(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物および硬化物並びに物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/77 20060101AFI20241126BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20241126BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20241126BHJP
C08G 77/26 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08G18/77 080
C08G18/61
C08G18/80 061
C08G77/26
(21)【出願番号】P 2021168045
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 志保
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-180683(JP,A)
【文献】特開2015-199886(JP,A)
【文献】特開2021-098834(JP,A)
【文献】特開2021-091859(JP,A)
【文献】特開2016-069645(JP,A)
【文献】特開平11-124497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/77
C08G 18/61
C08G 18/80
C08G 77/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sである直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサン:100質量部、および
【化1】
(式中、R
1は独立に水素原子又は炭素数1~10の非置換若しくは置換の一価炭化水素基であり、R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは独立に1~6の整数であり、mは0~20の整数、nは1以上の整数であり、分子中のnの合計は20~2,000である。但し、主鎖中のジオルガノシロキサン単位とオルガノシルセスキオキサン単位はランダムに配列されてよい。)
(B)下記一般式(2)で示されるブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサン:1~40質量部
【化2】
(式中、R
4は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5は独立にラクタム類、ピラゾール類、オキシム類、フェノール類、アルコール類、β-ジケトン類およびβ-ケトエステル類から選ばれるブロック化剤の残基であり、R
6は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、pは0~100の整数であり、qは独立に5~30の整数である。)
を含有する熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンが80~150℃においてブロック化剤を脱離するものである請求項1に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
4、R
5は前記の通りである。)
で示されるシランカップリング剤と、下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
6、qは前記の通りである。)
で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとの縮合反応物である請求項1又は2に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
一成分型である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる液状光学透明性接着剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる透明硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を有する自動車用部品。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化物を有する自動車用オイルシール。
【請求項9】
請求項6に記載の硬化物を有する電気・電子用部品。
【請求項10】
請求項6に記載の硬化物を有する建築用構造物。
【請求項11】
請求項6に記載の硬化物を有する土木工事用構造物。
【請求項12】
請求項6に記載の硬化物を封止剤とするパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサンを用いた熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる無色透明のシリコーンゲル等の硬化物、および該硬化物を有する各種物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化してシリコーンゴムとなる組成物は従来から知られており、産業界で広く使用されてきた。従来のシリコーンゴムの硬化反応(反応機構)として、縮合硬化や付加硬化、UV硬化等が挙げられる。
【0003】
これらのうち、縮合硬化型は、空気中の湿気(水分)によりベースポリマー中の水酸基又は加水分解性シリル基と架橋剤中の加水分解性基が加水分解・縮合反応し、空気と触れる面から深部方向に向かって徐々に硬化が進行するため、深部の速硬化性に劣るという欠点を有する。
【0004】
付加硬化型は、白金触媒存在下においてベースポリマー中のアルケニル基と架橋剤中のSiH基がヒドロシリル化付加反応することによって硬化するが、窒素原子や硫黄原子を含む化合物の存在下では、白金の触媒作用が阻害され、硬化が十分に進行しない場合がある。また、一成分での保存性に劣るため、冷蔵保管が必要となり、室温保管するには、触媒と架橋剤を別々に保存する二液成分型とする必要がある。
【0005】
