(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20241126BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241126BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241126BHJP
B29C 33/68 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B32B27/18 Z
B32B27/36
B29C33/68
(21)【出願番号】P 2021554257
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038125
(87)【国際公開番号】W WO2021079746
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2019193307
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 遼
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092272(JP,A)
【文献】特開2017-205902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B32B 27/18
B32B 27/36
B29C 33/68
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である基材層と、
前記基材層の片面に配置され、樹脂粒子を含む離型層と、
を有
し、
前記復元率は、基材層をJIS K6251:2010に規格されているダンベル状1号形試験片の形状に切り取り、試験片の中央部に40mm離れて平行な2本の標線をつけ、試験片を引張試験機に設置し、温度170℃下、引張速度500mm/分にて試験片を100%延伸し、次いで、引張試験機の試験片つかみ具をもとの位置まで戻し、1分間静置後、試験片を試験機から外して、2本の標線の間の距離L(mm)を計測し、下記の式から算出する、半導体パッケージの製造に用いるための離型フィルム。
(式)・・・復元率(%)=(80-L)÷40×100
【請求項2】
前記離型層に占める前記樹脂粒子の体積割合が5体積%~65体積%である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記基材層がポリエステルフィルムである、請求項1又は請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
基材層と、
前記基材層の片面に配置され、樹脂粒子を含む離型層と、を有し、
温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上であ
り、
前記復元率は、離型フィルムをJIS K6251:2010に規格されているダンベル状1号形試験片の形状に切り取り、試験片の中央部に40mm離れて平行な2本の標線をつけ、試験片を引張試験機に設置し、温度170℃下、引張速度500mm/分にて試験片を100%延伸し、次いで、引張試験機の試験片つかみ具をもとの位置まで戻し、1分間静置後、試験片を試験機から外して、2本の標線の間の距離L(mm)を計測し、下記の式から算出する、半導体パッケージの製造に用いるための離型フィルム。
(式)・・・復元率(%)=(80-L)÷40×100
【請求項5】
前記離型層に占める前記樹脂粒子の体積割合が5体積%~65体積%である、請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記基材層がポリエステルフィルムである、請求項4又は請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
半導体パッケージのコンプレッション成型に用いるための、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の離型フィルムが配置された金型を用いて、封止材により半導体チップを封止して半導体パッケージを成型する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは通常、外気からの遮断及び保護のため樹脂で封止され、パッケージと呼ばれる成型品として基板上に実装される。従来、成型品は封止樹脂の流路であるランナーを介して連結した1チップ毎のパッケージとして成型される。金型から成型品が離型する離型性は、金型の構造、封止樹脂への離型剤の添加等により担保されている。
【0003】
近年、パッケージの小型化、多ピン化等の要請から、Ball Grid Array(BGA)方式、Quad Flat Non-leaded(QFN)方式、ウエハレベル-Chip Size Package(WL-CSP)方式等のパッケージが増加している。QFN方式においては、スタンドオフの確保及び端子部への封止材バリ発生を防止するため、一方、BGA方式及びWL-CSP方式においては、金型からのパッケージの離型性向上のため、樹脂製の離型フィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。離型フィルムを使用する成型方法は「フィルムアシスト成型」と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルムアシスト成型においては、離型フィルムの離型性によって、封止後の半導体パッケージを金型から離型することは比較的容易である。しかし、BGA方式及びWL-CSP方式において、従来のトランスファーモールド方式からコンプレッションモールド方式へと成型方式が変更された場合、離型フィルムの金型への追従性が不足する場合がある。離型フィルムの金型への追従性が不足すると、成型時に離型フィルムにシワ又は弛みが発生し、離型フィルムの剥離時に半導体パッケージに損傷を与える可能性がある。また、離型フィルムのシワ又は弛みに起因して半導体パッケージに外観不良が起きる可能性がある。また、離型フィルムのシワ又は弛みに起因して半導体パッケージの封止に欠陥が生じ、半導体パッケージに性能不良が起きる可能性がある。半導体パッケージは今後さらに小型化、薄型化及び高集積化することが予想され、離型フィルムの追従性の向上が求められている。
