(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】上向流式イオン交換塔の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01J 47/14 20170101AFI20241126BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20241126BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20241126BHJP
B01J 47/026 20170101ALI20241126BHJP
B01J 49/08 20170101ALI20241126BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20241126BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20241126BHJP
B01J 49/70 20170101ALI20241126BHJP
【FI】
B01J47/14
B01J39/05
B01J41/05
B01J47/026
B01J49/08
B01J49/53
B01J49/57
B01J49/70
(21)【出願番号】P 2023127186
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2024-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/119747(WO,A1)
【文献】特開昭60-132693(JP,A)
【文献】特開昭49-078680(JP,A)
【文献】特開平08-309208(JP,A)
【文献】特開昭51-077583(JP,A)
【文献】特開2012-086124(JP,A)
【文献】特表2000-503889(JP,A)
【文献】特開平09-117676(JP,A)
【文献】特開平09-057116(JP,A)
【文献】特開2003-088765(JP,A)
【文献】特開2003-190946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00 - 49/90
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側の透水性仕切板と上側の透水性仕切板との間にイオン交換樹脂の充填床を有するイオン交換塔に、給水ポンプによって原水を上向流にて通水して脱イオン水を製造する上向流式イオン交換塔の運転方法であって、
通水開始当初に、イオン交換塔内に
、該イオン交換塔内のイオン交換樹脂の充填床を押し上げるLVにて原水を通水して、該イオン交換塔内のイオン交換樹脂の充填床を押し上げ、該充填床の上側の透水性仕切板に押し当ててイオン交換樹脂の固定床を形成する固定床形成工程と、
その後、該固定床が維持される最小LVよりも大きいLVにて原水を通水し、かつ脱イオン水の需要量に応じて原水の通水量を制御する定常運転工程と
を有する上向流式イオン交換塔の運転方法。
【請求項2】
前記定常運転工程においては、前記イオン交換塔からの脱イオン水を流量調整バルブを介して脱イオン水タンクに導入し、該脱イオン水タンクから脱イオン水を脱イオン水の需要先に送水する上向流式イオン交換塔の運転方法であって、
該脱イオン水タンク内の水位が所定範囲となるように、かつ前記イオン交換塔の固定床が維持されるように、該流量調整バルブの開度及び/又は前記給水ポンプを制御する請求項1の上向流式イオン交換塔の運転方法。
【請求項3】
前記給水ポンプの制御頻度が7回/min以下である請求項2の上向流式イオン交換塔の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上向流式イオン交換塔の運転方法に係り、特に脱イオン水の需要量に応じて上向流通水速度(LV)を変化させる上向流式イオン交換塔の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内にイオン交換樹脂を収容したイオン交換塔に原水を通水して脱イオン水を得るイオン交換塔の運転方法として、原水を上向流にて通水する上向流通水方式がある。
【0003】
原水をイオン交換塔に上向流にて通水する場合、イオン交換樹脂が流動すると、イオンが吸着されきれずにリークするおそれがある。そのため、上向流式イオン交換塔では固定床を形成することが多い(特許文献1)。
【0004】
一般的な上向流式のイオン交換塔にあっては、円筒状の容器が筒軸心方向を上下方向(特に鉛直方向)として設置されている。この容器内の上部と下部にそれぞれ透水性仕切板が設けられており、該透水性仕切板間にイオン交換樹脂が収容されている。イオン交換樹脂は採水・再生によって樹脂自体が膨潤・収縮し、その体積が増減する。そこで再生薬品を樹脂層に均一に通水するために、所定高さの空間(フリーボード部)を残した状態で容器に収容されている。
