(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G01N35/10 F
(21)【出願番号】P 2021552345
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020037971
(87)【国際公開番号】W WO2021075324
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019191362
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】南 礼孝
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-130072(JP,A)
【文献】特開2012-173059(JP,A)
【文献】特開2016-121923(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128793(JP,U)
【文献】特開平04-335157(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを有し、試薬または試料を分注する分注機構と、
前記プローブの外部を洗浄水で洗浄する洗浄槽と、
洗浄水を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された洗浄水を第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するポンプと、
洗浄水を前記第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するか、前記第1の流路と前記タンクとの間をつなぐ第2の流路を通じて前記タンクに戻すかを切り換える流路切り換え機構と、
前記流路切り換え機構を制御する制御部とを有し、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記洗浄槽に前記第1の流路を通じて洗浄水を供給し、前記プローブを洗浄水で洗浄する洗浄期間が設定されており、
前記流路切り換え機構は、前記第1の流路と前記洗浄槽との間に設けられた第1の2方向電磁弁と、前記第2の流路に設けられた第2の2方向電磁弁とを有し、
前記制御部は、前記洗浄期間において、前記プローブの洗浄を行うサイクルにおいては、前記第1の2方向電磁弁を開、前記第2の2方向電磁弁を閉とし、前記プローブの洗浄を行わないサイクルにおいては、前記第1の2方向電磁弁を閉、前記第2の2方向電磁弁を開とする自動分析装置。
【請求項2】
プローブを有し、試薬または試料を分注する分注機構と、
前記プローブの外部を洗浄水で洗浄する洗浄槽と、
洗浄水を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された洗浄水を第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するポンプと、
洗浄水を前記第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するか、前記第1の流路と前記タンクとの間をつなぐ第2の流路を通じて前記タンクに戻すかを切り換える流路切り換え機構と、
前記流路切り換え機構を制御する制御部とを有し、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記洗浄槽に前記第1の流路を通じて洗浄水を供給し、前記プローブを洗浄水で洗浄する洗浄期間が設定されており、
前記流路切り換え機構は、前記第1の流路に設けられた2方向電磁弁と、前記第1の流路が供給ポートに接続され、第1排出ポートが前記洗浄槽に接続され、第2排出ポートが前記第2の流路に接続される3方向電磁弁とを有し、
前記制御部は、前記2方向電磁弁を前記洗浄期間外においては閉とし、前記洗浄期間においては開とするとともに、前記洗浄期間において、前記プローブの洗浄を行うサイクルにおいては、前記第1排出ポートを開、前記第2排出ポートを閉とし、前記プローブの洗浄を行わないサイクルにおいては、前記第1排出ポートを閉、前記第2排出ポートを開とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項
1または2において、
複数の前記洗浄槽を有し、
