(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】石英ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/06 20060101AFI20241126BHJP
C03B 20/00 20060101ALI20241126BHJP
C03C 4/08 20060101ALI20241126BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20241126BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C03C3/06
C03B20/00 D
C03B20/00 E
C03B20/00 F
C03C4/08
G01N21/33
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2024541672
(86)(22)【出願日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2024015548
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2023074616
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023149423
(32)【優先日】2023-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】漆谷 想太
(72)【発明者】
【氏名】原田 美徳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 壽也
(72)【発明者】
【氏名】新井 一喜
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115525(JP,A)
【文献】登録実用新案第3016061(JP,U)
【文献】特開2009-274947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/06
C03B 20/00
C03C 4/08
G01N 21/33
G02B 5/22
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が2.5以上である、石英ガラス。
【請求項2】
厚み1mmのときの波長252nmの光の内部直線透過率が70%以下である、請求項1に記載の石英ガラス。
【請求項3】
厚み1mmのときの波長222nmの光の内部直線透過率が30%以上である、請求項1又は2に記載の石英ガラス。
【請求項4】
厚み1mmのときの波長222nmの光の内部直線透過率が、厚み1mmのときの波長252nmの光の内部直線透過率よりも高い、請求項
1又は2に記載の石英ガラス。
【請求項5】
波長252nmの吸光係数が30000cm
-1以上である、請求項
1又は2に記載の石英ガラス。
【請求項6】
波長222nmの吸光係数が200000cm
-1以下である、請求項
1又は2に記載の石英ガラス。
【請求項7】
シリカ源及び錫源を含む原料組成物を10Pa以下の真空下、20℃以上1900℃以下で熱処理する第1熱処理工程と、
前記第1熱処理工程において熱処理された前記原料組成物を、窒素雰囲気下、1400℃以上1900℃以下で熱処理する第2熱処理工程と、
を含む、請求項
1又は2に記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記シリカ源がシリカ粉末である、請求項7に記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記シリカ源がシリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカ粉末である、請求項7に記載の石英ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石英ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
波長222nm近傍の紫外線(以下、「222nmUV光」ともいう。)は生体への影響が極めて小さく、これを用いた殺菌・ウィルス不活化技術が注目されている。222nmUV光の光源として広く使用されているKrClエキシマランプは、222nmUV光のみならず、波長252nm近傍の紫外線(以下、「252nmUV光」ともいう。)も放出する。252nmUV光は生体への影響が懸念されるため、生体を対象とするKrClエキシマランプを使用して殺菌やウィルス不活性化をするためには、これを遮蔽する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1及び2では、252nmUV光を遮蔽する光学フィルターを備えた殺菌装置が提案されている。また、非特許文献1では、CVD法やガスフレーム法により製造された錫を含有した石英ガラスが、252nmUV光を遮蔽することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6025756号公報
【文献】特許第6973603号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Glass Physics and Chemistry, Vol. 28, No. 6, 2002, pp. 379-388.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2では、ガラス板上にHfO2層およびSiO2層を交互に33層積層されてなる誘電体多層膜から構成された光学フィルターが開示されている。しかしながら、このような光学フィルターは、製造に煩雑な工程を要する。さらに、誘電体多層膜は曲面状に成膜をすることが困難であるのみならず、KrClエキシマランプからの光(以下、「エキシマ光」ともいう)の照射角度によって遮蔽する波長域が変化する。そのため、特許文献1や特許文献2に開示されるような光学フィルターを備えたエキシマ光は、殺菌・ウィルス不活化に有効な照射面積が限定的であった。また、非特許文献1で開示された石英ガラスは、吸収スペクトルを示すFig.1などからも明らかなように、252nmUV光のみならず、222nmUV光までも遮蔽してしまう。
【0007】
本開示は、252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過することができる石英ガラス及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特許請求の範囲の記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が2.5以上である、石英ガラス。
[2] 厚み1mmのときの波長252nmの光の内部直線透過率が70%以下である、[1]に記載の石英ガラス。
[3] 厚み1mmのときの波長222nmの光の内部直線透過率が30%以上である、[1]又は[2]に記載の石英ガラス。
[4] 厚み1mmのときの波長222nmの光の内部直線透過率が、厚み1mmのときの波長252nmの光の内部直線透過率よりも高い、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の石英ガラス。
[5] 波長252nmの吸光係数が30000cm-1以上である、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の石英ガラス。
[6] 波長222nmの吸光係数が200000cm-1以下である、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の石英ガラス。