【0006】
本開示の実施形態は上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、半導体パッケージの樹脂成型において、成型する際に金型への追従性に優れ、成型後の封止樹脂から容易に剥離することができ、半導体パッケージに外観不良を生じさせにくい離型フィルム、及びこれを用いた半導体パッケージの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0008】
<1> 温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である基材層と、前記基材層の片面に配置され、樹脂粒子を含む離型層と、を有する、半導体パッケージの製造に用いるための離型フィルム。
<2> 前記離型層に占める前記樹脂粒子の体積割合が5体積%~65体積%である、<1>に記載の離型フィルム。
<3> 前記基材層がポリエステルフィルムである、<1>又は<2>に記載の離型フィルム。
<4> 基材層と、前記基材層の片面に配置され、樹脂粒子を含む離型層と、を有し、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である、半導体パッケージの製造に用いるための離型フィルム。
<5> 前記離型層に占める前記樹脂粒子の体積割合が5体積%~65体積%である、<4>に記載の離型フィルム。
<6> 前記基材層がポリエステルフィルムである、<4>又は<5>に記載の離型フィルム。
<7> 半導体パッケージのコンプレッション成型に用いるための、<1>~<6>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<8> <1>~<7>のいずれか1項に記載の離型フィルムが配置された金型を用いて、封止材により半導体チップを封止して半導体パッケージを成型する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態によれば、半導体パッケージの樹脂成型において、成型する際に金型への追従性に優れ、成型後の封止樹脂から容易に剥離することができ、半導体パッケージに外観不良を生じさせにくい離型フィルム、及びこれを用いた半導体パッケージの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の離型フィルムの層構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部に形成されている場合も含まれる。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0012】
本開示において、離型フィルムが有する層の平均厚みは、対象となる層の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。層の厚みは、マイクロメーターを用いて測定することができる。積層されたうちの1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて離型フィルムの断面を観察することで測定してもよい。
【0013】
本開示において、「MD方向」とは、長尺状に製造されるフィルムにおいて長尺方向を意味し、「TD方向」とは、「MD方向」に直交する方向を意味する。本開示において、「MD方向」を「機械方向」ともいい、「TD方向」を「幅方向」ともいう。
【0014】
<離型フィルム>
本開示の第一実施形態の離型フィルムは、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である基材層と、前記基材層の片面に配置されている、樹脂粒子を含む離型層と、を有する。
本開示の第二実施形態の離型フィルムは、基材層と、前記基材層の片面に配置されている、樹脂粒子を含む離型層と、を有し、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である。
以下、第一実施形態の離型フィルムと第二実施形態の離型フィルムとに共通する事項については、「本開示の離型フィルム」と総称して記載する。
【0015】
図1に、本開示の離型フィルムの層構成の一例を概略的に示す。
図1に示す離型フィルム10は、基材層20と、基材層20上に配置された離型層30とを備えている。離型層30は、当該層中に樹脂粒子を含む。
本開示の離型フィルムは、
図1に示す構成に限られない。本開示の離型フィルムは、例えば、基材層20の離型層30が設けられた面とは反対の面上に、第二の離型層を有していてもよく、基材層20と離型層30との間にほかの層(例えば、帯電防止層、着色層等)を有していてもよい。
【0016】
本開示の離型フィルムにおいて樹脂粒子を含む離型層が、半導体パッケージを製造する際に封止樹脂と接触する。
