(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20241125BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20241125BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20241125BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20241125BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/535 100
A61F13/536 100
A61F13/511 100
A61F13/539
(21)【出願番号】P 2021561522
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044119
(87)【国際公開番号】W WO2021107059
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019212865
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115378(JP,A)
【文献】特開2019-097610(JP,A)
【文献】特開2019-155112(JP,A)
【文献】特開2019-083863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
粉砕された保液性繊維を有する吸収性コアを備える吸収性物品であって、
前記保液性繊維は、広葉樹からなる広葉樹保液性繊維を有し、
前記吸収性コアは、前記保液性繊維が集合した複数の高密度部を有し、
前記吸収性コアは、少なくとも一つの前記高密度部の前記厚さ方向の一方側又は他方側に、前記高密度部よりも前記保液性繊維の密度が低い低密度部を有し、
前記高密度部は、前記保液性繊維が集中し、前記低密度部の繊維と交絡していない中央部と、前記中央部よりも外側において、前記低密度部の繊維と交絡している起毛部と、を有し、
前記高密度部の形状は、平面状であり、
前記高密度部の平面方向において前記起毛部が占める領域の最大幅は、前記平面方向と直交する方向において前記起毛部が占める領域の最大幅よりも長く、
前記吸収性コアに含まれる複数の前記高密度部のうち、前記吸収性コアの前記厚さ方向に対して前記平面方向と直交する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合は、前記吸収性コアの前記長手方向または前記幅方向に対して前記平面方向と直交する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合よりも大きい、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記高密度部の平均密度は、前記吸収性コアの平均密度よりも高く、
前記中央部に含まれる繊維の重量は、前記起毛部に含まれる繊維の重量よりも多い、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記高密度部の平均密度は、前記吸収性コアの平均密度よりも高く、
前記中央部に含まれる繊維の重量は、前記起毛部に含まれる繊維の重量以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記高密度部の平面方向において、前記中央部に外接する円の直径をRcとし、前記起毛部に外接する円の直径をRoとしたときに、(Ro-Rc)<Rcである、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記高密度部の平面方向において、前記中央部に外接する円の直径をRcとし、前記起毛部に外接する円の直径をRoとしたときに、(Ro-Rc)≧Rcである、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側に隣接するシート部材と接している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの非肌側に隣接するシート部材と接している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側に隣接するシート部材及び前記吸収性コアの非肌側に隣接するシート部材の両方と接している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に配置されたトップシートを有し、
前記トップシートと前記吸収性コアとを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有し、
前記厚さ方向において、前記圧搾部と前記高密度部とが接している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品であって、
前記圧搾部は、低圧搾部と、前記低圧搾部よりも前記吸収性コアが高密度に圧搾された高圧搾部とを有しており、
前記厚さ方向において、前記低圧搾部と前記高密度部とが接している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向において、前記吸収性コアを3等分したときの中央領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量は、
前記長手方向において、前記吸収性コアを3等分したときの両端領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときの中央領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量は、
前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときの両端領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアには、高吸収性ポリマーが含まれており、
前記高密度部の最大外径は、前記高吸収性ポリマーの最大外径よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長は2mm未満であり、
前記吸収性コアには、広葉樹以外からなる保液性繊維であって、前記広葉樹保液性繊維よりも平均繊維長が長い保液性繊維が含まれている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項14に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長は2mm未満であり、
前記吸収性コアには、前記広葉樹保液性繊維よりも平均繊維長が長く、疎水性の熱可塑性繊維が含まれている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹保液性繊維の平均繊維幅は15μm以下であり、
前記吸収性コアの単位面積当たりに含まれる前記広葉樹保液性繊維の本数は、
300本/mm
2
以上、2500本/mm
2
未満であり、
複数の前記広葉樹保液性繊維の間に高吸収性ポリマーを有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹保液性繊維の繊維長の標準偏差は0.27以下であり、
前記広葉樹保液性繊維の繊維幅の標準偏差は7.55以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項18】
請求項17に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長に前記広葉樹保液性繊維の繊維長の標準偏差を加えた値は、前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長の2倍の値よりも小さく、
前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長から前記広葉樹保液性繊維の繊維長の前記標準偏差を引いた値は、前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長の1/2の値よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、複数の熱可塑性繊維を含み、且つ前記吸収性コアを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有しており、
前記圧搾部において、前記熱可塑性繊維が互いに融着している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、生理用ナプキン、おりものシート、及び軽失禁パットの少なくとも何れかである、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向における中央領域から前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品の非肌側面には、着用時において前記吸収性物品を着用者の下着に貼り付けるための粘着部が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアの少なくとも一部の領域に、機能材が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
JIS K 0069の規定に準拠したふるい振とう機を用いて前記吸収性コアに含まれる繊維を分離したときに、
前記ふるい振とう機の14メッシュの篩に残留した繊維の重量を、分離前の前記吸収性コアの重量で割った値が、
前記ふるい振とう機の60メッシュの篩を通過した繊維の重量を、分離前の前記吸収性コアの重量で割った値よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一例として、経血等の排泄液を吸収する生理用ナプキンが知られている。このような生理用ナプキンは吸収体(吸収性コア)を備えており、吸収性コアには保水性(保液性)繊維が含まれている。通常、保水性繊維として、繊維長が長い針葉樹パルプ繊維が用いられている。また、特許文献1には、保水性繊維である吸水性繊維12Fに加えて、合成繊維を塊状に集積した集合体である繊維塊11を、吸収性コア4に含めることにより、該吸収性コア4の柔軟性やクッション性を高めた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような吸収性物品は、長時間着用される場合であっても十分な吸収性を有することが求められる。しかしながら、従来の吸収性物品では、長時間着用する際に吸収体がよれたり撓んだりしないように、該吸収体を柔らかく形成しつつ、排泄物の吸収性を高めることは困難であった。例えば、特許文献1の吸収性物品では、吸収体のクッション性を高めるために、吸水性の低い合成繊維の繊維塊を含めるため、その分吸水性能が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、柔軟性と吸収性を両立させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
粉砕された保液性繊維を有する吸収性コアを備える吸収性物品であって、
前記保液性繊維は、広葉樹からなる広葉樹保液性繊維を有し、
前記吸収性コアは、前記保液性繊維が集合した複数の高密度部を有し、
前記吸収性コアは、少なくとも一つの前記高密度部の前記厚さ方向の一方側又は他方側に、前記高密度部よりも前記保液性繊維の密度が低い低密度部を有し、
前記高密度部は、前記保液性繊維が集中し、前記低密度部の繊維と交絡していない中央部と、前記中央部よりも外側において、前記低密度部の繊維と交絡している起毛部と、を有し、
前記高密度部の形状は、平面状であり、
前記高密度部の平面方向において前記起毛部が占める領域の最大幅は、前記平面方向と直交する方向において前記起毛部が占める領域の最大幅よりも長く、
前記吸収性コアに含まれる複数の前記高密度部のうち、前記吸収性コアの前記厚さ方向に対して前記平面方向と直交する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合は、前記吸収性コアの前記長手方向または前記幅方向に対して前記平面方向と直交する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合よりも大きい、
ことを特徴とする吸収性物品である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性と吸収性を両立させた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。
【
図3A】広葉樹保液性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹保液性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。
