(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法
(51)【国際特許分類】
B01J 49/09 20170101AFI20241126BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20241126BHJP
B03B 5/30 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B01J49/09
B03B5/28 Z
B03B5/30
(21)【出願番号】P 2023073322
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-028738(JP,A)
【文献】特開昭57-102238(JP,A)
【文献】特開昭54-114476(JP,A)
【文献】米国特許第04622141(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J49/00-49/90
C02F1/42
B03B5/28-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離する方法であって、
混合イオン交換樹脂を分離塔に投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水を上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂に分離する分離工程と、
前記分離塔内のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂
をアニオン交換樹脂抜出部から抜き出して高度分離塔に移送するアニオン交換樹脂移送工程と、
前記高度分離塔に移送したアニオン交換樹脂内に混入したカチオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂との中間比重の溶液で分離するアニオン交換樹脂の高度分離工程と、
前記高度分離塔の底部からカチオン交換樹脂を抜き出すカチオン交換樹脂抜出工程と、その後のアニオン交換樹脂抜出工程とを有し、
前記高度分離工程において、前記高度分離塔内に移送したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液に浸漬し、LV=0.5m/分以上で該高度分離塔の底部からバブリングした後、バブリングを停止して静置することにより、混入したカチオン交換樹脂を沈降させて前記高度分離塔内の底部から抜き出した後に、アニオン交換樹脂を抜き出す際にアニオン交換樹脂層を下層から95容積%以下を抜き出し、上層5容積%以上は廃棄もしくは再度分離工程で分離する、混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法。
【請求項2】
前記アニオン交換
樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液が、NaOH溶液である、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法。
【請求項3】
前記アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方が、ポーラス型イオン交換樹脂である、請求項1又は2に記載の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置などに用いられる非再生式イオン交換装置や混床式イオン交換装置などで使用したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離して再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置では原水中の不純物を除去して水の清浄度を高めているが、イオン性の不純物、すなわちアニオン性の不純物とカチオン性の不純物を除去するためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した混合イオン交換樹脂を充填した混床式イオン交換装置が汎用的に用いられている。この混床式イオン交換装置では、イオン交換樹脂はイオン交換容量に相当する量のイオンを交換すると、それ以上のイオン性不純物は除去できずに破過する。そこで、ある程度の処理水を処理したら、この混床式イオン交換装置からイオン交換樹脂をそれぞれ回収して、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔でそれぞれ塩酸や苛性ソーダなどにより再生して再利用している。この際、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは、上向流で通水してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比重差による沈降速度の違いを利用して分離するのが一般的である。
【0003】
この混合イオン交換樹脂の分離塔の一例を
図4に示す。
図4において、混合イオン交換樹脂の分離塔21は、円筒形の分離塔本体21Aの底部に注排水口22が設けられているとともに、複数の吐出ノズル23Aを備えた吐水部としての給水管23が設けられていて、頂部には排水口24が形成されている。この分離塔本体21Aの吐出ノズル23Aの下側には集水板25が配置されている。そして、分離塔21内の上下方向の中間付近にはアニオン交換樹脂抜出部としてのアニオン交換樹脂抜出配管26が設けられているとともに、このアニオン交換樹脂抜出配管26の下側で給水管23よりわずかに上側にカチオン交換樹脂抜出配管27が設けられている。また、分離塔21の側面にはのぞき窓28が形成されている。なお、29は分離塔21の側面上側に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口である。
【0004】