【0005】
このようなイオン交換樹脂塔に原水を上向流にて通水すると、イオン交換樹脂はこの上向流によって押し上げられ、上側の透水性仕切板に押し付けられた固定床状態となり、この状態で採水が行われる。処理水は、容器頂部の流出口から流出する。
【0006】
イオン交換塔への原水の通水を停止すると、イオン交換樹脂を押し上げる力が消失するので、固定床を形成していたイオン交換樹脂は、容器内において下側の透水性仕切板側へ沈降落下し、通水前の収容状態に復帰する。
【0007】
このようにイオン交換樹脂が容器内で沈降落下する場合、イオン交換樹脂の崩落部が形成される。この崩落部が徐々に上方に移動し、遂には最上部のイオン交換樹脂にまで達してイオン交換樹脂の落下が終了する。このイオン交換樹脂の崩落部においては、イオン交換樹脂粒子が混ざり合いながら落下する。そのため、イオン交換樹脂の充填層の下位側に位置していたイオン交換樹脂は破過(ブレーク)しているが、上位側に位置していたイオン交換樹脂はまだ破過していない運転中途状態で採水を停止した場合(原水通水を停止した場合)には、下位側の破過した樹脂と上位側の未破過樹脂とが混ざり合ってしまい、次回の採水運転再開時に処理水質が悪化することがある。
【0008】
そのため、上向流通水方式で運転するイオン交換塔にあっては、一度上向流通水により採水を開始すると、採水完了(次の再生)まで連続通水し続けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-170419号公報
【文献】特開2014-213263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、従来の上向流式のイオン交換塔では、採水開始時にある所定以上の速度(高LV)で通水し、イオン交換樹脂の固定床を形成する。固定床形成後は一定の流速で原水が通水され、純水などの脱イオン水が製造されている。
【0011】
しかしながら、純水需要箇所の使用水量は、純水需要箇所の稼働状況に応じて常に変化している。そのため、イオン交換塔を備えた従来の純水製造装置では、純水需要箇所が必要とする水量の最大量の純水を製造しており、余剰な純水が製造されている。この余剰に製造された純水は、純水製造装置の給水として再利用されている。
【0012】
再生型のイオン交換塔を有する純水製造装置においては、所定量の純水を採水した後、イオン交換塔のイオン交換樹脂の再生が行われる。上記のように余剰の純水を給水として再利用する場合、給水のイオン負荷量が小さくなるため、採水できる体積が増加する。しかし余剰となる純水量の予想はできず、どれだけの余剰純水が給水として再利用されるかわからないので、原水のイオン負荷量での設計で定体積の採水量を設定している。そのため、実際のイオン負荷量が小さい場合であっても、採水量が上記定体積に到達した場合には、再生が行われる。この結果、再生頻度が多くなり、余分な再生薬品が使用されている。
【0013】
本発明は、脱イオン水需要箇所の脱イオン水の必要量の変動に対応して脱イオン水の生産量を変化させることができる上向流式イオン交換塔の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上向流式イオン交換塔の運転方法は、下側の透水性仕切板と上側の透水性仕切板との間にイオン交換樹脂の充填床を有するイオン交換塔に、給水ポンプによって原水を上向流にて通水して脱イオン水を製造する上向流式イオン交換塔の運転方法であって、通水開始当初に、イオン交換塔内に高LVにて原水を通水して、該イオン交換塔内のイオン交換樹脂の充填床を押し上げ、該充填床の上側の透水性仕切板に押し当ててイオン交換樹脂の固定床を形成する固定床形成工程と、その後、該固定床が維持される最小LVよりも大きいLVにて原水を通水し、かつ脱イオン水の需要量に応じて原水の通水量を制御する定常運転工程とを有する。
【0015】
本発明の一態様では、前記定常運転工程においては、前記イオン交換塔からの脱イオン水を流量調整バルブを介して脱イオン水タンクに導入し、該脱イオン水タンクから脱イオン水を脱イオン水の需要先に送水する上向流式イオン交換塔の運転方法であって、該脱イオン水タンク内の水位が所定範囲となるように、かつ前記イオン交換塔の固定床が維持されるように、該流量調整バルブの開度及び/又は前記給水ポンプを制御する。
【0016】
本発明の一態様では、前記給水ポンプの制御頻度が7回/min以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上向流式イオン交換塔の運転方法によると、純水需要箇所の純水の必要量の変動に対応して脱イオン水の生産量を変化させることができる。
【0018】
本発明の上向流式イオン交換塔の運転方法によると、イオン交換塔への通水量を脱イオン水の必要量に応じて制御するため、給水用のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る上向流式イオン交換塔の運転方法が適用される純水製造装置の構成図である。
