(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】通信路推定方法、無線通信システム、送信装置、及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/005 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
H04B7/005
(21)【出願番号】P 2022577835
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002677
(87)【国際公開番号】W WO2022162737
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-145452(JP,A)
【文献】特開平09-289481(JP,A)
【文献】特開2003-115786(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置が送信する既知信号に基づいて受信装置が通信路推定を行う通信路推定方法において、
所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置工程と、
フレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信工程と、
送信した無線フレームを受信する受信工程と、
受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出工程と、
受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出工程と、
抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元工程と、
復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定工程と
を含むことを特徴とする通信路推定方法。
【請求項2】
前記推定工程により行った通信路推定に基づいて、受信した無線フレームを補償する等化方式を制御する制御工程をさらに含むこと
を特徴とする請求項1に記載の通信路推定方法。
【請求項3】
送信装置が送信する既知信号に基づいて受信装置が通信路推定を行う無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、
所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置部と、
前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信部と
を有し、
前記受信装置は、
前記送信部が送信した無線フレームを受信する受信部と、
前記受信部が受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出部と、
前記受信部が受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元部と、
前記復元部が復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
前記受信装置は、
前記推定部が行った通信路推定に基づいて、前記受信部が受信した無線フレームを補償する等化方式を制御する制御部をさらに有すること
を特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
既知信号に基づいて通信路推定を行う受信装置へ既知信号を送信する送信装置において、
所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置部と、
前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信
部と、
前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号に基づいて前記受信装置が行った通信路推定の結果を受信する受信部と、
前記受信部が受信した通信路推定の結果に基づいて、通信方式を制御する制御部と
を有すること
を特徴とする送信装置。
【請求項6】
送信装置が送信する既知信号に基づいて通信路推定を行う受信装置において、
フレーム内に分割して配置された既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして受信する受信部と、
前記受信部が受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出部と、
前記受信部が受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元部と、
前記復元部が復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定部と
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項7】
前記推定部が行った通信路推定に基づいて、前記受信部が受信した無線フレームを補償する等化方式を制御する制御部をさらに有すること
を特徴とする
請求項6に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信路推定方法、無線通信システム、送信装置、及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、マルチパスによるシンボル間干渉などで劣化する通信品質を等化器によって補償することが行われている。また、従来の無線通信システムでは、想定される遅延波の最大遅延時間(以下、遅延波長とする)を予め検討し、設計された固定長のトレーニング信号区間を用いて通信路推定を行っている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
