(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241126BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/097 365
G03G9/08 384
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2020218752
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 剛
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-043744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記トナーの平均円相当径が5~9μmであり、
前記トナーを湿式法で目開き25μmの篩に通過させた場合に、当該篩を通過しない粗大粒子のうち、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.20以上0.97未満である粗大粒子Aの粒子数が
、前記篩に通過させた前記トナー1.0g中に1000個以上20000個以下であり、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.97以上1.00以下である粗大粒子Bの粒子数が
、前記篩に通過させた前記トナー1.0g中に1000個未満である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
平均円形度が0.98以上1.00以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
水系分散媒体中に、少なくとも重合性単量体、着色剤及び離型剤を含有する重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を調製する工程と、
前記懸濁液を、重合開始剤の存在下で重合反応に供することにより着色樹脂粒子を形成する工程とを有する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記着色樹脂粒子を含有する粒子を、空気流を用いて篩に供給することにより、当該粒子に含まれる粗大粒子の一部を除去する工程を更に有し、
前記篩が少なくとも1枚の網を含み、前記篩に用いられる網のうち、目開きが最小である網の目開きが25μm以上40μm以下であり、
前記空気流が、前記着色樹脂粒子を含有する粒子とともに供給される1次エア、及び前記粗大粒子の回収口側から供給される2次エアにより発生されるものであり、前記1次エアの流量F1[m
3/min]と、前記2次エアの流量F2[m
3/min]との比(F1/F2)が18以上50以下である、請求項3に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電荷像を現像するためのトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、感光体に形成された静電荷像を、トナーにより現像して可視像とし、必要に応じて紙又はOHP等の転写材にトナー画像を転写した後、転写材上にトナー画像を定着して複写物又は印刷物を得る方法である。
電子写真法を用いたレーザープリンターや複写機等の画像形成装置においては、トナーカートリッジの交換頻度を少なくすることが求められている。一方、トナーカートリッジの交換頻度を少なくするために、トナーカートリッジを大容量化し、トナーカートリッジを長寿命化させた場合、トナー中に粗大粒子が含まれていると、画質の劣化が生じやすい。また、電子写真技術の市場が新興国にも急速に拡大しているため、温度及び湿度等の多様な使用環境においても高画質な画像が得られるトナーが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粗大粒子がほとんど存在しないトナーの製造方法として、粗大粒子を除去するための篩分け工程において、篩を上下2段とし、上段の篩の目開きをW1、下段の篩の目開きをW2としたときに、1.2≦W1/W2≦1.7を満たし、且つ、下段の篩の網を平織りとする方法を開示している。特許文献1には、当該方法により得られるトナーを、目開き25μmの篩に載せて篩下より吸引したときに、篩上に残る粗大粒子数を、トナー2gにつき200個以下とすることができると記載されており、具体的に計測した結果は11~141個であったことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、トナー中の粗粉を除去するための粗粉除去工程において、網の目詰まりを抑制する方法として、風力篩分機を用い、トナー母粒子及び外部添加剤の混合品とともに供給される1次エアの流量F1[m3/min]と、粗粉の回収口側から供給される2次エアの流量F2[m3/min]とを、7≦(F1/F2)≦17の範囲とした条件にて篩分を行う方法を開示している。特許文献2には、当該方法により得られたトナー10gを45μmメッシュの篩で篩別したときに、篩上に残った粗大粒子の個数が2.2~11.2個であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-76873号公報
【文献】特開2007-79444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されるトナーは、高温高湿環境下で画像を形成した場合に、カブリが発生しやすいことが判明した。
また、トナー中に粗大粒子が含まれている場合の問題としては、画像中に白く抜けた縦筋が生じる所謂白筋が発生するといった問題がある。白筋は、低温低湿環境下で画像を形成した場合に特に生じやすくなる。
本開示の課題は、高温高湿環境下及び低温低湿環境下のいずれにおいても白筋の発生を抑制し、更に、高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制することができる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、トナーに含まれる粗大粒子のうち、円形度が比較的高い粗大粒子の含有量を低減させることにより、円形度が比較的低い粗大粒子が特定量含まれていても、白筋の発生が抑制された画像を形成することができることを見出し、更に、円形度が比較的低い粗大粒子を特定量含むことにより、高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制できることを見出した。
【0008】
本開示は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記トナーを湿式法で目開き25μmの篩に通過させた場合に、当該篩を通過しない粗大粒子のうち、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.20以上0.97未満である粗大粒子Aの粒子数がトナー1.0g中に1000個以上20000個以下であり、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.97以上1.00以下である粗大粒子Bの粒子数がトナー1.0g中に1000個未満である、静電荷像現像用トナーを提供する。
【0009】
本開示の静電荷像現像用トナーにおいては、平均円形度が0.98以上1.00以下であることが好ましい。
【0010】
本開示は、上記本開示の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
水系分散媒体中に、少なくとも重合性単量体、着色剤及び離型剤を含有する重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を調製する工程と、
前記懸濁液を、重合開始剤の存在下で重合反応に供することにより着色樹脂粒子を形成する工程とを有する、静電荷像現像用トナーの製造方法を提供する。
【0011】
本開示の上記製造方法においては、前記着色樹脂粒子を含有する粒子を、空気流を用いて篩に供給することにより、当該粒子に含まれる粗大粒子の一部を除去する工程を更に有し、
前記篩が少なくとも1枚の網を含み、前記篩に用いられる網のうち、目開きが最小である網の目開きが25μm以上40μm以下であり、
前記空気流が、前記着色樹脂粒子を含有する粒子とともに供給される1次エア、及び前記粗大粒子の回収口側から供給される2次エアにより発生されるものであり、前記1次エアの流量F1[m3/min]と、前記2次エアの流量F2[m3/min]との比(F1/F2)が18以上50以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記の如き本開示によれば、上記特定の粗大粒子A及び上記特定の粗大粒子Bの含有量を上記特定量とすることにより、高温高湿環境下及び低温低湿環境下のいずれにおいても白筋の発生を抑制し、更に、高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制することができる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の静電荷像現像用トナーの製造に使用可能な篩分けシステムの一例の概略図である。
【
図2】本開示で好適に使用することができるエジェクターの一例を示す模式図である。
【
図3】目開きの異なる2枚の金網の経線及び緯線がそれぞれ略平行になるように配置された積層金網を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
なお、本開示において、数値範囲における「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
また、本開示において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表す。
【0015】
I.静電荷像現像用トナー
本開示の静電荷像現像用トナー(本開示において単に「トナー」と称する場合がある。)は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記トナーを湿式法で目開き25μmの篩に通過させた場合に、当該篩を通過しない粗大粒子のうち、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.20以上0.97未満である粗大粒子Aの粒子数がトナー1.0g中に1000個以上20000個以下であり、フロー式粒子像測定装置により計測される円相当径が50μm以上200μm未満で且つ円形度が0.97以上1.00以下である粗大粒子Bの粒子数がトナー1.0g中に1000個未満であることを特徴とする。
【0016】
本開示において、円相当径とは、粒子像と同じ投影面積を有する円の直径のことである。本開示において、円形度とは、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値である。粒子の表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となり、粒子が完全な球形の場合、円形度は1となる。本開示においては、測定試料に含まれる複数の粒子の円形度の相加平均を平均円形度とし、円相当径の相加平均を平均円相当径とする。
円相当径は、例えば、測定粒子を分散させた分散液を試料液とし、フロー式粒子像測定装置(例えば、シメックス社製、商品名:FPIA-3000等)を用いて試料液中の粒子の投影像を撮影して、当該投影像から、粒子の投影面積に等しい円の直径を測定して求めることができる。円形度は、当該投影像から、粒子の投影面積に等しい円の周囲長、及び粒子投影像の周囲長を測定し、下記計算式1により求めることができる。
計算式1:(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0017】
本開示のトナーを湿式法で目開き25μmの篩に通過させた場合に、当該篩を通過しない円相当径が50μm以上200μm未満の粗大粒子とは、本開示のトナーに含まれる円相当径が50μm以上200μm未満の粗大粒子と実質的に同一である。円相当径が50μm以上の粗大粒子は、通常、湿式法によって目開き25μmの篩を通過することができないためである。また、本開示のトナーに含まれる粗大粒子は、通常、円相当径が200μm未満である。なお、本開示のトナーにおいて、円相当径が50μm未満の粒子の量は特に限定されない。
本開示において、上記目開き25μmの篩としては、経線及び緯線が等間隔に配置され、経線の間隔と緯線の間隔が同一である目開き25μmの網を用いる。