【
図3B】広葉樹パルプと針葉樹パルプの平均繊維幅の分布を示す図である。
【
図4】
図4Aは、吸収体10に用いられる粉砕パルプの製造方法について説明する図である。
図4Bは、粉砕パルプ等を用いて吸収体10を製造する方法について説明する図である。
【
図5】広葉樹パルプを含んだパルプシートを粉砕加工した際に得られる繊維塊100の拡大写真である。
【
図6】
図6Aは、所定の方向から見たときの繊維塊100の平面模式図である。
図6Bは、
図6AのB-B矢視である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、吸収体10の厚さ方向における繊維塊100の配置について説明する図である。
【
図8】
図8Aは、圧搾部40(線状圧搾部41)が設けられている領域における吸収体10の概略断面図である。
図8Bは、高圧搾部45及び低圧搾部46を有する圧搾部40(線状圧搾部41)が設けられている領域における吸収体10の概略断面図である。
【
図9】吸収体10の変形例について表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、粉砕された保液性繊維を有する吸収性コアを備える吸収性物品であって、前記保液性繊維は、広葉樹からなる広葉樹保液性繊維を有し、前記吸収性コアは、前記保液性繊維が集合した複数の高密度部を有し、前記吸収性コアは、少なくとも一つの前記高密度部の前記厚さ方向の一方側又は他方側に、前記高密度部よりも前記保液性繊維の密度が低い低密度部を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアに吸収された経血等の水分が、毛細管現象によって低密度部から高密度部(繊維塊)へと厚さ方向に移動しやすくなる。したがって、吸収性コア全体としての水分を吸収・保持しやすくなり、吸収性を高めることができる。また、広葉樹保液性繊維は、針葉樹保液性繊維と比較して個々の繊維の面積や体積が小さいため、繊維同士が交絡する箇所が少なく、交絡箇所自体の面積(体積)も小さくなる。したがって、繊維同士の動きが互いに干渉されにくく、吸収体の柔軟性をたかめることができる。これにより、柔軟性と吸収性を両立させた吸収性物品を実現することができる。
【0012】
かかる吸収性物品であって、前記高密度部は、前記保液性繊維が集中し、前記低密度部の繊維と交絡していない中央部と、前記中央部よりも外側において、前記低密度部の繊維と交絡している起毛部と、を有し、前記高密度部の平均密度は、前記吸収性コアの平均密度よりも高く、前記中央部に含まれる繊維の重量は、前記起毛部に含まれる繊維の重量よりも多い、ことが望ましい。
【0013】
このような吸収性物品によれば、毛細管現象によって高密度部の周囲から起毛部を介して中央部により多くの水分が引き込まれやすくなる。これにより、吸収性コアによって保持可能な水分の総量を大きくすることができる。
【0014】
かかる吸収性物品であって、前記高密度部は、前記保液性繊維が集中し、前記低密度部の繊維と交絡していない中央部と、前記中央部よりも外側において、前記低密度部の繊維と交絡している起毛部と、を有し、前記高密度部の平均密度は、前記吸収性コアの平均密度よりも高く、前記中央部に含まれる繊維の重量は、前記起毛部に含まれる繊維の重量以下である、ことが望ましい。
【0015】
このような吸収性物品によれば、中央部と比較して密度が低い起毛部の領域が大きくなることにより、保液性繊維間に空隙が多く形成され、外力を受けた際に高密度部が容易に変形しやすくなる。したがって、吸収性コアの柔軟性が向上する。また、起毛部における空隙が多くなるため、経血等、水分以外の物質を含む液体であっても起毛部を透過して中央部に到達しやすくなる。これにより、吸収性物品の柔軟性を高めつつ、良好な吸収性を実現できる。
【0016】
かかる吸収性物品であって、前記高密度部の形状は、平面状であり、前記高密度部の平面方向において前記起毛部が占める領域の最大幅は、前記平面方向と直行する方向において前記起毛部が占める領域の最大幅よりも長く、前記吸収性コアに含まれる複数の前記高密度部のうち、前記吸収性コアの前記厚さ方向に対して前記平面方向と直行する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合は、前記吸収性コアの前記長手方向または前記幅方向に対して前記平面方向と直行する方向が沿うように配置されている前記高密度部の割合よりも大きい、ことが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品によれば、高密度部の厚さ方向(Z方向)における繊維密度の勾配が、平面方向(X,Y方向)における繊維密度の勾配よりも大きくなる。したがって、厚さ方向において毛細管現象が作用しやすく水分を吸収しやすくなる。そして、高密度部の中央部に引き込まれた水分は、平面方向に広がる起毛部によって、平面方向の外側に拡散し難く、高密度部に保持されやすくなる。これにより、吸収性物品の吸収性をより高めることができる。
【0018】
かかる吸収性物品であって、前記高密度部の平面方向において、前記中央部に外接する円の直径をRcとし、前記起毛部に外接する円の直径をRoとしたときに、(Ro-Rc)<Rcである、ことが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品によれば、高密度部に占める起毛部の割合が小さくなるため、起毛部の繊維と、その周囲の低密度部の繊維との交絡箇所が少なくなる。したがって、高密度部と低密度部との結合が弱くなり、吸収性コアが全体として柔軟になる。これにより、吸収性物品の柔軟性をより高めることができる。
【0020】
かかる吸収性物品であって、前記高密度部の平面方向において、前記中央部に外接する円の直径をRcとし、前記起毛部に外接する円の直径をRoとしたときに、(Ro-Rc)≧Rcである、ことが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品によれば、高密度部に占める起毛部の割合が大きくなるため、起毛部の繊維と、その周囲の低密度部の繊維との交絡箇所が多くなる。したがって、吸収性コアの密度部に対して高密度部の位置が固定されやすくなり、吸収性コアがよれたり変形したりし難くなる。これにより、吸収性物品の型くずれを生じ難くすることができる。
【0022】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側に隣接するシート部材と接している、ことが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品によれば、経血等の水分が、肌側に隣接するシート部材から吸収性コアの内部へ引き寄せられて高密度部に保持されるため、肌側のシートに水分が残りにくく、また、水分が肌側のシートにリウェットしてしまうことが抑制される。これにより、吸収性物品の着用時において着用者の肌に水分が接触し難くなり、かぶれ等の肌トラブルが生じたり、着用者に不快感を生じさせたりすることを抑制できる。
【0024】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの非肌側に隣接するシート部材と接している、ことが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品によれば、経血等の水分が、吸収性コアの肌側から非肌側へと透過して、厚さ方向の非肌側に設けられた高密度部に保持されやすくなる。したがって、吸収性コアの肌側面には水分が残りにくく、リウェット等も生じ難くなる。これにより、吸収性物品の着用時において着用者の肌に水分が接触し難くなり、かぶれ等の肌トラブルが生じたり、着用者に不快感を生じさせたりすることを抑制できる。
【0026】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向において、前記高密度部の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側に隣接するシート部材及び前記吸収性コアの非肌側に隣接するシート部材の両方と接している、ことが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの厚さ方向において高密度部が占める割合が高くなり、厚さ方向の広範囲にわたって水分を保持しやすくなる。つまり、吸収性コアに高密度部が存在していない場合と比較して、吸収性コアの保水容量を高くすることができる。
【0028】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に配置されたトップシートを有し、前記トップシートと前記吸収性コアとを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有し、前記厚さ方向において、前記圧搾部と前記高密度部とが接している、ことが望ましい。
【0029】
このような吸収性物品によれば、圧搾部(線状圧搾部)に沿って平面方向に移動する水分の一部が、高密度部によって厚さ方向の肌側から非肌側に引き寄せられ、吸収性コアに吸収されやすくなる。したがって、水分が吸収性コアの平面方向に過度に拡散してしまうことを抑制すると共に、吸収性コアの吸収性を高めることができる。
【0030】
かかる吸収性物品であって、前記圧搾部は、低圧搾部と、前記低圧搾部よりも前記吸収性コアが高密度に圧搾された高圧搾部とを有しており、前記厚さ方向において、前記低圧搾部と前記高密度部とが接している、ことが望ましい。
【0031】
このような吸収性物品によれば、低圧搾部が設けられていることにより、着用時における吸収性コアの過度な変形が抑制され、吸収性コアを破れにくくすることができる。さらに、低圧搾部に沿って平面方向に移動する水分を、高密度部によって吸収性コアの厚さ方向に引き込みやすくなり、吸収性コアの柔軟性と吸収性とを両立させることができる。
【0032】
かかる吸収性物品であって、前記長手方向において、前記吸収性コアを3等分したときの中央領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量は、前記長手方向において、前記吸収性コアを3等分したときの両端領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量よりも大きい、ことが望ましい。
【0033】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの長手方向において、両端領域よりも中央領域に経血等の水分が保持されやすくなるため、経血等が長手方向の外側に漏れてしまうことを抑制しやすくなる。
【0034】
かかる吸収性物品であって、前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときの中央領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量は、前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときの両端領域の単位面積当たりに含まれる前記高密度部の重量よりも大きい、ことが望ましい。
【0035】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの幅方向において、両端領域よりも中央領域に経血等の水分が保持されやすくなるため、経血等が幅方向の外側に漏れてしまうことを抑制しやすくなる。
【0036】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアには、高吸収性ポリマーが含まれており、前記高密度部の最大外径は、前記高吸収性ポリマーの最大外径よりも大きい、ことが望ましい。
【0037】
このような吸収性物品によれば、高吸収性ポリマー(SAP)が膨潤した際に、隣り合う2つのSAPの間に高密度部が配置される可能性が高くなるため、SAP同士が接触し難くなり、ゲルブロッキングが抑制される。これにより、SAPの吸収性が低下してしまうことが抑制され、吸収性コアの吸収性を高めることができる。
【0038】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長は2mm未満であり、前記吸収性コアには、広葉樹以外からなる保液性繊維であって、前記広葉樹保液性繊維よりも平均繊維長が長い保液性繊維が含まれている、ことが望ましい。
【0039】
このような吸収性物品によれば、繊維長が短い広葉樹保液性繊維と、繊維長が長い保液性繊維とが交絡しやすくなり、吸収性コアの形状が維持されやすくなる。したがって、繊維長が長い保液性繊維のみによって吸収性コアが形成されている場合と比較して柔軟性が高く、繊維間距離が短くなるため、繊維間に液が溜まりにくくなり、液戻り性が向上する。また、繊維長が短い保液性繊維のみによって吸収性コアが形成されている場合と比較して型崩れを生じ難くすることができる。
