(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 51/04 20060101AFI20241125BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L33/10
(21)【出願番号】P 2021559361
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2020013200
(87)【国際公開番号】W WO2021071156
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0123821
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0124402
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533763(JP,A)
【文献】特表2015-522084(JP,A)
【文献】特表2006-509048(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0075743(KR,A)
【文献】特表2018-507923(JP,A)
【文献】特表2022-514964(JP,A)
【文献】特表2023-514937(JP,A)
【文献】特表2019-512584(JP,A)
【文献】特表2014-516104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08F 2/00-299/08
C08J 3/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとし、前記コアに対し芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物がグラフトされたアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%と、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~30重量%と、ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%とを含むことを特徴とする、ASA系樹脂組成物であって、
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、アルキルメタクリレート55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなり、
ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度(1/4inch(6.35mm)、23℃)が、3~8
kgf・cm/cmであることを特徴とする、ASA系樹脂組成物。
【請求項2】
ASTM D1003に準拠して測定された透明度(Haze)が7以下であることを特徴とする、請求項1に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項3】
総ゴム含量が8~23重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000~150,000g/molであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートを含んでなる重合体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項8】
前記アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、及び前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂を合わせた総100重量部に対して、滑剤、熱安定剤及び紫外線安定剤のうち1以上を0.05~5重量部で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のASA系樹脂組成物から製造されることを特徴とする、成形品。
【請求項10】
外装材、仕上げ材、または無塗装製品であることを特徴とする、請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとし、前記コアに対し芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物がグラフトされたアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~30重量%及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%を、200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップと、製造されたペレットを成形温度200~300℃でシート成形又は射出成形して成形品を製造するステップとを含むことを特徴とする、成形品の製造方法であって、
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、アルキルメタクリレート55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなり、
成形品は、ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度(1/4inch(6.35mm)、23℃)が、3~8
kgf・cm/cmであることを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年10月07日付の韓国特許出願第10-2019-0123821号及び2020年09月25日付で再出願された韓国特許出願第10-2020-0124402号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法に関し、より詳細には、機械的物性及び加工性に優れ、特に、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度に優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に適用可能なASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート化合物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、重合体内に不安定な二重結合を含まないため耐候性に非常に優れ、電気・電子部品、建築用資材(ビニルサイディングなど)、押出プロファイル(Profile)、自動車部品などの様々な分野に広範囲に適用されている。
【0004】
