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特許7593395反応性ホットメルト接着剤、接着体及びその製造方法、並びに衣類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】反応性ホットメルト接着剤、接着体及びその製造方法、並びに衣類
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20241126BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20241126BHJP
   D06M 17/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C09J175/06
D06M17/00 B
D06M17/00 G
D06M17/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022511403
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014927
(87)【国際公開番号】W WO2021199339
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】久野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】曲 淑杰
(72)【発明者】
【氏名】青柳 翔太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬籠 和幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 晃一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/045074(WO,A1)
【文献】特開2001-026762(JP,A)
【文献】特開平06-035386(JP,A)
【文献】特表平8-503513(JP,A)
【文献】特許第7516816(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
D06M 17/00- 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーを含有し、
前記ウレタンプレポリマーが、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を有し、
前記ポリオールに由来する構造単位が、芳香環を有するポリエステルポリオールに由来する構造単位を含み、
前記ポリイソシアネートに由来する構造単位が、ジイソシアネートに由来する構造単位を含み、
前記芳香環を有するポリエステルポリオールに由来する構造単位の含有量が、ポリオールに由来する構造単位全量を基準として、75質量%以上であり、
前記ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(A)、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(B)としたとき、前記C(A)及び前記C(B)が下記式(X)を満たす、
反応性ホットメルト接着剤。
0.38≦C(A)/(C(A)+C(B))≦0.44 (X)
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(C)としたとき、前記C(A)及び前記C(C)が下記式(Y)を満たす、
請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
3.6≦C(A)/C(C) (Y)
【請求項3】
前記ポリイソシアネートに由来する構造単位が、芳香族ジイソシアネートに由来する構造単位を含む、請求項1又は2に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
第1の被着体と、
第2の被着体と、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体を互いに接着する接着剤層と、
を備え、
前記接着剤層が、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤の硬化物を含有する、
接着体。
【請求項6】
請求項5に記載の接着体を備え、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体が布である、
衣類。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布することによって、接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に第2の被着体を配置し、前記第2の被着体を圧着することによって積層体を得る工程と、
前記積層体における前記接着剤層を硬化させることによって接着体を得る工程と、
を備える、
接着体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反応性ホットメルト接着剤、接着体及びその製造方法、並びに衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤型の接着剤であるため、環境及び人体への負荷が少なく、また、短時間接着が可能であるため、生産性向上に適している。ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分としたもの及び反応性樹脂を主成分としたものの2つに大別できる。反応性樹脂としては、主にイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーが利用されている。
【0003】
ウレタンプレポリマーを主成分とする反応性ホットメルト接着剤は、塗布後、接着剤自体の冷却固化により、短時間である程度の接着力を発現する。その後、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基が湿気(空気中又は被着体表面の水分)と反応することにより高分子量化し、架橋を生じることにより耐熱性を発現する。このような接着剤を湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤という。ウレタンプレポリマーを主成分とする反応性ホットメルト接着剤は、加熱時でも良好な接着力を示す。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリイソシアネート(a)と、芳香環含有ポリエーテルポリオール(b1)および/または芳香環含有ポリエステルポリオール(b2)、並びに脂肪族ポリエステルポリオール(b3)からなるポリオール(b)から形成されるウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-063568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ウェアラブル端末等の多様化に伴い、様々な反応性ホットメルト接着剤が用いられつつある。ところで、反応性ホットメルト接着剤においては、接着力と伸縮性とがトレードオフの関係にあり、これらを両立させることが極めて重要である。しかしながら、従来の反応性ホットメルト接着剤は、接着力と伸縮性との両立が未だ充分でなく、さらなる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本開示は、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れる反応性ホットメルト接着剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者ら上記課題を解決すべく、ウレタンプレポリマーについての13C-NMR分析を行い、ウレタンプレポリマーに含まれる構成単位について調べたところ、所定の範囲で観測されるピークの積分値が所定の割合であるウレタンプレポリマーが、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れる傾向にあるということを見出し、本開示内容の発明を完成するに至った。