このような混合イオン交換樹脂の分離塔21において、分離塔21内に使用済の混合イオン交換樹脂を投入し、続いて4重量%程度のNaOH溶液を通液し、所定時間放置したら、注排水口22から純水を注入して排水口24から分離塔内のNaOH溶液を押し出し、洗浄を行う。そして、分離塔21内に所定量の分離用水(純水)が充填された状態とする。この際、分離用水の水面が混合イオン交換樹脂の上面より上位、例えば500mm以下程度上位となるようにする。
【0005】
次に注排水口22からエアを分離塔21内に注入し、混合イオン交換樹脂をバブリングし、コロイド状に絡みついた樹脂粒子をほぐした後バブリングングを停止し、混合イオン交換樹脂を集水板25上に沈降させる。この際、比重の大きいカチオン交換樹脂が先に沈降し、比重の小さいアニオン交換樹脂が遅れて沈降する。続いて、逆洗に備えて、分離塔21内が満水となるように注排水口22から純水(分離用水)を導入する。
【0006】
この満水の状態で吐出ノズル23Aから純水を吐出して上向流にて通水して、分離界面がアニオン交換樹脂抜出配管26の吸込口の下端となるようにのぞき窓28から目視により確認しながら調整する。そして、アニオン交換樹脂抜出配管26から吸引してアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このアニオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後、アニオン交換樹脂再生塔に移送してアニオン交換樹脂の再生処理を行う。
【0007】
このようにしてアニオン交換樹脂を抜き出した後は、吐出ノズル23Aから純水の吐出を継続しながらカチオン交換樹脂抜出配管27から吸引し、カチオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このカチオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後カオン交換樹脂再生塔に移送してカチオン交換樹脂の再生処理を行う。このときカチオン交換樹脂は全部取り出さず、ある程度残存させることでアニオン交換樹脂の混入を防止する。
【0008】
しかしながら、上述したようなアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の逆洗分離方法では、両者の分離が不十分である、という問題点があった。特にカチオン交換樹脂は界面部を分離塔21内に残存させることで良好に分離することができるが、最初に抜き出すアニオン交換樹脂にカチオン交換樹脂が混入しやすい、という問題点があった。
【0009】
そこで、セプレックス法という高濃度のNaOH溶液を用いてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離する方法が適用されている。このセプレックス法は、
図5に示すようなプロセスで処理を行う。
【0010】
すなわち、前述した
図4に示す分離塔21を用い、
図5における逆洗分離工程でアニオン交換樹脂を抜き出したら、分離に用いた超純水とともにアニオン交換樹脂を微量に混入したカチオン交換樹脂の分離専用の高度分離塔(セプレックス塔)に移送する。このセプレックス塔に湿潤状態のアニオン交換樹脂の比重と湿潤状態のカチオン交換樹脂の比重の中間の比重のNaOH溶液を注液する。例えば、
図6に示すようにポーラス型アニオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.05g/mL、ポーラス型カチオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.28g/mLの場合には、両者の中間の比重の16%NaOH溶液(比重1.18g/mL)を注入する。これにより、アニオン交換樹脂は浮遊しカチオン交換樹脂は沈殿するので、カチオン交換樹脂をセプレックス塔の下部より抜き出して除去する。そして、塔内に純水を供給して、NaOH溶液を押出洗浄した後、残ったアニオン交換樹脂を抜き出す(高度分離工程)。この抜き出したアニオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりアニオン交換樹脂の再生洗浄を行う。一方、分離塔における分離工程で分離したカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりカチオン交換樹脂の再生洗浄を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなセプレックス法により、アニオン交換樹脂に微量に混入したカチオン交換樹脂を分離することができる。しかしながら、さらに高純度の超純水の製造のためには、より高度にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離する必要があるが、前述したセプレックス法では、アニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂の破砕樹脂が多い場合、カチオン交換樹脂が沈降せずにアニオン交換樹脂中に残るため、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離性能にいまだ改善の余地がある、という課題がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、セプレックス法を利用して高い精度でアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離する際に、破砕した樹脂を排除して分離することの可能な混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に鑑み、本発明は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離する方法であって、混合イオン交換樹脂を分離塔に投