但し、近年、屋外用製品の分野で無塗装、透明、高彩度、特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に対する市場のニーズが持続的に増加しているが、ASA樹脂自体の着色性と透明性の生来の限界を克服できておらず、市場のニーズを満たすことができるASA樹脂に対する開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0095764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、機械的物性及び加工性に優れ、特に、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度に優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に適用可能なASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%と、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~55重量%と、ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%とを含むASA系樹脂組成物及びそれを含む成形品を提供する。
【0009】
また、本発明は、平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~55重量%及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%を、200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップと;製造されたペレットを成形温度200~300℃でシート成形又は射出成形して成形品を製造するステップとを含む成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械的物性及び加工性に優れ、特に、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度に優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に適用可能なASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のASA系樹脂組成物、それを含む成形品及びその成形品の製造方法を詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂を所定の含量比で含むASA系樹脂組成物の場合、機械的物性及び加工性が、従来のASA系樹脂組成物と比較して同等又はそれ以上を維持しながらも、0.5T以上の加工厚さにおいて着色性及び透明度などに優れることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して、本発明を完成するようになった。
【0013】
本発明のASA系樹脂組成物は、平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%と、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~55重量%と、ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%とを含むことを特徴とする。この範囲内で、機械的物性及び加工性に優れ、特に、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度に優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に適用可能であるという利点がある。
【0014】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0015】
A)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
本発明のA)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が50~150nmであってもよく、好ましくは60~140nmであり、より好ましくは70~140nm、さらに好ましく80~140nmであり、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に優れた耐候性、着色性、衝撃強度及び表面光沢特性を付与することができる。
【0016】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳しくは、Nicomp 380装置(製造社:PSS)を用いてガウスモードでインテンシティ(intensity)値で測定することができる。
【0017】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、20~47重量%、好ましく20~40重量%、より好ましくは20~35重量%、さらに好ましくは20~30重量%であり、この範囲内で、機械的強度と流動性のバランスに優れ、特に、透明度、着色性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0018】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0019】
好ましい例として、前記A)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~50重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0020】
より好ましい例として、前記A)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0021】
本発明において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0022】
前記アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、より好ましくは、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0023】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0024】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0025】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、ゲル含量が90重量%未満、30~90重量%、好ましくは50~90重量%であってもよく、前記範囲内で、衝撃強度、屈曲強度などの機械的物性に優れながらも、耐候性が改善されるという効果がある。
【0026】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、膨潤指数が6~14、6~12、好ましくは6~10であってもよく、前記範囲内で、衝撃強度、屈曲強度などの機械的物性に優れながらも、耐候性が改善されるという効果がある。
【0027】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、グラフト率が20~80%、25~60%、好ましくは25~40%であってもよく、前記範囲内で、衝撃強度、屈曲強度などの機械的物性に優れながらも、耐候性が改善されるという効果がある。
【0028】
本発明のゲル含量及び膨潤指数は、グラフト共重合体粉末1gにアセトンを加えた後、常温で24時間撹拌した後に遠心分離して、アセトンに溶けない部分のみを採取した後に乾燥前/後の重量を測定し、下記の式によりゲル含量及び膨潤指数を測定することができる。
【0029】
*ゲル含量(%)=[遠心分離後、乾燥後の重量/試料の重量]×100
【0030】
