(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ウレタン基及びケイ素原子を含む硬化したポリマーの調製
(51)【国際特許分類】
C08G 71/04 20060101AFI20241125BHJP
C08G 18/83 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C08G71/04
C08G18/83 070
(21)【出願番号】P 2021546258
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2020053083
(87)【国際公開番号】W WO2020161281
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-07
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティール,アンドル
(72)【発明者】
【氏名】ワーム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ピーター
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-519303(JP,A)
【文献】特許第7358333(JP,B2)
【文献】特表2019-532164(JP,A)
【文献】特表2009-518518(JP,A)
【文献】特開昭63-156805(JP,A)
【文献】特公昭46-030711(JP,B1)
【文献】REYNOLDS,D.D. et al.,Mercaptoethylation. II. Preparation of 2-Mercaptoethyl Carbamates and Oligoethylene Sulfides,J.Org.Chem,Vol.26(12),1961,p.5111-5115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C07D
C09J
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマーを調製する方法であって、
a)
2又は3個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第1級若しくは第2級アミノ基、又はブロックされた第1級若しくは第2級アミノ基(以下、アミノ基という)から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B
)と、
-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を出発原料として使用し、
ここで、出発原料として使用される化合物の少なくとも1つがケイ素官能基を含み、
5員環式モノチオカーボネート基は、-O-C(=O)-S-を含む環系であり、さらなる2員は5員環を閉じる炭素原子であり、
ケイ素官能基は、式-SiR
1s
R
2s
R
3s
のアルコキシシラン基であり、ここで基R
1s
~R
3s
のうち2つ又は3つはアルコキシ基であり、R
1s
~R
3s
の残りの基は水素又はアルキル基であり、
化合物A)、化合物B)、及
び化合物C)を、
b1) 化合物A)と、化合物B)と
、化合物C)とを水を除去しながら反応させて、まだ硬化可能なケイ素官能基を有するポリマーを得ること、及び
b2) b1)で得られたポリマーを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布して、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は代替として
c1) 化合物A)と、化合物B)と
、化合物C)とを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布すること、及び
c2) 1段階で前記化合物を反応させて、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は
代替として
d1) ケイ素官能基を有する化合物A)又はケイ素官能基を有する化合物B)又はケイ素官能基を有する化合物C)、又は前記化合物とさらなる化合物A)~C)の混合物を、表面、ギャップ、又は3次元テンプレートに塗布すること、ここで前記混合物は化合物A)とB)を組み合わせて含まない、
d2) 周囲水でケイ素官能基を硬化させること、及び
d3) 次いで、欠けている化合物A)、化合物B)、及び化合物C)を添加し、これらの化合物を反応させること
によって処理する、前記方法。
【請求項2】
化合物A)が、式(II)
【化1】
(R
1b~R
4b
のうちの3つは、水素を表し、R
1b~R
4bの
うちの残りの基は、Zへの連結基であり、nは
2又は3の整数を表し、Zは、
炭素、水素及び任意選択で酸素を含む最大30個までの炭素原子を有するn価の有機基を表す。)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zは、
式(G1)
(V-O-)
m
V (G1)
[式中、VはC
2
~C
20
-アルキレン基を表し、mは少なくとも1の整数であり、末端アルキレン基Vは、連結基に結合されている]
のポリアルコキシレン基;
式(G2)
【化2】
[式中、Wは、炭素及び水素からなる最大10個の炭素原子を有する二価の有機基であり、R
10b
~R
17b
は互いに独立して、H又はC
1
~C
4
アルキル基を表し、R
10b
~R
17b
のうちの少なくとも6個はHであり、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、連結基への結合によって置き換えられる]
の基;及び
アルキレン基である基G3
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物B)が1~5個のアミノ基を含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-SHと反応する化合物C)の官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基又はエポキシ基から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
化合物B)がケイ素官能基を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基R
1s~R
3sのうちの2つ又は3つがアルコキシ基であり、残りの基R
1s~R
3sがアルキル基である、請求項
1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
化合物A)、B)及びC)の混合物が、21℃、1バールで液体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
プロセスステップb1)~b2)を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマー中のケイ素の含有量が、ポリマー100g当たり0.001~0.3molのケイ素である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得られるコーティング、シールされた材料、又は成形体。
【請求項12】
ポリマー100g当たり0.001~0.3molのケイ素を含む、化合物A)と、化合物B)
と、化合物C)とのポリマー
(ここで、化合物A)、化合物B)、及び化合物C)は請求項1で定義されたとおりである)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマーを調製する方法であって、
a) 少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第1級若しくは第2級アミノ基、又はブロックされた第1級若しくは第2級アミノ基(以下、アミノ基という)から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物Bと、
任意選択で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を出発原料として使用し、
ここで、出発原料として使用される化合物の少なくとも1つがケイ素官能基を含み、
化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を、
b1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを水を除去しながら(under exclusion of water)反応させて、まだ硬化可能なケイ素官能基を有するポリマーを得ること、及び
b2) b1)で得られたポリマーを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布して、周囲水(ambient water)でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は
c1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布すること、及び
c2) 1段階で前記化合物を反応させて、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は