【0009】
本開示の一側面は、反応性ホットメルト接着剤に関する。当該反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーを含有する。ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(A)、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(B)としたとき、C(A)及びC(B)が下記式(X)を満たす。このような反応性ホットメルト接着剤は、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れるものとなる。
0.36≦C(A)/(C(A)+C(B)) (X)
【0010】
本明細書における13C-NMR分析は、核磁気共鳴分光装置(NMR)としてブルカージャパン株式会社製AVANCE NEO(プローブ:CryoProbeTM)を用いて、下記の測定条件で行ったものである。
(測定条件)
13C-NMR定量スペクトル:インバースゲートデカップリング法
・共鳴周波数:100MHz
・待ち時間(d1):5秒
・溶媒:重クロロホルム(CDCl
・試料濃度:100mg/0.6ml-CDCl、緩和試薬として10mgCr(acac)を同時に含有
・化学シフト基準:テトラメチルシラン(TMS)のピークを0.00ppmに設定
・測定温度:23℃
・積算回数:400回
【0011】
なお、積分値の取り方に関して、例えば、163~170ppmの範囲に観測されるピーク毎に積分値を測定し、それらの積分値の和をC(A)とすることもできるが、積分値を求めることが容易で、任意性を低減できることから、163~170ppmの範囲全体の積分値を一括で測定し、その積分値をC(A)とすることができる(例えば、図2図3参照)。C(B)及びC(C)に関しても同様である。すなわち、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値、及び150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値は、それぞれ163~170ppmの全ピークの積分値、171~176ppmの全ピークの積分値、及び150~155ppmの全ピークの積分値とすることができる。
【0012】
ウレタンプレポリマーは、例えば、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであってよい。イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、通常、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖と、イソシアネート基とを有している。イソシアネート基は、重合鎖の末端に結合していてもよい。13C-NMR分析において、160~180ppmの範囲に観測されるピークは、主に、ウレタンプレポリマーを構成するポリオールに由来する構造単位において、ポリエステルポリオールに由来する構造単位のエステル結合のカルボニル基の炭素原子に帰属されるピークである。163~170ppmの範囲に観測されるピークは、ポリエステルポリオールのエステル結合のカルボニル基の炭素原子のうち、芳香環を構成する炭素原子に直接結合しているカルボニル基の炭素原子(以下、当該炭素原子を「炭素原子(A)」という場合がある。)に帰属されるピークであり、171~176ppmの範囲に観測されるピークは、ポリエステルポリオールのエステル結合のカルボニル基の炭素原子のうち、脂肪族基を構成する炭素原子に直接結合しているカルボニル基の炭素原子(以下、当該炭素原子を「炭素原子(B)」という場合がある。)に帰属されるピークである。炭素原子(A)は、例えば、下記式(1)で示される炭素原子であり、炭素原子(B)は、例えば、下記式(2)で示される炭素原子であり得る。ポリエステルポリオールに由来する構造単位のエステル結合のカルボニル基の炭素原子に帰属されるピークの積分値(上記(C(A)+C(B))に相当。)は、炭素原子(A)に帰属されるピークの積分値(上記C(A)に相当。)と炭素原子(B)に帰属されるピークの積分値(上記C(B)に相当。)との和であり得る。そのため、上記の式(X)におけるC(A)/(C(A)+C(B))は、炭素原子(A)の総量と炭素原子(B)の総量との和に対する炭素原子(A)の総量の比(炭素原子(A)の総量/炭素原子(A)の総量と炭素原子(B)の総量との和)を意味する。C(A)/(C(A)+C(B))が大きいほど、ウレタンプレポリマーを構成するポリエステルポリオールに由来する構成単位における炭素原子(A)の割合が大きい(すなわち、ポリエステルポリオールに含まれる芳香環の割合が大きい)といえる。
【0013】
【化1】
【0014】
ポリエステルポリオールは、多価アルコールとポリカルボン酸との重縮合反応生成物であり得る。この場合、上記の炭素原子(A)及び炭素原子(B)は、ポリカルボン酸由来の炭素原子である。炭素原子(A)は、ポリカルボン酸由来の炭素原子のうち、芳香環を構成する炭素原子に直接結合している(カルボン酸の)カルボニル基の炭素原子である。炭素原子(B)は、ポリカルボン酸由来の炭素原子のうち、脂肪族基を構成する炭素原子に直接結合している(カルボン酸の)カルボニル基の炭素原子である。式(X)におけるC(A)/(C(A)+C(B))は、主に、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を構成するポリカルボン酸の種類、含有量、当該ポリカルボン酸から誘導されるポリエステルポリオールの種類、含有量等を変化させることによって調整することができる傾向にある。
【0015】
ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(C)としたとき、C(A)及びC(C)が下記式(Y)を満たしていてもよい。
3.6≦C(A)/C(C) (Y)
【0016】
13C-NMR分析において、160~180ppmの範囲に観測されるピークは、主に、ウレタンプレポリマーのポリオールとポリイソシアネートとの反応によって形成されるウレタン結合のカルボニル基の炭素原子(以下、当該炭素原子を「炭素原子(C)」という場合がある。)に帰属されるピークである。炭素原子(C)は、例えば、下記式(3)で示される炭素原子であり得る。上記の式(Y)におけるC(A)/C(C)は、炭素原子(C)の総量に対する炭素原子(A)の総量の比(炭素原子(A)の総量/炭素原子(C)の総量)を意味する。C(A)/C(C)が大きいほど、ウレタンプレポリマーにおける炭素原子(C)1個当たりの炭素原子(A)の割合が大きい(すなわち、ウレタン結合1個当たりのポリエステルポリオールに含まれる芳香環の割合が大きい)といえる。式(Y)におけるC(A)/C(C)は、式(X)におけるC(A)/(C(A)+C(B))と同様に、主に、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を構成するポリカルボン酸の種類、含有量、当該ポリカルボン酸から誘導されるポリエステルポリオールの種類、含有量等を変化させることによって調整することができる傾向にある。
【0017】
【化2】
【0018】
本開示の他の一側面は、反応性ホットメルト接着剤に関する。当該反応性ホットメルト接着剤は、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖と、重合鎖の末端に結合しているイソシアネート基とを有するウレタンプレポリマーを含有する。ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(A)、150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(C)としたとき、C(A)及びC(C)が下記式(Y)を満たす。このような反応性ホットメルト接着剤は、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れるものとなる。