複数の前記洗浄槽に対応して複数の前記第2の流路が設けられる自動分析装置。
【請求項4】
請求項
1または2において、
複数の前記洗浄槽を有し、
複数の前記洗浄槽に対応して共通に前記第2の流路が設けられており、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記第2の流路が共通に設けられた複数の前記洗浄槽の前記洗浄期間は重ならない自動分析装置。
【請求項5】
請求項
1または2において、
第1の洗浄槽及び第2の洗浄槽を含む複数の前記洗浄槽を有し、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記第1の洗浄槽の前記洗浄期間と前記第2の洗浄槽の前記洗浄期間とは重なりを有しており、
前記第1の洗浄槽に対応する前記第2の流路と、前記第2の洗浄槽に対応する前記第2の流路とは異なる自動分析装置。
【請求項6】
プローブを有し、試薬または試料を分注する分注機構と、
前記プローブの外部を洗浄水で洗浄する複数の洗浄槽と、
洗浄水を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された洗浄水を第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するポンプと、
洗浄水を前記第1の流路を通じて前記洗浄槽に供給するか、前記第1の流路と前記タンクとの間をつなぐ第2の流路を通じて前記タンクに戻すかを切り換える流路切り換え機構と、
前記流路切り換え機構を制御する制御部とを有し、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記洗浄槽に前記第1の流路を通じて洗浄水を供給し、前記プローブを洗浄水で洗浄する洗浄期間が設定されており、
複数の前記洗浄槽に対応して前記第2の流路が共通に設けられており、
前記流路切り換え機構は、前記第2の流路に設けられ、開閉度を制御可能な電磁弁を有し、
自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、前記第2の流路が共通に設けられた複数の前記洗浄槽の前記洗浄期間には重なる期間を有し、
前記制御部は、
前記プローブの洗浄を行わないサイクルにおいては、前記洗浄期間において、前記流路切り換え機構により洗浄水を前記第2の流路を通じて前記タンクに戻すよう制御し、前記洗浄期間に重なりを有する複数の前記洗浄槽がともに前記プローブの洗浄を行わないサイクルにおいては、前記洗浄期間の重なりに応じて前記電磁弁の開閉度を制御する自動分析装置。
【請求項7】
請求項
1、2及び6のいずれか一項において、
試料または試薬が分注される反応容器を洗浄する洗浄機構を有し、
前記洗浄機構は、前記タンクに貯留された洗浄水が前記第1の流路を通じて供給される自動分析装置。
【請求項8】
請求項
7において、
前記第1の流路からの洗浄水を加圧して前記プローブに供給する加圧ポンプを有し、
前記プローブの内部を、前記加圧ポンプにより加圧された洗浄水により洗浄する自動分析装置。
【請求項9】
請求項
1、2及び6のいずれか一項において、
前記ポンプと前記タンクとの間に調整弁の設けられた戻り流路を有し、前記第1の流路の圧力を調整する自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学自動分析装置や免疫自動分析装置などの自動分析装置では、試薬の分注を行う試薬プローブあるいは試料の分注を行う試料プローブの洗浄を行う洗浄槽を備えている。試薬や試料に接するプローブの内外を洗浄するため、プローブから洗浄水を吐出させてプローブの内部に付着した試薬や試料を洗い流し(内洗という)、またプローブを洗浄槽に挿入し、洗浄槽に設けられた洗浄水吐出口よりプローブに向けて洗浄水を吐出することによりプローブの外部に付着した試薬や試料を洗い流す(外洗という)。
【0003】
特許文献1は、洗浄液を供給する流路の圧力変動により、オーバーシュートやウォーターハンマー現象の発生を防止するため、流路の過度な圧力変動を抑制するよう、洗浄液の流路に設けられた電磁弁の弁開度を制御可能な自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置における消費水量の低減は環境負荷やランニングコストを低減する上でますます重要になってきている。
【0006】