本開示のトナーを湿式法で目開き25μmの篩に通過させる方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。まず、界面活性剤を0.1~1質量%の濃度で含有する水に、予め秤量したトナーを分散させたトナー分散液を、目開き25μmの篩に通過させる。ここで、トナー分散液におけるトナーの濃度は、通常1~5質量%程度とする。その後、当該篩に界面活性剤入りの水を更に通過させて、篩を通過する水が肉眼でトナーの色を有しなくなるまで、篩に水を通過させる。次いで、篩上に残った粗大粒子を、少量の界面活性剤入りの水で回収し、粗大粒子分散液を得る。その際、得られた粗大粒子分散液の質量を記録する。粗大粒子分散液について、フロー式粒子像測定装置を用いて粒径分布の測定を実施し、上記粗大粒子A及び上記粗大粒子Bの粒子数を測定する。なお、粒子数の測定は、測定セル内の粗大粒子分散液について行われる。測定セル内の粗大粒子分散液に含まれる粗大粒子Aの粒子数NA(個)及び粗大粒子Bの粒子数NB(個)、測定セルの容量C(g)、粗大粒子分散液全体の質量WD(g)、並びに測定に使用したトナーの質量WT(g)から、下記計算式(A)により、トナー1.0gに含まれる粗大粒子Aの粒子数を求めることができ、下記計算式(B)により、トナー1.0gに含まれる粗大粒子Bの粒子数を求めることができる。
【0018】
【0019】
本開示のトナーにおいては、トナー1.0g中の上記粗大粒子Aの粒子数が20000個以下であり、且つトナー1.0g中の上記粗大粒子Bの粒子数が1000個未満であることにより、高温高湿環境下及び低温低湿環境下のいずれにおいても、白筋の発生を抑制し、画質の低下を抑制することができる。白筋は、トナーに含まれる粗大粒子が、現像器内の現像ローラと層規制ブレードのニップ部に引っかかり、現像ローラ上のトナー層が不均一になることで発生すると考えられる。また、高温高湿環境下に比べ、低温低湿環境下では白筋が発生しやすくなる。低温低湿環境下では、現像ローラの硬度が高くなることでトナーがニップ部に引っかかり易くなるためと推定される。本発明者は、円相当径が50μm以上200μm未満の粗大粒子の中でも、円形度が0.97以上1.00以下の上記粗大粒子Bが、白筋発生の原因になりやすく、円形度が0.20以上0.97未満の上記粗大粒子Aは、白筋発生の原因になりにくいことを見出した。本開示のトナーにおいては、白筋発生の原因になりやすい上記粗大粒子Bの量が、トナー1.0g中1000個未満にまで低減され、一方で、白筋発生の原因になりにくい上記粗大粒子Aの量は、トナー1.0g中20000個を超えないことで、高温高湿環境下及び低温低湿環境下のいずれにおいても白筋の発生が抑制される。円形度が0.20以上0.97未満である上記粗大粒子Aは、扁平な形状であることが多く、ニップ部をすり抜けることができるため、現像器内で引っかかり難く、白筋発生の原因になりにくいと推定される。
また、本開示のトナーにおいては、トナー1.0g中の上記粗大粒子Aの粒子数が1000個以上であることにより、高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制することができる。これは、上記粗大粒子Aにシリカ等の外添剤の凝集物が含有されているためと推定される。上記粗大粒子Aは、円相当径が50μm以上と大きいため、シリカ等の外添剤の凝集物を含んでいる場合が多い。また、高温高湿環境下では、常温常湿環境下に比べ、トナーが帯電しにくくなるため、カブリが発生しやすい。これに対し、本開示のトナーは、粗大粒子Aを適度に含有することで、トナーの流動性が向上し、高温高湿環境下においてもカブリの発生が抑制されると推定される。
このように、本開示のトナーは、白筋を発生させやすい上記粗大粒子Bが十分に除去されており、上記粗大粒子Aにおいては、白筋を発生させず、且つ高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制する効果を発揮する程度に量が制御されていることにより、高温高湿環境下及び低温低湿環境下での白筋の発生を抑制し、更に、高温高湿環境下でのカブリの発生を抑制することができると考えられる。
【0020】
白筋の発生を抑制する観点から、トナー1.0g中の上記粗大粒子Aの粒子数は、好ましくは19000個以下であり、トナー1.0g中の上記粗大粒子Bの粒子数は、好ましくは500個以下であり、より好ましくは400個以下であり、更に好ましくは350個以下である。
【0021】
また、白筋の発生を抑制する観点から、円形度が0.20以上0.97未満の上記粗大粒子Aの中でも、特に、円形度が0.95以上0.97未満の粗大粒子Aの粒子数は、トナー1.0g中、500個以下であることが好ましく、400個以下であることがより好ましく、300個以下であることが更に好ましく、200個以下であることがより更に好ましい。なお、本開示のトナーに含まれる粗大粒子は、通常、円形度が0.20~1.00の範囲内である。
また、白筋の発生を抑制する観点から、上記粗大粒子Aのうち、円形度が0.95以上0.97未満の粗大粒子Aの粒子数と、上記粗大粒子Bの粒子数の合計が、トナー1.0g中、1500個以下であることが好ましく、1000個以下であることがより好ましく、800個以下であることが更に好ましい。
【0022】
本開示のトナーは、平均円相当径が、通常5~9μmである。
また、本開示のトナーは、特に限定はされないが、画像再現性を向上する点から、平均円形度が0.98以上1.00以下であることが好ましく、0.99以上1.00以下であることがより好ましい。トナーに含まれる着色樹脂粒子を、乳化重合凝集法、分散重合法、懸濁重合法及び溶解懸濁法等の湿式法により製造することにより、トナーの平均円形度を上記範囲内にすることができる。
以下、本開示の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
なお、本開示のトナーが含有する着色樹脂粒子は、少なくとも結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する。着色樹脂粒子に含まれる各成分は、以下に説明する製造方法で用いる重合性単量体組成物中の各成分とシェル用重合性単量体に由来する。着色樹脂粒子の製造に用いた重合性単量体は、製造過程で重合して重合体となり、結着樹脂として着色樹脂粒子中に含まれる。
また、本開示のトナーが含有する外添剤は、以下に説明する製造方法で用いる外添剤と同様である。
【0023】
II.静電荷像現像用トナーの製造方法
本開示の静電荷像現像用トナーは、例えば、着色樹脂粒子を準備する工程と、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させる工程(以下、外添工程と称する場合がある。)と、着色樹脂粒子を含む粒子を篩に供給することにより、当該粒子に含まれる粗大粒子の一部を除去する工程(以下、篩分け工程と称する場合がある。)とを有する製造方法により得ることができる。
なお、本開示において、製造方法が有する各工程は、技術的に可能である限り、順序を入れ替えて行っても良いし、2つ又はそれ以上の工程を1つの工程として同時に行っても良い。
【0024】
1.着色樹脂粒子を準備する工程
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに、乳化重合凝集法、分散重合法、懸濁重合法及び溶解懸濁法等の湿式法に大別される。細線再現性などの印字性能に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーが得られ易いことから、乳化重合凝集法、分散重合法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0025】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子を得て、該樹脂微粒子を着色剤等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する方法である。
また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を、水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0026】
本開示において、着色樹脂粒子は、湿式法又は乾式法を採用して製造することができるが、湿式法の中でも好ましい懸濁重合法により製造することが好ましい。懸濁重合法による着色樹脂粒子の製造方法としては、例えば、水系分散媒体中に、少なくとも重合性単量体、着色剤及び離型剤を含有する重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を調製する工程(以下、懸濁液を調製する工程と称する場合がある)と、前記懸濁液を、重合開始剤の存在下で重合反応に供することにより着色樹脂粒子を形成する工程(以下、重合工程と称する場合がある)とを有する方法を好適に採用することができる。重合性単量体組成物としては、予め調製されたものを用いてもよいが、重合性単量体組成物を調製する工程を更に有していてもよい。また、重合性単量体組成物の材料を水系分散媒体中に投入しながら同時に懸濁を行うことで、重合性単量体組成物の調製と懸濁液の調製を1つの工程中で同時に行ってもよい。また、懸濁重合法による着色樹脂粒子の製造方法は、これら以外の工程を更に含んでいても良い。
以下に、(1)重合性単量体組成物を調製する工程と、(2)懸濁液を調製する工程と、(3)重合工程とを有する懸濁重合法による着色樹脂粒子の製造方法の一例について詳細に説明する。
【0027】
(1)重合性単量体組成物を調製する工程
本工程では、少なくとも重合性単量体、着色剤及び離型剤を含有し、さらに必要に応じて帯電制御剤、極性樹脂及び分子量調整剤等のその他の材料を含有する重合性単量体組成物を調製する。重合性単量体組成物の調製は、各材料を混合することにより行われ、当該混合には、例えば、メディア式分散機が用いられる。
【0028】
[重合性単量体]
本開示において重合性単量体とは、付加重合が可能な官能基を有するモノマーのことをいう。重合性単量体が重合して結着樹脂となる。本開示において、重合性単量体としては、付加重合が可能な官能基としてエチレン性不飽和結合を有する化合物が一般に用いられる。
重合性単量体の主成分としては、重合可能な官能基を1つのみ有するモノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及び2-ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。
これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0029】
得られるトナーの耐熱保存性を向上するために、モノビニル単量体とともに架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーであり、重合反応により樹脂中に架橋結合を形成する重合性単量体である。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールにカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。
これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
架橋性の重合性単量体は、重合性単量体組成物中のモノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~2質量部の割合で用いられる。
【0030】
さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られるトナーの耐熱保存性と低温定着性のバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素-炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000~30,000の反応性の、オリゴマーまたはポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。
マクロモノマーは、重合性単量体組成物中のモノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03~5質量部、より好ましくは0.05~1質量部の割合で用いられる。
【0031】
重合性単量体組成物が含有する重合性単量体の総量は、重合性単量体組成物が含有する全固形分100質量部中、好ましくは60~95質量部、より好ましくは70~90質量部である。なお、本開示において固形分とは、溶媒以外のもの全てであり、例えば液状の単量体等は固形分に含まれる。
本開示のトナーにおいて、上記重合性単量体の重合体の含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは60~95質量部、より好ましくは70~90質量部である。
【0032】
[着色剤]
重合性単量体組成物が含有する着色剤は、特に制限されず、例えばブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が用いられ、具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、具体的には、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、及び213等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、具体的には、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、237、238、251、254、255、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