このとき、想定される遅延波長が長い場合には、符号間干渉を防止するために、より長いトレーニング信号区間が必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications, IEEE Std. 802.11, 29 March 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定長のトレーニング信号区間を用いて通信路推定を行う場合、推定可能な遅延波長も固定となる。このとき、推定可能な遅延波長を超える遅延波については、推定することができず、通信路推定誤差が大きくなり、ビット誤り率が大きくなってしまう。
【0006】
また、想定される遅延波長が長い場合には、より長いトレーニング信号区間を設定することによって通信路推定を行うことは可能であるが、伝送容量が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、長遅延波環境であっても、伝送容量を低下させることなく、通信路推定の精度を向上させることができる通信路推定方法、無線通信システム、送信装置、及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる通信路推定方法は、送信装置が送信する既知信号に基づいて受信装置が通信路推定を行う通信路推定方法において、所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置工程と、フレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信工程と、送信した無線フレームを受信する受信工程と、受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出工程と、受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出工程と、抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元工程と、復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、送信装置が送信する既知信号に基づいて受信装置が通信路推定を行う無線通信システムにおいて、前記送信装置が、所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置部と、前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信部とを有し、前記受信装置が、前記送信部が送信した無線フレームを受信する受信部と、前記受信部が受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出部と、前記受信部が受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元部と、前記復元部が復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかる送信装置は、既知信号に基づいて通信路推定を行う受信装置へ既知信号を送信する送信装置において、所定長の既知信号をフレーム内に分割して配置する分割配置部と、前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する送信部と、前記分割配置部がフレーム内に分割して配置した既知信号に基づいて前記受信装置が行った通信路推定の結果を受信する受信部と、前記受信部が受信した通信路推定の結果に基づいて、通信方式を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様にかかる受信装置は、送信装置が送信する既知信号に基づいて通信路推定を行う受信装置において、フレーム内に分割して配置された既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして受信する受信部と、前記受信部が受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する算出部と、前記受信部が受信した無線フレームから前記データ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元する復元部と、前記復元部が復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行う推定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長遅延波環境であっても、伝送容量を低下させることなく、通信路推定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態にかかる無線通信システムにおける送信装置としての基地局の構成例を示す図である。
【
図2】一実施形態にかかる無線通信システムにおいて、受信装置となる端末局が通信路推定を行うために、送信装置となる基地局が送信する無線フレームの構成を示す図である。
【
図3】一実施形態にかかる無線通信システムにおける受信装置としての端末局の構成例を示す図である。
【
図4】(a)は、受信部が受信する前の無線フレームに含まれる連続したスロットを模式的に示す図である。(b)は、受信部が受信した後の無線フレームに含まれる連続したスロットを模式的に示す図である。
【
図5】(a)は、受信部が受信した無線フレームを模式的に例示する図である。(b)は、算出部が算出した遅延波成分を含むデータ信号成分を模式的に例示する図である。(c)は、抽出部が抽出した遅延波成分を含む既知信号成分を模式的に例示する図である。
【
図6】復元部が復元した仮想的に長いトレーニング信号区間を模式的に例示する図である。
【
