅めっき液に配合される銅塩としては、硫酸銅、酢酸銅、フルオロホウ酸銅、硝酸銅などが挙げられる。
【0036】
また、本発明の電解めっき液に用いられる電解質である無機酸としては、硫酸、燐酸、硝酸、ハロゲン化水素、スルファミン酸、ホウ酸、フルオロホウ酸などが挙げられる。
【0037】
特に、本発明の電解めっき液が、金属塩として硫酸銅及び電解質として硫酸を含有する場合、表面平坦性が非常に優れる銅層を形成することができるため好ましい。この場合、銅層側壁に欠陥が生じにくくする観点から、硫酸銅(CuSO4・5H2Oとして)の濃度は、電解めっき液中において、50g/L~500g/Lであることが好ましく、100g/L~350g/Lであることがより好ましく、硫酸の濃度は、電解めっき液中において、20g/L~400g/Lであることが好ましく、30g/L~150g/Lであることがより好ましい。
【0038】
また、本発明の電解めっき液には、均一で平滑な金属層を形成するために、塩化物イオン源を配合することができる。塩化物イオン源の濃度は、電解めっき液中において、5mg/L~200mg/Lであることが好ましく、20mg/L~150mg/Lであることがより好ましい。塩化物イオン源としては、特に限定されるものではないが、塩化水素、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
更に、本発明の電解めっき液には、硫黄元素を含有する有機化合物、その塩化合物などのめっき促進剤(光沢剤)を配合することもできる。めっき促進剤としては、下記一般式(5)~(7)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化8】
【0041】
(上記一般式(5)及び(6)において、Rは、任意に置換してもよいアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、更に好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Arは、任意に置換してもよいアリール基であり、例えば任意に置換してもよいフェニル基又はナフチル基であり、Xは、対イオンであり、例えばナトリウム又はカリウムである。)
【0042】
【化9】
【0043】
(上記一般式(7)において、R21及びR22は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1~3の置換基を有していてもよい炭素原子数5~9のシクロアルキル基、又は炭素原子数1~3の置換基を有していてもよいアリール基であり、Mは、アルカリ金属、アンモニウム又は1価の有機アンモニウムを表し、nは、1~7の数を表す。)
【0044】
上記した中でも、金属層の形成を促進する効果が高いという観点から、めっき促進剤としては、3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)ナトリウム(以下、SPSと略記することがある)が好ましい。
【0045】
これらのめっき促進剤の濃度は、電解めっき液中において、0.1mg/L~100mg/Lであることが好ましく、0.3mg/L~50mg/Lであることがより好ましく、0.5mg/L~10mg/Lであることが最も好ましい。
【0046】
更に、本発明の電解めっき液には、めっき抑制剤を配合することが好ましい。めっき抑制剤としては、例えば酸素含有高分子有機化合物を使用することができ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンランダムコポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。本発明の効果をより向上させる観点から、これらの酸素含有高分子有機化合物の分子量は、500~100,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましい。特に、1,000~10,000の分子量を有するポリエチレングリコールが最も好ましい。同様の観点から、酸素含有高分子有機化合物の濃度は、電解めっき液中において、50mg/L~5,000mg/Lであることが好ましく、100mg/L~3,000mg/Lであることがより好ましい。
【0047】
本発明の電解めっき液には、めっき液に添加できることが知られているその他の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲内で任意に用いることができる。
【0048】
その他の添加剤としては、アントラキノン誘導体、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アルカンスルホン酸、アルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸エステル、ヒドロキシアルカンスルホン酸、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸エステル、ヒドロキシアルカンスルホン酸有機酸エステルなどが挙げられる。これらの他の添加剤の濃度は、電解めっき液中において、0.1mg/L~500mg/Lであることが好ましく、0.5mg/L~100mg/Lであることがより好ましい。
【0049】
<電解めっき方法>
次に、本発明の電解めっき液を用いた電解めっき方法について説明する。本発明の電解めっき方法は、電解めっき液として本発明の電解めっき液を使用する他は従来の電解めっき方法と同様に行えばよい。ここでは、被めっき基体上に銅層を形成する電解銅めっき方法について説明する。
