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特許7593492ワークの両面研磨装置および両面研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ワークの両面研磨装置および両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20241126BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20241126BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241126BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241126BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/08
B24B49/04 Z
B24B49/12
H01L21/304 621A
H01L21/304 622S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023525410
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010113
(87)【国際公開番号】W WO2022254856
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021094673
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】高梨 啓一
(72)【発明者】
【氏名】東 真吾
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015122(JP,A)
【文献】特開2019-118975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/08
B24B 49/04
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤および下定盤を有する回転定盤と、該回転定盤の中心部に設けられたサンギアと、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアと、前記上定盤と前記下定盤との間に設けられ、ワークを保持する1つ以上のウェーハ保持孔が設けられたキャリアプレートとを備えるワークの両面研磨装置であって、
前記上定盤または前記下定盤は、該上定盤または下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の監視穴を有し、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの厚みを前記1つ以上の監視穴からリアルタイムに計測可能な、1つ以上のワーク厚み計測器を備えるワークの両面研磨装置において、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングを決定する演算部であって、該演算部は、
前記ワーク厚み計測器によって計測されたワークの厚みデータをワーク毎に分類する第1工程と、
ワーク毎に、
ワークの厚みデータからワークの形状成分を抽出する第2工程と、
抽出したワークの形状成分の各々について、測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する第3工程と、
特定されたワーク上のワーク径方向の位置および前記ワークの形状成分から、ワークの形状分布を算出する第4工程と、
算出したワークの形状分布からワーク全体の形状指標を求める第5工程と、
求めたワーク毎のワーク全体の形状指標が、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク全体の形状指標の目標値と前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値の、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたワーク全体の形状指標の設定値となるタイミングを、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとして決定する第6工程と、
を行い、決定された前記ワークの両面研磨を終了するタイミングに両面研磨を終了させる、演算部を備えることを特徴とするワークの両面研磨装置。
【請求項2】
前記ワーク全体の形状指標の設定値Yは、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク全体の形状指標の目標値をA、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク全体の形状指標の実績値をB、前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく前記目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(1)で表される、請求項1に記載のワークの両面研磨装置。ただし、式(1)における補正量Eは、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値をF、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲の下限値をG、上限値をH、定数をI、調整感度定数をb(0<b≦1)として、下記の式(2)で表される。
【数1】
【数2】
【請求項3】
前記第3工程において、前記サンギアの中心と前記監視穴の中心との間の距離、前記キャリアプレートの自転角度および前記キャリアプレートの公転角度を実測して前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定するか、あるいは前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数の様々な条件について前記ワークの厚みを計測することが可能な区間をシミュレーションにより算出し、算出した計測可能区間と、実際に計測が可能だった区間とが最も一致する前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数を特定して、前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する、請求項1または2に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項4】
前記第6工程は、前記ワーク全体の形状指標と研磨時間との関係を直線で近似し、近似した直線から前記ワーク全体の形状指標が前記設定値となる研磨時間を前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとする、請求項1~3のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項5】
前記第5工程において、前記ワークの形状成分と前記ワーク上のワーク径方向の位置との関係を偶関数で近似し、前記ワーク全体の形状指標は、近似した偶関数の最大値および最小値に基づいて決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項6】
前記第1工程において、前記ワークの厚みデータが連続して測定された時間間隔に基づいて、前記厚みデータをワーク毎に分類する、請求項1~5のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項7】
前記第2工程において、前記ワークの厚みデータと研磨時間との関係を2次関数で近似し、前記ワークの厚みデータと近似した2次関数との差を前記ワークの形状成分とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項8】
ワークを保持する1つ以上のウェーハ保持孔が設けられたキャリアプレートにワークを保持し、該ワークを上定盤および下定盤からなる回転定盤で挟み込み、前記回転定盤の中心部に設けられたサンギアの回転と、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアの回転とにより、前記キャリアプレートの自転および公転を制御し、これにより、前記回転定盤と前記キャリアプレートとを相対回転させて前記ワークの両面を同時に研磨するワークの両面研磨方法において、