【0040】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長は2mm未満であり、前記吸収性コアには、前記広葉樹保液性繊維よりも平均繊維長が長く、疎水性の熱可塑性繊維が含まれている、ことが望ましい。
【0041】
このような吸収性物品によれば、平均繊維長が短い広葉樹繊維と、平均繊維長が長い繊維とが絡み合って交絡することにより、吸収性コアの型崩れが生じ難くなる。また、疎水性繊維が含まれていることにより、吸収性コアにおける水分の拡散性が向上する。これにより、吸収性コアの広範囲に亘って水分が吸収・保持されやすくなる。したがって、吸収性物品の吸収性をより向上させることができる。
【0042】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹保液性繊維の平均繊維幅は15μm以下であり、前記吸収性コアの単位面積当たりに含まれる前記広葉樹保液性繊維の本数は、300本/mm2以上、2500本/mm2未満であり、複数の前記広葉樹保液性繊維の間に高吸収性ポリマーを有している、ことが望ましい。
【0043】
このような吸収性物品によれば、繊維が交絡しにくく、かつ、繊維幅が短い広葉樹パルプが密集するので、排泄液と繊維の接触する確率が高くなる。また、広葉樹パルプ複数本がSAPと接触する確率も高くなることから、広葉樹パルプに含まれた排泄液が広葉樹パルプの間にある高吸収性ポリマーに引き込まれやすくなり、複数回の排泄液の吸収においても液戻りを低減することができる。
【0044】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹保液性繊維の繊維長の標準偏差は0.27以下であり、前記広葉樹保液性繊維の繊維幅の標準偏差は7.55以下である、ことが望ましい。
【0045】
このような吸収性物品によれば、分布幅が狭くて標準偏差が小さいと、吸収体において均一な繊維密度を保持しやすいので、平面方向において繊維の偏りが少なく、排泄液を同心円状に拡散しやすくなる。
【0046】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹保液性繊維の平均繊維長に前記広葉樹保液性繊維の繊維長の標準偏差を加えた値は、前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長の2倍の値よりも小さく、前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長から前記広葉樹保液性繊維の繊維長の前記標準偏差を引いた値は、前記広葉樹保液性繊維の前記平均繊維長の1/2の値よりも大きい、ことが望ましい。
【0047】
このような吸収性物品によれば、繊維の偏りがより少なく、排泄液を均等に拡散させやすくなる。
【0048】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアは、複数の熱可塑性繊維を含み、且つ前記吸収性コアを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有しており、前記圧搾部において、前記熱可塑性繊維が互いに融着している、ことが望ましい。
【0049】
このような吸収性物品によれば、熱可塑性繊維同士が互いに融着することにより吸収体の形状が安定しやすくなる。これにより、吸収性物品を着用した状態で着用者が身体を大きく動かした場合であっても、吸収体が型崩れを生じたり吸水性が悪化したりすることを抑制しやすくなる。
すくなる。
【0050】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、生理用ナプキン、おりものシート、及び軽失禁パットの少なくとも何れかである、ことが望ましい。
【0051】
このような吸収性物品によれば、柔軟性と吸収性を両立させた生理用ナプキン、おりものシート、及び軽失禁パットを実現することができる。
【0052】
かかる吸収性物品であって、前記長手方向における中央領域から前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有する、ことが望ましい。
【0053】
このような吸収性物品によれば、着用時において、幅方向の外側から内側(着用者の下着の股下側)にウイング部を折り込むことで吸収性物品を下着等に取り付けやすくすることができる。
【0054】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品の非肌側面には、着用時において前記吸収性物品を着用者の下着に貼り付けるための粘着部が設けられている、ことが望ましい。
【0055】
このような吸収性物品によれば、着用時において、着用者の下着等の肌側面に粘着部を貼り付けることで、吸収性物品の位置が固定され、位置ずれを生じ難くすることができる。
【0056】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアの少なくとも一部の領域に、機能材が設けられている、ことが望ましい。
【0057】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの高密度部に機能材が保持されやすくなるため、吸収性物品において当該機能材の効果をより有効に発揮させることができる。例えば、吸収性コアの高密度部に抗菌剤が保持されることにより、吸収された尿や経血が溜まっている部分で抗菌作用を生じやすくさせることができる。また、高密度部に香料、冷感、温感剤等が保持されて蓄積されることにより、それらの機能材の効果を長時間持続させやすくすることができる。
【0058】
かかる吸収性物品であって、J JIS K 0069の規定に準拠したふるい振とう機を用いて前記吸収性コアに含まれる繊維を分離したときに、前記ふるい振とう機の14メッシュの篩に残留した繊維(Nots)の重量を、分離前の前記吸収性コアの重量で割った値が、前記ふるい振とう機の60メッシュの篩を通過した繊維(Fine)の重量を、分離前の前記吸収性コアの重量で割った値よりも大きい、ことが望ましい。
【0059】
このような吸収性物品によれば、繊維が集合した高密度部の含有率が高いので、吸収体の内部に空隙が生じて体液等の水分が通過しやすくなり、吸収性コアの液透過性を高めることができる。また、高密度部自体が液体を保持しやすいため、吸収性コアの保水性が高くなる。したがって、吸収性コアの吸水性をより向上させることができる。
【0060】
===実施形態===
<<生理用ナプキンの基本的構成>>
本実施形態に係る吸収性物品の一例として生理用ナプキン1(以下、単に「ナプキン1」とも呼ぶ)について説明する。なお、以下の説明では吸収性物品の例として生理用ナプキンについて説明するが、本実施形態の吸収性物品には、所謂おりものシート(例えばパンティライナー)や軽失禁パッド等も含まれており、生理用ナプキンに限定されるものではない。
【0061】
図1は、ナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。
図2は、
図1中のA-A矢視で示す概略断面である。また、以下の説明では、
図1及び
図2に示すように、各方向を定義する。すなわち、ナプキン1の製品長手方向に沿った「長手方向」と、ナプキン1の製品短手方向に沿って長手方向と直交する「幅方向」と、長手方向及び幅方向とそれぞれ直交する「厚さ方向」と、を定義する。長手方向のうち、ナプキン1の使用時において着用者の腹側となる方向を「前側」とし、着用者の背側となる方向を「後側」とする。厚さ方向のうち、ナプキン1の着用時に着用者の肌と当接する側を「肌側(上側)」とし、その逆側を「非肌側(下側)」とする。
【0062】
ナプキン1は、平面視縦長形状のシート状部材であり、一対のサイドシート2と、トップシート3と、セカンドシート4と、吸収体10(吸収性コア)と、カバーシート6と、バックシート5とが厚さ方向の肌側から非肌側へと順に積層されて形成されている(
図2参照)。そして、これら各部材は、それぞれ、厚さ方向に隣接する部材とホットメルト接着剤(HMA)等の接着剤で接合されている。なお、接着剤の塗布パターンとしては、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等を例示できる。
【0063】
また、ナプキン1は、吸収体10が設けられたナプキン本体部20と、ナプキン本体部20の長手方向中央領域から幅方向の両外側に延出した一対のウイング部30とを有する。このウイング部30が設けられる長手方向中央領域は、ナプキン1の使用時において着用者の排泄口(股下部)と当接する領域である。
【0064】
トップシート3は、ナプキン1の使用時において着用者の肌と当接する部材であり、経血等の液体を厚さ方向の肌側から非肌側に透過させ、吸収体10に移動させる。このため、トップシート3には、エアスルー不織布などの適宜な液透過性の柔軟なシートが用いられる。
【0065】
セカンドシート4は、液透過性のシートであり、トップシート3と同じエアスルー不織布等を例示できる。セカンドシート4は、吸収体10の肌側面上に設けられ、経血等の排泄物の逆戻り防止、排泄物の拡散向上、及びクッション性の向上等の役割を果たす。但しナプキン1がセカンドシート4を有さなくても良い。
【0066】
カバーシート6は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであっても良く、ティッシュペーパーやSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等を例示できる。カバーシート6は吸収体10とバックシート5の間に設けられている。但し、ナプキン1がカバーシート6を有さなくても良い。
【0067】
バックシート5は、ナプキン1の使用時においてトップシート3を透過して吸収体10によって吸収された液体が下着等の着衣側(非肌側)に染み出すことを抑制する。バックシート5には、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルムなど適宜な液不透過性の柔軟なシートが用いられる。なお、トップシート3及びバックシート5は、平面サイズが吸収体10よりも大きくされている。
【0068】
サイドシート2は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであっても良く、トップシート3と同じエアスルー不織布やSMS不織布等を例示できる。
【0069】
そして、
図1に示されるように、サイドシート2及びトップシート3と、バックシート5との外周縁部同士が接着又は融着で接合されることにより、これらのシート同士の間に吸収体10が保持されている。また、一対のサイドシート2は、トップシート3の幅方向の両側部から幅方向の外側に延出しており、バックシート5と共に一対のウイング部30を形成している。また、
図2に示されるように、ナプキン本体部20の最も非肌側の面(バックシート5の非肌側面)には、適宜な接着剤(例えばホットメルト接着剤)を塗布することにより形成された本体粘着部(ズレ止めに相当)が幅方向に間隔を置いて複数設けられている。ナプキン1の使用時には、この本体粘着部が着用者の下着等の肌側面に貼り付けられることによりナプキン1が固定され、位置ずれが生じ難くなる。同様に、ウイング部30の最も非肌側の面(バックシート5の非肌側面)には、ホットメルト接着剤等を塗布することにより形成されたウイング粘着部(ズレ止めに相当)が設けられている(
図2参照)。
【0070】
吸収体10(吸収性コアに相当)は、長手方向に沿って長い縦長の部材であり、経血等の液体(排泄物)を吸収して内部に保持する。吸収体10の詳細については後述する。セカンドシート4、吸収体10、カバーシート6は、平面形状が同じであり、厚さ方向に積層されている。なお、本実施形態ではこれらの各部材がホットメルト接着剤(HMA)によって互いに接合されているが、接合されていなくても良い。
【0071】
また、ナプキン1には、圧搾部40(凹部)が複数設けられている(
図1参照)。圧搾部40は、厚さ方向の肌側から非肌側に向かって凹んだ部位であり、隣接する部位に比べて保液性繊維の密度の高い部位である。圧搾部40では、少なくとも、トップシート3、セカンドシート4、及び吸収体10の厚さ方向の全域が、厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。これにより、ナプキン1がよれにくくなる。但し、上記に限らず、吸収体10にのみ圧搾部40を設けたり、トップシート3から吸収体10の厚さ方向肌側の一部までにしか圧搾部40を設けなかったり、バックシート5から吸収体10に圧搾部40を設けたりしても良い。また、圧搾部40の配置パターンも
図1に示すものに限らない。
【0072】
<吸収体10の具体的な構成>
吸収体10は、液体を吸収する保液性繊維を有し、平面視縦長形状に成形されている。また、吸収体10に、保液性繊維以外の素材(例えば、熱可塑性樹脂繊維等の疎水性繊維)が含まれても良い。保液性繊維と熱可塑性樹脂繊維(疎水性繊維)とを有する場合、吸収体10は、これらの繊維同士が互いに混合した状態で形成される。
【0073】
