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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20241126BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020095722
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021188193
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0011404(US,A1)
【文献】登録実用新案第3169951(JP,U)
【文献】実開昭58-39252(JP,U)
【文献】実開昭60-116350(JP,U)
【文献】米国特許第4433988(US,A)
【文献】実開昭51-118320(JP,U)
【文献】実開昭47-16295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A62B7/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部を収容するための合成樹脂製容器状のシールド本体を有し、
前記シールド本体は、前記頭部を前記シールド本体の内外に通過させる頭部挿入口が形成された底壁部と、前記底壁部によって下端が塞がれた筒状の周壁部と、前記周壁部の上端を塞ぐ上壁部とを有し、前記周壁部の一部には通気口が開口形成されており、
前記シールド本体に固定された部材であり前記通気口の周囲を形成する通気口周囲部と、前記通気口周囲部に取り付けることで前記通気口を覆うシート状フィルタを前記通気口周囲部との間に挟み込んで固定するリング状のフィルタ固定部材とをさらに有し、
前記シールド本体は、合成樹脂フィルム接合して外観六面体状の箱形に組み立てたものであって、
前記合成樹脂フィルムの材質は、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、
前記シールド本体を形成する合成樹脂フィルムの厚さは50~500μmであり、
前記シールド本体は、前記通気口が形成された前壁における前記通気口周囲部の周囲に凹部形成壁を有し、前記凹部形成壁は、前記前壁の前記凹部形成壁以外の部分である主部から前記通気口周囲部に接近するにしたがって前記シールド本体の内側に位置するように傾斜し、かつ、前記前壁の前記主部に比べて薄肉に形成されているフェイスシールド。
【請求項2】
前記底壁部には、前記底壁部の中央部に開口する挿入口中央開口部と、前記挿入口中央開口部の周方向に分散された複数箇所から前記挿入口中央開口部の外側へ延在する切り込みとが形成され、前記頭部挿入口は、前記底壁部の前記挿入口中央開口部の周囲部分が前記切り込みによって分割された複数の可撓片及び前記挿入口中央開口部の前記底壁部における存在範囲を指す請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記シールド本体は、一辺が250~400mmの外観直方体状に形成されている請求項1又は2に記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記周壁部に、全光線透過率が86%以上の高透過率部と、前記通気口とが形成された前壁を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記シールド本体に固定された部材であり前記通気口の周囲を形成する通気口周囲部と、前記通気口周囲部に前記通気口と連通させて取り付けられることで前記通気口周囲部から前記シールド本体の外側へ延出するように設けられる可撓性のノズルとをさらに有する請求項1からのいずれか1項に記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場など、ウィルス感染や細菌などの微生物感染の可能性が高い場所ではサージカルマスク・前面フェイスシールド(特許文献1、2)等の保護具にてウィルス感染や細菌などの微生物感染の低減を図ることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3641106号公報
【文献】特開2000-212821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサージカルマスクは使用者の口及び鼻腔の付近のみを覆うものであり、使用者の顔面の広範囲が露出したままとなり、露出部分はウィルス付着や細菌などの微生物付着の低減がなされない。
