IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許7593394導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管
<>
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図1
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図2
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図3
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図4
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図5
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図6
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図7
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図8
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図9
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図10
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図11
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図12
  • 特許-導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/24 20060101AFI20241126BHJP
   H01P 3/127 20060101ALI20241126BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20241126BHJP
   H01P 3/14 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01P1/24
H01P3/127
H01P3/12 200
H01P3/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022509508
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009070
(87)【国際公開番号】W WO2021192967
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020058877
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】森本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-107507(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129619(WO,A1)
【文献】特開2017-147548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0141357(US,A1)
【文献】特開2007-300171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/24
H01P 3/127
H01P 3/12
H01P 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が空洞である誘電体層と、前記誘電体層の外側を覆う金属層と、を備える導波管の端部を閉止する導電性を有する導波管用閉止部材であって、
平板状のベース部と、
前記ベース部の主面から突出して設けられる突出部と、を有し、
前記突出部が前記端部から前記空洞の内部に挿入され前記導波管に取り付けられ
前記主面から前記突出部の端面までの距離をL1、前記誘電体層を伝搬する電磁波の波長をλ 、n1を非負の整数とした場合に、
【数1】
を満たす
導波管用閉止部材。
【請求項2】
前記突出部は、前記空洞の形状に倣って形成される、
請求項1に記載の導波管用閉止部材。
【請求項3】
前記突出部は、円筒状である、
請求項1又は請求項2に記載の導波管用閉止部材。
【請求項4】
前記突出部は、円錐台状である、
請求項1に記載の導波管用閉止部材。
【請求項5】
前記主面から突出して設けられ、前記突出部の外側に位置する庇部、を備え、
前記庇部は、前記導波管に取り付けられた場合に、前記金属層の外側に設けられる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導波管用閉止部材。
【請求項6】
前記庇部は、先端が細い、
請求項に記載の導波管用閉止部材。
【請求項7】
前記主面から庇部の端面までの距離をL2、前記空洞を伝搬する電磁波の周波数をλ、n2を非負の整数、とした場合に、
【数2】
を満たす、
請求項又は請求項に記載の導波管用閉止部材。
【請求項8】
表面に導電材料が成膜された樹脂で形成された