3.6≦C(A)/C(C) (Y)
【0019】
ポリオールに由来する構造単位は、芳香環を有するポリエステルポリオールに由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0020】
反応性ホットメルト接着剤は、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられるものであってよい。ここで、被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であってよい。本開示は、さらに上記のウレタンプレポリマーを含有する組成物の、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる反応性ホットメルト接着剤としての応用、又は、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる反応性ホットメルト接着剤の製造のための応用に関してもよい。
【0021】
本開示の他の一側面は、接着体に関する。当該接着体は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記の反応性ホットメルト接着剤の硬化物を含有する。
【0022】
本開示の他の一側面は、衣類に関する。当該衣類は、上記の接着体を備え、第1の被着体及び第2の被着体は布であってよい。衣類は、無縫製衣類であってよい。
【0023】
本開示の他の一側面は、接着体の製造方法に関する。当該接着体の製造方法は、上記の反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布することによって、接着剤層を形成する工程と、接着剤層上に第2の被着体を配置し、第2の被着体を圧着することによって積層体を得る工程と、積層体における接着剤層を硬化させることによって接着体を得る工程とを備える。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れる反応性ホットメルト接着剤が提供される。また、本開示によれば、このような反応性ホットメルト接着剤を用いた接着体及びその製造方法が提供される。さらに、本開示によれば、接着体を備える衣類が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、一実施形態の接着体の製造方法を示す模式図であり、図1(a)、(b)、(c)、及び(d)は、各工程を示す模式図である。
図2図2は、製造例2のウレタンプレポリマーBの150~180ppmの範囲における13C-NMRスペクトルである。
図3図3は、製造例5のウレタンプレポリマーEの150~180ppmの範囲における13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、「ポリオール」は、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物を意味する。
【0028】
本明細書において、「ポリイソシアネート」は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
【0029】
本明細書において、「非晶性」及び「結晶性」の判断は、融点(Tm)(DSCにて融解に伴う吸熱ピーク)の有無で判断することができ、「結晶性」は、融点(Tm)を有するものであり、「非晶性」は、融点(Tm)を有しないものである。本明細書において、「非晶性ポリエステルポリオール」は、融点(Tm)を有しないポリエステルポリオールであり、「結晶性ポリエステルポリオール」は、融点(Tm)を有するポリエステルポリオールを意味する。
【0030】
[反応性ホットメルト接着剤]
一実施形態の反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーを含有する。一般に、反応性ホットメルト接着剤は、化学反応によって高分子量化し、接着力等を発現し得るものである。特に、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、湿気と反応して硬化する(硬化物を形成する)ことから、ウレタンプレポリマー単独で反応性ホットメルト接着剤として作用し得るが、反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマー以外の成分を含有していてもよい。
【0031】
<ウレタンプレポリマー>
ウレタンプレポリマーは、例えば、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであってよい。イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、通常、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖と、イソシアネート基とを有している。イソシアネート基は、重合鎖の末端に結合していてもよい。ポリオールに由来する構造単位は、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を含んでいてもよい。ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンプレポリマーは、通常、ポリエステルポリオールを含むポリオールに対して、ポリイソシアネートを反応させて得ることができる。すなわち、ウレタンプレポリマーは、ポリエステルポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとの反応物であってよい。なお、構成単位の含有量は、構成単位を与えるポリエステルポリオールと構成単位を与えるポリエステルポリオール以外のポリオールとの混合割合を変化させることによって調整することができる。また、ポリオールとポリイソシアネートとが反応することによって、ウレタン結合が形成されることから、ウレタンプレポリマーの重合鎖は、ウレタン結合を有し得る。また、ポリオールの当量に対するポリイソシアネートの当量を大きくすることによって、重合鎖の末端にイソシアネート基が導入され得る。
【0032】
ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(A)、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(B)としたとき、C(A)及びC(B)が下記式(X)を満たす。このようなウレタンプレポリマーを含有する反応性ホットメルト接着剤は、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れるものとなる。
0.36≦C(A)/(C(A)+C(B)) (X)
【0033】
C(A)/(C(A)+C(B))は、炭素原子(A)の総量と炭素原子(B)の総量との和に対する炭素原子(A)の総量の比(炭素原子(A)の総量/炭素原子(A)の総量と炭素原子(B)の総量との和)を意味する。C(A)/(C(A)+C(B))が大きいほど、ウレタンプレポリマーを構成するポリエステルポリオールに由来する構成単位における炭素原子(A)の割合が大きい(すなわち、ポリエステルポリオールに含まれる芳香環の割合が大きい)といえる。
【0034】
C(A)/(C(A)+C(B))は、0.36以上であり、0.38以上、又は0.40以上であってもよい。C(A)/(C(A)+C(B))が0.36以上であると、反応性ホットメルト接着剤が、接着力に優れ、かつ伸縮性に優れる傾向にある。C(A)/(C(A)+C(B))の上限は、接着力により優れることから、1.00以下、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、又は0.60以下であってよい。
【0035】