前記上定盤または前記下定盤は、該上定盤または該下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の監視穴を有し、
前記ワークの両面研磨方法は、前記ワークの両面研磨中に、
前記ワークの両面研磨中に前記ワークの厚みを前記1つ以上の監視穴からリアルタイムに計測可能な1つ以上のワーク厚み計測器によって計測されたワークの厚みデータをワーク毎に分類する第1工程と、
ワーク毎に、
ワークの厚みデータからワークの形状成分を抽出する第2工程と、
抽出したワークの形状成分の各々について、測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する第3工程と、
特定されたワーク上のワーク径方向の位置および前記ワークの形状成分から、ワーク全体の形状分布を算出する第4工程と、
算出したワークの形状分布からワークの形状指標を求める第5工程と、
求めたワーク毎のワーク全体の形状指標が、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク全体の形状指標の目標値と前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値の、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたワーク全体の形状指標の設定値となるタイミングを、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとして決定する第6工程と、
を備え、決定された前記ワークの両面研磨を終了するタイミングに両面研磨を終了することを特徴とするワークの両面研磨方法。
【請求項9】
前記ワーク全体の形状指標の設定値Yは、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク全体の形状指標の目標値をA、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク全体の形状指標の実績値をB、前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく前記目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(1)で表される、請求項8に記載のワークの両面研磨方法。ただし、式(1)における補正量Eは、前回のバッチの両面研磨後に別途求めたワーク外周部の形状指標の実績値をF、今回のバッチの両面研磨後に別途求めるワーク外周部の形状指標の目標範囲の下限値をG、上限値をH、定数をI、調整感度定数をb(0<b≦1)として、下記の式(2)で表される。
【数3】
【数4】
【請求項10】
前記第3工程において、前記サンギアの中心と前記監視穴の中心との間の距離、前記キャリアプレートの自転角度および前記キャリアプレートの公転角度を実測して前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定するか、あるいは前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数の様々な条件について前記ワークの厚みを計測することが可能な区間をシミュレーションにより算出し、算出した計測可能区間と、実際に計測が可能だった区間とが最も一致する前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数を特定して、前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する、請求項8または9に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項11】
前記第6工程は、前記ワーク全体の形状指標と研磨時間との関係を直線で近似し、近似した直線から前記ワーク全体の形状指標が前記設定値となる研磨時間を前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとする、請求項8~10のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項12】
前記第5工程において、前記ワークの形状成分と前記ワーク上のワーク径方向の位置との関係を偶関数で近似し、前記ワーク全体の形状指標は、近似した偶関数の最大値および最小値に基づいて決定される、請求項8~11のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項13】
前記第1工程において、前記ワークの厚みデータが連続して測定された時間間隔に基づいて、前記厚みデータをワーク毎に分類する、請求項8~12のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項14】
前記第2工程において、前記ワークの厚みデータと研磨時間との関係を2次関数で近似し、前記ワークの厚みデータと近似した2次関数との差を前記ワークの形状成分とする、請求項8~13のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの両面研磨装置および両面研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研磨に供するワークの典型例であるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの製造において、より高精度なウェーハの平坦度品質や表面粗さ品質を得るために、ウェーハの表裏面を同時に研磨する両面研磨工程が一般的に採用されている。
【0003】
特に近年、半導体素子の微細化と、半導体ウェーハの大口径化により、露光時における半導体ウェーハの平坦度に対する要求が厳しくなってきているという背景から、適切なタイミングで研磨を終了させる手法が強く希求されている。
【0004】
一般的な両面研磨においては、研磨初期では、ウェーハの全面形状は、上に凸の形状であり、ウェーハ外周でも大きなダレ形状が見られる。このとき、ウェーハの厚みはキャリアプレートの厚みより十分に厚い。次に、研磨が進むと、ウェーハの全面形状は、平坦に近づくものの、ウェーハ外周ではダレ形状が残っている。このとき、ウェーハの厚みは、キャリアプレートの厚みより少し厚い状態である。さらに研磨が進むと、ウェーハの全面形状は、ほぼ平坦な形状となり、ウェーハ外周のダレ量が小さくなる。このとき、ウェーハの厚みとキャリアプレートの厚みは、ほぼ等しい。その後、研磨を進めると、ウェーハの形状が段々と中心部が凹んだ形状となり、ウェーハの外周が切上がり形状(すなわち、ウェーハ径方向外側に向かって厚みが増加する形状)となる。その際、ウェーハの厚みは、キャリアプレートの厚みより薄い状態となる。
【0005】
以上のことから、全面および外周の平坦度の高いウェーハを得るために、ウェーハの厚みがキャリアプレートの厚みにほぼ等しくなるまでウェーハの研磨を行うのが一般的であり、作業者が研磨時間を調整することにより、研磨量を制御していた。
【0006】
ところが、作業者による研磨時間の調整では、研磨副資材を交換するタイミングや、装置を停止するタイミングのずれなど、研磨環境による影響を大きく受けてしまい、研磨量を必ずしも正確に制御できず、結局作業者の経験に頼るところが大きかった。
【0007】
これに対し、例えば、特許文献1では、上定盤の上方(または下定盤の下方)の監視穴(貫通孔)から研磨中のウェーハの厚みをリアルタイムで計測し、当該計測結果に基づいて研磨の終了タイミングを判定することのできるウェーハの両面研磨装置が提案されている。
【0008】
特許文献1に記載された両面研磨装置では、両面研磨を終了するタイミングを計測したウェーハの厚みに基づいて行っているため、予め設定された厚みにおいて研磨を終了することはできる。しかし、研磨後のウェーハの形状が、目標としている形状と一致しない問題があった。
【0009】
そこで、本出願人は、特許文献2において、両面研磨中のウェーハの厚みをリアルタイムで計測し、計測したウェーハの厚みからウェーハ全体の形状指標を求め、両面研磨中に、ウェーハ全体の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる両面研磨装置を提案した。
【0010】