図7】基地局及び端末局を備えた無線通信システムの動作例を示す図である。
【
図8】比較例の無線通信システムにおいて、端末局が通信路推定を行うために、基地局が送信する無線フレームの構成を示す図である。
【
図9】(a)は、予め設定されたトレーニング信号の実伝搬環境における遅延波成分を模式的に示す図である。(b)は、端末局が推定した通信路応答を例示する図である。(c)は、比較例における通信路推定の精度を向上させるためのトレーニング信号を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明がなされるに至った背景について具体的に説明する。
図8は、比較例の無線通信システムにおいて、例えば受信装置となる端末局が通信路推定を行うために、送信装置となる基地局が送信する無線フレームの構成を示す図である。
【0015】
比較例の無線通信システムの設計者は、想定される遅延波長を検討し、固定長のトレーニング区間を含む無線フレームを設定する。例えば、無線フレームは、
図8に示したように、それぞれ8つのスロットを含むサブフレーム1~4によって構成される。
【0016】
サブフレーム1が含むスロット1には、想定される遅延波長に応じて設計された固定長であるTシンボルのトレーニング信号と、制御情報とが含まれる。また、Tシンボルのトレーニング信号には、Tpreシンボルのプレフィックスと、TMシンボルのM系列と、Tsufシンボルのサフィックスとが含まれる。この場合、Tsuf+1シンボルまでの遅延波を推定することが可能である。
【0017】
また、スロット2~32には、dシンボルのデータ信号と、Tswシンボルの同期ワードがそれぞれ含まれる。この無線フレームは、データ信号の間に、同期ワードを挿入されたフレーム構成となっており、通信路推定の精度改善や、等化器のパラメータ更新などを行うために採用される。
【0018】
この無線フレームを用いて時間領域でスライド相関による通信路推定を行う場合、例えば基地局が送信するスロット1のトレーニング信号を端末局が受信し、端末局は通信路応答を推定して、等化ウェイトを算出する。
【0019】
そして、基地局が送信するスロット2~32のデータ信号及び同期ワードを端末局が受信する。端末局は、受信信号を等化して復調し、同期ワードを用いて等化ウェイトを更新し、さらに受信信号を等化して復調する。このとき、端末局は、通信路推定に固定長のトレーニング信号区間を用いるため、推定可能な遅延波長も固定となる。
【0020】
例えば、端末局は、M系列などの相関系列をトレーニング信号としてスライド相関を行い、通信路応答を推定する。しかし、推定可能な遅延波長が固定であるため、実伝搬環境における遅延波長が想定よりも長い場合には、通信路推定の精度が劣化してしまう。
【0021】
図9は、端末局が受信したトレーニング信号における遅延波成分を模式的に示す図である。
図9(a)は、予め設定されたトレーニング信号の実伝搬環境における遅延波成分を模式的に示す図である。
図9(b)は、端末局が推定した通信路応答を例示する図である。
図9(c)は、比較例における通信路推定の精度を向上させるためのトレーニング信号を模式的に示す図である。
【0022】
図9(a)に示すように、実伝搬環境における遅延波長が想定より長い場合、M系列Sに対し、前ブロック(S
prefix)の遅延波成分が入り込んで干渉してしまうため、通信路推定を行う場合に精度が劣化してしまう。
【0023】
図9(b)に示すように、端末局は、スライド範囲のT
suf+1シンボルまでしか通信路推定をすることができず、T
suf+1シンボルを超える遅延波長に対しては、通信路推定をすることができないために通信路推定に大きな誤差を生じさせてしまう。
【0024】
そのため、比較例の無線通信システムでは、
図9(c)に示すように、トレーニング信号の構成としてプレフィックス(S
prefix)とサフィックス(S
suf)を延伸させれば、シンボル間の干渉をなくして通信路推定の誤差を抑えることができる。
【0025】
しかし、トレーニングシンボル区間の延伸は、伝送容量の劣化を招いてしまうという問題がある。そこで、一実施形態にかかる無線通信システムでは、例えば静的なフェージング環境(固定設置など)において、実際のトレーニング信号区間を延伸させることなく、仮想的に長いトレーニング信号区間を生成して通信路推定を行うことにより、通信路推定の精度を向上させる。
【0026】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態にかかる無線通信システムにおける送信装置としての基地局10の構成例を示す図である。
【0027】
図1に示すように、一実施形態にかかる基地局10は、例えば情報ビット生成部102、変調部104、既知信号生成部106、分割配置部108、送信部110、受信部112、及び制御部114を有する。
【0028】
情報ビット生成部102は、送信すべき情報ビットとなるデータ信号(データフレーム)を生成し、変調部104に対して出力する。
【0029】
変調部104は、情報ビット生成部102から入力されたデータ信号を設定に応じて変調し、分割配置部108に対して出力する。
【0030】
既知信号生成部106は、所定長のトレーニング信号及び同期ワード(
図8参照)をそれぞれトレーニング用の既知信号として生成し、分割配置部108に対して出力する。
【0031】
分割配置部108は、変調部104が出力した変調されたデータ信号に対して、既知信号生成部106が生成した所定長の既知信号を、
図2に示すように分割して配置することにより無線フレームとし、送信部110に対して出力する。
【0032】
図2は、一実施形態にかかる無線通信システムにおいて、例えば受信装置となる端末局20が通信路推定を行うために、送信装置となる基地局10が送信する無線フレームの構成を示す図である。
【0033】
無線フレームは、
図2に示したように、それぞれ8つのスロットを含むサブフレーム1~4によって構成される。