[7] シリカ源及び錫源を含む原料組成物を10Pa以下の真空下、20℃以上1900℃以下で熱処理する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程において熱処理された前記原料組成物を、窒素雰囲気下、1400℃以上1900℃以下で熱処理する第2熱処理工程と、を含む、[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の石英ガラスの製造方法。
[8] 前記シリカ源がシリカ粉末である、[7]に記載の石英ガラスの製造方法。
[9] 前記シリカ源がシリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカ粉末である、[7]に記載の石英ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、特許文献1及び2に示すような光学フィルターを必須とすることなく、なおかつ、従来の錫含有石英ガラスと比べて、252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過することができる石英ガラス及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る石英ガラスについて、実施形態の一例を示して説明する。本明細書で開示した各構成及びパラメータは任意の組合せとすることができ、また、本明細書で開示した値の上限及び下限は任意の組合せとすることができる。
【0011】
本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、なおかつ波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が2.5以上である石英ガラスである。
【0012】
本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であることで、252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過することができる。錫の含有量が5ppm未満であると、252nmの光の透過を抑制できなくなる。また、錫の含有量が150ppm超であると、252nmの光だけでなく、222nmの光の透過までもが抑制されてしまう。
【0013】
本実施形態の石英ガラスにおいて、錫の含有量は、5ppm以上150ppm以下であればよいが、波長252nmの光の透過抑制と波長222nmの光の透過のバランスをより向上する観点からは、10ppm以上120ppm以下であること好ましく、15ppm以上80ppm以下であることがより好ましく、15ppm以上50ppm以下が更に好ましく、15ppm以上30ppm以下がより更に好ましい。なお、本明細書におけるppmは、質量ppmを意味する。
【0014】
本実施形態の石英ガラスにおいて、錫の含有量は、ICP発光分光分析により以下の方法で測定することができる。石英ガラスを粉砕し、フッ酸に溶解後、硫酸を添加し、加熱してフッ酸を揮散させることで、測定用残渣を得る。当該測定用残渣を硝酸に溶解させ試料溶液とする。一般的なICP発光分光分析装置(例えば、製品名:5800 ICP―OES、アジレント・テクノロジー社製)を使用して、当該試料溶液を以下の条件により誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定すればよい。
周波数 : 27MHz
出力 : 1.2kW
観測モード : アキシャル
検出器 : CCD検出器
走査モード : 連続
試料導入 : サイクロンネブライザー
得られた錫及び異金属元素の測定値から、石英ガラスの錫含有量及び異金属元素の含有量を求めることができる。
【0015】
なお、本実施形態の石英ガラスにおいて、錫は、イオン、金属、化合物(例えば、酸化物)などのいずれの形態で含有されていてもよいが、酸化物(例えば、SnO2)で含有されていることが好ましい。
【0016】
本実施形態の石英ガラスは、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が2.5以上である。波長252nmの光の透過抑制と波長222nmの光の透過のバランスをより向上する観点からは、本実施形態の石英ガラスは、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。なお、本実施形態の石英ガラスにおいて、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、20以下、10以下、若しくは7.0以下とすることができる。波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比は、前述した上限値及び下限値のいずれの組合せであってもよいが、波長252nmの光の透過抑制と波長222nmの光の透過のバランスをより向上する観点からは、2.5以上20以下であることが好ましく、3.0以上10以下であることがより好ましく、4.0以上7.0以下であることがよりさらに好ましい。
【0017】
本実施形態の石英ガラスの吸光係数は、石英ガラス中の気泡で散乱する光と石英ガラスの表面(界面)で反射する光の影響を補正して取り除いた吸光係数であり、下記(1)式から算出することができる。下記(1)式から算出される、波長252nmの吸光係数(以下、「α252nm」ともいう)を、波長222nmの吸光係数(以下、「α222nm」ともいう)で除すことにより、α222nmに対するα252nmの比(以下、「α252nm/α222nm」ともいう)を求めることができる。なお、吸光係数は、光が媒質に入射したときに、媒質がどれくらいの光を吸収するのかを表すパラメーターであり、吸光係数が高いほど石英ガラスを透過する光の量が少ないことを意味する。
【0018】
-LOG(Ti)=α×d×c ・・・(1)
上記(1)式において、Tiは波長W(nm)の光についての石英ガラスの内部直線透過率[%]を表し、αは波長W(nm)の光についての石英ガラスの吸光係数[cm-1]を表し、dは測定試料の厚み[cm]を表し、cは石英ガラスにおける錫の含有量[g/g]を表す。
【0019】
上記(1)式におけるTiは、下記(2)式から算出することができる。
Ti=100×Tc/TM ・・・(2)
上記(2)式において、Tiは波長W(nm)の光についての石英ガラスの内部直線透過率[%]を表し、Tcは気泡による光の散乱の影響を補正した波長W(nm)の光についての測定試料の直線透過率[%]を表し、TMは下記(7)式から求まる波長W(nm)の光についての石英ガラスの理論直線透過率[%]を表す。
【0020】
上記(2)式におけるTcは、下記(3)式から算出することができる。
Tc=T×TM(790-800nm)/T(790-800nm) ・・・(3)
上記(3)式において、Tcは気泡による光の散乱の影響を補正した波長W(nm)の光についての測定試料の直線透過率[%]を表し、Tは波長W(nm)の光についての測定試料の実測直線透過率[%]を表し、TM(790-800nm)は下記(4)式から求まる波長790nmから800nmの光についての石英ガラスの理論直線透過率の平均値[%]を表し、T(790-800nm)は波長790nmから800nmの光についての測定試料の実測直線透過率の平均値[%]を表す。
【0021】
上記(3)式におけるTは、測定試料の波長W(nm)の光についての実測直線透過率[%]を、紫外可視分光光度計を用いて後述する条件で測定することにより求めることができる。
【0022】
上記(3)式におけるT
M(790-800nm)は、下記(4)式から算出することができる。
上記(4)式において、T
M(790-800nm)は波長790nmから800nmの光についての石英ガラスの理論直線透過率の平均値[%]を表し、Rは下記(5)式から求まる波長i(nm)の光についての石英ガラスの表面反射率[-]を表す。なお、波長i(nm)は、上記(4)式から理解できるように、波長790(nm)以上800(nm)以下の範囲内における1(nm)刻みの各波長を表す。
【0023】
上記(4)式におけるRは、下記(5)式から算出することができる。