保液性繊維としては、パルプ、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維等の半合成繊維等が挙げられる。
【0074】
従来の吸収性物品が備える吸収体では、針葉樹からなる保液性繊維である針葉樹保液性繊維(針葉樹パルプともいう)が用いられることが多かった。これに対して、本実施形態の吸収体10では、保液性繊維の少なくとも一部に、広葉樹からなる保液性繊維である広葉樹保液性繊維(広葉樹パルプともいう)が含まれている。この広葉樹保液性繊維(広葉樹パルプ)は、針葉樹保液性繊維(針葉樹パルプ)と比較して繊維長が短いという特徴を有する。
【0075】
図3Aは広葉樹保液性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹保液性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。横軸は繊維長(mm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。図に示すように、針葉樹パルプの平均繊維長は2.5mmであり、繊維長の分布幅が広い(3mm以上の繊維が含まれる。標準偏差は1.6)。これに対し、広葉樹パルプの平均繊維長は0.79mmであり、繊維長の分布幅が狭い(標準偏差は0.27)。本実施形態のナプキン1では、吸収体10に広葉樹パルプを用いていることにより、保液性繊維の平均繊維長が短く(具体的には2mm未満に)なっている。
【0076】
なお、パルプ繊維の平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-工学的自動分析法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。また、以下で説明するパルプ繊維の平均繊維幅は、FiberWidthとして測定される。
【0077】
平均繊維長、平均繊維幅は、JISの評価法に記載されているように繊維塊を除いて測定を行う。したがって、本明細書中で示される平均繊維長、平均繊維幅のデータは後述する繊維塊100を除いて測定された結果である。
【0078】
また、パルプ繊維以外の繊維の平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定する。上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0079】
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を素材とする単独繊維や、PPとPEとを重合してなる繊維、又は、PPとPEとからなる芯鞘構造の複合繊維等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂繊維では捲縮の程度を調整することが可能である。例えば、熱可塑性樹脂繊維として、融点の異なる2つの合成繊維成分からなる芯鞘型、偏心型の複合繊維を用いることで繊維を捲縮させることができる。本実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長は30mm程度である。また、熱可塑性樹脂繊維の単位長さ当たりの平均捲縮数を、保液性繊維の単位長さ当たりの平均捲縮数よりも少なくなるように定めている。これにより、熱可塑性樹脂繊維と保液性繊維との交絡が少なくなり、折り癖が残りにくくなる。よって、熱可塑性樹脂繊維を含む場合においても、装着感を向上でき、漏れ防止性を高めることができる。なお、平均捲縮数の測定方法としては、例えば、幅方向に複数個の試験片(例えば5cm角の試験片)をサンプリングし、キーエンス製マイクロスコープVH-Z450などを用いて、試験片中の繊維に荷重がかからない状態で、1インチ(2.54cm)当たりの捲縮数を数回測定すればよい。その平均値より捲縮数(単位長さ当たりの平均捲縮数)を算出することができる。
【0080】
図3Bは、広葉樹パルプと針葉樹パルプの平均繊維幅の分布を示した図である。横軸は繊維幅(μm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。
図3Bに示すように、針葉樹パルプの平均繊維幅は30μmm程度であり(上図)、繊維幅の分布幅が広い(標準偏差は11.9)。これに対し、広葉樹パルプの平均繊維幅は15μm程度であり(下図)、繊維幅の分布幅が狭い(標準偏差は7.55)。本実施形態のナプキン1では、吸収体10に広葉樹パルプを用いていることにより、針葉樹パルプのみを用いている場合と比較して、保液性繊維の平均繊維幅が短くなっている。
【0081】
そして、広葉樹パルプの平均繊維幅が15μm以下であること、繊維密度本数が300本/mm2以上2500本/mm2未満であること(詳細は後述)、及び広葉樹パルプの間に高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を有することが望ましい。そうすると、繊維が短く、繊維が細いため、絶対的な繊維面積が小さいから繊維が交絡しにくく、かつ、繊維幅が短いという特徴がある広葉樹パルプが密集するので、排泄液と繊維の接触する確立が高くなり、広葉樹パルプに含まれた排泄液は広葉樹パルプの間にある高吸収性ポリマーに引き込まれやすいので、複数回の排泄液の吸収においても液戻りを低減することができる。
【0082】
また、分布幅を見てみると、広葉樹パルプは、針葉樹パルプよりも繊維長と繊維幅の分布幅が狭い。つまり、広葉樹パルプの繊維長の標準偏差は0.27以下であり、広葉樹パルプの繊維幅の標準偏差は7.55以下である。さらに、広葉樹パルプの平均繊維長に広葉樹パルプの繊維長の標準偏差を加えた値(0.79+0.27=1.06)は、広葉樹パルプの平均繊維長の2倍の値(1.58)よりも小さく、広葉樹パルプの平均繊維長から広葉樹パルプの繊維長の標準偏差を引いた値(0.79-0.27=0.52)は、広葉樹パルプの平均繊維長の1/2の値(0.395)よりも大きい。
【0083】
このように分布幅が狭くて標準偏差が小さいと、吸収体において均一な繊維密度を保持しやすいので、平面方向において偏りが少なく同心円状に拡散しやすくなる。
【0084】
また、吸収体10が上記以外の繊維を含んでいても良く、例えばセルロース等の天然繊維や、レーヨンのような再生セルロース繊維等を含んでいても良い。
【0085】
また、吸収体10の厚さは、2mm以上10mm以上であることが望ましい。吸収体10の厚さが2mm未満だと薄すぎてよれてしまい、10mmを超えると硬すぎて着用者が違和感を覚えるおそれがある。
【0086】
また、広葉樹パルプは針葉樹パルプよりも細くて繊維間距離が短いので、同密度の条件下で比較した場合、広葉樹パルプの繊維本数密度は、針葉樹パルプの繊維本数密度よりも大きい。なお、繊維本数密度は、単位面積当たりの平均繊維本数に相当し、繊維太さ+平均繊維間距離にて、細密充填構造の場合に単位面積当たりに含まれる繊維の本数を試算した値である。かかる試算値をみると、広葉樹パルプの繊維本数密度は、1182.2本/mm2であり、針葉樹パルプの繊維本数密度(200.3本/mm2)の約6倍である。よって、広葉樹パルプを使用すると、針葉樹パルプを使用した場合と比べて高密度化が可能である。
【0087】
繊維本数密度は300本/mm2以上2500本/mm2未満であることが望ましい。繊維本数密度が300本/mm2未満だと折り癖が残りにくくなるが、吸収体10がすかすかになってしまい、使用中によれてしまい、結果吸収体面積が減少し、漏れやすくなってしまう。繊維本数密度が2500本/mm2以上だと吸収体10が硬く仕上がりすぎてしまい、使用中の違和感が増大してしまう。繊維本数密度が300本/mm2以上2500本/mm2未満であれば、毛細管効果を高めることができ、また、薄膜化及び柔軟化が可能になり、吸収性を高めることができる。
【0088】
<吸収体10の製造方法>
吸収体10の製造方法としては、粉砕パルプや高吸収性ポリマー等を集積させる方法が知られている。
図4Aは、吸収体10に用いられる粉砕パルプの製造方法について説明する図である。
図4Bは、粉砕パルプ等を用いて吸収体10を製造する方法について説明する図である。なお、ここでは、吸収体10として、保液性繊維と熱可塑性樹脂繊維と高吸収性ポリマー(SAP)を含むものを製造する場合について説明する。
【0089】
先ず、吸収体10の原料となる粉砕パルプが製造される。粉砕パルプは、搬送機構61とソーミル62とを用いて、原料となるパルプシートPSを粉砕加工することによって製造される。搬送機構61は、原反ロールから繰り出されるパルプシートPSを所定の方向に搬送する。ソーミル62は、円柱状のロールの外周面に複数の刃が設けられた回転体であり、
図4Aに示されるように、搬送方向の下流側においてパルプシートPSを削るようにして回転する。これにより、パルプシートPSが細かく粉砕され、吸収体10の原料となる粉砕パルプが製造される。なお、ソーミル62の代わりにハンマーミルを用いて、パルプシートPSを叩くようにして粉砕してもよい。
【0090】
従来、針葉樹からなるパルプシートを粉砕加工する場合、針葉樹パルプの繊維が一本ずつ分解され、糸状の長い針葉樹保液性繊維(平均繊維長が2.5mm程度)が形成される。一方、本実施形態では、広葉樹パルプを含んだパルプシートPSが用いられる。上述したように、広葉樹パルプ(広葉樹保液性繊維)は平均繊維長が短いため(平均繊維長が2mm未満)、針葉樹パルプと比較して繊維同士が絡まり難い。そのため、広葉樹パルプを含んだパルプシートPSは、各々の繊維同士が交絡している箇所が少なく、脆く崩れやすくなっている。このようなパルプシートPSがソーミル62によって粉砕されると、広葉樹パルプの繊維が一本ずつ分解されるのではなく、複数の繊維が毛玉状に集合した繊維塊100(所謂「ノッツ」とも言う)がパルプシートPSから崩れるようにして分離される。
【0091】
また、上述したように、広葉樹パルプは平均繊維幅が15μm程度である。すなわち、広葉樹パルプは繊維長が短いだけでは無く、細いという特徴を有している。したがって、広葉樹パルプは繊維1本1本の断面積や体積が小さく、繊維がより毛玉状に集合しやすく、毛玉内に含まれる繊維量も針葉樹の場合と比較して多くなる。なお、従来のエアレイドパルプでこのような繊維塊を形成しようとする場合、パルプ間に含まれる接着剤によって水分の引き込みが阻害されやすく、繊維塊自体が硬くなってしまうため、好ましくない。また、パルプはセルロースであるため、熱融着しにくい。よって熱融着等の方法を用いて繊維塊を形成することも難しい。
【0092】
図5は、広葉樹パルプを含んだパルプシートを粉砕加工した際に得られる繊維塊100の拡大写真である。同
図5に示されるように、本工程で得られる繊維塊100は広葉樹保液性繊維が高密度に集合した中央部101と、中央部101の周囲において、中央部101よりも密度が低くなった起毛部102とを有する。この起毛部102は、パルプシートPS中で繊維と繊維とが交絡している部分が剥がれることによって形成される。すなわち、パルプシートPSはこのような繊維塊100が複数密集することによって形成されており、パルプシートPSがソーミル62によって削られると、隣接する繊維塊100,100同士の交絡箇所が剥がれることによって、個々の繊維塊100に分離されると共に、交絡が剥がれた部分が起毛部102となる。
【0093】
本実施形態では、
図4Aに示される方法にてパルプシートPSを粉砕加工したサンプルを、JIS K 0069に規定される試験法に準じたふるい振とう機(例えば、アズワン株式会社製ふるい振とう機SS-HK60)を用いて繊維の大きさ毎に分離し、以下の条件を満たすものを「繊維塊100」とした。先ず、ふるい振とう機に設けられた14メッシュの篩にサンプルを載置する。なお、「メッシュ」とは、JIS Z8801に規定されている標準篩用金網であり、例えば、14メッシュは、目開1.18mm、線径0.63mm、開孔面積42.3%の金網である。また、メッシュの下側に篩と同様の径を持つ筒を設置しメッシュから下側70mmの高さの筒側面に孔を開け隙間が出来ないように吸引装置(例えば、オオサワ&カンパニー製ワンダーガンW101:吸い込み最小内径22mm、圧力0.5Mpa)を設置する。さらに、メッシュよりも上側50mmの高さにエアー噴出装置(例えば、TONE株式会社製エアーダスターガンAG-101:ノズル長95mm、ノズル内径4mm、圧力0.5Mpa)を設置する。次いで、振幅70mm、60回/分の条件で15分間振とうしながら、エアー噴出装置を満遍なく噴射すると共に、吸引装置で吸引し、サンプルから繊維を分離する。そして、15分経過後に篩(14メッシュ)の上に残留したものを「繊維塊100(ノッツ)」とする。
【0094】
また、
図5の写真では、黒色の背景に白色の繊維塊100が表示されているが、繊維塊100の中心部において背景の黒色が透けて見えない領域が、広葉樹保液性繊維が高密度に集合した中央部101である。一方、中央部101の周囲で、繊維塊100を透過して背景の黒色を視認可能な部分が起毛部102である。
【0095】
続いて、繊維塊100を用いて、吸収体10が製造される。