UV硬化型は、紫外線を照射することによりベースポリマー中のアルケニル基のラジカル重合や、ベースポリマー中のアルケニル基と架橋剤中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応が誘発されて架橋が進行し、硬化する。ラジカル重合を利用した硬化形態は酸素により硬化阻害を受け、UV付加反応型は前述の付加反応型と同様に窒素原子や硫黄原子を含む化合物の存在下では、硬化阻害を受けるという課題を有する。
【0006】
また、縮合硬化型の硬化速度を向上させる技術として、特開2002-226708号公報(特許文献1)では、分子鎖両末端が脱離基としてオキシム構造を有する、加水分解性シリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンに対し1分子中に少なくとも1個のカルボニル基(C=O基)を有する有機化合物、および1分子中に少なくとも1個の1級アミノ基(NH2基)を有する有機化合物を含有する組成物が提案されている。これはカルボニル基と1級アミノ基によるケチミン生成反応から副生する水を利用して深部硬化性、速硬化性を改良したものであるが、硬化には数時間を要し、付加硬化タイプと比較して十分な硬化速度とは言い難い。
【0007】
一液成分タイプの付加硬化型を室温で保管する技術において、特開2016-98337号公報(特許文献2)では、脂肪族不飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、熱伝導性充填剤、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および特定の有機リン化合物を配位子とする白金族金属錯体を含有する一液付加硬化型シリコーン組成物が提案されているが、酸素透過係数が1×10-12cm3(STP)cm/cm2・s・Pa以下の材料からなる容器中に密閉保存しないと室温での保存性を確保できない。
【0008】
UV硬化型の酸素による硬化阻害を改善する技術として、特開2020-12024号(特許文献3)公報では、使用時に加熱やUV照射を必要とせず、大気中の酸素を反応の引き金とし、室温で硬化する酸素硬化性シリコーン組成物を提供しているが、酸素非存在下での取り扱いが必要である。
【0009】
以上のように、各々の硬化型はそれぞれ課題を有しており、それらを解決したエラストマー材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-226708号公報
【文献】特開2016-98337号公報
【文献】特開2020-12024号公報
【文献】特願2021-087289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決したエラストマー材料として、特願2021-087289号(特許文献4)で、保存安定性および深部硬化性に優れ、酸素や窒素、硫黄などによる硬化阻害を受けず、一液で保存可能であり、各種基材に対して良好な接着性を示すシリコーンエラストマー等の硬化物を与えることのできる熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、その硬化物および該硬化物を有する各種物品等を提供している。しかし、硬化物は白色であり、無色透明性を重視するオプティカルボンディングなどの用途には使用できない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、保存安定性および深部硬化性に優れ、酸素や窒素、硫黄などによる硬化阻害を受けず、一液で保存可能であり、各種基材に対して良好な接着性を示す、無色透明のシリコーンゲル等の硬化物を与えることのできる熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該組成物からなる液状光学透明性接着剤(LOCA)、該組成物の透明硬化物および該硬化物を有する各種物品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、後述する一般式(1)で示される非置換又は置換アミノ基を分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、架橋剤として加熱(80~150℃)によりブロック化剤を脱離してイソシアネート基(-N=C=O)を生成するブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有し、スペーサーとしてオルガノ(ポリ)シロキサン鎖を有する後述する一般式(2)で示されるオルガノ(ポリ)シロキサンを所定量含有する熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、上記課題を解決するものであることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、および該熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる液状光学透明性接着剤(LOCA)、並びに該熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる透明硬化物、該硬化物を有する各種物品(自動車用部品、自動車用オイルシール、電気・電子用部品、建築用構造物、土木工事用構造物、パワーモジュールなど)等を提供するものである。
[1]
(A)下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sである直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサン:100質量部、および
【化1】
(式中、R
1は独立に水素原子又は炭素数1~10の非置換若しくは置換の一価炭化水素基であり、R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは独立に1~6の整数であり、mは0~20の整数、nは1以上の整数であり、分子中のnの合計は20~2,000である。但し、主鎖中のジオルガノシロキサン単位とオルガノシルセスキオキサン単位はランダムに配列されてよい。)
(B)下記一般式(2)で示されるブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサン:1~40質量部
【化2】
(式中、R
4は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5は独立にラクタム類、ピラゾール類、オキシム類、フェノール類、アルコール類、β-ジケトン類およびβ-ケトエステル類から選ばれるブロック化剤の残基であり、R
