(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】葉菜ペーストソース
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20241125BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20241125BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L27/00
(21)【出願番号】P 2024145955
(22)【出願日】2024-08-27
【審査請求日】2024-08-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.ウェブサイトのアドレス https://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php?p_cd=21657 https://www.kewpie.co.jp/prouse/recommend/dress-up-sauce/ 2.ウェブサイトの掲載日 令和6年6月19日 3.公開者 キユーピー株式会社
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】堀井 直人
(72)【発明者】
【氏名】川又 憲二
(72)【発明者】
【氏名】三吉 大地
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-141291(JP,A)
【文献】特開平02-031665(JP,A)
【文献】特開2014-147345(JP,A)
【文献】特開2019-097469(JP,A)
【文献】渡辺 康啓,今月のスポットライト テーブルの上のギャラリー,NHKテレビテキスト きょうの料理 2012年6月号 ,NHK出版,2012年05月21日,第80頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00
A23L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉菜、食用油脂、及び水を含む葉菜ペーストソースであって、
前記葉菜ペーストソースの水分含有量が54.0質量%以下であり、
前記葉菜が、パセリ、ケール、及びバジルからなる群から選択される少なくとも1種の葉菜粉砕物を含み、
前記葉菜粉砕物が、葉菜生粉砕物及び葉菜乾燥粉砕物を含み、
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜ペーストソースの水分1質量部に対する比が、0.005以上0.150以下であることを特徴とする、葉菜ペーストソース。
【請求項2】
前記葉菜ペーストソースの水分含有量が35.0質量%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項3】
前記葉菜粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して10.0質量%以上40.0質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項4】
前記葉菜生粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して5.0質量%以上39.0質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項5】
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項6】
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜生粉砕物の含有量に対する比が、0.010以上0.200以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項7】
前記食用油脂の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して30.0質量%以上60.0質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項8】
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜ペーストソースの食用油脂1質量部に対する比が、0.005以上0.150以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項9】
粘度調整剤の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して0.1質量%未満であることを特徴とする、
請求項1に記載の葉菜ペーストソース。
【請求項10】
冷凍用または加熱用であることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか一項に記載の葉菜ペーストソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉菜ペーストソースに関し、詳細には、特定の葉菜粉砕物を含む葉菜ペーストソースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジェノベーゼソースやチミチュリソース等の、緑色の葉菜をペーストにしたソースが開発されている。このような葉菜ペーストソースは、肉や魚介、サラダ等を味付けするのに使用されており、またその鮮やかな緑色の彩りで食卓の彩りを豊かにする効果を有している。
【0003】
一般的に、このような葉菜ペーストソースは、家庭やレストランの厨房で作られることが多いが、食事場面の多様化により外食や中食で加工食品として使用される需要も増加している。
一方で、外食や中食での使用を想定した場合には、製造してから使用されるまでに数ヵ月の期間が想定されるため、品位の保持が課題となる。特に、葉菜ペーストソースは、葉菜の特徴であるフレッシュな味わいと香り、そして鮮やかな緑色の色彩を維持することが求められる。
【0004】