【0034】
サブフレーム1が含むスロット1には、想定される遅延波長に応じて設計された固定長であるTシンボルのトレーニング信号と、制御情報とが含まれる(
図8参照)。また、Tシンボルのトレーニング信号には、T
preシンボルのプレフィックスと、TMシンボルのM系列と、T
sufシンボルのサフィックスとが含まれる。この場合、T
suf+1シンボルまでの遅延波を推定することが可能である。
【0035】
また、スロット2~32には、dシンボルのデータ信号と、Tswシンボルの同期ワードがそれぞれ含まれる。具体的には、分割配置部108は、スロット2~32それぞれに対し、データ信号の次に分割した同期ワードを配置して、無線フレームを構成する。
【0036】
スロット2~32に含まれた同期ワードそれぞれは、
図2に示したように分割して配置されたまま送信され、端末局20が受信した後に連結することとなる。端末局20が同期ワードを連結する動作については後述する。
【0037】
送信部110は、分割配置部108から入力された無線フレームをRF信号(高周波信号)に変換し、アンテナを介して無線フレームを後述する受信装置としての端末局20(
図3参照)に対して送信する。すなわち、送信部110は、分割配置部108がフレーム内に分割して配置した既知信号をデータ信号とともに無線フレームとして送信する。
【0038】
受信部112は、端末局20が送信する信号を、アンテナを介して受信し、例えば制御部114に対して出力する。例えば、受信部112は、分割配置部108がフレーム内に分割して配置した既知信号に基づいて端末局20が行った通信路推定の結果を受信する。
【0039】
制御部114は、基地局10を構成する各部を制御する。また、制御部114は、受信部112が受信した通信路推定の結果に基づいて、通信方式を制御する。例えば、制御部114は、受信部112が受信した通信路推定の結果に基づいて、情報ビット生成部102が生成するデータ信号(データフレーム)の構成を制御したり、変調部104が変調する変調方式を制御する。
【0040】
図3は、一実施形態にかかる無線通信システムにおける受信装置としての端末局20の構成例を示す図である。
【0041】
図3に示すように、一実施形態にかかる端末局20は、受信部202、算出部204、抽出部206、復元部208、推定部210、制御部212、等化処理部214、復調部216、情報ビット検出部218、及び送信部220を有する。
【0042】
受信部202は、基地局10が送信した無線フレームを、アンテナを介して受信し、高周波信号からベースバンドの信号に変換して、算出部204、抽出部206及び等化処理部214に対して出力する。ただし、遅延波が存在する通信環境では、無線フレームに含まれるデータ信号及び既知信号(トレーニング信号及び同期ワード)は、次スロットで遅延波成分が重なって受信される。
【0043】
なお、端末局20は、サブフレーム1(
図2,8参照)に対しては、スロット1に含まれる固定長のトレーニング信号区間を用いて無線通信を行う。このとき、端末局20は、サブフレーム1の無線通信により、通信路の粗推定、及び等化器のタップ係数収束などを行う。
【0044】
図4は、受信部202が受信する前後の無線フレーム(サブフレーム2以降)に含まれる連続したスロットを模式的に示す図である。
図4(a)は、受信部202が受信する前(基地局10の送信時)の無線フレームに含まれる連続したスロットを模式的に示す図である。
図4(b)は、受信部202が受信した後の無線フレームに含まれる連続したスロットを模式的に示す図である。
【0045】
図4(a)に示すように、受信部202が受信する前(基地局10の送信時)には、N番目のスロットN及びスロットN+1それぞれにおいて、同期ワードはデータ信号の次に配置されている。
【0046】
一方、受信部202が受信した後(端末局20の受信時)には、
図4(b)に示すように、スロットN+1において、スロットNのデータ信号の遅延波成分と、スロットNの既知信号(同期ワード)の遅延波成分とが重なっている。
【0047】
算出部204は、受信部202が受信した無線フレームから遅延波成分を含むデータ信号成分を算出し、算出した遅延波成分を含むデータ信号成分を抽出部206に対して出力する。このとき、算出部204は、例えば粗推定した通信路の情報を用いて遅延波成分を含むデータ信号成分を算出する。
【0048】
抽出部206は、受信部202が受信した無線フレームから、算出部204が算出した遅延波成分を含むデータ信号成分を減算することにより、分割して配置された既知信号(トレーニング信号、同期ワード等)の遅延波成分をそれぞれ含む複数の既知信号成分を抽出し、複数の既知信号成分を復元部208に対して出力する。
【0049】
図5は、抽出部206が遅延波成分を含む既知信号成分を抽出する処理を模式的に例示する図である。
図5(a)は、受信部202が受信した無線フレームを模式的に例示する図である。
図5(b)は、算出部204が算出した遅延波成分を含むデータ信号成分を模式的に例示する図である。
図5(c)は、抽出部206が抽出した遅延波成分を含む既知信号成分を模式的に例示する図である。
【0050】
例えば、抽出部206は、受信部202が受信した無線フレーム(
図5(a))から、算出部204が算出した遅延波成分を含むデータ信号成分(
図5(b))を減算することにより、遅延波成分を含む既知信号成分(
図5(c))を抽出する。
【0051】
復元部208は、抽出部206が抽出した複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元し、復元した所定長の既知信号を推定部210に対して出力する。例えば、復元部208は、
図2に示したように、サブフレーム2~4のスロット9~32に分割して配置された24個の同期ワード(T
swシンボル)を連結させる。つまり、復元部208は、
図6に模式的に例示したように、仮想的に長いトレーニング信号区間(所定長の既知信号:T
