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特許7593269ウェーハの端部形状決定装置、端部形状決定方法及びウェーハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ウェーハの端部形状決定装置、端部形状決定方法及びウェーハ
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/16 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241126BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20241126BHJP
   C30B 35/00 20060101ALI20241126BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20241126BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B24B49/16
H01L21/304 601B
C30B29/06 B
C30B35/00
B24B9/00 601H
B23Q17/20 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021143464
(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公開番号】P2023036420
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 康佑
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 淳
(72)【発明者】
【氏名】高 奉均
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-156560(JP,A)
【文献】特開2006-330917(JP,A)
【文献】特開2017-017267(JP,A)
【文献】特開2012-129416(JP,A)
【文献】特開2010-258305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198613(US,A1)
【文献】中国実用新案第201514935(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-1/04
B24B9/00-19/28
B24B41/00-51/00
H01L21/00-21/16
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの端部の形状を決定する制御部を備え、
前記ウェーハの端部は、端面と、前記端面と前記ウェーハの表面又は裏面との間に位置する傾斜面と、前記端面と前記傾斜面との間に位置するR面取部とを有し、
前記制御部は、
前記ウェーハの端部の形状を特定する複数のパラメータとして、前記傾斜面と前記ウェーハの表面又は裏面とが交差する角度、前記傾斜面の幅、前記端面の高さ、及び、前記R面取部の半径を設定し、
前記複数のパラメータの値と、前記ウェーハの前記端面の法線方向に移動する圧子を前記ウェーハの前記端面押し込むことによって加わる荷重を設定した場合に前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係を算出し、
前記複数のパラメータの値と前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係の算出結果に基づいて、前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値が所定値未満になるように前記複数のパラメータの値を決定する、
ウェーハの端部形状決定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数のパラメータの値の組み合わせとして複数の組み合わせを設定し、設定した各組み合わせで特定される端部の形状を有するウェーハの前記端面の法線方向に移動する圧子を前記ウェーハの前記端面押し込むことによって加わる荷重を設定した場合に前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値に基づいて、前記複数のパラメータの値と前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係の算出結果を表す関係式を生成する、請求項1に記載のウェーハの端部形状決定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数のパラメータの値と前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係の算出結果に基づいて前記複数のパラメータの候補値を算出し、算出した前記複数のパラメータの候補値で特定される端部の形状を有するウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値が前記所定値未満になる場合、前記複数のパラメータの候補値を前記複数のパラメータの値として決定する、請求項1又は2に記載のウェーハの端部形状決定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定値を20GPaに設定する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のパラメータの値と前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係の算出結果を表す関係式を重回帰分析によって生成する、請求項2に記載のウェーハの端部形状決定装置。
【請求項6】
ウェーハの端部の形状を決定するウェーハの端部形状決定方法であって、
前記ウェーハの端部は、端面と、前記端面と前記ウェーハの表面又は裏面との間に位置する傾斜面と、前記端面と前記傾斜面との間に位置するR面取部とを有し、