また、本出願人は、特許文献3において、特許文献2に記載された発明をさらに改良し、ワークの両面研磨装置における研磨パッド、キャリアプレート、スラリー等の副資材のライフ変動を考慮して、ウェーハの両面研磨のバッチ処理を繰り返し行った場合にも、ウェーハ全体の形状が目標とする形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる両面研磨装置および両面研磨方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2010-030019号公報
【文献】特開2019-118975号公報
【文献】特開2020-15122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、半導体デバイスの微細化・高集積化が益々進行し、デバイス形成領域はウェーハ径方向外側に年々拡大している。そのため、ウェーハ外周部に対しても高い平坦性が要求されるようになっており、ウェーハ全体の形状のみならず、ウェーハ外周部の形状についても目標とする形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる両面研磨装置へのニーズが高まっている。この点、特許文献3に記載された両面研磨装置においては、両面研磨を終了するタイミングを決定する際に、ウェーハ外周部の形状については考慮させておらず、この点において改良の余地が残されていた。
【0013】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、両面研磨中に、ワーク全体およびワーク外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができるワークの両面研磨装置および両面研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]上定盤および下定盤を有する回転定盤と、該回転定盤の中心部に設けられたサンギアと、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアと、前記上定盤と前記下定盤との間に設けられ、ワークを保持する1つ以上のウェーハ保持孔が設けられたキャリアプレートとを備えるワークの両面研磨装置であって、
前記上定盤または前記下定盤は、該上定盤または下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の監視穴を有し、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの厚みを前記1つ以上の監視穴からリアルタイムに計測可能な、1つ以上のワーク厚み計測器を備えるワークの両面研磨装置において、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングを決定する演算部であって、該演算部は、
前記ワーク厚み計測器によって計測されたワークの厚みデータをワーク毎に分類する第1工程と、
ワーク毎に、
ワークの厚みデータからワークの形状成分を抽出する第2工程と、
抽出したワークの形状成分の各々について、測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する第3工程と、
特定されたワーク上のワーク径方向の位置および前記ワークの形状成分から、ワークの形状分布を算出する第4工程と、
算出したワークの形状分布からワーク全体の形状指標を求める第5工程と、
求めたワーク毎のワーク全体の形状指標が、今回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたワーク全体の形状指標の設定値となるタイミングを、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとして決定する第6工程と、
を行い、決定された前記ワークの両面研磨を終了するタイミングに両面研磨を終了させる、演算部を備えることを特徴とするワークの両面研磨装置。
【0015】
[2]前記ワーク全体の形状指標の設定値Yは、今回のバッチにおける目標値をA、前回のバッチにおける実績値をB、前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく前記目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(1)で表される、前記[1]に記載のワークの両面研磨装置。ただし、式(1)における補正量Eは、前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値をF、今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲の下限値をG、上限値をH、定数をI、調整感度定数をb(0<b≦1)として、下記の式(2)で表される。
【数1】
【数2】
【0016】
[3]前記第3工程において、前記サンギアの中心と前記監視穴の中心との間の距離、前記キャリアプレートの自転角度および前記キャリアプレートの公転角度を実測して前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定するか、あるいは前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数の様々な条件について前記ワークの厚みを計測することが可能な区間をシミュレーションにより算出し、算出した計測可能区間と、実際に計測が可能だった区間とが最も一致する前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数を特定して、前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する、前記[1]または[2]に記載のワークの両面研磨装置。
【0017】
[4]前記第6工程は、前記ワーク全体の形状指標と研磨時間との関係を直線で近似し、近似した直線から前記ワーク全体の形状指標が前記設定値となる研磨時間を前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとする、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【0018】
[5]前記第5工程において、前記ワークの形状成分と前記ワーク上のワーク径方向の位置との関係を偶関数で近似し、前記ワーク全体の形状指標は、近似した偶関数の最大値および最小値に基づいて決定される、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【0019】
[6]前記第1工程において、前記ワークの厚みデータが連続して測定された時間間隔に基づいて、前記厚みデータをワーク毎に分類する、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【0020】
[7]前記第2工程において、前記ワークの厚みデータと研磨時間との関係を2次関数で近似し、前記ワークの厚みデータと近似した2次関数との差を前記ワークの形状成分とする、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【0021】
[8]ワークを保持する1つ以上のウェーハ保持孔が設けられたキャリアプレートにワークを保持し、該ワークを上定盤および下定盤からなる回転定盤で挟み込み、前記回転定盤の中心部に設けられたサンギアの回転と、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアの回転とにより、前記キャリアプレートの自転および公転を制御し、これにより、前記回転定盤と前記キャリアプレートとを相対回転させて前記ワークの両面を同時に研磨するワークの両面研磨方法において、
前記上定盤または前記下定盤は、該上定盤または該下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の監視穴を有し、
前記ワークの両面研磨方法は、前記ワークの両面研磨中に、
前記ワーク厚み計測器によって計測されたワークの厚みデータをワーク毎に分類する第1工程と、
ワーク毎に、
ワークの厚みデータからワークの形状成分を抽出する第2工程と、
抽出したワークの形状成分の各々について、測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する第3工程と、
特定されたワーク上のワーク径方向の位置および前記ワークの形状成分から、ワークの形状分布を算出する第4工程と、