6は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、pは0~100の整数であり、qは独立に5~30の整数である。)を含有する熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンが80~150℃においてブロック化剤を脱離するものである[1]に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
(B)成分が、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
4、R
5は前記の通りである。)
で示されるシランカップリング剤と、下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
6、qは前記の通りである。)
で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとの縮合反応物である[1]又は[2]に記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
一成分型である[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる液状光学透明性接着剤。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる透明硬化物。
[7]
[6]に記載の硬化物を有する自動車用部品。
[8]
[6]に記載の硬化物を有する自動車用オイルシール。
[9]
[6]に記載の硬化物を有する電気・電子用部品。
[10]
[6]に記載の硬化物を有する建築用構造物。
[11]
[6]に記載の硬化物を有する土木工事用構造物。
[12]
[6]に記載の硬化物を封止剤とするパワーモジュール。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温(23℃±15℃)で一液型の組成物として長期間保存が可能であり、酸素や窒素、硫黄などによる硬化阻害を受けず、加熱により速やかに硬化し、深部硬化性に優れ、各種基材に対して優れた接着性を示す、無色透明のシリコーンゲル等のシリコーン硬化物を与えるため、自動車用部品、自動車用オイルシール、電気・電子用部品、建築用構造物、土木工事用構造物、パワーモジュール、液状光学透明性接着剤(LOCA)等に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサンを用いた熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特には、非置換又は置換アミノ基(広義のアミノ基)を分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、加熱(80~150℃)によりブロック化剤を脱離するブロック化イソシアネート基(即ち、イソシアネート基(-N=C=O)を活性水素を有する特定のブロック化剤と反応させて得られる、アミド構造、ウレタン構造あるいは非置換又は置換ウレア構造)を分子中に2個以上有し、スペーサーとしてオルガノ(ポリ)シロキサン鎖を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを架橋剤(硬化剤)として含有し、加熱により該架橋剤中に生成するイソシアネート基とベースポリマー中のアミノ基(広義)とが反応(アミノリシス)することで架橋(硬化)する、架橋点にウレア構造(尿素結合)を有する、シリコーンゲル等の透明硬化物を与える熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特には、加熱時にブロック化イソシアネート基から脱離するブロック化剤が3,5-ジメチルピラゾールである熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる液状光学透明性接着剤(LOCA)、該熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られるシリコーンゲル等の透明硬化物、および該硬化物を有する各種物品である。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、粘度はJIS Z 8803に規定する方法に準じた回転粘度計による測定値である。
【0018】
[(A)成分 オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)として作用するものであり、下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sである直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【化5】
(式中、R
1は独立に水素原子又は炭素数1~10の非置換若しくは置換の一価炭化水素基であり、R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは独立に1~6の整数であり、mは0~20の整数、nは1以上の整数であり、分子中のnの合計は20~2,000である。但し、主鎖中のジオルガノシロキサン単位とオルガノシルセスキオキサン単位(即ち、主鎖中でn、mそれぞれで括られるカッコ内の単位)はランダムに配列されてよい。)
【0019】
(A)成分は、式(1)に示すように、主鎖が2官能性のジオルガノシロキサン単位((R2)2SiO2/2)の繰り返しからなり、主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造中の任意の位置に3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位((R3)SiO3/2)からなる分岐構造を含有してもよい、直鎖状又は分岐鎖状の分子構造であって、分子鎖の全ての末端(直鎖状の場合は分子鎖両末端、分岐鎖状の場合は主鎖の両末端および分岐鎖の全ての末端)が非置換又は置換アミノ基(即ち、-NR1H、好ましくは、-NH2)、具体的には非置換又は置換アミノアルキル基(即ち、-(CH2)a-NR1H、好ましくは、-(CH2)a-NH2)で封鎖された、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sの直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0020】
