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特許7592887蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム及びこれを用いた揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法
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  • 特許-蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム及びこれを用いた揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム及びこれを用いた揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20241125BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
F23G7/06 103
F23G5/50 Q ZAB
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023553379
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 KR2022012790
(87)【国際公開番号】W WO2023153571
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0018487
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イェ・リン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・フン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ソン・イ
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-169340(JP,A)
【文献】特開2008-275383(JP,A)
【文献】特開平07-301413(JP,A)
【文献】特開2015-071129(JP,A)
【文献】米国特許第05466418(US,A)
【文献】特開2003-057221(JP,A)
【文献】米国特許第06165251(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
F23G 5/50
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の蓄熱式焼却炉(RTO)とこれらを制御する蓄熱式焼却炉(RTO)制御装置を備える揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステムにおいて、
前記蓄熱式焼却炉(RTO)制御装置は、
水素炎イオン化検出器(FID)センサーの有無または信頼度を検証する信頼度検証部と、
蓄熱式焼却炉(RTO)運転データを用いて揮発性有機化合物(VOC)流入量を推定するように学習された第1の揮発性有機化合物(VOC)算出モデルを搭載した第1の仮想センサー部と、
揮発性有機化合物(VOC)燃焼エネルギーを用いて揮発性有機化合物(VOC)流入量を算出する第2の揮発性有機化合物(VOC)算出モデルを搭載した第2の仮想センサー部と、
前記信頼度検証部における検証結果と水素炎イオン化検出器(FID)センサーの有無に応じて、前記第1の仮想センサー部及び第2の仮想センサー部の動作を制御する制御部と、
を備える蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項2】
各蓄熱式焼却炉(RTO)は、
一定の周期ごとに、揮発性有機化合物(VOC)流入量を測定する水素炎イオン化検出器(FID:Flame Ionization Detector)センサー部と、
一定の周期ごとに、蓄熱式焼却炉(RTO)運転データを測定する運転データ測定部と、
を備えてなる、請求項1に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項3】
前記信頼度検証部は、
各蓄熱式焼却炉(RTO)の水素炎イオン化検出器(FID)センサー部から入力される揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値が所定の時間以上変化がない場合、または蓄熱式焼却炉(RTO)運転データに基準範囲以上変化がないにも拘わらず、揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値が基準値を超える場合のうちのどちらか一方にでも該当すれば、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が低いと判断することを特徴とする、請求項2に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記信頼度検証部における検証の結果、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在し、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が高いと判断された場合であれば、前記第1の仮想センサー部から揮発性有機化合物(VOC)流入量を算出し、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在しないか、あるいは、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が低いと判断された場合であれば、前記第2の仮想センサー部から揮発性有機化合物(VOC)流入量を算出する仮想センサー選択部を備えてなる、請求項3に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記仮想センサー選択部において取得した第1の仮想センサー部または第2の仮想センサー部からの揮発性有機化合物(VOC)流入量と、同一の時点に対する水素炎イオン化検出器(FID)センサーの揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値とを互いに比較して、その比較結果を踏まえて、揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値に関する診断警報を生成する診断警報生成部をさらに備えてなる、請求項4に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項6】