算出したワークの形状分布からワーク全体の形状指標を求める第5工程と、
求めたワーク毎のワーク全体の形状指標が、今回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたワーク全体の形状指標の設定値となるタイミングを、前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとして決定する第6工程と、
を備え、決定された前記ワークの両面研磨を終了するタイミングに両面研磨を終了することを特徴とするワークの両面研磨方法。
【0022】
[9]前記ワーク全体の形状指標の設定値Yは、今回のバッチにおける目標値をA、前回のバッチにおける実績値をB、前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく前記目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(3)で表される、前記[8]に記載のワークの両面研磨方法。ただし、式(3)における補正量Eは、前回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の実績値をF、今回のバッチにおける前記ワーク外周部の形状指標の目標範囲の下限値をG、上限値をH、定数をI、調整感度定数をb(0<b≦1)として、下記の式(4)で表される。
【数3】
【数4】
【0023】
[10]前記第3工程において、前記サンギアの中心と前記監視穴の中心との間の距離、前記キャリアプレートの自転角度および前記キャリアプレートの公転角度を実測して前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定するか、あるいは前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数の様々な条件について前記ワークの厚みを計測することが可能な区間をシミュレーションにより算出し、算出した計測可能区間と、実際に計測が可能だった区間とが最も一致する前記上定盤の回転数、前記キャリアプレートの公転数および前記キャリアプレートの自転数を特定して、前記形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する、前記[8]または[9]に記載のワークの両面研磨方法。
【0024】
[11]前記第6工程は、前記ワーク全体の形状指標と研磨時間との関係を直線で近似し、近似した直線から前記ワーク全体の形状指標が前記設定値となる研磨時間を前記ワークの両面研磨を終了するタイミングとする、前記[8]~[10]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【0025】
[12]前記第5工程において、前記ワークの形状成分と前記ワーク上のワーク径方向の位置との関係を偶関数で近似し、前記ワーク全体の形状指標は、近似した偶関数の最大値および最小値に基づいて決定される、前記[8]~[11]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【0026】
[13]前記第1工程において、前記ワークの厚みデータが連続して測定された時間間隔に基づいて、前記厚みデータをワーク毎に分類する、前記[8]~[12]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【0027】
[14]前記第2工程において、前記ワークの厚みデータと研磨時間との関係を2次関数で近似し、前記ワークの厚みデータと近似した2次関数との差を前記ワークの形状成分とする、前記[8]~[13]のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、両面研磨中に、ワーク全体およびワーク外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨装置の上面図である。
図2図1における、A-A断面図である。
図3】異常値が除去されたウェーハの厚みデータの一例を示す図である。
図4図3に示した厚みデータから分離された1枚のウェーハWの厚みデータを示す図である。
図5図4に示したウェーハの厚みデータを2次関数で近似して得られたウェーハの平均厚みの時間変動を示す図である。
図6図4に示したウェーハの厚みデータから抽出されたウェーハ表面の形状成分の時間変動を示す図である。
図7】ウェーハの厚みが計測されたある時点でのキャリアプレートおよびウェーハの位置関係の一例を示す図である。
図8】(a)は図6に示した形状分布の時間変動の、研磨時間500秒から1000秒までの拡大図であり、(b)は(a)から得られたウェーハの形状分布である。
図9】GBIRとESFQDとの相関を示す模式図である。
図10】ウェーハ全体の形状指標の平均値と研磨時間との関係を示す図である。
図11】直線で近似したウェーハ全体の形状指標を示す図である。
図12】本発明によるワークの両面研磨方法のフローチャートである。
図13】両面研磨後のシリコンウェーハのGBIRおよびESFQDを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(ワークの両面研磨装置)
以下、本発明のワークの両面研磨装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨装置の上面図であり、図2は、図1におけるA-A断面図である。図1図2に示すように、この両面研磨装置1は、上定盤2およびそれに対向する下定盤3を有する回転定盤4と、回転定盤4の回転中心部に設けられたサンギア5と、回転定盤4の外周部に円環状に設けられたインターナルギア6とを備えている。図2に示すように、上下の回転定盤4の対向面、すなわち、上定盤2の研磨面である下面側及び下定盤3の研磨面である上面側には、それぞれ研磨パッド7が貼布されている。
【0031】
また、図1図2に示すように、この装置1は、上定盤2と下定盤3との間に設けられ、ワークを保持する1つ以上(図示例では1つの)のワーク保持孔8を有する複数のキャリアプレート9を備えている。なお、図1では、複数のキャリアプレート9のうちの1つのみが示されている。また、ワーク保持孔8の数は1つ以上であればよく、例えば3つとすることもできる。図示例では、ワーク保持孔8にワーク(本実施形態ではウェーハW)が保持されている。
【0032】
ここで、この装置1は、サンギア5とインターナルギア6とを回転させることにより、キャリアプレート9に、公転運動および自転運動の遊星運動をさせることができる、遊星歯車方式の両面研磨装置である。すなわち、研磨スラリーを供給しながら、キャリアプレート9を遊星運動させ、同時に上定盤2および下定盤3をキャリアプレート9に対して相対的に回転させる。これにより、上下の回転定盤4に貼布した研磨パッド7とキャリアプレート9のワーク保持孔8に保持したウェーハWの両面とを摺動させてウェーハWの両面を同時に研磨することができる。
【0033】
さらに、図1図2に示すように、本実施形態の装置1では、上定盤2は、該上定盤2の上面から研磨面である下面まで貫通した1つ以上の監視穴10が設けられている。図示例では、監視穴10は、ウェーハWの中心付近を通過する位置に1つ配置されている。なお、この例では、監視穴10は、上定盤2に設けているが、下定盤3に設けてもよく、上定盤2および下定盤3のいずれかに監視穴10を1つ以上設ければよい。また、図1図2に示す例では、監視穴10を1つ設けているが、上定盤2の周上(図1における二点鎖線上)に複数配置してもよい。ここで、図2に示すように、監視穴10は上定盤2の上面から研磨パッド7の下面まで貫通している。
【0034】
また、図2に示すように、この装置1は、ウェーハWの両面研磨中に、ウェーハWの厚みを1つ以上の(図示例では1つの)監視穴10からリアルタイムで計測可能な、1つ以上の(図示例で1つの)ワーク厚み計測器11を、図示例で上定盤2の上方に備えている。この例では、ワーク厚み計測器11は、波長可変型の赤外線レーザ装置である。例えば、このワーク厚み計測器11は、ウェーハWにレーザ光を照射する光学ユニットと、ウェーハWから反射されたレーザ光を検出する検出ユニットと、検出したレーザ光からウェーハWの厚みを計算する演算ユニットを備えることができる。このようなワーク厚み計測器11によれば、ウェーハWに入射させたレーザ光の、ウェーハWの表側の表面で反射した反射光と、ウェーハWの裏面で反射した反射光との光路長の差からウェーハWの厚みを計算することができる。なお、ワーク厚み計測器11は、ウェーハWの厚みをリアルタイムで計測することができるものであればよく、上記のような赤外線レーザを用いたものには特に限定されない。なお、ワーク厚み計測器11は、監視穴10を有する上定盤2(監視穴10が下定盤3に設けられている場合には、下定盤3)には固定されておらず、上定盤2(監視穴10が下定盤3に設けられている場合には、下定盤3)と一体になって回転しない。