本開示の離型フィルムは、半導体パッケージの樹脂成型において、成型する際に金型への追従性に優れ、成型後の封止樹脂(例えば、エポキシ樹脂)から容易に剥離することができ、半導体パッケージに外観不良を生じさせにくい。本開示の離型フィルムが上記の性能を示す理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
【0017】
第一実施形態の離型フィルムが有する基材層は、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上であるので、熱及び外力が加わった際に適度に変形しつつも形状を維持しようとする性質を呈し、その結果、金型に装着する際及び成型時に封止樹脂が流動する際にシワ又は弛みが発生しにくく、金型への追従性に優れるものと推測される。
第二実施形態の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上であるので、熱及び外力が加わった際に適度に変形しつつも形状を維持しようとする性質を呈し、その結果、金型に装着する際及び成型時に封止樹脂が流動する際にシワ又は弛みが発生しにくく、金型への追従性に優れるものと推測される。
【0018】
そして、本開示の離型フィルムが有する離型層は、樹脂粒子を含む。樹脂粒子は、離型層の外表面に微細な凹凸を形成し、樹脂粒子の微細な凹凸が離型層の外表面の滑り性を高め、離型性の向上に寄与するものと推測される。また、この微細な凹凸が封止樹脂のフロー跡の発生を抑制するので、半導体パッケージに外観不良が発生しにくいものと推測される。さらに、引張弾性率及び復元率が上記範囲であることと相まって、樹脂粒子は無機粒子に比べて離型層から脱落しにくいので、樹脂粒子を含む離型層は、樹脂粒子を含まず無機粒子を含む離型層に比べて、半導体パッケージの表面や金型の表面を汚染させにくい。
【0019】
本開示の離型フィルムは、成型用の金型への追従性に優れることにより、成型時にシワ又は弛みが発生しにくい。したがって、本開示の離型フィルムによれば、(a)離型フィルムの剥離時に半導体パッケージに損傷を与える可能性が低く、(b)離型フィルムのシワ又は弛みに起因した外観不良が半導体パッケージに発生しにくく、(c)離型フィルムのシワ又は弛みに起因した半導体パッケージの封止欠陥が発生しにくい。
本開示の離型フィルムは、成型後の封止樹脂からの離型性に優れることにより、離型フィルムの剥離に要する力が少なくて済む。したがって、本開示の離型フィルムによれば、離型フィルムの剥離時に半導体パッケージに損傷を与える可能性が低い。
【0020】
本開示の離型フィルムは、成型する際に金型への追従性に優れ、且つ、成型後の封止樹脂からの離型性に優れることから、複雑な形状を有する金型又は比較的深い溝を有する金型に対応し得る。また、本開示の離型フィルムは、離型フィルムを真空吸着等により金型に配置するコンプレッション成型に好適である。
【0021】
以下に、本開示の離型フィルムについて、各層の特性、各層に含まれる成分等を説明する。
【0022】
[基材層]
本開示の離型フィルムは基材層を有する。基材層としては特に限定されず、本技術分野で使用されている樹脂フィルムから、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であり且つ温度170℃における復元率が70%以上である樹脂フィルムを選択することが好ましい。
【0023】
(引張弾性率)
第一実施形態の離型フィルムにおいて基材層は、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下である。第二実施形態の離型フィルムにおいて基材層は、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であることが好ましい。
【0024】
基材層の引張弾性率は、下記の試験方法により求める。
離型フィルムを製造する材料である基材層を用意するか、又は、離型フィルムから基材層以外の層を剥離して基材層を用意する。基材層をJIS K6251:2010に規格されているダンベル状1号形試験片の形状に切り取る。試験片の中央部に40mm離れて平行な2本の標線をつける。JIS K6251:2010に規格されている試験方法に準拠し、温度170℃下で、引張試験機(例えば、(株)エー・アンド・デイ製、型番RTC-1210)を用いて引張試験を行い、引張弾性率を求める。
具体的には、試験片を引張試験機(例えば、(株)エー・アンド・デイ製、型番RTC-1210)に設置し、温度170℃下、引張速度500mm/分にて試験片を100%延伸する(つまり、2本の標線の間が80mmになるまで延伸する)。その際に測定された応力-ひずみ曲線から、ひずみε1=0.0005(0.05%)における応力σ1(MPa)と、ひずみε2=0.0025(0.25%)における応力σ2(MPa)とを求め、下記の式から引張弾性率を算出する。
(式)・・・引張弾性率(MPa)=(σ2-σ1)÷(ε2-ε1)
ここで、基材層が長尺状に製造される樹脂フィルムである場合、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのMD方向に一致する試験片と、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのTD方向に一致する試験片とを作製する。MD方向の試験片の引張弾性率とTD方向の試験片の引張弾性率とを平均した値を、基材層の引張弾性率とする。
【0025】