詳細は後述するが、自動分析装置においては、試薬プローブ、試料プローブの洗浄動作は、プローブによる分注動作の有無によらず毎サイクル実施されている。これは、複数の洗浄槽、反応セルおよびプローブ内部への洗浄水の供給を毎サイクル一定にすることで、サイクル期間における洗浄水を供給する配管圧力の変動プロファイルを一定に保ち、分析性能を安定化させるためである。しかしながら、プローブによる分注が実施されていない、したがって、プローブの洗浄が不要であるにもかかわらず、プローブ洗浄のための洗浄水を供給することは無駄に水を捨てていることでもある。特に、プローブの外洗では、内洗に比べて1回の洗浄動作にかかる洗浄水の使用量が多いため、外洗にかかる洗浄水の低減は自動分析装置の消費水量の低減に効果的である。一方で、プローブ洗浄の要不要に基づき、単純に洗浄槽への洗浄水の供給を制御すると、上述した通り、分析性能が低下する可能性がある。
【0007】
特許文献1には、三方弁を用い、流路を洗浄ユニットとタンクとの間で切り換え可能な流路構成を例示している。流路切り換え時のデューティ比を段階的に変化させることにより、流路の過度な圧力変動を抑制する。しかしながら、流路構成こそ類似するものの、上記課題への言及はなく、上記課題の解決を示唆するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の態様である自動分析装置は、プローブを有し、試薬または試料を分注する分注機構と、プローブの外部を洗浄水で洗浄する洗浄槽と、洗浄水を貯留するタンクと、タンクに貯留された洗浄水を第1の流路を通じて洗浄槽に供給するポンプと、洗浄水を第1の流路を通じて洗浄槽に供給するか、第1の流路とタンクとの間をつなぐ第2の流路を通じてタンクに戻すかを切り換える流路切り換え機構と、流路切り換え機構を制御する制御部とを有し、自動分析装置のシーケンスを構成するサイクルにおいて、洗浄槽に第1の流路を通じて洗浄水を供給し、プローブを洗浄水で洗浄する洗浄期間が設定されており、制御部は、プローブの洗浄を行わないサイクルにおいては、洗浄期間において、流路切り換え機構により洗浄水を第2の流路を通じてタンクに戻すよう制御する。
【発明の効果】
【0009】
分析性能を低下させることなく、自動分析装置の消費水量を低減する。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3A】本実施例の洗浄水の流路構成を示す図である。
【
図3B】洗浄槽の洗浄動作のタイムチャートである。
【
図5A】3方向弁を用いて流路を構成する例である。
【
図5B】
図5Aの流路における電磁弁の動作を説明する図である。
【
図6A】3方向弁を用いて流路を構成する例である。
【
図6B】
図6Aの流路における電磁弁の動作を説明する図である。
【
図7A】洗浄槽に洗浄水を供給する流路構成を示す図である。
【
図7B】洗浄槽の洗浄動作のタイムチャートである。
【
図8A】洗浄槽に洗浄水を供給する流路構成を示す図である。
【
図8B】洗浄槽の洗浄動作のタイムチャートである。
【
図9A】洗浄槽に洗浄水を供給する流路構成を示す図である。
【
図9B】洗浄槽の洗浄動作のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は自動分析装置の概略図である。分析対象の血液や尿などの生体試料(以下、単に試料と称する)は試料容器15に収容される。1つ以上の試料容器15が試料ラック16に搭載され、試料搬送機構17によって搬送される。試料の分析に用いる試薬は試薬ボトル10に収容され、複数の試薬ボトル10が試薬ディスク9に周方向に並べて配置されている。試料と試薬とは反応容器2内で混合して反応させられる。複数の反応容器2が反応ディスク1の周方向に並べて配置されている。試料は、試料搬送機構17により試料分注位置に搬送された試料容器15から、第1または第2の試料分注機構11,12により、反応容器2に試料を分注する。一方、試薬は試薬ボトル10から、試薬分注機構7,8により、反応容器2に試薬を分注する。反応容器2に分注された試料と試薬の混合液(反応液)は、攪拌機構5,6によって攪拌され、分光光度計4により、図示しない光源から反応容器2の反応液を介して得られる透過光を測定することにより、反応液の吸光度が測定される。自動分析装置における分析処理として、分光光度計4が測定した混合液(反応液)の吸光度から試薬に応じた分析項目の所定成分の濃度等などが算出される。測定済みの反応容器2は洗浄機構3により洗浄される。
【0014】