d1) ケイ素官能基を有する化合物A)又はケイ素官能基を有する化合物B)又はケイ素官能基を有する化合物C)、又は前記化合物とさらなる化合物A)~C)の混合物を、表面、ギャップ、又は3次元テンプレートに塗布すること、ここで前記混合物は化合物A)とB)を組み合わせて含まない、
d2) 周囲水でケイ素官能基を硬化させること、及び
d3) 次いで、欠けている(missing)化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を添加し、これらの化合物を反応させること
によって処理する、前記方法である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは重要な工業用ポリマーである。ポリウレタンは非常に良好な機械的特性を有し、したがって、多くの技術的用途において、例えば、コーティング剤又は接着剤におけるバインダーとして又はフォームとして使用される。
【0003】
ポリウレタンは、シリル基、特にアルコキシシラン基で修飾されている。このようなシリル基で修飾されたポリウレタンは、湿気硬化性であり、例えば、コーティング剤又は接着剤における一成分バインダー又は樹脂として使用されている。
【0004】
US 3632557によると、ケイ素末端ポリウレタンは、イソシアネート末端プレポリマーとアミノシランとを反応させることによって得られる。
【0005】
US 4625012及びUS 6355127 B1は、シリル修飾ポリウレタンを得るためのイソシアナト-オルガノシランの使用を開示している。
【0006】
WO 2012/003187 A1では、ポリウレタンを修飾するために、水素-ケイ素結合及び架橋性基を持つケイ素化合物が使用されている。
【0007】
ウレタン基及び湿気硬化性シリル基を持つ代替ポリマーが求められている。代替ポリマーは、例えば、追加のヘテロ原子又は官能基を含んでいてもよく、これらは、そのようなポリマーの技術利用を向上させ、又は技術利用の分野を拡大することができる。
【0008】
また、シリル修飾ポリウレタンの新しい調製方法、特にイソシアネートの使用を伴わない方法も求められている。
【0009】
EP 2468791 A1の対象は、酸素及び硫黄を含む5員環式環系を有する化合物を含むエポキシ組成物である。
【0010】
D.D. Reynolds、D.L. Fields及びD.L. Johnson, Journal of Organic Chemistry、1961, 5111~5115ページには、5員環式モノチオカーボネート環系を有する化合物及びその反応が開示されている。中でも、アミノ化合物との反応が言及されている。
【0011】
WO 2019/034468 A1及びWO 2019/034469 A1は、少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する化合物の合成のプロセスに関する。
【0012】
WO 2019/034470 A1及びWO 2019/034473 A1は、少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を反応させることによって得られるポリマーに関する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、代替のシリル修飾ポリマーと、シリル修飾ポリウレタンを調製するための代替方法を提供することである。この代替方法は、経済的且つ柔軟であるべきであり、したがって、様々な技術的用途に適したシリル修飾ポリウレタンを容易に調製することができる。
【0014】
よって、方法及びウレタン基及びチオエーテル基を含むシリル修飾ポリマーが見出された。
【0015】
本発明は、ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマーを調製する方法であって、
a) 少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第1級若しくは第2級アミノ基、又はブロックされた第1級若しくは第2級アミノ基(以下、アミノ基という)から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物Bと、
任意選択で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を出発原料として使用し、
ここで、出発原料として使用される化合物の少なくとも1つがケイ素官能基を含み、
化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を、
b1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを水を除去しながら反応させて、まだ硬化可能なケイ素官能基を有するポリマーを得ること、及び
b2) b1)で得られたポリマーを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布して、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は
c1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布すること、及び
c2) 1段階で前記化合物を反応させて、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は
d1) ケイ素官能基を有する化合物A)又はケイ素官能基を有する化合物B)又はケイ素官能基を有する化合物C)、又は前記化合物とさらなる化合物A)~C)の混合物を、表面、ギャップ、又は3次元テンプレートに塗布すること、ここで前記混合物は化合物A)とB)を組み合わせて含まない、
d2) 周囲水でケイ素官能基を硬化させること、及び
d3) 次いで、欠けている化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を添加し、これらの化合物を反応させること
によって処理する、前記方法に関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、ここに記載の方法によって得られるコーティング(coatings)、シールされた材料(sealed materials)、又は成形体(molded bodies)に関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、ポリマー100g当たり0.001~0.3molのケイ素を含む、化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)から得られるポリマーに関する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、1個又は2個の5員環式モノチオカーボネート基及び1個のアルコキシシラン基-SiR1sR2sR3sを含む化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
化合物A)について
化合物A)は、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を含む。
【0020】
5員環式モノチオカーボネート基は5員の環系であり、そのうち3員はモノチオカーボネート-O-C(=O)-S-に由来し、さらなる2員は5員環を閉じる炭素原子である。
【0021】
化合物A)は、低分子化合物又はポリマー化合物であってもよく、例えば最大1000個までの、特に最大500個までの、好ましくは最大100個までの5員環式モノチオカーボネート基を含んでもよい。
【0022】
好ましい実施形態において、化合物A)は、1~3個の環式モノチオカーボネート基を含む。
【0023】
最も好ましい実施形態において、化合物A)は、1個又は2個の5員環式モノチオカーボネート基を含む。
【0024】
好ましい化合物A)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、最大500g/molまでの分子量を有する化合物A)である。
【0025】
化合物A)は、その他の官能基、例えば、非芳香族エチレン性不飽和基、エーテル基、チオエーテル基、又はカルボン酸エステル基、又はケイ素官能基を含んでもよい。
【0026】
好ましい実施形態において、化合物A)は、環式モノチオカーボネート基、非芳香族エチレン性不飽和基、エーテル基、チオエーテル基、又はカルボン酸エステル基、又はケイ素官能基以外の官能基を含まない。
【0027】
好ましい化合物A)は、式(I)
【0028】
【化1】
[R
1a~R
4aは、互いに独立して水素、又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R
2a、R
4a、及びチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成していてもよい]
の化合物、又は式(II)
【0029】
【化2】
[R
1b~R
4bは、互いに独立して水素、又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R
2b、R
4b、及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成していてもよく、R