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水を上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂に分離する分離工程と、前記分離塔内のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出して高度分離塔に移送するアニオン交換樹脂移送工程と、前記高度分離塔に移送したアニオン交換樹脂内に混入したカチオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂との中間比重の溶液で分離するアニオン交換樹脂の高度分離工程と、前記高度分離塔の底部からカチオン交換樹脂を抜き出すカチオン交換樹脂抜出工程と、その後のアニオン交換樹脂抜出工程とを有し、前記高度分離工程において、前記高度分離塔内に移送したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液に浸漬し、LV=0.5m/分以上で該高度分離塔の底部からバブリングした後、バブリングを停止して静置することにより、混入したカチオン交換樹脂を沈降させて前記高度分離塔内の底部から抜き出した後に、アニオン交換樹脂を抜き出す際にアニオン交換樹脂層を下層から95容積%以下を抜き出し、上層5容積%以上は廃棄もしくは再度分離工程で分離する、混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法を提供する(発明1)。
【0014】
かかる発明(発明1)によれば、逆洗分離によりアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を一次分離したアニオン交換樹脂を、高度分離塔においてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液で分離する際に、一定流速以上のLV(線速度)でバブリングを行うと、破砕したイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂)がアニオン交換樹脂層の上に位置するので、高度分離塔において、最後のアニオン交換樹脂の抜き出し時に、層全体の下部の95容積%以下を抜き出すことにより、破砕した樹脂に混入を防止して、アニオン交換樹脂を高度に分離することが可能となる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記アニオン交換とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液が、NaOH溶液であることが好ましい(発明2)。
【0016】
かかる発明(発明2)によれば、NaOH溶液は、湿潤時のアニオン交換樹脂の比重と湿潤時のカチオン交換樹脂の比重との両者の間の比重にすることが可能であるので、アニオン交換樹脂を浮遊させてアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を好適に分離することができる。
【0017】
上記発明(発明1又は2)においては、前記アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方が、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい(発明3)。
【0018】
かかる発明(発明3)によれば、湿潤時のポーラス型アニオン交換樹脂の比重と湿潤時のポーラス型イオン交換樹脂の比重との中間に比重に5重量%以上30重量%以下のNaOH水溶液の比重とすることができるので、このようなNaOH水溶液を用いることによりアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を好適に分離することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法によれば、逆洗分離によりアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を一次分離したアニオン交換樹脂を、高度分離塔においてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液で分離する際に、一定流速以上のLV(線速度)でバブリングを行った後、最後のアニオン交換樹脂の抜き出し時に、層全体の下部の95容積%以下を抜き出しているので、破砕したイオン交換樹脂の混入を防止して、アニオン交換樹脂を高度に分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法を示す工程図である。
【
図2】前記実施形態の高度分離工程におけるアニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂のバブリング後の分離状態を示す概略図である。
【
図3】前記実施形態の高度分離工程におけるカチオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂の分離後の状態を示す概略図である。
【
図4】混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離塔の一例を示す概略図である。
【
図5】セプレックス法による従来の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法について、添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0022】
[混合イオン交換樹脂の分離システムの構成]
本実施形態の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法は、例えば、前述した
図5に示すような分離塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、セプレックス塔(アニオン交換樹脂高度分離塔)ととからなる構成により行うことができる。