*膨潤指数=遠心分離後、乾燥前の重量/遠心分離後、乾燥後の重量
【0031】
本発明のグラフト率は、グラフト重合体の樹脂ラテックスを凝固、洗浄、及び乾燥して粉末の形態を得、この粉末2gをアセトン300mlに入れ、24時間撹拌した後、この溶液を超遠心分離機を用いて分離した後、分離されたアセトン溶液をメタノールに滴下してグラフトされない部分を得、これを乾燥させて重量を測定する。この重量から、下記の式によりグラフト率を計算する。
【0032】
*グラフト率(%)=(グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g))×100
【0033】
前記A)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合であれば、特に制限されないが、アルキルアクリレートゴムに芳香族ビニル単量体及びビニルシアン単量体を乳化グラフト重合して製造することができる。
【0034】
前記A)グラフト共重合体内に含まれるアルキルアクリレートゴムは、一例として、アルキルアクリレートを乳化重合して製造することができ、具体例としては、アルキルアクリレート、乳化剤、開始剤、グラフト剤、架橋剤、電解質及び水を添加して乳化重合する方法により製造することができる。
【0035】
前記乳化剤は、一例として、水溶液のpHが3~9、炭素数12~18であるアルキルスルホコハク酸金属塩誘導体、または炭素数12~20であるアルキル硫酸エステル又はそのスルホン酸金属塩誘導体であることが好ましい。
【0036】
具体例として、前記pHが3~9、炭素数12~18であるアルキルスルホコハク酸金属塩誘導体としては、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸カリウム塩、またはジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸リチウム塩が好ましく、炭素数12~20であるアルキル硫酸エステル又はそのスルホン酸金属塩誘導体としては、ラウリン硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、またはオクタデシル硫酸カリウムであることが好ましい。
【0037】
前記乳化剤の使用量は、前記アルキルアクリレートゴムの総100重量部を基準として0.1~1重量部であることが好ましい。
【0038】
前記開始剤は、一例として、無機又は有機過酸化物が好ましく、具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸アンモニウムなどの水溶性開始剤、又は、クメンヒドロペルオキシドまたはベンゾイルペルオキシドなどの脂溶性開始剤であることが好ましい。
【0039】
前記開始剤の使用量は、前記アルキルアクリレートゴムの総100重量部を基準として0.05~0.2重量部であることが好ましい。
【0040】
本発明において、アルキルアクリレートゴムの総100重量部は、製造されたアルキルアクリレートゴム自体の重量であるか、またはその重合製造時に投入された単量体の総重量であってもよい。
【0041】
前記グラフト剤は、一例として、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン及びジアリルアミンからなる群から選択された1種以上であることが好ましく、その使用量は、前記アルキルアクリレートゴムの総100重量部を基準として0.01~0.07重量部が好ましく、この範囲内で、本発明の目的の達成にさらに有利である。
【0042】
前記架橋剤は、一例として、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びトリメチロールメタントリアクリレートからなる群から選択された1種以上が好ましく、その使用量は、前記アルキルアクリレートゴムの総100重量部を基準として0.02~0.3重量部が好ましい。
【0043】
前記グラフト剤及び架橋剤の使用により、本発明に係る前記アルキルアクリレートゴムは、弾性がさらに増加することができ、衝撃強度などの物性がさらに改善され得る。
【0044】
前記電解質は、NaHCO3、Na2S2O7及びK2CO3からなる群から選択された1種以上が好ましく、その使用量は、前記アルキルアクリレートゴムの総100重量部を基準として0.05~0.4重量部が好ましい。
【0045】
前記水は、乳化重合が行われる媒質の役割を果たし、イオン交換水であることが好ましく、その使用量は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記アルキルアクリレートゴムの製造に使用される成分は、一例として、連続投入するか、または連続投入と一括投入を併用する方法で反応器に投入し、本発明の属する技術分野で一般的に知られている重合条件を用いて乳化重合することによってアルキルアクリレートゴムを製造することができる。また、収得されるアルキルアクリレートゴムはラテックスの形態になり得る。
【0047】
前記アルキルアクリレートゴムのpHは、一例として、重合完了直後のラテックス状態で5~9が好ましく、より好ましくはpHが6~8であり、この範囲内で、ラテックスの安定性などに優れるという効果がある。
【0048】
本発明において、pHは、pHメーターを用いて測定することができる。
【0049】
前記A)グラフト共重合体は、前記アルキルアクリレートゴム重合体の骨格(バックボーン:backbone)に芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体がグラフトされたグラフト共重合体であって、具体例として、前記アルキルアクリレートゴムを、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物、及び必要に応じて重合添加剤と混合して乳化重合することによって製造することができる。
【0050】
前記重合添加剤は、一例として、グラフト剤及び/又は架橋剤を含むことができ、このグラフト剤及び架橋剤は、上述したアルキルアクリレートゴムの製造時に使用されたグラフト剤及び架橋剤と種類が同一であり、その使用量は、ゴムを除いた単量体の総100重量部を基準として、同じ重量部の範囲内で使用することができる。
【0051】
本発明において、単量体は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含む。
【0052】
前記A)グラフト共重合体の乳化重合は、前記アルキルアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物以外に、用途に応じて、本発明の属する技術分野で通常使用される乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤及び水などを使用することができる。また、乳化重合直後に製造されるグラフト共重合体は、ラテックスの形態になり得る。
【0053】
前記乳化剤は、一例として、水溶液のpHが9~13であり、炭素数12~20の脂肪酸金属塩、ロジン酸金属塩などのカルボン酸金属塩誘導体であることが好ましい。
【0054】
前記炭素数12~20の脂肪酸金属塩は、一例として、脂肪酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びオレイン酸カリウムからなる群から選択された1種以上が好ましく、前記炭素数12~20のロジン酸金属塩は、一例として、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウムまたはこれらの混合物が好ましい。