1b~R
4b基のうちの1個はZへの連結基であり、nは、少なくとも2の整数を表し、Zは、n価の有機基を表す。]
の化合物である。
【0030】
式Iの化合物A)について
式Iの化合物A)は、5員環式モノチオカーボネート基を1個だけ有する。
【0031】
R1a~R4aのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは最大30個までの、より好ましくは最大20個までの炭素原子を有する有機基である。さらなる好ましい実施形態において、R2a及びR4aは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒に5~10員の炭素環を形成しない。
【0032】
R1a~R4aのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、上に列挙されるヘテロ原子及び官能基を含んでもよい。特に、そのような有機基は、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、及びクロライド(chloride)を含んでもよい。R1a~R4aは、例えばエーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基、又はカルボキシ基の形態で酸素を含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素、窒素、又はクロライド、特に酸素を含んでもよい最大30個までの炭素原子を有する脂肪族有機基である。
【0033】
本明細書で使用される用語「ハロゲニド」は、共有結合したハロゲン原子の慣用名であり、好ましくはCl原子である。
【0034】
本明細書で使用される用語「クロライド」は、共有結合したCl原子の慣用名である。
【0035】
より好ましい実施形態において、有機基は、アルキル基から、-CH2-O-R5a基、又は-CH2-O-C(=O)-R6a基、又は-CH2-NR7aR8a基から選択され、R5a~R8aは最大30個までの炭素原子、好ましくは最大20個までの炭素原子を有する有機基である。特に、R5a~R8aは脂肪族基又は芳香族基を表し、脂肪族基又は芳香族基は、酸素を、例えばエーテル基の形態で含んでもよい。好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、例えば1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、又はポリアルコキシ基を表す。最も好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、特に1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0036】
最も好ましい実施形態において、有機基は、-CH2-O-R5a基又は-CH2-O-C(=O)-R6a基である。
【0037】
式(I)中のR1a~R4aのうちの2~4個すべてが水素を表し、残りのR1a~R4a基が有機基を表すことが好ましい。
【0038】
式(I)中のR1a~R4aのうちの2個又は3個が水素を表し、残りのR1a~R4a基が有機基を表すことがより好ましい。
【0039】
式(I)中のR1a~R4aのうちの3個が水素を表し、R1a~R4aのうちの残りの基が有機基を表すことが最も好ましい。好ましい実施形態において、R1a又はR2aは有機基を表す残りの基である。
【0040】
1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物A)としては、例えば、式
【0041】
【0042】
置換基「C12/C14」は、C12/C14脂肪アルコールに由来する置換基を意味する。
【0043】
式(II)の化合物A)について
式(II)の化合物A)は、少なくとも2個の5員環モノチオカーボネート基を有する。
【0044】
R1b~R4bのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは最大30個までの炭素原子を有する有機基である。さらなる好ましい実施形態において、R2b及びR4bは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒に5~10員の炭素環を形成しない。
【0045】
R1b~R4bのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は炭素及び水素以外の元素を含んでもよい。具体的には、そのような有機基は、酸素、窒素、硫黄、ケイ素及びクロライドを含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は酸素又はクロライドを含んでもよい。R1b~R4bは、例えばエーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基、又はカルボキシ基の形態で酸素を含んでもよい。
【0046】
R1b~R4b基のうちの1個は、Zへの連結基である。
【0047】
連結基は、単に結合であるか、又はCH2-基、CH2-O-基又はCH2-O-C(=O)-基又はCH2-NR5b-基であり、R5bは、脂肪族基、特に最大20個の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましい。
【0048】
連結基は、単に結合であるか、又はCH2-基又はCH2-O-基又はCH2-O-C(=O)-基であることがより好ましい。
【0049】
最も好ましい実施形態において、連結基はCH2-O-基である。
【0050】
式(II)中R1b~R4b基のうちの2個又は3個は水素であることが好ましい。
【0051】
最も好ましい実施形態において、R1b~R4b基のうちの3個は水素を表し、R1b~R4bのうちの残りの基はZへの連結基である。
【0052】
最も好ましい実施形態においてR1b又はR2b基はZへの連結基である。
【0053】
nは少なくとも2の整数を表す。例えば、nは、2~1000、特に2~100、個別には2~10の整数であってもよい。
【0054】
好ましい実施形態において、nは2~5の整数であり、特にnは2又は3である。
【0055】
最も好ましい実施形態において、nは2である。
【0056】
Zはn価の有機基を表す。nが、例えば10~1000のように大きな数字である場合、Zは、例えば重合又は共重合、例えばエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合、重縮合、又は重付加によって得られるポリマー基、特にポリマー骨格であってもよい。例えば、ポリエステル又はポリアミドは、水又はアルコールを除去しながらの重縮合によって得られ、ポリウレタン又はポリ尿素は重付加により得られる。
【0057】
そのような式(II)の化合物は、例えばモノチオカーボネート基を含むエチレン性不飽和モノマーの、又はその後モノチオカーボネート基に変換されるエポキシ基を含むモノマーのラジカル重合又は共重合によって得られるポリマーである。
【0058】
好ましい実施形態において、Zは、最大50個までの炭素原子、特に最大30個までの炭素原子を有し、且つ炭素及び水素以外の元素を含んでもよいn価の有機基であり、nは2~5、特に2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0059】
特に好ましい実施形態において、Zは、最大50個までの炭素原子、特に最大30個までの炭素原子を有し、且つ炭素、水素、及び任意選択で酸素のみを含み、且つさらなる元素を含まないn価の有機基であり、nは2~5、特に2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0060】
好ましい実施形態において、Zは式(G1)
(V-O-)mV
[式中、VはC2~C20-アルキレン基を表し、mは少なくとも1の整数である]
のポリアルコキシレン基である。末端アルキレン基Vは、R1b~R4b基のうちの1個である連結基に結合されている(上述を参照されたい)。
【0061】
C2~C20-アルキレン基はC2~C4-アルキレン基、特にエチレン又はプロピレンであることが好ましい。mは、例えば1~100、特に1~50の整数であってもよい。
【0062】
更に好ましい実施形態において、Zは式(G2)
【0063】
【化4】
[式中、Wは、最大10個の炭素原子を有する二価の有機基であり、nは2であり、R
10b~R
17bは互いに独立して、H又はC
1~C
4アルキル基を表し、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、R
1b~R
4b基(上述を参照されたい)のうちの1個である連結基への結合によって置き換えられる]
の基である。
【0064】
R10b~R17bのうちの少なくとも6個は水素であることが好ましい。最も好ましい実施形態において、R10b~R17bのすべては水素である。
【0065】
W基は、例えば
【0066】
【0067】
Wは、炭素及び水素のみから成る有機基であることが好ましい。
【0068】
最も好ましいWは、ビスフェノールAの構造に対応する
【0069】
【0070】
さらなる好ましい実施形態において、ZはG3基であり、ここでG3は、アルキレン基、特にC2~C8アルキレン基を表し、そのようなアルキレン基の好ましい例は、エチレン(CH2-CH2)、n-プロピレン(CH2-CH2-CH2)、特にn-ブチレン(CH2-CH2-CH2-CH2)である。