【0035】
さらに、図2に示すように、本実施形態の両面研磨装置1は制御部12を備えている。図2に示すように、この例では、制御部12は、上下定盤2、3、サンギア5、インターナルギア6およびワーク厚み計測器11に接続されている。
【0036】
そして、本実施形態の両面研磨装置1は、ウェーハWの両面研磨中に、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングを決定する演算部13を備えている。演算部13は、制御部12に接続されている。この演算部13は、ワーク厚み計測器11によって測定されたワーク厚みデータを取得し、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングを決定する。以下、赤外線レーザで構成されたワーク厚み計測器11が1台、上定盤2に設けられた監視穴10の数が上定盤2の周方向に等間隔に5個設けられており、キャリアプレート9の数が5枚、各キャリアプレート9にワークとしてのウェーハWが1枚保持されている場合を例に、演算部13の処理について説明する。
【0037】
まず、演算部13は、ワーク厚み計測器11によって計測されたウェーハWの厚みデータを、ウェーハW毎に分類する(第1工程)。ワーク厚み計測器11によるウェーハWの厚み計測は、ワーク厚み計測器11から照射されたレーザ光が上定盤2の監視穴10を通過してウェーハWの表面に照射される場合に、正しく計測される。
【0038】
これに対して、レーザ光が監視穴10を通過せず、上定盤2の上面に照射された場合や、レーザ光が監視穴10を通過するものの、ウェーハWの表面ではなく、キャリアプレート9の表面に照射される場合には、ウェーハWの厚みは取得されない。以下、ワーク厚み計測器11によって、ウェーハWの厚みが計測される時間的に連続な区間を「計測可能区間」、ウェーハWの厚みが正しく計測されなかった区間を「計測不可能区間」と呼ぶ。
【0039】
上記計測可能区間において計測されたデータであっても、計測されたデータのばらつきが大きく、ウェーハWの形状を正しく評価することができない場合がある。そのような場合には、計測可能区間において計測されたデータを監視穴10毎に平均化することにより、ウェーハWの形状を評価することができる。
【0040】
具体的には、上述のように、上定盤2は厚み計測用の監視穴10を5個有しているため、上定盤2を、例えば20rpm(3秒周期)で回転させると、0.6秒周期で、ワーク厚み計測器11からのレーザ光が監視穴10を通過する。また、監視穴10の直径(例えば、15mm)を通過するのに要する時間が0.01秒である場合には、ある監視穴10の計測可能区間と次の計測可能区間との間の時間間隔、すなわち計測不可能区間が0.01秒以上0.59秒以下となる。そのため、計測不可能区間が上記0.01秒以上0.59秒以下となった場合には、それまで測定された連続データを監視穴10のうちの1つで連続計測されたデータと見做して平均化処理し、隣の監視穴10へ移動したと判断する。また、ワーク厚み計測器11直下に監視穴10が通過したとしても、ウェーハWが存在していないために、計測不可能区間となる場合がある。そのため、現在計測された監視穴10から2つ隣の監視穴10へ移動する場合には、計測可能区間と次の計測可能区間との間の時間間隔、すなわち計測不可能区間は0.59秒以上1.19秒以下となる。
【0041】
また、上述のように平均化されたデータにおいても、例えば、ウェーハ最外周部の厚みが測定された場合等に異常値を含む場合があり、このような異常値を含む場合には、ウェーハWの形状を正しく評価することはできない場合がある。そこでまず、計測された厚みデータから、異常値を除去することが好ましい。
【0042】
上記異常値の除去は、キャリアプレート9の初期厚みや、ウェーハWの初期厚み、等に基づいて行うことができる。また、ある程度のウェーハ厚みの計測値が得られた段階で、統計的に、例えば標準偏差が所定の値(例えば、0.2μm)を超えるデータを異常値として除去することもできる。以下、異常値が除去された値を「正常値」と呼ぶ。図3は、異常値が除去されたウェーハWの厚みデータの一例を示している。
【0043】
通常の研磨条件でウェーハWの両面研磨を行うと、ウェーハWの厚みの計測可能区間が現れた後に、計測不可能区間が現れ、再度計測可能区間が現れるというように、計測可能区間の出現と計測不可能区間の出現が交互に繰り返される。ここで、計測不可能区間の出現は、レーザ光が照射されるウェーハWが入れ替わることを示している。従って、このような計測不可能区間の出現を指標として、計測可能区間で計測された厚みデータをウェーハW毎に分類することができる。
【0044】
なお、本発明者らの検討の結果、計測可能区間においてあるキャリアプレート9に保持されたウェーハWの厚みを計測し、その後計測不可能区間が出現し、次に出現した計測可能区間において厚みが計測されるウェーハWは、隣接するキャリアプレート9に保持されたものとは限らず、2つ以上離れたキャリアプレート9に保持されたものである場合があることが判明した。
【0045】
具体的には、ラベルA、B、C、D、Eが付されたキャリアプレート9が環状に順に並べられており、A、B、C、D、E、A、B…の順でワーク厚み計測器11に向かって公転する場合を考える。そして、ラベルAのキャリアプレート9に保持されたウェーハWの厚みを計測していたところ、計測不可能区間が出現し、その後に出現した計測可能区間において計測されるウェーハWが、2つ離れたラベルCのキャリアプレート9に保持されたウェーハWである場合があるのである。この場合には、隣接するキャリアプレート9のウェーハWが計測される場合よりも、計測不可能区間の時間が長い。
【0046】
そのため、計測不可能区間の時間、換言すれば、計測可能区間と計測可能区間との間の時間間隔に基づいて、例えばラベルAのキャリアプレート9のウェーハWの後に、ラベルBのキャリアプレート9のウェーハWの厚みが計測されたのか、あるいはラベルCやDのキャリアプレート9のウェーハWが計測されたのかを判定することができる。こうして、ウェーハWの厚みデータをウェーハW毎に正しく分類することができる。
【0047】
図4は、図3に示した厚みデータから分離された1つのウェーハWの厚みデータを示している。図には示さないが、その他4つのウェーハWについても、図4に示したものと同様の傾向を示すウェーハWの厚みデータが得られている。
【0048】
次に、演算部13は、ウェーハW毎に分類されたウェーハWの厚みデータに対して、以下の工程を行う。まず、演算部13は、ウェーハWの厚みデータからウェーハWの形状成分を抽出する(第2工程)。第1工程において分類されたウェーハW毎の厚みデータは、研磨時間とともに小さくなる。すなわち、ウェーハWの平均厚みは、研磨時間とともに小さくなるため、第1工程で得られた厚みデータには、ウェーハW表面の形状成分の時間変動のみならず、ウェーハWの平均厚みの時間変動も含まれている。そこで、ウェーハWの厚みデータからウェーハWの平均厚みの時間変動を除去することにより、ウェーハW表面の形状成分の時間変動を抽出する。
【0049】
上記ウェーハWの平均厚みの時間変動は、2次関数で近似することができる。図5は、図4に示したウェーハWの厚みデータを2次関数で近似して得られたウェーハWの平均厚みの時間変動を示している。この図に示すように、ウェーハWの厚みデータは、2次関数で良好にフィッティングすることができる。こうして、ウェーハWの平均厚みの時間変動を得ることができる。次に、ウェーハWの厚みデータから、上述のように得られたウェーハWの平均厚みの時間変動を差し引く。これにより、ウェーハW表面の形状成分の時間変動を抽出することができる。得られた形状成分の時間変動を図6に示す。
【0050】
続いて、演算部13は、上述のように抽出したウェーハWの形状成分の各々について、測定されたウェーハW上のウェーハ径方向の位置、すなわちウェーハ中心からの距離を特定する(第3工程)。図7は、ウェーハWの厚みが計測されたある時点でのキャリアプレート9およびウェーハWの位置関係の一例を示している。この図において、厚み計測位置(すなわち、ウェーハ厚み計測器11の位置、または監視穴10の中心の位置)は基準線上に位置しており、かつ、サンギア5の中心から厚み計測位置までの距離(すなわち、サンギア5の中心から監視穴10の中心までの距離)は設計値であるため、既知の定数である。同様に、回転定盤4やサンギア5、キャリアプレート9の半径、キャリアプレート9の中心からウェーハWの中心までの距離も設計値であるため、既知の定数である。
