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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20241126BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 55/00 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241126BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241126BHJP
【FI】
C08F290/14
C08F222/40
C08L55/00
C08L71/02
C08K3/013
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022527499
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002807
(87)【国際公開番号】W WO2021240879
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020093303
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】峯崎 千佳
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095690(JP,A)
【文献】特開平06-093047(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104195(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104196(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/014455(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193850(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193852(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/152906(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00-290/14
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、及びラジカル開始剤(D)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)は、分子内に少なくとも2つのフェノール骨格を有し、かつ分子内のフェノール骨格を形成する芳香環の一部又は全部に、2-アルケニル基が結合している化合物であり、
前記ポリエチレングリコール化合物(C)が、式(1)の構造単位を有し、前記式(1)の構造単位が全構造単位に対して90モル%~100モル%である、
熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
前記ポリエチレングリコール化合物(C)の含有量が、前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)、前記ポリマレイミド化合物(B)、及び前記ポリエチレングリコール化合物(C)の合計に対して1~10質量%である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコール化合物(C)の数平均分子量Mnが、2000~50000である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)の含有量が、前記ポリマレイミド化合物(B)100質量部に対して5~200質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコール化合物(C)が、ポリエチレングリコールである、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)が、式(2)-1:
【化2】
及び任意に式(2)-2:
【化3】
で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール化合物であり、
式(2)-1及び式(2)-2において、R1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のアルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、式(3):
【化4】
で表される2-アルケニル基を表し、式(3)において、R3、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基であり、式(3)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表し、R1及びR2は各フェノール骨格単位で同じでもよく異なっていてもよく、Qはそれぞれ独立に、式-CR89-で表されるアルキレン基、炭素原子数5~10のシクロアルキレン基、芳香環を有する二価の有機基、脂環式縮合環を有する二価の有機基、又はこれらを組み合わせた二価の有機基を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
式(2)-1に示す構造単位の一分子あたりの平均数をp、式(2)-2に示す構造単位の一分子あたりの平均数をqとしたときに、pは1.1~35の実数、p+qは1.1~35の実数であり、かつqは式:p/(p+q)の値が0.4~1となる実数を満たす、請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリマレイミド化合物(B)が、芳香族ビスマレイミド化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ラジカル開始剤(D)が、有機過酸化物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに充填材(E)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記充填材(E)が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、及び固体ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記充填材(E)の含有量が、前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)、前記ポリマレイミド化合物(B)、前記ポリエチレングリコール化合物(C)、及び前記ラジカル開始剤(D)の合計100質量部に対して200~1900質量部である、請求項10又は11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物をモールディング成形する、構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の硬化物を含む構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、該熱硬化性樹脂組成物を用いた構造体の製造方法、及びその硬化物を含む構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器及び産業機器に用いられる半導体パッケージには、電子部品の高密度集積化に伴い、高密度配線化、小型化、薄型化、高耐熱化、高放熱化等の性能が求められている。そのためプラスチック材料である封止材にも、高耐熱化が求められている。