第1(第2)の試料分注機構11(12)は、その先端を下方に向けて配置された試料プローブ11a(12a)を有しており、試料プローブ11a(12a)には、試料用シリンジ19が接続されている。第1(第2)の試料分注機構11(12)は、水平方向への回転動作及び上下動作が可能なように構成されており、試料プローブ11a(12a)を試料容器15に挿入して試料を吸引し、試料プローブ11a(12a)を反応容器2に挿入して試料を吐出することにより、試料容器15からから反応容器2への試料の分注を行う。第1(第2)の試料分注機構11(12)の稼動範囲には、試料プローブ11a(12a)を洗浄する洗浄槽13(14)が配置されている。
【0015】
試薬分注機構7,8は、その先端を下方に向けて配置された試薬プローブ7a,8aを有しており、試薬プローブ7a,8aには、試薬用シリンジ18が接続されている。試薬分注機構7,8は、水平方向への回転動作及び上下動作が可能なように構成されており、試薬プローブ7a,8aを試薬ボトル10に挿入して試薬を吸引し、試薬プローブ7a,8aを反応容器2に挿入して試薬を吐出することにより、試薬ボトル10から反応容器2への試薬の分注を行う。試薬分注機構7,8の稼動範囲には、試薬プローブ7a,8aを洗浄水により洗浄する洗浄槽32,33が配置されている。
【0016】
攪拌機構5,6は、水平方向への回転動作及び上下動作が可能なように構成されており、反応容器2に挿入することにより試料と試薬の混合液(反応液)の攪拌を行う。攪拌機構5,6の稼動範囲には、攪拌機構5,6を洗浄水により洗浄する洗浄槽30,31が配置されている。
【0017】
洗浄機構3、洗浄槽13,14,30,31,32,33等には、洗浄用ポンプ20により洗浄水が供給されるよう構成されている。その詳細については後述する。
【0018】
これら自動分析装置の全体の動作は制御部21により制御される。なお、
図1においては、図示の複雑化を防ぐため、自動分析装置を構成する各機構と制御部21との接続を一部省略して示している。また、後述する流路切り換え機構を構成する電磁弁も制御部21により制御される。
【0019】
自動分析装置では、コンタミネーションを防止するため、プローブ、反応容器などに対して頻繁に洗浄が行われている。
図2に、自動分析装置における、従来の洗浄水の流路構成の概略を示す。洗浄に使用する洗浄水はタンク50に蓄えられ、洗浄用ポンプ20により洗浄を行う各機構に供給される。ここでは、洗浄を行う機構の例として反応容器2を洗浄する洗浄機構3、プローブの内洗を行うプローブ11a,12a、プローブの外洗を行う洗浄槽13,14を示している。これらの機構は洗浄用ポンプ20からの洗浄水が供給される流路60(第1の流路)にそれぞれ電磁弁を介して接続され、洗浄水が供給される。なお、プローブの内洗には、洗浄水を他の機構よりも加圧された状態で供給するため、流路60からの洗浄水は加圧ポンプ52により加圧された状態でプローブに供給されるよう構成されている。また、流路60の圧力を調整するため、調整弁51の設けられた戻り流路61が洗浄用ポンプ20とタンク50との間に設けられている。
【0020】
自動分析装置の分析動作は、あらかじめ定められたシーケンスに従って各機構が動作することによって実行される。洗浄動作も自動分析装置のシーケンスの中に組み込まれており、シーケンスを構成するサイクルにおいて定められたタイミングで電磁弁が開かれることによって洗浄水が洗浄動作を行う各機構に供給される。
【0021】
図2に示す従来の流路構成においては、分析性能を安定させるため、試薬プローブ、試料プローブの洗浄動作は、プローブによる分注動作の有無にかかわらず、毎サイクル、所定のタイミングで実施される。これは、以下の理由による。自動分析装置ではスループットを向上させるため、サイクル時間をできるだけ短くすることが望ましい。このため、試薬プローブ、試料プローブ、反応容器等の洗浄期間は1サイクルにおいて重なり合った状態で設定される。一方、
図2の流路構成では、流路60から分岐して各機構に洗浄水が供給されるようになっているため、複数機構に対する洗浄動作の重なり具合によっては、必要量の洗浄水を必要圧で供給することができなくなり、洗浄不足が生じるおそれがある。
【0022】