前記第1の仮想センサー部の第1の揮発性有機化合物(VOC)算出モデルは、
前記水素炎イオン化検出器(FID)センサー部において測定した揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値と当該揮発性有機化合物(VOC)流入量測定値に対応する蓄熱式焼却炉(RTO)運転データを用いて学習された人工知能ニューラルネットワークモデルであることを特徴とする、請求項4に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項7】
前記第2の仮想センサー部の第2の揮発性有機化合物(VOC)算出モデルは、
蓄熱式焼却炉(RTO)の燃焼エネルギー、燃焼前/後の熱風昇温エネルギー及び揮発性有機化合物(VOC)の燃焼エネルギーから揮発性有機化合物(VOC)流入量を算出することを特徴とする、請求項4に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
【請求項8】
前記第2の仮想センサー部からの揮発性有機化合物(VOC)流入量VOCは、下記の数式(1)により算出されることを特徴とする、請求項7に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)流入量測定仮想センサーシステム。
[数式1]
VOC=VOCin/熱風流入量
VOCin=揮発性有機化合物(VOC)燃焼エネルギー/揮発性有機化合物(VOC)燃焼熱
揮発性有機化合物(VOC)燃焼エネルギー=(燃焼前/後の熱風昇温エネルギー)-燃料燃焼エネルギー
…(1)
【請求項9】
仮想センサーを用いて蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)測定センサーを検証する方法において、
多数の蓄熱式焼却炉(RTO)の各々から一定の周期ごとに測定される運転データ及び揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値を収集するデータ測定及び収集ステップと、
前記収集した各蓄熱式焼却炉(RTO)ごとの揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値に基づいて、当該蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)センサーの信頼度を検証し、その検証結果を基準として、学習ベースの仮想センサーと理論ベースの仮想センサーのうちのどちらか一方を選択する揮発性有機化合物(VOC)センサー検証及び仮想センサー選択ステップと、
前記揮発性有機化合物(VOC)センサー検証及び仮想センサー選択ステップにおいて各蓄熱式焼却炉(RTO)ごとに前記選択した仮想センサーからの揮発性有機化合物(VOC)流入量算出値を取得する仮想センサー予測値取得ステップと、
前記仮想センサー予測値取得ステップを通じて各蓄熱式焼却炉(RTO)ごとに取得した揮発性有機化合物(VOC)流入量算出値と、同一の時点に対して前記収集した揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値とを互いに比較するセンサーデータ比較ステップと、
前記比較の結果、前記揮発性有機化合物(VOC)流入量算出値と前記揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値との間に所定の基準値以上の差が出る場合、前記揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値に関する診断警報を発する診断警報発生ステップと、
を含む蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法。
【請求項10】
前記揮発性有機化合物(VOC)センサー検証及び仮想センサー選択ステップは、
揮発性有機化合物(VOC)センサーが存在し、揮発性有機化合物(VOC)センサーの信頼度が所定の基準以上であれば、学習ベースの仮想センサーを選択し、揮発性有機化合物(VOC)センサーが存在しないか、あるいは、揮発性有機化合物(VOC)センサーの信頼度が所定の基準未満であれば、理論ベースの仮想センサーを選択することを特徴とする、請求項9に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法。
【請求項11】
前記学習ベースの仮想センサーは、
揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値と当該揮発性有機化合物(VOC)センサー測定値に対応する蓄熱式焼却炉(RTO)運転データを用いて学習された人工知能ニューラルネットワークモデルを通じて蓄熱式焼却炉(RTO)運転データを用いて揮発性有機化合物(VOC)流入量を算出することを特徴とする、請求項10に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法。
【請求項12】
前記理論ベースの仮想センサーは、