従来の前面フェイスシールドは、使用者の顔面の前面を覆うことができるが、顔面の前面から後側の側面部分は露出したままであり、ウィルス付着や細菌などの微生物付着の低減がなされていない。
【0005】
本発明の幾つかの実施形態が解決しようとする課題は、使用者の顔面の露出部分を無くすことであり、使用者の頭部全体を覆うことができ、しかも脱着が容易で、安価に製造できるフェイスシールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の態様を提供する。
[1]使用者の頭部を収容するための合成樹脂製容器状のシールド本体を有し、
前記シールド本体は前記頭部を前記シールド本体の内外に通過させる頭部挿入口が形成された底壁部と、前記底壁部によって下端が塞がれた筒状の周壁部と、前記周壁部の上端を塞ぐ上壁部とを有し、前記周壁部の一部には通気口が開口形成されているフェイスシールド。
[2]前記底壁部には、前記底壁部の中央部に開口する挿入口中央開口部と、前記挿入口中央開口部の周方向に分散された複数箇所から前記挿入口中央開口部の外側へ延在する切り込みとが形成され、前記頭部挿入口は、前記底壁部の前記挿入口中央開口部の周囲部分が前記切り込みによって分割された複数の可撓片及び前記挿入口中央開口部の前記底壁部における存在範囲を指す[1]に記載のフェイスシールド。
[3]前記シールド本体は、六面体状、または球状、または卵形の外観形状に形成されている[1]または[2]に記載のフェイスシールド。
[4]前記シールド本体は、一辺が250~400mmの外観直方体状に形成されている[3]に記載のフェイスシールド。
[5]前記シールド本体は、厚み50~500μmの合成樹脂フィルムによって形成されている[1]から[4]のいずれか1つに記載のフェイスシールド。
[6]前記前壁に、全光線透過率が86%以上の高透過率部と、前記通気口とが形成されている[1]から[5]のいずれか1つに記載のフェイスシールド。
[7]前記シールド本体の一部または前記シールド本体に固定された部材であり前記通気口の周囲を形成する通気口周囲部に取り付けることで前記通気口を覆うシート状フィルタを前記通気口周囲部との間に挟み込んで固定するリング状のフィルタ固定部材をさらに有する[1]から[6]のいずれか1項に記載のフェイスシールド。
[8]前記シールド本体の一部または前記シールド本体に固定された部材であり前記通気口の周囲を形成する通気口周囲部に前記通気口と連通させて取り付けられることで前記通気口周囲部から前記前記シールド本体の外側へ延出するように設けられる可撓性のノズルをさらに有する[1]から[7]のいずれか1つに記載のフェイスシールド。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフェイスシールドは、使用者の顔面の露出部分を無くすことができるため顔面全体にわたってウィルス付着や細菌などの微生物付着を低減できる。また、このフェイスシールドは、その構造上、使用者の頭部全体を覆うことができるため、頭部全体にわたってウィルス付着や細菌などの微生物付着を低減できる。しかも、このフェイスシールドは、使用者の頭部をシールド本体の底壁部の頭部挿入口に通過させるだけで容易に脱着できる。また、このフェイスシールドは安価に製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1実施形態のフェイスシールドの全体斜視図である。
図2図1のフェイスシールドの分解斜視図である。
図3図1のフェイスシールドの通気口付近の構造を示す断面図である。
図4図1のフェイスシールドのシールド本体の底壁部を示す平面図である。
図5図1のフェイスシールドのシールド本体の突筒部材付近の構造の変形例を示す断面図である。
図6】フェイスシールドの通気口に連通するノズルを取り付けた状態を斜視図である。
図7図6のフェイスシールドの通気口付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。また、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0010】
図1は本発明に係る1実施形態のフェイスシールド10を示す全体斜視図である。
図2図1のフェイスシールド10を示す分解斜視図、図3図1のフェイスシールド10の通気口付近の構造を示す断面図である。