【0055】
前記乳化剤の使用量は、一例として、反応混合物であるアルキルアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を合わせた総100重量部を基準として、1~2重量部の範囲以内の量で使用されることが好ましい。
【0056】
前記開始剤は、一例として、前記アルキルアクリレートゴムの製造時に使用できる開始剤の種類と同じ種類の開始剤を使用することができ、その使用量は、一例として、前記反応混合物の総100重量部を基準として0.05~0.3重量部が好ましい。
【0057】
前記分子量調節剤は、一例として、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、またはこれらの混合物を使用することができ、その使用量は、前記反応混合物100重量部を基準として0.02~0.2重量部が好ましい。
【0058】
前記水は、イオン交換水であることが好ましく、本発明の属する技術分野で通常使用される重量で使用され得る。
【0059】
前記乳化グラフト重合時に前記反応混合物及び乳化剤などの重合添加剤を一括投入する場合、重合システムのpHが一時的に上昇してグラフティングが難しく、共重合体粒子の安定性が低下して粒子の内部構造が均一でなくなるため、乳化グラフト重合による前記A)グラフト共重合体の製造時には、前記反応混合物及び重合添加剤を連続投入、具体例として、全反応時間内で1~10時間又は1~5時間の間連続投入することが好ましい。
【0060】
本発明で説明されていない重合条件は、本発明の属する技術分野で一般的に知られている重合条件を適宜選択できることは当業者に自明な事項であることを明らかにしておく。
【0061】
本発明において、連続投入とは、一括投入と反対の意味であって、一定時間の間絶えずに、又は、一定時間内に段階的に分けて投入することを指す。
【0062】
前記A)グラフト共重合体は、一例として、重合完了直後のラテックス状態でpHが8~11であることが好ましく、pHが9~10.5であることがより好ましく、この範囲で、ラテックスの安定性に優れるという効果がある。
【0063】
前記A)グラフト共重合体ラテックスは、具体例として、塩化カルシウム水溶液を用いて80~90℃又は82~88℃及び常圧の条件で凝集し、90℃超~100℃以下、または92~98℃で熟成させて脱水及び洗浄した後、85~95℃又は88~92℃の熱風で20分~1時間、または30分~40分間乾燥して粉末状に製造され得る。
【0064】
B)アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本発明のアルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、前記ASA系樹脂組成物(A+B+C)の総重量に対して23~55重量%、より好ましくは25~50重量%、さらに好ましくは25~45重量%、よりさらに好ましくは30~40重量%であってもよく、この範囲内で、透明度及び着色性に優れるという効果がある。
【0065】
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、アルキルメタクリレート40~90重量%、芳香族ビニル化合物9~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなることができ、より好ましくは、アルキルメタクリレート50~85重量%、芳香族ビニル化合物12~35重量%及びビニルシアン化合物3~15重量%を含んでなることができ、さらに好ましくは、アルキルメタクリレート55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなることができ、この範囲内で、透明度及び着色性に優れるという利点がある。
【0066】
前記アルキルメタクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、具体例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個の鎖状アルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、より好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0067】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0068】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0069】
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは10,000~150,000g/mol、より好ましくは40,000~120,000g/molであってもよく、この範囲内で、ゴムの分散度を高めることで、衝撃強度、加工性、透明度及び着色性に優れるという利点がある。
【0070】
本発明において、重量平均分子量は、特に定義されない限り、粉末をアセトンに溶かした後、アセトン内に溶けている部分(sol)を抽出してTHF溶液に溶かした後、GPCを用いて、標準PS(標準ポリスチレン;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0071】
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0072】
前記アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましい一実施例として、無溶媒状態下又は反応溶媒下でアルキルメタクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総100重量部に、開始剤及び分子量調節剤のうち1種以上をそれぞれ0.01~0.5重量部、好ましくは0.02~0.15重量部、より好ましくは0.02~0.1重量部を投入した後、連続反応器を用いて塊状重合又は溶液重合して製造され得、この場合、経済的であり、残留不純物が少ないという利点がある。
【0073】
前記反応溶媒は、本発明の属する技術分野で塊状重合又は溶液重合時に通常用いられる反応溶媒であれば、特に制限されず、一例として芳香族炭化水素であってもよく、好ましくは、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン及びテトラリンからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくはトルエンである。
【0074】
前記A)グラフト共重合体の重量は、好ましくは、前記B)アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の重量よりも大きくなく、より好ましくは、前記A)グラフト共重合体とB)アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体との重量比(A:B)が1:1~1:2.5であってもよく、さらに好ましくは1:1~1:2であってもよく、この範囲内で、機械的強度と流動性のバランスに優れ、特に、透明度、着色性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0075】