上記式(1)中、R1は独立に水素原子、又は炭素数1~10、特に炭素数1~6の非置換若しくは置換の一価炭化水素基であり、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1~10、特に炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基である。R1、R2、R3の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの非置換一価炭化水素基の水素原子が部分的に塩素、フッ素、臭素といったハロゲン原子等で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、R2、R3としては、メチル基、エチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。このR1、R2、R3は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0021】
上記式(1)において、分岐構造である3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位((R3)SiO3/2)の数を示すmは0~20の整数であり、(A)成分が直鎖状のオルガノポリシロキサンである場合、mは0であり、(A)成分が分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである場合、mは1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。
【0022】
上記式(1)中、主鎖を構成する、又は主鎖および分岐鎖(側鎖)を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位((R2)2SiO2/2)の繰り返し数(又は重合度)を示すnは1以上の整数であり、mが0である場合(即ち、(A)成分が分子中に分岐構造である3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位((R3)SiO3/2)を含まない直鎖状のオルガノポリシロキサンである場合)、分子中のnは、20~2,000の整数であることが好ましく、より好ましくは40~1,200の整数であり、更に好ましくは50~800の整数である。また、mが1~20の整数である場合(即ち、(A)成分が分子中に分岐構造である3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位((R3)SiO3/2)を含有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである場合)、分子中のnは、それぞれ独立に好ましくは1~1,999の整数、より好ましくは10~1,800の整数、更に好ましくは10~1,200の整数、特に好ましくは15~800の整数、最も好ましくは20~400の整数で、分子中のnの合計(即ち、主鎖中の1個のnおよび分岐鎖中のm個のnの合計)は、20~2,000の整数、好ましくは40~1,200の整数、より好ましくは50~800の整数である。
【0023】
上記式(1)において、ポリシロキサン構造の末端ケイ素原子と非置換又は置換アミノ基との連結基である直鎖状アルキレン基-(CH2)a-におけるメチレン基の繰り返し数を示すaは、独立に1~6の整数であり、好ましくは2~4の整数であり、より好ましくは2又は3である。
【0024】
本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)や29Si-NMRの解析結果等として求めることができる。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるが、好ましくは50~100,000mPa・s、より好ましくは100~50,000mPa・s程度であればよい。本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ)等によって測定することができる。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
[(B)成分 オルガノ(ポリ)シロキサン]
(B)成分は、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤(硬化剤)として作用するものであり、下記一般式(2)で示されるブロック化イソシアネート基を分子中に2個以上有し、スペーサーとしてオルガノ(ポリ)シロキサン鎖を有するオルガノ(ポリ)シロキサンである。
【化6】
(式中、R
4は独立に炭素数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5は独立にラクタム類、ピラゾール類、オキシム類、フェノール類、アルコール類、β-ジケトン類およびβ-ケトエステル類から選ばれるブロック化剤の残基であり、R
6は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、pは0~100の整数であり、qは独立に5~30の整数である。)
【0027】
一般式(2)において、-NH(C=O)R5で示されるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基(-N=C=O)が活性水素を有する特定のブロック化剤でブロックされた、アミド構造、ウレタン構造あるいは非置換又は置換ウレア構造を有する基(即ち、イソシアネート基にブロック化剤を反応させて得られる一時的に不活性化された基)であり、加熱(80~150℃)によって、例えば、3,5-ジメチルピラゾールやε-カプロラクタム等のブロック化剤(R5H)を脱離基(脱離物質)として放出(脱離)してイソシアネート基(-N=C=O)を生成するものである。そして、この加熱により架橋剤である(B)成分中に生成したイソシアネート基とベースポリマーである上記(A)成分中のアミノ基(広義のアミノ基)とが反応(アミノリシス)して架橋(硬化)することによって、架橋点にウレア構造(尿素結合)を有するシリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物が得られる。
【0028】