本開示においては、これらの着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
また、着色剤は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは1~10質量部の割合で用いられる。
本開示のトナーにおいて、着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0033】
[離型剤]
重合性単量体組成物は、定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、離型剤を含有する。離型剤としては、一般にトナー用の離型剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、トナーの低温定着性を向上する点から、モノエステル化合物が好ましく用いられる。
モノエステル化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるモノエステル化合物を好ましく用いることができる。
R1-COO-R2 式(1)
前記式(1)中、R1は炭素数15~21の直鎖アルキル基を示し、R2は炭素数16~22の直鎖アルキル基を示す。R1及びR2は同じ基であってもよいし、互いに異なる基であってもよい。式(1)に示すモノエステル化合物において、原料脂肪酸における炭素数(すなわちR1の炭素数に1を加えた炭素数)と、原料アルコールにおける炭素数(すなわちR2の炭素数)との差は、0~6であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。
【0034】
前記式(1)で表されるモノエステル化合物としては、例えば、パルミチン酸ベヘニル(C15H31-COO-C22H45)、ステアリン酸ベヘニル(C17H35-COO-C22H45)、エイコサン酸ベヘニル(C19H39-COO-C22H45)、ベヘン酸ベヘニル(C21H43-COO-C22H45)、パルミチン酸エイコシル(C15H31-COO-C20H41)、ステアリン酸エイコシル(C17H35-COO-C20H41)、エイコサン酸エイコシル(C19H39-COO-C20H41)、ベヘン酸エイコシル(C21H43-COO-C20H41)、ステアリン酸ステアリル(C17H35-COO-C18H37)、エイコサン酸ステアリル(C19H39-COO-C18H37)、ベヘン酸ステアリル(C21H43-COO-C18H37)、エイコサン酸ヘキサデシル(C19H39-COO-C16H33)、ベヘン酸ヘキサデシル(C21H43-COO-C16H33)等が挙げられる。これらのモノエステル化合物の中でも、ステアリン酸ベヘニル、パルミチン酸ベヘニル、及びベヘン酸ステアリルがより好ましい。
【0035】
なお、前記式(1)で表されるモノエステル化合物は、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付加反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応、エステル交換反応等の方法により製造することができる。また、前記式(1)で表されるモノエステル化合物の製造には適宜触媒を用いることもできる。触媒としては、エステル化反応に用いる一般の酸性又はアルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物等が好ましい。エステル化反応後、再結晶、蒸留等により目的生成物を精製してもよい。
【0036】
本開示において用いることができる離型剤としては、前記式(1)で表されるモノエステル化合物の他にも、例えば、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリストールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラミリステート及びペンタエリスリトールテトララウレート等のペンタエリスリトールエステル化合物、及びヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、及びジペンタエリスリトールヘキサラウレート等のジペンタエリスリトールエステル等の多価アルコールエステル化合物等のエステルワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリン、及びペトロラタム等の石油系ワックス等の炭化水素系ワックス;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、及びホホバ等の天然ワックス;モンタン、セレシン、及びオゾケライト等の鉱物系ワックス;等を挙げることができる。
これらの離型剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本開示において用いられる離型剤は、融点が好ましくは60~75℃、より好ましくは63~72℃、更に好ましくは65~70℃である。離型剤の融点が前記下限値以上であることにより、トナーの耐熱保存性を向上することができ、前記上限値以下であることにより、トナーの定着温度の低下を抑制することができる。
【0038】
本開示において用いられる離型剤の酸価は、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.6mgKOH/g以下、更に好ましくは0.3mgKOH/g以下である。離型剤の酸価が前記上限値以下であることにより、トナーの保存性を向上することができる。
【0039】
本開示において用いられる離型剤の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。離型剤の水酸基価が前記上限値以下であることにより、トナーの保存性を向上することができる。
なお、本開示において酸価及び水酸基価は、日本工業標準調査会(JICS)制定の規準油脂分析手法である、JIS K 0070に準拠して測定される値である。
本開示において用いられる離型剤は、酸価及び水酸基価のいずれもが、前記好ましい上限値以下であることが好ましい。
【0040】
離型剤は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、通常8~40質量部、好ましくは11~35質量部、より好ましくは15~30質量部の割合で用いられる。
本開示のトナーにおいて、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常8~40質量部、好ましくは11~35質量部、より好ましくは15~30質量部である。
離型剤の含有量が前記下限値以上であることにより、トナーの定着ロールからの離型性を向上することができ、前記上限値以下であることにより、耐熱保存性及び耐久性の悪化を抑制することができる。
【0041】
[帯電制御剤]
重合性単量体組成物は、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を含有することが好ましい。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与することができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく用いられる。
【0042】
正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂としては、官能基含有共重合体を用いることができる。正帯電性の帯電制御樹脂としては、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基又は4級アンモニウム塩含有基等の官能基を含有する構成単位を含む官能基含有共重合体を用いることができ、例えば、ポリアミン樹脂、4級アンモニウム基含有共重合体及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。負帯電性の帯電制御樹脂としては、例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩含有基、カルボン酸基又はカルボン酸塩含有基等の官能基を含有する構成単位を含む官能基含有共重合体を用いることができ、例えば、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂として用いられる前記記官能基含有共重合体は、中でも、重合性単量体との相溶性が高い点、及び重合の安定性に優れる点から、前記官能基含有共重合体中の官能基含有構成単位の割合が10質量%以下のものが好ましく、5質量%以下のものがより好ましい。一方、トナーの帯電安定性及び保存性を向上する点から、前記官能基含有共重合体中の官能基含有構成単位の割合は、0.5質量%以上であることが好ましい。帯電制御樹脂が十分に官能基を含有することにより、帯電制御樹脂が、着色樹脂粒子の表面近傍に局在化しやすくなり、帯電制御樹脂が着色樹脂粒子のシェルのように機能することで、トナーの保存性が向上すると推定される。
【0043】
正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂として用いられる前記官能基含有共重合体は、中でも、前記重合性単量体との相溶性が高く、添加量により帯電量を調整し易い点から、スチレン-アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0044】
また、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂として用いられる前記官能基含有共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、50~110℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。前記官能基含有共重合体のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内であると、トナーの保存性を向上することができる。前記官能基含有共重合体は、着色樹脂粒子の表面近傍に局在化しやすく、シェルのように機能することができるため、前記官能基含有共重合体のTgが前記範囲内であると、Tgが十分に高いことにより、トナーの保存性が向上すると推定される。
なお、本開示においてガラス転移温度(Tg)は、例えば、ASTM D3418-82に準拠して求めることができる。具体的には、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製:SSC5200)等を用いて試料を昇温速度10℃/分で昇温し、その過程で得られたDSC曲線の最大級熱ピークを示す温度をガラス転移温度とすることができる。
【0045】
また、帯電制御剤としては、帯電制御樹脂と、帯電制御樹脂以外の他の帯電制御剤とを併用してもよい。
正帯電性の他の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
負帯電性の他の帯電制御剤としては、例えば、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物等が挙げられる。
前記帯電制御剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
本開示において、帯電制御剤は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、通常、0.01~10質量部、好ましくは0.03~8質量部の割合で用いられる。
本開示のトナーにおいて、帯電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常、0.01~10質量部であり、好ましくは0.03~8質量部である。
帯電制御剤の含有量が、前記下限値以上であると、カブリの発生を抑制することができ、前記上限値以下であると、印字汚れを抑制することができる。
【0047】
[極性樹脂]
重合性単量体組成物は、離型剤のブリードを抑制する点から、極性樹脂を含有することが好ましい。本開示において極性樹脂は、ヘテロ原子を含む繰り返し単位を含有する重合体よりなる群から選ばれる。前記極性樹脂としては、具体的には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ヘテロ原子を含むビニル系樹脂等が挙げられる。
前記極性樹脂は、ヘテロ原子含有単量体の単独重合体又は共重合体であってもよいし、ヘテロ原子含有単量体とヘテロ原子非含有単量体との共重合体であってもよい。前記極性樹脂がヘテロ原子含有単量体とヘテロ原子非含有単量体との共重合体である場合は、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードが抑制されやすい点から、当該共重合体を構成する全繰り返し単位100質量%中、ヘテロ原子含有単量体単位の割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0048】