R=(1-N)2/(1+N)2 ・・・(5)
上記(5)式において、Rは波長i(nm)の光についての石英ガラスの表面反射率[-]を表し、Nは下記(6)式(Malitsonの式)から求まる波長i(nm)の光についての石英ガラスの屈折率[-]を表す。
【0024】
上記(5)式におけるNは、下記(6)式から算出することができる。
N2=1+a1×λ2/(λ2-b1)+a2×λ2/(λ2-b2)
+a3×λ2/(λ2-b3) ・・・(6)
上記(6)式において、Nは波長i(nm)の光についての石英ガラスの屈折率[-]を表し、λは波長i[nm]を表し、a1乃至a3及びb1乃至b3は、それぞれ、a1=0.6961663、a2=0.4079426、a3=0.8974794、b1=0.0684043、b2=0.1162414、b3=9.896161を表す。
【0025】
上記(3)式におけるT(790-800nm)は、後述する条件で、測定試料を紫外可視分光光度計により測定し、波長790nm以上800nm以下の範囲内における1nm刻みの各波長における実測直線透過率を加算平均することにより求めることができる。
【0026】
上記(2)式におけるTMは、下記(7)式から算出することができる。
TM=100×(1-R)2 ・・・(7)
上記(7)式において、TMは波長W(nm)の光についての石英ガラスの理論直線透過率[%]を表し、Rは下記(8)式から求まる波長W(nm)の光についての石英ガラスの表面反射率[-]を表す。
【0027】
上記(7)式におけるRは、下記(8)式から算出することができる。
R=(1-N)2/(1+N)2 ・・・(8)
上記(8)式において、Rは波長W(nm)の光についての石英ガラスの表面反射率[-]を表し、Nは下記(9)式から求まる波長W(nm)の光についての石英ガラスの屈折率[-]を表す。
【0028】
上記(8)式におけるNは、下記(9)式から算出することができる。
N2=1+a1×λ2/(λ2-b1)+a2×λ2/(λ2-b2)
+a3×λ2/(λ2-b3) ・・・(9)
上記(9)式において、Nは波長W(nm)の光についての石英ガラスの屈折率[-]を表し、λは波長W[nm]を表し、a1乃至a3及びb1乃至b3は、それぞれ、a1=0.6961663、a2=0.4079426、a3=0.8974794、b1=0.0684043、b2=0.1162414、b3=9.896161を表す。
【0029】
上記(3)式におけるT及びT(790-800nm)の算出に用いられる、紫外可視分光光度計による測定試料の測定には、以下の測定条件を用いることができる。なお、紫外可視分光光度計による測定において、光の透過方向は、測定試料の厚さ方向とする。また、測定に用いる紫外可視分光光度計は、当該技術分野で一般的に使用されている紫外可視分光光度計を用いることができ、例えば、日本分光社製のV-770を用いることができる。
データ取り込み間隔 : 1nm
バンド幅 : 5.0nm
レスポンス : 0.06秒
光源 : 重水素ランプ、ハロゲンランプ
走査モード : 連続
走査速度 : 400nm/分
測定範囲 : 200nmから900nm
【0030】
紫外可視分光光度計により測定する測定試料には、表面を研磨した厚さ0.1mm以上5.0mm以下の石英ガラス(本実施形態の石英ガラス)を用いることができる。なお、測定試料とする石英ガラスは、所定の厚み以下に切削されたのち、表面を研磨して厚さ0.1mm以上5.0mm以下の測定試料としてもよい。石英ガラスの表面研磨には、例えば、Struers社製のラボポール30などの当該技術分野で一般的に使用されている研磨機を使用することができ、石英ガラス表面の算術平均粗さRaが3nm以下となるまで平滑に研磨することが好ましい。石英ガラスの表面研磨は、紫外可視分光光度計による測定において、石英ガラスに透過させる光が入射する表面(以下、「入射面」)ともいう)と、石英ガラスに透過させる光が出射する表面(以下、「出射面」)の少なくとも2つの表面に対して行われればよい。また、石英ガラスの切削には、一般的な平面研削盤(例えば、製品名:PSG-52SA1、岡本工作機械製作所社製)を用いることができる。なお、石英ガラス表面(つまり、測定試料表面)の算術平均粗さRaは、一般的な表面粗さ測定装置(例えば、製品名:光学式表面性状測定機 ZYGO New View 7100、ザイゴ社製)を用い、JIS B 0601―2001に準拠し、下記の条件にて、測定すればよい。
測定倍率:対物レンズ×50倍 ズーム×1倍
測定範囲:172μm×141μm
【0031】
本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、かつ、α252nm/α222nmが2.5以上であれば、α252nmやα222nmなどのその他の構成について特に限定されるものではない。
【0032】
透過する光を生体の照射により適したものにする観点からは、本実施形態の石英ガラスのα252nmは、30000cm-1以上であることが好ましく、40000cm-1以上であることがより好ましく、90000cm-1以上であることがよりさらに好ましく、150000cm-1以上であることが特に好ましい。なお、α252nmの上限は、特に限定されるものではないが、例えば、700000cm-1以下、600000cm-1以下、500000cm-1以下、若しくは400000cm-1以下とすることができる。α252nmは、前述した上限値及び下限値のいずれの組合せであってもよいが、透過する光を生体の照射により適したものにする観点からは、30000cm-1以上700000cm-1以下であることが好ましく、40000cm-1以上600000cm-1以下であることがより好ましく、90000cm-1以上500000cm-1以下であることがよりさらに好ましく、150000cm-1以上400000cm-1以下であることが特に好ましい。
【0033】
透過する光による殺菌性能やウィルス不活化性能をより向上する観点からは、本実施形態の石英ガラスのα222nmは、200000cm-1以下であることが好ましく、150000cm-1以下であることがより好ましく、100000cm-1以下であることがさらにより好ましく、80000cm-1以下であることが特に好ましい。なお、α222nmの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、5000cm-1以上、10000cm-1以上、15000cm-1以上、若しくは20000cm-1以上とすることができる。α222nmは、前述した上限値及び下限値のいずれの組合せであってもよいが、透過する光による殺菌性能やウィルス不活化性能をより向上する観点からは、5000cm-1以上200000cm-1以下であることが好ましく、10000cm-1以上150000cm-1以下であることがより好ましく、15000cm-1以上100000cm-1以下であることがよりさらに好ましく、20000cm-1以上80000cm-1以下であることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、かつ、α252nm/α222nmが2.5以上であれば、その組成についても特に限定されるものではない。例えば、本実施形態の石英ガラスは、錫とシリカ(SiO2)のみにより構成されてもよく、錫とシリカ(SiO2)に加えて、これら以外の他の成分が1種または2種以上含まれていてもよい。222nmの光の透過をより向上する観点からは、本実施形態の石英ガラスは、錫とシリカ(SiO2)のみにより構成されていることが好ましい。特に、本実施形態の石英ガラスは、222nmの光の透過をより向上する観点から、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属(以下、これをまとめて「異金属元素」ともいう。)を含まないことが好ましい。異金属元素を含まないとは、本実施形態の石英ガラスにおける異金属元素の含有量が、検出限界値以下であることであり、測定装置の検出能力にもよるが、例えば、0ppm以上3ppm以下であることが例示できる。本実施形態の石英ガラスにおける異金属元素の含有量は、より好ましくは0ppm超3ppm以下であり、特に好ましくは0ppm超2ppm以下である。また、異金属元素の含有量が0ppmであるとは、異金属元素を含まないことを意味する。