上記一般式(2)において、R4は独立に炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の非置換又は置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの非置換一価炭化水素基の水素原子が部分的にアルコキシ基等で置換されたメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシ置換アルキル基などが挙げられる。R4としては、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、イソプロペニル基が好ましい。
【0029】
上記一般式(2)において、R5は、独立にラクタム類、ピラゾール類、オキシム類、フェノール類、アルコール類、β-ジケトン類およびβ-ケトエステル類から選ばれる後述するブロック化剤(R5H)から活性水素が脱離した残基である。
【0030】
上記一般式(2)のオルガノ(ポリ)シロキサンの加熱により生じる脱離基(脱離化合物)であるブロック化剤(R5H)は、例えば、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類、カルバゾール、ジメチルピラゾール、トリアゾール等のピラゾール類、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のフェノール類、2-ヒドロキシピリジン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のアルコール類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のβ-ケトエステル類、アセチルアセトン等のβ-ジケトン類である。
【0031】
上記一般式(2)において、R6は独立に炭素数1~10、特に炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基である。R6の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの非置換一価炭化水素基の水素原子が部分的に塩素、フッ素、臭素といったハロゲン原子等で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。R6としては、メチル基、エチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。このR6は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0032】
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンは、通常、原料であるブロック化イソシアネート基(-NH(C=O)R5)を有する加水分解性オルガノシラン化合物(シランカップリング剤単体)と、末端シラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとの縮合反応物として得ることができるものである。
上記一般式(2)において、pは該オルガノ(ポリ)シロキサンの縮合の程度を示すものであり、pは0~100の整数、好ましくは0~50の整数、より好ましくは1~10の整数である。qはスペーサーとしてのオルガノ(ポリ)シロキサン鎖の重合度の程度を示すものであり、qは独立に5~30の整数、好ましくは10~20の整数、より好ましくは15~20の整数である。
【0033】
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンは、例えば、下記式(3)
【化7】
(式中、R
4、R
5は前記の通りである。)
で示されるシランカップリング剤と、下記一般式(4)
【化8】
(式中、R
6、qは前記の通りである。)
で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとを、触媒の存在下で縮合反応させることで製造できる。この反応は、下記反応式[I]で表される。
【0034】
【化9】
(式中、R
4、R
5、R
6、p、qは前記の通りである。)
【0035】
ここで、上記式(3)で示されるシランカップリング剤としては、下記に示すものが例示できる。
【化10】
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基である。)
【0036】
また、上記式(4)で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとしては、下記に示すものが例示できる。
【化11】
【0037】
上記縮合反応において、式(4)で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンの使用量としては、式(3)で示されるシランカップリング剤1molに対して0.5~1molとなる量が好ましく、0.6~0.99molとなる量がより好ましい。式(4)で示される両末端にシラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン量が少なすぎると縮合反応が十分進行しない場合があり、多すぎると目的とする重合度の生成物が得られない場合がある。
【0038】
触媒としては、一般的にアルコキシシランの加水分解に用いられるものが使用でき、例えば、ジブチル錫メトキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジメチル錫ジメトキサイド、ジメチル錫ジアセテート等の有機錫化合物(錫触媒)、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジメトキシチタンジアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物(チタン触媒)、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(酸性触媒)、トリエチルアミン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン(塩基性触媒)などが挙げられる。この中でも特に酸性触媒の使用が望ましく、特に塩酸、硫酸、メタンスルホン酸が望ましい。なお、酸性触媒を使用する場合、反応終了後に中和させることが好ましい。
【0039】