また、水および食用油脂を含む葉菜ペーストソースは、保存中に水相および油相が分離し易いという課題があった。このような技術的課題に対して、特許文献1では、水相および油相の分離を抑制するために、増粘剤、乳化剤および安定剤からなる食品添加物を含まず、微細化された形態の野菜、微細化された形態の油性種子、微細化された形態の植物繊維、植物油、及び水を含む調味料が提案されている。特に、特許文献1には、微細化された形態の野菜としてパセリの葉、微細化された形態の油性種子としてカシュー、及び微細化された形態の植物繊維としてエンドウ豆ファイバー、植物油、及び水を含む調味料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者等は、食用油脂及び水を含む葉菜ペーストソースの開発において、葉菜ペーストソースを冷凍・解凍や加熱等の温度変化が加わる加工を施した場合には、当該加工によりソースの離水を生じやすく、油相の鮮やかな緑色が損なわれるという新たな課題を知見した。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れる葉菜ペーストソースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、葉菜、食用油脂、及び水を含む葉菜ペーストソースにおいて、葉菜の生粉砕物と乾燥粉砕物を併用し、各成分の含有量を調節することによって、上記課題を解決できることを知見した。本発明者等は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 葉菜、食用油脂、及び水を含む葉菜ペーストソースであって、
前記葉菜ペーストソースの水分含有量が54.0質量%以下であり、
前記葉菜が、パセリ、ケール、及びバジルからなる群から選択される少なくとも1種の葉菜粉砕物を含み、
前記葉菜粉砕物が、葉菜生粉砕物及び葉菜乾燥粉砕物を含み、
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜ペーストソースの水分1質量部に対する比が、0.005以上0.150以下であることを特徴とする、葉菜ペーストソース。
[2] 前記葉菜ペーストソースの水分含有量が35.0質量%以上であることを特徴とする、
[1]に記載の葉菜ペーストソース。
[3] 前記葉菜粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して10.0質量%以上40.0質量%以下であることを特徴とする、
[1]または[2]に記載の葉菜ペーストソース。
[4] 前記葉菜生粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して5.0質量%以上39.0質量%以下であることを特徴とする、
[1]~[3]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[5] 前記葉菜乾燥粉砕物の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする、
[1]~[4]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[6] 前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜生粉砕物の含有量に対する比が、0.010以上0.200以下であることを特徴とする、
[1]~[5]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[7] 前記食用油脂の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して30.0質量%以上60.0質量%以下であることを特徴とする、
[1]~[6]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[8] 前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜ペーストソースの食用油脂1質量部に対する比が、0.005以上0.150以下であることを特徴とする、
[1]~[7]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[9] 粘度調整剤の含有量が、前記葉菜ペーストソースの全量に対して0.1質量%未満であることを特徴とする、
[1]~[8]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
[10] 冷凍用または加熱用であることを特徴とする、
[1]~[9]のいずれかに記載の葉菜ペーストソース。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れる葉菜ペーストソースを提供することができる。このような葉菜ペーストソースは消費者の食欲を惹起することができ、葉菜ペーストソースのさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<葉菜ペーストソース>
本発明の葉菜ペーストソースは、葉菜、食用油脂、及び水を含むものであり、食塩及び調味料等の他の原料をさらに含んでもよい。本発明の葉菜ペーストソースは、冷凍・解凍や加熱等の温度変化が加わる加工後であっても、離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れるため、冷凍・解凍や加熱等の温度変化が加わる加工用として好適である。
【0012】
葉菜ペーストソースは、特に限定されず、従来公知のソースに用いることができ、例えば、ジェノベーゼソースやチミチュリソース等が挙げられる。
【0013】
(葉菜ペーストソースの水分含有量)
葉菜ペーストソースの水分含有量は、上限値が54.0質量%以下であり、好ましくは53.5質量%以下であり、より好ましくは53.0質量%以下であり、さらに好ましくは52.0質量%以下であり、さらにより好ましくは51.0質量%以下であり、最も好ましくは50.0質量%以下であり、また、下限値が好ましくは35.0質量%以上であり、より好ましくは40.0質量%以上であり、さらに好ましくは41.0質量%以上であり、さらにより好ましくは42.0質量%以上であり、最も好ましくは43.0質量%以上である。葉菜ペーストソースの水分含有量が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映えるものとなる。なお、本発明における葉菜ペーストソースの水分含有量は、配合した水分の量に限られず、葉菜等の原料由来の水分も含まれる。