【0003】
トランスファー成形は、材料をプランジャー内で加熱軟化させ、加熱軟化した材料を、ゲート、スプルー、ランナーなどの金型内流路を介して加熱された金型キャビティの中に押し込み、金型キャビティの中で硬化させる方法である。流動性の高い状態で材料をキャビティ内に注入するため、低い圧力での成形が可能である。
【0004】
トランスファー成形は、高い圧力を必要とする他の成形方法と比べて、インサート物を損傷しにくいという特徴がある。トランスファー成形は、小型化及び微細加工が可能であり、生産性も高いことから、パワー半導体及びICの封止成形における、代表的な成形方法として知られている。
【0005】
トランスファー成形で利用される封止材としては、従来、エポキシ-フェノール系熱硬化性樹脂材料が用いられていた。しかし、近年の高耐熱化の要求に、従来の材料で対応することは難しい。高耐熱化の要求に対応するため、樹脂系を種々工夫した封止材、例えば、多官能エポキシ樹脂を多く配合した熱硬化性樹脂組成物、ビスマレイミド、トリアジン骨格、ベンゾオキサジン骨格、シルセスキオキサン骨格などの高耐熱性構造を含む熱硬化性樹脂組成物等が提案されている。
【0006】
特許文献1(特開平11-140277号公報)は、(A)分子中にビフェニル誘導体及び/又はナフタレン誘導体を含むノボラック構造のフェノール樹脂を、総フェノール樹脂量中に30~100質量部含むフェノール樹脂、(B)分子中にビフェニル誘導体及び/又はナフタレン誘導体を含むノボラック構造のエポキシ樹脂を、総エポキシ樹脂量中に30~100質量部含むエポキシ樹脂、(C)無機充填材、(D)硬化促進剤を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を記載している。
【0007】
特許文献2(特開平5-43630号公報)は、N,N’-(アルキル置換ジフェニルメタン)ビスマレイミドと、サリチルアルデヒドとフェノールの縮合ポリフェノールからのポリアリルフェノールとを含有してなる芳香族ビスマレイミド樹脂組成物を記載している。
【0008】
特許文献3(特開平5-6869号公報)は、(A)1分子中に2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物、(B)特定の繰り返し単位を有するアリル化フェノール樹脂、及び(C)硬化触媒を含有する樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置を記載している。
【0009】
特許文献4(特開平6-93047号公報)は、マレイミド化合物、特定構造のアルケニルフェノール化合物、及びエポキシ基含有有機シラン化合物を、特定比率で配合してなる硬化性樹脂組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-140277号公報
【文献】特開平5-43630号公報
【文献】特開平5-6869号公報
【文献】特開平6-93047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
材料開発において、樹脂系を大幅に変更した場合、複数のトレードオフの関係にある性能の両立に、問題が生じる場合がある。例えば、材料の高耐熱化を図る手法として、エポキシ樹脂の官能基数を増やして架橋密度を高めること(特許文献1)、及びその他の樹脂としてマレイミド樹脂を用いること(特許文献2~4)が挙げられるが、これらの手法によって材料の耐熱性を上げるほど、熱硬化性樹脂の硬化物の架橋構造が密になるため、材料が硬く強固になり、硬化物の弾性率が高くなる傾向がある。その結果、熱硬化性樹脂を封止材として用いる場合など、硬化物を異種材料と密着させて用いる場合には、その界面において生じる応力により材料が剥離するといった問題が生じやすい。特に、応力及び/又は熱応力が繰り返し激しくかかるようなデバイスにおいては、それらを構成する硬化物と他部材との間で剥離が生じやすい。
【0012】
また、金属製のインサートを含む樹脂成形においては、ブリードアウトや離型性などの成形性と、内部部品との密着性との間でトレードオフが生じやすい。これらの性質は、メイン樹脂の骨格及び極性が変わると、大きく傾向が変わる。
【0013】
したがって、耐熱性及び成形性を損なうことなく、金属等の他部材に対しての密着性に優れ、耐リフロー性やヒートサイクル性に優れた材料が求められる。上記のようなトレードオフを解消するためには、その樹脂系に合った添加材などを利用することが有用である。
【0014】
本開示では、成形性及び硬化物の耐熱性を損なうことなく、金属に対しての密着性に優れ、かつ耐リフロー性に優れた硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物が記載される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]に関する。
[1]
ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、及びラジカル開始剤(D)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリエチレングリコール化合物(C)が、式(1)の構造単位を有し、前記式(1)の構造単位が全構造単位に対して90モル%~100モル%である、
熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
[2]
前記ポリエチレングリコール化合物(C)の含有量が、前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)、前記ポリマレイミド化合物(B)、及び前記ポリエチレングリコール化合物(C)の合計に対して1~10質量%である、[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]
前記ポリエチレングリコール化合物(C)の数平均分子量Mnが、2000~50000である、[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]
前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)の含有量が、前記ポリマレイミド化合物(B)100質量部に対して5~200質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]
前記ポリエチレングリコール化合物(C)が、ポリエチレングリコールである、[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]
前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)が、式(2)-1:
【化2】
及び任意に式(2)-2:
【化3】
で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール化合物であり、
式(2)-1及び式(2)-2において、R1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のアルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、式(3):
【化4】