前記ウェーハの端部の形状を特定する複数のパラメータとして、前記傾斜面と前記ウェーハの表面又は裏面とが交差する角度、前記傾斜面の幅、前記端面の高さ、及び、前記R面取部の半径を設定するステップと、
前記複数のパラメータの値と、前記ウェーハの前記端面の法線方向に移動する圧子を前記ウェーハの前記端面押し込むことによって加わる荷重を設定した場合に前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係を算出するステップと、
前記複数のパラメータの値と前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値との関係の算出結果に基づいて、前記ウェーハの前記傾斜面に生じる応力の最大値が所定値未満になるように前記複数のパラメータの値を決定するステップと
を含むウェーハの端部形状決定方法。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置によって決定された前記複数のパラメータの値、又は、請求項6に記載のウェーハの端部形状決定方法を実行することによって決定された前記複数のパラメータの値で端部の形状が特定されたウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェーハの端部形状決定装置、端部形状決定方法及びウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの割れ又は欠けを防止できる半導体ウェーハの研削方法が知られている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-45568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェーハの端部形状は、ウェーハの割れ又は欠けの発生しやすさ又はウェーハの割れ又は欠けが広がる範囲に影響を及ぼす。ウェーハの割れ若しくは欠けを生じさせにくい、又は、ウェーハの割れ若しくは欠けが広がる範囲を狭くするようにウェーハの端部形状を決定することが求められる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、ウェーハの割れ若しくは欠けを生じさせにくい、又は、ウェーハの割れ若しくは欠けが広がる範囲を狭くするようにウェーハの端部形状を決定できるウェーハの端部形状決定装置、端部形状決定方法及びウェーハを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本開示の一実施形態は、以下のとおりである。
[1]ウェーハの端部の形状を決定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ウェーハの端部の形状を特定する複数のパラメータの値と、前記ウェーハの端部に対して外部からの荷重を少なくとも1つの方向から加えた場合に前記ウェーハに生じる応力との関係を算出し、
前記複数のパラメータと前記ウェーハに生じる応力との関係の算出結果に基づいて、前記ウェーハの所定部分に生じる応力が所定値未満になるように前記各パラメータの値を決定する、
ウェーハの端部形状決定装置。
[2]前記制御部は、前記複数のパラメータの値の組み合わせとして複数の組み合わせを設定し、設定した各組み合わせで特定される端部の形状を有するウェーハに対して荷重を加えた場合に前記ウェーハに生じる応力に基づいて、前記各パラメータの値と前記ウェーハに生じる応力との関係の算出結果を表す関係式を生成する、上記[1]に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[3]前記制御部は、前記ウェーハの端部に対して荷重を加える方向として複数の方向を設定し、前記ウェーハの端部に対して前記各方向から荷重を加えた場合に前記ウェーハに生じる応力に基づいて、前記各方向の荷重について前記関係式を生成する、上記[2]に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[4]前記制御部は、前記複数のパラメータと前記ウェーハに生じる応力との関係の算出結果に基づいて前記各パラメータの候補値を算出し、算出した前記各パラメータの候補値で特定される端部の形状を有するウェーハに生じる応力が前記所定値未満になる場合、前記各パラメータの候補値を前記各パラメータの値として決定する、上記[1]から[3]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[5]前記ウェーハの端部は、端面と、前記端面と前記ウェーハの表面又は裏面との間に位置する傾斜面とを有し、
前記制御部は、前記パラメータとして、前記傾斜面と前記ウェーハの表面又は裏面とが交差する角度、前記傾斜面の幅、及び、前記端面の高さの値を設定する、上記[1]から[4]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[6]前記ウェーハの端部は、前記端面と前記傾斜面との間に位置するR面取部を更に有し、
前記制御部は、前記パラメータとして、前記R面取部の半径を更に設定する、上記[5]に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[7]前記制御部は、前記ウェーハの表面又は裏面に接続する前記傾斜面の少なくとも一部に生じる応力が前記所定値未満となるように前記パラメータを決定する、上記[5]又は[6]に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[8]前記制御部は、前記ウェーハの端部に対して加える荷重として、前記ウェーハの端面の法線方向に前記ウェーハの端面を第1深さまで押し込むことによって加わる荷重、若しくは、前記ウェーハの傾斜面に対して前記ウェーハの表面又は裏面の法線方向に第2深さまで押し込むことによって加わる荷重のいずれか、又は両方の荷重を設定する、上記[1]から[7]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[9]前記制御部は、前記所定値を20GPaに設定する、上記[1]から[8]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[10]前記制御部は、前記複数のパラメータと前記ウェーハに生じる応力との関係を重回帰分析によって算出する、上記[1]から[9]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置。