ウレタンプレポリマーは、13C-NMR分析において、150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値をC(C)としたとき、C(A)及びC(C)が下記式(Y)を満たしていてもよい。
3.6≦C(A)/C(C) (Y)
【0036】
C(A)/C(C)は、炭素原子(C)の総量に対する炭素原子(A)の総量の比(炭素原子(A)の総量/炭素原子(C)の総量)を意味する。C(A)/C(C)が大きいほど、ウレタンプレポリマーにおける炭素原子(C)1個当たりの炭素原子(A)の割合が大きい(すなわち、ウレタン結合1個当たりのポリエステルポリオールに含まれる芳香環の割合が大きい)といえる。
【0037】
C(A)/C(C)は、3.6以上であってよく、3.8以上又は4.0以上であってもよい。C(A)/C(C)が3.6以上であると、反応性ホットメルト接着剤が、接着力により優れ、かつ伸縮性により優れる傾向にある。C(A)/C(C)の上限は、接着力により一層優れることから、10以下、8以下、7以下、6.5以下、又は6以下であってよい。
【0038】
式(X)におけるC(A)/(C(A)+C(B))及び式(Y)におけるC(A)/C(C)は、主に、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を構成するポリカルボン酸の種類、含有量、当該ポリカルボン酸から誘導されるポリエステルポリオールの種類、含有量等を変化させることによって調整することができる傾向にある。ポリオールに由来する構造単位は、ウレタンプレポリマーが式(X)、さらには式(Y)を満たすのであれば、その種類、含有量等は特に制限されない。本発明者らの検討によると、ポリオールに由来する構造単位が、芳香環を有するポリエステルポリオールに由来する構造単位の割合が多いと、ウレタンプレポリマーが式(X)及び式(Y)を満たし易い傾向にあることを見出した。以下では、このような構成単位を含むウレタンプレポリマーを一例として、ウレタンプレポリマーを構成するポリオール及びポリイソシアネートについて説明する。
【0039】
(a)成分:ポリオール
(a)成分に由来する構成単位は、芳香環を有するポリエステルポリオール(以下、「(a1)成分)」という場合がある。)に由来する構成単位を含む。(a)成分に由来する構成単位は、芳香環を有するポリエステルポリオール以外のポリオール(以下、「(a2)成分」という場合がある。)に由来する構成単位をさらに含み得る。
【0040】
芳香環を有するポリエステルポリオールは、融点(Tm)を有する結晶性のポリエステルポリオールであっても、融点(Tm)を有しない非晶性のポリエステルポリオールであってもよいが、非晶性のポリエステルポリオールであってよい。
【0041】
重合鎖が(a1)成分に由来する構造単位を含むことによって、反応性ホットメルト接着剤の固化時間及び粘度を調整することができる。(a1)成分は、多価アルコールとポリカルボン酸との重縮合反応生成物であってよい。(a1)成分は、ジオールとジカルボン酸とから生成する直鎖ポリエステルジオールであってもよく、トリオールとジカルボン酸とから生成する分岐ポリエステルトリオールであってもよい。また、分岐ポリエステルトリオールは、ジオールとトリカルボン酸との反応によって得ることもできる。
【0042】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオールの各異性体、ペンタンジオールの各異性体、ヘキサンジオールの各異性体、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオール;4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の芳香族ジオール(芳香環を有するジオール)などが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましくは脂肪族ジオール、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する脂肪族ジオールである。
【0043】
ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸等の、(カルボン酸の)カルボニル基の炭素原子が芳香環を構成する炭素原子に直接結合しているポリカルボン酸(以下、場合により、「芳香族ポリカルボン酸」という場合がある。);マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジエン-1,2-ジカルボン酸等の、(カルボン酸の)カルボニル基の炭素原子が脂肪族基を構成する炭素原子に直接結合しているポリカルボン酸(以下、場合により、「脂肪族ポリカルボン酸」という場合がある。)などが挙げられる。芳香族ポリカルボン酸は、(カルボン酸の)カルボニル基の炭素原子がベンゼン環を構成する炭素原子に直接結合しているポリカルボン酸であってよく、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。ポリカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。式(X)におけるC(A)/(C(A)+C(B))及び式(Y)におけるC(A)/C(C)の調整は、芳香族ポリカルボン酸の割合を調整することによって行うことができる。
【0044】
ポリカルボン酸に代えて、カルボン酸無水物、カルボキシル基の一部がエステル化された化合物等のポリカルボン酸誘導体を用いることもできる。ポリカルボン酸誘導体としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル、ドデシルマレイン酸、オクタデセニルマレイン酸等が挙げられる。
【0045】
(a1)成分は、多価アルコールと芳香族ポリカルボン酸を含むポリカルボン酸との重縮合反応生成物であってよい。
【0046】
多価アルコールとポリカルボン酸との重縮合反応生成物において、芳香族ポリカルボン酸)に由来する構成単位の含有量は、(a1)成分(重縮合反応生成物)を構成する構成単位全量を基準として、例えば、10~60モル%であってよい。芳香環を有する化合物に由来する構成単位の含有量は、(a1)成分を構成する構成単位全量を基準として、15モル%以上又は20モル%以上であってもよく、55モル%以下、又は50モル%以下であってもよい。
【0047】
(a1)成分が、多価アルコールと芳香族ポリカルボン酸(芳香環を有するポリカルボン酸、好ましくはフタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)を含むポリカルボン酸との重縮合反応生成物である場合、芳香族ポリカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、ポリカルボン酸に由来する構成単位全量を基準として、20~100モル%、25~100モル%、又は30~100モル%であってよい。
【0048】
(a1)成分の数平均分子量(Mn)は、接着力の観点から、500~12000であってよい。(a1)成分の数平均分子量(Mn)は、1000以上、1500以上、又は1800以上であってもよく、11000以下、10000以下、又は9000以下であってもよい。なお、本明細書において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。
【0049】
本明細書において、数平均分子量(Mn)を求めるためのGPCの測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。
カラム:「Gelpack GLA130-S」、「Gelpack GLA150-S」及び「Gelpack GLA160-S」(日立化成株式会社製、HPLC用充填カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0050】