【0071】
少なくとも2個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)は、例えば、式(III)
【化7】
(式中、Gは2~10個、特に2~6個の炭素原子を有するアルキレン基を表す)
の化合物である。
【0072】
式(III)の好ましい化合物は、以下の式
【化8】
を有するビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)]である。
【0073】
化合物A)は、異なる化合物A)の混合物であってもよい。化合物A)、それぞれ化合物A)の混合物は、21℃、1バールで液体である。好ましい一実施形態では、液体の化合物A)は、21℃、1バールで固体である化合物A)を、21℃、1バールで液体である化合物A)に溶かすことによって得られる。
【0074】
好ましい実施形態において、化合物A)は、21℃、1バールで液体である。
【0075】
化合物A)の合成について
1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を合成するいくつかの方法は、技術水準において記載されている。
【0076】
US 3,072,676及びUS 3,201,416によれば、エチレンモノチオカーボネートは2段階プロセスによって調製され得る。第1の段階において、メルカプトエタノールとクロロカルボキシレートとを反応させてヒドロキシエチルチオカーボネートを得て、第2の段階において、これを金属塩触媒の存在下で加熱してエチレンモノチオカーボネートを得る。
【0077】
US 3,517,029によれば、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノールと炭酸ジエステルとをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることにより得られる。
【0078】
US 3,349,100に開示されるプロセスによれば、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドと硫化カルボニルとを反応させることによって得られる。硫化カルボニルの入手可能性(availability)は限定されている。得られるアルキレンモノチオカーボネートの収率及び選択率は低い。
【0079】
ホスゲンを出発材料として使用する合成は、US 2,828,318から公知である。ホスゲンをヒドロキシメルカプタンと反応させる。モノチオカーボネートの収率はなおも低く、重合による副生成物が観察される。
【0080】
化合物A)及びC)を調製する好ましいプロセスは、
a)少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物(略称はエポキシ化合物)を出発材料として使用し、
b)化合物をホスゲン又はクロロギ酸アルキルと反応させ、それにより付加物を得、
c)付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させ、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
プロセスである。
【0081】
このプロセスは、WO 2019/034469 A1に詳細に記載されている。
【0082】
化合物B)について
化合物B)は、第一級又は第二級アミノ基から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物である。この特許出願において、「アミノ基」という単語は、別段の指示がない場合、又は内容からそれ以外が明白でない場合、第一級又は第二級アミノ基を意味するものとする。
【0083】
化合物B)は、モノチオカーボネート基を含まない。
【0084】
化合物B)は、例えば最大500,000g/molまでの分子量を有してもよい。化合物B)が高分子化合物、例えばアミノ基を含むポリマーである場合、後半が当てはまり得る。ポリマーの場合、「分子量」という用語は、ポリスチレンを標準としてGPCで測定された数平均分子量Mnを意味する。
【0085】
化合物B)は、例えば、環式モノチオカーボネート基を有する化合物と第一級又は第二級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン基含有付加物であってもよく、ここで、アミノ基がモノチオカーボネート基と比較して化学量論的過剰であり、よってなおも第一級又は第二級アミノ基を有するがモノチオカーボネート基を有しないウレタン基含有付加物が得られる。
【0086】
好ましい化合物B)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物B)である。
【0087】
化合物B)は、例えば、重合性エチレン性不飽和基、エーテル基、又はカルボン酸エステル基又はケイ素官能基を含んでもよい。
【0088】
好ましい実施形態において、化合物B)は、第一級又は第二級アミノ基、第三級アミノ基、重合性エチレン性不飽和基、エーテル基又はケイ素官能基以外のいかなる官能基も含まない。
【0089】
好ましい実施形態において、化合物B)は、1~10個のアミノ基、好ましくは1~5個のアミノ基、それぞれ1~3個のアミノ基を含み、最も好ましい実施形態において化合物B)は1~2個のアミノ基を含む。
【0090】
好ましい実施形態において、化合物B)のアミノ基のうちの少なくとも1個は第一級アミノ基である。
【0091】
最も好ましい実施形態において、化合物B)のすべてのアミノ基は第一級アミノ基である。
【0092】
1個のアミノ基を有する化合物B)は、例えば、第一級アミノ基を有するモノアルキルアミン、例えばC1~C20-アルキルアミン若しくはシクロアルキル-アミン、又はエーテルアミン、例えば2-メトキシエチルアミン若しくは3-メトキシプロピルアミン、又はジエーテルアミン若しくはポリエーテルアミン、例えばジグリコールアミン若しくはポリグリコールアミン、又はポリオキシプロピレンアミンである。
【0093】
2個以上のアミノ基を有する化合物B)は、例えば、
- アルキレンジアミン又はアルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,3-ジアミノペンタン、又は2-メチルペンタン-1,5-ジアミン;
- エーテル基を含むアルキレンジアミン又はアルキレンポリアミン(ポリエーテルアミン)、例えばポリグリコールジアミン又はポリオキシプロピレンジアミン;
- 脂環式ジアミン、例えばシクロヘキシルジアミン、例えば1,2-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン又はこれらの混合物、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)-メタン、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、2,5-ビスアミノメチルテトラヒドロフラン、又は3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン;
- 芳香族ジアミン、例えば1,2-フェニレン-ジアミン又は1,4-フェニレン-ジアミン、トルエンジアミン、4,4'-ジアミノ-ジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ビスアミノメチルフランである。
【0094】
化合物B)はまた、アミノ基が保護基で保護された形態で使用してもよい。必要になった又は所望された際にはすぐに、保護基は除去され、それにより遊離アミノ基を有する上記の化合物B)が得られる。通常は、保護基の除去は反応条件下で行われる。アミノ基についての通常の保護アミノ基は、例えばケチミン、アルジミン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ルイス酸錯体化アミン、カルバメート、ベンジルオキシカルボニルアミン、アシルオキシム、又はホルムアニリドである。脱保護反応は、例えば温度、光、pH、又は水/湿度の存在によって引き起こすことができる。
【0095】
さらなる好適な化合物B)は、例えば、WO 2019/034470 A1及びWO 2019/034473 A1に記載されている。
【0096】
化合物B)は、異なる化合物B)の混合物であってもよい。
【0097】
化合物C)について
化合物C)は、チオール基-SHと反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物である。
【0098】
化合物C)は、5員環式モノチオカーボネート基を含まず、アミノ基を含まない。
【0099】
化合物C)は、例えば最大500,000g/molまでの分子量を有してもよい。化合物C)が高分子化合物、例えばポリマーである場合、後半が当てはまり得る。
【0100】
好ましい化合物C)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物C)である。
【0101】
化合物C)は、例えば、-SH基と反応する官能基を最大1000個まで有することができ、特に、-SH基と反応する官能基を最大500個まで、好ましくは最大100個まで有することができる。
【0102】