[11]ウェーハの端部の形状を決定するウェーハの端部形状決定方法であって、
前記ウェーハの端部の形状を特定する複数のパラメータの値と、前記ウェーハの端部に対して外部からの荷重を少なくとも1つの方向から加えた場合に前記ウェーハに生じる応力との関係を算出するステップと、
前記複数のパラメータと前記ウェーハに生じる応力との関係の算出結果に基づいて、前記ウェーハの所定部分に生じる応力が所定値未満になるように前記各パラメータの値を決定するステップと
を含むウェーハの端部形状決定方法。
[12]上記[1]から[10]までのいずれか一項に記載のウェーハの端部形状決定装置によって決定された前記複数のパラメータの値、又は、上記[11]に記載のウェーハの端部形状決定方法を実行することによって決定された前記複数のパラメータの値で端部の形状が特定されたウェーハ。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るウェーハの端部形状決定装置、端部形状決定方法及びウェーハによれば、ウェーハの割れ若しくは欠けを生じさせにくい、又は、ウェーハの割れ若しくは欠けが広がる範囲を狭くするようにウェーハの端部形状が決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るウェーハの端部形状決定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】ウェーハの端部の断面形状の一例を表す断面図である。
図3】ウェーハに対して圧子を押し付ける方向の例を示す断面図である。
図4】ウェーハ端面の法線方向に移動する圧子をウェーハ端面に押し込んだ場合にウェーハの内部に生じる応力を計算した結果の一例であって、傾斜面に生じている応力が所定値以上である結果を表す図である。
図5A】傾斜面に生じる応力が大きかったことによって表面まで破壊されたウェーハを端面から見た写真である。
図5B】傾斜面に生じる応力が大きかったことによって表面まで破壊されたウェーハを表面から見た写真である。
図6】ウェーハ端面の法線方向に移動する圧子をウェーハ端面に押し込んだ場合にウェーハの内部に生じる応力を計算した結果の一例であって、傾斜面に生じている応力が所定値未満である結果を表す図である。
図7A】傾斜面に生じる応力が小さかったことによって欠けの範囲が端面にとどまったウェーハを端面から見た写真である。
図7B】傾斜面に生じる応力が小さかったことによって欠けの範囲が端面にとどまったウェーハを表面から見た写真である。
図8】一実施形態に係るウェーハの端部形状決定方法の手順例を示すフローチャートである。
図9】実施例で応力分布を算出したパラメータで端部の形状が特定されるウェーハに実際に外部から荷重をかけたときの変位量と荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ウェーハ製造工程及びウェーハを加工して半導体素子等をウェーハ上に作り込むデバイス製造工程において、ウェーハの端部は、加工装置に接触する機会が多い。加工装置に接触することによって、ウェーハの端部に傷又は破損が生じやすい。ウェーハの材料はシリコン単結晶である。室温の範囲(例えば摂氏20~28度等)において、シリコン単結晶に強い力又は衝撃が加わることによって、シリコン単結晶の脆性破壊が生じる。ウェーハは、広範囲に破損することによって後の工程に進めず、廃棄される。また、ウェーハの破損に伴ってパーティクルが発生するため、これによる装置内外の清浄度の問題にもつながる。ウェーハの破損を生じにくくしたりウェーハの破損を限定的な範囲にとどめたりすることが求められる。
【0010】
(ウェーハの端部形状決定装置10の構成例)
以下、本開示の一実施形態に係るウェーハの端部形状決定装置10が図面を参照して説明される。図1に示されるように、端部形状決定装置10は、制御部12と、入力部14と、出力部16とを備える。
【0011】
制御部12は、端部形状決定装置10の各構成部を制御する。制御部12は、入力部14からウェーハの端部の形状を決定するための条件を取得する。ウェーハの端部の形状を決定するための条件は、後述するようにウェーハに生じる応力の値との大小関係を判定する所定値を含んでよいし、ウェーハの応力の値を判定する部位を特定する情報を含んでもよい。制御部12は、入力部14から取得した条件に基づいてウェーハの端部の形状を決定し、決定した形状を特定する情報を出力部16によって出力する。ウェーハの端部の形状を特定する情報は、後述するようにウェーハの端部の各構成部の寸法又は角度を特定する情報を含んでよい。
【0012】
制御部12は、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。プロセッサは、制御部12の種々の機能を実現するプログラムを実行しうる。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。
【0013】
制御部12は、記憶部を更に備えてよい。記憶部は、例えば、ウェーハの端部の形状を決定するための条件、ウェーハの端部の形状を決定する演算の途中で得られるデータ若しくは演算の結果として得られるデータ、又は、決定したウェーハの端部の形状を特定する情報を格納してよい。記憶部は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んでよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んでもよい。記憶部は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含んでよい。記憶部は、各種情報及び制御部12で実行されるプログラム等を格納する。記憶部は、制御部12のワークメモリとして機能してよい。記憶部の少なくとも一部は、制御部12とは別体として構成されてもよい。