(a1)成分((a1)成分に由来する構成単位)の含有量は、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を基準として、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上であってよい。(a1)成分の含有量が(a)成分全量を基準として50質量%以上であると、得られるウレタンプレポリマー(反応性ホットメルト接着剤)が初期接着力に優れる傾向にある。一方、(a1)成分((a1)成分に由来する構成単位)の含有量の上限は、作業性の観点から、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を基準として、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0051】
(a1)成分((a1)成分に由来する構成単位)の含有量は、接着力により優れ、かつ伸縮性により優れることから、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を100モル%としたとき、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、又は75モル%以上であってよく、100モル%以下、95モル%以下、又は90モル%以下であってよい。
【0052】
(a2)成分は、芳香環を有するポリエステルポリオール以外のポリオールである。(a2)成分は、例えば、芳香環を有しないポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0053】
(a)成分は、(a2)成分として、初期接着力向上の観点から、芳香環を有するポリエーテルポリオールを含んでいてもよい。芳香環を有するポリエーテルポリオールは、非晶性のポリエーテルポリオールであってよい。芳香環を有するポリエーテルポリオールは、ビスフェノール骨格を有するポリエーテルポリオールであってよく、ビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格又はビスフェノールF骨格であってよい。ビスフェノールA骨格又はビスフェノールF骨格を有するポリエーテルポリオールは、ビスフェノールA又はビスフェノールFを、アルキレンオキサイドで変性したものであってよく、より具体的には、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドで変性したものであってもよい。(a)成分が、(a2)成分として、このようなビスフェノール骨格を有するポリエーテルポリオールを含むことによって、接着力により優れる傾向にある。
【0054】
ビスフェノール骨格を有するポリエーテルポリオールの含有量は、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を基準として、0~10質量%であってよく、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってもよく、8質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。
【0055】
ビスフェノール骨格を有する芳香環を有するポリエーテルポリオールの含有量は、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を100モル%としたとき、0~10モル%であってよく、1モル%以上、2モル%以上、又は3モル%以上であってもよく、8モル%以下、6モル%以下、又は5モル%以下であってもよい。
【0056】
(a2)成分の数平均分子量(Mn)は、ウレタンプレポリマーの低粘度化の観点から、100~10000であってよい。(a2)成分の数平均分子量(Mn)は、400以上又は1000以上であってもよく、8000以下又は5000以下であってもよい。なお、本明細書において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。
【0057】
(a2)成分((a2)成分に由来する構成単位)の含有量は、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を基準として、0~50質量%であってよく、5質量%以上又は10質量%以上であってもよく、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。
【0058】
(a2)成分((a2)成分に由来する構成単位)の含有量は、(a)成分((a)成分に由来する構成単位)全量を100モル%としたとき、0~50モル%であってよく、5モル%以上又は10モル%以上であってもよく、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、又は25モル%以下であってもよい。
【0059】
(b)成分:ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2以上有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ有する化合物(ジイソシアネート)であってよい。ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは、反応性及び接着力の観点から、好ましくは芳香族ジイソシアネートを含み、より好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートを含む。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ウレタンプレポリマーは、(a1)成分を所定の含有量で含む(a)成分と、(b)成分とを反応させることで合成することができる。ウレタンプレポリマーは、(a1)成分に由来する構成単位を含む(a)成分に由来する構造単位、及び、(b)成分に由来する構造単位を含む重合鎖と、重合鎖の末端に結合しているイソシアネート基とを有する。このようなウレタンプレポリマーを合成する場合、(a)成分のヒドロキシ基(OH)に対する(b)成分のイソシアネート基(NCO)の当量比((b)成分のイソシアネート基(NCO)当量/(a)成分のヒドロキシ基(OH)当量、NCO/OH)は、1.1以上であってよく、1.1~2.1であってよい。NCO/OHが1.1以上であると、ウレタンプレポリマーが重合鎖の末端に結合しているイソシアネート基を有するとともに、ウレタンプレポリマーの粘度の上昇を抑えることができ、作業性がより向上する傾向にある。NCO/OHが2.1以下であると、反応性ホットメルト接着剤の湿気硬化反応の際に発泡が生じ難くなり、接着力の低下を抑制し易くなる傾向にある。
【0061】
ウレタンプレポリマーを合成する場合の(a)成分と(b)成分とを反応させる温度及び時間は、特に制限されないが、例えば、85~120℃、0.1分間~48時間であってよい。
【0062】
ウレタンプレポリマーは、下記の条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすものであってもよい。このようなウレタンプレポリマーを含有する反応性ホットメルト接着剤は、初期接着力により優れ、かつ作業性により優れるものとなる。
条件(i):120℃における溶融粘度が1~30Pa・sである。
条件(ii):80℃における溶融粘度が100Pa・s以上である。
【0063】
条件(i)に関して、ウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度は1~30Pa・sである。ウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度が1~30Pa・sであると、充分に粘性が低いことから、作業性(塗布における吐出性、曳糸性等)に優れる。120℃における溶融粘度は、3Pa・s以上、5Pa・s以上、7Pa・s以上、又は10Pa・s以上であってもよく、28Pa・s以下、25Pa・s以下、20Pa・s以下、又は15Pa・s以下であってもよい。
【0064】