蓄熱式焼却炉(RTO)の燃焼エネルギー、燃焼前/後の熱風昇温エネルギー及び揮発性有機化合物(VOC)の燃焼エネルギーを用いて、下記の数式(1)により揮発性有機化合物(VOC)流入量VOCを算出することを特徴とする、請求項10に記載の蓄熱式焼却炉(RTO)の揮発性有機化合物(VOC)測定センサーの検証方法。
[数式1]
VOC=VOCin/熱風流入量
VOCin=揮発性有機化合物(VOC)燃焼エネルギー/揮発性有機化合物(VOC)燃焼熱
揮発性有機化合物(VOC)燃焼エネルギー=(燃焼前/後の熱風昇温エネルギー)-燃料燃焼エネルギー
…(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RTOのVOC流入量測定仮想センサーシステム及びこれを用いたVOC測定センサーの検証方法に係り、さらに詳しくは、二種類の方式に基づく仮想センサーを用いてVOC測定センサーの信頼度が検証可能なシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱式焼却炉(Regenerative Thermal Oxidizer、以下、「RTO」と称する。)とは、工程において生じた揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、以下、「VOC」と称する。)ガスを焼却して取り除く装置のことをいう。RTOは、燃焼チャンバー(Chamber)と熱回収率の増大を図るために、蓄熱材からなる所定の数のベッド(Bed)を備える。
【0003】
一方、RTOは、蓄熱材を用いるが故に、急激な温度の変化があるときに安全事故が起きる虞がある。特に、高濃度のVOCが流れ込む場合、数秒内に急激な温度の上昇が起こる可能性がある。RTOに流れ込むVOCの量に対する持続的なモニタリングが必要である。
【0004】
このような不都合を解消するために、一般に、RTOに流れ込むVOCの量をリアルタイムにて測定するセンサーを用いて、VOC流入量をモニタリングする方式を利用している。しかしながら、VOC測定センサーの中で最も信頼度が高いと言われている水素炎イオン化感知器(水素炎イオン化検出器(FID):Flame Ionization Detector)センサーもまた、測定誤差が生じる虞があり、これにより、VOC流入量を正確に把握し難いという不都合がある。
【0005】
関連する先行技術としては、韓国登録特許第10-1607878号公報が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した不都合を解消するために案出されたものであって、VOC測定センサーと並行活用して校正時点の確認に使用可能な仮想センサーシステム及びこれを用いたVOC測定センサー診断方法を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した不都合を解消するために、本発明は、多数のRTOとこれらを制御するRTO制御装置を備えるVOC流入量測定仮想センサーシステムにおいて、RTO制御装置は、水素炎イオン化検出器(FID)センサーの有無または信頼度を検証する信頼度検証部と、RTO運転データを用いてVOC流入量を推定するように学習された第1のVOC算出モデルを搭載した第1の仮想センサー部と、VOC燃焼エネルギーを用いてVOC流入量を算出する第2のVOC算出モデルを搭載した第2の仮想センサー部と、前記信頼度検証部における検証結果と水素炎イオン化検出器(FID)センサーの有無に応じて、前記第1の仮想センサー部及び第2の仮想センサー部の動作を制御する制御部と、を備えるRTOのVOC流入量測定仮想センサーシステムを提供する。
【0008】
このとき、前記各RTOは、一定の周期ごとに、VOC流入量を測定する水素炎イオン化検出器(水素炎イオン化検出器(FID):Flame Ionization Detector)センサー部と、一定の周期ごとに、RTO運転データを測定する運転データ測定部と、を備えてなり、前記信頼度検証部は、各RTOの水素炎イオン化検出器(FID)センサー部から入力されるVOC流入量測定値が所定の時間以上変化がない場合、またはRTO運転データに基準範囲以上変化がないにも拘わらず、VOC流入量測定値が基準値を超える場合のうちのどちらか一方にでも該当すれば、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が低いと判断することを特徴とする。
【0009】
前記制御部は、前記信頼度検証部における検証の結果、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在し、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が高いと判断された場合であれば、前記第1の仮想センサー部からVOC流入量を算出し、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在しないか、あるいは、水素炎イオン化検出器(FID)センサー信頼度が低いと判断された場合であれば、前記第2の仮想センサー部からVOC流入量を算出する仮想センサー選択部を備えてなることが好ましく、前記仮想センサー選択部において取得した第1の仮想センサー部または第2の仮想センサー部からのVOC流入量と、同一の時点に対する水素炎イオン化検出器(FID)センサーのVOC流入量測定値とを互いに比較して、その比較結果を踏まえて、VOC流入量測定値に関する診断警報を生成する診断警報生成部をさらに備えてなることが好ましい。
【0010】
前記第1の仮想センサー部の第1のVOC算出モデルは、前記水素炎イオン化検出器(FID)センサー部において測定したVOC流入量測定値と当該VOC流入量測定値に対応するRTO運転データを用いて学習された人工知能ニューラルネットワークモデルであり、前記第2の仮想センサー部の第2のVOC算出モデルは、RTOの燃焼エネルギー、燃焼前/後の熱風昇温エネルギー及びVOCの燃焼エネルギーからVOC流入量を算出するものであってもよい。
【0011】