【0014】
入力部14は、ウェーハの端部の形状を決定するための条件を取得し、制御部12に出力する。入力部14は、ウェーハの端部の形状を決定するための条件を外部装置から取得してよい。入力部14は、ウェーハの端部の形状を決定するための条件を、ユーザの入力を受け付けることによって取得してよい。入力部14は、ユーザから情報の入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、タッチパネル若しくはタッチセンサ、又はマウス等のポインティングデバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、物理キーを含んで構成されてもよい。入力デバイスは、マイク等の音声入力デバイスを含んで構成されてもよい。
【0015】
出力部16は、制御部12で決定されたウェーハの端部の形状を特定する情報を出力する。出力部16は、例えば、画像又は文字若しくは図形等の視覚情報を出力する表示デバイスを含んでよい。表示デバイスは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ、又は、PDP(Plasma Display Panel)等を含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらのディスプレイに限られず、他の種々の方式のディスプレイを含んで構成されてよい。表示デバイスは、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。
【0016】
入力部14又は出力部16は、外部装置との間で情報又はデータを送受信する通信デバイスを備えてもよい。通信デバイスは、外部装置とネットワークを介して通信可能に接続されてよい。通信デバイスは、外部装置と有線又は無線で通信可能に接続されてよい。通信デバイスは、ネットワーク又は外部装置に接続する通信モジュールを備えてよい。通信モジュールは、LAN(Local Area Network)等の通信インタフェースを備えてよい。通信モジュールは、赤外線通信又はNFC(Near Field communication)通信等の非接触通信の通信インタフェースを備えてもよい。通信モジュールは、4G又は5G等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。通信デバイスが実行する通信方式は、上述の例に限られず、他の種々の方式を含んでもよい。
【0017】
(端部形状決定装置10の動作例)
端部形状決定装置10の制御部12は、図2に例示されるウェーハの端部の断面形状を表す評価モデル30の各パラメータの値を決定することによって、ウェーハの端部形状を決定する。評価モデル30は、ウェーハ平面32と、ウェーハ端面34とを備える。ウェーハ平面32は、円盤状のウェーハの表面に対応するウェーハ平面32Fと、裏面に対応するウェーハ平面32Rとを含む。ウェーハ端面34は、円盤状のウェーハの外周の側面又は外周そのものに対応し、ウェーハ平面32に交差する円筒面である。ウェーハ端面34は、単に端面とも称される。評価モデル30において、ウェーハの厚みは、ウェーハ平面32Fとウェーハ平面32Rとの距離に対応し、Tで表される。円筒面として表されるウェーハ端面34の高さは、BCで表される。BCの値が0である場合、ウェーハの端部において実質的にウェーハ端面34が存在しないが、本実施形態において、高さが0であるウェーハ端面34を有するとみなされ得る。表面側のウェーハ平面32Fを外周に向かって仮想的に広げる方向に沿った、表面側のウェーハ平面32Fの端からウェーハ端面34までの距離は、X1で表される。裏面側のウェーハ平面32Rを外周に向かって仮想的に広げる方向に沿った、面側のウェーハ平面32Rの端からウェーハ端面34までの距離は、X2で表される。X1及びX2は、傾斜面36の幅とも称される。
【0018】
評価モデル30は、ウェーハ平面32とウェーハ端面34との間に位置する傾斜面36を更に備える。傾斜面36は、ウェーハ平面32に対して傾斜する。傾斜面36は、表面側のウェーハ平面32Fに接続する傾斜面36Fと、裏面側のウェーハ平面32Rに接続する傾斜面36Rとを含む。傾斜面36Fのウェーハ平面32Fに対する傾斜角度は、α1で表される。傾斜面36Rのウェーハ平面32Rに対する傾斜角度は、α2で表される。α1及びα2の角度の単位は、度であるとする。
【0019】
評価モデル30は、傾斜面36とウェーハ端面34との間に位置するR面取部38を更に備える。R面取部38は、表面側の傾斜面36Fに接続するR面取部38Fと、裏面側の傾斜面36Rに接続するR面取部38Rとを含む。R面取部38Fの断面視における円弧の半径は、R1で表される。R面取部38Rの断面視における円弧の半径は、R2で表される。
【0020】
評価モデル30において定義されるパラメータのうち、ウェーハの厚みを表すTは、ウェーハの仕様として固定される値であるとする。ウェーハの表面側の端部の形状を特定するパラメータであるX1、α1及びR1、並びに、ウェーハ端面34の高さを特定するパラメータであるBCの4つのパラメータは、互いに関連する。具体的に、各パラメータの関係は、以下の式(1)で表される。
X1=R1(1-sinα1)
+(T/2+BC/2+R1cosα1)・tan(90-α1) (1)
【0021】
また、ウェーハの裏面側の端部の形状を特定するパラメータであるX2、α2及びR2、並びに、ウェーハ端面34の高さを特定するパラメータであるBCの4つのパラメータは、互いに関連する。具体的に、各パラメータの関係は、以下の式(2)で表される。
X2=R2(1-sinα2)
+(T/2+BC/2+R2cosα2)・tan(90-α2) (2)
【0022】
式(1)及び(2)の関係に基づけば、ウェーハの表面側又は裏面側の4つのパラメータのうち3つのパラメータの値は、それぞれ独立に設定され得る。ウェーハの表面側又は裏面側の4つのパラメータのうち残りの1つのパラメータの値は、3つのパラメータに設定された値によって定まる。