【0011】
図1図2に示すように、この実施形態のフェイスシールド10は、使用者1の頭部を収容するための容器状のシールド本体11と、シールド本体11の筒状の周壁部12に固定されシールド本体11外側へ突出する突筒部材15と、前記突筒部材15に脱着可能に螺着されるリング状のフィルタ固定部材16とを有する。
【0012】
図1図2に示すフェイスシールド10のシールド本体11は、6面の外面を有する外観六面体状の箱形に形成されている。
シールド本体11は柔軟な合成樹脂フィルムによって形成されている。
シールド本体11を形成する合成樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等を採用可能である。
シールド本体11を形成する合成樹脂フィルムの厚みは例えば200~2000μmであるが、より好ましくは50~500μmである。
【0013】
シールド本体11は、例えば、合成樹脂フィルムを成形(賦形)して得たフィルム成形部材同士を接合して外観六面体状の箱形に組み立てたもの等を採用できる。
外観六面体状箱形のシールド本体11は、その他、公知の製造方法によって製造したものを利用できる。
【0014】
シールド本体11は、角筒状の周壁部12と、周壁部12の軸方向一端側を塞ぐ底壁部13と、周壁部12の軸方向他端側を塞ぐ上壁部14とを有する。
なお、図1図2において、フェイスシールド10について、シールド本体11の底壁部13側を下、上壁部14側を上、として説明する。
【0015】
周壁部12は、前壁12aと、互いに平行に形成された一対の側壁12bと、前壁12aと平行に形成された後壁12cとを有する角筒状に形成されている。前壁12aと、一対の側壁12bと、後壁12cとは、それぞれ周壁部12の4面の側面の1つを形成する壁部である。
なお、図1図2において、フェイスシールド10について、シールド本体11の前壁12a側を前、後壁12c側を後、として説明する。
【0016】
前壁12aと、一対の側壁12bと、後壁12cとは、それぞれ、周壁部12の軸線に垂直に延在する矩形状の底壁部13の外周の各辺の全長にわたって一体化されている。また、前壁12aと、一対の側壁12bと、後壁12cとは、それぞれ、周壁部12の軸線に垂直に延在する矩形状の底壁部13及び上壁部14のそれぞれの外周の各辺の全長にわたって一体に繋がっている。
【0017】
図1図2に例示したシールド本体11は一辺が250~400mmの外観直方体状(六面体状)の箱形に形成されている。
外観直方体状のシールド本体11は各辺の長さが互いに等しい外観立方体状であっても良い。
【0018】
図1に示すように、フェイスシールド10は、使用者1が頭部全体をシールド本体11に収容してフェイスシールド10を頭に被った状態で使用する。
使用者1が成人の場合、外観直方体状のシールド本体11は各辺の長さが250mmよりも小さいとフェイスシールド10を頭に被った使用者1が窮屈感を感じやすい。また、シールド本体11の各辺の長さが400mmよりも大きいと、シールド本体11とその内側に収容した頭部との間のクリアランスが大きすぎ、頭部に対するシールド本体11の揺動等のぐらつきが大きすぎて使用感が悪化する。
【0019】
図1図2に示すように、周壁部12の前壁12aの上部には、全光線透過率が86%以上の高透過率部12dが形成されている。
シールド本体11において高透過率部12dは、図1のように使用者1が頭部全体をシールド本体11に収容してフェイスシールド10を被ったときに、シールド本体11内側からシールド本体11外側を見る使用者1の視野を確保する。
なお、本明細書において、全光線透過率はJIS K-7136に基づいて計測されるものである。
【0020】
但し、シールド本体11は、周壁部12の前壁12aの一部または全体に高透過率部12dが存在する構成を好適に採用できる。
シールド本体11はその全体に86%以上の全光線透過率が確保された構成(全体が高透過率部12d)も採用可能である。
シールド本体11は、周壁部12の高透過率部12d以外の部分の全光線透過率が86%に満たない構成も採用可能である。シールド本体11の周壁部12の高透過率部12d以外の部分には、例えば、表面のケシ加工等によって全光線透過率が86%に満たない合成樹脂フィルム、顔料の含有、塗料の塗布、印刷層の形成等によって着色された合成樹脂フィルムや、金属箔がラミネートされた合成樹脂フィルム等、種々構成のフィルムを使用できる。
【0021】