条件(ii)に関して、ウレタンプレポリマーの80℃における溶融粘度は100Pa・s以上である。ウレタンプレポリマーの80℃における溶融粘度が100Pa・s以上であると、接着力に必要な粘性が早期に発現し、結果として、初期接着力に優れる。80℃における溶融粘度は、110Pa・s以上、120Pa・s以上、130Pa・s以上、又は140Pa・s以上であってもよい。80℃における溶融粘度の上限は特に制限されないが、例えば、1000Pa・s以下であってよく、800Pa・s以下、600Pa・s以下、500Pa・s以下、又は400Pa・s以下であってもよい。なお、120℃における溶融粘度は、回転式レオメータ装置において測定されるものである。
【0065】
ウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度及び80℃における溶融粘度は、回転式レオメータ装置において測定されるものであり、例えば、以下のような方法によって測定される。なお、120℃における溶融粘度を測定するためのサンプルと80℃における溶融粘度を測定するためのサンプルとは別々のものを用意して測定を行う。測定装置及び測定条件は、以下のとおりである。
・回転式レオメータ装置:DHR-2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)
・ジオメトリ:Φ20mm(2°)コーンプレート
・GAP:57μm
・せん断速度:33(1/s)
・120℃における溶融粘度:ウレタンプレポリマー(反応性ホットメルト接着剤)を120℃にて5分間保温した後に測定した測定値
・80℃における溶融粘度:ウレタンプレポリマー(反応性ホットメルト接着剤)を80℃にて5分間保温した後に測定した測定値
【0066】
ウレタンプレポリマーの溶融粘度は、主に、ポリオールに由来する構造単位の種類、含有量等を変化させることによって調整することができる。ポリオールに由来する構造単位は、ウレタンプレポリマーが条件(i)及び条件(ii)を満たすのであれば、その種類、含有量等は特に制限されない。なお、本発明者らの検討によると、ポリオールに由来する構造単位が、芳香環を有するポリエステルポリオールに由来する構造単位を含むと、ウレタンプレポリマーが条件(i)及び条件(ii)を満たし易い傾向にあり、さらに条件(i)及び条件(ii)を満たすウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーが式(X)及び式(Y)を満たし易い傾向にあることを見出している。
【0067】
反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーの硬化を促進し、より高い接着力を発現させる観点から、触媒をさらに含有していてもよい。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルチオンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン、ジモルホリノジエチルエーテル(ビス(2-モルホリノエチル)エーテル)等が挙げられる。触媒の含有量は、反応性ホットメルト接着剤の全量を基準として、0.001~0.5質量%であってよい。
【0068】
反応性ホットメルト接着剤は、形成される接着剤層のゴム弾性を高め、耐衝撃性をより向上させる観点から、熱可塑性ポリマーをさらに含有していてもよい。熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン-共役ジエンブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性ポリマーの含有量は、反応性ホットメルト接着剤の全量を基準として、0.1~50質量%であってよい。
【0069】
反応性ホットメルト接着剤は、形成される接着剤層により強固な接着力を付与する観点から、粘着付与樹脂をさらに含有していてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂の含有量は、反応性ホットメルト接着剤の全量を基準として、0.1~50質量%であってよい。
【0070】
反応性ホットメルト接着剤は、必要に応じて、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、光発色剤、熱発色防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等が挙げられる。その他の成分の含有量は、反応性ホットメルト接着剤の全量を基準として、0.001~10質量%であってよい。
【0071】
反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマー単独からなる場合とウレタンプレポリマーに加えて、それ以外の成分を含有している場合とがあり得る。反応性ホットメルト接着剤がウレタンプレポリマー単独からなる場合、ウレタンプレポリマーが条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすと、反応性ホットメルト接着剤も条件(i)及び条件(ii)の両方を満たす。また、反応性ホットメルト接着剤がウレタンプレポリマーに加えて、それ以外の成分を含有している場合においても、条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすウレタンプレポリマーを含有することで、初期接着力に優れ、かつ作業性に優れる反応性ホットメルト接着剤となり、反応性ホットメルト接着剤は条件(i)及び条件(ii)の両方を満たし得る。さらに、任意のウレタンプレポリマーとそれ以外の成分とを含有する反応性ホットメルト接着剤が、条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすことによっても、初期接着力に優れ、かつ作業性に優れるものとなり得る。
【0072】
すなわち、反応性ホットメルト接着剤は、下記の条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすものであり得る。反応性ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーを含有していてもよい。
条件(i):120℃における溶融粘度が1~30Pa・sである。
条件(ii):80℃における溶融粘度が100Pa・s以上である。
【0073】
反応性ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度及び80℃における溶融粘度の好ましい範囲は、上記のウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度及び80℃における溶融粘度の好ましい範囲と同様である。また、反応性ホットメルト接着剤の溶融粘度の測定条件も、ウレタンプレポリマーの溶融粘度の測定条件と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。
【0074】
反応性ホットメルト接着剤の全量を基準としたときのウレタンプレポリマーの含有量は、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、92質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。ウレタンプレポリマーの含有量がこのような範囲であることによって、ウレタンプレポリマーの溶融粘度の調整によって、反応性ホットメルト接着剤の溶融粘度を条件(i)及び条件(ii)の両方を満たすものに調整し易くなる。また、ウレタンプレポリマーの溶融粘度が条件(i)及び条件(ii)の両方を満たす場合、反応性ホットメルト接着剤の溶融粘度も、条件(i)及び条件(ii)の両方を満たし易くなる。
【0075】
反応性ホットメルト接着剤は、反応性ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーのイソシアネート基が空気中の水分又は被着体表面の水分と反応することから、例えば、温度23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)することによって硬化させることができる。このようにして、反応性ホットメルト接着剤の硬化物を得ることができる。