図4Bに示されるように、回転ドラム70は、中空円筒形のドラムであり、周面には吸収体材料を詰める型として、複数の凹部71が所定のピッチで形成されている。回転ドラム70が回転して凹部71が材料供給部80へ進入すると、吸引部72の吸引により、材料供給部80から供給された吸収体材料が、凹部71に堆積(集積)する。
【0096】
フード80a付きの材料供給部80は、回転ドラム70の上部を覆うように形成されており、材料供給部80は、パルプシートPSを粉砕機(
図4A参照)で粉砕した粉砕パルプ(少なくとも広葉樹パルプ及び繊維塊100を含む)と熱可塑性樹脂との混合物を空気搬送により凹部71に供給する。また、材料供給部80は、高吸収性ポリマー粒子(SAP)を供給する粒子供給部81を備えており、凹部71に対して高吸収性ポリマー粒子を供給する。吸水性繊維と熱可塑性繊維との混合物及び高吸収性ポリマー粒子は、混合状態で凹部71に堆積され、凹部71に吸収体10が形成される。
【0097】
回転ドラム70の更なる回転により、吸収体10を収容した凹部71がドラムの最下部に到達すると、吸収体10が凹部71から外れ、コンベアにて搬送される基材(カバーシート6など)の上に配置され、次の工程に引き渡されることになる。
【0098】
形成された吸収体10には、保液性繊維が高密度に密集した繊維塊100が複数含まれている。すなわち、吸収体10の中には繊維塊100からなる高密度部が点在している。したがって、吸収体10のうち、この繊維塊100(高密度部)が点在する領域では、圧搾部40とは異なり、厚さ方向の中央部において厚さ方向の端部よりも保液性繊維の密度が高くなっている。言い換えると、吸収体10は、少なくとも一つの高密度部(繊維塊100)の厚さ方向における一方側または他方側に、高密度部よりも保液性繊維の密度が低い低密度部を有している。
【0099】
なお、繊維塊100(高密度部)の密度の測定は以下のようにして行うことができる。先ず、電子天秤等を用いて繊維塊100の重量を測定する。このとき、繊維塊100の重量が、電子天秤の最小測定重量に満たない場合には、測定できる重量まで繊維塊100を複数個まとめて測定を行い、その平均値を繊維塊100の平均重量とする。次に、マイクロスコープにて繊維塊100の厚み(後述する
図6BのZ方向における長さ)を測定する。上述の様に複数個の繊維塊100をまとめて重量測定した場合には、重量測定に使用した全ての繊維塊100について厚みを測定して平均値を繊維塊100の平均厚みとする。同様にして、マイクロスコープの計測から繊維塊100の面積(後述する
図6AのXY平面における面積)を測定する。その際、重量測定を行った全ての繊維塊100の面積を測定して平均値を繊維塊100の平均面積とする。これらの測定値(算出値)に基づいて、繊維塊100の密度は、平均重量/(平均厚み×平均面積)にて算出することができる。
【0100】
<吸収体10の性能について>
本実施形態の吸収体10(吸収性コア)では、複数の繊維塊100が点在して設けられていることにより、従来製品の吸収体と比較して液吸収性及び柔軟性が向上している。
【0101】
上述したように、繊維塊100では保液性繊維が高密度に集合していることから、吸収体10のうち繊維塊100(高密度部)が配置されている部分では、他の部分よりも保液性繊維の密度が高くなっている。すなわち、吸収体10は、その内部に、高密度部である繊維塊100と、当該高密度部(繊維塊100)よりも保液性繊維の密度が低い低密度部とを有している。そして、吸収体10の厚さ方向において、繊維塊100(高密度部)と低密度部とが隣接して配置されている。言い換えると、本実施形態の吸収体10は、高密度部である繊維塊100と、当該高密度部の厚さ方向の一方側(肌側)または他方側(非肌側)に隣接する低密度部とを有している。吸収体10の厚さ方向に高密度部と低密度部とが設けられていることにより、例えば圧搾部40のように、厚さ方向において高密度部が連続している場合と比較して、吸収体10の嵩(厚み)が維持されやすく、柔らかくクッション性の高い吸収体10を実現できる。
【0102】
そして、このような吸収体10の厚さ方向の肌側に経血等の水分が付着した場合、水分は、吸収体10の厚さ方向に吸収され、毛細管現象によって低密度部から高密度部(繊維塊100)へと移動しやすくなる。つまり、吸収体10の厚さ方向において、低密度部と高密度部(繊維塊100)とが隣接して配置されていることにより、吸収した水分を繊維塊100に誘導し、保持することができる。したがって、吸収体10(吸収性コア)全体としての水分を吸収・保持しやすくなり、吸収体10の吸収性を高めることができる。
【0103】
また、本実施形態の吸収体10(吸収性コア)に含まれている保液性繊維は、広葉樹保液性繊維から形成されているため、針葉樹繊維からなる保液性繊維と比較して平均繊維長が短く、繊維径が細いことから、繊維1本あたりの断面積や体積が小さい。そのため、1本の広葉樹保液性繊維が他の広葉樹保液性繊維と交絡する交絡点の数が少なく、また、交絡点の面積(体積)が小さくなり、針葉樹保水性繊維と比較して繊維同士が絡まりにくい。したがって、保液性繊維同士の動きが互いに干渉されにくく、吸収体10の柔軟性が高まるため、ナプキン1の使用者に硬さを感じさせ難くすることができる。
【0104】
また、針葉樹繊維のみからなる保液性繊維と比較して繊維幅も短くなることから、平面方向に見た際の交絡点の数量が少なくなる。さらに、針葉樹繊維のみからなる保液性繊維と比較して繊維の厚みが薄くなる。したがって、吸収体の密度及び厚みが等しければ、針葉樹繊維のみの場合と比較して、厚み方向において多くの広葉樹繊維を含むことが可能となる一方で、剛性は同等もしくはそれ以下とすることができるので、吸収体10の硬さを着用者に感じさせ難くすることができる。
【0105】
特に、ナプキン1の吸収体10には保液性繊維が高密度に密集した繊維塊100(高密度部)が複数含まれている。仮に、繊維長の長い針葉樹保水性繊維によって当該高密度部が形成されていた場合、繊維の交絡点が多くなり、その分高密度部が硬くなることから、着用時において、着用者に硬さや違和感を生じさせやすくなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、繊維塊100(高密度部)を構成する保液性繊維の繊維長が短く、交絡点の数が少なくなるため、繊維塊100(高密度部)自体の柔軟性も高くなり、着用者に硬さや違和感を生じさせ難い。
【0106】
このように、本実施形態の吸収体10(吸収性コア)では、広葉樹からなら保液性繊維が密集した高密度部(繊維塊100)が点在して設けられていることにより、良好な吸収性と柔軟性とを両立させることができる。なお、高密度部(繊維塊100)内に高吸収性ポリマー粒子(SAP)が含まれていても良い。この場合、SAPと保液性繊維とが接触する割合が多くなるため、吸収体10が複数回繰り返して水分を吸収した場合における吸収性能を向上させることができる。
【0107】
また、
図5で説明したように、繊維塊100は、保液性繊維が高密度に集合した中央部101と、中央部101の外側において中央部101よりも保液性繊維の密度が低い起毛部102とを有している。そして、中央部101は起毛部102によって囲まれており、起毛部102は繊維塊100以外の他の繊維(すなわち吸収体10の低密度部を構成する繊維)に囲まれている。つまり、起毛部102が吸収体10の低密度部を構成する繊維と交絡し、中央部101は該低密度部を構成する繊維とは交絡せず、起毛部102と交絡している。したがって、吸収体10が排泄液等の水分を吸収する際には、先ず低密度部を構成する保液性繊維が水分を吸収し、低密度部に吸収された水分は、毛細管現象により、起毛部102を介して繊維塊100の中央部101に移動する。このようにして、吸収体10によって吸収された水分は、繊維塊100の外側から中央部へと引き込まれる。
【0108】
このような繊維塊100において、中央部101に含まれる保液性繊維の総量(重量)が、起毛部102に含まれる保液性繊維の総量(重量)よりも大きければ、中央部101に水分を保持できる量が多くなるため、吸収体10の吸水性を高めることができる。すなわち、繊維塊100(高密度部)の中央部101には、周囲からより多くの水分が引き込まれやすくなり、吸収体10によって保持される水分の総量を大きくすることができる。
【0109】
一方、中央部101に含まれる保液性繊維の総量(重量)を、起毛部102に含まれる保液性繊維の総量(重量)以下としても良い。この場合、中央部101を取り囲む起毛部102の領域が大きくなるが、起毛部102は、中央部101と比較して密度が低いことから、保液性繊維間に空隙が多く形成され、外力を受けた際に容易に変形しやすくなる。したがって、このような繊維塊100を含んだ吸収体10は柔軟性が高く、ナプキン1着用時における肌触りが柔らかくなるため、着用者に不快感を生じさせ難くなる。また、起毛部102において空隙が多くなるため、経血等、水分以外の物質を含む液体であっても起毛部102を透過させて中央部101に到達させやすい。したがって、柔軟性を高めつつ、良好な吸収性を確保することが可能である。
【0110】
図6Aは、所定の方向から見たときの繊維塊100の平面模式図である。
図6Bは、
図6AのB-B矢視である。
図6A及び
図6Bにおいて、互いに直交する3方向として「X方向」,「Y方向」,「Z方向」を定義したときに、
図6Aは、XY平面における繊維塊100の形状の一例を表し、
図6BはXZ平面における繊維塊100の形状の一例を表している。以下では、
図6Aにおける「XY方向」を繊維塊100の「平面方向」とも呼び、
図6Bにおける「XZ方向」を繊維塊100の「厚さ方向」とも呼ぶ。
【0111】
図6A及び
図6Bに示されるように、繊維塊100(高密度部)の形状は平面状であり、X方向及びY方向における長さに対して、Z方向における長さが短くなっている。具体的に、
図6AのXY平面において繊維塊100のうち中央部101に外接する円の直径をRcとし、起毛部102に外接する円の直径をRoとし、
図6BのXZ平面において繊維塊100のZ方向における長さ(幅)をHoとしたときに、RoよりもHoが短くなっている(Ro>Ho)。すなわち、X方向及びY方向において起毛部102が占める領域の最大幅(Ro)は、Z方向において起毛部102が占める領域の最大幅Hoよりも大きい。なお、繊維塊100の形状は一定ではないため、起毛部102のX方向における最大長さと、Y方向における最大長さとは必ずしも一致しないが、本明細書中では、説明の便宜上、起毛部102の外接円の直径Roを繊維塊100のX方向及びY方向(平面方向)における最大長さとする。
【0112】
また、
図6A及び
図6Bに示される繊維塊100において、起毛部102における繊維密度に大きな偏りがない場合、繊維塊100の平面方向(XY方向)における起毛部102の繊維の総量(重量)は、繊維塊100の厚さ方向(Z方向)における起毛部102の繊維の総量(重量)よりも大きい。このような繊維塊100(高密度部)が吸収体10の内部で低密度部と隣接して配置されている場合、繊維塊100の厚さ方向(Z方向)における繊維密度の勾配が、平面方向(X,Y方向)における繊維密度の勾配よりも大きくなる。したがって、繊維塊100は、厚さ方向において毛細管現象がより強く作用しやすく、厚さ方向に水分を吸収しやすくなっている。また、繊維塊100が水分を吸収した際には、中央部101に引き込まれて保持された水分は、平面方向の中央から外側に拡散し難くなる。中央部101から平面方向に放射状に広がる起毛部によって、平面方向の中央から外側への水分の移動が抑制されるためである。
【0113】
平面方向及び厚さ方向における繊維密度の勾配は、例えば、以下の方法によって求めることができる。先ず、マイクロスコープを用いて、平面方向における高密度部の面積Sh1とし、平面方向における全体(高密度部+低密度部)の面積Sh2を測定する。そして、Sh1/Sh2を算出して、平面方向における密度勾配とする。同様に、マイクロスコープを用いて、厚さ方向における高密度部の面積St1とし、厚さ方向における全体(高密度部+低密度部)の面積St2を測定する。そして、St1/St2を算出して、厚さ方向における密度勾配とする。そして、算出されたSh1/Sh2とSt1/St2とを比較して、値が大きい方が低密度面積の比率が小さい、すなわち粗密の勾配が小さいものと判断することができる。
【0114】
そして、吸収体10(吸収性コア)に含まれる複数の繊維塊100のうち、吸収体10(吸収性コア)の厚さ方向に対して繊維塊100の厚さ方向(Z方向)が沿うように配置されている割合(繊維塊100の数量)は、吸収体10(吸収性コア)の厚さ方向と垂直な方向に対して繊維塊100の厚さ方向(Z方向)が沿うように配置されている割合(繊維塊100の数量)よりも大きい。すなわち、吸収体10の平面方向(長手方向,幅方向)と、繊維塊100の平面方向(X方向,Y方向)とが揃うように繊維塊100が配置されやすくなっている。これにより、吸収体10は、厚さ方向において水分をより吸収しやすく、吸収した水分を長手方向及び幅方向に拡散させにくくなり、ナプキン1の吸収性が向上する。なお、吸収体の厚さ方向に対して、繊維塊100の厚さ方向が沿っている状態とは、吸収体の厚さ方向と、繊維塊100の厚さ方向とのなす角度が、45度未満である状態を言う。また、吸収体10に含まれる繊維塊100のうち、吸収体10の平面方向と、繊維塊100の平面方向とが揃っている割合は、吸収体10を所定の大きさ(例えば1cm角)に切り出して、その中に含まれる繊維塊100の各々の厚さ方向と、吸収体10の厚さ方向との関係を確認することによって、求めることができる。