で表される2-アルケニル基を表し、式(3)において、R3、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基であり、式(3)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表し、R1及びR2は各フェノール骨格単位で同じでもよく異なっていてもよく、Qはそれぞれ独立に、式-CR89-で表されるアルキレン基、炭素原子数5~10のシクロアルキレン基、芳香環を有する二価の有機基、脂環式縮合環を有する二価の有機基、又はこれらを組み合わせた二価の有機基を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基を表す、[1]~[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]
式(2)-1に示す構造単位の一分子あたりの平均数をp、式(2)-2に示す構造単位の一分子あたりの平均数をqとしたときに、pは1.1~35の実数、p+qは1.1~35の実数であり、かつqは式:p/(p+q)の値が0.4~1となる実数を満たす、[6]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8]
前記ポリマレイミド化合物(B)が、芳香族ビスマレイミド化合物である、[1]~[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]
前記ラジカル開始剤(D)が、有機過酸化物である、[1]~[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10]
さらに充填材(E)を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11]
前記充填材(E)が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、及び固体ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも一種である、[10]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[12]
前記充填材(E)の含有量が、前記ポリアルケニルフェノール化合物(A)、前記ポリマレイミド化合物(B)、前記ポリエチレングリコール化合物(C)、及び前記ラジカル開始剤(D)の合計100質量部に対して200~1900質量部である、[10]又は[11]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
[14]
[1]~[12]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をモールディング成形する、構造体の製造方法。
[15]
[13]に記載の硬化物を含む構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形性及び硬化物の耐熱性を損なうことなく、金属に対しての密着性に優れ、かつ耐リフロー性に優れた硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】離型性の評価に用いる成形金型、天板及び底板の概略図である。
図2】離型性の評価に用いるサンプルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明について詳細に説明する。一実施態様の熱硬化性樹脂組成物は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、及びラジカル開始剤(D)を含有する。
【0019】
[ポリアルケニルフェノール化合物(A)]
ポリアルケニルフェノール化合物(A)は、分子内に少なくとも2つのフェノール骨格を有し、かつ分子内のフェノール骨格を形成する芳香環の一部又は全部に、2-アルケニル基が結合している化合物である。2-アルケニル基としては、式(3)で表される構造の基が好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】
式(3)において、R3、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基である。式(3)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表す。
【0022】
式(3)におけるR3、R4、R5、R6、及びR7を構成する炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等を挙げることができる。炭素原子数5~10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等を挙げることができる。炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。式(3)で表される2-アルケニル基は、アリル基、すなわちR3、R4、R5、R6、及びR7が全て水素原子であることが好ましい。
【0023】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)において、フェノール骨格を形成する全芳香環のうち、好ましくは40~100%、より好ましくは60~100%、さらに好ましくは80~100%の芳香環に、2-アルケニル基が結合されている。
【0024】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)の基本骨格としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン共重合体樹脂等の公知のフェノール樹脂の骨格が挙げられる。中でも、下記式(2)-1及び任意に式(2)-2に示す構造単位を有するポリアルケニルフェノール化合物(A)を、好ましく使用することができる。
【0025】
【化6】
【化7】
【0026】
式(2)-1及び式(2)-2に示す構造単位は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)を構成する好ましいフェノール骨格単位であり、これらのフェノール骨格単位の結合順序は特に限定されない。式(2)-1及び式(2)-2において、R1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のアルコキシ基であり、式(2)-1において、R2はそれぞれ独立に、式(3)で表される2-アルケニル基である。R1及びR2は、各フェノール骨格単位で同じでもよく異なっていてもよい。Qはそれぞれ独立に、式-CR89-で表されるアルキレン基、炭素原子数5~10のシクロアルキレン基、芳香環を有する二価の有機基、脂環式縮合環を有する二価の有機基、又はこれらを組み合わせた二価の有機基であり、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基である。
【0027】
式(2)-1に示す構造単位の一分子あたりの平均数をp、式(2)-2に示す構造単位の一分子あたりの平均数をqとしたときに、好ましくは、pは1.1~35の実数、p+qは1.1~35の実数であり、かつqは式:p/(p+q)の値が0.4~1となる実数を満たす。
【0028】
1を構成する炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等を挙げることができる。炭素原子数1~5のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基等が挙げられる。