好ましい実施形態では、化合物C)は、-SH基と反応する1~10個、特に2~6個の官能基を含む。
【0103】
最も好ましい実施形態では、化合物C)は、-SH基と反応する2又は3個の官能基を含む。
【0104】
好ましい実施形態では、化合物C)の官能基と-SH基との反応は、硫黄-炭素結合の形成をもたらす。
【0105】
化合物C)の官能基と-SH基との反応は、付加反応、縮合反応、又は求核置換反応であってよい。
【0106】
-SH基と付加反応を起こす化合物C)は、例えば、非芳香族エチレン性不飽和基を有する化合物又はエポキシ基を有する化合物又は官能基としてイソシアネート基を有する化合物である。非芳香族エチレン性不飽和基は、非芳香族の炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合である。
【0107】
-SH基との縮合反応を起こす化合物C)は、例えば官能基としてカルボニル基を有する化合物であり、例えばモノカルボニル化合物又はジカルボニル化合物、例えばジアルデヒド、ジケトンである。
【0108】
-SH基と求核置換反応を起こす化合物C)は、例えば、官能基としてハロゲニド、特にクロライドを有する化合物である。
【0109】
-SH基と反応する好ましい官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基又はエポキシ基である。
【0110】
重合性エチレン性不飽和基の好ましい例は、ビニル基H2C=CH-、オレフィン基-HC=CH-であり、ここで、二重結合の2個の炭素原子はそれぞれ1個のみの水素が置換されており、更なる置換基は特に、環式系の炭素原子を含む炭素原子、及びアクリル基又はメタクリル基(略称は(メタ)アクリル基)である。この特許出願において、「ビニル基」という用語は(メタ)アクリル基を含まない。
【0111】
特に好ましい化合物C)は、ビニル基、(メタ)アクリル基又はエポキシ基を有する化合物である。
【0112】
ビニル基、(メタ)アクリル基又はエポキシ基を有する化合物はよく知られている。
【0113】
好適な化合物C)は、例えば、WO2019/034470 A1及びWO2019/034473 A1に記載されている。
【0114】
化合物C)は、異なる化合物C)の混合物であってもよい。
【0115】
ケイ素官能基について
反応させた化合物の少なくとも1つはケイ素官能基を含む。
【0116】
化合物A)とB)を反応させる場合、化合物A)又はB)の少なくとも1つはケイ素官能基を含む。
【0117】
化合物A)、B)及びC)を反応させた場合、化合物A)、B)又はC)の少なくとも1つはケイ素官能基を含む。
【0118】
A)及びB)の化合物のうち、それぞれA)、B)及びC)のうち2つ以上の化合物はケイ素官能基を含んでいてもよい。通常、反応させる化合物のうち1つだけが、ケイ素官能基を含む化合物である。
【0119】
すでに上述したように、化合物A)、B)及びC)は、異なる化合物A)、B)及びC)の混合物であってもよい。それゆえ、化合物A)、B)及び任意選択でC)から得られるポリマー中のケイ素官能基の所望の含有量は、ケイ素官能基を有する化合物とケイ素官能基を有さない化合物の混合物を使用することによって容易に得ることができる。
【0120】
好ましい実施形態では、化合物B)は、ケイ素官能基を含む。
【0121】
ケイ素官能基は、好ましくは、少なくとも1個のケイ素原子と、シラノール架橋反応により架橋可能な少なくとも1個の基とを有する基である。
【0122】
ケイ素官能基は、2個以上のケイ素原子を有していてもよい。また、ケイ素原子は、直接又は酸素橋を介して互いに結合していてもよい。好ましい実施形態では、ケイ素官能基は、1~3個のケイ素原子を含む。最も好ましいのは、ケイ素原子を1個だけ有するケイ素官能基である。
【0123】
シラノール架橋反応により架橋可能な基は、好ましくは、ヒドロキシ基及び加水分解性基、特にアルコキシ基であり、アルコキシ基が好ましく、特にC1-C10-アルコキシ基が好ましい。
【0124】
ケイ素官能基は、シラノール架橋反応により架橋可能な2個以上の基を含んでもよい。シラノール架橋反応により架橋可能な基の可能な数は、ケイ素官能基中のケイ素原子の数に依存する。
【0125】
ケイ素官能基は、さらに、ケイ素原子に結合した水素又はアルキル基を含んでもよい。好ましい実施形態では、ケイ素官能基は、アルキル基を含んでいてもよいが、ケイ素原子に結合している水素を含まない。
【0126】
好ましくは、ケイ素官能基は、ケイ素、シラノール架橋反応により架橋可能な基、全てケイ素に結合している水素又はアルキル基、及びケイ素原子間の可能な橋としての酸素以外の他の構成要素を含まない。
【0127】
最も好ましくは、ケイ素官能基は、式
-SiR1sR2sR3s
(ここで、基R1s~R3sのうち少なくとも1つはアルコキシ基であり、他の基R1s~R3sは水素又はアルキル基である。)
のアルコキシシラン基である。
【0128】
アルコキシ基は、好ましくはC1-C10-アルコキシ基、特にC1-C4-アルコキシ基であり、例えば、ブトキシ基、プロポキシ基、エトキシ基又はメトキシ基である。最も好ましくは、アルコキシ基はエトキシ基又はメトキシ基である。
【0129】
アルキル基は、好ましくはC1-C10-アルキル基、特にC1-C4-アルキル基であり、例えば、ブチル基、n-プロピル基、エチル基又はメチル基である。最も好ましくは、アルキル基は、エチル基又はメチル基である。
【0130】
好ましくは、基R1s~R3sのうち2つ又は3つがアルコキシ基であり、残りの基R1s~R3sが水素又はアルキル基である。
【0131】
より好ましくは、基R1s~R3sのうち2つ又は3つがアルコキシ基であり、残りの基R1s~R3sがアルキル基である。
【0132】
最も好ましくは、3つの基R1s~R3sの全てがアルコキシ基である。
【0133】
ケイ素官能基を有する好ましい化合物A)は、1個又は2個の5員環式モノチオカーボネート基、特に1個の5員環式モノチオカーボネート基と、1個のアルコキシシラン基-SiR1sR2sR3sとを含む。
【0134】
特に好ましい化合物は、式(IV)
【化9】
(R
1s~R
3sは上記の意味を持ち、Spはスペーサー基であり、スペーサー基は、1~20個、特に1~10個、好ましくは1~6個、特に1~3個の炭素原子を有する有機基である。)
の化合物である。
【0135】
Spは、炭素と水素以外の他の原子、例えば、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよい。好ましくは、Spは、例えばエーテル基の形態で酸素を含んでいてもよいが、他のヘテロ原子を含まない炭化水素基である。特に好ましい実施形態では、Spは、1~20個、特に1~10個、最も好ましくは1~6個、特に1~3個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0136】
式(IV)の化合物の具体例は、下記の化合物である。
【化10】
【0137】
ケイ素官能基を有する好ましい化合物B)は、1個又は2個のアミノ基、特に1個のアミノ基と、1個のアルコキシシラン基-SiR1sR2sR3sとを含む。
【0138】
ケイ素官能基を有する化合物B)の例は、トリメトキシシリルプロピルアミンである。
【0139】
ケイ素官能基を有する好ましい化合物C)は、-SH基と反応する1個又は2個の官能基、特に1個の官能基と、1個のアルコキシシラン基-SiR1sR2sR3sとを含む。
【0140】
ケイ素官能基を有する化合物C)の例は、トリメトキシシリルプロピルメタクリラート及びトリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテルである。
【0141】
方法について
本発明の方法によれば、
少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第1級若しくは第2級アミノ基、又はブロックされた第1級若しくは第2級アミノ基(以下、アミノ基という)から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)と、
任意選択で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を出発原料として使用し、
ここで、出発原料として使用される化合物の少なくとも1つがケイ素官能基を含む。
【0142】
化合物A)と、B)と任意選択でC)との反応の原理、ならびに反応のパラメーターの詳細は、WO 2019/034470 A1及びWO 2019/034473 A1に記載されている。
【0143】
化合物A)の5員環式モノチオカーボネート基の環系が、化合物B)のアミノ基によって開環され、ウレタン基及び-SH基を含む付加物が得られる。
【0144】
付加物の-SH基は、さらに化合物C)の-SH反応性基、特に、非芳香族エチレン性不飽和基又はエポキシ基と、また非芳香族エチレン性不飽和基を含む化合物A)又はB)も存在する場合、化合物A)及びB)の基と反応してもよく、例えば、5-(メタクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン又は5-(アクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン(化合物C)、アリルアミン又はアミノアルキルビニルエーテル(化合物B)と反応させてもよい。
【0145】