シールド本体11は、例えば、高透過率部12d以外の部分がその外面が外面に微小な凹凸が多数形成されたケシ面とされ、高透過率部12dが微小な凹凸の形成の無いツヤ面である構成も採用可能である。この構成のシールド本体11は、成形によってツヤ面の高透過率部12d及びケシ面を形成可能な合成樹脂フィルムを用いてその全体を形成することが可能である。シールド本体11の全体を、成形によってツヤ面の高透過率部12d及びケシ面を形成可能な合成樹脂フィルムを用いて形成する場合は、シールド本体11の高透過率部分とそれ以外の部分とで互いに構成が異なる合成樹脂フィルムを使用する場合に比べてシールド本体11の低コスト化が可能である。
【0022】
図1図2に示すように、シールド本体11の底壁部13には、使用者1の頭部をシールド本体11の内外に通過させるための頭部挿入口13aが形成されている。
図1に示すように、フェイスシールド10の使用者1は、シールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aからシールド本体11内側に頭部を入れてフェイスシールド10を頭部に被る。
【0023】
図4は、シールド本体11の底壁部13を示す平面図である。
図2図4に示すように、シールド本体11の底壁部13には、底壁部13の面方向中央部に開口する挿入口中央開口部13bと、挿入口中央開口部13bの周方向に分散された複数箇所のそれぞれから挿入口中央開口部13b外側に向かって延在する切り込み13cとが形成されている。
【0024】
底壁部13における挿入口中央開口部13bの周囲部は複数の切り込み13cによってそれぞれフィン状の複数の可撓片13dに分割されている。
切り込み13cは底壁部13の面方向外周には到達しないように形成される。可撓片13dは、底壁部13の外周部から挿入口中央開口部13bに向かって延出する舌片状に形成されている。
【0025】
シールド本体11の底壁部13の切り込み13cの形成数は4~10であることが好ましく、6~8であることがより好ましい。
図2図4等では、底壁部13におけるその面方向中央部に形成された円形の挿入口中央開口部13bの周囲部分が、挿入口中央開口部13bの周方向8箇所から延在形成された切り込み13cによって8つの可撓片13dに分割されている構成を例示している。
【0026】
底壁部13の可撓片13dは、曲げ力が与えられていない状態であれば、シールド本体11を形成する合成樹脂フィルム自体の曲げ強度によって、周回形状の底壁部13外周部からその内周側へ延出する状態を保つことが可能である。
但し、可撓片13dの曲げ強度は手指等で容易に曲げることができる程度である。可撓片13dは、底壁部13外周部に対して底壁部13外周部側の基端を中心にシールド本体11の内側方向及び外側方向に曲げることができる。
【0027】
図2図4において、頭部挿入口13aは、底壁部13面方向における、挿入口中央開口部13b及び挿入口中央開口部13bの周囲の可撓片13dの存在範囲を指す。
頭部挿入口13aは、例えば図2のように、全ての可撓片13dが底壁部13外周部からその内周側へ延出し、これら可撓片13dの先端によって取り囲まれた内側に挿入口中央開口部13bが確保された状態が開量最小の状態(開量最小状態)である。この開量最小状態においては、頭部挿入口13aの開量は挿入口中央開口部13bのみによって確保されている。
なお、図2以外に図4も頭部挿入口13aが開量最小状態にあるときを示す。
【0028】
一方、頭部挿入口13aが開量最小状態にあるときに、可撓片13dを底壁部13外周部に対してシールド本体11内側方向または外側方向に曲げると、頭部挿入口13aの開量が増大する。底壁部13の全ての可撓片13dを底壁部13外周部に対してシールド本体11内側方向または外側方向に曲げると、頭部挿入口13aの開量を最大とすることが可能である。
【0029】
図1に示すように、使用者1がシールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aに頭部を通過させてシールド本体11外側から内側に頭部を入れるとき、シールド本体11の底壁部13の可撓片13dは頭部挿入口13aを通過する頭部によってシールド本体11内側へ押し曲げられる。このとき、使用者1の頭部による可撓片13dのシールド本体11内側へ押し曲げの進行に伴い頭部挿入口13aの開量が増大していく。
【0030】
なお、頭部挿入口13aの底壁部13における存在範囲は、底壁部13の全ての可撓片13dのそれぞれの基端によって取り囲まれる内側の領域、ということもできる。