【0051】
また、αはキャリアプレート9の公転角度であり、基準位置(基準線)と、サンギア5の中心とキャリアプレート9の中心とを結ぶ線との間の角度である。さらに、βはキャリアプレート9の自転角度であり、サンギア5の中心とキャリアプレート9の中心とを結ぶ線と、キャリアプレート9の中心とウェーハWの中心とを結ぶ線との間の角度を示している。
【0052】
本発明による両面研磨装置1に限らず、両面研磨装置においては、設定した条件で回転定盤4やキャリアプレート9等が回転しているかを確認するために、基準位置(基準線)からの角度(もしくは移動量)を「エンコーダ」と呼ばれる装置を使用して監視し、制御している。よって、ウェーハWの厚みが計測された時点での公転角度αおよび自転角度βは特定することができる。そして、特定した公転角度αからキャリアプレート9の中心位置を、自転角度βからウェーハWの中心位置を、それぞれ求めることができる。上述のように、サンギア5の中心から厚み計測位置(すなわち、監視穴10の中心)までの距離は分かっているため、演算部13は、ウェーハWの中心からの厚みの計測位置までの距離、すなわちウェーハWの形状成分の各々のウェーハ径方向の位置を求めることができる。
【0053】
このように、設計値である回転定盤4やサンギア5、キャリアプレート9の半径、キャリアプレート9の中心からウェーハWの中心までの距離、ワーク厚み計測器11の位置(すなわち、サンギア5の中心から監視穴10の中心までの距離)、さらにウェーハWの厚み計測時の(1)キャリアプレート9の公転角度α、(2)キャリアプレート9の自転角度βにより、ウェーハWの形状成分の各々のウェーハ径方向の位置を求めることができる。
【0054】
上述のように、(1)キャリアプレートの公転角度αおよび(2)キャリアプレート9の自転角度βは、実測によって求めることができる。しかし、これらの実測には高い精度が求められる。そのため、シミュレーションによって、研磨開始から一定時間における(例えば、200秒)計測可能区間のパターンから(1)および(2)を特定し、ウェーハWの形状成分の各々のウェーハ径方向の位置を求めることが好ましい。
【0055】
具体的には、研磨条件である上定盤2の回転数(rpm)、キャリアプレート9の公転数(rpm)およびキャリアプレート9の自転数(rpm)と、初期パラメータであるウェーハWの初期位置(図7における基準位置(基準線)からのウェーハWの公転角度αおよび自転角度β)とを用いて、演算部13は、ウェーハWの厚みが計測された時間パターン(すなわち、計測可能区間のパターン)と、それに紐付く厚みが計測された位置(すなわち、ウェーハWの形状成分のウェーハ径方向の位置)をシミュレーションによって求めることができる。
【0056】
そして、演算部13は、シミュレーションにより得られた計測可能区間のパターンと、実測による計測可能区間のパターンが最もよく一致する上定盤2の回転数(rpm)、キャリアプレート9の公転数(rpm)およびキャリアプレート9の自転数(rpm)を求め、厚みが計測された位置を特定する。こうして演算部13は、シミュレーションによりウェーハWの形状成分の各々のウェーハ径方向の位置を求めることができる。
【0057】
次いで、演算部13は、特定されたウェーハW上のウェーハ径方向の位置およびウェーハWの形状成分から、ウェーハWの形状分布を算出する(第4工程)。これは、異なる計測位置に対する形状成分を用いることによって算出することができる。本発明においては、ある研磨時間tでのウェーハWの形状分布は、研磨時間t-Δtから研磨時間tまでに測定された厚みデータから得られた形状成分を用いて求められる。
【0058】
図8(a)は、図6に示した形状分布の時間変動の、研磨時間500秒から1000秒までの拡大図を示している。例えば、研磨時間880秒でのウェーハWの形状分布を、図示例では680秒から880秒までの形状成分を用いて求める。得られた形状分布を図8(b)に示す。なお、上記説明から明らかなように、得られたウェーハWの形状分布は、研磨時間tにおける形状分布ではなく、研磨時間t-Δtからtまでの間のウェーハWの平均的な形状分布を示している。
【0059】
上記形状分布を求めるために使用する形状成分の時間範囲は、単位時間あたりの測定可能データ数に依存し、研磨条件に依存する。時間範囲が長いほど、形状分布の精度を高めることができる一方、形状分布の算出に要する時間が長くなる。これに対して、時間範囲が短いほど、形状分布の算出に要する時間が短い一方、形状分布の精度が劣る。本発明者らは、例えば75秒以上の時間範囲の形状成分を用いてウェーハWの形状分布を求めることによって、形状分布の算出に要する時間の長さを抑えつつ、形状分布を高精度に求めることができることを見出した。200秒以上300秒以下の時間範囲の形状成分を用いてウェーハWの形状分布を求めることがより好ましい。
【0060】
次に、上述のように算出したウェーハWの形状分布から、ウェーハW全体の形状指標を求める(第5工程)。ウェーハWの平坦度を表す指標の1つに、GBIR(Global Backside Ideal Range)が挙げられる。GBIRは、ウェーハ全体のグローバルな平坦度を表す指標である。GBIRは、ウェーハWの裏面を基準面としたウェーハWの厚みの最大値と最小値との差として求めることができる。
【0061】
本発明においては、ウェーハW全体の形状指標としてGBIRを用いる。ただし、得られたGBIRについても、形状分布の算出に用いた形状成分のt-Δtからtまでの時間範囲での平均的なGBIRであり、厳密な意味でのGBIRではない。そこで、本発明においては、形状分布の最大値と最小値との差を「ウェーハW全体の形状指標」として表記する。
【0062】
なお、図8(b)に示した例のように、形状成分の数が不十分な場合には、形状分布を偶関数で近似し、得られた偶関数で表されウェーハWの形状分布から最大値および最小値を求め、求めた最大値と最小値との差からウェーハW全体の形状指標を算出することができる。
【0063】
上記偶関数としては、ウェーハWの中心近傍での形状成分が得られている場合には、ウェーハWの形状分布を良好に再現することができることから、4次関数を用いることが好ましい。一方、ウェーハWの中心近傍での形状分布が得られていない場合には、ウェーハWの形状分布を良好に再現することができることから、2次関数を用いることが好ましい。
【0064】
以上のようにウェーハW毎にウェーハW全体の形状指標が求められた後、演算部13は、求めたウェーハW毎のウェーハW全体の形状指標が、今回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたウェーハW全体の形状指標の設定値となるタイミングを、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングとして決定する(第6工程)。
【0065】
上述のように、本出願人は、特許文献3において、両面研磨装置における研磨パッド、キャリアプレート、スラリー等の副資材のライフ変動を考慮して、ウェーハWの両面研磨のバッチ処理を繰り返し行った場合にも、ウェーハW全体の形状が目標とする形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる両面研磨装置を提案した。
【0066】
特許文献3に提案した両面研磨装置においては、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングを決定する際に、前回のバッチにおいて両面研磨されたウェーハW全体の形状指標の実績値と目標値との差に基づいて、今回のバッチにおける両面研磨を終了するタイミングに対応するウェーハW全体の形状指標の設定値を補正する。なお、上記実施形態における目標値は、今回のバッチにおける目標値であるが、前回のバッチにおける目標値と異なっていてもよい。また、今回のバッチにおける目標値と前回のバッチにおける目標値とが等しい場合には、前回のバッチにおいて両面研磨されたウェーハW全体の形状指標の実績値と前回のバッチにおける目標値との差に基づいて、今回のバッチにおける両面研磨を終了するタイミングに対応するウェーハW全体の形状指標の設定値を補正してもよい。