【0035】
本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、かつ、α252nm/α222nmが2.5以上であれば、その直線透過率についても特に限定されるものではない。透過する光を生体の照射により適したものにする観点からは、本実施形態の石英ガラスは、厚み1mmのときの波長252nmの光の内部直線透過率(以下、「内部直線透過率252nm」ともいう)が70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることが特に好ましい。また、透過する光による殺菌性能やウィルス不活化性能をより向上する観点からは、本実施形態の石英ガラスは、厚み1mmのときの波長222nmの光の内部直線透過率(以下、「内部直線透過率222nm」ともいう)が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
【0036】
なお、本実施形態の石英ガラスにおいて、厚み1mmのときの内部直線透過率252nmの下限値は、特に限定されるものではなく、例えば、0%以上とすることができる。また、本実施形態の石英ガラスにおいて、厚み1mmのときの内部直線透過率222nmの上限値は、特に限定されるものではなく、例えば、100%以下とすることができる。
【0037】
本実施形態の石英ガラスにおける内部直線透過率は、石英ガラス中の気泡で散乱する光と石英ガラスの表面(界面)で反射する光の影響を補正して取り除いた直線透過率である。本実施形態の石英ガラスにおいて、厚み1mmのときの内部直線透過率は、測定試料の厚みd(紫外可視分光光度計により測定する測定試料の厚み)と、上記(2)式で求められるTiを用いた、下記(10)式から算出することができる。
T1mm=(Ti/100)0.1/d×100 ・・・(10)
上記(10)式において、T1mmは厚み1mmのときの石英ガラスの波長W(nm)の光についての内部直線透過率[%]を表し、Tiは波長W(nm)の光についての石英ガラスの内部直線透過率[%]を表し、dは測定試料の厚み[cm]を表す。
【0038】
本実施形態の石英ガラスでは、波長222nmの光がより透過しやすくなり、波長252nmの光の透過がより抑制されるほど、252nmの光の透過抑制と222nmの光の透過のバランスが向上する。このため、本実施形態の石英ガラスにおいて、厚み1mmのときの内部直線透過率222nmは、厚み1mmのときの内部直線透過率252nmよりも高いことが好ましく、厚み1mmのときの内部直線透過率252nmよりも20%以上高いことがより好ましく、厚み1mmのときの内部直線透過率252nmよりも30%以上高いことがよりさらに好ましく、厚み1mmのときの内部直線透過率252nmよりも40%以上高いことが特に好ましい。なお、厚み1mmのときの内部直線透過率222nmから厚み1mmのときの内部直線透過率252nmを減じたときの差(内部直線透過率222nm-内部直線透過率252nm)の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、80%以下、70%以下、60%以下、若しくは、50%以下とすることができる。
【0039】
本実施形態の石英ガラスの形態は、特に限定されるものではないが、煩雑な製造工程を要さないことから、単層の石英ガラスであることが好ましい。
【0040】
ここで、石英ガラスのα252nm/α222nmは、石英ガラスに含有される成分(錫など)の含有量だけに依存して変化するものでなく、その外にも、例えば、製造方法に依存して変化する。このため、石英ガラスの錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であったとしても、その石英ガラスのα252nm/α222nmが必ずしも2.5以上であるとは言えない。従って、本実施形態の石英ガラスは、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下となり、かつ、α252nm/α222nmが2.5以上となるような製造方法で製造される。以下、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、かつ、α252nm/α222nmが2.5以上である石英ガラス(つまり、本実施形態の石英ガラス)を製造する方法の一例について説明する。
【0041】
本実施形態の石英ガラスは、シリカ源及び錫源を含む原料組成物を10Pa以下の真空下、20℃以上1900℃以下の温度で熱処理する第1熱処理工程と、第1熱処理工程において熱処理された原料組成物を、窒素雰囲気下、1400℃以上1900℃以下で熱処理する第2熱処理工程を含む製造方法により製造することができる。
【0042】
原料組成物に含まれるシリカ源としては、シリカ粉末を例示することができる。シリカ源としてのシリカ粉末には、市販のシリカ粉末、シリコンアルコキシドの加水分解により得られるシリカ粉末及び四塩化珪素を酸水素炎等で加水分解して得られるシリカ粉末の群から選ばれる1以上を用いることができる。
【0043】
原料組成物に含まれる錫源としては、錫化合物を例示することができる。錫化合物の具体例としては、酸化錫(SnO2)、塩化錫(IV)、水酸化錫(IV)及び硫酸錫(II)の群から選ばれる1以上を例示することができ、酸化錫であることが好ましい。錫化合物は、より均等にシリカ源と混合させる観点から、粉末の形態であることが好ましい。原料組成物における錫源の含有量は、製造される石英ガラスにおける錫の含有量が5ppm以上150ppm以下となる量であればよく、適宜調整することができる。
【0044】
原料組成物は、各原料(シリカ源及び錫源)の単なる混合物であってもよいが、ゾルゲル法によって取得される錫化合物含有シリカ粉末を用いてもよい。錫化合物含有シリカ粉末の製造方法は、従来公知のゾルゲル法によるシリカ粉末の製造方法において、ゾルゲル反応を行う反応溶液に錫化合物を含有させればよく、その方法は特に限定されるものではない。
【0045】
錫含有シリカ粉末の具体的な製造方法の一例としては、少なくとも錫化合物、シリコンアルコキシド及び水を混合して得た反応溶液中でゾルゲル反応を行って錫化合物含有シリカゲルを取得し、取得した錫化合物含有シリカゲルを乾燥して錫化合物含有乾燥シリカゲルを取得し、取得した錫化合物含有乾燥シリカゲルを焼成して錫化合物含有シリカ粉末を製造する方法を例示することができる。
【0046】
上述した錫化合物含有シリカ粉末の製造方法において、反応溶液におけるシリコンアルコキシドと水の含有比率(シリコンアルコキシド:水)は、従来公知の含有比率とすることができるが、例えば、質量比で10:1~1:1とすることができる。反応溶液における錫化合物の含有量は、製造される石英ガラスにおける錫の含有量が5ppm以上150ppm以下となる量であればよく、適宜設定することができる。
【0047】
上述した錫化合物含有シリカ粉末の製造方法において、錫化合物含有シリカゲルの乾燥には、従来公知の乾燥条件を用いることができ、例えば、大気中、40℃~150℃で1時間~10時間乾燥する条件を用いることができる。また、上述した錫化合物含有シリカ粉末の製造方法において、錫化合物含有乾燥シリカゲルの焼成には、従来公知の焼成条件を用いることができ、例えば、大気中、600℃~1300℃で1時間~10時間焼成する条件を用いることができる。
【0048】
上述した錫化合物含有シリカ粉末の製造方法において、ゾルゲル反応を行う反応溶液は、少なくとも錫化合物、シリコンアルコキシド及び水を含んでいればよいが、ゾルゲル反応を促進させる観点からは、これらに加えて、酸、アルカリ及び溶媒からなる群から選択される1種以上の成分をさらに含有することが好ましい。
【0049】