例えば、開量が最大となった状態の頭部挿入口13aは、底壁部13の全ての可撓片13dのそれぞれの基端によって取り囲まれる内側に確保される開口部である。
【0031】
使用者1の頭部について、その前後方向に垂直な一対の平面で頭部(鼻を含む)を前後両側から挟み込んだときの一対の平面間の離間距離を、以下、頭部前後方向寸法、とも言う。
頭部挿入口13aの開量最大時の開口寸法(形状及び大きさ)は、例えば、日本人成人の殆どが該当すると考えられる頭部前後方向寸法の範囲を設定し、その設定範囲の上限サイズの使用者1の頭部が通過可能なように確保される。
【0032】
底壁部13の挿入口中央開口部13bは円形(図4参照)に限定されない。
挿入口中央開口部13bの形状は、例えば、楕円形、長円形、三角形、矩形、六角形等、種々形状を採用できる。
【0033】
頭部挿入口13aの形状、より具体的にはシールド本体11の上下方向(周壁部12軸線方向に一致)に垂直の横方向における頭部挿入口13aの領域の形状も、円形、楕円形、長円形、三角形、矩形、六角形等、種々形状を採用できる。
例えば図2図4に例示した底壁部13の頭部挿入口13aは、底壁部13が切り込み13cによって分割された8つの可撓片13dの存在範囲を含むものである。この頭部挿入口13aは、シールド本体11の横方向において8つの可撓片13dのそれぞれの基端によって取り囲まれた内側の八角形状の領域となっている。
【0034】
また、ヒトの頭部前後方向寸法は頭幅寸法に比べて大きいことが多い。
例えば、円形の頭部挿入口13aは頭部前後方向寸法よりも大きい内径を確保する必要がある。頭部挿入口13aの大型化を避ける点で、頭部挿入口13aは、シールド本体11前後方向に延在する細長形状であることが好ましい。
【0035】
一方、頭部挿入口13aが開量最小状態であるときに確保される挿入口中央開口部13bは、使用者1がシールド本体11外側から頭部挿入口13aに押し込む頭部によって可撓片13dの押し曲げを実現するため、例えば径1~15cm程度の円形の開口部であることが好ましい。
【0036】
図1に示すように、使用者1がシールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aに頭部を通過させてシールド本体11外側から内側に頭部を入れるとき、シールド本体11の底壁部13の可撓片13dは頭部挿入口13aを通過する頭部によってシールド本体11内側へ押し曲げられる。
使用者1の頭部がシールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aを通過し、頭部全体がシールド本体11内に収容されると、頭部挿入口13aを通過する頭部によってシールド本体11内側へ押し曲げられた可撓片13dは弾性復元力によって使用者1の首部に密着する。その結果、使用者1の首部の周囲の可撓片13dによって、頭部挿入口13aの下方からシールド本体11内側への外気流の進入を低減できる。
【0037】
使用者1が頭部に被ったフェイスシールド10は、シールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aから使用者1の頭部をシールド本体11外側へ抜き出すことで、使用者1の頭部から取り外すことができる。
フェイスシールド10は、使用者1の頭部をシールド本体11の底壁部13の頭部挿入口13aに通過させるだけで容易に脱着できる。
【0038】
すでに述べた通り、シールド本体11を形成する合成樹脂フィルムの厚みは50~500μmであることが好ましい。
シールド本体11を形成する合成樹脂フィルムの厚みが50μm未満であると、フィルムの曲げ強度が不足してシールド本体11が容易に変形しやすく扱い難くなる。合成樹脂フィルムの厚みが500μmよりも大きいとフィルム厚が50~500μmである場合に比べて、使用者1にとって、シールド本体11が重くなる、フィルムが硬く扱いにくくなる、可撓片13dの周囲が使用者1の首等に接触した際に違和感がある、といった使用感が生じやすくなる。
【0039】
図2図4に示すように、シールド本体11の各可撓片13dの挿入口中央開口部13b側の先端は挿入口中央開口部13b外周に沿う形状となっている。
このため、図1のように使用者1が頭部にシールド本体11を被ったとき、顔や顎下、首等に可撓片13d先端が接触しても使用者1が違和感を感じることは少ない。また、使用者1が頭部に被ったフェイスシールド10を頭部から取り外すときにも、顔や顎下、首等に可撓片13d先端が接触しても使用者1が違和感を感じることは少ない。