第一実施形態の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における引張弾性率は、金型に対する離型フィルムの追従性を向上する観点から、150MPa以下である。第二実施形態の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における引張弾性率は、金型に対する離型フィルムの追従性を向上する観点から、150MPa以下であることが好ましい。本開示の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における引張弾性率は、上記の観点から、130MPa以下がより好ましく、110MPa以下が更に好ましく、100MPa以下が更に好ましい。本開示の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における引張弾性率の下限は、基材層に求められる強度を確保する観点から、例えば、1MPa以上であり、2MPa以上であり、3MPa以上である。
【0026】
第一実施形態の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下であることが好ましい。第二実施形態の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における引張弾性率が150MPa以下である。本開示の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における引張弾性率が130MPa以下であることがより好ましく、110MPa以下であることが更に好ましく、100MPa以下であることが更に好ましく、80MPa以下であることが特に好ましい。本開示の離型フィルムの温度170℃における引張弾性率の下限は、離型フィルムに求められる強度を確保する観点から、例えば、1MPa以上であり、2MPa以上であり、3MPa以上である。
離型フィルムの引張弾性率の求め方は、基材層の引張弾性率の求め方と同じであって、試験片として離型フィルムを使用する。離型フィルムが長尺状に製造される場合、試験片の長さ方向が離型フィルムのMD方向に一致する試験片と、試験片の長さ方向が離型フィルムのTD方向に一致する試験片とを作製する。MD方向の試験片の引張弾性率とTD方向の試験片の引張弾性率とを平均した値を、離型フィルムの引張弾性率とする。
【0027】
(復元率)
第一実施形態の離型フィルムにおいて基材層は、温度170℃における復元率が70%以上である。第二実施形態の離型フィルムにおいて基材層は、温度170℃における復元率が70%以上であることが好ましい。
【0028】
基材層の復元率は、下記の試験方法により求める。
離型フィルムを製造する材料である基材層を用意するか、又は、離型フィルムから基材層以外の層を剥離して基材層を用意する。基材層をJIS K6251:2010に規格されているダンベル状1号形試験片の形状に切り取る。試験片の中央部に40mm離れて平行な2本の標線をつける。試験片を引張試験機(例えば、(株)エー・アンド・デイ製、型番RTC-1210)に設置し、温度170℃下、引張速度500mm/分にて試験片を100%延伸し(つまり、2本の標線の間が80mmになるまで延伸し)、次いで、引張試験機の試験片つかみ具をもとの位置まで戻す。1分間静置後、試験片を試験機から外して、2本の標線の間の距離L(mm)を計測し、下記の式から復元率を算出する。
(式)・・・復元率(%)=(80-L)÷40×100
ここで、基材層が長尺状に製造される樹脂フィルムである場合、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのMD方向に一致する試験片と、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのTD方向に一致する試験片とを作製する。MD方向の試験片の復元率とTD方向の試験片の復元率とを平均した値を、基材層の復元率とする。
【0029】
第一実施形態の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における復元率は、金型に対する離型フィルムの追従性を向上する観点から、70%以上である。第二実施形態の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における復元率は、金型に対する離型フィルムの追従性を向上する観点から、70%以上であることが好ましい。本開示の離型フィルムにおいて基材層の温度170℃における復元率は、上記の観点から、75%~100%がより好ましく、80%~100%が更に好ましく、90%~100%が更に好ましい。
【0030】
第一実施形態の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における復元率が70%以上であることが好ましい。第二実施形態の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における復元率が70%以上である。本開示の離型フィルムは、離型フィルム全体として、温度170℃における復元率が75%~100%であることがより好ましく、80%~100%であることが更に好ましく、90%~100%であることが更に好ましい。
離型フィルムの復元率の求め方は、基材層の復元率の求め方と同じであって、試験片として離型フィルムを使用する。離型フィルムが長尺状に製造される場合、試験片の長さ方向が離型フィルムのMD方向に一致する試験片と、試験片の長さ方向が離型フィルムのTD方向に一致する試験片とを作製する。MD方向の試験片の復元率とTD方向の試験片の復元率とを平均した値を、離型フィルムの復元率とする。
【0031】
(基材層の成分)
基材層は、半導体パッケージの樹脂成型が高温(100℃~200℃程度)で行われることを考慮すると、この温度以上の耐熱性を有することが望ましい。