【0050】
電解めっき装置としては、例えばパドル攪拌式めっき装置を用いればよい。電解めっき装置のめっき槽に本発明の電解銅めっき液を充填し、電解銅めっき液中に被めっき基体を浸漬する。被めっき基体は、例えば、銅シード層付きSi基板上に、フォトレジストを用いて、レジストパターンを形成したものを用いることができる。
【0051】
この際、例えば、電解銅めっき液の温度は、10℃~70℃、好ましくは20℃~60℃であり、電流密度は、1A/dm2~70A/dm2、好ましくは5A/dm2~50A/dm2、より好ましくは15A/dm2~35A/dm2の範囲内である。また、電解めっき液の撹拌方法は、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根等による機械撹拌等を使用することができる。
【0052】
上述したような条件下で、上記レジストパターンの開口部に銅を埋め込むことで、被めっき基体上に、側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた銅層を形成することができる。
【0053】
本発明の電解めっき方法を使用して製造される、めっきが施された製品は特に限定されないが、例えば、自動車工業材料(ヒートシンク、キャブレータ部品、燃料注入器、シリンダー、各種弁、エンジン内部等)、電子工業材料(接点、回路、半導体パッケージ、プリント基板、薄膜抵抗体、コンデンサー、ハードディスク、磁性体、リードフレーム、ナット、マグネット、抵抗体、ステム、コンピューター部品、電子部品、レーザ発振素子、光メモリ素子、光ファイバー、フィルター、サーミスタ、発熱体、高温用発熱体、バリスタ、磁気ヘッド、各種センサー(ガス、温度、湿度、光、速度等)、MEMS等)、精密機器(複写機部品、光学機器部品、時計部品等)、航空・船舶材料(水圧系機器、スクリュー、エンジン、タービン等)、化学工業材料(ボール、ゲート、プラグ、チェック等)、各種金型、工作機械部品、真空機器部品等、広範なものが挙げられる。本発明の電解めっき方法は、特に微細なパターンが求められる電子工業材料に使用することが好ましく、中でも、TSV形成、バンプ形成等に代表される半導体パッケージ、プリント基板の製造において使用することがより好ましく、半導体パッケージにおいて使用することが最も好ましい。
【0054】
本発明の新規化合物は、上記一般式(3)で表される化合物であり、電解めっき液に添加した場合に、側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性が良好な金属層が得られるため、電解めっき液用添加剤として適している。また、本発明の新規化合物は、電解銅めっき液に添加した場合に、得られる銅層の側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性が特に良好であるため、電解銅めっき液用添加剤として特に適している。
【0055】
上記一般式(3)において、R11~R13は、各々独立に、上記一般式(4)で表される基を表し、A11は炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、pは0又は1を表す。A11で表される炭素原子数2~4のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。より表面平坦性に優れた金属層を形成することができることから、A11としてはエチレン基又はプロピレン基が好ましい。
【0056】
上記一般式(4)において、R14及びR15は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A12及びA13は、各々独立に、炭素原子数2~4のアルカンジイル基を表し、qは1~4の整数を表し、*は結合手を表す。但し、A11が炭素原子数2のアルカンジイル基である場合、qは2~4の整数を表す。R14及びR15で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基などが挙げられる。A12及びA13で表される炭素原子数2~4のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。より表面平坦性に優れた金属層を形成することができることから、R14及びR15としては水素原子又はメチル基が好ましく、A12及びA13としてはエチレン基が好ましい。
【0057】
本発明の上記一般式(3)で表される新規化合物としては、例えば、上述の化合物No.5~No.8及びNo.13~No.24が挙げられる。
【0058】
本発明の上記一般式(3)で表される新規化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えば、アルケン酸メチルと、対応する構造のアミン化合物を反応させた後、更に別の対応する構造のアミン化合物を反応させることで、上記一般式(3)で表される新規化合物を得ることができる。具体的には、例えば、アクリル酸メチルとトリス(2-アミノエチル)アミンとを反応させた後、更にジエチレントリアミンを反応させることで、化合物No.13を得ることができる。
【実施例
【0059】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0060】
[合成例1]化合物No.1の合成