-SH基は、-SH反応性基と反応する。例えば、非芳香族エチレン性不飽和基への-SH基の付加は、マイケル付加やチオール-エン反応として知られている。
【0146】
反応しない基-SHは酸化することがあり、ジスルフィド架橋を形成することになることに言及するべきである。そのような酸化は、酸素又は他の酸化物質の存在下室温で起こり得る。ジスルフィド架橋は、得られるポリマーの機械的特性を向上し得る。
【0147】
得られるポリマーは、構造成分として、エチレン基を介してウレタン基の酸素に結合された硫黄原子を有するウレタン基を含む。この構造成分は以下の式によって、表すことができる。
【化11】
【0148】
可変要素A~Eは、置換基による任意の可能な置換を表す。
【0149】
以下の記述は、3つのプロセスの選択肢、b1)~b2)、又は代替としてc1)~c2)、又は代替としてd1)~d3)のそれぞれに適用される。
【0150】
化合物B)は、反応混合物中の化合物A)の5員環式モノチオカーボネート基1molに対して、化合物B)のアミノ基が0.8~1.2molとなる量で使用することが好ましい。
【0151】
好ましくは、-SHと反応する官能基の量は、化合物A)の5員環式モノチオカーボネート基1molに対して、0.5~1.2molである。
【0152】
好ましくは、-SHと反応する官能基は、化合物C)の基である。
【0153】
好ましくは、出発原料は、化合物A)、B)及びC)である。
【0154】
プロセスステップで反応させる化合物A)、B)、C)の組み合わせの例を以下に示す。ここで官能基は以下のように略される。
化合物A)の環式モノチオカーボネート基: CTC
化合物B)の第一級アミノ基: PA
化合物C)、A)又はB)の-SHと反応する官能基: FG
ケイ素官能基: SIL
【0155】
- 2個のCTCを有する化合物A)と、1個のPA及び1個のSILを有する化合物B)と、1個~5個のFG、好ましくは2個~5個のFGを有する化合物C);
【0156】
- 2個のCTCを有する化合物A)と、少なくとも2個のPAを有する化合物B)と、1個のFG(不飽和基)及び1個のSILを有する化合物C);
【0157】
- 2個のCTCを有する化合物A)と、少なくとも2個のPAを有する化合物B)と、1個のFG(エポキシ基)及び1つのSILを有する化合物C);
【0158】
- 2個のCTCを有する化合物A)と、1個のPAを有する化合物B)と、1個のFG(エポキシ基)及び1個のSILを有する化合物C);
【0159】
- 2個のCTCを有する化合物A)と、1個のPAを有する化合物B)と、1個のFG(不飽和基)及び1個のSILを有する化合物C)。
【0160】
好ましくは、化合物A)、化合物B)、任意選択でC)は、化合物A)、化合物B)、任意選択で化合物C)の混合物が21℃、1バールで液体になるように選択される。そのような混合物は、液体になるための追加の溶媒を必要としない。化合物A)、B)及び任意選択でC)の液体混合物では、化合物A)、B)及びC)の少なくとも1つ、好ましくは2つが液体であり、したがって残りの固体化合物A)、B)又はC)の溶媒であることで十分である。
【0161】
化合物A)、B)、及び任意選択でC)間の反応は、通常、すでに室温(約20℃)で開始し、室温で完了してもよい。反応は、コーティング組成物又はシーラントの温度を、例えば最高100℃まで上昇させることによって、補助してもよい。代替的に又は追加的に、反応のための活性化エネルギーを、高エネルギー放射線、例えば可視光又はUV光によって与えてもよい。反応が低温において容易に起こり、著しい更なるエネルギー、例えば高温又は高エネルギー放射線の供給を必要としないことは本発明の利点である。
【0162】
化合物A)、B)若しくはC)又はそれらの任意の混合物は、殺生物剤などの安定剤、触媒、又は架橋ポリマーの意図された最終的な用途のために所望又は必要な添加剤、例えば顔料などの着色剤などの添加剤を含んでいてもよい。触媒は、ケイ素官能基の硬化のための触媒、特にSn含有触媒を含む。化合物A)、B)もしくはC)又はそれらの任意の混合物は、溶媒を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、上述の通り、溶媒は必要とされない。
【0163】
好ましくは、化合物A)、B)、及び任意選択でC)を反応させることにより得られるポリマー中のケイ素の含有量は、ポリマー100gあたり0.001~0.4molのSi、特にポリマー100gあたり0.001~0.3molのSiである。
【0164】
より好ましくは、化合物A)、B)、及び任意選択でC)を反応させることにより得られるポリマー中のケイ素の含有量は、ポリマー100gあたり0,005~0.2molのSiである。
【0165】
最も好ましくは、化合物A)、B)及び任意選択でC)を反応させることにより得られるポリマー中のケイ素の含有量は、ポリマー100gあたり0.01~0.15molのSiである。
【0166】
上記のSiの含有量は、ステップb1)で得られたポリマーだけでなく、プロセスステップb1)及びb2)、又は代替としてプロセスステップc1)~c2)、又はプロセスステップd1)~d3)によって最終的に得られた架橋ポリマーにも適用される。
【0167】
化合物A)、B)及び任意選択でC)は、プロセスステップb1)~b2)、又は代替としてプロセスステップc1)~c2)、又はプロセスステップd1)~d3)のいずれかで処理される。
【0168】
ステップb1)~b2)のプロセスは、2段階プロセスである。プロセスステップb1)において、化合物A)及びB)ならびに任意選択でC)を反応させてポリマーを形成する。プロセスステップb1)は、水を除去しながら行われる。湿気を避けるために、プロセスステップb1)を不活性ガス下で行ってもよい。得られたポリマーは、水、特に湿度によってまだ硬化可能なケイ素官能基を含んでいる。
【0169】
プロセスステップb2)では、得られたポリマーを、コーティング(coating)、充填物(filling)、又はその他の任意の三次元物体である、所望の形態にする。ケイ素官能基は、周囲水、例えば湿度又は供給される水の存在下で互いに架橋する。通常、最終的に完全に架橋されたポリマーを得るには、通常の湿度で十分である。架橋プロセスは、さらに水を供給することによって加速させてもよい。例えば、ステップb2)を開始する少し前のステップb1)の終わりに、ポリマーに水を加えてもよい。
【0170】
プロセスステップc1)~c2)では、まず、化合物をコーティング、充填物、又はその他の三次元物体である所望の形態にし、続いて、上述したA)、B)、及び任意選択でC)のポリマーの形成を含み且つ同時にケイ素官能基の硬化反応を含む一段階反応であるステップc2)を行う。プロセスステップc2)では、湿度を避けてはならない。プロセスステップc2)は、さらに水を供給することによって加速されてもよい。
【0171】
プロセスステップd1)~d3)では、まずケイ素官能基の硬化が起こり、続いて化合物A)、B)及び任意選択でC)のポリマーが形成される。
【0172】
したがって、化合物A)、B)又はC)であってもよい、ケイ素官能基を有する化合物を所望の形態にし、ケイ素官能基を硬化させて、ケイ素ベースのネットワークを得る。ケイ素官能基を有する化合物は、他の任意の化合物A)、B)及びC)を含む混合物の形態で使用してもよい。しかし、混合物が化合物A)及びB)の任意の組み合わせを含むことは避けなければならない。 A)、B)、及び任意選択でC)のポリマーの形成は、B)のアミノ基とA)のモノチオカーボネート基との開環反応で直ちに開始されるため、混合物は、化合物A)、又は代替として化合物B)のいずれかを含んでいてもよいが、両方を含まない。プロセスステップd1)及びd2)では、湿気を避けてはならない。プロセスステップd2)は、さらに水を供給することで加速させてもよい。
【0173】
A)、B)及びC)のポリマーの形成は、続いてプロセスステップd3)において、欠けている化合物B)又は代替として欠けている化合物A)を添加して、ポリマーの形成を開始させることにより生じる。欠けている化合物A)又はB)は、化合物C)を含む混合物の形で使用してもよい。
【0174】
好ましくは、化合物A)、B)及び任意選択でC)は、プロセスステップb1)~b2)によって、又は代替としてプロセスステップc1)~c2)によって処理される。
【0175】
より好ましくは、化合物A)、B)、及び任意選択でC)は、プロセスステップb1)~b2)によって処理される。
【0176】
プロセスステップb1)~b2)、又は代替としてプロセスステップc1)~c2)、又はプロセスステップd1)~d3)のいずれかで得られたコーティング、充填物、又は他の三次元物体は、完全に硬化し、硬度や剛性などの良好な機械的特性を有する。
【0177】
本方法は、任意の技術的用途又はその他の目的のためのコーティング、シールされた材料又は三次元物体を得るために有用である。
【0178】
本方法は、装飾的、保護的、又は機能的なコーティングに有用である。
【0179】
本方法は、通常、コーティングされた基材を保護し、かつ装飾的であるという二重の用途を有する塗料及びラッカーに有用である。
【0180】
本方法は、基材の表面特性を変化させたり改善したり、あるいは基材の表面を保護したりする目的、例えば、接着性、濡れ性、耐食性、耐摩耗性を改善する目的の機能性コーティングに有用である。繊維上の機能性コーティングは、複合材料におけるポリマーマトリックスと繊維の間の相互作用又は接着性を改善するための相溶化剤として使用されることが多い。