【0032】
基材層は、耐熱性及び高温時の引張弾性率の観点から、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、これらの共重合体又は変性樹脂が挙げられる。
【0033】
基材層としては、ポリエステル樹脂を成型したポリエステルフィルムが好ましく、金型への追従性の観点からは、2軸延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。
【0034】
基材層としてポリエステルフィルムを用いる場合、基材層の引張弾性率及び復元率は、ポリエステルフィルムを製造する際の延伸倍率又は延伸温度により制御することができる。
【0035】
(基材層の平均厚み)
基材層の平均厚みは特に限定されず、5μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。基材層の平均厚みが5μm以上であると、取扱い性に優れ、シワが生じにくい傾向にある。基材層の平均厚みが200μm以下であると、成型時の金型への追従性により優れるので、半導体パッケージにシワ等が発生することがより抑制される。
【0036】
基材層の外表面(金型と接触する面)には、金型からの剥離を容易にする目的で、表面加工が施されていてもよい。
【0037】
[離型層]
本開示の離型フィルムは、樹脂粒子を含む離型層を基材層の片面に有する。離型層は、少なくとも樹脂粒子を含み、さらにバインダー樹脂、その他の成分を含んでいてもよい。
【0038】
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。樹脂粒子は、離型層の離型性の観点からは、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリアクリロニトリル樹脂から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0039】
樹脂粒子に含まれるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられ、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂)等が挙げられる。(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-フルオロエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
樹脂粒子に含まれるポリオレフィン樹脂としては、オレフィン単量体又はアルケン単量体の単独重合体又は共重合体であれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
樹脂粒子に含まれるポリスチレン樹脂としては、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。スチレン誘導体としては、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン;4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン;ビニルナフタレンなどが挙げられる。
樹脂粒子に含まれるポリアクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリル単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0040】
樹脂粒子は、半導体パッケージの外観の均一性の観点から、離型層形成用組成物の調製に使用され得る有機溶媒(例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル)に不溶性又は難溶性であることが好ましい。ここで、有機溶媒に不溶性又は難溶性とは、JIS K6769:2013に準拠するゲル分率試験において、トルエン等の有機溶媒中に樹脂粒子を分散して50℃で24時間保持した後のゲル分率が97%以上であることをいう。有機溶媒に対する樹脂粒子の溶解性を抑制する観点からは、樹脂粒子に含まれる樹脂は架橋樹脂であることが好ましい。
【0041】
樹脂粒子の平均粒子径は1μm~55μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、離型層の外表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、離型層の離型性がより優れる。この観点から、樹脂粒子の平均粒子径は3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が55μm以下であると、離型層中に樹脂粒子を保持させるために離型層の厚みを過度に大きくする必要がない。この観点から、樹脂粒子の平均粒子径は、45μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが更に好ましい。
【0042】
樹脂粒子の平均粒子径は、下記の測定方法により求める。
離型フィルムを一部切り取り、樹脂に包埋した後、離型フィルムの厚み方向に切断して薄片試料を作製する。この薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において、離型層に含まれる樹脂粒子を無作為に100個選び、100個の長径を計測する。100個の長径の算術平均を、樹脂粒子の平均粒子径とする。
【0043】
離型層に含まれる樹脂粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、不定形のいずれでもよい。