200mLの3つ口フラスコに、メタノール(24.2g)及びアクリル酸メチル(12.8g)をAr雰囲気下で加え、十分混合した。この溶液を0℃に冷却した後、ジエチレントリアミン(2.6g)とメタノール(23.9g)との混合物を、Ar雰囲気下で滴下した。室温で48時間撹拌後、減圧下、オイルバス60℃にてメタノール及び未反応物を除去し中間体を得た。300mLの3つ口フラスコに、メタノール(48.2g)及びエチレンジアミン(41.1g)をAr雰囲気下で加え、十分混合した。この溶液を0℃に冷却した後、上記中間体(5.0g)とメタノール(24.0g)との混合物を、Ar雰囲気下で滴下した。室温で72時間撹拌後、減圧下、オイルバス60℃にてメタノール及び未反応物を除去し生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.1と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0061】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.25ppm(10H、t)、2.82ppm(10H、t)、2.72ppm(10H、t)、2.63ppm(8H、s)、2.45ppm(10H、t)
(2)元素分析(理論値)
C:51.9質量%(51.69質量%)、H:9.2質量%(9.42質量%)、N:27.2質量%(27.02質量%)、O:11.7質量%(11.87質量%)
【0062】
[合成例2]化合物No.2の合成
エチレンジアミンの代わりにN,N-ジメチルエチレンジアミンを用いたこと以外は合成例1と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.2と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0063】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.32ppm(10H、t)、2.80ppm(10H、t)、2.61ppm(8H、s)、2.51ppm(10H、t)、2.42ppm(10H、t)、2.25ppm(30H、s)
(2)元素分析(理論値)
C:57.8質量%(57.53質量%)、H:10.0質量%(10.28質量%)、N:22.4質量%(22.36質量%)、O:9.8質量%(9.83質量%)
【0064】
[実施例1]化合物No.5の合成
エチレンジアミンの代わりにジエチレントリアミンを用いたこと以外は合成例1と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.5と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0065】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.32ppm(10H、t)、2.82ppm(10H、t)、2.68ppm(38H、m)、2.44ppm(10H、t)
(2)元素分析(理論値)
C:52.8質量%(52.68質量%)、H:9.7質量%(9.98質量%)、N:28.3質量%(28.35質量%)、O:9.2質量%(9.00質量%)
【0066】
[合成例3]化合物No.9の合成
ジエチレントリアミンの代わりにトリス(2-アミノエチル)アミンを用いたこと以外は合成例1と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.9と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0067】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.25ppm(12H、t)、2.82ppm(12H、t)、2.72ppm(12H、t)、2.64ppm(12H、s)、2.45ppm(12H、t)
(2)元素分析(理論値)
C:52.3質量%(52.03質量%)、H:9.2質量%(9.46質量%)、N:27.0質量%(26.96質量%)、O:11.5質量%(11.55質量%)
【0068】
[合成例4]化合物No.10の合成
エチレンジアミンの代わりにN,N-ジメチルエチレンジアミンを用いたこと以外は合成例3と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.10と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0069】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.32ppm(12H、t)、2.80ppm(12H、t)、2.62ppm(12H、s)、2.50ppm(12H、t)、2.42ppm(12H、t)、2.24ppm(36H、s)
(2)元素分析(理論値)
C:57.9質量%(57.68質量%)、H:10.0質量%(10.29質量%)、N:22.4質量%(22.42質量%)、O:9.7質量%(9.60質量%)
【0070】
[実施例2]化合物No.13の合成
エチレンジアミンの代わりにジエチレントリアミンを用いたこと以外は合成例3と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.13と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0071】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.32ppm(12H、t)、2.82ppm(12H、t)、2.67ppm(48H、m)、2.44ppm(12H、t)
(2)元素分析(理論値)