C)ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂
本発明のC)ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、好ましくは25~45重量%であってもよく、より好ましくは30~45重量%、さらに好ましくは30~40重量%であり、この範囲内で、従来のASA系樹脂組成物と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、透明度及び着色性が大きく向上するという利点がある。
【0076】
前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートを含んでなる重合体であってもよい。
【0077】
前記アルキルメタクリレートは、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数1~4個の鎖状アルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、さらに好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0078】
前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、好ましくは重量平均分子量が50,000~200,000g/molであり、より好ましくは50,000~150,000g/mol、さらに好ましくは50,000~100,000g/molであり、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、透明度及び着色性に優れるという効果がある。
【0079】
前記ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂は、一例として、アルキルメタクリレートを含む単量体に架橋剤及び開始剤を混合した後、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合して製造することができ、懸濁重合又は乳化重合して製造することが好ましい。
【0080】
前記開始剤は、ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂の製造時に用いられる通常の開始剤であれば、特に制限されず、一例として、2,2’-アゾビス 2’4-ジメチル-バレロニトリルなどのアゾ系開始剤が好ましい。
【0081】
前記重合方法に応じて追加又は変更されなければならない、溶媒、乳化剤などの反応に必要な物質や重合温度、重合時間などの条件は、ポリ(アルキルメタクリレート)樹脂の製造時にそれぞれの重合方法に応じて一般に適用される物質や条件であれば、特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。
【0082】
ASA系樹脂組成物
本発明のASA系樹脂組成物は、好ましくは、総ゴム含量が8~23重量%であってもよく、より好ましくは10~20重量%、さらに好ましくは10~17重量%、よりさらに好ましくは10~15重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性に優れ、特に耐候性、透明度及び着色性に優れるという効果がある。
【0083】
本発明において、ASA系樹脂は、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を指す。
【0084】
前記ASA系樹脂組成物は、好ましくは、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂を合わせた総100重量部に対して、滑剤、熱安定剤及び紫外線安定剤のうち1以上を0.05~5重量部含むことができ、この範囲内で、ASA系樹脂組成物の物性を低下させずに、これらの本来の効果が良好に発現されるという利点がある。
【0085】
前記滑剤は、好ましくは、0.3重量部以上~2重量部未満で含まれてもよく、より好ましくは0.5~1.9重量部含まれてもよく、さらに好ましくは0.9~1.5重量部含まれてもよく、この範囲内で、衝撃強度及び流動性がいずれも優れるという効果がある。
【0086】
前記滑剤は、一例として、エステル系滑剤、金属塩系滑剤、カルボン酸系滑剤、炭化水素系滑剤及びアミド系滑剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアミド系滑剤であり、より好ましくはステアルアミド系滑剤であり、さらに好ましくは、アルキレンの炭素数が1~10であるアルキレンビス(ステアルアミド)であり、この場合に、樹脂の機械的物性及び熱安定性を低下させないながらも、滑剤本来の効果が良好に発現されるという利点がある。
【0087】
本発明において、ステアルアミド系滑剤は、ステアルアミド(stearamide)及びその水素のうち1以上が他の置換基(例として、C1~C10のアルキル、ハロゲンなど)で置換されたステアルアミド置換体を含むことができる。
【0088】
前記エステル系滑剤、金属塩系滑剤、カルボン酸系滑剤、炭化水素系滑剤及びアミド系滑剤は、それぞれ、本発明の属する技術分野で一般に当該種類の滑剤として用いられる物質であれば、特に制限されない。
【0089】
前記熱安定剤は、一例として、アミン系熱安定剤及びリン系熱安定剤からなる群から選択された1種以上であり、それぞれ0.01~3重量部の範囲内で含まれ得、この範囲内で、熱安定性、透明性及び着色性がいずれも優れるという効果がある。
【0090】
前記アミン系熱安定剤は、一例として、N,N-ジ-t-ブチルヒドロキシルアミン(N,N-di-t-butyl hydroxylamine)、N,N-ジステアリルヒドロキシルアミン(N,N-distearyl hydroxylamine;DSHA)、N,N-ジフェニルヒドロキシルアミン(N,N-diphenyl hydroxylamine;DPHA)、N,N-ジベンジルヒドロキシルアミン(N,N-dibenzyl hydroxylamine)、N,N-ベンジルフェニルヒドロキシルアミン(N,N-benzylphenyl hydroxylamine)、N,N-ジ(2,4-ジメチルフェニル)ヒドロキシルアミン(N,N-di(2,4-dimethylphenyl)hydroxylamine)及びN,N-ナフチルヒドロキシルアミン(N,N-naphthyl hydroxylamine)からなる群から選択された1種以上であってもよく、一例として、0.01~3重量部の範囲内で含まれてもよく、好ましくは0.05~2重量部、より好ましくは0.1~1重量部の範囲で含まれてもよく、この範囲内で、熱安定性、透明性及び着色性がいずれも優れるという効果がある。
【0091】