【0014】
(葉菜ペーストソースのpH)
葉菜ペーストソースのpHは、好ましくは4.5以上7.0以下である。当該pHの下限値はより好ましくは4.7以上であり、さらに好ましくは4.9以上であり、さらにより好ましくは5.0以上であり、また、上限値はより好ましくは6.8以下であり、さらに好ましくは6.6以下であり、さらにより好ましくは6.5以下である。葉菜ペーストソースのpHが上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの微生物発生を制御して保存性を高めながら、葉菜ペーストソースの風味のバランスを良好にすることができる。なお、葉菜ペーストソースのpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した値である。
【0015】
(葉菜ペーストソースの液部の粘度)
葉菜ペーストソースの液部は、20℃における粘度が、好ましくは800mPa・s以下であり、より好ましくは500mPa・s以下であり、さらに好ましくは300mPa・s以下であり、また、5mPa・s以上であってもよく、10mPa・s以上であってもよく、15mPa・s以上であってもよい。なお、葉菜ペーストソースの粘度は、BH型粘度計を用いて、品温20℃、回転数20rpmの条件で、ローターNo.2を使用し、測定開始後ローターが5回転した時の示度により算出した値である。
【0016】
(葉菜)
葉菜は、主に葉を食用部とする野菜のことであり、例えば、パセリ、ケール、バジル、レタス、セロリ、パクチー、シソ、ショウガ、ミョウガ、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、コマツナ、ミツバ、セリ、シュンギク、及びホウレンソウ等が挙げられる。本発明においては、葉菜として、パセリ、ケール、及びバジルからなる群から選択される少なくとも1種の葉菜粉砕物を用いる。これらの葉菜粉砕物の中でも、パセリ粉砕物及びケール粉砕物の両方を用いることが好ましく、パセリ生粉砕物及びパセリ乾燥粉砕物の両方を用いることがより好ましい。これらの葉菜粉砕物を用いることで、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れる葉菜ペーストソースを得ることができる。
【0017】
葉菜粉砕物とは、葉菜を粉砕して、ペーストソースに適切な大きさまで細分化したものであり、その形状や大きさは特に限定されない。葉菜粉砕物は、例えば、常法により、コミットロール、フードカッター、及びロール粉砕器等を用いて、葉菜を混合、撹拌、処理した粉砕物であってもよい。
【0018】
本発明においては、葉菜粉砕物として、葉菜生粉砕物及び葉菜乾燥粉砕物の両方を用いることで、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れる葉菜ペーストソースを得ることができる。
【0019】
葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜ペーストソースの水分1質量部に対する比(葉菜乾燥粉砕物の含有量/葉菜ペーストソースの水分1質量部)は、0.005以上0.150以下であり、下限値が好ましくは0.010以上であり、より好ましくは0.015以上であり、さらに好ましくは0.020以上であり、また、上限値が好ましくは0.100以下であり、より好ましくは0.080以下であり、さらに好ましくは0.050以下である。葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜ペーストソースの水分1質量部に対する比が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。なお、本発明における葉菜乾燥粉砕物の含有量は、葉菜乾燥粉砕物中の水分をゼロにした時の乾物換算値である。
【0020】
葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜ペーストソースの食用油脂1質量部に対する比(葉菜乾燥粉砕物の含有量/葉菜ペーストソースの食用油脂1質量部)は、0.005以上0.150以下であり、下限値が好ましくは0.010以上であり、より好ましくは0.015以上であり、さらに好ましくは0.020以上であり、また、上限値が好ましくは0.100以下であり、より好ましくは0.080以下であり、さらに好ましくは0.050以下である。葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜ペーストソースの食用油脂1質量部に対する比が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。
【0021】
葉菜粉砕物の含有量(葉菜乾燥粉砕物および葉菜生粉砕物の合計含有量)の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、好ましくは10.0質量%以上40.0質量%以下であり、下限値がより好ましくは12.0質量%以上であり、さらに好ましくは14.0質量%以上であり、さらにより好ましくは16.0質量%以上であり、また、上限値がより好ましくは38.0質量%以下であり、さらに好ましくは36.0質量%以下であり、さらにより好ましくは34.0質量%以下である。葉菜粉砕物の含有量が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。
【0022】
葉菜生粉砕物の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、好ましくは5.0質量%以上39.0質量%以下であり、好ましくは下限値がより好ましくは7.0質量%以上であり、さらに好ましくは9.0質量%以上であり、さらにより好ましくは11.0質量%以上であり、また、上限値がより好ましくは37.0質量%以下であり、さらに好ましくは35.0質量%以下であり、さらにより好ましくは33.0質量%以下である。葉菜生粉砕物の含有量が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。
【0023】