触媒の添加量としては、上記シランカップリング剤の質量に対して0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。触媒添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、触媒添加量が多すぎると経済的に不利である。
【0040】
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンの製造には、一般に使用される溶剤を使用してもよく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、パークロロエタン、パークロロエチレン、トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノールなどのアルコール類等が挙げられる。
溶剤の使用量としては特に限定されないが、通常、使用するシランカップリング剤100質量部に対して0.1~500質量部、好ましくは0.5~300質量部の範囲で使用される。
【0041】
上記縮合反応の反応条件としては、通常、0℃以上80℃未満、好ましくは0~40℃で、シランカップリング剤に触媒とスペーサーとなる末端シラノール基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンとの混合溶液を滴下し、0℃以上80℃未満、好ましくは0~60℃で1~48時間、好ましくは3~30時間程度反応させることが好ましい。反応時の温度が低すぎると反応が完結しない場合があり、温度が高すぎるとシランカップリング剤のブロック化剤が脱離してしまう可能性がある。また、反応時間が短すぎると反応が完結しない場合があり、反応時間が長すぎると生産性に不利に働く。
【0042】
また、反応終了後は、減圧環境下で加熱することで未反応物と溶剤を留去することが可能である。このとき、減圧度は好ましくは10-8~3,000Pa、より好ましくは10-8~2,000Paであり、温度は0℃以上80℃未満が好ましく、より好ましくは0~40℃である。減圧度が高すぎると未反応物、溶剤の留去が困難となる場合がある。また、温度が低すぎると、未反応物、溶剤の留去が困難となる場合があり、高すぎるとシランカップリング剤のブロック化剤が脱離してしまう可能性がある。
【0043】
(B)成分のオルガノ(ポリ)シロキサンの具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基である。)
【0044】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1~40質量部であり、好ましくは2~25質量部である。(B)成分の配合量が1質量部未満であると、架橋構造が形成されず、硬化しない可能性がある。また、(B)成分の配合量が上記上限値の40質量部を超えると、組成物の硬化性が著しく低下する可能性がある。
(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
[その他の成分]
その他の任意成分として、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物において透明性を損なわない接着性付与剤、可塑剤、防かび剤などの一般に知られている各種添加剤を添加してもよい。
【0046】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記各成分の所定量を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。また、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、80~150℃に加熱することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができる。
【0047】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一成分型の組成物として室温において一液の形態で長期間安定的に保存することができ、長期間保存後であっても、使用時に加熱することによって容易に硬化する。
これは、ブロック化イソシアネート基を2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサンに含まれるブロック化剤が80~150℃の加熱により脱離する(即ち、80℃未満では容易に脱離しない)ため、室温において一液で安定的に保存可能となるものである。
【0048】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、加熱(80~150℃)することにより、ブロック化イソシアネート基を2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサンがブロック化剤を脱離してイソシアネート基を2個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサンとなり、該オルガノ(ポリ)シロキサン中のイソシアネート基と、非置換又は置換アミノ基を分子中に2つ以上有するオルガノポリシロキサン中のアミノ基とが反応することでウレア結合を形成し架橋(硬化)するため、深部硬化性に優れ、酸素や窒素、硫黄などによる硬化阻害を受けない。
【0049】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述したようにウレア結合を形成するため、各種のエンジニアリングプラスチックや金属等の広範な基材に対して良好な接着性を示し、また無色透明のシリコーンゲル等の硬化物を与えることができるため、液状光学透明性接着剤(LOCA)として有用である。更に本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られるシリコーンゲル等の透明なシリコーン硬化物(オルガノポリシロキサン硬化物)は、自動車用部品、自動車用オイルシール、電気・電子用部品、建築用構造物、土木工事用構造物、パワーモジュール等に好適に使用できる。なお、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られるシリコーン硬化物を上記の物品に使用する方法は、従来公知の方法に従えばよい。
【0050】