前記極性樹脂に用いられるヘテロ原子含有単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、sec-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、ネオヘキシル(メタ)アクリレート、sec-ヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、及び、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸エステル、並びに(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、即ち(メタ)アクリル系モノビニル単量体;ハロゲン化スチレン、スチレンスルホン酸等のヘテロ原子を含む芳香族ビニル単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン単量体;ビニルピリジン単量体;クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体等のカルボキシル基含有単量体;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等を挙げることができる。これらのヘテロ原子含有単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
前記極性樹脂に用いられるヘテロ原子非含有単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のヘテロ原子を含まない芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体を挙げることができる。これらのヘテロ原子非含有単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
前記極性樹脂は、中でも、前記ヘテロ原子含有単量体が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ポリオキシエチレン基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の極性基を含む極性基含有単量体単位を含有することが、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制しやすい点から好ましい。前記極性基としては、中でも、カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
極性基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体等のカルボキシル基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体;スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等を挙げることができる。これらの極性基含有単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記極性樹脂が極性基含有単量体単位を含有する場合、前記極性基は主鎖又は側鎖の末端に位置する、或いは主鎖又は側鎖にペンダント状に結合していることが、極性樹脂が重合性単量体組成物の液滴の表面に配置されやすくなり、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制しやすい点から好ましい。
【0051】
前記極性樹脂が前記極性基含有単量体単位を含まない場合に、当該極性樹脂が含む前記ヘテロ原子含有単量体単位としては、前記重合性単量体との相溶性が高く、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制しやすい点から、アルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含むことが好ましく、中でも極性が高い点から、アルキル基の炭素数が3以下のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含むことがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種に由来する単量体単位を含むことが更に好ましく、メチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含むことがより更に好ましい。
【0052】
前記極性樹脂としては、中でも、前記重合性単量体との相溶性が高く、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードが抑制されやすい点から、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましく、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと、アクリル酸との共重合体がより好ましい。なお、本開示において、このような(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、アクリル系共重合体と称する場合がある。
前記アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、前記ヘテロ原子含有単量体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルと同様のものを挙げることができる。前記アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル酸エステルは、前記極性基を含有するものであっても、含有しないものであっても良いが、前記極性基を含有しないものが好ましく、中でもアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。前記アクリル系共重合体に用いられるアクリル酸エステルとしては、好適には、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート及びn-ブチルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好適にはエチルアクリレート及びn-ブチルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。前記アクリル系共重合体に用いられるメタクリル酸エステルとしては、好適には、メチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好適にはメチルメタクリレートである。
【0053】
前記アクリル系共重合体においては、前記重合性単量体との相溶性が高く、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制しやすい点から、前記アクリル系共重合体の合成に用いられる(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との総量100質量%に対する(メタ)アクリル酸の割合が、好ましくは0.05~1質量%、より好ましくは0.1~0.6質量%、更に好ましくは0.3~0.5質量%である。
【0054】
前記アクリル系共重合体は、前記重合性単量体との相溶性が高く、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制しやすい点から、共重合体の合成に用いられる単量体の総質量100質量%に対し、メチルメタクリレートを50.0質量%以上含む単量体の共重合体であることが好ましい。前記アクリル系共重合体は、より好ましくは、メチルメタクリレート50.0~99.9質量%と、(メタ)アクリル酸0.1~5.0質量%とを含む単量体の共重合体であり、更に好ましくは、メチルメタクリレート50.0~99.0質量%と、(メタ)アクリル酸0.1~5.0質量%とを含む単量体の共重合体であり、より更に好ましくは、メチルメタクリレート50.0~98.0質量%と、メチルメタクリレートとは異なるアルキル(メタ)アクリレート1.0~5.0質量%と、(メタ)アクリル酸0.1~5.0質量%とを含む単量体の共重合体であり、特に好ましくは、メチルメタクリレート50.0~98.0質量%と、メチルメタクリレートとは異なるアルキル(メタ)アクリレート1.0~5.0質量%と、(メタ)アクリル酸0.2~3.0質量とを含む単量体の共重合体である。
メチルメタクリレートとは異なるアルキル(メタ)アクリレートとしては、ガラス転移点を制御できる点から、エチルアクリレート及びブチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
なお、前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸のいずれとも異なるその他の単量体に由来する単量体単位を少量含んでいてもよい。着色樹脂粒子の粒径を制御しやすい点、及び得られるトナーにおいて離型剤のブリードが抑制されやすい点から、前記その他の単量体の含有割合は、前記アクリル系共重合体の合成に用いられる単量体の総量100質量%中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、前記その他の単量体を含まないことが最も好ましい。
前記その他の単量体としては、例えば、前記ヘテロ原子非含有単量体、及び前記ヘテロ原子含有単量体のうちの(メタ)アクリル系モノビニル単量体以外のもの等を挙げることができる。
【0056】
前記極性樹脂の酸価は、好ましくは0.5~7.0mgKOH/gであり、より好ましくは1.0~5.0mgKOH/gであり、更に好ましくは1.5~3.0mgKOH/gである。前記極性樹脂の酸価が前記下限値以上であることにより、トナーの耐熱保存性、低温定着性及び印字耐久性を向上することができる。前記極性樹脂の酸価が前記上限値以下であることにより、着色樹脂粒子の粒径を容易に制御することができる。
【0057】
前記極性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、6,000~50,000、好ましくは8,000~45,000、より好ましくは9,000~45,000、更に好ましくは10,000~40,000である。前記極性樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であることにより、トナーの耐熱保存性及び耐久性を向上することができ、前記上限値以下であることにより、トナーの定着温度の上昇を抑制することができる。
なお、本開示において、重合体の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)に溶解した試料を用いて、GPCによるポリスチレン換算で求めることができる。
【0058】
前記極性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは60~95℃、より好ましくは65~90℃、更に好ましくは65~85℃、より更に好ましくは70~80℃である。
前記極性樹脂のガラス転移温度が前記下限値以上であることにより、トナーの耐熱保存性を向上することができ、前記上限値以下であることにより、トナーの低温定着性を向上することができる。
【0059】
前記極性樹脂は、市販のものを用いることもできるが、前記ヘテロ原子含有単量体を含有する単量体を、溶液重合法、水溶液重合法、イオン重合法、高温高圧重合法、懸濁重合法等の公知の方法により重合することにより製造することができる。
また、前記極性樹脂が共重合体である場合、当該共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
また、前記極性樹脂は、溶解性が向上する点から、より細かく粉砕されていることが好ましい。
【0060】
前記極性樹脂の含有量は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.8~2.5質量部、より好ましくは1.0~2.2質量部、更に好ましくは1.0~2.0質量部である。
本開示のトナーにおいて、前記極性樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.8~2.5質量部、より好ましくは1.0~2.2質量部、更に好ましくは1.0~2.0質量部である。
前記極性樹脂の含有量が前記下限値以上であることにより、着色樹脂粒子の粒径を制御しやすく、また、得られるトナーにおいて離型剤のブリードを抑制することができ、更に、耐熱保存性及び低温定着性のバランスを向上し、印字耐久性を向上させることができる。一方、前記極性樹脂の含有量が前記上限値以下であることにより、トナーの定着温度の上昇を抑制することができる。
【0061】
[分子量調整剤]
重合性単量体組成物は、更に、分子量調整剤を含有することが好ましい。分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分子量調整剤は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の割合で用いられる。