葉菜乾燥粉砕物の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下であり、好ましくは下限値がより好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、さらにより好ましくは0.6質量%以上であり、また、上限値がより好ましくは4.5質量%以下であり、さらに好ましくは4.0質量%以下であり、さらにより好ましくは3.5質量%以下である。葉菜乾燥粉砕物の含有量が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。
【0024】
葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜生粉砕物の含有量に対する比(葉菜乾燥粉砕物の含有量/葉菜生粉砕物の含有量)は、好ましくは0.010以上0.200以下であり、下限値が好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.030以上であり、さらに好ましくは0.040以上であり、また、上限値が好ましくは0.180以下であり、より好ましくは0.160以下であり、さらに好ましくは0.140以下である。葉菜乾燥粉砕物の含有量の葉菜生粉砕物の含有量に対する比が上記数値範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味を良好にすることができる。
【0025】
(食用油脂)
食用油脂としては、特に限定されず、従来公知の食用油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等の植物油脂、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を挙げることができる。これらの中でも、植物油脂が好ましく、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、又はこれらの混合油を用いることが好ましい。
【0026】
食用油脂の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、好ましくは30.0質量%以上60.0質量%以下であり、下限値がより好ましくは32.0質量%以上であり、より好ましくは34.0質量%以上であり、さらに好ましくは36.0質量%以上であり、また、上限値は好ましくは58.0質量%以下であり、より好ましくは56.0質量%以下であり、さらに好ましくは54.0質量%以下である。食用油脂の含有量が上記範囲内であれば、葉菜ペーストソースの離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え易くなる。
【0027】
(粘度調整剤)
粘度調整剤としては、例えば、澱粉、ガム類、ペクチン、ゼラチン、カードラン、プルラン、マンナン、寒天等が挙げられる。詳細には、澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉コーンスターチ、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、及び米澱粉等が挙げられる。また、これらの澱粉に、架橋処理、乳化処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理、湿熱処理、及び湿熱処理等の処理を施したものである加工澱粉も用いることができる。ガム類としては、例えば、キサンタンガム、コンニャクガム、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びアラビアガム等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明においては、葉菜ペーストソースに葉菜生粉砕物及び葉菜乾燥粉砕物を併用し、各成分の含有量を調節することで、粘度調整剤の含有量を低減しながら、葉菜ペーストソースの離水を抑制することができる。粘度調整剤の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、好ましくは0.1質量%未満であり、より好ましくは0.05質量%未満であり、さらに好ましくは0.01質量%未満であり、また、0質量%であってもよい。
【0029】
(食塩)
食塩の含有量は、葉菜ペーストソースの全量に対して、下限値は好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上であり、また、上限値は好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.5質量%以下であり、さらにより好ましくは3.0質量%以下である。食塩の含有量が上記範囲内であれば、風味のバランスを保ちながら、保存性を向上させることができる。なお、本発明における食塩の含有量は、配合した食塩の量に限られず、他の原料由来のものも含まれる。
【0030】
(他の原料)
葉菜ペーストソースは、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0031】
<葉菜ペーストソースの製造方法>
本発明の葉菜ペーストソースの製造方法の一例について説明する。例えば、まず、撹拌タンクに、ブランチングした生葉菜、食用油脂、及び水を投入し、混合・撹拌を行って、生葉菜を粉砕して、葉菜ペーストを得る(葉菜粉砕工程)。次に、撹拌タンクに、食用油脂、葉菜乾燥粉砕物、食塩及び水を投入し、混合・撹拌を行って、葉菜ペーストソースを製造することができる(ソース調製工程)。
【0032】
本発明の葉菜ペーストソースの製造には、通常のソースの製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な撹拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
<葉菜ペーストソースの製造例>
[実施例1]
表1に記載の配合割合に準じ、葉菜ペーストソースを製造した。具体的には、撹拌タンクに、ブランチングした生パセリと生ケール、大豆油、食塩及び水を投入し、、混合・撹拌を行って、生パセリ及び生ケールを粉砕して、葉菜ペーストを得た(葉菜粉砕工程)。
続いて、撹拌タンクに、大豆油、乾燥パセリ(粉砕物、水分5%)、ガーリックミンチ、食塩及び水を投入し、混合・撹拌を行って、葉菜ペーストソースを製造した(ソース調製工程)。
【0035】
[実施例2]
ソース調製工程において大豆油の配合量を25.8質量%に変更し、乾燥パセリの配合量を2.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0036】