【
図2】実施の形態に係る上向流式イオン交換塔の運転方法が適用される純水製造装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の上向流式イオン交換塔の運転方法が適用される純水製造装置の一例を示すものである。脱イオン処理される原水は、第1ポンプ1、配管2によりイオン交換装置3に供給され、イオン交換装置3に設けられたイオン交換塔に通水され、イオン交換樹脂と接触して脱イオン処理され、純水(脱イオン水)となる。イオン交換装置3のイオン交換塔には、原水が上向流通水される。
【0022】
イオン交換塔への通水開始に際しては、イオン交換塔に高LVにて通水し、固定床を形成する。
【0023】
イオン交換装置3からの純水は、配管4、第2ポンプ5、配管6、流量調整バルブ7及び配管8を経て純水タンク9に導入され、配管10を介して純水需要箇所へ送水される。配管6に流量計又は圧力計11が設置され、純水タンク9に水位計12が設置されており、各々の検出信号が制御器13に入力される。
【0024】
制御器13は、水位計12で検出される水位が所定範囲となるように、流量調整バルブ7の開度をPID制御等により調整する。
【0025】
純水需要箇所の純水使用量に応じて、純水タンク9から純水需要箇所への送水量が変動し、これに伴って純水タンク9内の水位が変化するが、流量調整バルブ7の開度を制御することにより、純水タンク9内の水位が所定範囲となるように、原水の処理量が制御される。即ち、純水タンク9から配管10によって純水需要箇所に送水される水量に応じて、イオン交換装置3への通水量が制御される。
【0026】
また、制御器13は、流量調整バルブ7の開度が調整された後の流量計又は圧力計11の検出流量又は圧力が所定範囲となるように、第1ポンプ1又は第2ポンプ5の送水量(モータ回転数)をインバータ制御する。なお、この流量又は圧力の所定範囲は、イオン交換装置3のイオン交換塔内で固定床が維持される流量となるように設定される。
【0027】
本発明では、このように純水需要箇所での純水の使用量に応じて、かつイオン交換塔の固定床が維持されるようにイオン交換塔への通水量が制御される。
【0028】
これにより、イオン交換システムの運転時のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【0029】
図2は、本発明の上向流式イオン交換塔の運転方法が適用される純水製造装置の別の一例を示すものである。
【0030】
図2の純水製造装置では、配管8に流量計又は圧力計11が設置され、配管6に圧力計14が設置されており、各々の検出信号と、純水タンク9の水位計12の検出信号とが制御器
13に入力されている。
【0031】
図2のその他の構成は
図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。この純水製造装置においても、イオン交換装置3への通水開始に際しては、イオン交換塔に高LVにてイオン交換塔に通水し、固定床を形成する。
【0032】
この
図2の純水製造装置では、水位計12の検出水位が所定範囲となるように流量調整バルブ7の開度が制御される。また、流量調整バルブ7の開度が調整された後の圧力計14の検出圧力と、流量計又は圧力計11の検出流量又は圧力とのいずれか又は双方が所定範囲(イオン交換塔の固定床を維持する範囲)となるように、第1ポンプ1及び第2ポンプ5の一方又は双方の回転数がインバータ制御される。
【0033】
この
図2の純水製造装置によっても、純水タンク9から配管10によって純水需要箇所に送水される水量に応じて、かつイオン交換塔の固定床が維持されるようにイオン交換装置3への通水量が制御される。これにより、純水製造装置の運転時のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【0034】
本発明では、第1ポンプ1又は第2ポンプ5の流量調整操作の頻度は、7回/min以下とされ、1回当りの流量変動幅は最大流量の半分以下とされることが好ましい。
【0035】
流量調整頻度を7回/min以下とすることが好ましい理由は、以下の通りである。
【0036】
一般に、ポンプに使用される金属は2×107回擦れると摩耗し疲労破壊する。ポンプを5年間使用すると仮定すると、2×107回/5year/365day/24h/60min=7.62回/minとなる。よって、流量調整回数は7回/min以下とすることが好ましい。
【0037】
図1又は
図2の純水製造装置は、超純水製造装置の一次純水システムに組み込むのに好適であるが他の用途に用いられてもよい。
【0038】
本発明において、イオン交換装置3の構成は特に限定されるものではない。イオン交換装置3として採用可能な構成の一例を
図3,4に示す。
【0039】