【0023】
[混合イオン交換樹脂]
本実施形態において分離対象となる混合イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂である。この混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合(容積比)は、特に制限はないがアニオン交樹脂:カチオン交換樹脂=30:70~70:30程度である。
【0024】
このアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、いずれもポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい。ポーラス型のアニオン交換樹脂は、例えば約1.03~1.09g/mL程度の比重(湿潤時)を有し、ポーラス型のカチオン交換樹脂は、例えば約1.22~1.30g/mL程度の比重(湿潤時)を有する。
【0025】
〔混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離方法〕
次に前述したような装置構成による本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離方法について
図1に示すフロー図に基づいて説明する。
【0026】
(逆洗分離工程)
逆洗分離工程については、前述した
図5における逆洗分離工程と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0027】
(アニオン交換樹脂の高度分離工程)
分離工程において取り出されたアニオン交換樹脂には、わずかにカチオン交換樹脂が混入している。そこで、高度分離塔としてのセプレックス塔では以下のような操作を行う。
【0028】
まず、セプレックス塔に前述した逆洗分離工程で分離したアニオン交換樹脂を投入したら、NaOH水溶液を注入する。このNaOH水溶液は、5~30重量%の濃度で湿潤時のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重となるように設定する。例えば、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂がポーラス型の場合には、NaOH水溶液は9~25重量%の濃度とする。このNaOH水溶液は、約1.10~1.27g/mL程度の比重を有する。
【0029】
次に注排水口からエアをセプレックス塔内に注入し、アニオン交換樹脂を所定時間バブリングする。このとき、バブリングの流速をLV=0.5m/分以上、特に1m/分以上とする。これにより破砕しているカチオン交換樹脂と破砕しているアニオン交換樹脂が浮上する。その後、静置することにより、
図2に示すようにセプレックス塔1では、NaOH溶液4よりも比重の大きい破砕していないカチオン交換樹脂3が沈降し、これよりも比重の小さいアニオン交換樹脂2と破砕したイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂+カチオン交換樹脂)5が浮遊するので、セプレックス塔1の底部に設けられたカチオン交換樹脂抜出配管(図示せず)から吸引してカチオン交換樹脂3をカチオン交換樹脂・水混相流として流出させて抜き出す。このカチオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後、次回の混合イオン交換樹脂の分離再生時に一緒に投入すればよい。このようなバブリングの時間は2分以上、特に5分以上とすることが好ましい。バブリング時間が2分未満では、破砕しているカチオン交換樹脂の浮上効果が十分でない。なお、バブリングの時間上限については特に制限はないが、10分を越えてもそれ以上のカチオン交換樹脂の浮上効果が乏しいことから、10分程度とすればよい。なお、図中、符号6は逆洗分離工程で分離したアニオン交換樹脂(わずかにカチオン交換樹脂が混入している)の移送管である。
【0030】
その後、セプレックス塔1内を水で置換して
図3に示す状態となったら、アニオン交換樹脂層の下層から95容積%以下を抜き出して再生と洗浄を行い、再利用する。このとき95容積%を超える量を抜き出すと、破砕したカチオン交換樹脂層が混入する虞が大きくなる。一方、残った上層の5容積%以上は廃棄もしくは再度分離工程で分離すればよい。
【0031】
(カチオン交換樹脂の再生工程)
カチオン交換樹脂再生塔では、常法と同じ操作を行う。まず、カチオン交換樹脂再生塔にカチオン交換樹脂を投入したら、無機酸としてのHCl溶液を注入してカチオン交換樹脂を再生する。
【0032】
続いて、カチオン交換樹脂再生塔内に純水を供給して、塔内のHCl溶液を押し出して排出するとともに、カチオン交換樹脂を洗浄する。このようにしてカチオン交換樹脂を再生することができる。この再生後のカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔取り出して再利用すればよい。
【0033】
上述したような本実施形態においては、セプレックス塔内に移送したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液に浸漬した後、LV=0.5m/分以上で該高度分離塔の底部からバブリングしているので、破砕したイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂)がアニオン交換樹脂層の上に位置するので、混入したカチオン交換樹脂を沈降させて前記高度分離塔内の下部から抜き出した後に、アニオン交換樹脂を抜き出す際にアニオン交換樹脂層を下層から95容積%以下を抜き出すことで、高度分離塔においてアニオン交換樹脂を高度に分離することが可能となる。
【0034】