swシンボル×24シンボル)を生成する。
【0052】
推定部210は、復元部208が復元した所定長の既知信号に基づいて通信路推定を行い、通信路推定結果を例えば制御部212に対して出力する。
【0053】
制御部212は、端末局20を構成する各部を制御する。例えば、制御部212は、推定部210が行った通信路推定に基づいて、受信部202が受信した無線フレームを等化処理部214が補償する等化方式を制御する。また、制御部212は、上述した複数の同期ワードを用いて等化処理部214のタップ係数を収束させる。
【0054】
等化処理部214は、受信部202から入力された無線フレームを、制御部212の制御に応じて図示しない等化器により補償し、補償した無線フレームを復調部216に対して出力する。例えば、等化処理部214は、制御部212の制御に基づいて、複数の特性が異なる等化器を切替えたり、等化器のタップ数を切替えて補償を最適化する。
【0055】
復調部216は、等化処理部214が補償した無線フレームを復調し、復調した無線フレームを情報ビット検出部218に対して出力する。
【0056】
情報ビット検出部218は、復調部216が復調した無線フレームデータ信号(情報ビット)を検出し、検出したデータ信号を例えば制御部212に対して出力する。
【0057】
送信部220は、基地局10がフレーム内に分割して配置した既知信号に基づいて推定部210が行った通信路推定の結果を制御部212から取得し、取得した通信路推定の結果を、アンテナを介して基地局10へ送信する。
【0058】
次に、基地局10及び端末局20を備えた無線通信システムの動作例について説明する。
図7は、基地局10及び端末局20を備えた無線通信システムの動作例を示す図である。
【0059】
図7に示すように、基地局10がサブフレーム1のスロット1に含まれる固定長のトレーニング信号を送出すると(S300)、端末局20は通信路応答を推定(粗推定)し(S400)、等化ウェイトを算出する(S402)。
【0060】
そして、基地局10がサブフレーム1に含まれるスロット2のデータ信号・同期ワードを送出すると(S302)、端末局20は受信信号を等化して復調を行い(S404)、同期ワードを用いて等化ウェイトを更新する(S406)。
【0061】
また、基地局10がサブフレーム1に含まれるスロット3~8のデータ信号・同期ワードを送出すると(S304)、端末局20は受信信号を等化して復調を行い(S408)、同期ワードを用いて等化ウェイトを更新する(S410)。
【0062】
次に、基地局10は、例えばサブフレーム2~4の同期ワードシンボル数に応じた既知信号を生成し(S306)、生成した既知信号をスロット9~32の同期ワード部分に分割して配置し(S308)、サブフレーム2~4のデータ信号・同期ワードを送出する(S310)。
【0063】
端末局20は、サブフレーム2~4のデータ信号・同期ワード(受信信号)を等化して復調し(S412)、遅延波部分を含むデータ信号成分を算出する(S414)。
【0064】
また、端末局20は、受信信号からデータ信号の遅延波成分を減算し、遅延波成分を含む同期ワード部分を算出し(S416)、算出した遅延波成分を含む同期ワード部分を連結して所定長の既知信号(仮想的に長いトレーニング信号区間)を復元する(S418)。
【0065】
そして、端末局20は、復元した所定長の既知信号を用いて通信路応答を推定する(S420)。
【0066】
このように、一実施形態にかかる基地局10及び端末局20を備えた無線通信システムは、端末局20が複数の既知信号成分を連結させて所定長の既知信号を復元するので、長遅延波環境であっても、伝送容量を低下させることなく、通信路推定の精度を向上させることができる。
【0067】
このとき、基地局10は、フレーム構成の変更(トレーニング信号区間の延伸など)をしないので、伝送容量を低下させることなく、端末局20が推定可能な遅延波長を延伸し、通信路推定の精度を向上させることができる。
【0068】
なお、一実施形態にかかる無線通信システムが行う上述したトレーニング信号又は同期ワードなどの既知信号を用いる通信路推定方法は、時間領域で通信路推定を行うシステムであれば、通信方式やフレーム構成等が異なっていても適用することが可能である。
【0069】
つまり、基地局10は、端末局20による通信路推定の結果を受信して、無線フレームの通信方式(フレーム構成、変調次数なども含む)を変更してもよい。また、端末局20は、通信路推定の結果に応じて等化方式を切り替えたり、等化ウェイトを更新するように構成されてもよい。
【0070】
また、一実施形態にかかる無線通信システムは、通信路推定の精度を向上させるためだけでなく、単に想定外に遅れる遅延波の有無を検出して、通信方式を切替えるように構成されてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、トレーニング信号にM系列の信号を用いて説明したが、これに限定されることなく、一実施形態にかかる通信路推定方法は、通信路応答推定に用いられる他の系列の信号に対しても適用可能である。
【0072】
また、基地局10及び端末局20それぞれが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0073】
例えば、基地局10及び端末局20は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
10・・・基地局、20・・・端末局、102・・・情報ビット生成部、104・・・変調部、106・・・既知信号生成部、108・・・分割配置部、110・・・送信部、112・・・受信部、114・・・制御部、202・・・受信部、204・・・算出部、206・・・抽出部、208・・・復元部、210・・・推定部、212・・・制御部、214・・・等化処理部、216・・・復調部、218・・・情報ビット検出部、220・・・送信部