[実施例3]
葉菜粉砕工程において生パセリの配合量を30質量%に変更し、大豆油の配合量を31.5質量%に変更し、食塩の配合量を1.3質量%に変更し、水の配合量を15質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストを製造した。
続いて、ソース調製工程において大豆油の配合量を7.0質量%に変更し、食塩の配合量を0.8質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0037】
[実施例4]
ソース調製工程において大豆油の配合量を7.0質量%に変更し、乾燥パセリの配合量を1.1質量%に変更し、食塩の配合量を0.8質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0038】
[実施例5]
ソース調製工程において大豆油の配合量を22.0質量%に変更し、乾燥パセリの配合量を2.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0039】
[比較例1]
ソース調製工程において乾燥パセリを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0040】
[比較例2]
ソース調製工程において大豆油の配合量を17.0質量%に変更し、乾燥パセリの配合量を10質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0041】
[比較例3]
ソース調製工程において乾燥パセリを配合せずに、そら豆ファイバー(水分3.8%)を1.1質量%配合した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0042】
[比較例4]
ソース調製工程において大豆油の配合量を17.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして葉菜ペーストソースを製造した。
【0043】
<葉菜ペーストソースの評価>
上記で得られた各葉菜ペーストソースを70℃で加熱した後に容器に充填した。続いて、容器詰めした葉菜ペーストソースを冷凍した後、1日経過後に自然解凍した。その後、下記の評価を行った。
【0044】
(外観評価)
上記で得られた自然解凍後の各葉菜ペーストソースの外観を、複数名の訓練されたパネルが目視で観察し、下記の評価を基準にして1点(最小)~5点(最大)の間で0.5点刻みの9段階で評価した。各サンプルの評点は、オープンパネル方式により、パネル全員の協議により決定された。結果を表1に示した。離水の評価点が3点以上であれば、良好な結果であると言える。
[外観の評価基準]
5点:離水は全く発生しておらず、油相の鮮やかな緑色が非常に映えていた。
4点:離水はほとんど発生しておらず、油相は良好な緑色が映えていた。
3点:離水はあまり発生しておらず、油相は良好な緑色を有していた。
2点:部分的に離水が発生しており、油相の緑色が損なわれていた。
1点:全体的に明らかに目立つ離水が発生しており、油相の緑色が損なわれていた。
【0045】
(官能評価)
上記で得られた自然解凍後の各葉菜ペーストソースの風味を、複数名の訓練されたパネルが下記の5段階の評価を基準にして1点(最小)~5点(最大)の間で0.5点刻みの9段階で評価した。各サンプルの評点は、オープンパネル方式により、パネル全員の協議により決定された。結果を表1に示した。風味の評価点が3点以上であれば、良好な結果であると言える。
[風味の評価基準]
5点:乾燥臭や離水からの水っぽさが全くなく、生パセリのフレッシュな風味や香りを非常に良く感じた。
4点:生のパセリのフレッシュな風味や香りを良く感じることができた。
3点:乾燥臭みや離水による水っぽさを感じず、問題無かった。
2点:部分的に乾燥臭や離水による水っぽさを感じた。
1点:全体的に乾燥臭や離水による水っぽさを感じ、生パセリのフレッシュな風味が大きく損なわれていた。
【0046】
(pH測定)
上記で得られた自然解凍後の各葉菜ペーストソースのpHについて、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した。測定の結果、各葉菜ペーストソースのpHはいずれも5.0~6.5の範囲内であった。
【0047】
(粘度測定)
上記で得られた自然解凍後の各葉菜ペーストソースの液部の粘度について、BH形粘度計を使用し、品温20℃、回転数20rpmの条件で、ローターNo.2を使用し、測定開始後ローターが5回転した時の示度により算出した。測定の結果、各葉菜ペーストソースの液部の粘度はいずれも15mPa・s以上300mPa・s以下の範囲内であった。
【0048】
実施例1~5の葉菜ペーストソースは、いずれも、離水が抑制され、油相の鮮やかな緑色が映えており、かつ、風味に優れるものであった。
一方、比較例1の葉菜ペーストソースには、乾燥パセリの粉砕物が含まれていないため、離水を抑制できなかった。
比較例2の葉菜ペーストソースは、乾燥パセリの粉砕物の量が水分に対して多すぎたため、乾燥臭が感じられ、生パセリのフレッシュな風味が大きく損なわれていた。また、葉菜ペーストソースには、乾燥パセリの粉砕物の量が食用油脂に対して多すぎたため、油脂が乾燥パセリの粉砕物に吸収され、葉菜ペーストソースの表面には緑色の油相が無くなっていた。
比較例3の葉菜ペーストソースは、乾燥パセリの粉砕物が含まれず、そら豆ファイバーの粉砕物が含まれているため、そら豆の風味によって生パセリのフレッシュな風味が感じられなかった。
比較例4の葉菜ペーストソースは、水分含有量が54.8質量%であり、水分が多かったため、離水を抑制できなかった。
【0049】
【要約】
【課題】離水を抑制し、油相の鮮やかな緑色が映え、かつ、風味に優れる葉菜ペーストソースの提供。
【解決手段】本発明は、葉菜、食用油脂、及び水を含む葉菜ペーストソースであって、
前記葉菜ペーストソースの水分含有量が54.0質量%以下であり、
前記葉菜が、パセリ、ケール、及びバジルからなる群から選択される少なくとも1種の葉菜粉砕物を含み、
前記葉菜粉砕物が、葉菜生粉砕物及び葉菜乾燥粉砕物を含み、
前記葉菜乾燥粉砕物の含有量の前記葉菜ペーストソースの水分1質量部に対する比が、0.005以上0.150以下であることを特徴とする。
【選択図】なし