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導波管用閉止部材。
【請求項9】
内部が空洞である誘電体層と、前記誘電体層の外側を覆う金属層と、を備える導波管と、
前記導波管の端部を閉止する導電性の導波管用閉止部材と、を備える閉止部材付き導波管であって、
前記導波管用閉止部材は、
平板状のベース部と、
前記ベース部の主面から突出して設けられる突出部と、を有し、
前記突出部が前記端部から前記空洞の内部に挿入され前記導波管に取り付けられ
前記主面から前記突出部の端面までの距離をL1、前記誘電体層を伝搬する電磁波の波長をλ 、n1を非負の整数とした場合に、
【数3】
を満たす
閉止部材付き導波管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導波管用閉止部材及び閉止部材付き導波管に関する。
【背景技術】
【0002】
無線広帯域通信である次世代5G(5th Generation)システムでは、ミリ波帯の帯域の電波を使用する。
【0003】
ミリ波帯の帯域の電波を伝送する手段として、例えば、導波管が用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-195605号公報
【文献】特開2017-228839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導波管を設置する際に、導波管の設置にあわせて、導波管の長さを調整する必要がある。導波管を切断して長さを調整する場合には、導波管の終端の処理を行う必要がある。導波管の終端処理を行う際には、端部からの電波の漏洩を防止するとともに、端部からの反射特性を保証して行う必要がある。
【0006】
本開示は、導波管の性能を損なうことなく導波管の終端処理を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、内部が空洞である誘電体層と、前記誘電体層の外側を覆う金属層と、を備える導波管の端部を閉止する導電性の導波管用閉止部材であって、平板状のベース部と、前記ベース部の主面から突出して設けられる突出部と、を有し、前記突出部が前記端部から前記空洞の内部に挿入され前記導波管に取り付けられる導波管用閉止部材である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、導波管の性能を損なうことなく導波管の終端処理を行う技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の閉止部材を導波管に取り付けた状態を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の閉止部材を導波管に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図3】第1実施形態の閉止部材が取り付けられる導波管の部分斜視図である。
図4】第1実施形態の閉止部材の斜視図である。
図5】第1実施形態の閉止部材を導波管に取り付けた状態での断面図である。
図6】第2実施形態の閉止部材の斜視図である。
図7】第2実施形態の閉止部材を導波管に取り付けた状態での断面図である。
図8】第3実施形態の閉止部材の斜視図である。
図9】第3実施形態の閉止部材を導波管に取り付けた状態での断面図である。
図10】第4実施形態の閉止部材の斜視図である。
図11】第4実施形態の閉止部材を導波管に取り付けた状態での断面図である。
図12】本開示の実施形態の閉止部材の反射特性を説明する図である。
図13】参考例の閉止部材の反射特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一又は対応する構成部分には同一又は対応する符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0011】
《第1実施形態》
<閉止部材10>
第1実施形態の閉止部材10は、導波管20の端部を短絡する導波管用閉止部材である。図1は、第1実施形態の閉止部材10を導波管20に取り付けた状態を示す斜視図である。図2は、第1実施形態の閉止部材10を導波管20に取り付ける前の状態を示す斜視図である。閉止部材10を取り付けた状態の導波管20を閉止部材付き導波管と呼ぶ場合がある。
【0012】
なお、図には、説明の便宜のためXYZ直交座標系が設定されている。図面の紙面に対して垂直な座標軸については、座標軸の丸の中にバツ印は紙面に対して奥側が正、丸の中に黒丸印は紙面に対して手前側が正であることを表している。ただし、当該座標系は、説明のために定めるものであって、閉止部材や導波管の姿勢について限定するものではない。なお、本開示では、特に説明しない限り、Z軸は導波管20の延在方向、X軸とY軸は導波管20の延在方向に垂直な方向となっている。
【0013】
第1実施形態の閉止部材10と導波管20は、例えば、次世代5Gシステムに用いられるミリ波帯の帯域の電波を伝送する際に用いられる。例えば、導波管20は、基地局からユーザのいる空間に設置されたアンテナまで接続する。
【0014】