また、本発明は、仮想センサーを用いてRTOのVOC測定センサーを検証する方法において、多数のRTOの各々から一定の周期ごとに測定される運転データ及びVOCセンサー測定値を収集するデータ測定及び収集ステップと、前記収集した各RTOごとのVOCセンサー測定値に基づいて、当該RTOのVOCセンサーの信頼度を検証し、その検証結果を基準として、学習ベースの仮想センサーと理論ベースの仮想センサーのうちのどちらか一方を選択するVOCセンサー検証及び仮想センサー選択ステップと、前記VOC検証及び仮想センサー選択ステップにおいて各RTOごとに前記選択した仮想センサーからのVOC流入量算出値を取得する仮想センサー予測値取得ステップと、前記仮想センサー予測値取得ステップを通じて各RTOごとに取得したVOC流入量算出値と、同一の時点に対して前記収集したVOCセンサー測定値とを互いに比較するセンサーデータ比較ステップと、前記比較の結果、前記VOC流入量算出値と前記VOCセンサー測定値との間に所定の基準値以上の差が出る場合、前記VOCセンサー測定値に関する診断警報を発する診断警報発生ステップと、を含むRTOのVOC測定センサーの検証方法を提供する。
【0012】
前記VOCセンサー検証及び仮想センサー選択ステップは、VOCセンサーが存在し、VOCセンサーの信頼度が所定の基準以上であれば、学習ベースの仮想センサーを選択し、VOCセンサーが存在しないか、あるいは、VOCセンサーの信頼度が所定の基準未満であれば、理論ベースの仮想センサーを選択することを特徴とし、前記学習ベースの仮想センサーは、VOCセンサー測定値と当該VOCセンサー測定値に対応するRTO運転データを用いて学習された人工知能ニューラルネットワークモデルを通じてRTO運転データを用いてVOC流入量を算出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、VOC測定センサーと並行活用して校正時点の確認に使用し、究極的には、VOC測定センサーに取り替え可能な仮想センサーを提供する。したがって、既存のVOC測定センサーの測定誤差を最小化させて、RTOのVOC流入量を正確に把握可能にすることで、安全事故の発生リスクを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るRTOのVOC流入量測定仮想センサーシステムの全体的な構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るRTO及びRTO制御装置の内部構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第1のVOC算出モデル学習過程を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第1のVOC算出モデルを適用した結果の例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るVOCセンサーの信頼度検証基準の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るVOCセンサーの信頼度検証基準の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0017】
1.本発明において使用する用語
【0018】
1.1.RTO運転データ/派生因子
【0019】
RTO運転データとは、RTO動作中に、RTOの内部に配置されている各種のセンサーの測定値を意味する。
【0020】
具体的に、RTO運転データは、RTOブロワー(Blower)駆動電力量、LNG燃料投入量、ベッドインレット(Bed Inlet)温度/圧力、チャンバー(Chamber)温度、チャンバーアウトレット(Chamber Outlet)温度、ベッド(Bed)の上/下部の温度などを網羅する。このため、各種のセンサーは、ブロワー電力量、LNG燃料量、ベッドインレット温度/圧力、チャンバー温度、チャンバーアウトレット温度、ベッドの上/下部温度センサーなど運転データの測定に必要とされるセンサーから構成されてもよい。
【0021】
一方、派生因子は、RTO運転データから得られる値であって、チャンバーの温度変化(dT)、ベッドの上/下部の温度差(Tbed_diff)などを含んでいてもよい。
【0022】
1.2.VOCセンサー
【0023】
VOCセンサーとは、多数のRTOの各々に配置されて当該RTOに流れ込むVOC量をリアルタイムにて測定する物理センサーのことをいう。本発明において、VOCセンサーは、通常、周知の水素炎イオン化検出器(水素炎イオン化検出器(FID):Flame Ionization Detector)により実現可能である。
【0024】
本発明において、「VOCセンサー」は、「水素炎イオン化検出器(FID)センサー部」と混用されることがある。
【0025】
1.3.仮想センサー
【0026】
仮想センサーは、VOCセンサーと並行活用して校正時点の確認に使用し、究極的には、物理センサーに取り替え可能なように開発されたセンサーであって、RTO運転データを活用して、VOC流入量を逆算する概念に基づいて実現される。
【0027】
このような仮想センサーは、RTO運転データ及びそれから得られた派生因子を活用してマシンラーニング手法によりVOC流入量を推定する学習ベースの仮想センサーと、第1原則に基づいてRTOの内部において生じる燃料の燃焼エネルギーと熱風昇温エネルギーとの差を基にVOC流入量/濃度を予測する理論ベースの仮想センサーと、から構成される。
【0028】
2.本発明に係るRTOのVOC流入量測定仮想センサーシステム
【0029】
本発明に係るRTOのVOC流入量測定仮想センサーシステムは、多数の蓄熱式焼却炉RTO,RTO,...,RTOの各々のRTO(Regenerative Thermal Oxidizer)のVOC流入量をモニタリングするシステムである。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るRTOのVOC流入量測定仮想センサーシステムの全体的な構成を概略的に示す図である。