このため、各機構の洗浄動作のタイミングは、シーケンスの規定通り洗浄動作を行う限り洗浄不足が生じないよう設計されており、このため、プローブの分注動作がなく、プローブの洗浄が不要であっても、洗浄槽に対する洗浄水の供給をやめることができない。仮に、プローブ11aの洗浄が不要であるという理由で洗浄槽13に洗浄水の供給を停止するとする。この場合、シーケンス設計では電磁弁53が開となるところ、電磁弁53を閉とすることになり、流路60の状態がシーケンス設計における想定とは変わってしまう。電磁弁の開閉が想定と異なると、例えば、流路60の配管圧力の変化や、流路60から洗浄動作を行う他の機構に洗浄水の供給を制御する電磁弁の開閉タイミングのずれにつながり、この結果、プローブや反応容器の洗浄が不十分になってしまうおそれがある。
【0023】
これに対して、本実施例の流路構成を
図3Aに示す。
図2の流路構成との相違点は、洗浄水をタンクに戻すため、第1の流路とタンクとの間をつなぐ第2の流路を設けるとともに、洗浄水の供給先を洗浄槽とするか、タンクとするかを切り換えるための流路切り換え機構を設けたことにある。具体的には、洗浄槽13への洗浄水の供給を制御する電磁弁SV1aに対応して、電磁弁SV1bの設けられた流路62(第2の流路)を設け、洗浄槽14への洗浄水の供給を制御する電磁弁SV2aに対応して、電磁弁SV2bの設けられた流路63(第2の流路)を設けている。本流路における電磁弁SV1a,SV1b,SV2a,SV2bの1サイクルにおける動作を示すタイムチャートを
図3Bに示す。サイクル時間はT
0であり、洗浄槽13の洗浄動作はサイクル開始からT
1時間後に開始され、洗浄槽14の洗浄動作はサイクル開始からT
2時間後に開始されるよう設定されており、また洗浄時間はどちらの洗浄槽も時間t
1に設定されているものとする。
【0024】
図3Bには、サイクル1は洗浄槽13,14ともにプローブの外洗動作が行われ、サイクル2は洗浄槽14のみプローブの外洗動作が行われ、サイクル3は洗浄槽13のみプローブの外洗動作が行われ、サイクル4は洗浄槽13,14ともにプローブの外洗動作が行われない場合の電磁弁動作を示している(パルス波形区間において電磁弁が開になるものとする)。このタイムチャートから読み取れるように、洗浄槽13による洗浄動作が行われない場合には、電磁弁SV1aが閉とされる一方、電磁弁SV1bが電磁弁SV1aと同じ動作タイミングで同じ期間だけ開となるように制御される(サイクル2、4)。同様に、洗浄槽14による洗浄動作が行われない場合には、電磁弁SV2aが閉とされる一方、電磁弁SV2bが電磁弁SV2aと同じ動作タイミングで同じ期間だけ開となるように制御される(サイクル3、4)。なお、電磁弁SV1aと電磁弁SV1bまたは電磁弁SV2aと電磁弁SV2bはポートの口径等が等しくされ、流路60の配管圧力が等しければその流量は等しくされる。
【0025】
このように、洗浄槽の洗浄動作が不要な場合には第2の流路を通じて洗浄水をタンク50に戻すことにより、洗浄水を無駄に捨てることがなくなり、かつ洗浄水をタンク50に戻すタイミングを、洗浄動作時に洗浄水を洗浄槽に供給するタイミングに合わせていることにより、流路60のサイクル期間における配管圧力の変動プロファイルを洗浄動作の有無にかかわらず同一にすることができ、洗浄水量のばらつきによる分析データのばらつきなどの不具合を生じることを防止することができる。
【0026】
以下、流路切り換え機構の具体的な構成例について説明する。
【0027】
図4は、流路切り換え機構を2方向弁により構成した例である。洗浄に使用する洗浄水はタンク100に蓄えられ、洗浄用ポンプ101により洗浄槽111につながる流路102(第1の流路)に供給される。洗浄槽111への洗浄水の供給は2方向電磁弁120により制御される。流路102の圧力を調整するため、調整弁104の設けられた戻り流路103が洗浄用ポンプ101とタンク100との間に設けられている。また、流路102から分岐してタンク100につながる、2方向電磁弁121の設けられた流路105(第2の流路)が設けられている。
図3Aと対照させると、例えば、洗浄槽111が洗浄槽13であるとすると、電磁弁SV1aが電磁弁120に、電磁弁SV1bが電磁弁121に相当する。電磁弁120と電磁弁121とは、サイクルにおいて相補的に動作する。すなわち、サイクルにおける洗浄槽111の洗浄期間において、プローブの外洗の実施に応じて、2方向電磁弁120と2方向電磁弁121とのいずれか一方が開とされ、他方が閉とされる。
【0028】