C:53.2質量%(52.92質量%)、H:9.6質量%(9.99質量%)、N:28.1質量%(28.28質量%)、O:9.1質量%(8.81質量%)
【0072】
[実施例3]化合物No.17の合成
ジエチレントリアミンの代わりにジプロピレントリアミンを用いたこと以外は合成例1と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.17と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0073】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.24ppm(10H、t)、2.80ppm(10H、t)、2.72ppm(10H、t)、2.46ppm(18H、m)、1.65ppm(4H、m)
(2)元素分析(理論値)
C:53.2質量%(53.04質量%)、H:9.5質量%(9.62質量%)、N:26.0質量%(25.94質量%)、O:11.3質量%(11.40質量%)
【0074】
[実施例4]化合物No.21の合成
ジエチレントリアミンの代わりにトリス(3-アミノプロピル)アミンを用いたこと以外は製造例1と同様の条件で生成物を得た。1H-NMR及び元素分析の結果、得られた生成物は化合物No.21と同定された。これらの分析結果を以下に示す。
【0075】
(分析値)
(1)1H-NMR(D2O)
3.24ppm(12H、t)、2.80ppm(12H、t)、2.72ppm(12H、t)、2.46ppm(24H、m)、1.63ppm(6H、m)
(2)元素分析(理論値)
C:53.8質量%(53.64質量%)、H:9.5質量%(9.70質量%)、N:25.6質量%(25.67質量%)、O:11.1質量%(10.99質量%)
【0076】
[実施例5~15]
電解めっき液用添加剤として、化合物No.1、No.2、No.5、No.9、No.10、No.13、No.17及びNo.21を用いて、表1に示す組成で電解銅めっき液を調製した。なお、実施例5~15において、電解銅めっき液の溶媒は水であり、各成分の濃度は水で調整した。また、実施例で用いたPEG4000は、3,600~4,400の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0077】
【表1】
【0078】
[比較例1~3]
電解めっき液用添加剤として、下記比較化合物1及び2を用いて、表2に示す組成で電解銅めっき液を調製した。なお、比較例1~3において、電解銅めっき液の溶媒は水であり、各成分の濃度は水で調整した。また、比較例で用いたPEG4000は、3,600~4,400の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【表2】
【0082】
[評価例1~22、比較評価例1~6]
電解めっき装置として、パドル攪拌式めっき装置を用い、パドル攪拌式めっき装置のめっき槽に実施例5~15及び比較例1~3の電解銅めっき液をそれぞれ充填した。それぞれの電解銅めっき液中に、被めっき基体を浸漬した。被めっき基体には、銅シード層付きSi基板上に、フォトレジストを用いて、レジストパターン(形状:断面円形状の開口部を有する、開口径:200μm)を形成したものを用いた。次いで、下記めっき条件で各々電解銅めっき方法により、レジスト開口部に銅を埋め込み、被めっき基体上に銅層を形成した。
(めっき条件)
(1)ホール径:200μm
(2)電流密度:20A/dm2又は25A/dm2
(3)液温:45℃
(4)めっき時間:銅層の最小高さ(LMin)が200μmになるまでの時間
【0083】
[評価例1~22、比較評価例1~6]
図1に示すように、評価例1~22及び比較評価例1~6によって、被めっき基体2の表面に形成された銅層1の断面をレーザ顕微鏡(キーエンス社製、型番:VK-9700)で観察することで、銅層1の最小高さ(LMin)及び最大高さ(LMax)を測定し、以下の式によりΔLを算出した。また、銅層1の側壁において深さ10μm以上の凹みが観察された場合、この凹みを欠陥とし、欠陥の深さを測定した。評価結果を表3に示す。
ΔL=LMax-LMin
【0084】
【表3】
【0085】
表3において、ΔLの値が小さいほど、表面平坦性に優れた銅層が形成できたことを表す。表3の結果より、比較評価例1~6と比べて、評価例1~22においては、表面平坦性に優れ、側壁に欠陥のない銅層を形成できることがわかった。さらに、比較例1~3の電解銅めっき液を用いた場合には、電流密度を20A/dm2から25A/dm2に上げると表面平坦性が悪化し、欠陥の深さが大きくなることが分かった。これに対して、実施例5~15の電解銅めっき液を用いた場合には、電流密度を20A/dm2から25A/dm2に上げても良好な表面平坦性を維持し、欠陥が生じないということがわかった。このことは、比較例1~3の電解銅めっき液を用いた場合と比べて、実施例5~15の電解銅めっき液を用いた場合には、側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた銅層を生産性良く得ることができることを表している。
【0086】
以上説明したように、本発明の電解めっき液用添加剤を含有する電解めっき液を用いて電解めっき方法により、被めっき基体上に銅層を形成した場合は、側壁に生じる欠陥が少なく、表面平坦性に優れた銅層を形成することができることがわかった。
【符号の説明】
【0087】
1 銅層、2 被めっき基体、3 最小高さ(LMin)、4 最大高さ(LMax)、5 ΔL。
図1