反応溶液に含有することができる酸としては、例えば、塩酸、硝酸及び硫酸の群から選ばれる1以上を例示することができ、塩酸及び硫酸の少なくともいずれかが好ましく、塩酸であることがより好ましい。反応溶液に含有することができるアルカリとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン及びジメチルアミンの群から選ばれる1以上を例示することができ、アンモニアであることが好ましい。反応溶液に含有することができる溶媒としては、エタノール、メタノール及びプロパノールの群から選ばれる1以上を例示することができる。反応溶液における酸の含有量は、従来公知の含有量とすることができるが、例えば、0.001mol/L以上1mol/L以下であることが例示でき、好ましくは0.001mol/L以上0.1mol/L以下である。反応溶液におけるアルカリの含有量は、従来公知の含有量とすることができるが、例えば、0.001mol/L以上1mol/L以下であることが例示でき、好ましくは0.1mol/L以上1mol/L以下である。反応溶液における溶媒の含有量は、例えば、反応溶液100体積%に対し、30体積%以上80体積%以下であることが例示でき、好ましくは40体積%以上60体積%以下である。
【0050】
原料組成物は、上述したシリカ源と錫源のみにより構成されていてもよいが、これらに加えて、シリカ源と錫源以外の他の成分が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0051】
原料組成物には、各原料(シリカ源及び錫源、並びに必要に応じて含有される他の成分)を混合した混合物がそのまま用いられてもよいが、各原料の混合物を圧縮などの方法により所定の形状に成形した成形体が用いられてもよい。
【0052】
第1熱処理工程において、原料組成物の熱処理は、20℃以上1900℃以下で行われる。第1熱処理工程における原料組成物の熱処理温度は、20℃以上1900℃以下であればよいが、20℃以上1700℃以下であることが好ましく、20℃以上1600℃以下であることがより好ましく、1000℃以上1600℃以下であることがよりさらに好ましく、1400℃以上1600℃以下であることが特に好ましい。
【0053】
第1熱処理工程において、原料組成物の熱処理は、10Pa以下の真空下で行われる。第1熱処理工程における原料組成物の熱処理時の圧力は、10Pa以下であればよいが、0.1Pa以上10Pa以下で行われることが好ましい。熱処理時の圧力は、例えば、原料組成物を収容した熱処理用容器から空気を脱気することで調整することができる。
【0054】
第1熱処理工程における原料組成物の熱処理時間は、例えば、10分以上300分以下とすることができ、30分以上90分以下であることが好ましい。
【0055】
第2熱処理工程では、第1熱処理工程において熱処理された原料組成物を、窒素雰囲気下、1400℃以上1900℃以下で熱処理する。第2熱処理工程は、第1熱処理工程において熱処理された原料組成物を前述した条件で熱処理できればよく、第2熱処理工程を実施する時期は、特に限定されるものではないが、第1熱処理工程に続けて行われることが好ましい。つまり、第2熱処理工程による熱処理は、第1熱処理工程における熱処理が完了した直後(第1熱処理工程で熱処理した原料組成物が冷却される前)に行われることが好ましい。
【0056】
第2熱処理工程において、原料組成物の熱処理は、1400℃以上1900℃以下で行われる。第2熱処理工程における原料組成物の熱処理温度は、1400℃以上1900℃以下であればよいが、1500℃以上1800℃以下であることが好ましく、1700℃以上1800℃以下であることがより好ましい。
【0057】
第2熱処理工程において、原料組成物の熱処理は、窒素雰囲気で行われる。窒素雰囲気は、原料組成物が収容される容器の余剰空間(原料組成物を除いた空間)を窒素ガスで置換した雰囲気であり、意図せず混入する窒素以外の他の気体を排除するものではない。例えば、第1の熱処理工程において内部の圧力を10Pa以下とした熱処理用容器に窒素ガスを導入することで窒素雰囲気としてもよい。
【0058】
第2熱処理工程における原料組成物の熱処理時の圧力は、例えば、100000Pa以上980000Pa以下とすることができ、100000Pa以上200000Pa以下で行われることが好ましい。
【0059】
第2熱処理工程における原料組成物の熱処理時間は、例えば、10分以上120分以下とすることができ、10分以上90分以下であることが好ましい。
【0060】
第2熱処理工程において原料組成物が熱処理されることで、本実施形態の石英ガラスが製造される。なお、第2熱処理工程では、熱処理して得られる石英ガラスを窒素雰囲気のまま放置して冷却し、窒素雰囲気で冷却された石英ガラスを本実施形態の石英ガラスとしてもよい。
【0061】
上述した第1熱処理工程及び第2熱処理工程を含む製造方法により、本実施形態の石英ガラスを製造することができる。
【0062】
以上説明した本実施形態の石英ガラスによれば、252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過することができる。本実施形態の石英ガラスが252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過できる理由は明らかになっていないが、錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、且つ、α252nm/α222nmが2.5以上となることで、石英ガラスにおける錫の分散状態や石英の状態が、252nmUV光の透過を抑制できるだけでなく、222nmUV光を透過することができるような状態に変化したものと推察される。このような本実施形態の石英ガラスは、例えば、エキシマ光の光学フィルターに適用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本開示を説明する。しかしながら、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
(錫含有量)
石英ガラスを粉砕し、フッ酸に溶解後、硫酸を添加し、加熱することでフッ酸を揮散させ、測定用残渣を得た。この測定用残渣を硝酸に溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP発光分光分析装置(製品名:5800 ICP―OES、アジレント・テクノロジー社製)を使用して、当該試料溶液を以下の条件により誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。
周波数 : 27MHz
出力 : 1.2kW
観測モード : アキシャル
検出器 : CCD検出器
走査モード : 連続
試料導入 : サイクロンネブライザー
得られた錫及び異金属元素の測定値から、石英ガラスの錫含有量、及び、異金属元素の含有量を求めた。
【0065】
(測定試料)
直径24mm、厚さ8mmの円板状の石英ガラスを用意し、これを紫外可視分光光度計(装置名:V-770、日本分光社製)で直線透過率が測定できる厚さを有する測定試料を作製した。すなわち、精密平面研削盤(装置名:PSG-52SA1、岡本工作機械製作所社製)にて、石英ガラスを視認しながら、0.5mm~3.5mmのいずれかの厚さとなるまで研削した。研削後の石英ガラスは、さらに厚み0.2mmに薄くなるまで、研磨機(ラボポール30、Struers社製)を使用して研磨し、表面(入射面及び出射面)の算術平均粗さRaを3nm以下とした測定試料を得た。なお、測定試料表面(入射面及び出射面)の算術平均粗さRaは、一般的な表面粗さ測定装置(製品名:光学式表面性状測定機 ZYGO New View 7100、ザイゴ社製)を用い、JIS B 0601―2001に準拠し、下記の条件にて測定した。
測定倍率:対物レンズ×50倍 ズーム×1倍
測定範囲:172μm×141μm
【0066】
(吸光係数)