【0062】
(2)懸濁液を調製する工程
本工程は、上述した工程により得られた重合性単量体組成物を、水系分散媒体中で造粒し、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を調製する工程である。
【0063】
本工程に用いられる水系分散媒体は、少なくとも水系媒体を含む。本開示において、水系媒体は、水、低級アルコール及び低級ケトン等の親水性溶剤、及び、水と親水性溶剤との混合物からなる群より選ばれる媒体であり、水を主成分とする媒体であることが好ましく、水単独であってもよい。水としては、通常、イオン交換水が用いられる。親水性溶剤を用いる場合は、重合を阻害しない範囲に親水性溶剤の含有量を調整することが好ましい。
水系媒体は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、通常、100~3000質量部、好ましくは200~2000質量部の割合で用いられる。
【0064】
水系分散媒体は、分散安定化剤を含有することが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。これらの分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られるトナーが画像を鮮明に再現することができ、且つ環境安定性に優れたものとなる。また、水系分散媒体は、難水溶性無機化合物が溶媒中で分散してコロイドとなっていることが好ましい。
なお、本開示において難水溶性無機化合物は、100gの水に対する溶解度が0.5g以下である無機化合物であることが好ましい。
分散安定化剤は、重合性単量体組成物中の重合性単量体100質量部に対して、通常、0.1~20質量部の割合で用いられる。
【0065】
本工程においては、重合性単量体組成物を水系分散媒体中で造粒する際に、重合性単量体組成物と水系分散媒体との混合液に重合開始剤を添加して、重合性単量体組成物の液滴形成を行うことが好ましい。なお、重合開始剤は、重合性単量体組成物が水系分散媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系分散媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ-t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、及びt-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤の中でも、残留重合性単量体を少なくすることができ、トナーの印字耐久性を向上できることから、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留重合性単量体を低減できる点から、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステル、すなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0066】
また、懸濁液を調製する工程においては、櫛歯型同心リングである回転子と固定子との組み合わせを有する分散機と、分散液供給槽とを有する撹拌装置が用いられ、前記水系分散媒体及び前記重合性単量体組成物を含む分散液が、前記分散液供給槽から前記分散機へ供給され、前記分散機により撹拌された後、前記分散液供給槽へ排出されることを繰り返して前記撹拌装置内を循環することにより、前記懸濁液が調製され、前記分散機の回転子の周速が15~40m/sであり、下記式(I)により算出される前記分散液の循環回数が4~30であることが好ましい。
式(I)
分散液の循環回数={分散液の流量(リットル/h)×処理時間(h)}/分散液の仕込み量(リットル)
ここで、回転子の周速とは、回転子の先端速度を意味する。また、分散液の循環回数は、分散機内を分散液が循環する回数を意味する。つまり、分散機における分散液の流量(リットル/h)に、分散機による処理時間(h)を乗ずると、分散機で処理した延べ処理量が得られる。この延べの処理量を分散液の仕込み量(リットル)で割れば、分散液の循環回数を算出することができる。
前記回転子の周速を15m/s以上、且つ前記循環回数を4以上とすることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができる。更に、前記循環回数を30以下とすることにより、トナーの生産性の悪化を抑制することができる。また、一般的な分散機を使用することができる利便性の観点から、前記回転子の周速は40m/s以下であることが好ましい。
前記回転子の周速は、好ましくは15~35m/sであり、より好ましくは15~30m/sであり、更に好ましくは15~25m/sである。
前記循環回数は、より好ましくは10~25であり、更に好ましくは10~20である。
【0067】
前記攪拌装置が有する前記分散機においては、回転子を高速で回転させて、回転子の内側から固定子の外側に分散液を流通させ、回転子と固定子との間隙で分散液を撹拌する。当該分散液が有する回転子と固定子との組み合わせは、1段階であってもよく、2段階以上の多段階であってもよい。得られる着色樹脂粒子の粒径分布を狭くする点からは、多段階であることが好ましく、2段階又は3段階であることがより好ましく、3段階であることが特に好ましい。回転子と固定子との組み合わせにおける回転子及び固定子の層数、並びに、回転子及び固定子が有する歯数は、製造するトナーの粒径に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、回転子と固定子との組み合わせが多段階で配置されている場合は、分散液の注入口側に最も近い回転子及び固定子の歯数が、他の回転子及び固定子の歯数より少ないように配置されていることが好ましい。例えば、分散機内における回転子と固定子との組み合わせの配置が、分散液の注入口側から出口側に向けて、粗歯、中歯、細歯の順の3段階、粗歯、中歯、中歯の順の3段階、粗歯、細歯、細歯の順の3段階、粗歯、中歯の順の2段階、及び粗歯、細歯の順の2段階から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0068】
前記攪拌装置においては、例えば、前記水系分散媒体及び前記重合性単量体組成物を含む分散液が分散液供給槽に注入されると、当該分散液は、分散液供給槽から前記分散機へ供給され、前記分散機により撹拌された後、分散液供給槽へ排出されることを繰り返して、撹拌装置内を循環した後、重合反応器に供給される。
分散液の送液方法は、特に限定されず、例えば、送液ポンプを用いる方法等が挙げられる。また、分散機から排出させる分散液の流量を調整することにより、分散機の内圧を調整することができる。分散機の内圧は、好ましくは0.01~15MPa、より好ましくは0.05~10MPa、更に好ましくは0.1~5MPaである。分散機の内圧を前記範囲内にすることにより、キャビテーションによる泡の発生を抑制しつつ、微細な液滴を効率良く形成することができる。
【0069】
本開示の製造方法に用いられる撹拌装置は、分散機の回転軸が、水平方向に沿って伸びる横型のものであってもよいし、重力方向に沿って伸びる縦型のものであってもよい。
本開示の製造方法においては、撹拌装置として市販のものを用いることができる。例えば、大平洋機工(株)製のマイルダー(:商品名)、(株)ユーロテック製のキャビトロン(:商品名)等の横型多段階インライン分散機、IKA製のインライン分散機(例えばDISPAX-REACTOR(登録商標) DRS(:商品名)等)等の縦型多段階インライン分散機等を挙げることができる。
【0070】
(3)重合工程
本工程では、上述した工程で得られた懸濁液を重合反応に供することにより、着色樹脂粒子を形成する。
前記懸濁液には、重合反応時に、水溶性オキソ酸塩を更に添加することが好ましい。重合時に水溶性オキソ酸塩を添加することにより、液滴の凝集及び微粉の発生を抑制し、粒径分布を狭くすることができる。水溶性オキソ酸塩としては、例えば、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩等が挙げられ、好ましくはホウ酸塩及びリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはホウ酸塩が用いられる。ホウ酸塩としては、例えば、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、及びこれらホウ酸塩の水和物等が挙げられる。リン酸塩としては、例えば、ホスフィン酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、次リン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム、三リン酸ナトリウム、cyclo-四リン酸ナトリウム、ホスフィン酸カリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、及びこれらリン酸塩の水和物等が挙げられる。ホウ酸塩の中でも、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、及びこれらホウ酸塩の水和物が好ましく、四ホウ酸ナトリウム十水和物が特に好ましい。
水溶性オキソ酸塩は、通常、分散安定化剤として用いられる無機化合物100質量部に対して、0.1~1,000質量部の割合で用いられ、好ましくは1~100質量部の割合で用いられる。
【0071】
懸濁液を重合反応に供する際の重合温度は、特に限定はされないが、50℃以上とすることが好ましく、60~95℃とすることがより好ましい。また、重合反応の時間は、1時間~20時間とすることが好ましく、2時間~15時間とすることがより好ましい。
【0072】
懸濁液を重合反応に供して得られる着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子を所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子のコア層として用いることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、コア層の外側を、コア層とは異なる材料で形成されたシェル層で被覆した構造を有する。低軟化点を有する材料よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する材料で被覆することにより、トナーの定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0073】
懸濁液を重合反応に供して得られる着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0074】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造方法を以下に説明する。
懸濁液を重合反応に供して得られる着色樹脂粒子が分散した分散液に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0075】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
シェル用重合性単量体の添加量は、特に限定はされないが、コア層に用いた重合性単量体100質量部に対し、通常1~10質量部である。なお、コアシェル型の着色樹脂粒子の結着樹脂には、コア層中の結着樹脂とシェル層中の結着樹脂が含まれる。
【0076】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’-アゾビス-(2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0077】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合反応の時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
【0078】
(4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
本開示の製造方法においては、前記重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液を、常法に従い、洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥する操作を、必要に応じて数回繰り返す工程を更に有することが好ましい。
【0079】
前記洗浄は、分散安定化剤として難水溶性無機化合物を用いた場合に、前記重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液から、難水溶性無機化合物を除去するために行われる。前記洗浄の方法としては、例えば、着色樹脂粒子の水分散液に酸、又はアルカリを添加することにより、難水溶性無機化合物を水に溶解し除去する方法が挙げられる。中でも、酸を添加して、着色樹脂粒子の水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0080】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