【0040】
シールド本体11は、底壁部13に頭部挿入口13aが存在せず、3以上の切り込み13cが底壁部13中央部から放射状に延在する構成も採用可能である。この場合には可撓片13d先端が三角形状の尖った形状になる。
これに対して、図1図2等に例示したシールド本体11は可撓片13d先端に気を配ることが少なくて済み、脱着を円滑に行える。
【0041】
図1図3に示すように、突筒部材15は、シールド本体11の周壁部12の前壁12aの下端部に固定されている。
図2図3に示すように、突筒部材15は前壁12aを形成する合成樹脂フィルムのヒートシール等によって固定されたリング板状の取付部15aと、取付部15aから前壁12aを貫通して前壁12aの前側へ突出された突筒部15bとを有する。
【0042】
図2図3に示すように、取付部15aは突筒部15bのシールド本体11側の基端部の周囲にフランジ状に突出形成されている。
突筒部15bの内側の貫通孔は突筒部15b基端側にてシールド本体11の内側領域と連通されている。
突筒部15bの内側の貫通孔はシールド本体11の通気口11aの役割を果たす。
【0043】
図2図3に示すように、リング状のフィルタ固定部材16は、内周面に形成された雌ねじ部を突筒部材15の突筒部15bの外周面に形成された雄ねじ部に螺合させて突筒部材15に螺着される。
フィルタ固定部材16は、突筒部材15の突筒部15bに対する回転操作によって突筒部材15に対して脱着可能に取り付けられる。
【0044】
図3に示すように、突筒部材15の突筒部15bと、その外周に螺着したフィルタ固定部材16との間には、シート状フィルタ2を挟み込むことができる。
シート状フィルタ2は、例えば、不織布、紙(いわゆる紙タオル等が好適)等によってシート状に形成されている。
【0045】
図3において、シート状フィルタ2は、その面方向中央部を突筒部材15の突筒部15bの突端(前端)側に配置して通気口11aの開口部を覆っている。
また、シート状フィルタ2の面方向中央部の周囲の部分は突筒部15bの外周面に沿って配置されている。
【0046】
図3に示すように、フィルタ固定部材16は、突筒部材15の突筒部15b外周面の雄ねじ部に螺合される筒壁部16aと、筒壁部16aのその軸線方向片端の内周全周に突出された押さえ突起16bと有する。突筒部材15の突筒部15b外周面の雄ねじ部に螺合される雌ねじ部は筒壁部16a内周面に形成されている。
【0047】
フィルタ固定部材16は、突筒部材15の突筒部15bに螺合させた筒壁部16aの突筒部15bへの締め付け固定によって、押さえ突起16bと突筒部15b突端との間に挟み込んだシート状フィルタ2を突筒部15bに固定している。また、フィルタ固定部材16は、突筒部材15の突筒部15b外周面と筒壁部16aとの間でもシート状フィルタ2を挟み込んで固定している。
シート状フィルタ2は、フェイスシールド10外側からシールド本体11内側への粉塵や液体飛沫等の異物の侵入を防ぐことができる。また、シート状フィルタ2は、ウィルスを捕捉可能なものも好適に採用できる。
【0048】
突筒部材15の突筒部15bに固定されたシート状フィルタ2は、フィルタ固定部材16の突筒部15bに対する回転操作によって突筒部15bから離脱させることで、突筒部15bからの撤去、交換等を行える。
【0049】
図5に示すように、シールド本体11は周壁部12の前壁12aにおける突筒部材15の取付部15aの周囲に、前壁12aの他の部分(シールド本体11の前面を形成する部分。以下、主部、とも言う)から突筒部材15の取付部15aに接近するにしたがってシールド本体11内側に位置するように傾斜する凹部形成壁11bを有する構成も採用可能である。
【0050】
図5において、突筒部材15の突筒部15bの先端部及び突筒部15bに締め付け固定されたフィルタ固定部材16は、その全体が、凹部形成壁11bによって前壁12aからシールド本体11内側へ窪むように形成された凹部内に収容され、前壁12a主部からシールド本体11前に突出しない。このため、例えば、フェイスシールド10を頭に被った使用者1が機器点検等の際にフィルタ固定部材16を不用意に機器にぶつけてしまうといった不都合を生じにくい。
【0051】
なお、図5において凹部形成壁11bはシールド本体11の前壁12aの主部に比べて薄肉に形成されている。突筒部材15は凹部形成壁11bとともに、図5の状態から凹部形成壁11bを変形させつつ前壁12a主部よりもシールド本体11前面側に引き出したり、シールド本体11前面側に引き出された状態から図5の状態に戻すことが可能である。