【0031】
図1を参照すると、本発明のシステムは、大きく、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nと、これらを制御するRTO制御装置200と、から構成される。
【0032】
2.1.蓄熱式焼却炉(RTO:Regenerative Thermal Oxidizer)
【0033】
図2の(a)は、本発明の一実施形態に係るRTOの内部構成を概略的に示す図である。
【0034】
図2の(a)を参照すると、本発明のシステムに組み込まれる各々のRTO 100_1,100_2,...,100_nは、下記のような構成要素を備えていてもよい。
【0035】
2.1.1.水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110
【0036】
水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110は、水素炎イオン化検出器(水素炎イオン化検出器(FID):Flame Ionization Detector)から構成されて、VOC流入量を周期的にリアルタイムにて測定するVOCセンサーである。例えば、図3に示すように、ブロワー(Blower)の近くに配置されて流れ込むVOC量を検出/測定することができる。このような水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110により測定される値を、以下では、水素炎イオン化検出器(FID)センサー測定値またはVOCセンサー測定値またはVOC1と指し示すことができる。
【0037】
2.1.2.運転データ測定部120
【0038】
運転データ測定部120は、ブロワー駆動電力量、LNG燃料量、ベッドインレット温度/圧力、チャンバー温度、チャンバーアウトレット温度、ベッドの上/下部の温度などを含むRTO運転データの測定に必要な各種のセンサーから構成されて、一定の周期ごとに運転データをリアルタイムにて測定する構成要素である。
【0039】
2.2.RTO制御装置200
【0040】
図2の(b)は、本発明の一実施形態に係るRTO制御装置の内部構成を概略的に示す図である。
【0041】
図2の(b)を参照すると、本発明のRTO制御装置200は、下記のような構成要素を備えていてもよい。
【0042】
2.2.1.第1の仮想センサー部210
【0043】
第1の仮想センサー部210は、RTO運転データを活用して、マシンラーニング手法によりVOC流入量を推定する学習ベースの仮想センサーである。
【0044】
より具体的に、第1の仮想センサー部210は、各RTOから取得されるRTO運転データ及び水素炎イオン化検出器(FID)センサー測定値を用いて第1のVOC算出モデルを生成し、生成した第1のVOC算出モデルを通じて、各RTOの運転データから学習ベースのセンサー出力値をもってVOC流入量を推定/予測する。
【0045】
このような第1の仮想センサー部210は、下記の細部的な構成要素を備えていてもよい。
【0046】
ア. 第1の運転データ入力部
【0047】
第1の運転データ入力部は、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nの各々の運転データ測定部120からリアルタイムにて測定される運転データを入力される構成要素である。
【0048】
イ. VOC流入量推定ML学習部
【0049】
VOC流入量推定ML学習部は、第1の運転データ入力部から入力された各RTOの運転データ及び前記運転データから生成した派生因子を入力とし、水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110の水素炎イオン化検出器(FID)センサー測定値を出力とするマシンラーニングをしてVOC流入量推定モデルである第1のVOC算出モデルを生成する。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態に係る第1のVOC算出モデル学習過程を示す図である。
【0051】
図3を参照すると、第1のVOC算出モデルを学習する過程は、RTO運転データとそれから生成した派生因子とから構成された入力変数を2つの隠れたレイヤー(Hidden Layer)に入力し、水素炎イオン化検出器(FID)センサー測定値(VOC1)を真値として指導学習を行う方式により行われる。
【0052】
すなわち、第1のVOC算出モデルは、水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110のVOC流入量測定値と当該VOC流入量測定値に対応するRTO運転データを用いて学習された人工知能ニューラルネットワークモデルである。
【0053】
ここで、派生因子は、上述したように、RTO運転データのチャンバー温度から取得されるチャンバー温度変化(dT)、ベッドの上下部の温度から得られるベッドの上下部の温度の差を含んでいてもよい。
【0054】
このような第1の仮想センサー部210は、学習された第1のVOC算出モデルを用いて、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nから取得されるRTO運転データから当該RTOのVOC流入量を推定/予測し、その出力値を学習ベースの仮想センサー予測値(VOC2)と指し示すことができる。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態に係る学習されたVOC流入量推定モデル(第1のVOC算出モデル)を適用した結果の例を示す図である。
【0056】