前記リン系熱安定剤は、一例として、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(tris (nonylphenyl)phosphite)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4-di-t-butyl phenyl)phosphite;TBPP)、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(2,4,6-tri-tert-butylphenyl-2-butyl-2-ethyl-1,3-propanediol phosphite)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト(diisodecyl pentaerythritol diphosphite)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(distearyl pentaerythritol diphosphite)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-di-t-butylphenyl)pentaerythritol diphosphite;PEP24)、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-di-cumylphenyl)pentaerythritol diphosphite)及びテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホナイト(tetrakis(2,4-di-tert-butylphenyl)[1,1-biphenyl]-4,4’-diyl bisphosphonite)からなる群から選択された1種以上であってもよく、一例として、0.01~3重量部の範囲内で含まれてもよく、好ましくは0.05~2重量部、より好ましくは0.1~1重量部の範囲で含まれてもよく、この範囲内で、熱安定性、透明性及び着色性がいずれも優れるという効果がある。
【0092】
前記紫外線安定剤は、一例として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びHALS系紫外線安定剤からなる群から選択された1種以上を0.1~2.5重量部の範囲内で含むことができ、好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.1~2.0重量部及びHALS系紫外線安定剤0.1~2.0重量部を含むことができ、より好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.1~1.0重量部及びHALS系紫外線安定剤0.1~1.0重量部を含むことができ、さらに好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.2~0.7重量部及びHALS系紫外線安定剤0.2~0.7重量部を含むことができ、よりさらに好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.3~0.6重量部及びHALS系紫外線安定剤0.3~0.6重量部を含むことができ、この範囲内で、衝撃強度及び流動性を阻害しないながらも、耐候性を大きく改善させるという利点がある。
【0093】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、一例として、ヒドロキシベンゾトリアゾールであってもよく、好ましくは2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールであってもよく、より好ましくは、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-sec-ブチル-5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-アミル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシ-カルボニルエチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-ドデシル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-ベンゾトリアゾール-2-イルフェノール]、及び2-[3’-tert-ブチル-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)-2’-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコールとのエステル交換生成物からなる群から選択された1種以上であってもよく、このような場合に、衝撃強度及び流動性を阻害しないながら、耐候性を大きく改善させるという利点がある。
【0094】
前記HALS系紫外線安定剤は、好ましくは、1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシナート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-N-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状の縮合生成物、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状の縮合生成物、及び7,7,9,9-テトラメチル-2-シクロウンデシル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソスピロ-[4,5]デカンとエピクロロヒドリンとの反応生成物からなる群から選択された1種以上であり、より好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)sebacate)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol)またはこれらの混合物であってもよく、このような場合に、衝撃強度及び流動性を阻害しないながら、耐候性を大きく改善させるという利点がある。
【0095】
前記ASA系樹脂組成物は、必要に応じて選択的に染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上の添加剤を、前記総100重量部に対して0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、ASA系樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、添加剤の効能が良好に具現されるという効果がある。
【0096】
前記ASA系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D1238に準拠して測定した溶融指数(220℃、10kg)が、8g/10分以上であってもよく、より好ましくは8~11g/10分、さらに好ましくは9~11g/10分であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、耐候性及び流動性のバランスに優れるという効果がある。
【0097】
前記ASA系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度(1/4inch、23℃)が、3kgf・cm/cm以上、より好ましくは3~8kgf・cm/cm、さらに好ましくは3~4kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、耐候性及び流動性のバランスに優れるという効果がある。
【0098】
前記ASA系樹脂組成物は、一例として、ASTM 638に準拠した引張強度(1/8inch)が、570kg/cm2以上であり、好ましくは570~700kg/cm2であり、より好ましくは580~650kg/cm2であり、さらに好ましくは580~610kg/cm2であり、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び流動性のバランスに優れるという効果がある。