紫外可視分光光度計(装置名:V-770、日本分光社製)を使用し、以下の条件で測定試料を測定し、波長222nmの光についての測定試料の実測直線透過率[%](上記(3)式におけるT)、波長252nmの光についての測定試料の実測直線透過率[%](上記(3)式におけるT)、及び波長790nmから800nmの光についての測定試料の実測直線透過率の平均値[%](上記(3)式におけるT(790-800nm))を求めた。なお光の透過方向は、前記試料の厚さ方向とした。
データ取り込み間隔 : 1nm
バンド幅 : 5.0nm
レスポンス : 0.06秒
光源 : 重水素ランプ、ハロゲンランプ
走査モード : 連続
走査速度 : 400nm/分
測定範囲 : 200nmから900nm
【0067】
上述した方法で求めた、錫の含有量(上記(1)式におけるc)、波長222(nm)の光についての測定試料の実測直線透過率[%](上記(3)式におけるT)、波長790nmから800nmの光についての測定試料の実測直線透過率の平均値[%](上記(3)式におけるT(790-800nm))を用いるとともに、波長W(nm)を波長222(nm)として(つまり、W=222として)、上記(1)式~上記(9)式より、波長222nmの光についての石英ガラスの吸光係数(α222nm)を求めた。同様に、上述した方法で求めた、錫の含有量(上記(1)式におけるc)、波長252(nm)の光についての測定試料の実測直線透過率[%](上記(3)式におけるT)、波長790nmから800nmの光についての測定試料の実測直線透過率の平均値[%](上記(3)式におけるT(790-800nm))を用いるとともに、波長W(nm)を波長252(nm)として(つまり、W=252として)、上記(1)式~上記(9)式より、波長252(nm)の光についての石英ガラスの吸光係数(α252nm)を求めた。また、求めたα252nmをα222nmで除すことで、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比(α252nm/α222nm)を求めた。
【0068】
(厚み1mmのときの内部直線透過率)
α222nmの算出過程で求めた、222nmの光についての石英ガラスの内部直線透過率[%](上記(10)式(上記(2)式)におけるTi)と、測定試料の厚み[cm](上記(10)式におけるd)を用いて、厚み1mmのときの波長222nmの光についての石英ガラスの内部直線透過率[%]を、上記(10)式から求めた。同様に、α252nmの算出過程で求めた、252nmの光についての石英ガラスの内部直線透過率[%](上記(10)式(上記(2)式)におけるTi)と、測定試料の厚み[cm](上記(10)式におけるd)と用いて、厚み1mmのときの石英ガラスの波長252nmの光についての内部直線透過率[%]を、上記(10)式から求めた。
【0069】
実施例1
市販のシリカ粉末(製品名:MKCシリカPS100、三菱ケミカル社製)をジェットミル粉砕し、平均粒径D50(メディアン径)が5μm以下としたシリカ粉末100gに、Sn含有量が30ppm(0.003質量%)となるよう酸化錫(SnO2)粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合し、シリカ粉末と酸化錫(SnO2)の混合粉末を得、これを原料粉末とした。
【0070】
得られた原料粉末8.0gを直径30mmの金型に充填した後、150kgf/cm2の圧力を30秒印加して成形することで成形体を得た。成形体をカーボン製の容器内に配置し、10Pa以下(検出下限以下)の真空下、1575℃で60分処理した。その後、窒素を130kPa導入し、窒素雰囲気、1775℃で20分処理した後、その窒素雰囲気のまま一晩自然放冷して本実施例の石英ガラスとした。
【0071】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が7.4ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が62405cm-1、252nmの吸光係数が250275cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が4.01、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が65.3%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が89.9%であった。
【0072】
実施例2
原料粉末のSn含有量が50ppm(0.005質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0073】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が8.9ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が77834cm-1、252nmの吸光係数が324405cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が4.17、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が51.4%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が85.3%であった。
【0074】
実施例3
原料粉末のSn含有量が70ppm(0.007質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0075】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が13ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が48927cm-1、252nmの吸光係数が227271cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が4.65、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が50.6%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が86.4%であった。
【0076】
実施例4
原料粉末のSn含有量が100ppm(0.01質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0077】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が18ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が50243cm-1、252nmの吸光係数が248744cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が4.95、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が35.7%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が81.2%あった。
【0078】
実施例5
原料粉末のSn含有量が200ppm(0.02質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0079】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が36ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が73574cm-1、252nmの吸光係数が200252cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が2.72、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が19.0%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が54.3%であった。