【0067】
具体的には、両面研磨のバッチ処理において、今回のバッチにおける両面研磨を終了する際のウェーハW全体の形状指標の設定値を、目標値をA、前回のバッチにおける実績値をB、定数をD、前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の設定値をC、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(5)で表されるYとする。これにより、両面研磨のバッチ処理を繰り返し行った場合にも、ウェーハW全体の形状が目標とする形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる。
【数5】
【0068】
しかし、特許文献3に提案した両面研磨装置においては、両面研磨を終了するタイミングを決定するに際し、ウェーハW外周部の形状を考慮していない。そのため、ウェーハW全体の形状が目標の形状となったタイミングで両面研磨を終了させることができるものの、両面研磨後のウェーハW外周部の形状が目標の形状とはならない場合があった。
【0069】
図9は、ウェーハWのGBIRとESFQDとの関係を示す模式図である。ESFQD(Edge Site flatness Front reference least sQuare Deviation)は、ウェーハW外周部の平坦度を表わす指標であり、その絶対値の最大値が小さいほどウェーハW外周部の平坦度が高いことを示す。図9に示すように、ウェーハW全体の形状指標であるGBIRと、ウェーハW外周部の形状指標であるESFQDとは、ある程度相関している。すなわち、ウェーハWが凸形状であれば、ウェーハWのESFQDは-の値となり、ロールオフする傾向にある。一方、ウェーハWが凹形状の場合には、ウェーハWのESFQDは+の値となり、ロールアップする傾向にある。
【0070】
本発明者らは、両面研磨中に、ウェーハW全体の形状のみならず、ウェーハW外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができるウェーハWの両面研磨装置について鋭意検討した。その結果、第5工程において求めたウェーハW毎のウェーハW全体の形状指標が、今回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたウェーハW全体の形状指標の設定値となるタイミングを、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングとして決定することが有効であることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0071】
そして、本発明者らは、多数枚の両面研磨後のウェーハWについて、両面研磨を終了させる際のウェーハW全体およびウェーハW外周部の形状指標の設定値と実績値との関係について詳細に調査した。その結果、今回のバッチにおける両面研磨を終了する際のウェーハW全体の形状指標の設定値を、今回のバッチにおける目標値をA、前回のバッチにおける実績値をB、前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく上記目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(6)で表されるYとすることにより、ウェーハW全体の形状のみならず、ウェーハW外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができることを見出した。ただし、式(6)における補正量Eは、前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の実績値をF、今回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の目標範囲の下限値をG、上限値をH、定数をI、調整感度定数をb(0<b≦1)として、下記の式(7)で表される。
【数6】
【数7】
【0072】
上記式(6)における定数Dは、実際の両面研磨後の多数枚のウェーハWについて、目標値Aおよび実績値Bに対して統計解析を行うことにより算出することができる。例えば、後述する実施例においては、定数Dの値は0.665693と算出された。また、調整感度定数aは、今回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の設定値を決定する際の前回のバッチにおける形状指標の実績値の影響を調整するための定数である。aを0超え1以下の値にすることにより、前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標を測定する際の研磨パッド7やキャリアプレート9、スラリー等の副資材ライフの変動に伴う外乱による実績値の測定誤差の影響を低減することができる。上記aの値は、例えば0.2とすることができる。
【0073】
同様に、式(7)における定数Iは、実際の両面研磨後の多数枚のウェーハWについて、目標範囲(G以上H以下)および実績値Fに対して統計解析を行うことにより算出することができる。例えば、後述する実施例においては、定数Iの値は-88.77と算出された。また、調整感度定数bは、今回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の設定値を決定する際の前回のバッチにおける形状指標の実績値の影響を調整するための定数である。bを0より大きく1以下の値にすることにより、前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標を測定する際の研磨パッド7やキャリアプレート9、スラリー等の副資材ライフの変動に伴う外乱による実績値の測定誤差の影響を低減することができる。上記bの値は、例えば0.7とすることができる。
【0074】
さらに、ウェーハW外周部の形状指標の目標範囲(G以上H以下)は、一意に設定されるものではなく、仕様に基づいて適切な範囲に設定される。本発明においては、式(7)に示すように、ウェーハW外周部の形状指標の実績値Fが目標範囲に入っている場合には、補正値Eは0とし、補正しない。一方、目標範囲の下限値Gを下回った場合には、実績値Fと下限値Gとの差に応じた値を補正値Eに設定し、目標範囲の上限値Hを上回った場合には、実績値Fと上限値Hとの差に応じた値を補正値Eに設定する。なお、式(7)におけるウェーハW外周部の形状指標の目標範囲について、上限値Hと下限値Gとを同じ値とする、すなわち、目標値と実績値Fとの差に基づいて、補正値Eを決定してもよい。
【0075】
なお、今回のバッチにおける目標値A、形状指標の目標範囲が前回のバッチの値、範囲とは異なる場合、両者の差が小さい場合には、上記式(6)および(7)を問題なく用いることができる。一方、両者の差が大きい場合には、調整感度定数aおよびbの値を適切に調整したり、目標範囲の上限値Hおよび下限値Gを調整したりすることができる。
【0076】
このように、演算部13は、ウェーハW毎にウェーハW全体の形状指標を求めた後、求めたウェーハW毎のウェーハW全体の形状指標が、今回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるウェーハW全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるウェーハW外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたウェーハW全体の形状指標の設定値となるタイミングを、ウェーハWの両面研磨を終了するタイミングとして決定し、決定されたタイミングに両面研磨を終了させることにより、両面研磨中に、ウェーハW全体およびウェーハW外周部の形状を目標としている形状で両面研磨を終了させることができる。
【0077】
なお、本第6工程では、演算部13は、第5工程においてウェーハ毎に求めたウェーハW全体の形状指標の平均値を求め、この平均値に基づいてウェーハWの両面研磨を終了するタイミングを決定する。図10は、ウェーハWの形状指標の平均値と研磨時間との関係を示している。実際には、演算部13は、ウェーハW全体の形状指標が上記式(6)から求まる設定値Yとなったタイミングで両面研磨を終了する。
【0078】