【0029】
式-CR89-で表されるアルキレン基のR8及びR9において、炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等を挙げることができ、炭素原子数2~6のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等を挙げることができ、炭素原子数5~10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等を挙げることができ、炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることできる。
【0030】
Qを構成する炭素原子数5~10のシクロアルキレン基の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等を挙げることができる。芳香環を有する二価の有機基の具体例としては、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基、キシリレン基、4,4-メチレンジフェニル基等を挙げることができる。芳香環を有する二価の有機基の炭素原子数は、6~20又は6~14とすることができる。脂環式縮合環を有する二価の有機基の具体例としては、ジシクロペンタジエニレン基等を挙げることができる。脂環式縮合環を有する二価の有機基の炭素原子数は、7~20又は7~10とすることができる。
【0031】
Qがジシクロペンタジエニレン基、フェニレン基、メチルフェニレン基、キシリレン基、又はビフェニレン基であることが、硬化物の機械強度が高い点で好ましい。ポリアルケニルフェノール化合物(A)の粘度が低くポリマレイミド化合物(B)との混合に有利であることから、Qが-CH2-であることが好ましい。
【0032】
pは、好ましくは1.1~35の実数であり、より好ましくは2~30の実数であり、さらに好ましくは3~10の実数である。pが1.1以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を高温環境に置いたときの熱分解開始温度が適切であり、35以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の粘度が成形時の加工に好適な範囲となる。
【0033】
p+qは、好ましくは1.1~35の実数であり、より好ましくは2~30の実数であり、さらに好ましくは3~10の実数である。p+qが1.1以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を高温環境に置いたときの熱分解開始温度が適切であり、35以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の粘度が成形時の加工に好適な範囲となる。
【0034】
qは、好ましくは式:p/(p+q)の値が0.4~1となる実数であり、より好ましくは式:p/(p+q)の値が0.6~1となる実数であり、さらに好ましくは式:p/(p+q)の値が0.8~1となる実数である。式:p/(p+q)の値が1となる場合、qは0である。すなわち、この実施態様ではポリアルケニルフェノール化合物(A)は、式(2)-2に示す構造単位を含まない。ポリアルケニルフェノール化合物(A)は、式(2)-1に示す構造単位のみを有するものとすることができる。qが上記条件を満たす値であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化度を、用途に応じて十分なものとすることができる。
【0035】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)の好ましい数平均分子量Mnは、300~5000であり、より好ましくは400~4000であり、さらに好ましくは500~3000である。数平均分子量Mnが300以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を高温環境に置いたとき熱分解開始温度が適切であり、5000以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の粘度が成形時の加工に好適な範囲となる。
【0036】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)は、原料となるフェノール樹脂の水酸基の一部をアルケニルエーテル化した後、クライゼン転位反応により、2-アルケニル基を転位させることにより得ることができる。原料フェノール樹脂として、好ましくは下記式(2)-2で表される構造単位を有する公知のフェノール樹脂を使用することができる。
【化8】
【0037】
ポリアルケニルフェノール化合物(A)の原料フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン共重合体樹脂等を挙げることができる。
【0038】
原料フェノール樹脂の2-アルケニルエーテル化反応としては、(i)塩化アリル、塩化メタリル、臭化アリル等のハロゲン化2-アルケニル化合物と、フェノール化合物とを反応させる公知の方法、及び(ii)酢酸アリルのようなカルボン酸2-アルケニル化合物と、フェノール化合物とを反応させる公知の方法の2つの方法を例示することができる。ハロゲン化2-アルケニル化合物を用いた2-アルケニルエーテル化反応は、例えば、特開平2-91113号公報に記載の方法を使用することができる。カルボン酸2-アルケニル化合物とフェノール樹脂を反応させる方法は、例えば、特開2011-26253号公報に記載の方法を使用することができる。
【0039】
フェノール性水酸基に対するハロゲン化2-アルケニル化合物又はカルボン酸2-アルケニル化合物の使用量は、0.4~5.0当量が好ましく、より好ましくは0.6~4.0当量である。0.4当量以上であると、クライゼン転位した後のポリマレイミド化合物(B)との反応部位の量がより適切であり、より耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0040】
2-アルケニルエーテル化反応は、2-アルケニル化合物を原料フェノール樹脂と混合し、4~40時間反応させることにより実施する。2-アルケニルエーテル化反応においては、原料フェノール樹脂が溶解する溶媒を用いることができる。原料フェノール樹脂を溶解可能なカルボン酸2-アルケニル化合物を用いて、無溶媒で反応を実施することもできる。
【0041】
原料フェノール樹脂の2-アルケニルエーテル化率は、ハロゲン化2-アルケニル化合物又はカルボン酸2-アルケニル化合物の使用量を前記使用量より多く使用し、かつ反応時間を前記反応時間より短く調整することにより、2-アルケニル化合物の反応率(転化率)を低く抑制して制御することもできる。
【0042】
目的とするポリアルケニルフェノール化合物(A)は、前記(i)又は(ii)に記載の方法により製造されたポリアルケニルエーテル化合物に、クライゼン転位反応を行うことにより得ることができる。クライゼン転位反応は、ポリアルケニルエーテル化合物を100~250℃の温度に加熱し、1~20時間反応させることにより行うことができる。クライゼン転位反応は、高沸点の溶剤を用いて行ってもよく、無溶媒で行うこともできる。転位反応を促進するため、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩を添加することもできる。詳細は、例えば、特開平2-91113号公報に開示されている。
【0043】
[ポリマレイミド化合物(B)]