図4の(a)に示すグラフを参照すると、薄い灰色のグラフは、一定の期間の間のVOCセンサー測定値であり、濃い灰色のグラフは、VOCセンサー測定値と当該VOCセンサー測定値に対応するRTO運転データを用いた指導学習過程におけるVOC流入量予測値であり、 黒色のグラフは、学習されたモデルを用いて、実際のRTO運転データから推定/算出されたVOC流入量を示す。物理センサーであるVOCセンサーの実際の測定値(灰色のグラフ)と学習されたモデルからの予測値(黒色のグラフ)とを互いに比較したとき、所定の基準値以上の差が出る時点を確認することができ、これを通じて、当該時点のVOCセンサー測定値に対する診断/検証をして、VOCセンサー測定の誤差を最小化させることができる。なお、図4の(b)に示すように、VOCセンサーの実際の測定値と学習されたモデルを適用して推定されたVOC流入量予測値とを比較することで、校正時点を確認することが可能であるので、これを通じて、VOCセンサー測定値の診断/検証を行って、測定誤差を減らすことができる。
【0057】
2.2.2.第2の仮想センサー部220
【0058】
第2の仮想センサー部220は、VOC燃焼エネルギーを用いてRTOのVOC流入量を算出する第2のVOC算出モデルを搭載した理論ベースの仮想センサーである。より具体的に、RTOの内部において生じる燃料の燃焼エネルギーと熱風昇温エネルギーとの差を基にVOC流入量および/または濃度を予測するように構成される。
【0059】
このような第2の仮想センサー部220は、下記の細部的な構成要素を備えていてもよい。
【0060】
ア. 第2の運転データ入力部
【0061】
第2の運転データ入力部は、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nの各々の運転データ測定部120からリアルタイムにて測定されるRTO運転データを入力される構成要素である。
【0062】
イ. 燃焼エネルギー演算部
【0063】
燃焼エネルギー演算部は、下記の数式1により燃料(LNG)の燃焼エネルギー(Q)を演算する。
【0064】
[数式1]
=LNG投入量×43,950 …1
【0065】
ここで、43,950とは、単位質量の物質温度を1℃高めるのにかかる熱エネルギーである比熱容量のことをいう。LNG燃料は、1Nm当たりに燃焼により生じさせるエネルギーが43.95MJである。これを単位kJに変換しかつ計算して、比熱容量として43,950の値を使用し、各々の単位は、LNG投入量[Nm/hr]、43,950[kJ/Nm]であるため、LNG燃料の燃焼エネルギー単位は、[kJ/hr]となる。
【0066】
一方、LNG投入量(流量)は、通常のLNG流入量測定器(センサー)を用いて測定可能である。図示はしないが、LNG流入量測定センサーは、RTOと直結された配管に配置されてLNG流量を測定することができる。完全燃焼のためには、LNG投入量とともに、空気の投入量をも調節しなければならないため、流量センサーは、通常、RTOの近くに位置することが好ましい。
【0067】
ウ. 燃焼前/後の熱風昇温エネルギー演算部
【0068】
燃焼前/後の熱風昇温エネルギー演算部は、下記の数式2によりRTOに流れ込む空気が昇温に必要なエネルギー(Q)を演算する。
【0069】
[数式2]
【数1】
【0070】
ここで、mは、空気流量を意味する。これは、空気流量センサーまたはブロワー(Blower)入力端圧力センサーと出力端圧力センサーとの差圧データから算出される。
【0071】
また、Cpは、
【数2】
から計算される。これは、理想気体の状態方程式(圧力=密度X気体定数X温度)を用いて空気の密度を求める部分であって、101,325(Pa)は圧力、286.9(kJ/kg)は気体定数、273.15は絶対零度値を示す。但し、上記の数式2は、空気流量(m)の単位が[kg/hr]である場合に相当するものである。空気流量(m)の単位が[m/hr]である場合には、上記の数式2に空気密度値(例えば、120)がさらに掛け算されることがある。
【0072】
また、T1は、燃焼前の温度であるベッドインレット(Bed inlet)温度であり、T2は、燃焼後の温度であるチャンバーアウトレット(Chamber outlet)温度を意味する。ブロワー(Blower)に流れ込む空気は、RTOチャンバー内のベッドインレット(Bed inlet)に流れ込み、チャンバーアウトレット(Chamber outlet)に抜け出る仕組みであるため、ベッドインレットとチャンバーアウトレットの各々の位置に温度センサーを配置して、燃焼前/後の温度をそれぞれ測定する。さらに具体的に、RTOの内部に位置する温度センサーは、蓄熱材が2段状に構成されている場合、通常、最初の蓄熱材の通過前/後、二番目の蓄熱材の通過後に燃焼室などに位置付けられる。このため、本発明の一実施形態によれば、燃焼室の温度、燃焼後の温度、二番目の蓄熱材の通過後の温度、燃焼前の温度、すなわち、すべての蓄熱材を通過した直後の温度値を用いることができる。
【0073】
エ. VOC流入量演算部
【0074】
VOC流入量演算部は、前記燃焼エネルギー演算部において演算された燃焼エネルギー(Q)と前記燃焼前/後の熱風昇温エネルギー演算部において演算された、RTOに流れ込む空気が昇温するのに必要なエネルギー(Q)を用いて、下記の数式3によりVOC流入量を演算する。
【0075】
[数式3]
【数3】
【0076】
ここで、Q=Q-Qであって、燃焼前/後の熱風昇温エネルギーから燃焼エネルギーを差し引いた値のことをいう。
【0077】
一方、VOC燃焼熱は、VOC物質ごとに異なり、これは、標準生成エンタルピーを用いる公知の方式により得ることができる。
【0078】
オ.爆発下限界(LEL)濃度算出部
【0079】
第2の仮想センサー部は、下記の数式4によりVOCのLEL濃度(%)を算出するLEL濃度算出部をさらに備えていてもよい。
【0080】
[数式4]
【数4】
【0081】
ここで、Q-Qは、上記の数式2により演算された燃焼前/後の熱風昇温エネルギー(Q)と上記の数式1により演算された燃焼エネルギー(Q)との差であって、すなわち、VOCが燃焼しながら生じさせたエネルギーを意味する。
【0082】