【0181】
本発明の方法により、ウレタン及び硫黄の官能性を有するシリル修飾ポリマーが容易かつ経済的に得られる。この方法は、エネルギーをさらに供給することなく、室温で行うことができる。この方法では、イソシアネートやメルカプタン基を持つ出発材料を使用する必要がない。この方法は、様々な製品、特に、硫黄、ウレタン、シリル架橋の含有量に起因する利点を持つハイブリッド製品を調製する可能性を提供する。これらの利点とは、例えば、耐薬品性、バリア性、帯電防止性、防食性と組み合わせた機械的特性である。
【0182】
式(IV)の化合物、例えば、5-(3-トリメトキシシリルプロポキシメチル)-1,3-オキサチオラン-2-オンは、周囲の雰囲気でシロキサンネットワークを形成することがよく知られているトリメトキシシリルアルキル-グリシジルエーテルなどの既知のシランの適切な代替品を提供する。
【0183】
式(IV)の化合物は、求核反応パートナーが環式モノチオカーボネート単位と選択的に反応し、SH官能基の放出を可能にすることで、多様な後続反応を可能にするというさらなる利点をもたらす。したがって、式(IV)の化合物は、反応性モノマーとしてではなく、鎖延長剤として使用することができる。
【0184】
このように、式(IV)の化合物は、特に高分子化合物やポリマーを合成するための新しい構成要素となる。これらの化合物は、直交方向のシロキサン結合を介する硬化メカニズムを可能にするだけでなく、鎖延長剤として反応し得る。そのため、追加のシロキサン化合物は必要ない。アミンを求核剤として用いた場合には、反応により価値のあるシラン官能化ウレタン化合物が得られる。
【実施例】
【0185】
実施例では以下の化合物を使用した。
【0186】
化合物A:
式:
【化12】
のビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](BDO-CTC、未公開出願PCT/EP2019/081639に従って調製)
式:
【化13】
の5-(メタクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン(MMA-CTC、WO 2019/034469 A1の実施例8に従って調製)
【0187】
化合物B:
ブチルアミン
式:
【化14】
の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)
【0188】
化合物C:
トリメトキシシリルプロピルメタクリラート(CAS 2530-85-0)
トリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテル(3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(CAS 2530-83-8)
トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA、CAS 3290-92-4)
ビスフェノール A グリセロラートジメタクリラート(CAS 1565-94-2)
ジウレタンジメタクリラート(ジウレタン-DMA、CAS 72869-86-4)
【0189】
例1:BDO-CTC+3-アミノプロピルトリメトキシシラン+TMPTMA
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)とTMPTMA(1.75g)を室温で撹拌しながら混合した。続いて、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(5.5g)を加え、室温でさらに3分間攪拌を続けたところ、時間とともに粘度が上昇した。反応混合物の一部を、様々な基板(ガラス、スチール)を使用して、ドクターブレードを介してコーティングアプリケーション(coating application)に転移した(60μmの厚さ)。反応混合物の他の部分を、円筒形モールド(直径: 45mm)に移し、周囲の条件で保持した。60時間後、2つ目のサンプルは硬化し、凹凸表面を有する硬くて脆い試験片が得られた。
【0190】
例2: BDO-CTC+BAC+トリメトキシシリルプロピルメタクリラート
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)と3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート(7.7g)を室温で撹拌しながら混合した。その後、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(2.2g)を加え、さらに室温で3分間撹拌を続けたところ、温度と粘度が上昇した。その後、混合物5.5gを円筒形モールド(直径: 45mm)に移し、周囲の条件で保持した。1時間後、サンプルの表面にはスキニング(skinning)が見られた。サンプルは一晩で完全に硬化した。試験片は大きな収縮と硬さを示した。
【0191】
例3: BDO-CTC+BAC+トリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテル
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)とトリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテル(7.3g)を室温で撹拌しながら混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(2.2g)を加え、さらに室温で3分間攪拌を続けたところ、温度と粘度が上昇した。その後、混合物5.5gを円筒形モールド(直径: 45mm)に移し、周囲の条件で保持した。1時間後にはサンプルにスキニングが見られ、5時間後にはサンプルはほぼ硬化した。サンプルは一晩で完全に硬化した。透明な可撓性ポリマーは、柔軟性と適度な脆性を示した。
【0192】
例4:BDO-CTC+ブチルアミン+トリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテル
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)][5g]とトリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテル[7.3g]を室温で撹拌しながら混合した。その後、ブチルアミン(2.26g)を加え、さらに室温で3分間撹拌を続けたところ、温度と粘度が上昇した。続いて、この混合物5.5gを円筒形モールド(直径: 45mm)に移し、周囲条件で保持した。1時間後、まだ粘性のあるサンプルの上部表面にスキニングが見られた。サンプルは周囲条件で58時間のうちに完全に硬化した。試料は非常に脆くなっていた。
【0193】
例5:BDO-CTC+ブチルアミン+トリメトキシシリルプロピルメタクリラート
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)と3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート(7.7g)を室温で撹拌しながら混合した。その後、ブチルアミン(2.26g)を加え、さらに室温で3分間撹拌を続けたところ、温度と粘度が上昇した。続いて、この混合物5.5gを円筒形モールド(直径: 45mm)に移し、周囲条件で保持した。1時間後、まだ粘性のあるサンプルの上部表面にスキニングが見られた。周囲条件で60時間のうちに、サンプルは完全に硬化した。試験片は非常に脆くなっていた。
【0194】
例6:BDO-CTC+ BPA-Gly-DMA+ 1,3-BAC+ APTMS
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)とビスフェノール A グリセロラートジメタクリラート(7.95g)を室温で撹拌下に混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1.1g)と3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(2.78g)の混合物を撹拌下で加えた。混合物をホモジナイズし、周囲の条件で撹拌を続けた。混合物は粘度を増し、3分後に混合物をドクターブレードを介してスチール上にコーティングとして塗布した(厚さ60μm)。サンプルを周囲温度で保持した。60分後、コーティングには表面スキニングが見られ、サンプルは周囲の条件で24時間のうちに完全に硬化した。クロスハッチテストで、表面への優れた接着性が確認された。
【0195】
コーティングされたポリマー中のケイ素の含有量は、0.1mol Si/100gのポリマーであった。
【0196】
ケイ素含有量(mol)は、出発原料の使用量に基づいて、すなわちケイ素/出発原料の総重量として算出した。
【0197】
例7:BDO-CTC+MMA-CTC+ジウレタン-DMA+APTMS+BAC