後述する外添工程を、篩分け工程の前に行う場合は、外添工程において、外添剤の付着と共に着色樹脂粒子の乾燥を行うことができるので、外添工程前の着色樹脂粒子は、含水率が7~20%程度となるように乾燥させればよい。
【0081】
前記工程を経て得られる着色樹脂粒子は、体積平均粒径(Dv)が好ましくは3~15μm、より好ましくは4~12μmである。Dvが前記下限値以上であることにより、トナーの流動性を向上することができ、転写性の悪化及び画像濃度の低下を抑制することができる。Dvが前記上限値以下であることにより、形成される画像の解像度の低下を抑制することができる。
【0082】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0~1.3であり、より好ましくは1.0~1.2である。Dv/Dnが1.3以下であることにより、転写性、画像濃度及び解像度の低下を抑制することができる。なお、着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
【0083】
着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96~1.00であることが好ましく、0.97~1.00であることがより好ましく、0.98~1.00であることがさらに好ましい。
着色樹脂粒子の平均円形度が1.00に近いほど、印字の細線再現性を向上することができる。着色樹脂粒子の平均円形度は、トナーの平均円形度と同様にして求めることができる。
【0084】
2.外添工程
外添工程は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させる工程である。外添剤を付着させる着色樹脂粒子は、後述する篩分け工程を行う前の着色樹脂粒子であってもよいし、篩分け工程を行った後に得られる着色樹脂粒子であってもよい。或いは、篩分け工程を行う前に、着色樹脂粒子に外添剤の一部を付着させる第1の外添工程を行い、篩分け工程を行った後、得られた粒子に更に外添剤を付着させる第2の外添工程を行ってもよい。本開示のトナーの製造方法においては、後述する篩分け工程において、篩に供給される粒子の流動性を向上する点から、篩分け工程前に、少なくとも一部の外添剤を着色樹脂粒子の表面に付着させることが好ましい。
【0085】
外添工程は、例えば、着色樹脂粒子を外添剤と共に混合攪拌して外添処理をすることにより行われる。
外添処理を行う攪拌機は、着色樹脂粒子の表面に外添剤を付着させることができる攪拌装置であれば特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、ホソカワミクロン社製)、及びメカノミル(:商品名、岡田精工社製)等の混合攪拌が可能な攪拌機を用いて外添処理を行うことができる。
また、篩分け工程前に行う外添処理では、含水率7~20%程度の着色樹脂粒子と、外添剤を、上記撹拌機を用いて混合攪拌しながら乾燥させることにより外添処理を行うと、乾燥中の着色樹脂粒子の流動性が向上するため、着色樹脂粒子の乾燥時間を短縮できる点で好ましい。
【0086】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及び酸化セリウム等の無機微粒子;ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の有機微粒子;等が挙げられる。有機微粒子においては、例えば、コアが(メタ)アクリル酸エステル樹脂を含み、シェルがポリスチレン樹脂を含む等のコアシェル型の粒子であってもよい。これらの中でも、無機微粒子が好ましく、無機微粒子の中でも、シリカ及び酸化チタンから選ばれる少なくとも1種の微粒子が好ましく、シリカ微粒子がより好ましい。
これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることが好ましい。
本開示に用いられる外添剤としては、疎水化された微粒子を含むことが好ましく、疎水化された無機微粒子を含むことがより好ましく、疎水化処理されたシリカ微粒子を含むことがより更に好ましい。外添処理と併せて着色樹脂粒子の乾燥を行う場合は、乾燥効率が向上する点から、乾燥時に添加する外添剤が、疎水化された微粒子を含むことが好ましく、疎水化された無機微粒子を含むことがより好ましく、疎水化処理されたシリカ微粒子を含むことがより更に好ましい。
また、帯電特性が向上する点から、外添剤として、疎水化シリカ微粒子と有機微粒子とを併用することも好ましい。
【0087】
本開示に用いられる外添剤の個数平均一次粒径は、特に限定はされないが、トナーに含まれる上記粗大粒子Aの粒子数を上記特定量に調整しやすい点から、好ましくは5~100nmであり、より好ましくは5~50nmである。
外添処理と併せて着色樹脂粒子の乾燥を行う場合は、乾燥効率が向上する点から、乾燥時に添加する外添剤の個数平均一次粒径が5nm~30nmであることが好ましく、5nm~15nmであることがより好ましい。
【0088】
トナーに含まれる上記粗大粒子Aの粒子数を上記特定量に調整しやすい点から、外添剤の添加量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。また、外添剤の添加量が前記下限値以上であることにより、転写残の発生を抑制することができ、前記上限値以下であることにより、カブリを抑制することができる。
外添処理と併せて着色樹脂粒子の乾燥を行う場合は、乾燥効率が向上する点から、乾燥時に添加する外添剤の添加量が、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~1質量部、より好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0089】
3.篩分け工程
篩分け工程は、着色樹脂粒子を得た後、着色樹脂粒子を含む粒子を篩に供給することにより、当該粒子に含まれる粗大粒子の一部を除去する工程である。篩分け工程により、トナー中の上記粗大粒子A及び上記粗大粒子Bの粒子数を上述したように制御することができる。
【0090】
篩分け工程は、着色樹脂粒子を準備する工程の後に行えばよく、外添工程の前に行ってもよいし、外添工程の後に行ってもよいし、上述したように、第1の外添工程の後に篩分け工程を行い、その後更に第2の外添工程を行ってもよい。外添工程の前に篩分け工程を行う場合、篩に供給する粒子は少なくとも着色樹脂粒子を含有する粒子であり、外添工程の後に篩分け工程を行う場合、篩に供給する粒子は、少なくとも着色樹脂粒子及び外添剤を含有する混合粒子である。
【0091】
篩分け工程に用いる篩としては、例えば、ステンレス網等の金網、又は、ナイロン網、ポリエステル網、ポリプロピレン網等の樹脂網等の網を用いることができる。金属製の網は、網のワイヤーが伸縮し難いため、長期使用においても目開きの大きさを維持しやすい点で好ましい。樹脂製の網は、網のワイヤーが適度に伸縮するため、目開きに近い粒径の粗大粒子が網に突き刺さり難く、使用中の処理能力の低下が起こりにくい点で好ましい。また、網のワイヤーは、静電防止処理が行われているものが好ましい。
【0092】
篩分け工程において、篩に用いられる網としては、経線及び緯線が等間隔に配置されており、経線の間隔と緯線の間隔が同一である網を用いる。経線及び緯線が等間隔に配置され、当該経線の間隔と緯線の間隔が同一である網では、緯線を基準とした目開きと経線を基準とした目開きが同一であることから、目開きは網のどの箇所で測定しても誤差を除けば同一である。
篩に用いられる網の織り方は、経線と緯線が直交するものであることが好ましく、例えば、平織、綾織、トンキャップ織等の一般的な織り方であってよい。中でも、目開きの大きさを維持しやすく、所望の粗大粒子を効率良く除去できる点から、平織が好ましい。
【0093】
本開示において、篩分け工程としては、前記着色樹脂粒子を含有する粒子を、空気流を用いて篩に供給することにより、当該粒子に含まれる粗大粒子の一部を除去する工程であり、
前記篩が少なくとも1枚の網を含み、前記篩に用いられる網のうち、目開きが最小である網の目開きが25μm以上40μm以下であり、
前記空気流が、前記着色樹脂粒子を含有する粒子とともに供給される1次エア、及び前記粗大粒子の回収口側から供給される2次エアにより発生されるものであり、前記1次エアの流量F1[m3/min]と、前記2次エアの流量F2[m3/min]との比(F1/F2)が18以上50以下である篩分け工程が好ましい。
当該好ましい篩分け工程により、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bの粒子数を、容易に上述した粒子数とすることができる。
空気流を用いて粒子を篩に供給した場合、篩に引っかかった粗大粒子は、空気流により押されて篩を通過する場合がある。特に、円形度が低い粗大粒子は、扁平な形状であることが多いため、一旦篩に引っかかっても、空気流に押されて篩を通過しやすい。上述した好ましい篩分け工程では、空気流を用いて粒子を篩に供給する方法において、篩に用いられる網の目開きと、空気流を発生させる1次エアの流量F1と2次エアの流量F2を上記のように調整することにより、比較的円形度の低い粗大粒子Aは適度に篩を通過させて、比較的円形度の高い粗大粒子Bは篩を通過させないことができるため、上記粗大粒子Bを効率良く除去し、上記粗大粒子Aを適度に残留させて、トナー1.0g中における粗大粒子A及び粗大粒子Bの粒子数を、上述した粒子数に容易に制御することができると推定される。
【0094】
空気流を用いて被処理粉体を篩に供給することができる篩機としては、特に限定はされないが、例えば、ブロースルー式篩機及び風力篩分機等を挙げることができる。中でも、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bを上述した粒子数に制御しやすい点及び回収率に優れる点から、ブロースルー式篩機が好ましく用いられる。
ブロースルー式篩機の市販品としては、例えば、ハイボルター(商品名、東洋ハイテック株式会社製)、スピンエアシープ(商品名、株式会社セイシン企業製)などを挙げることができる。
被処理粉体とともに供給される1次エア、及び粗大粒子の回収口側から供給される2次エアにより空気流を発生させるためには、例えば、篩機として、網上品回収口から網側に2次エアを導入する2次エア吸気機構を具備する篩機を用いればよい。2次エア吸気機構は、網上品として回収される粉体を網側に巻き上げ、再び篩分けするための機構である。
【0095】
図1に、本開示の静電荷像現像用トナーの製造に使用可能な篩分けシステムの一例の概略図を示す。
図1に示す篩分けシステムでは、着色樹脂粒子を含む粒子を供給する供給機11から、1次エア吸気機構12により供給される1次エアによって、粒子が篩機13に供給される。篩機13に供給された粒子のうち、篩機13が備える網14を通過しなかった粒子は、粗大粒子落下口15を通過する途中で、2次エア吸気機構16により導入される2次エアにより再度網14側に巻き上げられるか、或いは、粗大粒子落下口15を通過して、粗大粒子回収容器17に回収される。なお、2次エア吸気機構16には、エアの流量を調整するための流量調整バルブ22が設けられている。篩機13に供給された粒子のうち、網14を通過した粒子は、ブロアー21による気流に乗って、配管18、サイクロン19を通って回収容器20に回収される。
【0096】
また、篩分け工程では、前記着色樹脂粒子を含有する粒子が、
図2に示すようなエジェクター1を介して篩に分散供給されることが好ましい。エジェクター1は、圧縮空気を空気吹き出しノズル2より吹き出し、部分的に真空にして粉流体4を粉流体吸入ノズル3より吸入して分散させて供給する分散機である。エジェクター1を使用することにより、前記着色樹脂粒子を含有する粒子を、篩に対して均一に供給することができ、篩の寿命を延ばすことができる。
【0097】
上記好ましい篩分け工程では、篩に用いられる網のうち、目開きが最小である網の目開きを25μm以上40μm以下とする。ここで、目開きが最小である網とは、篩に用いられる網が1枚である場合は当該網のことであり、篩に用いられる網が複数枚である場合は、目開きが最も小さい網のことである。目開きが最小である網の目開きが上記範囲内であることにより、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bの粒子数を上述した粒子数に容易に制御することができる。また、目開きが最小である網の目開きが、上記下限値以上であることにより、目詰まりを抑制することができる。目開きが最小である網の目開きの上限は、好ましくは38μm以下である。
【0098】