【0076】
反応性ホットメルト接着剤は、例えば、60~130℃で溶融してから、被着体に塗布することによって使用することができる。塗布方法は、特に制限されないが、例えば、バーコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いる方法が挙げられる。小型部品等の狭小な部位へ塗布する場合には、ディスペンサーが適している。反応性ホットメルト接着剤の塗布パターンは、適宜設定することができるが、例えば、ドット状、直線状、ジグザグ状、面状、曲線状等の塗布パターンが挙げられる。
【0077】
反応性ホットメルト接着剤は、当該反応性ホットメルト接着剤の硬化物(接着剤層)を介して、各種被着体を接着させることができる。被着体としては、例えば、SUS、アルミニウム等の金属基材、布、紙、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ガラス、炭素繊維等の非金属基材などが挙げられる。これらの中でも、被着体は、例えば、布又は紙であってよい。反応性ホットメルト接着剤は、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために好適に用いることができる。この場合、被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であり得る。反応性ホットメルト接着剤は、衣服等の衣類(アパレル商品)、サポーター、カバン、財布、インテリア、各種カバー、ケース、ウェアラブル機器などに好適に用いることができ、衣類に特に好適に用いることができる。
【0078】
反応性ホットメルト接着剤は、フィルム状に形成し、接着剤フィルムとして用いてもよい。このような接着剤フィルムは、例えば、反応性ホットメルト接着剤を、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持フィルム上に塗布し、接着剤層を形成することによって、接着剤フィルムを得ることができる。接着剤層(接着剤フィルム)の厚さは、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってよい。フィルムが厚くなると、接着力をより担保することができる傾向にあり、フィルムが薄くなると、伸縮性をより確保し易い傾向にある。
【0079】
[接着体及びその製造方法]
一実施形態の接着体は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記の反応性ホットメルト接着剤の硬化物を含有する。接着体を備える物品としては、例えば、衣類(特に、無縫製衣類)、半導体装置、電子機器等が挙げられる。
【0080】
第1の被着体及び第2の被着体は、上記の被着体で例示したものと同様のものを例示することができる。第1の被着体及び第2の被着体は、例えば、布又は紙であってよく、第1の被着体及び第2の被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であってよい。接着体を備える物品が衣類である場合、第1の被着体及び第2の被着体は布である。
【0081】
本実施形態の接着体は、上記の反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布して接着剤層を形成する工程と、接着剤層上に第2の被着体を配置し、第2の被着体を圧着することによって積層体を得る工程と、接着剤層を硬化させることによって接着体を得る工程とを備える方法によって製造することができる。
【0082】
反応性ホットメルト接着剤を溶融させる温度は、例えば、60~130℃であってよい。反応性ホットメルト接着剤を第1の被着体に塗布する方法としては、例えば、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いる方法が挙げられる。小型部品等の狭小な部位へ塗布する場合には、ディスペンサーが適している。
【0083】
第2の被着体を圧着する方法としては、例えば、加圧ロール等を用いて圧着する方法が挙げられる。
【0084】
接着剤層における反応性ホットメルト接着剤は、例えば、温度23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)することによって硬化させることができる。これによって、接着剤層は、反応性ホットメルト接着剤の硬化物を含有し得る。
【0085】
図1は、一実施形態の接着体の製造方法を示す模式図であり、図1(a)、(b)、(c)、及び(d)は、各工程を示す模式図である。以下では、図1を参照して、第1の被着体及び第2の被着体として、布である伸縮性生地を用いた接着体の製造方法について説明する。
【0086】
まず、伸縮性生地1を治具10に沿わせるように設置する(図1の(a)参照)。次いで、本実施形態の反応性ホットメルト接着剤を伸縮性生地1の所定部分に塗布して、接着剤層4を形成する(図1の(b)参照)。治具10の材質及び形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。反応性ホットメルト接着剤の塗布は、例えば、ディスペンサーを用いて行ってもよい。次に、伸縮性生地2を接着剤層4上に配置して、伸縮性生地2の上からロール等により圧力をかけながら、伸縮性生地1と伸縮性生地2とを接着剤層4を介して貼り合わせて、積層体20を得る(図1の(c)及び(d)参照)。その後、積層体20を放置(養生)することによって接着剤層4における反応性ホットメルト接着剤が湿気硬化して、伸縮性生地同士が接着された接着体を得ることができる。接着体における接着剤層4は、反応性ホットメルト接着剤の硬化物を含有する。
【0087】
図1の(b)において、離型性基材上に予め形成しておいた、反応性ホットメルト接着剤からなる接着剤フィルムを伸縮性生地1上に転写して、接着剤層4を形成してもよい。また、接着剤を伸縮性生地2に設けて、伸縮性生地1と貼り合わせてもよい。
【0088】
[衣類]
一実施形態の衣類は、上記の接着体を備える。この場合、第1の被着体及び第2の被着体は布であってよい。衣類は、無縫製衣類であることができる。
【0089】
[分析]
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーは、例えば、溶液NMR測定をすることによって、ウレタンプレポリマーの構成成分を特定することができる。本実施形態の反応性ホットメルト接着剤がウレタンプレポリマー以外の成分を含有する場合、例えば、分取液体クロマトグラフィー(GPC等の既知の手段)を用いてウレタンプレポリマーを単離し、溶媒を留去後に溶液NMR測定をすることによって、ウレタンプレポリマーの構成成分を特定することができる。また、同様の手法を用いることで、反応性ホットメルト接着剤に含まれるウレタンプレポリマー以外の成分も特定することができる。
【0090】
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤の硬化物は、例えば、テトラヒドロフラン等の硬化物の未硬化成分が溶解し、硬化物自体が溶解し難い溶媒を用いて、未硬化成分のみを抽出し、残渣の未溶解成分(硬化物成分)をピリジン分解してウレタン結合を切断することによって、硬化前のウレタンプレポリマーの構成成分を特定することができる。
【実施例
【0091】
以下、本開示について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
(製造例1~5)
<ウレタンプレポリマー(反応性ホットメルト接着剤)の調製>