【0044】
樹脂粒子の具体例としては、アクリル樹脂粒子であるタフチックFH-S010(東洋紡(株))等のタフチックシリーズが挙げられる。
【0045】
離型層に占める樹脂粒子の体積割合は、離型層の離型性を向上させる観点と、半導体パッケージ表面の汚染を抑制する観点とから、5体積%~65体積%であることが好ましい。樹脂粒子の体積割合が5体積%以上であると、離型層の外表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、離型層の離型性がより優れる。この観点から、樹脂粒子の体積割合は、10体積%以上であることがより好ましく、20体積%以上であることが更に好ましい。樹脂粒子の体積割合が65体積%以下であると、離型層からの樹脂粒子の脱落が起きにくく、半導体パッケージ表面の汚染を抑制できる。この観点から、樹脂粒子の体積割合は、60体積%以下であることがより好ましく、50体積%以下であることが更に好ましい。
【0046】
離型層に占める樹脂粒子の体積割合は、離型層の切断面をSEMで観察し、下記の方法により求めることができる。
先述の方法で作製した薄片試料のSEM画像において、離型層について任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる樹脂粒子の総面積Aを求める。離型層が均質であると仮定し、樹脂粒子の総面積Aを面積Sで除算した値を百分率(%)に換算し、離型層に占める樹脂粒子の体積割合とする。
面積Sは、樹脂粒子の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、樹脂粒子が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい。
【0047】
(バインダー樹脂)
離型層はバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂を含むことにより、樹脂粒子が離型層内に保持される。
【0048】
離型層のバインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂は、半導体パッケージからの離型性、離型層の耐熱性等の観点から、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂が好ましく、架橋型アクリル樹脂(以下「架橋型アクリル共重合体」ともいう。)がより好ましい。
【0049】
アクリル樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等の低ガラス転移温度(Tg)モノマーを主モノマーとし、主モノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーとを共重合することで得られるアクリル共重合体であることが好ましい。架橋型アクリル共重合体は、上記モノマーを架橋剤を使用して架橋することにより製造することができる。
【0050】
架橋型アクリル共重合体の製造に使用される架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。アクリル樹脂中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることが好ましい。多官能架橋剤を使用して製造された架橋型アクリル共重合体は、緩やかに広がった網目状構造を有するので、この架橋型アクリル重合体を含む離型層は、基材層の延伸に追従しやすく、金型に対する離型フィルムの追従性を向上させる。
【0051】
架橋型アクリル共重合体の製造において使用される架橋剤の量は、アクリル共重合体100質量部に対して、3質量部~100質量部が好ましく、5質量部~70質量部がより好ましい。架橋剤の量がアクリル共重合体100質量部に対して3質量部以上であると、離型層の強度が確保されることにより樹脂粒子の脱落が起こりにくく、半導体パッケージ表面の汚染が抑制される。架橋剤の量がアクリル共重合体100質量部に対して100質量部以下であると、架橋型アクリル共重合体の柔軟性が向上し、離型層の延伸性が向上する。
【0052】
(その他の成分)
離型層は、本開示の離型フィルムの効果が奏される限り、必要に応じて、溶媒、アンカリング向上剤、架橋促進剤、帯電防止剤、着色剤等を含んでいてもよい。
【0053】
(離型層の平均厚み)
離型層の平均厚みは特に限定されず、離型層に含まれる樹脂粒子の粒子径を考慮して設定してよい。離型層の外表面に凹凸を形成して離型層の離型性を向上させる観点からは、離型層の厚みは厚過ぎないことが好ましい。一方で、離型層に含まれる樹脂粒子が離型層から脱落すると半導体パッケージ表面が汚染されるところ、離型層の厚みは離型層中に樹脂粒子を保持し得る厚みが好ましい。離型層の平均厚みは、具体的には、0.1μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましい。
【0054】
(離型層の表面粗さ)
離型層の外表面は微細な凹凸を有することが好ましい。離型層の外表面の微細な凹凸は、算術平均粗さ(Ra)又は十点平均粗さ(Rz)により評価することができる。離型層の離型性を向上させる観点から、離型層の外表面の算術平均粗さ(Ra)は0.5μm~5μmであることが好ましく、離型層の外表面の十点平均粗さ(Rz)は5μm~50μmであることが好ましい。離型層の外表面の表面粗さは、樹脂粒子の平均粒子径と離型層の厚みとを調整することにより調整することができる。
【0055】