【0080】
実施例6
原料粉末のSn含有量が300ppm(0.03質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0081】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が67ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が52323cm-1、252nmの吸光係数が159016cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が3.04、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が8.6%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が44.6%であった。
【0082】
実施例7
原料粉末のSn含有量が500ppm(0.05質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の石英ガラスを得た。
【0083】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が100ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が41969cm-1、252nmの吸光係数が135066cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が3.22、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が4.5%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が38.0%であった。
【0084】
実施例8
エタノール(特級、純正化学社製)200mLとテトラエトキシシラン(東京化成社製)150mLを混合して得られたエタノール溶液に、純水50mL、2mol/L塩酸(富士フイルム和光純薬社製)1mL、及び、塩化錫五水和物(富士フイルム和光純薬社製)0.0117gを添加した。これに28%アンモニア水溶液(富士フイルム和光純薬社製)5mLを更に添加した後、混合して混合溶液を得た。得られた混合溶液を、大気中、120℃で一晩乾燥した後、更に、大気中、800℃で1時間焼成して、錫含有シリカ粉末を得た。得られた錫含有シリカ粉末は、シリカ粉末に対するSn含有量が100ppm(0.01質量%)であった。
【0085】
得られた錫含有シリカ粉末を原料粉末としたこと、及び、窒素雰囲気での処理を1800℃で60分処理したこと以外は実施例1と同様な方法で、本実施例の石英ガラスを得た。
【0086】
本実施例の石英ガラスは、錫含有量が56ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本実施例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が24205cm-1、252nmの吸光係数が90927cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が3.76、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が30.7%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が73.2%であった。
【0087】
比較例1
原料粉末のSn含有量が10ppm(0.001質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例の石英ガラスを得た。
【0088】
本比較例の石英ガラスは、錫含有量が3.4ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本比較例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が95318cm-1、252nmの吸光係数が149698cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が1.57、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が88.9%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が92.8%であった。
【0089】
比較例2
原料粉末のSn含有量が1000ppm(0.1質量%)となるようSnO2粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例の石英ガラスを得た。
【0090】
本比較例の石英ガラスは、錫含有量が160ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本比較例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が44609cm-1、252nmの吸光係数が186948cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が4.19、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が0.1%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が19.3%であった。
【0091】
比較例3
SnO2粉末を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例の石英ガラスを得た。
【0092】
本比較例の石英ガラスは、錫含有量が0ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本比較例の石英ガラスは、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が97.3%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が98.6%であった。
【0093】
比較例4
市販のシリカ粉末(製品名:MKCシリカPS100、三菱ケミカル社製)をジェットミル粉砕し、平均粒径D50(メディアン径)が5μm以下としたシリカ粉末100gに、Sn含有量が200ppm(0.02質量%)となるよう酸化錫(SnO2)粉末(SIGMA-ALDRICH社製)を混合し、シリカ粉末と酸化錫(SnO2)の混合粉末を得、これを原料粉末とした。
【0094】
得られた原料粉末8.0gを直径30mmの金型に充填した後、150kgf/cm2の圧力を30秒印加して成形することで成形体を得た。成形体をカーボン製の容器内に配置し、窒素を130kPa導入し、窒素雰囲気、1575℃で60分処理した後、その窒素雰囲気のまま、さらに1775℃で20分処理した。その後、窒素雰囲気のまま一晩自然放冷して本比較例の石英ガラスとした。
【0095】
本比較例の石英ガラスは、錫含有量が39ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本比較例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が527569cm-1、252nmの吸光係数が532745cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が1.01、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が0.8%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が0.9%であった。
【0096】
比較例5