【0023】
本実施形態において、表面側のパラメータと裏面側のパラメータとが共通であるとする。この場合、X1=X2=X、α1=α2=α、及びR1=R2=Rの各式が成り立つとする。各パラメータの関係は、以下の式(3)で表されるとする。
X=R(1-sinα)
+(T/2+BC/2+Rcosα)・tan(90-α) (3)
ここで、各パラメータの値は、以下の各条件を満たすとする。
X>0
0<BC<T
0<α<90
0<R<T/2
【0024】
制御部12は、評価モデル30において、ウェーハの端部に対して外部の少なくとも1つの方向から荷重を加える場合を仮定し、外部から加わる荷重によってウェーハの内部に生じるミーゼス応力等の応力を計算する。制御部12は、例えば、評価モデル30について有限要素法(FEM)を用いたシミュレーションを実行することによって、ウェーハの端部に対して外部の少なくとも1つの方向から荷重を加える状態を模擬する。制御部12は、汎用的な有限要素法解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを実行してよい。制御部12は、評価モデル30について模擬した状態でウェーハの内部に生じる応力を計算する。
【0025】
制御部12は、複数の方向それぞれからウェーハに対して外部から荷重を加える場合にウェーハの内部に生じる応力を計算してもよい。例えば、制御部12は、図3に例示されるように、ウェーハの評価モデル30において、ウェーハ端面34の法線方向に移動する圧子41をウェーハの端部に対して押し込むことによって外部から荷重を加える場合を仮定してよい。制御部12は、ウェーハ平面32の法線方向に移動する圧子42をウェーハの端部に対して押し込むことによって外部から荷重を加える場合を仮定してよい。制御部12は、ウェーハ平面32に対して45度の角度を有する方向に移動する圧子43をウェーハの端部に対して押し込むことによって外部から荷重を加える場合を仮定してよい。圧子41、圧子42及び圧子43は、材料の度を測定する硬さ試験において試験の対象となる材料に押し込まれる部材であり、例えばビッカース硬度を測定するために用いられるビッカース圧子であってよい。本実施形態において、制御部12は、ビッカース圧子をウェーハの端部に押し込むことによってウェーハの端部に外部から荷重を加える場合を仮定してウェーハの内部に生じる応力を計算する。
【0026】
ウェーハ端面34の法線方向に移動する圧子41をウェーハ端面34に押し込んだ場合にウェーハの内部に生じる応力を計算した結果の一例が図4に示される。図4において、応力が最大の領域は黒塗りの領域として表されている。圧子41の先端がウェーハ端面34に押し込まれた部分において生じる応力が最大となっている。また、応力が大きいほど格子線の間隔が狭い領域として表されている。圧子41の先端がウェーハ端面34に押し込まれた部分に近いほどウェーハの内部に生じる応力が大きい。図4において最も応力が低い領域と、2番目に応力が低い領域との境界値が、所定値として設定されている。図4に例示された結果において、傾斜面36に生じている応力が所定値以上になっている。
【0027】
図4に例示した評価モデル30に対応する形状のウェーハに実際に外部から荷重を加える試験が実施された。試験の結果、図5A及び図5Bに示されるように、ウェーハは外部から荷重が加わることによって大きく破損した。具体的に、ウェーハ端面34を撮影した図5Aの写真に見られるように、ウェーハ端面34に圧子41が押し込まれたことによって小チッピング50が生じている。また、小チッピング50を起点としてウェーハ平面32Fの側(ウェーハの表面側)に表面の剥離を含む大チッピング52が生じている。大チッピング52は、ウェーハ平面32F(ウェーハの表面側)を撮影した図5Bの写真に見られるように、ウェーハの端部だけでなくウェーハ平面32Fにまで広がっている。図5Aにおいて、ウェーハ平面32Fは、大チッピング52の発生によって剥離しているため、元々存在した面に対応する二点鎖線の仮想線で表されている。また、図5Bにおいて、ウェーハ端面34と周辺とのコントラストが低いことによって、ウェーハ端面34の位置が不明瞭であるため破線で表されている。
【0028】
ウェーハの端部の他の形状について、ウェーハ端面34の法線方向に移動する圧子41をウェーハ端面34に押し込んだ場合にウェーハの内部に生じる応力を計算した結果の一例が図6に示される。図6において、応力が最大の領域は黒塗りの領域として表されている。圧子41の先端がウェーハ端面34に押し込まれた部分において生じる応力が最大となっている。また、応力が大きいほど格子線の間隔が狭い領域として表されている。図6において最も応力が低い領域と、2番目に応力が低い領域との境界値が、所定値として設定されている。図6に例示された結果において、傾斜面36に生じている応力が所定値未満になっている。
【0029】
図6に例示した評価モデル30に対応する形状のウェーハに実際に外部から荷重を加える試験が実施された。試験の結果、図7A及び図7Bに示されるように、ウェーハはほとんど破損しなかった。具体的に、ウェーハ端面34を撮影した図7Aに示される写真に見られるように、ウェーハ端面34に圧子41が押し込まれたことによって小チッピング50が生じている。しかし、図7Aを見てもウェーハ平面32F(ウェーハの表面側)を撮影した図7Bに示される写真を見ても、図5A及び図5Bに見られた大チッピング52は発生していない。
【0030】
図4に例示した評価モデル30と図6に例示した評価モデル30との比較によれば、ウェーハに生じる損傷は、外部から荷重が加わることによって傾斜面36に生じる応力が所定値未満であれば小チッピング50にとどまる。一方で、ウェーハに生じる損傷は、外部から荷重が加わることによって傾斜面36に生じる応力が所定値以上であれば小チッピング50にとどまらず大チッピング52にまで発展する。制御部12は、評価モデル30の各パラメータの値を種々の組み合わせに変更して各組み合わせにおいて応力を計算し、傾斜面36に生じる応力が所定値未満となるように各パラメータの値の組み合わせを決定してよい。応力の値と比較する所定値は、ウェーハを構成する材料のヤング率に基づいて設定されてよい。ウェーハがシリコン単結晶を材料として構成される場合、所定値は、例えば<110>方向(ヤング率:170GPa)の荷重を想定した場合、20GPaに設定されてよい。所定値は、他の種々の方向(例えば<100>方向(ヤング率:132GPa)又は<111>方向(ヤング率:182GPa)等)の荷重を想定して適宜設定されてもよい。