【0115】
また、
図6Aの平面方向(XY方向)において、中央部101の外接円の直径Rcの方が、起毛部102の外接円の直径Roと中央部101の外接円の直径Rcとの差よりも大きくなるようにすると良い((Ro-Rc)<Rc)。すなわち、繊維塊100の平面方向において、中央部101が形成されている領域の幅が、起毛部102が形成されている領域の幅よりも大きくなるようにする良い。このような場合、繊維塊100に占める起毛部102の割合が小さくなるため、起毛部102を構成する繊維と、その周囲の低密度部(吸収体10)の繊維とが交絡する箇所が少なくなる。したがって、繊維塊100と低密度部との結合が弱くなり、吸収体10が全体として柔軟になる。これにより、ナプキン1の柔軟性をより高めることができる。
【0116】
一方、
図6Aの平面方向(XY方向)において、中央部101の外接円の直径Rcが、起毛部102の外接円の直径Roと中央部101の外接円の直径Rcとの差以下となるようにしても良い((Ro-Rc)≧Rc)。すなわち、繊維塊100の平面方向において、中央部101が形成されている領域の幅が、起毛部102が形成されている領域の幅以下となるようにしても良い。この場合、繊維塊100に占める起毛部102の割合が大きく、起毛部102を構成する繊維と、その周囲の低密度部(吸収体10)の繊維とが交絡する箇所が多くなる。したがって、吸収体10の内部において、繊維塊100の位置が固定されやすくなり、吸収体10がよれたり変形したりし難くなる。例えば、着用者がナプキン1を着用した状態で身体を大きく動かしたとしても、吸収体10の型崩れ等を生じ難くすることができる。このように、ナプキン1が使用される態様に応じて、吸収体10に含まれる繊維塊100の構成を調整するようにしても良い。
【0117】
また、吸収体10に含まれる複数の繊維塊100のうち少なくとも何れかについて、厚さ方向において以下のように配置することにより、吸収体10の吸収性能を向上させることができる。
図7A~
図7Cは、吸収体10の厚さ方向における繊維塊100の配置について説明する図である。
【0118】
図7Aは、繊維塊100が吸収体10の厚さ方向の肌側に隣接するシート部材と接するように配置されている場合について示す概略断面図である。同
図7Aの場合、吸収体10の肌側に隣接するシート部材(例えば、セカンドシート4やトップシート3)に排泄された経血等の水分は、厚さ方向の非肌側に隣接する、繊維塊100(高密度部)によって吸収体10の内部引き寄せられ、繊維塊100の中央部101に保持されるため、肌側のシート(セカンドシート4やトップシート3)の表面には水分が残りにくくなる。また、保液性繊維が高密度に集中した中央部101に保持された水分は、中央部101の外側に移動し難いため、吸収体10の内部から肌側のシートに水分が戻ってしまう、所謂、リウェットは生じ難い。したがって、繊維塊100が、吸収体10の厚さ方向の肌側に隣接するシート部材と接して設けられていることにより、ナプキン1の着用時において着用者の肌に水分が接触し難くなり、かぶれ等の肌トラブルが生じ難く、着用者に不快感を生じさせることを抑制できる。
【0119】
図7Bは、繊維塊100が吸収体10の厚さ方向の非肌側に隣接するシート部材と接するように配置されている場合について示す概略断面図である。
図7Bでは、排泄された経血等の水分は、吸収体の肌側から非肌側へと透過して、吸収体10の厚さ方向の非肌側に隣接するシート部材(例えば、カバーシート6)と接して設けられた繊維塊100(高密度部)に保持される。すなわち、吸収体10の厚さ方向の非肌側に水分が集まりやすくなる。したがって、ナプキン1の着用時に着用者の肌と接する吸収体10の肌側面には、水分が残りにくくなる。また、肌側から最も遠い非肌側面のカバーシート6付近に水分が保持されるため、リウェット等も生じ難い。したがって、繊維塊100が吸収体10の厚さ方向の非肌側に隣接するシート部材と接して設けられている場合も、ナプキン1の着用時において着用者の肌に水分が接触し難くなり、かぶれ等の肌トラブルが生じ難く、着用者に不快感を生じさせることを抑制できる。
【0120】
図7Cは、繊維塊100が吸収体10の厚さ方向の肌側面及び非肌側面にそれぞれ隣接するシート部材と接するように配置されている場合について示す概略断面図である。同
図7Cでは、一つの繊維塊100が肌側面と非肌側面との両方に接している場合について示されているが、複数の繊維塊100がそれぞれ肌側面及び非肌側面の何れかに接しているのであっても良い。この場合、吸収体10の厚さ方向において、繊維塊100が占める割合が高くなり、吸収体10の厚さ方向の広範囲にわたって水分を保持しやすくなる。つまり、吸収体10に繊維塊100が存在していない場合と比較して、吸収体10の厚さ方向における保水容量を高くすることができる。さらに、
図6A及び
図6Bで説明したような効果も得られるため、吸収体10の吸収性をより高めることができると共に、着用者に不快感を生じさせにくくすることができる。
【0121】
また、
図1で説明したようにナプキン1は、トップシート3(及びセカンドシート4)と吸収体10(吸収性コア)とを一体的に圧搾する圧搾部40が複数設けられている。これらの圧搾部40には、
図1のように所定の幅を有しつつ、長手方向に延びる線状圧搾部41(所謂ヒンジ)が含まれている。線状圧搾部41は、ナプキン1の着用時に、着用者の身体形状に応じて吸収体10が折れ曲がって変形する際の折り曲げ誘導部としての機能を有すると共に、吸収体10によって吸収された経血等の水分を当該線状圧搾部41に沿って移動させる機能を有する。これにより、経血等が吸収体10の1か所で集中して吸収され、当該箇所における吸収容量を超えてしまうことを抑制できる。すなわち、経血等の水分を吸収体10の広範囲に分散させることにより、吸収体10の広い領域で水分を吸収できるようにしている。
【0122】
しかしながら、線状圧搾部41では、厚さ方向の肌側からエンボス加工等が行われていることから、吸収体10の他の領域よりも密度が高く、水分が移動しやすいため、線状圧搾部41に沿って経血等の水分が過度に拡散してしまう場合がある。すなわち、経血等の水分が吸収体10の厚さ方向に吸収されず、平面方向(長手方向や幅方向)に拡散しやすくなってしまうおそれがある。
【0123】
これに対して、本実施形態では、吸収体10の厚さ方向において、少なくとも一部の繊維塊100(高密度部)が、圧搾部40(線状圧搾部41)と接触するように設けられていることにより、水分の拡散をコントロールすることができる。
図8Aは、圧搾部40(線状圧搾部41)が設けられている領域における吸収体10の概略断面図である。
図8Aでは、厚さ方向において、線状圧搾部41の非肌側に接するように繊維塊100が設けられている。この場合、線状圧搾部41に沿って平面方向に移動する水分の一部は、繊維塊100に引き寄せられるようにして厚さ方向の肌側から非肌側に移動する(吸収される)。したがって、線状圧搾部41に沿って、水分が吸収体10の平面方向に過度に拡散してしまうことが抑制され、吸収体10の吸収性を高めることができる。
【0124】
なお、線状圧搾部41(ヒンジ)では、吸収体10の厚さ方向における全域がエンボス加工等によって連続的に圧搾されているため、以下のような問題が生じるおそれもある。すなわち、ナプキン1の着用時に、着用者の肌や、バックシート5との間に隙間が生じやすい。また、線状圧搾部41では吸収体10の厚みが薄くなるため、吸収体10の平面方向(長手方向及び幅方向)で見た場合の保水容量が少なくなる。また、線状圧搾部41では吸収体10が押し固められているため、肌触りが悪化しやすい。これに対して、繊維塊100と線状圧搾部41とが接触していれば、繊維塊100の中央部101(高密度領域)及び中央部101を取り囲む起毛部102(低密度領域)の作用により、上記のような問題は生じ難くなる。
【0125】
また、圧搾部40には、強く圧搾された高圧搾部45と、高圧搾部45よりも吸収性コアが低密度に圧搾された低圧搾部46とが含まれている場合がある。
図8Bは、高圧搾部45及び低圧搾部46を有する圧搾部40(線状圧搾部41)が設けられている領域における吸収体10の概略断面図である。同
図8Bにおいて、厚さ方向の肌側から非肌側に深く圧搾されている領域が高圧搾部45を表し、高圧搾部45よりも浅く圧搾されている領域が低圧搾部46を表している。仮に、圧搾部40がすべて高圧搾部45であった場合、当該高圧搾部45では、吸収体10が過度に折れ曲がってしまい、吸収体10が破れやすくなったり、着用者の身体の微妙な凹凸に吸収体10がフィットし難くなったりするおそれがある。これに対して、低圧搾部46が設けられていることにより、吸収体10の過度な変形が抑制され、吸収体10を破れにくくすることができる。
【0126】
そして、本実施形態のナプキン1では、少なくとも一部の繊維塊100(高密度部)が、低圧搾部46と厚さ方向に接するように設けられている。
図8Bの例では、低圧搾部46と繊維塊100とが厚さ方向において接しており、さらに高圧搾部45と繊維塊100とが幅方向において接している。このような構成によれば、高圧搾部45及び低圧搾部46に沿って平面方向に移動する経血等の水分を、繊維塊100によって吸収体の厚さ方向に引き込みやすくなり、吸収体10の柔軟なフィット性と吸収性とを両立させることができる。
【0127】
なお、ナプキン1は、幅方向に沿った複数の折り目を有しており、当該折り目によって、長手方向に折り畳まれた状態で個包装され、市場に流通する。例えば、長手方向におけるウイング部30の両端部付近に設けられる第1折り目、及び第2折り目(共に不図示)によって、長手方向に三つ折りに畳まれる。すなわち、第1折り目、及び第2折り目は、吸収体10を折り曲げるための折り曲げ誘導部である。このような折り曲げ誘導部が設けられている場合、繊維塊100(高密度部)が、折り曲げ誘導部と厚さ方向に接するように配置されていても良い。このようにすれば、折り曲げ誘導部(折り目)においても吸収体10の内部に水分が引き込まれやすくなり、該折り目の肌側表面に水分が滞留してしまうことを抑制できる。
【0128】
そして、このような場合、折り曲げ誘導部における吸収体10の平均密度よりも、繊維塊100の平均密度が高いことが好ましい。このような構成であれば、仮に、排泄液が折り曲げ誘導部に流れ込んだとしても、繊維塊100によって当該排泄液が吸収されやすくなるため、折り曲げ誘導部に沿って排泄液が幅方向に拡散してしまうことが抑制される。これにより、排泄液の漏れを抑制することができる。
【0129】
また、折り曲げ誘導部の他の形態として、吸収体10のうち他の領域と比較して坪量が低くなった低坪量領域(不図示)が設けられていても良い。例えば、吸収体の幅方向中央において、長手方向に沿った低坪量領域が設けられている場合、吸収体10が幅方向に山型に折れ曲がりやすくなり、ナプキン1の着用時において、吸収体10が着用者の股間部にフィットしやすくなる。このような低坪量領域が設けられている場合、繊維塊100(高密度部)が、低坪量領域と厚さ方向に接するように配置されていても良い。このようにすれば、折り曲げ誘導部(低坪量領域)においても吸収体10の内部に水分が引き込まれやすくなり、該低坪量領域の肌側表面に水分が滞留してしまうことを抑制できる。
【0130】
また、本実施形態のナプキン1において、吸収体10(吸収性コア)の長手方向の中央領域における単位面積当たりの繊維塊100の重量が、長手方向の両端領域における単位面積当たりの繊維塊100の重量よりも大きくなるようにすると良い。例えば、吸収体10の長手方向中央領域において、両端領域よりも厚みを増すことによって、当該中央領域に含まれる繊維塊100の量を増やしても良いし、長手方向中央領域において両端領域よりも繊維塊100の密度が高くなるようにしても良い。このようにすれば、吸収体10の長手方向において、両端領域よりも中央領域に経血等の水分が保持されやすくなるため、経血等が長手方向の外側に漏れてしまうことを抑制しやすくすることができる。
【0131】
なお、吸収体10の長手方向の中央領域とは、吸収体10を長手方向に3等分したときの中央部分の領域のことを言い、長手方向の両端領域とは、吸収体10を長手方向に3等分したときの両側の領域のことを言う。
【0132】
同様に、本実施形態のナプキン1において、吸収体10(吸収性コア)の幅方向の中央領域における単位面積当たりの繊維塊100の重量が、幅方向の両端領域における単位面積当たりの繊維塊100の重量よりも大きくなるようにすると良い。このようにすれば、吸収体10の幅方向において、両端領域よりも中央領域に経血等の水分が保持されやすくなるため、経血等が幅方向の外側に漏れてしまうことを抑制しやすくすることができる。
【0133】
なお、吸収体10の幅方向に中央領域とは、吸収体10を幅方向に3等分したときの中央部分の領域のことを言い、幅方向の両端領域とは、吸収体10を幅方向に3等分したときの両側の領域のことを言う。