離型層の外表面の算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、走査速度0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601:2013又はISO 4287(1997)により解析して求める。
【0056】
[その他の層]
本開示の離型フィルムは、基材層と離型層との間に、帯電防止層、着色層等を有していてもよい。
【0057】
本開示の離型フィルムは、基材層の一方の面上であって、樹脂粒子を含む離型層(第一の離型層)が設けられた面とは反対の面上に、離型フィルムの金型からの剥離を容易にする目的で、第二の離型層を有していてもよい。第二の離型層の材料としては、先述のバインダー樹脂の中から、金型からの離型性、耐熱性等を考慮して選択することが望ましい。第二の離型層の厚みは、特に限定されないが、0.1μm~100μmであることが好ましい。
【0058】
<離型フィルムの製造方法>
本開示の離型フィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、樹脂粒子を含む離型層形成用組成物を調製し、離型層形成用組成物を基材層の片面に付与し乾燥することにより、本開示の離型フィルムを製造することができる。本開示の離型フィルムは、必要に応じて、先述のその他の層を設けてもよい。
【0059】
[離型層形成用組成物の調製]
離型層形成用組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、樹脂粒子を溶媒に分散する方法が挙げられる。離型層形成用組成物は、樹脂粒子のほかにバインダー樹脂及びその他の成分を含んでいてもよい。
【0060】
離型層形成用組成物の調製に使用する溶媒は、特に限定されない。離型層形成用組成物の調製に使用する溶媒としては、樹脂粒子を分散可能であり、バインダー樹脂を溶解可能である有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0061】
[離型層形成用組成物の付与及び乾燥]
離型層形成用組成物を基材層の片面に付与する方法は特に限定されず、ロールコート、バーコート、キスコート等の公知の塗布方法を採用することができる。離型層形成用組成物を基材層の片面に付与する際には、乾燥後の組成物層(離型層)の厚みが0.1μm~100μmとなるように付与することが望ましい。
【0062】
基材層の片面に付与された離型層形成用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、公知の乾燥方法を採用することができる。例えば、温度50℃~150℃の雰囲気に0.1分間~60分間置く乾燥方法が挙げられる。
【0063】
<半導体パッケージの製造方法>
本開示の離型フィルムは、半導体パッケージの製造に使用される。すなわち、本開示の離型フィルムが配置された金型を用いて、封止材により半導体チップを封止して半導体パッケージが成型される。
【0064】
本開示の離型フィルムは、コンプレッション成型に好適に使用することができる。一般的なコンプレッション成型の工程は下記のとおりである。
コンプレッション成型装置の金型に離型フィルムを配置し、真空吸着等により離型フィルムを金型の形状に追従させる。次いで、半導体パッケージの封止材(例えば、エポキシ樹脂等)を金型に入れ、半導体チップをその上に配置し、加熱しながら金型を圧縮することにより封止材を硬化させて、半導体パッケージを成型する。次いで、金型を開けて、成型された半導体パッケージを取り出す。
【0065】
コンプレッション成型では、通常、離型フィルムを真空吸着等により金型に配置するので、離型フィルムは金型の形状に対する追従性に優れることが求められる。本開示の離型フィルムは、金型への追従性に優れ、コンプレッション成型に好適である。
【0066】
本開示の離型フィルムを用いて成型された半導体パッケージは、外観が良好である。また、本開示の離型フィルムを用いて成型された半導体パッケージは、離型フィルムのシワ又は弛みに起因した半導体パッケージの封止欠陥が抑制されており、離型フィルムの剥離時に被る可能性のある損傷が抑制されている。
【実施例】
【0067】
以下、本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
[離型フィルムの作製]
アクリル樹脂(帝国化学産業(株)、商品名WS-023)100質量部と、架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)、商品名コロネートL)10質量部と、アクリル樹脂粒子(東洋紡(株)、商品名タフチックFH-S010、平均粒子径10μm)10質量部とをトルエンに添加して固形分量15質量%のトルエン溶液とし、離型層形成用組成物を調製した。
基材層として2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)、商品名FT3、厚み25μm)を用意し、この2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの引張弾性率及び復元率を既述の試験方法により求めた。
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにコロナ処理した後、片面に、ロールコータを用いて、乾燥後の平均厚みが10μmになるように離型層形成用組成物を塗布し、乾燥して離型層を形成し、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムにおいて離型層に含まれる樹脂粒子の平均粒子径及び体積割合を、SEMを用いた既述の試験方法により求めた。また、得られた離型フィルムの引張弾性率及び復元率を既述の試験方法により求めた。測定結果を表1に示す。