ポリマレイミド化合物(B)は、式(4)で表されるマレイミド基を2つ以上有する化合物である。ポリマレイミド化合物(B)を配合することにより、硬化物の耐熱性を向上させることができる。
【化9】
【0044】
式(4)において、*は、芳香環又は直鎖、分岐鎖若しくは環状脂肪族炭化水素基を含む有機基との結合部を表す。
【0045】
ポリマレイミド化合物(B)としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド、トリス(4-マレイミドフェニル)メタン等のトリスマレイミド、ビス(3,4-ジマレイミドフェニル)メタン等のテトラキスマレイミド、及びポリ(4-マレイミドスチレン)等のポリマレイミドが挙げられる。ポリマレイミド化合物(B)としては、芳香族ポリマレイミド化合物及び脂肪族ポリマレイミド化合物が挙げられ、得られる硬化物の難燃性が特に優れる点で、芳香族ポリマレイミド化合物が好ましい。
【0046】
芳香族ポリマレイミド化合物は、式(4)で表されるマレイミド基を2つ以上有し、これらのマレイミド基が同一又は異なる芳香環に結合している化合物である。芳香環の具体例としては、ベンゼン等の単環、ナフタレン、アントラセン等の縮合環等が挙げられる。硬化性樹脂組成物中で良好に混合することから、ポリマレイミド化合物(B)は、芳香族ビスマレイミド化合物及び脂肪族ビスマレイミド化合物であることが好ましく、芳香族ビスマレイミド化合物であることがより好ましい。
【0047】
芳香族ビスマレイミド化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-プロピル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジプロピル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-ブチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジブチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-マレイミド-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-マレイミドフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(3-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(3-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(3-マレイミドフェニル)スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェニルオキシ)フェニル]スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(3-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホキシド、ビス(3-マレイミドフェニル)スルホキシド、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ジマレイミドナフタレン、2,3-ジマレイミドナフタレン、1,5-ジマレイミドナフタレン、1,8-ジマレイミドナフタレン、2,6-ジマレイミドナフタレン、2,7-ジマレイミドナフタレン、4,4’-ジマレイミドビフェニル、3,3’-ジマレイミドビフェニル、3,4’-ジマレイミドビフェニル、2,5-ジマレイミド-1,3-キシレン、2,7-ジマレイミドフルオレン、9,9-ビス(4-マレイミドフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-マレイミド-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-エチル-4-マレイミドフェニル)フルオレン、3,7-ジマレイミド-2-メトキシフルオレン、9,10-ジマレイミドフェナントレン、1,2-ジマレイミドアントラキノン、1,5-ジマレイミドアントラキノン、2,6-ジマレイミドアントラキノン、1,2-ジマレイミドベンゼン、1,3-ジマレイミドベンゼン、1,4-ジマレイミドベンゼン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)ベンゼン、2-メチル-1,4-ジマレイミドベンゼン、2,3-ジメチル-1,4-ジマレイミドベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-ジマレイミドベンゼン、2,6-ジメチル-1,4-ジマレイミドベンゼン、4-エチル-1,3-ジマレイミドベンゼン、5-エチル-1,3-ジマレイミドベンゼン、4,6-ジメチル-1,3-ジマレイミドベンゼン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジマレイミドベンゼン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジマレイミドベンゼン、4-メチル-1,3-ジマレイミドベンゼン等が挙げられる。
【0048】
脂肪族ビスマレイミド化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、ビス(3-マレイミドシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。中でも、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン及び2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパンが好ましい。市販品としては、例えば、BMI(商品名、大和化成工業株式会社)シリーズ等が挙げられる。
【0049】
ポリマレイミド化合物(B)を100質量部としたとき、ポリアルケニルフェノール化合物(A)の配合量は5~200質量部とすることが好ましく、10~150質量部とすることがより好ましく、30~100質量部であることがさらに好ましい。上記配合量が5質量部以上であれば、成形時の流動性がより良好である。一方、上記配合量が200質量部以下であれば、硬化物の耐熱性がより良好である。
【0050】
[ポリエチレングリコール化合物(C)]
ポリエチレングリコール化合物(C)は、式(1)の構造単位を有し、式(1)の構造単位が全構造単位に対して90モル%~100モル%である化合物である。
【化10】
式(1)の構造単位は、好ましくは95モル%~100モル%であり、より好ましくは97モル%~100モル%である。
【0051】
いかなる理論に拘束されるものではないが、ポリエチレングリコール化合物(C)は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)及びポリマレイミド化合物(B)のいずれとも混和性が良好なため、ポリエチレングリコール化合物(C)を添加することで、ポリアルケニルフェノール化合物(A)及びポリマレイミド化合物(B)のなじみ性を向上させることができる。また、離型剤を使用する場合には、ポリエチレングリコール化合物(C)自体は適度に相溶しつつ、離型剤の表面分離性をコントロールすることができる。この効果により離型剤及びその他成分のブリードアウトを抑制することができる。さらに、高分子量のポリエチレングリコール化合物(C)は、高温でも安定な成分であるため、成形の際に、熱硬化性樹脂組成物の流動性及び熱硬化性樹脂組成物の型に対する表面濡れの調整もすることができる。これらの効果により、高分子量のポリエチレングリコール化合物(C)を添加することで、ブリードアウトをいっそう抑制することができる。