アンテナは、例えば、フレキシブル基板で形成されたパッチアンテナやダイポールアンテナでもよい。フレキシブル基板を用いる場合には、線路として、マイクロストリップラインやコプレーナーラインを用いてよいし、SIW(substrate integrated waveguide)を用いてもよい。フレキシブル基板の厚さは0.8mm以下であることが好ましい。フレキシブル基板を薄くすることにより、フレキシブル基板の可撓性をあげることができる。また、フレキシブル基板の誘電体は、フッ素系樹脂や液晶、ポリイミド等により形成される。フッ素系樹脂としては、例えば、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA(Perfluoroalkoxy alkane))を用いることができる。
【0015】
フレキシブル基板を用いる場合には、フレキシブル基板上にアンプを備えてもよい。アンテナは、例えば、導波管にスロットを開けたスロットアンテナでもよい。また、導波管20の先には、別の導波管がつながっていてもよい。例えば、フレキシブル基板を介して別の導波管がつながっていてもよい。
【0016】
第1実施形態の導波管20で伝送される電波の帯域は、例えば、27.5GHz~29GHzである。例えば、中心周波数は、28GHzである。当該帯域は、事業者ごとに400MHz毎に分割されて使用される。なお、周波数帯域は、27.5GHz~29GHzに限らず、例えば、26GHzや39GHzを中心とする周波数帯域でもよい。また、周波数帯域は、ミリ波帯に限らず他の周波数帯でもよい。
【0017】
第1実施形態の閉止部材10は、導波管20の+Z側の端部に固定される。閉止部材10は、例えば、はんだ付け、ロウ付け、導電性ペーストの塗布等により、導波管20に機械的、電気的に接続される。なお、後述する第2実施形態の閉止部材110、第3実施形態の閉止部材210、第4実施形態の閉止部材310についても、閉止部材10と同様に導波管20の+Z側端部に固定される。
【0018】
<導波管20>
最初に、閉止部材10が取り付けられる導波管20について説明する。図3は、第1実施形態の閉止部材10が取り付けられる導波管20の部分斜視図である。
【0019】
導波管20は、ミリ波帯の帯域の電波が伝搬する導波路となる導波管である。導波管20は、電波が伝搬する方向に延在する円筒状の管である。なお、図3では、電波が伝搬する方向は、Z方向である。導波管20の内部は空洞20hとなっている。導波管20は、外面20s1と、内面20s2と、を有する。導波管20の+Z側には、端面20eを有する。端面20eには、閉止部材10が取り付けられ、閉止部材10により覆われる。
【0020】
導波管20は、内部が空洞である誘電体チューブ21と、誘電体チューブ21の外側を覆う金属被覆22と、を備える。誘電体チューブ21の空洞が導波管20の空洞20hとなる。導波管20の空洞20hと誘電体チューブ21で電波が伝搬する。また、金属被覆22の外面が、導波管20の外面20s1となる。誘電体チューブ21の内面が、導波管20の内面20s2となる。
【0021】
[誘電体チューブ21]
誘電体チューブ21は、電波が伝搬する伝送路として機能する部材である。導波管20において、空洞20hと誘電体チューブ21で電波が伝搬する。
【0022】
誘電体チューブ21は、誘電体、例えば、フッ素系樹脂で形成される。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE(Polytetrafluoroethylene))やペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)を用いることができる。
【0023】
なお、例えば、周波数帯域が28GHzの場合では、誘電体チューブ21の外径は、5mm~9mmである。誘電体チューブ21の内径は、外径より1mm~2mm細いことが好ましい。誘電体チューブ21の寸法は、導波管20を伝搬する周波数帯域や誘電体の材質により異なる。
【0024】
[金属被覆22]
金属被覆22は、伝送路を画定する部材である。金属被覆22は、導電性部材、例えば、銅、により形成される。金属被覆22は、例えば、メッキにより形成される。なお、メッキにより金属被覆22を形成するのに限らず、例えば、金属被覆22を形成するのに、銅箔又は金属網を巻き付けて形成してもよい。なお、導波管20の金属被覆22の外側に、更に、絶縁物による被覆を設けてもよい。
【0025】
導波管20は、誘電体チューブ21と金属被覆22とにより形成されていることから、R1000程度の可撓性を有する。
【0026】
なお、誘電体チューブ21は誘電体層、金属被覆22は金属層の一例である。
【0027】
<閉止部材10>
次に、第1実施形態の閉止部材10について説明する。図4は、第1実施形態の閉止部材10の斜視図である。図5は、第1実施形態の閉止部材10を導波管20に取り付けた状態での断面図である。図5は、具体的には、閉止部材10を導波管20に取り付けた状態で、導波管20の中心を通るX軸に垂直な平面で切断した断面図である。
【0028】
第1実施形態の閉止部材10は、導波管20の端部を閉止する部材である。閉止部材10は、導電性部材、例えば、銅、により形成されている。閉止部材10は、ベース部10aと、突出部10bと、を備える。なお、閉止部材10は表面のみ導電性を有するよう、樹脂に銅メッキなどの導電材料を成膜したものであってもよい。すなわち、閉止部材10は、表面に導電材料が成膜された樹脂で形成されてもよい。なお、後述する第2実施形態の閉止部材110、第3実施形態の閉止部材210、第4実施形態の閉止部材310についても同様である。