【0099】
前記ASA系樹脂組成物は、一例として、ASTM 790に準拠した屈曲強度が850kg/cm2以上であり、好ましくは850~1,000kg/cm2であり、より好ましくは860~950kg/cm2であり、さらに好ましくは870~920kg/cm2であり、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、屈曲強度、耐候性及び流動性のバランスに優れるという効果がある。
【0100】
前記ASA系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D523方法により測定した表面光沢(45°)が、80以上、より好ましくは85以上、さらに好ましくは95以上であってもよく、この範囲内で、透明性及び着色性に優れ、他の物性とのバランスが良いという利点がある。
【0101】
前記ASA系樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D1003に準拠して測定された透明度(Haze)が、7以下であってもよく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び加工性に優れながらも、同時に透明性及び着色性に優れるという利点がある。
【0102】
前記ASA系樹脂組成物は、ウェザロメーター(Weather-Ometer)を用いて、SAE J1960の条件で6,000時間経過したときの耐候性(△E)が、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下であってもよく、この範囲内で、機械的物性、加工性、着色性及び耐候性がいずれも優れるという利点がある。
【0103】
前記ASA系樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~55重量%及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%を、200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップを含むことができる。
【0104】
前記混練及び押出に用いられる押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサを介して行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、この場合、組成物が均一に分散して相溶性に優れるという効果がある。
【0105】
前記混練及び押出は、バレル温度(温度条件)が、好ましくは210~300℃、より好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~250℃である範囲内で行われてもよく、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であり、かつ、十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0106】
前記混練及び押出は、スクリュー回転数(rpm)が、好ましくは150~400rpm、より好ましくは100~350rpm、さらに好ましくは200~310rpm、よりさらに好ましくは250~350rpmである条件下で行われてもよく、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であるため工程効率に優れ、かつ過度の切断を抑制するという効果がある。
【0107】
前記ASA系樹脂組成物の製造方法は、前述したASA系樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0108】
成形品
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物で製造することができ、この場合に、相溶性が増加して衝撃強度などの機械的物性に優れながらも、透明性及び着色性に優れるという効果がある。
【0109】
前記成形品は、一例として、押出成形品又は射出成形品であってもよく、好ましくは、エアコン、真空掃除機、洗濯機、冷蔵庫及びTVバックカバーなどの家電製品のハウジング;コンピュータ、ノートパソコン、モニタ、ファクシミリ、電話機、コピー機及びスキャナーなどのOA機器のハウジング;自動車内外装材などの自動車用部品;建築内外装材;玩具用部材;レジャー用品;及び室内装飾品などであってもよく、より好ましくは、外装材、仕上げ材、無塗装製品または押出プロファイルであってもよく、この場合に、本発明の熱可塑性樹脂組成物によって、市場で求める品質以上の高品質で提供可能であるという利点がある。
【0110】
前記成形品は、好ましくは、加工厚さ、一例として面厚さが0.5T(mm)以上であってもよい。
【0111】
成形品の製造方法
本発明の成形品の製造方法は、好ましくは、平均粒径50~150nmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~47重量%、アルキルメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体23~55重量%及びポリ(アルキルメタクリレート)樹脂25~45重量%を、200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップと、製造されたペレットを成形温度200~300℃でシート成形又は射出成形して成形品を製造するステップとを含むことを特徴とする。このような場合に、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度に優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値のASA系樹脂製品を製造できるという利点がある。
【0112】
前記成形品を製造するステップは、好ましい例として、製造されたペレットを成形温度180~300℃の条件下でシート成形することを含むことができ、より好ましい例としては、成形温度180~300℃及び成形圧力50~300Kgf/cm2の条件下でシート成形することを含むことができ、このような場合に、透明性及び着色性に優れた大型シート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0113】
前記成形温度は、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~220℃であり、この範囲内で、透明性及び着色性に優れた大型シート成形品を容易に製造可能であるという利点がある。
【0114】
前記成形圧力は、好ましくは190~270Kgf/cm2、より好ましくは200~250Kgf/cm2であり、この範囲内で、衝撃強度が高い大型射出成形品を容易に製造可能であるという利点がある。
【0115】
他の好ましい例として、前記成形品を製造するステップは、製造されたペレットを、射出温度200~260℃、射出圧力60~100bar及び保圧25~55barの条件下で射出成形することを含むことができ、このような場合に、透明性及び着色性に優れた大型射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0116】