表1に示す種類及び質量部のポリオール及びポリイソシアネートを用いて、製造例1~5のウレタンプレポリマーA~Eを調製した。より詳細には、予め真空乾燥機によって脱水処理したポリオールに対して、ポリイソシアネートを、ポリオールのヒドロキシ基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比((NCO)当量/(OH)当量)が表1で示す数値となるように反応容器に加えて、110℃で1時間均一になるまで混合した。次いで、さらに110℃で1時間減圧脱泡撹拌することによって、ウレタンプレポリマーを得た。表1に示すとおり、(NCO)当量/(OH)当量が1より大きいことから、得られたウレタンプレポリマーは、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖と、当該重合鎖の末端に結合しているイソシアネート基とを有することが推測される。以下では、得られたウレタンプレポリマーを反応性ホットメルト接着剤としてそのまま使用した。
【0093】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
(a)ポリオール
(a1)芳香環を有するポリエステルポリオール
(a1)-1:ジカルボン酸(アジピン酸及びイソフタル酸)とジオール(エチレングリコール及びネオペンチルグリコール)とを主成分とする、芳香環を有する非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2000、芳香環を有する化合物に由来する構成単位の含有量:25モル%(非晶性ポリエステルポリオールを構成する構成単位全量基準)、50モル%(ジカルボン酸に由来する構成単位全量基準)、融点(Tm):なし)
(a1)-2:ジカルボン酸(無水フタル酸)とジオール(エチレングリコール及びジエチレングリコール)とを主成分とする、芳香環を有する非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2000、芳香環を有する化合物に由来する構成単位の含有量:50モル%(非晶性ポリエステルポリオールを構成する構成単位の全量基準)、100モル%(ジカルボン酸に由来する構成単位全量基準)、融点(Tm):なし)
【0094】
(a2)(a1)以外のポリオール
(a2)-1:ジカルボン酸(アジピン酸)とジオール(1,4-ブタンジオール及びネオペンチルグリコール)とを主成分とする、芳香環を有しない非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:5000、融点(Tm):なし)
(a2)-2:ジカルボン酸(アジピン酸)とジオール(エチレングリコール及び1,4-ブタンジオール)とを主成分とする、芳香環を有しない結晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2038、融点(Tm):20℃)
(a2)-3:芳香環を有する非晶性ポリエーテルポリオール(ビスフェノールA・PO系)(株式会社ADEKA製、商品名:BPX-11、水酸基数:2、融点(Tm):なし)
【0095】
(b)ポリイソシアネート
(b)-1:ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名:ミリオネートMT、イソシアネート基数:2)
【0096】
13C-NMR分析>
ウレタンプレポリマーA~Eについて、13C-NMR分析を行った。13C-NMR分析は、核磁気共鳴分光装置(NMR)としてブルカージャパン株式会社製AVANCE NEO(プローブ:CryoProbeTM)を用いて、下記の測定条件で行った。
【0097】
(測定条件)
13C-NMR定量スペクトル:インバースゲートデカップリング法
・共鳴周波数:100MHz
・待ち時間(d1):5秒
・溶媒:重クロロホルム(CDCl
・試料濃度:100mg/0.6ml-CDCl、緩和試薬として10mgCr(acac)を同時に含有
・化学シフト基準:テトラメチルシラン(TMS)のピークを0.00ppmに設定
・測定温度:23℃
・積算回数:400回
【0098】
図2は、製造例2のウレタンプレポリマーBの150~180ppmの範囲における13C-NMRスペクトルである。図213C-NMRスペクトルにおいて、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(B))を10.000としたとき、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(A))及び150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(C))はそれぞれ33.039、5.081であった。図3は、製造例5のウレタンプレポリマーEの150~180ppmの範囲における13C-NMRスペクトルである。図313C-NMRスペクトルにおいて、171~176ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(B))を10.000としたとき、163~170ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(A))及び150~155ppmの範囲に観測されるピークの積分値(C(C))はそれぞれ4.805、1.564であった。結果を表1に示す。これらの数値等に基づき、C(A)/(C(A)+C(B))及びC(A)/C(C)を算出した。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例1~3及び比較例1、2)
<反応性ホットメルト接着剤の評価>
・初期接着力及び最終接着力
実施例1~3及び比較例1、2の反応性ホットメルト接着剤(ウレタンプレポリマーA~E)を120℃で溶融して伸縮性布地(スパンデックス、東レ・オプロンテックス株式会社製、ライクラ(登録商標))上に塗布し、バーコーターによって80μmの厚さに塗工することによって接着剤層を形成した。形成した接着剤層上に、同じ伸縮性布地を配置し、120℃で圧着することによって圧着体を得た。圧着した時点から5分経過後の圧着体の接着力を、フォースゲージ(株式会社イマダ製、DS250N)を用いて測定し、これを反応性ホットメルト接着剤の初期接着力とした。次いで、上記圧着体を23℃、50%RHの恒温槽で1日間養生し、接着剤層を硬化させることによって接着体を作製した。接着体の接着力を、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-Test EZ-SX)を用いて、測定温度が25℃、引張速度が100mm/分の条件でT型剥離強度試験によって測定し、これを最終接着力とした。結果を表1に示す。
【0100】
・破断伸度
実施例1~3及び比較例1、2の反応性ホットメルト接着剤(ウレタンプレポリマーA~E)を100℃で溶融させ、厚さ100μmのフィルムを形成した後、形成したフィルムを、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽に2日間静置することによって硬化させた。硬化後のフィルムを1号ダンベルで打ち抜いて試験片を作製し、オートグラフAGS-X(株式会社島津製作所製)を用いて、試験片の破断伸度(%)をJIS K-6251に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
ウレタンプレポリマーA~Eについて、13C-NMR分析を行ったところ、ウレタンプレポリマーA~Cは、C(A)/(C(A)+C(B))が0.36以上であり、さらにはC(A)/C(C)が3.6以上であった。このようなウレタンプレポリマーを用いた実施例1~3の反応性ホットメルト接着剤は、所定の要件を満たさないウレタンプレポリマーを用いた比較例1、2の反応性ホットメルト接着剤に比べて、初期接着力及び最終接着力に優れる傾向を示すことが判明した。また、実施例1~3の反応性ホットメルト接着剤は、充分に高いレベルの破断伸度を有する傾向にあることも判明した。これらの結果から、本開示の反応性ホットメルト接着剤が、接着力(初期接着力及び最終接着力の両方)に優れ、かつ伸縮性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0103】
1,2…伸縮性生地、4…接着剤層、10…治具、20…積層体。
図1
図2
図3