【0029】
ベース部10aは、円盤状(平板状)の部材である。ベース部10aの面10s1(主面)は、閉止部材10が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う面である。すなわち、ベース部10aは、閉止部材10が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う。
【0030】
突出部10bは、ベース部10aから突出して設けられる。突出部10bは、閉止部材10が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の空洞20hの内側に設けられる。突出部10bは、導波管20の空洞20hの形状に倣った形状となっている。突出部10bの面10s2は、導波管20の空洞20hを+Z方向に伝播する電波を-Z方向に反射する反射面である。
【0031】
導波管20は、誘電体チューブ21で形成されていることから、誘電体チューブ21が変形することにより、形状追従性がある。したがって、突出部10bがある閉止部材10を導波管20の誘電体チューブ21に挿入すると、樹脂でできた誘電体チューブ21は、変形にたいして追従性を持つ。したがって、突出部10bの公差が大きくなっても、誘電体チューブ21の変形で吸収できる。
【0032】
閉止部材10と導波管20とは、はんだ付けやロウ付け、導電性ペーストによる接着等になどで電気的に接続できる。
【0033】
なお、ベース部10aの形状は、円盤状に限らない。例えば、ベース部10aは、導波管20の端面20eを覆うことができれば、矩形状でもよいし、他の形状でもよい。ベース部の形状については、後述する実施形態においても同様である。
【0034】
《第2実施形態》
<閉止部材110>
第2実施形態の閉止部材110について説明する。第2実施形態の閉止部材110は、導波管20の端部を短絡する部材である。図6は、第2実施形態の閉止部材110の斜視図である。図7は、第2実施形態の閉止部材110を導波管20に取り付けた状態での断面図である。図7は、具体的には、閉止部材110を導波管20に取り付けた状態で、導波管20の中心でX軸に垂直な平面で切断した断面図である。
【0035】
第2実施形態の閉止部材110は、導波管20の端部を閉止する部材である。閉止部材110は、導電性部材、例えば、銅、により形成されている。閉止部材110は、ベース部110aと、突出部110bと、庇部110cと、を備える。
【0036】
ベース部110aは、円盤状(平板状)の部材である。ベース部110aの面110s1は、閉止部材110が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う面である。すなわち、ベース部110aは、閉止部材110が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う。
【0037】
突出部110bは、ベース部110aから突出して設けられる。突出部110bは、閉止部材110が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の空洞20hの内側に設けられる。突出部110bは、導波管20の空洞20hの形状に倣った形状となっている。突出部110bの面110s2は、導波管20の空洞20hを+Z方向に伝播する電波を-Z方向に反射する反射面である。
【0038】
庇部110cは、ベース部110aから突出して設けられる。庇部110cは、閉止部材110が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の外側に位置するように設けられる。庇部110cは、-Z方向に端部に、面110cs3を有する。
【0039】
閉止部材110と導波管20とは、はんだ付けやロウ付け、導電性ペーストによる接着等になどで電気的に接続できる。また、庇部110cを備えることにより、例えば、庇部110cの外側から閉止部材110をかしめることにより電気的に接続できる。
【0040】
《第3実施形態》
<閉止部材210>
第3実施形態の閉止部材210について説明する。第3実施形態の閉止部材210は、導波管20の端部を短絡する部材である。図8は、第3実施形態の閉止部材210の斜視図である。図9は、第3実施形態の閉止部材210を導波管20に取り付けた状態での断面図である。図9は、具体的には、閉止部材210を導波管20に取り付けた状態で、導波管20の中心でX軸に垂直な平面で切断した断面図である。
【0041】
第3実施形態の閉止部材210は、導波管20の端部を閉止する部材である。閉止部材210は、導電性部材、例えば、銅、により形成されている。閉止部材210は、ベース部210aと、突出部210bと、を備える。
【0042】
ベース部210aは、円盤状(平板状)の部材である。ベース部210aの面210s1は、閉止部材210が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う面である。すなわち、ベース部210aは、閉止部材210が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う。
【0043】