【0134】
また、本実施形態のナプキン1において、繊維塊100の平均の密度(中央部101及び起毛部102の平均密度)は、吸収体10の平均密度よりも高い。これにより、吸収体10の全体として、毛細管現象によって低密度部から高密度部(繊維塊100)へ水分が移動しやすくなり、吸収体10の吸収性を高めることができる。
【0135】
また、繊維塊100の最大外径(
図6AにおけるRoの最大値)は、吸収体10に含まれる高吸収性ポリマー粒子(SAP)が水分を吸収して膨潤する前の最大外径よりも大きいことが望ましい。吸収体10には、複数の繊維塊100及びSAPが混在しているが、仮に、膨潤する前のSAPの外径が繊維塊100の外径よりも大きい場合、膨潤後のSAPの外径はさらに大きくなるため、膨潤したSAP同士が互いに接触しやすくなる。この場合、SAP同士が接触している部分では、SAPと水分とが接触し難くなる。すなわち、SAP表面における水分との接触面積が小さくなり、水分の吸収が阻害される、所謂「ゲルブロッキング」が生じて、SAPによる吸収性が低下するおそれがある。
【0136】
これに対して、繊維塊100の外径が膨潤前のSAPの外径よりも大きければ、SAPが膨潤した際に、隣り合う2つのSAPの間に繊維塊100が配置される可能性が高くなり、SAP同士が接触し難くなる。すなわち、ゲルブロッキングが生じることを抑制しやすくなる。これにより、SAPの吸収性が低下してしまうことが抑制され、吸収体10全体として、水分の吸収効率を高めることができる。
【0137】
また、本実施形態の吸収体10には、平均繊維長が短い(平均繊維長が2mm未満)広葉樹保液性繊維の他に、広葉樹以外からなる保液性繊維であって、広葉樹繊維よりも平均繊維長が長い保液性繊維が含まれている。広葉樹繊維よりも平均繊維長が長い保液性繊維としては、例えば、針葉樹からなる針葉樹保液性繊維や、レーヨン繊維を例示できる。このように繊維長が短い広葉樹保液性繊維と、繊維長が長い保液性繊維(針葉樹保液性繊維等)とが混在していることにより、両者が交絡しやすくなり、吸収体10の形状が維持されやすくなる。したがって、繊維長が長い保液性繊維のみによって吸収体が形成されている場合と比較して柔軟性が高く、繊維長が短い保液性繊維のみによって吸収体が形成されている場合と比較して型崩れが生じ難い吸収体10を実現することができる。すなわち、吸収体10の吸収性と柔軟性とを両立させやすくすることができる。
【0138】
また、広葉樹繊維よりも平均繊維長が長い保液性繊維として、疎水性の熱可塑性繊維が含まれていても良い。このような構成であれば、平均繊維長が短い繊維と、平均繊維長が長い繊維とが絡み合って交絡することにより、吸収体10の型崩れが生じ難くなるのに加えて、疎水性繊維が含まれていることにより、吸収体10における水分の拡散性を向上させることができる。これにより、吸収体10の広範囲に水分が拡散しやすくなり、吸収体10の全体に亘って水分が吸収・保持されやすくなる。したがって、吸収体10の吸収性をより向上させることができる。
【0139】
また、本実施形態のナプキン1では、少なくともトップシート3及び吸収体10(吸収性コア)を厚さ方向に一体的に圧搾している圧搾部40において、複数の熱可塑性繊維が互いに融着している。圧搾部40を形成する際に、熱可塑性繊維同士が互いに融着することにより、トップシート3と吸収体10との一体性が強くなるとともに、吸収体10の形状が安定しやすくなる。これにより、例えばナプキン1を着用した状態で着用者が身体を大きく動かした場合であっても、吸収体10が型崩れを生じたり吸水性が悪化したりすることを抑制しやすくなる。
【0140】
なお、吸収体10のうち圧搾部40以外の部分で熱可塑性繊維同士が熱融着していると、当該熱融着が発生している箇所において、吸収体10が硬くなったり、フィルム化して液拡散性が低下したりするといった問題が生じるおそれがある。一方、吸収体10のうち圧搾部40は、圧搾して硬くすることによって吸収体10の変形を即す部位であることから、当該部位において熱可塑性繊維同士が熱融着して硬くなったり、液拡散性が低下したりすることによる影響は小さい。したがって、ナプキン1の圧搾部40において熱可塑性繊維が互いに融着していたとしても問題は生じ難い。
【0141】
また、広葉樹保液性繊維の平均繊維長は、圧搾部40の幅よりも小さいことが望ましい。例えば、上述した線状圧搾部41(
図1参照)の幅方向における長さ(幅)は1.0mm~2.0mm程度であり、広葉樹保液性繊維の平均繊維長(本実施形態においては0.79mm)よりも大きくなっている。このような構成であれば、保液性繊維が圧搾部40の幅方向の両端部と重複して配置される確率が低くなる。すなわち、圧搾部40の幅方向の両端部(つまり、圧搾部と非圧搾部との界面)を保水性繊維が跨いで配置されることが抑制されやすくなる。仮に、圧搾部と非圧搾部との界面で保水性繊維の跨ぎが生じると、跨ぎが生じない場合に比べて、当該界面が硬くなってしまう。これに対して、圧搾部40と非圧搾部の界面を跨ぐ保水性繊維を低減させることにより、圧搾部が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0142】
また、吸収体10の厚さ方向において、繊維塊100の存在密度が勾配を有していても良い。吸収体10の厚さ方向の肌側表面付近における繊維塊100の密度が、厚さ方向の他の領域における密度よりも高ければ、肌側表面から経血等の液体を吸収しやすくすることができる。また、吸収体10の厚さ方向の非肌側表面付近における繊維塊100の密度が、厚さ方向の他の領域における密度よりも高ければ、着用者の肌からより遠い位置に液体を退けやすくすることができる。
【0143】
<変形例>
前述の実施形態では、吸収体10の形状が、
図2に示されるような直方体形状(断面が長方形)である場合について説明されていたが、吸収体10が、厚さ方向の肌側に突出した部分を有するように変形しても良い。
図9は、吸収体10の変形例について表す概略断面図である。変形例の吸収体10は、左右方向の中央部(
図1における線状圧搾部41,41の間の領域)に吸収体基部10Lよりも厚さ方向の肌側に盛り上がった吸収体中高部10Hを有している。そして、吸収体中高部10Hと吸収体基部10Lとの間には、厚さ方向に傾斜した傾斜部10Sが形成されている。吸収体10の中央部にこのような吸収体中高部10Hが設けられていることにより、ナプキン1の着用時において着用者の股間部のクッション性や排泄液の吸収性を高めることができる。
【0144】
また、吸収体10にこのような傾斜部10Sが設けられている場合、当該傾斜部10Sでは繊維塊100(高密度部)の一部が押しつぶされていたり、起毛部102が偏って配置されていたりしても良い。また、繊維塊100の平面方向(
図6AにおけるXY方向)が、傾斜部10Sの傾斜面に沿うように配置されていても良い。
図9では、繊維塊100一部について、中央部101が傾斜部10Sの肌側表面と接するように配置され、起毛部102の一方側端部が吸収体中高部10Hの頂点方向に延び、起毛部102の他方側端部が収体中基部10L方向に延びるように配置された例が示されている。起毛部102がこのように設けられていることにより、吸収体10が吸収体中高部10Hや傾斜部10Sを有している場合であっても、上述の実施形態と同様に、柔軟性と吸収性を両立させることが可能である。
【0145】
===その他の実施形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0146】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例としての生理用ナプキン1が、一対のウイング部30を有していたが、これには限られない。すなわち、ウイング部30については無くても良い。
【0147】
また、前述の実施形態では、吸収体10はセカンドシート4とカバーシート6の二枚のシートで覆われていたが、これには限られない。例えば、吸収体10の肌側面及び非肌側面を一枚のシートで包むようにして覆っても良い。
【0148】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例として、生理用ナプキンや、おりものシート(パンティライナー)、軽失禁パッドについて説明されていたが、これ以外の吸収性物品であっても良い。例えば、母乳パッド、便失禁パット、ショーツ型ナプキン、及び、テープ型やパンツ型等の各種使い捨ておむつにも本発明を適用することが可能である。すなわち、前述の実施形態で説明した高密度部(繊維塊、ノッツ)及び低密度部を含んだ吸収性コアを備えることによって、柔軟性と吸収性を両立させた母乳パッドや便失禁パット等を実現することができる。
【0149】
<機能材について>
前述の実施形態において、吸収性コアの少なくとも一部の領域に機能材が設けられていても良い。機能材としては、例えば、温感剤、冷感剤、香料、抗菌剤等を用いることができる。
【0150】
温感剤は、着用者の生理痛や冷え症状を緩和する機能を有し、着用者の温度感覚に刺激を与えることにより、刺激を受けた着用者が温かく感じる温感刺激剤を含む。温感刺激剤は揮発性を有する溶媒と混合されている(又は、温感刺激剤が揮発性を有している)。
【0151】
温感刺激剤は、温度感受性TRPチャネルの1つであるTRPV1を刺激して活性化させるものであり、カプサイシン、バニリルブチルエーテル等である。すなわち、着用者のTRPV1を活性化して、交換神経系を介して着用者に産熱(着用者が体内で熱を作り出す)を引き起こすものである。温感刺激剤は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましく、例えば、カプシコシド、カプサイシン(LD50:47mg/kg,分子量:305)、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル(LD50:2,188mg/kg,分子量:213)、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル(LD50:4,900mg/kg,分子量:210)、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール(LD50:250mg/kg,分子量:294)、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0152】
溶媒は、温感刺激剤を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。溶媒は、温感刺激剤を、例えば、溶解、分散等することができる。なお、温感刺激剤が揮発性物質の場合、溶媒を必ずしも必要とせず、温感刺激剤のみを用いてもよい。親油性溶媒としては、油脂、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等)、炭化水素(例えば、パラフィン、例えば、流動パラフィン)等が挙げられる。また、親水性溶媒としては、水及びアルコールが挙げられる。上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0153】
冷感剤は、着用者の蒸れやべたつきによる不快感を低減する機能を有し、温感剤と同様に、温度感受性TRPチャネルを刺激するものが好ましい。冷感剤としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル)、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例えば、ミント、ユーカリ)由来の精油等を用いることができる。
【0154】
香料は、大気圧下で香気成分を大気中に揮散して、着用者に排泄物の不快な臭いを感じにくくさせる機能を有する。香料としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができるが、特にグリーンハーバル調の香料(グリーンハーバル様香気)を用いた場合には、精神的な不快症状を身体に物理的刺激を与えることなく、また、経口投与にもよらず、安全かつ簡便に緩和させることが可能になる。これに加え、快適感も得られる。
【0155】