図5Aは、流路切り換え機構の別構成例である。流路102に2方向電磁弁122と3方向電磁弁123とを直列に設け、3方向電磁弁123において、供給ポートを流路102に接続し、第1排出ポートOP1を洗浄槽111に接続し、第2排出ポートOP2をタンク100への流路105に接続している。また、第1排出ポートOP1はノーマルオープン(NO)、第2排出ポートOP2はノーマルクローズ(NC)である。
【0029】
図5Aの流路構成における電磁弁の動作を
図5Bに示す。サイクルにおける洗浄槽111の洗浄期間外では2方向電磁弁122は閉とされ、洗浄期間では2方向電磁弁122は開とされる。さらに洗浄期間において、プローブの外洗を実施するときには、第1排出ポートOP1が開(NO)、第2排出ポートOP2が閉(NC)とされ、プローブの外洗を実施しないときには、第1排出ポートOP1が閉、第2排出ポートOP2が開とされる。本流路切り換え機構では、1つの3方向電磁弁により流路が切り換えられる構成になっているため、弁の故障の発生に気が付きやすい利点がある。
【0030】
図6Aは、流路切り換え機構の別構成例である。3方向電磁弁125を用い、3方向電磁弁125において、供給ポートを流路102に接続し、第1排出ポートOP1を洗浄槽111に接続し、第2排出ポートOP2をタンク100への流路105に接続している。また、第1排出ポートOP1、第2排出ポートOP2ともにノーマルクローズ(NC)である。
【0031】
図6Aの流路構成における電磁弁の動作を
図6Bに示す。サイクルにおける洗浄槽111の洗浄期間外では第1排出ポートOP1、第2排出ポートOP2ともに閉(NC)のままである。洗浄期間において、プローブの外洗を実施するときには、第1排出ポートOP1が開、第2排出ポートOP2が閉(NC)とされ、プローブの外洗を実施しないときには、第1排出ポートOP1が閉(NC)、第2排出ポートOP2が開とされる。本流路切り換え機構では、流路を切り換えるための電磁弁を1つにできるため、流路構成を単純にできる利点がある。
【0032】
洗浄槽が複数存在する
図3Aの流路構成においては、第2の流路ごとに電磁弁が設けられている。
図5A、あるいは
図6Aの流路構成を採用する場合においても、洗浄槽が複数存在する場合には、
図5A、あるいは
図6Aに示した流路構成を、流路102及びタンク100に対して並列に設ければよい。
【0033】
しかしながら、これらの複数の洗浄槽の洗浄動作のタイミングによっては、第2の流路と第2の流路に設けられる電磁弁を共通化して流路構成を単純化することができる。以下、洗浄槽が4つ存在する場合を例にとって、第2の流路の電磁弁を共通化した流路構成の例を説明する。
【0034】
図7Aは、4つの洗浄槽111~114を有する場合の流路構成の例であり、4つの洗浄槽111~114の1サイクルにおける洗浄動作は、
図7Bに示すタイムチャートのサイクル1のように行われるものとする。すなわち、1サイクルにおいて、4つの洗浄槽111~114の洗浄期間は重なっていない。この場合、4つの洗浄槽111~114に対して共通に、電磁弁SVR1が設けられた流路106(第2の流路)を設けることができる。この流路構成では、4つの洗浄槽111~114の一部の洗浄槽において洗浄動作が行われない場合には、当該洗浄槽の洗浄期間において、洗浄動作を行わない洗浄槽に対応する電磁弁SV1~4は閉とされる一方、電磁弁SVR1は開とされる。例えば、
図7Bのタイムチャートにおいて、サイクル2は洗浄槽113が洗浄動作を行わない例であり、サイクル3は洗浄槽111及び洗浄槽113が洗浄動作を行わない例を示している。
【0035】
図7Aは、複数の洗浄槽における洗浄動作のタイミングのいずれもが重ならない例であるが、一部の洗浄槽の洗浄動作のタイミングが重なっている場合は、そのタイミングの重なりに応じて第2の流路を共通化し、流路構成を単純化することができる。
【0036】
図8Aは、4つの洗浄槽111~114を有する場合の流路構成の例であり、4つの洗浄槽111~114の1サイクルにおける洗浄動作は、
図8Bに示すタイムチャートのサイクル1のように行われるものとする。すなわち、1サイクルにおいて、洗浄槽111と洗浄槽114とは洗浄期間が一部重なっており、洗浄槽112と洗浄槽113の洗浄期間は他の洗浄槽の洗浄期間と重なりをもたない。
【0037】
この場合、洗浄期間が重なる洗浄槽の数だけの第2の流路を設けることにより、洗浄期間が重なる洗浄槽は異なる第2の流路から洗浄水をタンク100に戻すことができる。