突出部210bは、ベース部210aから突出して設けられる。突出部210bは、閉止部材210が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の空洞20hの内側に設けられる。突出部210bは、導波管20の空洞20hの形状に倣った形状となっている。突出部210bは、ベース部210a側(+Z側)が太く、ベース部210aの反対側(-Z側)が細い、円錐台状である。突出部210bの面210s2は、導波管20の空洞20hを+Z方向に伝播する電波を-Z方向に反射する反射面である。
【0044】
突出部210bを円錐台状にすることによって、誘電体チューブ21は曲がったり、潰れたりする性質を持っているため、閉止部材210と導波管20との接続信頼性を物理的にも電気的にも向上させることができる。なお、突出部210bの径を、導波管20の空洞20hより大きくして圧入するようにしてもよい。
【0045】
閉止部材210と導波管20とは、はんだ付けやロウ付け、導電性ペーストによる接着などで電気的に接続できる。
【0046】
《第4実施形態》
<閉止部材310>
第4実施形態の閉止部材310について説明する。第4実施形態の閉止部材310は、導波管20の端部を短絡する部材である。図10は、第4実施形態の閉止部材310の斜視図である。図11は、第4実施形態の閉止部材310を導波管20に取り付けた状態での断面図である。図11は、具体的には、閉止部材310を導波管20に取り付けた状態で、導波管20の中心でX軸に垂直な平面で切断した断面図である。
【0047】
第4実施形態の閉止部材310は、導波管20の端部を閉止する部材である。閉止部材310は、導電性部材、例えば、銅、により形成されている。閉止部材310は、ベース部310aと、突出部310bと、庇部310cと、を備える。
【0048】
ベース部310aは、円盤状(平板状)の部材である。ベース部310aの面310s1は、閉止部材310が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う面である。すなわち、ベース部310aは、閉止部材310が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の端面20eを覆う。
【0049】
突出部310bは、ベース部310aから突出して設けられる。突出部310bは、閉止部材310が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の空洞20hの内側に設けられる。突出部10bは、導波管20の空洞20hの形状に倣った形状となっている。突出部310bの面310s2は、導波管20の空洞20hを+Z方向に伝播する電波を-Z方向に反射する反射面である。
【0050】
なお、突出部31bを円錐台状にしてもよい。突出部310bを円錐台状にすることによって、誘電体チューブ21は曲がったり、潰れたりする性質を持っているため、閉止部材210と導波管20との接続信頼性を物理的にも電気的にも向上させることができる。なお、突出部310bの径を、導波管20の空洞20hより大きくして圧入するようにしてもよい。
【0051】
庇部310cは、ベース部310aから突出して設けられる。庇部310cは、閉止部材110が導波管20に取り付けられたときに、導波管20の外側に位置するように設けられる。庇部310cは、-Z方向に端部に、面310cs3を有する。庇部310cは、ベース部310a側(+Z側)が太く、ベース部310aの反対側(-Z側)が細くなっている。すなわち、庇部310cの先端は細くなっている。また、庇部310cの内側(導波管20側)の面は、-Z側に向かって外側に傾斜している。
【0052】
庇部310cの内側の面を傾斜させることによって、誘電体チューブ21は曲がったり、潰れたりする性質を持っているため、閉止部材310と導波管20との接続信頼性を物理的にも電気的にも向上させることができる。なお、庇部310cの内側の径を、導波管20の外径より小さくして圧入するようにしてもよい。
【0053】
閉止部材310と導波管20とは、はんだ付けやロウ付け、導電性ペーストによる接着等になどで電気的に接続できる。また、庇部310cを備えることにより、例えば、庇部310cの外側から閉止部材310をかしめることにより電気的に接続できる。
【0054】
≪本開示の実施形態の閉止部材の反射特性≫
【0055】
上述した第1実施形態から第4実施形態の閉止部材について、反射特性の観点から寸法について検討を行った。なお、本検討においては、図7の第2実施形態の閉止部材110について検討を行う。
【0056】
閉止部材10の面10s1から面10s2までの距離を距離L1とする。なお、距離L1については、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態についても同様である。閉止部材110の面110s1から面112s3までの距離を距離L2とする。なお、距離L2については、第4実施形態についても同様である。
【0057】
導波管20の-Z側から+Z方向に伝搬してきた電波は、大部分は面110s2により反射されて-Z方向に伝搬する。一方、一部の電波は、面110s2の外側から、誘電体チューブ21を通って面110s1まで伝搬し、面110s1で反射されて戻る。当該反射して戻った電波が、面110s2で反射される電波に影響がないようすることが望ましい。すなわち、面110s2で反射する電波と、面110s2の外側と通過して面110s1で反射して戻ってきた電波とが、位相をそろえるようにする。具体的には、距離L1が下記の式1を満たすようにする。距離L1が下記の式1を満たすことにより、面110s2で反射する電波と、面110s2の外側と通過して面110s1で反射して戻ってきた電波との位相をそろえることができる。