【0052】
ポリエチレングリコール化合物(C)の数平均分子量Mnは、好ましくは2000~50000であり、より好ましくは2500~30000、さらに好ましくは3000~25000である。数平均分子量Mnが2000以上であれば、成形後の硬化物表面へのポリエチレングリコール化合物(C)のブリードアウトをより抑制することができる。一方、数平均分子量Mnが50000以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の粘度が、成形に適した範囲に収まる。
【0053】
ポリエチレングリコール化合物(C)の式(1)以外の構造単位は、全構造単位に対して0~10モル%であり、好ましくは0~5モル%であり、より好ましくは0~3モル%である。式(1)以外の構造単位としては、分岐構造を構成する構造単位;置換されていてよいアミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、グリシジル基、アジド基、シアノ基、チオール基、不飽和炭化水素基等の末端官能基を含む構造単位;化合物合成時の副生成構造単位が挙げられる。
【0054】
ポリエチレングリコール化合物(C)としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。ポリエチレングリコールとしては、具体的には、東邦化学工業株式会社のPEG-4000、PEG-6000、三洋化成工業株式会社のPEG-10000、PEG-20000等が挙げられる。ポリエチレングリコール誘導体としては、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキソエート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0055】
ポリエチレングリコール化合物(C)の含有量は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、及びポリエチレングリコール化合物(C)の合計に対して、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1.3~7質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%である。ポリエチレングリコール化合物(C)の含有量が1質量%以上であれば、金属表面へ濡れ密着性をより向上させることができる。一方で、ポリエチレングリコール化合物(C)の含有量が10質量%以下であれば、成形前の熱硬化性樹脂組成物の融点又は軟化点を適宜調節して、ハンドリング性を向上させることができ、硬化後のポリエチレングリコール化合物(C)のブリードアウトをより抑えることができる。
【0056】
[ラジカル開始剤(D)]
熱硬化性樹脂組成物にラジカル開始剤(D)を配合することで、熱硬化性樹脂組成物の硬化を促進することができる。ラジカル開始剤(D)としては、例えば、熱ラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤(D)は、好ましくは熱ラジカル開始剤である。熱ラジカル開始剤としては、有機過酸化物を挙げることができる。有機過酸化物は、10時間半減期温度が100~170℃の有機過酸化物であることが好ましく、具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、及びクメンハイドロパーオキサイドを挙げることができる。
【0057】
ラジカル開始剤(D)の好ましい使用量は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、及びポリエチレングリコール化合物(C)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~7.5質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。ラジカル開始剤(D)の使用量が0.01質量部以上であれば、十分に硬化反応が進行し、10質量部以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性がより良好である。
【0058】
[充填材(E)]
熱硬化性樹脂組成物は、さらに充填材(E)を含んでもよい。充填材(E)の種類に特に制限はなく、例として、固体シリコーンゴム粒子等の固体ゴム粒子、シリコーンパウダー等の有機充填材、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素等の無機充填材等が挙げられ、用途により適宜選択することができる。一実施態様では、充填材(E)は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、及び固体ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0059】
例えば、熱硬化性樹脂組成物を半導体封止用途に使用する場合には、熱膨張係数の低い硬化物を得るために、絶縁性である無機充填材を配合することが好ましい。無機充填材は特に限定されず、公知のものを使用することができる。無機充填材として、具体的には、非晶質シリカ、結晶性シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の粒子が挙げられる。低粘度化の観点からは、真球状の非晶質シリカが望ましい。無機充填材は、シランカップリング剤等で表面処理が施されたものであってもよいが、表面処理が施されていなくてもよい。
【0060】
充填材(E)の平均粒径は0.1~30μmが好ましく、最大粒径が100μm以下、特に75μm以下のものがより好ましい。平均粒径がこの範囲にあると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が使用時に適切であり、狭ピッチ配線部又は狭ギャップ部への注入性も適切である。ここでいう平均粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50である。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物の充填材(E)の含有量は、用途に応じて適宜決定することができる。熱硬化性樹脂組成物の充填材(E)の含有量は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、及びラジカル開始剤(D)の合計100質量部に対して、好ましくは200~1900質量部、より好ましくは300~1000質量部、さらに好ましくは300~600質量部である。
【0062】
[その他の添加剤]
その他の添加剤として、カップリング剤、消泡剤、着色剤、蛍光体、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、難燃剤、接着付与剤、離型剤等を熱硬化性樹脂組成物に配合することも可能である。その他の添加剤は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、ラジカル開始剤(D)、及び充填材(E)に該当する化合物を含まない。
【0063】
例えば、接着性を改良する観点から、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の配合量は、0.1~5質量%が好ましい。上記配合量が0.1質量%以上であれば、カップリング剤の効果が十分発揮され、5質量%以下であれば、溶融粘度、硬化物の吸湿性及び強度がより良好である。