【0069】
[離型フィルムの性能評価]
コンプレッション成型用金型の下型に半導体ベアチップをセットした。コンプレッション成型用金型の上型に離型フィルムを配置し、真空で固定した後、型締めした。封止材(日立化成(株)、商品名CEL-9750ZHF10)をコンプレッション成型して半導体パッケージを得た。金型温度は180℃、成型圧力は6.86MPa(70kgf/cm2)、成型時間は180秒とした。離型フィルムの性能として、下記の項目(1)~(3)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(1)成型する際の金型への追従性
離型フィルムの金型への追従性を、コンプレッション成型する際に目視で観察し、下記のとおり分類した。
A+(◎):シワ、弛み及びテント張りがいずれも観察されず、金型への追従が十分である。
A(○):シワ、弛み又はテント張りが観察されるが軽微であり、実用上問題ない。
B(△):シワ、弛み又はテント張りが観察されるが、実用上の許容範囲である。
C(×):シワ、弛み及びテント張りがいずれも観察され、金型への追従が不十分である。
「テント張り」とは、離型フィルムが金型に充分に追従せず、離型フィルムが金型の角から浮いた状態になり、当該角にあたかもテントを張ったように見える状態をいう。
【0071】
(2)成型後の封止樹脂からの離型性
離型フィルムを、成型後の封止樹脂から、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離する剥離試験を行い、剥離に要する力を測定し、下記のとおり分類した。
A(○):0.5N/50mm未満
B(△):0.5N/50mm以上5.0N/50mm未満
C(×):5.0N/50mm以上
【0072】
(3)半導体パッケージの外観
成型後の半導体パッケージの外観を目視で観察し、離型フィルムのシワ又は弛みに起因する外観不良の有無を下記のとおり分類した。
A(○):シワに起因する外観不良及び弛みに起因する外観不良がいずれも観察されない。
B(△):シワに起因する外観不良又は弛みに起因する外観不良が観察される。
C(×):シワに起因する外観不良及び弛みに起因する外観不良がいずれも観察される。
【0073】
<実施例2~3>
基材層を別の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0074】
<実施例4~7>
離型層形成用組成物に添加するアクリル樹脂粒子(タフチックFH-S010)の添加量を変更して離型層に占める樹脂粒子の体積割合を表1に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
<比較例1>
実施例1において使用した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)、商品名FT3、厚み25μm)に離型層を設けず離型フィルムとして使用し、性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0076】
<比較例2>
アクリル樹脂粒子(タフチックFH-S010)を用いずに離型層形成用組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0077】
<比較例3>
アクリル樹脂粒子(タフチックFH-S010)の代わりにシリカ粒子(東亞合成(株)、商品名HPS-3500、平均粒子径3.5μm)を用いて離型層形成用組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0078】
<比較例4>
基材層を別の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0079】
<比較例5>
基材層を未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製し性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
実施例1~7の離型フィルムは、成型する際に金型への追従性に優れ、成型後の封止樹脂からの離型性が良好であり、半導体パッケージの外観も良好であった。ただし、離型層に占める樹脂粒子の体積割合が65体積%を超える実施例7では、離型層からの樹脂粒子の脱落が観察された。
半導体パッケージのコンプレッション成型に本実施形態の離型フィルムを使用することにより、半導体パッケージに損傷を与えることなく封止材と金型とを容易に離型することが可能であり、且つ、良好な外観を有する半導体パッケージを提供することが可能である。
【0082】
比較例1の離型フィルム(離型層を有しない離型フィルム)は、成型後の封止樹脂から離型フィルムを剥離することができなかった。
【0083】
比較例2の離型フィルム(離型層に樹脂粒子を含まない離型フィルム)は、成型後の封止樹脂から離型フィルムを容易には剥離することができなかった。また、半導体パッケージ表面の外観が不均一であり、封止材のフロー跡が見られた。
【0084】
比較例3の離型フィルム(離型層に樹脂粒子の代わりにシリカ粒子を含む離型フィルム)は、成型後の封止樹脂から離型フィルムを容易には剥離することができなかった。また、目視及び顕微鏡観察のいずれでも、離型層からのシリカ粒子の脱落が観察された。
【0085】
日本国特許出願2019-193307号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0086】
10 離型フィルム
20 基材層
30 離型層