グリーンハーバル様香気は、グリーン様香気(グリーンノート)又はハーバル様香気(ハーバルノート)を含む香調である。グリーン様香気とは、草や若葉のすがすがしい香調をいう。ハーバル様香気(ハーバルノート)とは、ハーブを用いた自然で、薬草的な香り立ちが特徴の香調をいう。グリーンハーバル様香気を有する香料を含有する香料組成物は、シス-3-ヘキセノール、ギ酸シス-3-ヘキセニル、酢酸シス-3-ヘキセニル、プロピオン酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、トランス-2-ヘキセナール、酢酸トランス-2-ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸スチラリル、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-プロパナール(IFF社名、ヘリオナール)、3(4)-(5-エチルビシクロ[2,2,1]ヘプチル-2)-シクロヘキサノール、2-ペンチロキシグリコール酸アリル(IFF社名、アリルアミルグリコレート)、4-メチル-3-デセン-5-オール(Givaudan社名、ウンデカベルトール)、ヘキシルアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(IFF社名、トリプラール)及びフェニルアセトアルデヒドより選択される1種又は2種以上の香料を含有することが好ましい。これらの香料として市販品を用いることもできる。これらが含まれる香料は主にグリーン様香気を生ずるものである。グリーンハーバル様香気を有する香料を含有する香料組成物は、更に、l-メントール、1,8-シネオール、サリチル酸メチル、シトロネラール、カンファー、ボルネオール、酢酸イソボルニル、酢酸ターピニル、オイゲノール、アネトール、4-メトキシベンジルアルコール及びエストラゴールより選択される1種又は2種以上の香料を含有することが好ましい。これらが含まれる香料は、主として、ハーバル様香気を生ずるものである。
【0156】
抗菌剤は、吸収性物品が吸収した体液等で細菌が繁殖することを抑制し、腐敗等による臭気を発生し難くする機能を有する。抗菌剤としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えば、カチオン性抗菌として、第4級アンモニウム塩、グアニジン系抗菌剤(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン)、ビグアナイド系抗菌剤、金属イオン担持物、ヘキセチジン、メタロニダゾール等が挙げられ、第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0157】
第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウム塩構造を分子内に有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられ、下記式(1)~(4)で示される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
[R(CH3)3N+]lX 式(1)
[R(CH3)N+(CH2CH2O)mH[(CH2CH2O)nH]]lX 式(2)
[R(CH3)2N+CH2C6H5]lX 式(3)
[RPy+]lX 式(4)
(式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、Xは、それぞれ独立して、1価または2価の陰イオンを表す。lは、それぞれ独立して、1又は2の整数を表し、m及びnは、それぞれ独立して、2~40の整数を表し、Pyはピリジン環を表す。)
【0158】
また、ビグアナイド系抗菌剤としては、ポリアミノプロピルビグアナイド及びその塩、例えば、塩酸塩、ステアリン酸塩、リン酸塩等、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドステアリン酸塩、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。金属イオン担持物としては、金属イオンを放出しうるもの、例えば、金属塩が挙げられる。上記金属イオンとしては、例えば、銀イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、コバルトイオン、ジルコニウムイオン、セリウムイオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、白金イオン等が挙げられ、銀イオンが好ましい。金属塩としては、例えば、硝酸塩、例えば、硝酸銀、硝酸アルミニウム、硝酸コバルト、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸ニッケル、酢酸塩、例えば、酢酸銀、塩酸塩、例えば、塩化セリウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化銅、硫酸塩、例えば、硫酸銀、硫酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0159】
高密度部(繊維塊、ノッツ)及び低密度部を有する吸収性コアにこのような機能材が設けられていることにより、高密度部に機能材が保持されやすくなるため、吸収性物品において当該機能材の効果をより有効に発揮させることができる。例えば、吸収性コアの高密度部(繊維塊、ノッツ)に抗菌剤が保持されることにより、吸収された尿や経血が溜まっている部分で抗菌作用を生じやすくさせることができる。また、高密度部(繊維塊、ノッツ)に香料、冷感、温感剤が保持され、蓄積されることにより、それらの機能材の効果を長時間持続させやすくすることができる。
【0160】
<高密度部の含有率と吸水性との関係>
吸収体に含まれる高密度部の割合(高密度部の含有率)と、吸収体の吸水性との関係について説明する。具体的には、高密度部(ノッツ)の含有率が異なる4種類のサンプル(吸収体)を用意して、各サンプルについて吸水速度を測定する実験を行い、その結果から吸水性の検証を行った。
【0161】
はじめに、
図4A及び
図4Bで説明した方法に基づいて4種類の吸収体(吸収性コア)を製造し、サンプルとする。吸収体を製造する際には、先ず、
図4Aのようにソーミルを用いてパルプシート(パルプロール)を粉砕加工する。このとき、ソーミルの回転速度を調整して単位時間あたりに粉砕されるパルプの量を変更することで、粉砕されたパルプ中に含まれる高密度部(ノッツ)の含有率を増減させることができる。本実験では、ソーミルの処理量として120kg/hで粉砕したパルプを実施例1、240kg/hで粉砕したパルプを実施例2、360kg/hで粉砕したパルプを実施例3とした。また、60kg/hで粉砕したパルプを比較例とした。そして、これら4種類の粉砕パルプから
図4Bのようにして、それぞれ吸収体を形成する。各吸収体は同じ形状であり、所定の面積(例えば縦200mm×横70mm)を有し、坪量は300g/m
2、厚みは2.0mmとする。
【0162】
次に、これら4種類のサンプルについて、高密度部(ノッツ)の含有率(すなわち、吸収体の全体重量に含まれる高密度部の重量割合)を測定する。高密度部の含有率は、JIS K 0069に規定される試験法に準じたふるい振とう機(例えば、アズワン株式会社製ふるい振とう機SS-HK60)を用いて以下のようにして測定することができる。
【0163】
先ず、電子天秤等を用いて4種類のサンプル(実施例1~3及び比較例の吸収体)の全体重量をそれぞれ測定して記録する。次いで、ふるい振とう機に設けられた14メッシュの篩に実施例1のサンプルを載置する。また、メッシュの下には篩と同様の径を持つ筒を設置しメッシュから下側70mmの高さの筒側面に孔を開け隙間が出来ないように吸引装置(例えば、オオサワ&カンパニー製ワンダーガンW101:吸い込み最小内径22mm、圧力0.5Mpa)を設置する。さらに、メッシュよりも上側50mmの高さにエアー噴出装置(例えば、TONE株式会社製エアーダスターガンAG-101:ノズル長95mm、ノズル内径4mm、圧力0.5Mpa)を設置する。なお、篩に設置されているメッシュは、JIS Z8801に規定されている標準篩用金網を使用する。例えば、14メッシュは、目開1.18mm、線径0.63mm、開孔面積42.3%の金網である。
【0164】
次いで、振幅70mm、60回/分の条件で15分間振とうしながら、エアー噴出装置を満遍なく噴射すると共に、吸引装置で吸引し、吸収体から繊維を分離する。そして、15分経過後に篩(14メッシュ)の上に残留した繊維を「Nots(ノッツ)」(上述の高密度部(繊維塊100)に相当)として、当該Notsの重量を測定して記録する。次いで、14メッシュを通過した繊維を集め、60メッシュの篩に載置して、同様の条件で再度繊維を分離する。そして、15分経過後に篩(60メッシュ)の上に残留した繊維を「Accept(アクセプツ)」とし、重量を測定して記録する。また、篩(60メッシュ)を通過した繊維を「Fine(ファイン)」とし、実施例1のサンプル(吸収体)の全体重量からNots及びAcceptの重量を引いた値をFineの重量として記録する。そして、測定したこれらの重量をそれぞれサンプル(吸収体)の全体重量で割ることで、当該サンプルにおけるNots,Accept,Fineの含有率(重量%)を得ることができる。
【0165】
この動作を4種類のサンプル(実施例1~3及び比較例)について行い、サンプル毎にNots,Accept,Fineの含有率を求める。なお、市販の吸収性物品についても同様の方法でNots(高密度部),Accept,Fineの含有率を測定することが可能である。その場合、製品状態の吸収体の上下に積層されているシート(上述の、トップシート3、セカンドシート4、及びカバーシート6等)を剥がしてから、上述の方法に従って繊維を分離して測定を行う。また、吸収体のサイズが大きい場合は、複数回に分けて測定を行っても良い。
【0166】
4種類のサンプルについてそれぞれNots(高密度部)等の含有率を測定した後、当該サンプルの吸水性を測定する。先ず、各サンプルの上面(厚さ方向の一方側の面)に表面シート(上述のトップシート3に相当、例えば、ユニ・チャーム株式会社製ソフィSPORTSの表面シート等)を載せ、その上に穴あきアクリル板(例えば、中央に40mm×10mmの穴を有する200mm(長さ)×100mm(幅)のアクリル板)を重ねて載置する。次いで、オートビュレット(例えば、柴田化学器械工業株式会社製マルチドジマットE725-1型)を使用して、アクリル板の穴に向けて、人工経血を90ml/分で2ml注入する。「人工経血」としては、イオン交換水1Lに対して、グリセリン80g,カルボキシメチルセルロースナトリウム8g,塩化ナトリウム10g,炭酸水素ナトリウム4g,赤色102号8g、赤色2号2g,黄色5号2gを加えて十分に攪拌したものを使用した。そして、人工経血の注入開始後、表面シート内から人工経血が無くなるまでの時間(ハケ時間)を測定する。吸収体が水分を吸収しやすいほどハケ時間が短くなることから、測定されたハケ時間の長さによって吸収体の吸水性を評価することができる。
【0167】
各サンプルについて測定したNots,Accept,Fineの含有率とハケ時間との関係を表1に表す。表1によると、吸収体におけるNots(高密度部)の含有率が高いほど、ハケ時間が短くなっていることが確認できる。一般的に、生理用ナプキンを着用した際に、体液の吸収速度(すなわちハケ時間)が10秒以下であれば着用者に快適感を生じさせやすく、体液の吸収速度が20秒を超えると着用者に不快感を生じさせやすくなることが知られている。実施例2及び3ではハケ時間が10秒よりも短く吸水性の評価は〇となり、ナプキンとして好適である。また、実施例1でもハケ時間が20秒よりも短いいことからナプキンとして実用可能である。一方、比較例ではハケ時間が20秒以上となり、吸水性の評価は×となる。
【0168】
【0169】
このように、吸収体に含まれるNotsの含有率が、Fineの含有率よりも高い実施例1~3において、吸水性の評価が良好(〇若しくは△)なものとなることが明らかとなった。これは、繊維が60メッシュの篩を通過可能な程度に細かいFineと比較して、繊維が集合したNotsの含有率が高いほど、吸収体の内部に空隙が生じやすく、体液等の水分が通過しやすくなることから、液透過性に優れた吸収体が形成されるためと考えられる。さらに、上述したようにNots(高密度部)自体が液体を保持しやすいことから、Notsの含有率が高いほど保水性に優れた吸収体を形成することができる。
【0170】
したがって、吸収体に含まれるNotsの含有率は、Fineの含有率よりも高いことが望ましい。言い換えると、JIS K 0069の規定に準拠したふるい振とう機を用いて吸収体(吸収性コア)の繊維を分離したときに、14メッシュの篩に残留した繊維(Nots)の重量を吸収体の重量で割った値が、60メッシュの篩を通過した繊維(Fine)の重量を吸収体の重量で割った値よりも大きいことが望ましい。吸収体におけるNots(高密度部)の含有率をこのような関係とすることで、当該吸収体(吸収性コア)の吸水性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0171】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)、
2 サイドシート、3 トップシート、4 セカンドシート、
5 バックシート、6 カバーシート、
10 吸収体(吸収性コア)、
10H 吸収体中高部、10L 吸収体基部、10S 傾斜部、
20 ナプキン本体部、
30 ウイング部、
40 圧搾部、41 線状圧搾部、45 高圧搾部、46 低圧搾部、
61 搬送機構、62 ソーミル、
70 回転ドラム、71 凹部、72 吸引部、
80 材料供給部、80a フード、
81 粒子供給部、
100 繊維塊(高密度部)
101 中央部、102 起毛部、
PS パルプシート