前記射出温度は、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~220℃であり、この範囲内で、透明性及び着色性に優れた大型射出成形品を容易に製造可能であるという利点がある。
【0117】
前記射出圧力は、好ましくは70~90bar、より好ましくは75~85barであり、この範囲内で、衝撃強度が高い大型射出成形品を容易に製造可能であるという利点がある。
【0118】
前記保圧は、好ましくは30~50barであってもよく、より好ましくは35~45barであり、この範囲内で、衝撃強度が高い大面積の射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0119】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装置などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0120】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0121】
実施例1及び3は、参考例であり、本願発明の範囲外である。
下記の実施例で用いられた物質は、次の通りである。
【0122】
A)乳化重合方式のグラフト共重合体(コア:平均粒径150nmのブチルアクリレート重合体由来の単位50重量%、シェル:スチレン由来の単位35重量%、アクリロニトリル由来の単位15重量%)
【0123】
B)バルク重合方式のSAMMA樹脂:下記のような方法により製造される
トルエン20重量部、スチレン24重量部、メチルメタクリレート50重量部及びアクリロニトリル6重量部を溶解した混合溶液に、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.02重量部、n-ドデシルメルカプタン0.08重量部、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤としてIrgacure(1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンチル)1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;1,3,5-tris(4-tert-butyl-3-hydroxy-2,6-dimethylbenzyl)-1,3,5-triazine-2,4,6-(1H,3H,5H)-trione)0.1重量部を添加した重合溶液を、14L/hrの速度で26Lの反応器に投入しながら、1番目の反応器で140℃の温度で重合し、2番目の反応器で150℃の温度で重合して、重合転化率が約60%以上なったとき、揮発槽で215℃の温度で未反応単量体と反応媒質を除去し、ペレット状のスチレン-アクリロニトリル-メチルメタクリレート(SAMMA)樹脂を製造した。このように製造されたSAMMA樹脂の重量平均分子量は70,000g/molであった。
【0124】
C)バルク重合方式のPMMA樹脂:下記のような方法により製造される
窒素置換された反応器に、メチルメタクリレート100重量部、蒸留水200重量部、懸濁剤としてポリビニルアルコール0.3重量部、n-オクチルメルカプタン2.0重量部を一括投入し、反応器の内温を80℃に上げ、開始剤としてAIBN0.05重量部を投入して反応を開始させ、反応槽の内温を80℃に維持しながら90分間重合反応を行った後、反応槽の温度を110℃まで上げて30分間さらに重合を行った。重合されたビーズ(bead)は、脱水器を用いて洗浄し、流動層乾燥機で80℃で2時間乾燥した。製造されたPMMA樹脂の重量平均分子量は100,000g/molであった。
【0125】
実施例1~5及び比較例1~6
それぞれ、下記表1に記載された成分及び含量に、滑剤としてEBS(SUNKOO化学社製)1重量部、酸化防止剤としてsongnox 1076及びsongnox 1680(Songwan社製)をそれぞれ0.5重量部、及び紫外線安定剤としてTinuvin 770(BASF社製)及びSunsorb 329(SUNFINE GLOBAL社製)をそれぞれ0.5重量部を加え、二軸押出機で230℃及び150rpm下で混練及び押出して、ペレットを製造した。製造されたペレットの溶融指数を測定した。また、製造されたペレットを用いて、成形温度220℃及び成形圧力200Kgf/cm2下で0.5Tのシートを製造し、表面光沢、Tt及びHazeを測定した。さらに、前記製造されたペレットを、成形温度220℃、射出圧力50bar及び保圧35bar下で射出して物性測定用試片を作製し、これを用いて衝撃強度、引張強度、屈曲強度、着色性及び耐候性を測定した。
【0126】
[試験例]
前記実施例1~5及び比較例1~6で製造されたペレット、シート及び試片の特性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0127】
*ゴム含量(重量%):FT-IRに準拠して測定した。
【0128】
*表面光沢度(%):45°でASTM D523に準拠して測定した。
【0129】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):ASTM 256方法により測定した。
【0130】
*屈曲強度(kgf/cm2):ASTM 790方法により測定した。
【0131】
*引張強度(kgf/cm2):ASTM 638方法により測定した。
【0132】
*溶融指数(melt index;MI):製造されたペレットを220℃、10kgの条件下でASTM D1238方法により測定した。
【0133】
*透明度(光拡散度及び光透過率):ASTM D-1003を用いて、厚さ0.5mmのシートのヘイズ値(haze value)と全光線透過率(light transmittance;Tt)をそれぞれ測定した。ヘイズは低いほど、透過率は高いほど、透明度が優れていると評価される。
【0134】
*表面硬度:ASTM D785に準拠して測定した。
【0135】
*着色性:CIELABモードに準拠してColor eye 7000A色差計(X-rite社製)を用いて着色性測定試片のL値を測定した。L値が高いほど、試片の後板の白色プレートの色が投影されるため、着色性が高い。
【0136】
*耐候性(△E):耐候性装置(Weather-Ometer)を用いて、SAE J1960の条件で6,000時間経過したとき、色を測定して初期の色と比較した。△Eが小さいほど、色変化の程度が小さいもので、耐候性に優れることを意味する。
【0137】
【0138】
【0139】
前記表1及び表2に示したように、本発明によるASA系樹脂組成物(実施例1~5)は、本発明によらない比較例1~6と比較して、衝撃強度、引張強度などの機械的強度及びMIで表現される加工性は、同等又はそれ以上の値を有し、かつ、透明度(haze)、着色性及び耐候性が大幅に優れることが確認できた。特に、より好ましい範囲の組成比及びゴム含量を有する実施例1~3は、透明度(haze)、着色性及び耐候性がいずれも優れることが確認できた。したがって、本発明によるASA系樹脂組成物は、機械的物性及び加工性を、従来のASA系組成物と比較して同等以上を維持しながら、一定以上の加工厚さでも着色性及び透明度がいずれも優れるため、無塗装、透明、高彩度または特殊カラーなどの性質を有する高付加価値の製品に適用可能であることが確認できた。