また、1.93は、VOC物質ブテンの密度を示す値である。ブテンの密度は、空気の密度の約1.93倍であるため、空気の密度を求める部分
【数5】
に1.93を掛け算してVOC(ブテン)の密度を求める。
【0083】
さらに、ブテンの場合、LEL 100%が1.6%である。LEL 1%は、空気とブテンとの比率が0.016%であることを意味するものであって、すなわち、空気流量が100m/hrであるとき、ブテンは、0.00016m/hrが含まれているということを意味する。
【0084】
ここで、1.93と0.016は、VOC物質がブテンである場合に相当するものであり、VOC物質に応じて異なってくる。
【0085】
VOCのLEL濃度(%)の場合、上記の数式1~3を通じて計算されたVOC流入量と空気流量との比率を用いて算出可能であるため、必要に応じて、第2の仮想センサー部220の最終出力値である理論ベースの仮想センサー出力値をもってVOC流入量またはLEL濃度(%)を得るように設定可能である。
【0086】
2.2.3.信頼度検証部230
【0087】
信頼度検証部230は、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nの各々からVOCセンサー測定値を入力されて、これに基づいて、当該RTOのVOCセンサーの信頼度またはVOCセンサー(水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110)の有無を検証する構成要素である。
【0088】
VOCセンサーの信頼度を検証する基準は、VOCセンサー測定値が下記のような二つの場合のうちのいずれか一つでも満たす場合、当該VOCセンサーの信頼度が低いと判断することができる。
【0089】
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係るVOCセンサーの信頼度が低いと判断する場合の例を示す図である。
【0090】
第1の場合であって、図5に示すように、VOCセンサー測定値が所定の時間以上変化がない場合、当該VOCセンサーの信頼度が低いと判断することができる。
【0091】
第2の場合であって、図6に示すように、RTO運転データに基準範囲以上の変化がないにも拘わらず、VOCセンサー測定値が基準値を超えることが所定の回数以上生じる場合、当該VOCセンサーの信頼度が低いと判断することができる。ここで、図6の場合、RTO運転データは、厚いラインで示されるチャンバー温度の変化を示し、VOCセンサーの測定値は区別され、細いラインで示されている。
【0092】
このような第1及び第2の場合のうちのどちらか一方でも満たす場合、当該RTOのVOCセンサーの信頼度が低いと判断し、例えば、この旨を示すLow(ロー)信号を出力することができる。これに対し、前記第1及び第2の場合の両方ともに相当しない場合、当該RTOのVOCセンサーの信頼度が高いと判断し、例えば、この旨を示すHigh(ハイ)信号を出力することができる。
【0093】
2.2.4.制御部240
【0094】
制御部240は、各RTO 100_1,100_2,...,100_nごとに前記信頼度検証部230における検証結果と水素炎イオン化検出器(FID)センサーの存否に応じて、前記第1の仮想センサー部210と前記第2の仮想センサー部220のうちのどちらか一方からVOC流入量算出値を取得し、取得された仮想センサーからのVOC流入量と水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110のVOCセンサー測定値とを互いに比較することで、当該RTOのVOCセンサー測定値に関する診断警報を発するように構成される。
【0095】
ア. 仮想センサー選択部
【0096】
仮想センサー選択部は、各RTO 100_1,100_2,...,100_nごとに前記信頼度検証部230における検証結果及びVOCセンサーの存否に応じて、前記第1の仮想センサー部210と前記第2の仮想センサー部220のうちのどちらか一方を選択して、それからVOC流入量を算出して取得することができる。
【0097】
具体的に、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在し、前記信頼度検証部230における検証の結果、VOCセンサーの信頼度が高いと判断された場合(ハイ信号が出力された場合)であれば、当該RTOの仮想センサー予測値は、第1の仮想センサー部210からVOC流入量を算出/取得することができる。
【0098】
これに対し、水素炎イオン化検出器(FID)センサーが存在しないか、あるいは、前記信頼度検証部230における検証の結果、VOCセンサーの信頼度が低いと判断された場合(ロー信号が出力された場合)であれば、当該RTOの仮想センサー予測値は、第2の仮想センサー部220からVOC流入量を算出/取得することができる。
【0099】
イ.診断警報生成部
【0100】
診断警報生成部は、前記仮想センサー選択部において取得した第1の仮想センサー部210または第2の仮想センサー部220からのVOC流入量と、同一の時点に対する当該RTOのVOCセンサー測定値とを互いに比較して、その比較結果を踏まえて、VOCセンサー測定値に関する診断警報を生成する。
【0101】
前記比較の結果、第1の仮想センサー部210または第2の仮想センサー部220からのVOC流入量とVOCセンサー測定値との間に所定の基準値以上に差が出る場合、ユーザーをして当該VOCセンサー測定値に対して検証を行わせるように診断警報を生成することができる。
【0102】
3.本発明に係る仮想センサーを用いたRTOのVOC測定センサーの検証方法
【0103】
本発明の一実施形態に係るRTOのVOC測定仮想センサーシステムは、以上において説明したように、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nとこれらを制御するRTO制御装置200を備えてなる。このようなシステムのVOC測定センサーの検証方法は、下記のようなステップを含んでいてもよい。