【0031】
制御部12は、図8に例示されるフローチャートの手順を含むウェーハの端部形状決定方法を実行してもよい。ウェーハの端部形状決定方法は、制御部12を構成するプロセッサに実行させるウェーハの端部形状決定プログラムとして実現されてもよい。ウェーハの端部形状決定プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0032】
制御部12は、ウェーハの端部に外部から加える荷重の方向を決定する(ステップS1)。具体的に、制御部12は、ウェーハ端面34の法線方向又はウェーハ平面32の法線方向のいずれかの方向を外部から加える荷重の方向として決定してよい。制御部12は、ウェーハ平面32の法線方向に対して所定の角度だけ傾いた方向を外部から加える荷重の方向として決定してもよい。
【0033】
制御部12は、ウェーハの端部の形状の評価モデル30の各パラメータの値の組み合わせを設定する(ステップS2)。具体的に、制御部12は、図2に例示される評価モデル30においてウェーハの端部の表面側の形状と裏面側の形状とを同じ形状とする場合、ウェーハの端部の形状を特定する4つのパラメータのうち3つのパラメータの値の組み合わせを設定する。
【0034】
制御部12は、設定したパラメータの値の組み合わせで特定されるウェーハの端部の形状の評価モデル30においてウェーハの端部に外部から荷重を加えたと仮定した場合にウェーハの内部に生じる応力の分布を算出する(ステップS3)。
【0035】
制御部12は、各パラメータの値の組み合わせとして他の組み合わせを設定するか判定する(ステップS4)。制御部12は、各パラメータの値の組み合わせとして他の組み合わせを設定すると判定した場合(ステップS4:YES)、ステップS2の手順に戻って各パラメータの値の組み合わせを他の組み合わせに設定する。制御部12は、各パラメータの値が他の組み合わせで特定されるウェーハの端部の形状の評価モデル30においてウェーハの端部に外部から荷重を加えたと仮定した場合にウェーハの内部に生じる応力の分布を算出する。
【0036】
制御部12は、各パラメータの値の組み合わせとして他の組み合わせを設定すると判定しなかった場合(ステップS4:NO)、各パラメータの値と応力の大きさとの関係を算出する(ステップS5)。具体的に、制御部12は、ステップS2で設定した各パラメータの値の組み合わせと、ステップS3で算出した各パラメータの値の組み合わせで算出した応力分布とに基づく重回帰分析を実行する。制御部12は、重回帰分析によって、各パラメータの値と各パラメータがその値であるときの評価モデル30において傾斜面36に生じる応力の最大値との関係を表す関係式を算出する。
【0037】
制御部12は、外部から加える荷重の方向を他の方向に変更してステップS2からS5までの手順を実行するか判定する(ステップS6)。制御部12は、部から加える荷重の方向を他の方向に変更すると判定した場合(ステップS6:YES)、ステップS1の手順に戻って外部から加える荷重の方向を他の方向に変更し、ステップS2からS5までの手順を繰り返す。制御部12は、複数の方向それぞれからウェーハの端部に対して外部から荷重を加えた場合について、ウェーハの端部の形状の評価モデル30において傾斜面36に生じる応力の最大値と各パラメータの値との関係を表す関係式を算出する。この場合、制御部12は、外部から加える荷重の方向を変更してステップS2からS5までの手順を繰り返した回数と同じ数の関係式を算出できる。
【0038】
制御部12は、外部から加える荷重の方向を他の方向に変更すると判定しない場合(ステップS6:NO)、各パラメータの値と応力の大きさとの関係の算出を終了し、ステップS7の手順に進む。
【0039】
制御部12は、ステップS1~S6の手順で算出した、各パラメータの値と応力の大きさとの関係の算出結果に基づいて、各パラメータの候補値を算出する(ステップS7)。具体的に、制御部12は、各パラメータの値と各パラメータがその値であるときの評価モデル30において傾斜面36に生じる応力の最大値との関係を表す関係式に基づいて、傾斜面36に生じる応力が所定値未満になるように各パラメータの値の範囲を算出する。制御部12は、各パラメータの値の範囲に含まれる特定の値を各パラメータの候補値として算出してよい。制御部12は、傾斜面36に生じる応力が最小値又は極小値になるときの各パラメータの候補値を算出してもよい。制御部12は、ステップS1~S6の手順で複数の関係式を算出した場合、各関係式について傾斜面36に生じる応力が所定値未満になるように各パラメータの値の範囲を算出する。制御部12は、各関係式について算出した各パラメータ値の範囲を全て満たすように各パラメータの候補値を算出してよい。制御部12は、各関係式について算出した各パラメータの値の範囲のうち、一部の関係式について算出した各パラメータの値の範囲を満たすように各パラメータの候補値を算出してよい。
【0040】
制御部12は、ステップS7で算出した各パラメータの候補値で特定される評価モデル30においてウェーハの端部に外部から荷重を加えたと仮定した場合にウェーハの内部に生じる応力の分布を算出する(ステップS8)。制御部12は、算出した応力分布においてウェーハの端部の傾斜面36に生じる応力が所定値未満であるか判定する(ステップS9)。制御部12は、応力が所定値未満でない場合(ステップS9:NO)、つまり応力が所定値以上である場合、ステップS7の手順に戻って各パラメータの候補値を算出しなおす。
【0041】
制御部12は、応力が所定値未満である場合(ステップS9:YES)、各パラメータの候補値を、ウェーハの端部の形状を特定する各パラメータの値として決定する(ステップS10)。さらに、制御部12は、決定した各パラメータの値を出力部16から出力してよい。制御部12は、ステップS10の手順の実行後、図8のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0042】