図3のイオン交換装置3では、ハウジング26内にそれぞれ円筒形のカチオン交換塔21とアニオン交換塔23とが配置されている。カチオン交換塔21及びアニオン交換塔23は、円筒の軸心線方向が鉛直方向となるように設置されている。配管2からの原水がカチオン交換塔21に導入され、上向流通水されてカチオン交換処理された後、配管25によってアニオン交換塔23に導入され、上向流通水され、アニオン交換処理されて純水となり、配管4へ流出する。
【0040】
カチオン交換塔21には強酸性カチオン交換樹脂の充填床22が設けられている。充填床22の下側及び上側にそれぞれ通水部を有した透水性仕切板21a,21bが水平に設けられている。この仕切板21a,21bの通水部は、水は通すが、カチオン交換樹脂粒子は通さないように構成されている。定常の通水状態では、充填床22は、押し上げられ、上側の仕切板21bに押しつけられて固定床となっている。
【0041】
カチオン交換樹脂の再生は、塩酸を下向流で通水することにより行われる。
【0042】
アニオン交換塔23は、強塩基性アニオン交換樹脂の充填床24を有する。充填床24の下側及び上側にそれぞれ通水部を有した透水性仕切板23a,23bが水平に設けられている。定常の通水状態では、充填床24は、押し上げられ、上側の透水性仕切板23bに押しつけられて固定床となっている。
【0043】
アニオン交換樹脂の再生は、水酸化ナトリウム水溶液を下向流通水することにより行われる。
【0044】
図4のイオン交換装置3’では、配管2からの原水がカチオン交換塔30に導入され、上向流通水されてカチオン交換処理された後、配管34によって脱炭酸塔40に送水され、脱炭酸処理される。脱炭酸処理水は、ポンプ43及び配管44によってアニオン交換塔50に導入され、上向流通水され、アニオン交換処理されて脱イオン水となり、配管4へ流出する。
【0045】
なお、カチオン交換塔30には強酸性カチオン交換樹脂の充填床31,32が設けられている。充填床31の下側、充填床32の下側及び上側にそれぞれ通水部を有した透水性仕切板30a,30b,30cが水平に設けられている。この透水性仕切板30a~30cの通水部は、水は通すが、カチオン交換樹脂粒子は通さないように構成されている。定常の通水状態では、充填床31,32は、押し上げられ、各々の上側の透水性仕切板30b又は30cに押しつけられて固定床となっている。
【0046】
カチオン交換樹脂の再生は、塩酸を下向流で通水することにより行われる。
【0047】
脱炭酸塔40は、充填材層41を有している。脱炭酸塔40内は真空ポンプ(図示略)により減圧されている。充填材層41を伝わり流れる間に水中の溶存炭酸ガスが脱ガス処理される。ピット42に落下した水がポンプ43によって送水される。
【0048】
アニオン交換塔50は、強塩基性アニオン交換樹脂の充填床51,52を有する。充填床51の下側、充填床52の下側及び上側にそれぞれ通水部を有した透水性仕切板50a,50b,50cが水平に設けられている。定常の通水状態では、充填床51,52は、押し上げられ、各々の上側の透水性仕切板50b又は50cに押しつけられて固定床となっている。
【0049】
アニオン交換樹脂の再生は、水酸化ナトリウム水溶液を下向流通水することにより行われる。
【0050】
本発明では、平均粒径500~700μm程度のイオン交換樹脂を収容したイオン交換塔への通水開始に際しての固定床形成工程では、20m/h超、例えば50m/h程度のLVで上向流通水して固定床を形成することが好ましい。
【0051】
その後の定常運転工程では、それよりも小さいLV(ただし、固定床を維持できる最小LV以上)で上向流通水し、脱イオン水の需要量の変化に対応して通水量を制御する。この最小LVは、イオン交換樹脂の浮上を維持できればよく、例えば6m/h以上20m/h以下程度で適宜設定すればよい。
【実施例】
【0052】
[実験例1]
図3のように、カチオン交換塔21及びアニオン交換塔23を1つの塔内に有するイオン交換装置3を用いて通水試験を行った。主な条件は次の通りである。
【0053】
<カチオン交換塔21の構成>
内径:700mm
カチオン交換塔21の仕切板21a,21b間の高さ:700mm
カチオン交換樹脂の固定床の高さ:572mm
カチオン交換樹脂の平均粒径:650μm
<アニオン交換塔23の構成>
内径:700mm
アニオン交換塔23の仕切板23a,23b間の高さ:1200mm
アニオン交換樹脂の固定床の高さ:1105mm
アニオン交換樹脂の平均粒径:550μm
【0054】
<被処理水>
濃度8mg/Lの食塩水溶液(27℃)
【0055】
<固定床形成工程>
LV=20m/hにて10min通水して固定床を形成した。
【0056】
<定常運転工程>
固定床を形成した後、定常運転工程を行った。この定常運転工程では、通水速度をLV=42.9m/hとLV=90.9m/hとの間で20分周期で変化させた。なお、LV=42.9m/hからLV=90.9m/hまで10minで直線的に通水量を増加させ、LV=90.9m/hからLV=42.9m/hまで10minで直線的に通水量を減少させた。総通水時間は6hとした。