上記好ましい篩分け工程では、上記1次エアの流量F1[m3/min]と、上記2次エアの流量F2[m3/min]との比(F1/F2)を18以上50以下とする。上記比(F1/F2)が上記範囲内であることにより、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bの粒子数を上述した粒子数に容易に制御することができる。また、上記比(F1/F2)が上記下限値以上であることにより、粗大粒子Bを効率良く除去することができ、また、目詰まりを抑制することができる。上記比(F1/F2)が上記上限値以下であることにより、粗大粒子Aをトナー中に適度に残留させることができる。また、上記比(F1/F2)を上記上限値以下とすると、トナー粒子の回収率の低下を抑制することができる。上記比(F1/F2)の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは22以上であり、上記比(F1/F2)の上限は、好ましくは48以下、より好ましくは46以下である。
なお、上記比(F1/F2)の値は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、整数に丸めた値とする。
1次エアの流量F1と2次エアの流量F2の合計であるブロアー風量は、特に限定はされず、篩の面積に応じて、上記比(F1/F2)が上記範囲内になるように、適宜調整すればよい。
【0099】
篩として用いられる網としては、中でも、破損を抑制し、粗大粒子を効率良く除去する点から、2枚以上の金網を積層した積層金網が好ましく、目開きが異なる2枚以上の金網を積層した積層金網がより好ましい。また積層金網としては、2枚以上の金網を焼結により張り合わせた積層金網が好ましい。
【0100】
積層金網は、前記着色樹脂粒子を含有する粒子の供給側に目開きが最小の金網が配置され、目開きの大きさ順に金網が積層されることが好ましい。
また、開孔率を極力低下させない観点から、
図3に示すような、積層金網を構成する全ての金網の経線及び全ての金網の緯線が、それぞれ略平行である積層金網を使用することが好ましい。
【0101】
積層金網が有する金網の目開きは、目開きが最小である金網の目開きが上述した範囲内であればよく、目開きが最小である金網以外の他の金網の目開きは特に限定はされないが、積層金網が有する全ての金網から任意に選択される2枚の金網において、目開きの比が2~30の範囲内あることが好ましく、10~25の範囲内であることがより好ましく、12~20の範囲内であることがさらに好ましい。ここで、目開きの比とは、2枚の金網のうち、目開きが相対的に小さい金網の目開きに対する、目開きが相対的に大きい金網の目開きの比である。上記目開きの比を上記範囲内とすることにより、積層金網の補強効果を向上し、目詰まりを抑制することができる。なお、目開きの比の値は、上記F1/F2と同様に整数に丸めた値とする。
【0102】
積層金網が有する金網の枚数に特に制限はないが、4枚以下であることが好ましく、3枚以下であると更に好ましく、2枚であることが最も好ましい。
【0103】
また、積層金網が有する金網の全ての目開きが25~850μmの範囲内である事が好ましい。積層金網が有する金網の目開きが上記下限値以上であることにより、金網の破損及び目詰まりを抑制することができ、一方で、上記上限値以下であることにより、積層金網の強度を向上させることができる。
【0104】
また、網のワイヤーの線径は、特に限定はされないが、目開きが最小である金網のワイヤーの線径が、20~90μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。
積層金網においては、積層金網が有する金網から任意に選択される2枚の金網の線径の比が、1.1~26の範囲内であることが好ましく、1.15~20の範囲内であることがより好ましい。ここで、2枚の金網の線径の比とは、線径が相対的に小さい金網の線径に対する、線径が相対的に大きい金網の線径の比である。
また、積層金網が有する金網の全ての線径が20~550μmの範囲内であることが好ましく、25~525μmの範囲内であるとより好ましい。
【0105】
上記好ましい篩分け工程においては、空気流を用いて着色樹脂粒子を含有する粒子を篩に供給する際に、空気に対する粒子の固気比を、質量換算で0.05~0.37とすることが好ましく、0.07~0.34とすることがより好ましく、0.10~0.30とすることが更に好ましい。固気比が上記下限値以上であると、十分な量の粒子を篩に供給することができるため、生産性が向上し、固気比が上記上限値以下であると、粒子を空気流中に均一に分散することができるため、目詰まりを抑制し、回収率の低下を抑制する。
【0106】
本開示において、質量換算での空気に対する粒子の固気比は、以下の式(i)により求める。
【0107】
式(i)
固気比(kg/kg)=粒子供給レート(kg/Hr)/空気の供給レート(kg/Hr)
【0108】
式(i)中、空気の供給レートは以下の式(ii)により求める。
【0109】
式(ii)
空気の供給レート(kg/Hr)=ブロワー風量(m3/Hr)×空気密度(kg/m3)
【0110】
本開示では、式(ii)において空気密度を0℃、1気圧下の密度である1.293kg/m3として算出する。
【0111】
また、篩分け工程においては、篩前後の圧力差が通常3kPa以下、好ましくは2kPa以下となるようにして粗大粒子の除去を行うことが好ましい。篩前後の圧力差を前記範囲となるように粗大粒子の除去を行うことにより、篩の目詰まりを抑制することができる。
【0112】
本開示においては、円相当径が200μm以上の粗大粒子乃至異物を除去するために、上述した好ましい篩分け工程で用いられる網よりも目開きの大きい網を用いた篩分け工程を更に有していてもよい。円相当径が200μm以上の粗大粒子乃至異物を除去するための篩分け工程は、特に限定はされないが、外添工程の後に行うことが好ましい。
【0113】
なお、本開示においては、このようにして得られるトナーを1成分現像剤として用いてもよいし、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤として用いてもよい。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0115】
[製造例1:共重合体1の製造]
反応容器内にトルエン200部を投入し、トルエンを攪拌しながら反応容器内を十分に窒素で置換した後、90℃に昇温した。その後、メチルメタクリレート96.2部、エチルアクリレート3.5部、アクリル酸0.4部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)2.8部の混合溶液を、2時間かけて反応容器中へ滴下した。更に、トルエン還流下で10時間保持することにより、重合を完了させ、その後、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして共重合体1(Tg77.8℃、酸価2.4mgKOH/g、重量平均分子量Mw12500)を得た。
なお、共重合体1の重量平均分子量Mwは、GPCによるポリスチレン換算で求めた。測定用の試料は、重合体を2mg/mLの濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、超音波処理を10分行った後、0.45μmメンブランフィルターを通して試料とした。測定条件は、温度:40℃、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/min、濃度:0.2wt%、試料注入量:100μLとし、カラムは、東ソー(株)製、GPC TSKgel MultiporeHXL-M(30cm×2本)を用いた。また、重量平均分子量Mw1,000~300,000間のLog(Mw)-溶出時間の一次相関式が0.98以上の条件で測定した。
【0116】
[実施例1]
1.篩機の準備
目開きが34μmの第1の金網、及び目開きが617μmの第2の金網を、それぞれの経線と緯線が互いに平行である状態で焼結して張り合わされた積層金網を準備した。なお、各実施例で使用した全ての金網は、経線と緯線が直交するものであり、且つ、当該経線及び緯線が等間隔に配置され、当該経線の間隔と緯線の間隔が同一である金網(金網の開孔部は正方形)である。なお、第1の金網の目開きに対する第2の金網の目開きの比は、18であった。
前記積層金網を、第1の金網側から粒子が供給されるように、ブロースルー式篩機(商品名:ハイボルター、型式:NR-450S、東洋ハイテック株式会社製)に装着した。
【0117】
2.着色樹脂粒子の準備
(1)コア用重合性単量体組成物の調製
モノビニル単量体としてスチレン77部及びn-ブチルアクリレート23部、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:♯25B)7部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.2部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.3部、および極性樹脂(製造例1で得られた共重合体1)1.0部を、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行って混合物を得た。この混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(官能基として4級アンモニウム塩を含有するスチレンアクリル樹脂、4級アンモニウム塩の官能基を含む単量体の共重合割合:2質量%)1部、離型剤としてステアリン酸ベヘニル(数平均分子量Mn:592)20部を添加、混合して、コア用重合性単量体組成物を得た。
【0118】
(2)水系分散媒体の調製
他方、攪拌槽において、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)7.4部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)4.1部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の無機水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0119】
(3)シェル用重合性単量体の調製
一方、メチルメタクリレート2部及びイオン交換水65部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を調製した。
【0120】
(4)懸濁液の調製
上記水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記コア用重合性単量体組成物を投入して攪拌し、そこへ重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソブチレート(日油社製、商品名:パーブチルIB)6部を添加した。その後、インライン型乳化分散機(大平洋機工(株)製、商品名:マイルダー)を用いて、回転子の周速を23.6m/s、回転数を15,000rpmとして、前記式(I)により算出される分散液の循環回数が10になるまで循環しながら分散処理を行うことにより、水系分散媒体中にコア用重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を調製した。
【0121】
(5)着色樹脂粒子の形成
上記にて調製した懸濁液に、四ホウ酸ナトリウム十水和物1部を添加した。四ホウ酸ナトリウム十水和物を添加した懸濁液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃に昇温して重合反応を行った。重合転化率がほぼ100%に達した後に、上記にて調製したシェル用重合性単量体の水分散液と、シェル用重合開始剤として2,2'-アゾビス(2-メチル-N-(2-ハイドロキシエチル)-プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名:VA-086、水溶性)0.3部を反応器に添加した。さらに、4時間重合を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル構造の着色樹脂粒子の水分散液を得た。
【0122】
(6)後処理工程
上記着色樹脂粒子の水分散液を、希硫酸により洗浄(25℃、10分間)して、pHを4.5以下にした。次いで、ろ過により水を分離した後、新たにイオン交換水200部を加えて再スラリー化し、洗浄、ろ過、脱水を室温(25℃)で数回繰り返す水洗浄処理を行った。得られた固形分をろ過分離した後、含水率10%の着色樹脂粒子を得た。なお、着色樹脂粒子の含水率は、105℃のオーブンにて2時間乾燥させたときの重量減少により求めた。
【0123】
3.第1の外添工程
得られた着色樹脂粒子100部に、外添剤として、環状シラザンで疎水化処理した個数平均一次粒径が7nmの疎水化シリカ微粒子0.2部を添加し、円錐型混合機(ホソカワミクロン社製、商品名:ナウタミキサー)を用いて、45℃で10時間混合攪拌して乾燥させた。
【0124】
4.篩分け工程
前記ブロースルー式篩機を用いて、ブロアー風量を14m3/min、1次エアの流量F1を13.4m3/min、2次エアの流量F2を0.6m3/minとし、前記第1の外添工程により得られた粒子を、空気流により1時間に亘って篩に供給することにより、当該粒子の篩分けを行った。
【0125】
5.第2の外添工程