実施例8と同様の方法で、錫含有シリカ粉末を得た。得られた原料粉末8.0gを直径30mmの金型に充填した後、150kgf/cm2の圧力を30秒印加して成形することで成形体を得た。成形体をカーボン製の容器内に配置し、窒素を130kPa導入し、窒素雰囲気、1575℃で60分処理した後、その窒素雰囲気まま、さらに1800℃で20分処理した。その後、窒素雰囲気のまま一晩自然放冷して本比較例の石英ガラスとした。
【0097】
本比較例の石英ガラスは、錫含有量が33ppm、異金属元素の含有量が2ppm以下(検出下限以下)であった。また、本比較例の石英ガラスは、222nmの吸光係数が766237cm-1、252nmの吸光係数が681667cm-1、吸光係数の比(α252nm/α222nm)が0.89、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が0.6%、かつ厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が0.3%であった。
【0098】
実施例及び比較例の評価結果を下記表1に示す。
【表1】
【0099】
上記表1から理解できるように、各実施例の石英ガラスは、錫の含有量が3.4ppmである比較例1よりも、厚み1mmのときの波長252nmの内部直線透過率が低くなっていた。また、各実施例の石英ガラスは、錫の含有量が160ppmである比較例2よりも、厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が高くなっていた。さらに、実施例の石英ガラスは、比較例4及び5の石英ガラスと比較しても、厚み1mmのときの波長222nmの内部直線透過率が高くなっていた。この結果から、各実施例の石英ガラスは、252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過できることが理解できた。
【0100】
(線維芽細胞への254nmをピーク波長とする紫外線照射試験)
正常ヒト成人皮膚線維芽細胞(倉敷紡績社製)を96ウェルプレート(透明プレート)へ、3.3×103cells/wellで播種し一晩培養した。一晩の培養後、各実施例及び比較例の石英ガラス(厚み3.0mm)上に96ウェルプレートを固定した。96ウェルプレートの底面から照射面までの距離が50mmとなるよう紫外線照射装置(装置名:ハンディUVランプ、アズワン社製)を配置し、石英ガラスを通過した紫外線が正常ヒト成人皮膚線維芽細胞に照射されるよう254nmをピーク波長とする紫外線(252nmの光を含む紫外線)を照射した。紫外線の照射は、96ウェルプレートの蓋を外してクリーンベンチ内で行い、照射量を変えた3つ条件(10J/cm2、15J/cm2、又は20mJ/cm2)でそれぞれ実施した。なお、コントロールとして、石英ガラスを96ウェルプレートに固定しないことは前述した条件と同様の条件で、紫外線を正常ヒト成人皮膚線維芽細胞に照射した。
【0101】
紫外線を照射してから24時間経過した後、各ウェルへWST-8試薬(同人化学社製)10μLを添加し、37℃でさらに2時間培養を行った。2時間の培養後、プレートリーダー(装置名:EnSpire、PerkinElmer社製)で450nmの吸光度を下記条件で測定し、4つのウェルにおける吸光度の平均値(以下、「測定吸光度」ともいう)を求めた。
FLASH:100回
測定高さ :7.5mm
【0102】
紫外線を照射しないこと以外はコントロール(石英ガラス無)と同様の条件で培養を行ったときの450nmの吸光度(以下、「基準吸光度」ともいう)を相対細胞数100として、下記(I)式から相対細胞数を算出した。結果を下記表2a、表2b、及び表2cに示す。
相対細胞数=(測定吸光度/基準吸光度)×100 ・・・(I)
【0103】
【0104】
表2a、表2b、及び表2cに示す通り、実施例4の石英ガラスを通して紫外線を照射したときの相対細胞数が96以上であったのに対し、比較例3の石英ガラスを通して紫外線を照射したときの相対細胞数は64以下であった。この結果から、実施例4の石英ガラスは、比較例3の石英ガラスと比較して、通過する紫外線の生体への影響を低減できることが理解できた。
【0105】
(黄色ブドウ球菌への222nmをピーク波長とする紫外線照射試験)
NBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター)培地No.702と同組成となるように、ハイポリペプトン(塩谷エムエス社製)、乾燥酵母エキス(ナカライテスク社製)、硫酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬社製)を超純水に溶解し、オートクレーブにより滅菌した培地(以下、単に「培地」ともいう)を用意した。本試験では、黄色ブドウ球菌の培養に当該培地を用いた。
【0106】
バイアル乾燥品の黄色ブドウ球菌(NBRC12732)を培地に懸濁した後、当該培地に15%の寒天粉末(富士フイルム和光純薬社製)を加えた。これをプレートに塗布して室温(24℃)で培養した。4日に一度、プレートより複数のコロニーをまとめて掻き取って菌体懸濁液を作製し、新しいプレートへ菌を塗布することで継代した。
【0107】
培地10mLが入った50mLチューブに、前述した方法で培養した黄色ブドウ球菌を異なる濃度で植菌し、24℃で一晩振とう培養した。一晩の浸透培養後、OD(光学濃度)600nmが1以下の菌体液を培地で希釈し、OD600nmが0.2の菌体液を得た。OD600nmが0.2の菌体液を培地でさらに1000倍希釈してこれを試験液とした。12ウェルプレートに3mL/wellの寒天培地を加え、蓋を開けて1時間乾燥させた。1時間の乾燥後、試験液を50μL/wellで添加し、試験液が寒天へ浸透する前に素早くプレートを水平に振ることでウェル全体に試験液を拡散させた。
【0108】
ウェル上に各実施例及び比較例の石英ガラス(厚み3.0mm)を載置し、寒天表面から照射面までの距離が30mmとなるよう紫外線照射装置(エキシマスポットランプ、オーク製作所製)を配置して、石英ガラスを通過した紫外線が黄色ブドウ球菌に照射されるよう222nmをピーク波長とする紫外線を照射した。紫外線の照射は、12ウェルプレートの蓋を外してクリーンベンチ内で行い、照射量を変えた2つ条件(10J/cm2、又は20mJ/cm2)でそれぞれ実施した。なお、コントロールとして、12ウェルプレート上に石英ガラスを載置しないことは前述した条件と同様の条件で、紫外線を黄色ブドウ球菌に照射した。
【0109】
紫外線を照射してから48時間経過後、紫外線の照射を中止し、ウェル内のコロニー数をカウントして、3つのウェルにおけるコロニー数の平均値(以下、「測定コロニー数」ともいう)を求めた。
【0110】
なお、参考例として、紫外線を照射しないときの測定コロニー数を求めた。参考例では、上述した方法で12ウェルプレートに添加した1/50の量の試験液(1μLの試験液)を99μLの培地で希釈した計100μLの試験液を、10mLの寒天培地を加えた90mmシャーレ2枚にそれぞれ添加し、48時間の培養を行った。48時間の培養後、2枚のシャーレ内のコロニー数をカウントし、これらの平均値を50倍して紫外線を照射しないときの測定コロニー数(参考例の測定コロニー数)とした。
【0111】
結果を下記表3a、及び表3bに示す。
【表3a】
【表3b】
【0112】
表3a、及び表3bに示す通り、実施例4の石英ガラスを通して紫外線を照射したときの測定コロニー数が0.1[個/well]であったのに対し、紫外線を照射しないときの測定コロニー数(参考例の測定コロニー数)は12700[個/well]であった。この結果から、実施例4の石英ガラスは、通過する紫外線によって殺菌できることが理解できた。
【要約】
252nmの光の透過を抑制した上で222nmの光を透過することができる石英ガラス及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
錫の含有量が5ppm以上150ppm以下であり、波長222nmの吸光係数に対する波長252nmの吸光係数の比が2.5以上である、石英ガラス。