【0057】
<結果>
脱イオン水の比抵抗は、定常運転工程においてLVを変化させても一定(約18MΩ・cm)であった。
【0058】
[実験例2]
<実験方法>
実験例1で用いたものと同一構成のカチオン交換塔21を構成した。
【0059】
濃度8mg/Lの食塩水溶液(27℃)を上向流にて通水した。この際、上向流速LVを0m/hから91.0m/hまで30minかけて徐々に増大させ、差圧の経時変化を測定した。結果を表1及び
図5に示す。
【0060】
また、上向流速LVが91.0m/hに到達した後、0m/hまで30minかけて徐々に減少させ、差圧の経時変化を測定した。結果を表2及び
図6に示す。
【0061】
なお、表1,2には、差圧の測定値(MPa)を充填床高さ(m)で除した値MPa/m(充填床1m当りの差圧)も記載した。
【0062】
【0063】
【0064】
<考察>
表1,2及び
図5,6の通り、LVの変化にほぼ比例して差圧が変化することが認められた。なお、LVの変化が20m/h(実験例1における固定床形成時のLV)付近を通過する際においても、差圧はLVの変化にほぼ比例して変化した。
【0065】
[実験例3]
<実験方法>
実験例1で用いたものと同一構成のアニオン交換塔23を構成した。
【0066】
濃度8mg/Lの食塩水溶液(27.6℃)を上向流にて通水した。この際、上向流速LVを0m/hから91.0m/hまで30minかけて徐々に増大させ、差圧の経時変化を測定した。結果を表3及び
図7に示す。
【0067】
また、上向流速LVが91.0m/hに到達した後、0m/hまで30minかけて徐々に減少させ、差圧の経時変化を測定した。結果を表4及び
図8に示す。
【0068】
なお、表3,4には、差圧の測定値(MPa)を充填床高さ(m)で除した値MPa/m(充填床1m当りの差圧)も記載した。
【0069】
【0070】
【0071】
<考察>
表3,4及び
図7,8の通り、LVの変化にほぼ比例して差圧が変化することが認められた。なお、LVの変化が20m/h(実験例1における固定床形成時のLV)付近を通過する際においても、差圧はLVの変化にほぼ比例して変化した。
【0072】
[実験例4-1,4-2]
<実験例4-1>
内径40mm、高さ1000mmのカラムを2本用意し、1本のカラムにH型カチオン樹脂500mLを充填し、もう1本のカラムにOH型アニオン樹脂を1000mL充填した。このカラムをカチオン充填カラム⇒アニオン充填カラムの順番で上向流で通液し、固定床を形成した。H型カチオン交換樹脂は、Na型のカチオン交換樹脂を再生したものであり、平均粒径は650μmである。OH型アニオン交換樹脂は、Cl型のアニオン交換樹脂を再生したものであり、平均粒径は550μmである。
【0073】
カチオン交換樹脂の充填床の下側、アニオン交換樹脂の充填床の下側、アニオン交換樹脂の充填床の上側には、それぞれ透水性仕切板を配置した。8mg/Lの食塩水溶液(27℃)をLV=50m/hで10min通水して固定床を形成した後、固定床が維持されるLV=20m/hで食塩水溶液を通水した。このLV=20m/hでの通水開始後の比抵抗の経時変化を
図9に示す。
【0074】
<実験例4-2>
実験例4-1において、固定床を形成することなく、前記食塩水溶液をLV=20m/hで通水を行った。通水開始後の比抵抗の経時変化を
図9に示す。
【0075】
<考察>
図9の通り、固定床を形成した場合、固定床を形成しなかった場合よりも比抵抗が約1MΩ・cm高くなることが認められた。
【符号の説明】
【0076】
3,3’ イオン交換装置
7 流量調整バルブ
9 純水タンク
11 流量計又は圧力計
12 水位計
13 制御器
14 圧力計
21 カチオン交換塔
21a,21b 透水性仕切板
22 カチオン交換樹脂
23 アニオン交換塔
23a,23b 透水性仕切板
24 アニオン交換樹脂
30 カチオン交換塔
30a,30b,30c 透水性仕切板
31,32 カチオン交換樹脂
40 脱炭酸塔
50 アニオン交換塔
50a,50b,50c 透水性仕切板
51,52 アニオン交換樹脂
【要約】
【課題】脱イオン水需要箇所の脱イオン水の必要量の変動に対応して脱イオン水の生産量を変化させることができる上向流式イオン交換塔の運転方法を提供する。
【解決手段】下側の透水性仕切板と上側の透水性仕切板との間にイオン交換樹脂の充填床を有するイオン交換塔に、給水ポンプによって原水を上向流にて通水して脱イオン水を製造する上向流式イオン交換塔の運転方法であって、通水開始当初に、イオン交換塔内に高LVにて原水を通水して、該イオン交換塔内のイオン交換樹脂の充填床を押し上げ、該充填床の上側の透水性仕切板に押し当ててイオン交換樹脂の固定床を形成する固定床形成工程と、その後、該固定床が維持される最小LVよりも大きいLVにて原水を通水し、かつ脱イオン水の需要量に応じて原水の通水量を制御する定常運転工程とを有する上向流式イオン交換塔の運転方法。
【選択図】
図1