上記篩分け工程により得られた混合粒子(着色樹脂粒子100部、疎水化シリカ微粒子0.2部)に、外添剤として、アミノ変性シリコーンオイルで疎水化処理した個数平均一次粒径が35nmの疎水化シリカ微粒子1部を添加し、高速攪拌機(日本コークス工業社製、商品名:FMミキサー)を用いて、混合攪拌して外添処理を行うことにより、実施例1の静電荷像現像用トナーを作製した。
【0126】
[実施例2~6及び比較例1~4]
実施例1において、積層金網に用いる第1の金網及び第2の金網として、表1に示す目開きの金網を用い、篩分け工程における1次エアの流量F1及び2次エアの流量F2を表1に従って変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~4の静電荷像現像用トナーを作製した。
【0127】
[比較例5]
実施例1において、篩機として、前記ブロースルー式篩機の代わりに、振動式篩機((株)興和工業所製、円型振動ふるい機)を用い、積層金網に用いる第1の金網及び第2の金網として、表1に示す目開きの金網を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の静電荷像現像用トナーを作製した。
【0128】
[比較例6]
1.篩機の準備
実施例1で用いた篩機と同じ篩機を用いた。
【0129】
2.着色樹脂粒子の準備
<樹脂粒子分散液の調製>
スチレン320部、n-ブチルアクリレート80部、β-カルボキシエチルアクリレート9部、1,10デカンジオールジアクリレート1.5部及びドデカンチオール2.7部を混合溶解した。得られた混合物を、アニオン性界面活性剤4部を含有するイオン交換水550部に溶解し、さらに撹拌槽中で分散、乳化し、10分間で徐々に撹拌、混合しながら、過硫酸アンモニウム6部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次いで、系内の窒素置換を十分に行った後、撹拌槽内を撹拌しながら撹拌槽ジャケットを槽内温度が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続することにより樹脂粒子分散液を得た。
【0130】
<着色剤粒子分散液の調製>
フタロシアニン顔料(大日精化社製、PVFASTBLUE)90部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)10部、及びイオン交換水240部を撹拌槽で混合し、これを分散圧力196MPaに設定したアルティマイザHJP-25070(株式会社スギノマシン製)を用いて分散処理し、着色剤粒子分散液を調製した。
【0131】
<離型剤分散液の調製>
パラフィンワックス30部、アニオン性界面活性剤2.5部、及びイオン交換水67.5部を95℃に加熱して、ホモジナイザを用いて分散した後、ダイノーミルで分散処理して離型剤分散液を得た。
【0132】
<着色樹脂粒子の作製>
イオン交換水400部、樹脂粒子分散液240部、着色剤分散液44部、離型剤分散液56部、無機微粒子分散液(日産化学社製、スノーテックスOL)12部及び無機微粒子分散液(日産化学社製、スノーテックスOS)10部を撹拌槽中に投入し、ホモジナイザで十分に混合、分散した。得られた分散液に、凝集剤(浅田化学社製、ポリ塩化アルミニウム)0.5部、イオン交換水100部の混合液を、撹拌槽を撹拌しながら10分間かけて添加し、添加終了後そのまま40℃まで緩やかに加熱して30分間保持した後49℃まで加熱した。49℃で40分保持した後、さらに温度を上げて52℃で40分間保持した。
分散液にさらに上記樹脂粒子分散液65部を緩やかに添加し、さらに温度を上げて53℃で1時間保持した。
次に、1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液をpHが6.0になるように添加した後、撹拌を継続しながら85℃まで緩やかに加熱し60分間保持した。その後96℃まで加熱し、1mol/リットルの硝酸水溶液をpH5.0になるまで加え、5時間保持した。
その後、得られたトナースラリーを40℃まで冷却し、このトナースラリーを目開き15μm網で篩分処理した後、フィルタプレス(東京エンジニアリング社製)でろ過し、着色樹脂粒子を得た。
【0133】
得られた着色樹脂粒子100部に対して500部のイオン交換水をフィルタプレス装置内のトナーに通過させ、続けて300部のイオン交換水に1mol/リットルの硝酸水溶液をpH3.0になるまで加えた酸洗浄水を通過させ、更に400部のイオン交換水を通過させ、圧搾、脱水した後、湿潤トナーを得た。
この湿潤トナーをランデルミルRM-1(徳寿工作所製)にて解砕し、乾燥原料としての湿潤トナーを得た。
【0134】
湿潤トナーの供給機として、ロスインウェイトフィーダ((株)クマエンジニアリング製、602型)を、気流式乾燥機として、フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業製)を用い、乾燥を実施した。外添剤混合装置としては、ヘンシェルミキサ(三井鉱山製)を用いた。トナー100部に対し、外添剤として疎水性シリカ(体積平均粒径0.1μm)を1.5部、酸化セリウム(体積平均粒径0.7μm)を0.55部、ステアリン酸亜鉛(体積平均粒径7.69μm)を0.3部とを混合し、トナー粒子を得た。
【0135】
3.篩分け工程
前記ブロースルー式篩機を用いて、ブロアー風量を14m3/min、1次エアの流量F1を12.8m3/min、2次エアの流量F2を1.2m3/minとし、得られたトナー粒子を、空気流により1時間に亘って篩に供給することにより、当該粒子の篩分けを行うことで、比較例6の静電荷像現像用トナーを作製した。
【0136】
[評価]
各実施例及び各比較例で得られた静電荷像現像用トナーについて、以下の方法により測定又は評価を行った。
【0137】
1.トナーの平均円相当径及び平均円形度
0.3%の界面活性剤入りの水300gにトナー10gを分散させた分散液を試料液とし、フロー式粒子像測定装置(シメックス社製、商品名:FPIA-3000)を用いて試料液中の粒子の投影像を撮影して、当該投影像から、粒子の投影面積に等しい円の直径を測定して、各トナー粒子の円相当径を求めた。各トナー粒子の円形度は、当該投影像から、粒子の投影面積に等しい円の周囲長、及び粒子投影像の周囲長を測定し、上記計算式1により求めた。試料液に含まれる各トナー粒子の円相当径の相加平均を算出して平均円相当径とし、円形度の相加平均を算出して平均円形度とした。
【0138】
2.トナー中の粗大粒子の粒子数
0.3%の界面活性剤入りの水300gにトナー10gを分散させたトナー分散液を、目開き25μmの篩に通過させた。その後、当該篩に上記界面活性剤入りの水を更に通過させて、篩を通過する水が肉眼でトナーの色を有しなくなるまで、篩に水を通過させた。次いで、篩上に残った粗大粒子を、0.3%の界面活性剤入りの水で回収し、粗大粒子分散液を得て、得られた分散液の質量を記録した。粗大粒子分散液について、フロー式粒子像測定装置を用いて粒径分布の測定を実施し、円相当径50μm以上200μm未満、且つ円形度0.20以上0.97未満の粗大粒子Aの個数、及び円相当径50μm以上200μm未満、且つ円形度0.97以上1.00以下の粗大粒子Bの個数を測定した。測定セル内の粗大粒子分散液に含まれる粗大粒子Aの粒子数NA(個)及び粗大粒子Bの粒子数NB(個)、測定セルの容量C(g)、粗大粒子分散液全体の質量WD(g)、並びに測定に使用したトナーの質量WT(g)から、上述した計算式(A)及び計算式(B)により、トナー1.0gに含まれる粗大粒子Aの粒子数及び粗大粒子Bの粒子数を求めた。
また、同様の方法により、粗大粒子Aのうち円形度0.95以上0.97未満の粗大粒子の粒子数を求めた。
【0139】
3.回収率
各実施例及び各比較例において、篩分けを実施した後、粗大粒子回収容器内の粒子の重量A、及び篩を通過した回収容器内の粒子の重量Bをそれぞれ計量し、下記式により回収率を算出した。
回収率(%)={B/(A+B)}×100
【0140】
4.L/L環境下又はH/H環境下における白筋評価
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷速度:20枚/分)、及び評価対象のトナーを、低温低湿(L/L)環境下(温度:10℃、相対湿度:20%RH)または、高温高湿(H/H)環境下(温度:32.5℃、相対湿度:80%RH)で、24時間放置した。その後、同環境下にて、5%印字濃度で印字試験を行い、1,000枚毎に黒ベタ印字(印字濃度100%)をして、白色の縦筋(白筋)の発生の有無を確認した。黒ベタ画像に白色の縦筋が初めて確認されたときの枚数(白筋発生枚数)をカウントし、最多で10,000枚まで印字試験を行った。
なお、10,000枚までの印字試験において白筋が発生しなかった場合は、表1に「>10000」と表記する。
【0141】
5.H/H環境下におけるカブリ評価
高温高湿(H/H)環境下(温度:32.5℃、相対湿度:80%RH)で、上記白筋評価と同様の印字試験を行い、1,000枚毎の黒ベタ印字(印字濃度100%)に続いて、白ベタ印字(印字濃度0%)を行った。白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープに付着させ、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値とした。初めてカブリ値が2.0以上になったときの枚数(カブリ発生枚数)をカウントし、最多で10,000枚まで印字試験を行った。
なお、10,000枚までの印字試験においてカブリ値が2.0未満であった場合は、表1に「>10000」と表記する。
【0142】
【0143】
[考察]
比較例1で得られたトナーは、トナー1.0g中、粗大粒子Aの粒子数が20000個超過であり、且つ粗大粒子Bの粒子数が1000個以上であったため、L/L環境下での印字試験において白筋が発生した。比較例2で得られたトナーは、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bの粒子数が比較例1よりも更に多かったため、L/L環境下での印字試験においてより早期に白筋が発生し、H/H環境下での印字試験においても白筋が発生した。比較例1及び比較例2では、篩分け工程で用いた網の目開きが大きすぎたため、篩分け工程において、粗大粒子A及び粗大粒子Bが通過し、トナーに残留した粗大粒子A及び粗大粒子Bの量が多かったと考えられる。
比較例3では、篩分け工程において、1次エアの流量F1と2次エアの流量との比(F1/F2)が8となる空気流で粒子を篩に供給した結果、差圧が急激に上昇したため、途中停止となった。
比較例4~6で得られたトナーは、トナー1.0g中、粗大粒子Aの粒子数が1000個未満であったため、H/H環境下での印字試験においてカブリが発生した。比較例4では、篩分け工程において、1次エアの流量F1と2次エアの流量との比(F1/F2)が139となる空気流で粒子を篩に供給し、F2対しF1の割合が大きすぎたため、篩を通過しなかった粗大粒子が2次エアにより再び篩に供給される機会が減った結果、粗大粒子A及び粗大粒子Bのいずれも篩を通過しにくく、トナー中に粗大粒子Aを適度に残留させることができなかったと考えられる。比較例5では、篩分け工程において、特許文献1の実施例1で使用されている振動式篩機を用い、空気流を用いずに篩分け工程を行ったため、粗大粒子A及び粗大粒子Bのいずれも篩を通過しにくく、トナー中に粗大粒子Aを適度に残留させることができなかったと考えられる。比較例6では、特許文献2の実施例1に類似の条件でトナーを製造した。すなわち、乳化凝集法により着色樹脂粒子を製造して、篩分け工程では1次エアの流量F1と2次エアの流量との比(F1/F2)が11となる空気流で粒子を篩に供給した。比較例6で行った着色樹脂粒子の製造方法では、粗大粒子A及び粗大粒子Bが発生し難くかったため、トナー中の粗大粒子A及び粗大粒子Bがいずれも少なかったと考えられる。
【0144】
これに対し、実施例1~6で得られたトナーは、トナー1.0g中、粗大粒子Aの粒子数が1000個以上20000個以下であり、粗大粒子Bの粒子数が1000個未満であったため、H/H環境下又はL/L環境下のいずれでも上記印字試験において白筋が発生せず、H/H環境下での上記印字試験においてカブリも発生しなかった。実施例1~6では、篩分け工程において、空気流を用いて粒子を篩に供給し、篩に用いられる網のうち、目開きが最小である網の目開きを25μm以上40μm以下とし、空気流を発生させる1次エアの流量F1と2次エアの流量F2[m3/min]との比(F1/F2)を18以上50以下とした。その結果、比較的円形度の高い粗大粒子Bは篩を通過させず、比較的円形度の低い粗大粒子Aは適度に篩を通過させることができたため、粗大粒子Bを十分に除去しつつ、トナー中に粗大粒子Aを適度に残留させることができたと考えられる。
【符号の説明】
【0145】
1 エジェクター
2 空気吹き出しノズル
3 粉流体吸入ノズル
4 粉粒体
5 空気の吹き出し方向
6 粉流体の吸入方向
7 分散された粉流体の進行方向
11 供給機
12 1次エア吸気機構
13 篩機
14 網
15 粗大粒子落下口
16 2次エア吸気機構
17 粗大粒子回収容器
18 配管
19 サイクロン
20 回収容器
21 ブロアー
22 流量調整バルブ