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン-5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)](5g)とジウレタン-ジメチルアクリラート(7.2g)を室温で撹拌下に混合し、続いて5-(メタクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン(2.0g)を加えた。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(2.2g)と3-アミノプロピルトリメトキシシラン(1.76g)の混合物を攪拌下で加えた。混合物をホモジナイズし、周囲の条件で撹拌を続けた。混合物は粘度を増し、3分後に混合物をドクターブレードを介してスチール上にコーティングとして塗布した(厚さ60μm)。このサンプルを周囲温度で保持した。コーティングは、周囲の条件で24時間のうちに完全に硬化した。
【0198】
コーティングされたポリマー中のケイ素の含有量は、0.054mol Si / 100gポリマーであった。
【0199】
例8: 式(IV)の化合物の合成
式(IV)の化合物は、WO 2019/034469 A1に記載の方法に従って調製することができる。
【0200】
式
【化15】
の化合物を下記の2ステップで調製した。
【0201】
第一ステップ: [1-(クロロメチル)-2-(3-トリメトキシシリルプロポキシ)エチル]カルボノクロリデートの合成
2つの冷却器(-30℃と-78℃(ドライアイス))、ホスゲンディップパイプ(dip pipe)、及び内部温度計を備えた0.25Lの撹拌タンク式ガラス反応器を、乾燥窒素で一晩パージした。その後、窒素雰囲気下で113.6g(0.47mol、1.00eq.)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを導入した。タンク式反応器の冷却をオンにし、15℃に調整した。反応器がこの温度に達した後、1.30g(0.005mol、1.00mol%)のテトラブチルアンモニウムクロリド(TBACl)を出発物質に懸濁させた。その後、ホスゲン(全体で61g、0.67mol、1.31eq.)をディップパイプを介して反応器に加えた。反応混合物の温度を連続的にモニターし、ホスゲンの添加速度を注意深く調整することで20℃未満に保持した。添加には全体で約4時間かかった。ホスゲンの添加が完了した後、反応器の初期冷却を停止し、反応器をゆっくりと室温に到達させた。その後、反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。最後に、反応混合物を、室温で乾燥アルゴンを用いてストリッピングして、4時間以内にホスゲンを除去した。得られた無色の油状物(151g、0.45mol、収率96%、位置異性体純度:>95%)を、さらに精製することなく、チオカーボネートの形成に直接使用した。
【0202】
第二ステップ: 5-(3-トリメトキシシリルプロポキシメチル)-1,3-オキサチオラン-2-オンの合成
[1-(クロロメチル)-2-(3-トリメトキシシリルプロポキシ)エチル]カルボノクロリデート(20g、0.06mol)とアセトニトリル(50mL)を、KPGクレセントスターラー(KPG crescent stirrer)、滴下漏斗、温度計、還流冷却器を備えた250mLの4つ口丸底フラスコに入れた。溶液を氷浴で0℃まで冷却した後、温度を5℃に保ちながら固体のNa
2S(1eq.)をゆっくりと加えた。完全に添加した後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温まで温めた。4時間攪拌した後、懸濁液をろ過し、減圧下で溶媒を除去した。粗製の環式チオカーボネートが透明な油状物として得られた(17g、95%)。
本発明は例えば以下の実施形態を含む。
[項1]
ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマーを調製する方法であって、
a) 少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第1級若しくは第2級アミノ基、又はブロックされた第1級若しくは第2級アミノ基(以下、アミノ基という)から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)と、
任意選択で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を出発原料として使用し、
ここで、出発原料として使用される化合物の少なくとも1つがケイ素官能基を含み、
化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を、
b1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを水を除去しながら反応させて、まだ硬化可能なケイ素官能基を有するポリマーを得ること、及び
b2) b1)で得られたポリマーを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布して、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は代替として
c1) 化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とを、表面、ギャップ、又は三次元テンプレートに塗布すること、及び
c2) 1段階で前記化合物を反応させて、周囲水でケイ素官能基を硬化させること、
によって処理するか、又は代替として
d1) ケイ素官能基を有する化合物A)又はケイ素官能基を有する化合物B)又はケイ素官能基を有する化合物C)、又は前記化合物とさらなる化合物A)~C)の混合物を、表面、ギャップ、又は3次元テンプレートに塗布すること、ここで前記混合物は化合物A)とB)を組み合わせて含まない、
d2) 周囲水でケイ素官能基を硬化させること、及び
d3) 次いで、欠けている化合物A)、化合物B)、及び任意選択で化合物C)を添加し、これらの化合物を反応させること
によって処理する、前記方法。
[項2]
化合物A)が、式(I)
【化16】
(R
1a~R
4aは、互いに独立して、水素、又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R
2a、R
4a及びチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成していてもよい。)
の化合物であるか、又は
式(II)
【化17】
(R
1b~R
4bは、互いに独立して、水素、又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R
2b、R
4b及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成していてもよく、基R
1b~R
4bの1つは、Zへの連結基であり、nは少なくとも2の整数を表し、Zはn価の有機基を表す。)
の化合物である、項1に記載の方法。
[項3]
化合物B)が1~5個のアミノ基を含む、項1又は2に記載の方法。
[項4]
-SHと反応する化合物C)の官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基又はエポキシ基から選択される、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
[項5]
化合物B)がケイ素官能基を含む、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
[項6]
ケイ素官能基が、式-SiR
1sR
2sR
3sのアルコキシシラン基であり、ここで基R
1s~R
3sのうち少なくとも1つはアルコキシ基であり、他の基R
1s~R
3sは水素又はアルキル基である、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
[項7]
基R
1s~R
3sのうちの2つ又は3つがアルコキシ基であり、残りの基R
1s~R
3sがアルキル基である、項6に記載の方法。
[項8]
化合物A)、B)及びC)の混合物が、21℃、1バールで液体である、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[項9]
プロセスステップb1)~b2)を行う、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
[項10]
ウレタン基及びケイ素原子を含む架橋ポリマー中のケイ素の含有量が、ポリマー100g当たり0.001~0.3molのケイ素である、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
[項11]
項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得られるコーティング、シールされた材料、又は成形体。
[項12]
ポリマー100g当たり0.001~0.3molのケイ素を含む、化合物A)と、化合物B)と、任意選択で化合物C)とのポリマー。
[項13]
1個又は2個の5員環式モノチオカーボネート基及び1個のアルコキシシラン基-SiR
1sR
2sR
3sを含む化合物であって、基R
1s~R
3sの少なくとも1つがアルコキシ基であり、他の基R
1s~R
3sが水素又はアルキル基である、前記化合物。
[項14]
式(IV)
【化18】
(式中、基R
1s~R
3sの少なくとも1つはアルコキシ基であり、他の基R
1s~R
3sは水素又はアルキル基であり、Spは1~20個の炭素原子を有する有機基であるスペーサー基である。)
の化合物である、項13に記載の化合物。