制御部12は、ステップS7の手順で算出した各パラメータの候補値を、そのまま各パラメータの値として決定して出力してもよい。
【0043】
以上述べてきたように、本実施形態に係る端部形状決定装置10及び端部形状決定方法によれば、外部から加わる荷重によってウェーハに生じる応力の値が小さくなるように各パラメータの値が決定される。その結果、ウェーハの割れ又は欠けが生じにくくなり得る。また、ウェーハの端部の所定部分(例えば荷重を加えた部分又は傾斜面36)に生じる応力が小さくなるように各パラメータの値が決定される。その結果、ウェーハの端部で割れ又は欠けが生じたとしてもその範囲が狭い範囲に限定され得る。
【0044】
(実施例)
以下、ウェーハの端部の形状を決定する手順が、具体的な値に基づく実施例として説明される。
【0045】
端部の形状を決定する対象とするウェーハは、300mm径であるとする。ウェーハの厚さ(T)は、775μmであるとする。また、ウェーハに生じる応力を計算するためにウェーハの端部に対して外部から加えると仮定する荷重は、圧子41等を毎分0.1mmの速度で0.3mmの深さまで圧子41等を押し込むことで生じる荷重として表されるとする。荷重は、上述の条件で特定される力に限られない。圧子41等を押し込む速度は、種々の値に変更され得る。圧子41等を押し込む深さは、種々の値に変更され得る。圧子41をウェーハ端面34の法線方向に押し込んでウェーハの端部に荷重を加えるときに圧子41を押し込む深さは、第1深さとも称される。圧子42をウェーハ平面32の法線方向に押し込んでウェーハの端部に荷重を加えるときに圧子42を押し込む深さは、第2深さとも称される。第1深さと第2深さとは同じ値に設定されてもよいし異なる値に設定されてもよい。制御部12は、ウェーハ端面34の法線方向にウェーハ端面34を第1深さまで押し込むことによって加わる荷重、若しくは、ウェーハの傾斜面36に対してウェーハ平面32の法線方向に第2深さまで押し込むことによって加わる荷重のいずれかを設定してよい。制御部12は、ウェーハ端面34の法線方向に加わる荷重及びウェーハ平面32の法線方向に加わる荷重の両方の荷重を設定してよい。
【0046】
ウェーハの端部形状決定装置10の制御部12は、ウェーハの端部の形状の評価モデル30の各パラメータの値の組み合わせを、表1に示されるように8通り設定する。ウェーハ端面34の高さを表すBCの値は、他の3つのパラメータの値に基づいて定まった値である。
【表1】
【0047】
制御部12は、表1の8通りの組み合わせそれぞれで特定される評価モデル30について、ウェーハの端部に対してビッカース圧子で0.3mmの深さまで荷重を加えるシミュレーションを実施した。制御部12は、シミュレーションによって得られた応力分布の計算結果のうち、ウェーハの荷重位置におけるミーゼス応力を評価指標とする。各組み合わせで特定される評価モデル30について実施したシミュレーションによって算出された、ウェーハの荷重位置におけるミーゼス応力の値が表2に示される。表2において、MSは、ミーゼス応力の値を表す。荷重方向の「垂直」は、ウェーハ端面34の法線方向に外部から荷重を加えることに対応する。荷重方向の「水平」は、ウェーハ平面32の法線方向に外部から荷重を加えることに対応する。荷重方向の「45°」は、ウェーハ端面34の法線方向及びウェーハ平面32の法線方向それぞれに対して45°の傾きを有する方向に外部から荷重を加えることに対応する。
【表2】
【0048】
表2によれば、ウェーハの端面形状によってウェーハの荷重位置におけるミーゼス応力の値が異なっている。ミーゼス応力の値をできる限り小さくすることによってウェーハの端部における外部からの荷重に起因した割れ又は欠けが生じにくくなる。例えば太枠で囲った部分に示される、荷重方向が垂直であり、かつ、パラメータの値の組み合わせが5番及び7番であるときのミーゼス応力の値は、他の組み合わせのミーゼス応力の値よりも低くなっている。このことからすると、5番又は7番の組み合わせで端部の形状が特定されたウェーハにおいて、他の組み合わせで端部の形状が特定されたウェーハよりも、外部からウェーハ端面34の法線方向に加わる荷重に起因した割れ又は欠けが生じにくいといえる。
【0049】
制御部12は、表2に示される、各組み合わせに対応するミーゼス応力の値に基づいて、重回帰分析を実行する。制御部12は、表計算ソフトウェアの回帰分析機能を用いて重回帰分析を実行してもよい。制御部12は、重回帰分析の結果、ウェーハの端部の形状を特定する各パラメータによってウェーハの内部に生じるミーゼス応力の値を算出する関係式を、それぞれ異なる荷重方向について生成できる。本実施例において、α、R及びBCの3つのパラメータの値からミーゼス応力の値を算出する関係式が生成された。残り1つのパラメータであるXの値は、α、R及びBCの3つのパラメータの値に基づいて定まる。荷重方向が垂直であるときのミーゼス応力(MS_V)は、以下の式(4)で表される。
MS_V=-75.57×α-31.53×10^3×R
-43.32×10^3×BC+88.89×10^3 (4)
荷重方向が45°であるときのミーゼス応力(MS_45)は、以下の式(5)で表される。
MS_45=31.84×10^1×α-38.42×10^3×R
-22.33×10^3×BC+43.85×10^3 (5)
荷重方向が水平であるときのミーゼス応力(MS_H)は、以下の式(6)で表される。
MS_H=-17.03×10^1×α+16.10×10^3×R
+20.13×10^3×BC+41.57×10^3 (6)
【0050】
制御部12は、関係式(4)、(5)及び(6)それぞれに基づいて、ミーゼス応力の値が小さくなるように、又は、ミーゼス応力の値が所定値未満になるように、各パラメータの値の候補値を算出する。制御部12は、関係式(4)、(5)及び(6)それぞれにおいて、ミーゼス応力の値が所定値未満になるときの各パラメータの値の範囲を算出してもよい。制御部12は、関係式(4)、(5)及び(6)それぞれについて算出された各パラメータの値の範囲を合わせた、複数の関係式に基づく各パラメータの値の範囲を算出してもよい。制御部12は、複数の関係式に基づく各パラメータの値の範囲の中から、各パラメータの値の候補値を算出してよい。ミーゼス応力の値が小さくなるように各パラメータの値の候補値を算出することによって、ウェーハの割れ又は欠けが生じにくくなり得る。また、ウェーハの割れ又は欠けが生じたとしてもその範囲が狭い範囲に限定され得る。