【0104】
3.1.データ測定及び収集ステップ
【0105】
データ測定及び収集ステップは、多数のRTO 100_1,100_2,...,100_nの各々から一定の周期ごとにリアルタイムにて測定される運転データ及びVOCセンサー測定値を収集するステップである。
【0106】
より具体的に、各RTO 100_1,100_2,...,100_nごとに備えられている水素炎イオン化検出器(FID)センサー部110及び各種のセンサーから構成された運転データ測定部120からリアルタイムにてVOCセンサー測定値とRTO運転データを収集する。
【0107】
3.2.VOCセンサー検証及び仮想センサー選択ステップ
【0108】
VOCセンサー検証及び仮想センサー選択ステップは、前記収集した各RTO 100_1,100_2,...,100_nごとのVOCセンサー測定値に基づいて、当該RTOのVOCセンサーの信頼度を検証し、その検証結果を基準として、学習ベースの仮想センサーと理論ベースの仮想センサーのうちのどちらか一方を選択するステップである。
【0109】
具体的に、VOCセンサー測定値に所定の時間以上変化がない場合、またはRTO運転データに基準範囲以上変化がないにも拘わらず、VOCセンサー測定値が基準値を超えることが所定の回数以上存在する場合のうちのどちら一方でも満たす場合、当該RTOのVOCセンサーの信頼度が低いと判断することができる。このようなVOCセンサーの信頼度検証基準は、以上において、システム構成の欄において図5及び図6を例にとって詳しく説明したため、その具体的な説明は省略する。
【0110】
一方、検証の結果、VOCセンサー測定値の信頼度が高いと判断された場合、RTO運転データを用いてVOC流入量を推定するように学習された第1のVOC算出モデルを搭載した学習ベースの仮想センサーを選択する。これに対し、VOCセンサー測定値の信頼度が低いと判断された場合、VOC燃焼エネルギーを用いてVOC流入量を算出する第2のVOC算出モデルを搭載した理論ベースの仮想センサーを選択する。ここで、VOCセンサーが存在しない場合であっても、理論ベースの仮想センサーを選択するように設定される。
【0111】
例えば、第2のRTO 100_2のセンサーの信頼度が高いと判断された場合、学習ベースの仮想センサーを選択し、センサーの信頼度が低いと判断された場合であれば、理論ベースの仮想センサーを選択するのである。
【0112】
このようにして選択した仮想センサーは、後述するステップにおいて当該仮想センサーから得られる予測値を用いて、そのRTOのVOCセンサー値に対する診断の要否を判断する上で使用可能である。
【0113】
3.3.仮想センサー予測値取得ステップ
【0114】
仮想センサー予測値取得ステップは、前記VOC検証及び仮想センサー選択ステップにおいて各RTOごとに前記選択した仮想センサーからの予測値を取得するステップである。
【0115】
選択した仮想センサーが学習ベースの仮想センサーである場合、それから第1のVOC算出モデルを通じて当該RTOの運転データを用いて推定されたVOC流入量を仮想センサー予測値(VOC2)として取得することができる。
【0116】
ここで、第1のVOC算出モデルは、RTOの運転データとそれから生成した派生因子とから構成された入力変数を2つの隠れたレイヤー(Hidden Layer)に入力し、VOCセンサー測定値(VOC1)を真値として指導学習して生成された人工知能ニューラルネットワークモデルである。
【0117】
一方、選択した仮想センサーが理論ベースの仮想センサーである場合、それから上記の数式1~4を利用する第2のVOC算出モデルを通じて当該RTOのVOC燃焼エネルギーから算出されたVOC流入量を仮想センサー予測値(VOC3)として取得することができる。
【0118】
このようなステップを通じて、各RTOごとにVOCセンサーの信頼度のレベルに応じて選択した仮想センサーからVOC流入量を取得することができる。
【0119】
3.4.センサーデータ比較ステップ
【0120】
センサーデータ比較ステップは、前記仮想センサー予測値取得ステップを通じて各RTOごとに取得した仮想センサー予測値であるVOC流入量と、同一の時点に対して前記収集したVOCセンサー測定値とを互いに比較するステップである。
【0121】
例えば、第2のRTO 100_2の時間tにおけるVOCセンサー測定値(VOC1_2)と学習ベースの仮想センサー予測値(VOC2_2)または理論ベースの仮想センサー予測値(VOC3_2)とを互いに比較するのである。
【0122】
3.5.診断警報発生ステップ
【0123】
診断警報発生ステップは、前記比較の結果、前記仮想センサー予測値と前記VOCセンサー測定値との間に所定の基準値以上の差が出る場合、当該RTOのVOCセンサー値に関する診断警報を発するステップである。
【0124】
RTOのVOCセンサー測定値と仮想センサー予測値との間に所定の基準値以上の差が出ると、ユーザーをして当該VOCセンサー測定値に対して検証を行わせるように診断警報を発するのである。
【0125】
一方、本発明の技術的思想は、上記の実施形態に基づいて具体的に記述されたが、上記の実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということに留意すべきである。なお、本発明の技術分野における当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が実施可能であるということが理解できる筈である。
【0126】
下記は、本発明の説明及び図面において使用した符号の各名称を示す。
【符号の説明】
【0127】
100_1~100_n:RTO
110:水素炎イオン化検出器(FID)センサー部
120:運転データ測定部
200:RTO制御装置
210:第1の仮想センサー部
220:第2の仮想センサー部
230:信頼度検証部
240:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6