一般に、両面研磨に供するウェーハWの表面は、研磨前は比較的平坦であり、両面研磨を開始すると、ウェーハの表面形状が変化して平坦度は一旦悪化してGBIRは増加する。しかし、両面研磨を継続すると平坦度が向上し、GBIRは減少に転じる。GBIRは、両面研磨を継続してゆくと、研磨時間に対して直線的に減少する傾向を示す。図10に示したウェーハW全体の形状指標についても、値が減少に転じた後には直線的に減少しており、GBIRと同様の傾向が示している。よって、ウェーハW全体の形状指標の値が減少に転じた後に、図11に示すように、ウェーハW全体の形状指標を直線で近似することにより、ウェーハW全体の形状指標が上記設定値となるタイミングを予測することができる。両面研磨を終了するタイミングを、ウェーハW全体の形状指標が上記設定値Yとなるタイミングとすることにより、ウェーハW全体の形状およびウェーハW外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了することができる。
【0079】
(ワークの両面研磨方法)
次に、本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨方法について説明する。本実施形態の方法では、例えば、図1図2に示した装置を用いてウェーハWなどのワークの両面研磨を行うことができる。図1図2に示す装置構成については既に説明しているため、再度の説明を省略する。
【0080】
図12は、本発明によるワークの両面研磨方法のフローチャートを示している。本発明の方法は、上記した本発明によるワークの両面研磨装置における演算部13が、両面研磨を終了するタイミングを決定する方法と同じであるため、簡単に説明し、詳細な説明は省略する。
【0081】
まず、タイミングの決定に先立って、ワーク厚み計測器11によって測定されたウェーハWなどのワークの厚みデータから異常値を除去し、正常値のみからなるワークの厚みデータを得る。ステップS1において、こうして異常値が除去されたワークの厚みデータを、ワーク毎に分離する(第1工程)。これは、例えばワークの厚みデータが連続して測定された時間間隔に基づいて行うことができる。
【0082】
次に、ステップS2において、ワーク毎に、ワークの厚みデータからワークの形状成分を抽出する(第2工程)。これは、例えばワークの厚みデータを2次関数で近似し、ワークの形状成分の時間変動から、2次関数で近似して得られたワークの平均厚みの時間変動を引くことによって行うことができる。
【0083】
続いて、ステップS3において、抽出したワークの形状成分の各々について、測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定する(第3工程)。これは、上述のように、サンギア5の中心と監視穴10の中心との間の距離、キャリアプレート9の自転角度βおよびキャリアプレート9の公転角度αを実測して形状成分の各々が測定されたワーク上のワーク径方向の位置を特定するか、あるいは上定盤2の回転数、キャリアプレート9の公転数およびキャリアプレート9の自転数の様々な条件についてワークの厚みを計測することが可能な区間をシミュレーションにより算出し、算出した計測可能区間と、実際に計測が可能だった区間とが最も一致する上定盤2の回転数、キャリアプレート9の公転数およびキャリアプレート9の自転数を特定して、形状成分の各々が測定されたウェーハ上のウェーハ径方向の位置を特定することができる。
【0084】
次に、ステップS4において、特定されたワーク上のワーク径方向の位置およびワークの形状成分から、ワークの形状分布を算出する(第4工程)。形状分布を求める際に形状成分の数が少ない場合には、偶関数で近似することにより形状分布を得ることができる。
【0085】
続いて、ステップS5において、算出したワークの形状分布からワーク全体の形状指標を求める(第5工程)。本発明においては、ワークの形状分布の最大値と最小値との差をワーク全体の形状指標として用いる。
【0086】
次いで、ステップS6において、求めたワーク毎のワーク全体の形状指標が、今回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の目標値と前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の実績値との差、および前回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づいて決定されたワーク全体の形状指標の設定値となるタイミングを、上記ワークの両面研磨を終了するタイミングとして決定する(第6工程)。このステップでは、ワークの形状指標と研磨時間との関係を直線で近似し、近似した直線からワークの形状指標が所定値(例えば、ゼロ)となる研磨時間をワークの両面研磨を終了するタイミングとすることができる。
【0087】
そして、上記両面研磨を終了するタイミングに対応するワーク全体の形状指標の設定値を、今回のバッチにおける目標値をA、前回のバッチにおける実績値をB、前回のバッチにおけるワーク全体の形状指標の設定値をC、定数をD、前回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の実績値の今回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の目標範囲からのずれに基づく目標値Aへの補正量をE、調整感度定数をa(0<a≦1)として、下記の式(8)で表されるYとすることにより、ワーク全体の形状のみならず、ワーク外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができる。なお、式(8)におけるEは、式(9)のように表すことができる。式(9)において、Iは定数、Fは前回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の実績値、Gは今回のバッチにおけるワーク外周部の形状指標の目標範囲の下限値、Hは目標範囲の上限値、bは調整感度定数(0<b≦1)である。
【数8】
【数9】
【0088】
最後に、ステップS7において、決定されたワークの両面研磨を終了するタイミングに両面研磨を終了する。こうして、ワーク全体の形状およびワーク外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了することができる。
【0089】
以上のステップS1~S7の処理は、例えば上述した本発明による両面研磨装置1に設けられた演算部13により行うことができる。また、上記処理の少なくとも一部を、両面研磨装置に接続された別のコンピュータで行ったり、クラウドネットワーク上で処理したりすることもできる。
【実施例
【0090】
(発明例)
直径300mmのシリコンウェーハを5枚用意し、これらのシリコンウェーハに対して、図12に示したフローチャートに従って両面研磨を施した。また、ステップS6において、両面研磨を終了するタイミングに対応するシリコンウェーハ全体の形状指標の設定値は、式(6)および(7)を用いて決定した。両面研磨後のシリコンウェーハのGBIRを図13(b)、ESFQDを図13(d)に示す。
【0091】
(従来例)
発明例と同様に、直径300mmのシリコンウェーハ5枚に対して両面研磨を施した。ただし、ステップS6において、シリコンウェーハ外周部の形状指標の実績値の目標範囲からのずれを考慮せず、補正量Eの値を0とした。その他の条件は発明例と全て同じである。両面研磨後のシリコンウェーハのGBIRを図13(a)、ESFQDを図13(c)に示す。
【0092】
図13(a)と図13(b)との比較から、発明例のGBIRのばらつきは、従来例と同程度であることが分かる。これに対して、図13(c)と図13(d)とを比較すると、発明例のESFQDのばらつきは、従来例に比べて大きく抑制されていることが分かる。このように、本発明により、ウェーハ全体の形状指標のばらつきを従来例と同程度に維持しつつ、ウェーハ外周部の形状指標のばらつきを大きく抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、両面研磨中に、ワーク全体およびワーク外周部の形状が目標としている形状となるタイミングで両面研磨を終了させることができるため、半導体ウェーハ製造業において有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 両面研磨装置
2 上定盤
3 下定盤
4 回転定盤
5 サンギア
6 インターナルギア
7 研磨パッド
8 ワーク保持孔
9 キャリアプレート
10 監視穴
11 ワーク厚み計測器
12 制御部
13 演算部
W ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
図13