【0064】
例えば、離型性を改良する観点から、離型剤を配合してもよい。離型剤は特に限定されず、例えば、カルナバワックス、アマイドワックス、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸部分ケン化エステルワックス、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でも、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス、ポリエチレンワックスが好ましい。離形剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱硬化性樹脂組成物中の離型剤の配合量は、0.01~0.5質量%が好ましい。上記配合量が0.01質量%以上であれば、離型剤の効果が十分発揮され、0.5質量%以下であれば、金型汚れ等のブリードアウトが生じず外観が良好である。
【0065】
[熱硬化性樹脂組成物の調製方法]
熱硬化性樹脂組成物の調製方法は、ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、ポリエチレングリコール化合物(C)、ラジカル開始剤(D)、及びその他の任意成分が、均一に混合及び分散できれば特に限定されない。ポリアルケニルフェノール化合物(A)、ポリマレイミド化合物(B)、及びポリエチレングリコール化合物(C)を先に溶融混合させ、その後にラジカル開始剤(D)及び任意の添加剤を加える方法は、各材料を均一に混合しやすいため好ましい。
【0066】
各成分の混合方法は、特に限定されない。各成分を所定の配合割合で、反応容器、ポットミル、二本ロールミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー、ディスパー、単軸又は二軸(同方向又は異方向)押出機、ニーダー等の混合機に投入し、撹拌又は混練することにより混合することができる。ラボスケールでは、容易に撹拌条件を変更できるため回転式混合機が好ましく、工業的には、生産性の観点から二軸ミキサーが好ましい。各混合機は、撹拌条件を適宜変更して用いることができる。
【0067】
熱硬化性樹脂組成物の粉末化を行う場合は、作業工程により発生した熱により樹脂が溶融しない方法であれば特に限定されないが、少量であれば、メノウ乳鉢を用いる方法が簡便である。市販の粉砕機を利用する場合、粉砕に際して発生する熱量が少ないものが、混合物の溶融を抑制するために好ましい。粉末の粒径については、1mm以下とすることが好ましい。
【0068】
[構造体の作製方法]
熱硬化性樹脂組成物は、硬化反応が急激に進行しない温度まで加熱することにより、溶融させることができる。溶融した熱硬化性樹脂組成物を、任意の好ましい形状に成形し、必要に応じて硬化させ、脱型することにより、構造体を作製することができる。構造体の作製方法としては、モールディング成形、特にトランスファー成形及びコンプレッション成形が好ましい。
【0069】
トランスファー成形での好ましい条件としては、例えば、サイズが10mm×75mm×3mm厚の金型の場合、天板及び金型の温度を170~190℃、保持圧力を50~150kg/cm2、保持時間を1.5~10分間とすることができる。コンプレッション成形での好ましい条件としては、例えば、サイズが100mm×75mm×3mm厚の金型の場合、天板及び金型の温度を170~190℃、成形圧力を5~20MPa、加圧時間を1.5~10分間とすることができる。
【0070】
[硬化物の作製方法]
熱硬化性樹脂組成物は、加熱することにより硬化させることができる。硬化温度は、好ましくは130~300℃、より好ましくは150~230℃であり、さらに好ましくは150~200℃である。硬化温度が130℃以上であれば、硬化前の熱硬化性樹脂組成物を十分溶融させて、金型へ容易に充填することができ、硬化後の脱型も容易である。硬化温度が300℃以下であれば、材料の熱劣化又は揮発を避けることができる。
【0071】
加熱時間は、熱硬化性樹脂組成物及び硬化温度に応じて適宜変更することができるが、生産性の観点から0.1~24時間が好ましい。この加熱は、複数回に分けて行ってもよい。特に高い硬化度を求める場合には、過度に高温で硬化させずに、例えば硬化の進行とともに昇温させて、最終的な硬化温度を250℃以下とすることが好ましく、230℃以下とすることがより好ましい。
【0072】
[硬化物の用途]
熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、例えば、半導体封止材、プリプレグ、層間絶縁樹脂、ソルダーレジスト、ダイアタッチ等の用途に用いることができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されない。
【0074】
実施例及び比較例で用いた分析方法及び特性評価方法、及び原材料は、以下のとおりである。
【0075】
<分析方法及び特性評価方法>
[分子量]
GPCの測定条件は以下のとおりである。
装置名:JASCO LC-2000 plus(日本分光株式会社)
カラム:Shodex(登録商標)LF-804(昭和電工株式会社)
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
検出器:JASCO RI-2031 plus(日本分光株式会社)
温度:40℃
上記測定条件で、ポリスチレンの標準物質を使用して作成した検量線を用いて、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを算出した。
【0076】
[重合度]
重合度Pは、GPCより算出した数平均分子量をMn、化合物の繰り返し構造の分子量をMとして、以下の式で求めた。
P=Mn/M
【0077】
[ガラス転移温度]
硬化物の耐熱性を、ガラス転位温度(Tg)の観点から評価した。具体的には、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、保持圧力100kg/cm2、保持時間3分間の条件で熱硬化性樹脂組成物を成形し、5mm×5mm×5mmのガラス転移温度測定用の試験片を作製した。試験片を200℃にて5時間加熱して後硬化させた後、熱機械測定(TMA)により測定した。測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のTMA/SS6100熱機械分析装置を使用して、温度範囲30~300℃、昇温速度5℃/min、荷重20.0mNの条件で実施し、線膨張係数の変曲点をTgとした。
【0078】
[離型性]
成形性を、金型からの離型性の観点から評価した。具体的には、図1に示す成形金型1(試験片サイズは、下部直径:25mmφ、上部直径:10mmφ、上段厚み:7mm、下段厚み:7mm、テーパー:2°である。)、天板2及び底板3を取り付けたトランスファー成形機を用い、金型温度180℃、保持圧力100kg/cm2、保持時間3分間の条件で熱硬化性樹脂組成物を成形し、図2に示すように、ばねばかりにて上部から押した際の脱型力を計測した。連続して複数回の成形を行い、左右の脱型力の平均値が40N以下を保つ連続成形回数を記録した。平均値が40Nを超えた場合、又は成形回数が10回に到達した時点で、評価を終了した。
【0079】
[外観(ブリードアウト)]