図8Aの流路構成では、洗浄槽111に対して電磁弁SVR2が設けられた流路107(第2の流路)を設け、洗浄槽112~洗浄槽114に対して共通に、電磁弁SVR3が設けられた流路108(第2の流路)を設けている。なお、
図8Aでは洗浄槽112と洗浄槽113とは流路108に接続されているが、これら洗浄期間の重ならない洗浄槽については、流路107と流路108のいずれに接続するようにしても問題はない。
【0038】
この流路構成でも、4つの洗浄槽111~114の一部の洗浄槽において洗浄動作が行われないサイクルでは、洗浄動作を行わない洗浄槽に対応する電磁弁SV1~4は閉とされる一方、当該洗浄槽の洗浄期間において対応する電磁弁SVR2または電磁弁SVR3が開とされる。例えば、
図8Bのタイムチャートにおいて、サイクル2は洗浄槽114が洗浄動作を行わない例であり、サイクル3は洗浄槽111及び洗浄槽114が洗浄動作を行わない例を示している。
【0039】
以上の流路切り換え機構では、弁の開閉がON/OFF制御される電磁弁を洗浄水の供給制御に用いているが、弁の開閉度を制御できる電磁弁を流路の切り換え制御に用いることで、洗浄槽の洗浄動作のタイミングが重なっている場合においても、流路構成を単純化することができる。
【0040】
図9Aは、4つの洗浄槽111~114を有する場合の流路構成の例であり、4つの洗浄槽111~114の1サイクルにおける洗浄動作は
図9Bに示すタイムチャートのサイクル1のように行われるものとする(
図8Bに示したタイムチャートと同じである)。
【0041】
図9Aの流路構成では、4つの洗浄槽111~114に対して共通に、電磁弁SVP1が設けられた流路109(第2の流路)を設けており、電磁弁SVP1はその開閉度が制御可能な比例制御弁である。この流路構成では、4つの洗浄槽111~114の一部の洗浄槽において洗浄動作が行われない場合には、洗浄動作を行わない洗浄槽に対応する電磁弁SV1~4は閉とされる一方、当該洗浄槽の洗浄期間において電磁弁SVP1が開とされ、かつ洗浄期間の重なりに応じてその開閉度が制御される。例えば、
図9Bのタイムチャートにおいて、サイクル2は洗浄槽112及び洗浄槽114が洗浄動作を行わない例であり、洗浄槽112及び洗浄槽114の洗浄期間において、電磁弁SVP1は電磁弁SV4または電磁弁SV2の流量となる開閉度で開とされる。一方、サイクル3は、洗浄槽111、洗浄槽112及び洗浄槽114が洗浄動作を行わない例を示している。この場合、洗浄槽111及び洗浄槽114の洗浄期間のうち互いに洗浄動作が重ならない期間、または洗浄槽112の洗浄期間では、電磁弁SVP1は電磁弁SV1、電磁弁SV4または電磁弁SV2の流量となる開閉度で開とされる。また、洗浄槽111及び洗浄槽114の互いに洗浄動作が重なる洗浄期間では、電磁弁SVP1はその流量が電磁弁SV1の流量と電磁弁SV4の流量との和となる開閉度で開とされる。
【0042】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図3Aの流路構成の場合、どちらの洗浄槽も洗浄動作を行わないサイクルにおいては、洗浄槽13の洗浄期間において電磁弁SV1bを閉、電磁弁SV2bを開とし、洗浄槽14の洗浄期間において電磁弁SV1bを開、電磁弁SV2bを閉とする制御を行うことも、流路60(第1の流路)の配管圧力プロファイルがサイクル設計において想定された配管圧力プロファイルと乖離しないので可能である。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例のある例の構成の一部を他の例の構成に置き換えたり、他の例の構成を加えたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:反応ディスク、2:反応容器、3:洗浄機構、4:分光光度計、5,6:攪拌機構、7,8:試薬分注機構、7a,8a:試薬プローブ、9:試薬ディスク、10:試薬ボトル、11,12:試料分注機構、11a,12a:試料プローブ、13,14,30,31,32,33:洗浄槽、15:試料容器、16:試料ラック、17:試料搬送機構、18:試薬用シリンジ、19:試料用シリンジ、20:洗浄用ポンプ、21:制御部、50,100:タンク、51,104:調整弁、52:加圧ポンプ、53,54,55,56,57,120,121,122,123,125:電磁弁、60,102:流路(第1の流路)、61,103:戻り流路、62,63,105,106,107,108,109:流路(第2の流路)、111,112,113,114:洗浄槽。