【0051】
上述した関係式(4)、(5)及び(6)それぞれについて、重回帰分析による関係式の決定係数が算出される。決定係数は、各パラメータの値と、ミーゼス応力の値との相関を表す相関係数の二乗として算出される。決定係数は、0以上かつ1以下の範囲の値であり、1に近づくほど重回帰分析によって算出された関係式の精度が高いといえる。本実施例において、決定係数が0.7以上である関係式が各パラメータの値を決定するために用いられるとする。関係式(4)の決定係数は、0.7082であった。関係式(5)の決定係数は、0.7997であった。関係式(6)の決定係数は、0.8616であった。したがって、関係式(4)、(5)及び(6)は、本実施例において各パラメータの値を決定するために用いられ得る。
【0052】
本実施例において、制御部12は、3方向から荷重を加えると仮定した。荷重を加える方向は、1方向又は2方向であってもよいし4方向以上であってもよい。
【0053】
上述したように、端部の形状を特定するパラメータの値として表2の5番又は7番の組み合わせを適用したウェーハにおいて、外部からウェーハ端面34の法線方向に加わる荷重に起因した割れ又は欠けが生じにくいといえる。実際に表2の5番及び7番の組み合わせを各パラメータの値として適用した端部形状を有するウェーハが作成された。作成されたウェーハにおいて実際に外部からウェーハ端面34の法線方向に荷重が加えられた。ウェーハ端面34は、荷重を受けたことによって変位する。荷重の大きさとウェーハ端面34の変位量との関係が図9のグラフに示される。図9において、横軸は変位量を表す。縦軸は荷重の大きさを表す。
【0054】
端部の形状を特定するパラメータの値として表2の5番の組み合わせを適用したウェーハに対して荷重を加えた試験で得られた変位量と荷重との関係は破線のグラフで表される。破線のグラフによれば、変位量が約0.10mmとなったときに荷重が大幅に下がっている。荷重の大幅な低下は、変位量が約0.10mmとなったときにウェーハに大チッピング52が生じたことに対応する。図5A及び図5Bは、パラメータの値として表2の5番の組み合わせを適用したウェーハに対して荷重を加えた試験で得られたウェーハを撮影した写真である。
【0055】
端部の形状を特定するパラメータの値として表2の7番の組み合わせを適用したウェーハに対して荷重を加えた試験で得られた変位量と荷重との関係は、実線のグラフで表される。実線のグラフによれば、荷重の大きさは、変位量の増大に応じて大きくなりつつ、変位量が約0.06mm及び約0.09mmとなったときにわずかに低下する。荷重が増大する傾向の途中に見られる荷重のわずかな低下は、ウェーハに小チッピング50が生じたことに対応する。図7A及び図7Bは、パラメータの値として表2の7番の組み合わせを適用したウェーハに対して荷重を加えた試験で得られたウェーハを撮影した写真である。パラメータの値として表2の7番の組み合わせを適用したウェーハにおいて、ウェーハに大チッピング52は生じていなかった。
【0056】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0057】
本実施形態に係るウェーハの端部形状決定装置10が決定した各パラメータの値で特定されるウェーハの端部形状を有するウェーハが実際に作成され得る。また、本実施形態に係るウェーハの端部形状決定方法を実行することによって決定された各パラメータの値で特定されるウェーハの端部形状を有するウェーハが実際に作成され得る。決定された各パラメータの値は、ウェーハの端面の研磨装置に入力されてよい。研磨装置は、入力された各パラメータの値に基づいてウェーハの端面を研磨し、各パラメータの値で特定される形状を有するウェーハを作成できる。
【0058】
本実施形態に係るウェーハの端部形状決定装置10の制御部12は、ウェーハの端部の形状を特定する各パラメータの値とウェーハに生じる応力との関係に基づく関係式に基づいて応力が小さくなるように各パラメータの値を決定する。ここで、ウェーハの端部の形状は、ウェーハの需要に応じた仕様で限定され得る。制御部12は、ウェーハの仕様に更に基づいてウェーハの端部の形状を特定する各パラメータの値を決定してよい。制御部12は、ウェーハの仕様に基づいて各パラメータの値を限定する数式を作成し、作成した数式に更に基づいてウェーハの端部の形状を特定する各パラメータの値を決定してよい。
【0059】
制御部12は、ウェーハに生じる応力が所定範囲内になるように各パラメータの値を決定してもよい。制御部12は、ウェーハに生じる応力が所定値以上になるように各パラメータの値を決定してもよい。制御部12は、ウェーハの特定の部位の応力が所定範囲内になったり所定値以上になったりするように各パラメータの値を決定してもよい。このようにすることで、需要に応じた仕様を満たすようにウェーハの端部の形状が決定されやすくなる。
【0060】
本開示に含まれるグラフは、模式的なものである。スケールなどは、現実のものと必ずしも一致しない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示に係る実施形態によれば、ウェーハの割れ若しくは欠けを生じさせにくい、又は、ウェーハの割れ若しくは欠けが広がる範囲を狭くするようにウェーハの端部形状が決定され得る。
【符号の説明】
【0062】
10 ウェーハの端部形状決定装置(12:制御部、14:入力部、16:出力部)
30 ウェーハの端部形状の評価モデル
32(32F、32R) ウェーハ平面
34 ウェーハ端面
36(36F、36R) 傾斜面
38(38F、38R) R面取部
41~43 圧子
50 小チッピング
52 大チッピング
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9