成形性を、外観の観点からも評価した。具体的には、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、保持圧力100kg/cm2、保持時間3分間の条件で熱硬化性樹脂組成物を成形し、得られた成形物を取り出した後の金型及び成形物を目視観察した。上記条件で成形と脱型を繰り返し、10回の成形及び脱型後に金型に曇りがなく、かつ成形物の表面に染み出した樹脂が見られない場合を良好、3~10回目において樹脂の染み出し及び金型の汚れの少なくともいずれかが見られたものを可、1~2回目において樹脂の染み出し及び金型の汚れの少なくともいずれかが見られたものを不良として評価した。
【0080】
[成形後密着率]
素材が圧延無酸素銅(C1020)であり、外寸が、横52mm、縦38mm、厚み0.5mmであり、ベッドが中央に縦横18mmで存在するリードフレームを用いた。リードフレームの中央を中心に、縦30mm、横30mm、厚さ3mmの外寸で、ベッドを囲う封止を行った。封止は、金型温度180℃、保持圧力100kg/cm2、保持時間3分間の条件にてトランスファー成形機を用いて熱硬化性樹脂組成物を成形することにより行い、得られた試験片を、200℃、5時間で後硬化させた。後硬化した試験片について、超音波探傷映像装置(本多電子株式会社、HA-60A)を用い、リードフレームと熱硬化性樹脂組成物の硬化物との界面の剥離状況を観察した。Image-Jソフトを用いて、剥離していない部分の面積を全体の面積で割り返した値を、成形後密着率として決定した。
【0081】
[耐リフロー]
耐リフロー性は、リフロー後密着率により評価した。成形後密着率試験と同様の方法で得た、後硬化した試験片について、IPC/JEDEC J-STD-020Dのレベル3の条件に準拠して、株式会社マルコム製のリフローシミュレーターSRS-1を用いて、リフロー試験を行った。リフロー試験後の試験片について、成形後密着率試験と同様に解析し、得られた値をリフロー後密着率として決定した。
【0082】
<原材料>
[ポリアルケニルフェノール化合物(A)]
・BRG-APO(式(2)-1のR1=水素原子、Q=-CR89-、R8及びR9=水素原子、式(3)のR3~R7=水素原子)
フェノールノボラック樹脂ショウノール(登録商標)BRG-556及びBRG-558(アイカ工業株式会社)の1:1混合物を用い、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位をアリル化した樹脂(水酸基当量154、数平均分子量Mn1000、重量平均分子量Mw3000、重合度6.6、p=6.6、q=0、p/(p+q)=1)を製造した。製造方法は特開2016-28129号公報の実施例1を参照。
【0083】
・HE100C-APO(式(2)-1及び式(2)-2のR1=水素原子、Q=p-キシリレン基、式(3)のR3~R7=水素原子)
フェノールアラルキル樹脂HE100C-10-15(エア・ウォーター株式会社)を用い、特開2016-28129号公報の実施例1に準じた方法で、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位をアリル化した樹脂(水酸基当量222、数平均分子量Mn900、重量平均分子量Mw1900、重合度4.0、p=3.8、q=0.2、p/(p+q)=0.95)を製造した。
【0084】
[ポリマレイミド化合物(B)]
・BMI-4000(2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、大和化成工業株式会社)
・BMI-1100H(ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、大和化成工業株式会社)
【0085】
[ポリエチレングリコール化合物(C)]
・PEG-4000(ポリエチレングリコール、Mn4000、Mw5000、式(1)の構造単位100モル%、東邦化学工業株式会社)
・PEG-6000(ポリエチレングリコール、Mn6000、Mw7300、式(1)の構造単位100モル%、東邦化学工業株式会社)
・PEG-10000(ポリエチレングリコール、Mn10000、Mw14000、式(1)の構造単位100モル%、三洋化成工業株式会社)
・PEG-20000(ポリエチレングリコール、Mn21000、Mw26000、式(1)の構造単位100モル%、三洋化成工業株式会社)
・リオノンMO-60(ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、Mn7200、Mw8000、式(1)の構造単位94モル%、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)
【0086】
[ラジカル開始剤(D)]
・パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド、日油株式会社)
【0087】
[充填材(E)]
・シリカフィラーMSR5100(球状シリカ、平均粒径22.7μm、株式会社龍森)を、シランカップリング剤KBE-403(信越化学工業株式会社)0.5質量%を用いて処理した。
【0088】
[離型剤]
・カルナバ1号(カルナバワックス、日興リカ株式会社)
・LICOWAX(登録商標)PE520(ポリエチレンワックス、クラリアントケミカルズ株式会社)
【0089】
他の樹脂として、以下の化合物を用いた。
・KF6004(シリコーンPEG、Mn3000、Mw4500、式(1)の構造単位50モル%、信越化学工業株式会社)
・EPPN-501H(トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社)
・CRG-951(フェノールノボラック樹脂、アイカ工業株式会社)
・TPP(トリフェニルホスフィン)
【0090】
<実施例1>
[熱硬化性樹脂組成物の製造]
ポリアルケニルフェノール化合物(A)としてBRG-APOを35質量部、ポリマレイミド化合物(B)としてBMI-4000を65質量部、ポリエチレングリコール化合物(C)としてPEG-6000を2質量部、ラジカル開始剤(D)としてパークミルDを1.5質量部、充填材(E)としてMSR5100を400質量部、離型剤としてカルナバワックスを0.4質量部とPE520を0.15質量部混合し、溶融混練(株式会社東洋精機製作所製の2本ロール(ロール径8インチ)にて、110℃、10分)した。室温(25℃)にて1時間放冷して固化したのち、ミルミキサー(大阪ケミカル株式会社、型式WB-1、25℃、30秒)を用いて粉砕することにより、粉末状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0091】
[分析及び特性評価]
得られた熱硬化性樹脂組成物について、上記の分析を実施するとともに、打錠機(株式会社富士薬品機械)によりタブレット状に押し固めたものを用いてトランスファー成形することで、上記の特性評価に用いる各試験片を作製し、特性評価を行った。
【0092】
<実施例2~8、比較例1~3>
原材料の種類及び量を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を製造し、分析及び特性評価を行った。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1~8は、離型性、成形後密着率、リフロー後密着率、及び外観がいずれも良好であった。加えて、実施例1~8は、硬化物の耐熱性にも優れていた。一方、ポリエチレングリコール化合物(C)を含まない比較例1及び2は、離型性及び外観が悪く、リフロー後の密着率が著しく低かった。エポキシ樹脂をベースとする比較例3は、離型性及び外観が悪く、耐リフロー後の密着率も低かった。
【符号の説明】
【0095】
1 金型
2 天板
3 底板
4 ゲート
5 ランナー
6 成形物
図1
図2