以上、本発明について前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は、高度分離工程において、高度分離塔内に移送したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液に浸漬し、LV=0.5m/分以上で高度分離塔の底部からバブリングした後静置し、混入したカチオン交換樹脂を沈降させて前記高度分離塔内の下部から抜き出した後に、アニオン交換樹脂を抜き出す際にアニオン交換樹脂層を下層から95容積%以下を抜き出しさえすれば種々の変形実施が可能である。例えば、高度分離塔(セプレックス塔)では、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の高度分離し、カチオン交換樹脂を排出した後、上側の破砕樹脂を除去し、残ったアニオン交換樹脂をセプレックス塔内で再生してもよい。
【実施例】
【0035】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
[比較例1]
図5に示す分離方法において、ポーラス型アニオン交換樹脂(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔で逆洗分離した。分離後のアニオン交換樹脂のみをセプレックス塔に移送し、16重量%のNaOH溶液(比重1.28g/mL)を注入してこの溶液に浸漬し、LV=0.15m/分で10分間バブリングを行った。その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側90容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度を測定したところ2ng/Lであった。
【0037】
[比較例2]
図5に示す分離方法において、ポーラス型アニオン交換樹脂(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔で逆洗分離した。分離後のアニオン交換樹脂のみをセプレックス塔に移送し、16重量%のNaOH溶液(比重1.28g/mL)を注入してこの溶液に浸漬し、LV=0.15m/分で1分間バブリングを行った。その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側95容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度を測定したところ4ng/Lであった。
【0038】
[実施例1]
図1に示す分離方法において、ポーラス型アニオン交換樹脂(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔で逆洗分離した。分離後のアニオン交換樹脂のみをセプレックス塔に移送し、16重量%のNaOH溶液(比重1.28g/mL)を注入してこの溶液に浸漬し、LV=0.5m/分で10分間バブリングを行った。その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側95容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度を測定したところ0.5ng/Lであった。
【0039】
[実施例2]
図1に示す分離方法において、ポーラス型アニオン交換樹脂(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔で逆洗分離した。分離後のアニオン交換樹脂のみをセプレックス塔に移送し、16重量%のNaOH溶液(比重1.28g/mL)を注入してこの溶液に浸漬し、LV=1.0m/分で10分間バブリングを行った。その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側95容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度を測定したところ0.2ng/Lであった。
【0040】
[実施例3~6及び比較例3,4]
実施例1において、バブリングのLVを種々変化させ、その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側95容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度をそれぞれ測定した結果を表1に示す。
【0041】
表1から明らかな通り、LV=0.5m/分以上とすることにより、処理水のNa濃度を1ng/L以下とすることができることがわかる。このことから、アニオン交換樹脂の再生時にカチオン交換樹脂の混入が極めて少なくなぅていることがわかる。
【0042】
【0043】
[実施例7]
実施例1において、LV=0.5m/分でバブリングの時間を変化させ、その後30分間静置して、沈んだカチオン交換樹脂を抜き取った。次にセプレックス塔内を水で置換して、アニオン交換樹脂層の下層側95容積%を抜き出して再生洗浄を行った。この再生したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを体積比3:1で混合し、この混合イオン交換樹脂に超純水を通水し、得られた処理水のNa濃度をそれぞれ測定した結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
表2から明らかな通り、LV=0.5m/分で2分以上バブリングを行うことにより、処理水のNa濃度を1ng/L以下とすることができることがわかる。このことから、アニオン交換樹脂の再生時にカチオン交換樹脂の混入が極めて少なくなぅていることがわかる。
【符号の説明】
【0046】
1 セプレックス塔
2 アニオン交換樹脂
3 カチオン交換樹脂
4 NaOH溶液
5 破砕したイオン交換樹脂(破砕したカチオン交換樹脂)
6 移送管
21 混合イオン交換樹脂の分離塔
21A 分離塔本体
22 注排水口
23 給水管
23A 吐出ノズル
24 排水口
25 集水板
26 アニオン交換樹脂抜出配管
27 カチオン交換樹脂抜出配管
28 のぞき窓
29 使用済の混合イオン交換樹脂の投入口