【0058】
【数1】
【0059】
ただし、λは導波管20の誘電体チューブ21を伝搬する電磁波の波長、n1は0以上の整数、すなわち、非負の整数、である。そして、例えば、α1は0.35及びα2は0.65であり、好ましくはα1は0.4及びα2は0.6であり、より好ましくはα1は0.45及びα2は0.55である。なお、n1については小さいほうが好ましい。
【0060】
次に、距離L2について検討する。距離L2については、面110s3において金属被覆22にはんだ付けされているとして検討する。その場合には、面110s1で反射されて面110s3の方向に漏れる電波が、更にはんだで反射して戻るときに、面110s1で反射される電波に影響がないようすることが望ましい。すなわち、面110s1で反射する電波と、面110s1から漏れてはんだで反射した電波とが、位相をそろえるようにする。具体的には、下記の式2を満たすことにより、面110s1で反射する電波と、面110s1から漏れてはんだで反射した電波との位相をそろえることができる。
【0061】
【数2】
【0062】
ただし、λは、空気中を伝搬する電磁波の波長、n2は0以上の整数、すなわち、非負の整数、である。そして、α3は0.35及びα4は0.65であり、好ましくは、α3は0.4及びα4は0.6であり、より好ましくは、α3は0.45及びα4は0.55である。なお、n2については小さいほうが好ましい。なお、導波管20の空洞20hは、空気と見なせることから、λは導波管20の空洞20hを伝搬する電磁波の波長と等しいと見なせる。
【0063】
ここで、効果について確認した結果を示す。図12は、本開示の実施形態の閉止部材の反射特性を説明する図である。図13は、参考例の閉止部材の反射特性を説明する図である。図12図13の反射強度、反射位相のグラフの横軸は、周波数である。図12図13の反射強度のグラフの縦軸は、導波管に入射した電磁波に対して、閉止部材により反射されて戻ってきた電磁波の強度の比を表す。反射強度は0dBとなるのが理想である。図12図13の反射位相のグラフの縦軸は、導波管に入射した電磁波に対して、閉止部材により反射されて戻ってきた電磁波の位相の変化を表す。ここで位相基準は閉止部材110の面110s2としており、この場合の反射位相は180degとなるのが理想である。
【0064】
シミュレーションにより確認を行った。寸法については、電磁波の周波数を28GHzとしてα1、α2を計算した。誘電体チューブ21の内径を6mm、外径を7mmとした。シミュレーションでは、当該周波数28GHzを含む周波数25GHzから31GHzの間の周波数についてシミュレーションを行った。電磁波の伝搬モードは基本モードで行った。図12の閉止部材では、距離L1、距離L2について、α1及びα2を0.5とした。具体的には、距離L1は3.7mm、距離L2は5mmとした。比較例である図13の閉止部材では、距離L1について、α1を0.67、距離L2について、α2を0.5とした。具体的には、距離L1は5.6mm、距離L2は5mmとした。更に、シミュレーションでは、面110s1と端面20eが密着している場合と、面110s1と端面20eが0.2mm離れている場合とについてシミュレーションを行った。なお、図12図13の実線は密着している場合、点線は離れている場合を示す。
【0065】
図12の本開示の実施形態においては、反射強度、反射位相ともに、広い周波数でほぼ一定となっていた。また、閉止部材での減衰を抑えることができた。さらに、面110s1と端面20eとが密着している/していないにかかわらず顕著な差がなかった。
【0066】
一方、図13の参考例については、反射強度、反射位相ともに、特定の周波数で反射強度が小さくなった。また、面110s1と端面20eとが密着している/していないによって、大きく特性が異なった。
【0067】
<作用・効果>
本開示の導波管用閉止部材によれば、簡便に導波管の終端処理ができる。本開示の導波管用閉止部材の突出部を導波管の空洞に挿入することにより、導波管20に取り付けることができる。また、本開示の導波管用閉止部材を導波管の金属被膜に電気的に接続することにより短絡させることができる。さらに、本開示の導波管用閉止部材によれば、導波管を伝搬する電波を、減衰を抑えて反射させることができる。
【0068】
<変形例>
導波管の形状については、円筒状に限らない。例えば、導波管は角筒状でもよい。閉止部材の突出部の形状は、導波管の形状にあわせて導波管の空洞に倣った形状にすることが好ましい。
【0069】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0070】
本願は、日本特許庁に2020年3月27日に出願された基礎特許出願2020-058877号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0071】
10 閉止部材
10a ベース部
10b 突出部
20 導波管
20e 端面
20h 空洞
21 誘電体チューブ
22 金属被覆
110 閉止部材
210 閉止部材
310 閉止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13