本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなるシリコーンゲル等の透明なシリコーン硬化物は、特にエンジニアリングプラスチック(ナイロン66(PA66)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)および金属(アルミニウム、真鍮等)への接着性に優れる。
【実施例】
【0051】
以下、合成例と実施例および比較例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、粘度はJIS Z 8803に規定する方法に準じた23℃における回転粘度計による測定値である。
【0052】
[合成例1]オルガノシロキサン1の合成
撹拌子、温度計を備えた300mLの三つ口フラスコに、下記式で表されるブロック化イソシアネート基として3,5-ジメチルピラゾール残基を有するシランカップリング剤20g(58mmol)と、エタノール14gを仕込み、窒素雰囲気下、室温(23℃、実施例において以下同じ。)で撹拌した。そこに、下記式で表される両末端にシラノール基を1つずつ有するジメチルポリシロキサン59.52g(44mmol)と、硫酸0.2gと、エタノール6gの混合溶液を約1時間かけて滴下した。室温で8時間撹拌後、酢酸ナトリウム10gを加えて中和し、濾過して取り除いた。ろ液から40℃、400Paの条件で、エタノールを留去することで、下記式[II]で表される平均3量体のオルガノシロキサン1を得た。この工程は、下記反応式で表される。
【化43】
(式中、Etはエチル基である。)
【0053】
[実施例1]
23℃における粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端がγ-アミノプロピル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(一般式(1)において、R1=水素原子、a=3、m=0、分子中のnが約250に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、合成例1で得られたオルガノシロキサン1を24質量部加え、十分に混合し、組成物1を得た。
【0054】
[比較例1]
23℃における粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端がγ-アミノプロピル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(一般式(1)において、R
1=水素原子、a=3、m=0、分子中のnが約250に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、下記分子式で示される、オルガノシロキサンオリゴマーを4質量部加え、十分に混合し、組成物2を得た。
【化44】
(式中、Etはエチル基である。)
【0055】
[試験方法]
上記実施例1、比較例1で調製された各組成物について、下記の評価を行った。下記硬さ、硬化阻害、保存性、透明性(外観)の評価結果を表1に、および接着性の評価結果を表2に示す。
【0056】
硬さ
上記実施例1で調製された組成物を内径10mmのガラスシャーレに充填し、120℃で180分加熱して得られた硬化物について、JIS K 2220に準拠した1/4コーンの稠度(JIS K 6249に規定される針入度)を測定した。
上記比較例1で調製された各組成物を内径60mmのアルミシャーレに充填し、120℃で90分加熱して得られた硬化物について、JIS K 7312の付属書2に規定されるスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠したAsker C硬度を測定した。
【0057】
硬化阻害
硫黄加硫により得られたブチルゴムシート上で、上記実施例1、比較例1で調製された各組成物の縦30mm、横30mm、厚さ1mmのシートを作製し、実施例1では120℃×180分間、比較例1では120℃×90分間加熱し、界面が硬化しているか確認し、硬化している場合は硬化阻害なし、未硬化である場合は硬化阻害ありと判定した。
【0058】
保存性
上記実施例1、比較例1で調製された各組成物を、50mLガラス瓶に入れ、40℃において保存し、それぞれ流動性が無くなった時間を一液での保存性として判定した。
【0059】
透明性(外観)
上記実施例1、比較例1で調製された各組成物を内径10mmのガラスシャーレ中で厚さが1.5cmとなるように硬化させ、外観を目視で確認した。硬化温度および時間は、実施例1では120℃×180分間、比較例1では120℃×90分間とした。
【0060】
接着性
上記実施例1、比較例1で調製された各組成物を、幅25mm、長さ100mmの被着体上で、厚さ1mmで硬化させ、手で引っ張って剥がすことで簡易接着試験を行った。接着面の凝集破壊率が50%以上の場合を○、凝集破壊率が50%未満の場合を×とした。被着体には、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、6,6-ナイロン、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、エポキシ樹脂、しんちゅう、アルミニウムを用いた。硬化温度および時間は、実施例1では120℃×180分間、比較例1では120℃×90分間とした。
【0061】
【0062】
【0063】
上記の結果から、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物である実施例1は、硫黄による硬化阻害を受けず、一液で保存可能であり、各種基材に対して良好な接着性を示し、無色透明なシリコーンゲルであることが示された。比較例1は硫黄による硬化阻害を受けず、一液で保存可能であり、各種基材に対して良好な接着性を示すが、白色であり、ゲルのような柔らかさを有さない。よって、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物の方が、無色透明さが求められるオプティカルボンディングなどの用途に好適に使用できるといえる。
【0064】
以上の結果から、本発明の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、耐硬化阻害性に優れ、一液で保存可能であり、各種基材に対して良好な接着性を示し、硬化物は無色透明であることが確認され、各種物品(自動車用部品、自動車用オイルシール、電気・電子用部品、建築用構造物、土木工事用構造物、パワーモジュール、液状光学透明性接着剤等)において好適に使用できることがわかった。