フェイスシールド10は、突筒部材15をシールド本体11前面側に引き出した状態とすることで、突筒部材15の突筒部15bに対するフィルタ固定部材16の脱着、それによるシート状フィルタ2の脱着等を容易に行なうことができる。
【0052】
図6に示すように、シールド本体11の突筒部材15には、合成樹脂製の可撓性ホースであるノズル17を前壁12a前側へ延出するように取り付けることができる。
図7に示すように、ノズル17の基端部は、突筒部材15の突筒部15b内周側の通気口11aに挿脱可能に挿入されて通気口11aに連通されている。また、突筒部材15の突筒部15bにはノズル17基端部の外周に突出された固定用フランジ17aが配置されている。
【0053】
フェイスシールド10は、フィルタ固定部材16と同様の構成のノズル固定部材18を用いてノズル17の基端部を突筒部材15(通気孔周囲部)に脱着可能に固定できる。
ノズル17にその先端側から外挿したノズル固定部材18の突筒部15への締め付け固定によって、ノズル17基端部の外周に突出された固定用フランジ17aをノズル固定部材18の押さえ突起16bと突筒部15b突端との間に挟み込んでしっかりと固定できる。これにより、突筒部材15に通気口11aと連通させたノズル17が接続される。
【0054】
図6のようにフェイスシールド10は、突筒部材15に接続したノズル17のその基端部とは逆の先端部を、医療現場や工場等に設置された清浄空気供給装置6との接続に利用できる。
また、病院内では、突筒部材15にノズル17を接続したフェイスシールド10を酸素吸入、その他の吸入形薬剤の吸入等に利用することができる。
【0055】
突筒部材15の突筒部15bに固定されたノズル17は、ノズル固定部材18の突筒部15bに対する回転操作によって突筒部15bから離脱させることで、突筒部15bから撤去できる。
なお、図6図7では、シールド本体11の前壁12aに凹部形成壁11bが存在せず前壁12aの全体がシールド本体11の前面を形成する構成を例示している。但し、ノズル17を接続可能なフェイスシールド10のシールド本体11は図5に例示した凹部形成壁11bが形成された前壁12aを有するものも採用可能である。
凹部形成壁11bは前壁12a主部に対して使用者1等が手指で変形させて、前壁12a主部からシールド本体11内側に窪む凹形部を形成する状態と、前壁12a主部からシールド本体11前面側へ突出する凸形部を形成する状態とを切り換えることができる。凹形部を形成した凹部形成壁11b内側の凹部内には、突筒部材15の突筒部15bへの締め付けによってノズル17基端部の固定用フランジ17aを突筒部材15に固定したノズル固定部材18の一部または全体が収容される。
【0056】
図1図6等に示すように、フェイスシールド10は、使用者の顔面の露出部分を無くすことができるため顔面全体にわたってウィルス付着や細菌などの微生物付着を低減できる。また、このフェイスシールド10は、その構造上、使用者1の頭部全体を覆うことができ、しかも、通気口11a以外からのシールド本体11への外気流入を少なく抑えることができるため、頭部全体にわたってウィルス付着や細菌などの微生物付着を低減できる。その結果、フェイスシールド10は、使用者1のウィルス感染や微生物感染の防止に有効に寄与する。
しかも、このフェイスシールド10は、使用者1の頭部への脱着が容易である。
さらに、このフェイスシールド10は、合成樹脂製のシールド本体11を主体とする構成であり、安価に製造できる。
【0057】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
シールド本体は、六面体状箱形以外に、球状、卵形の外観形状に形成されていても良い。
シールド本体は、それぞれ合成樹脂フィルムによって形成された三方袋、自立袋、ガゼット袋等の袋体であっても良い。
シールド本体は、底壁部に切り込み及び可撓片が存在せず、底壁部の中央部に開口する単純な開口部である頭部挿入口が形成された構成も採用可能である。
通気口の位置は周壁部の前壁に限定されず、側壁、後壁であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1…使用者、2…シート状フィルタ、6…清浄空気供給装置、10…フェイスシールド、11…シールド本体、11a…通気口、11b…凹部形成壁、12…周壁部、12a…前壁、12b…側壁、12c…後壁、12d…高透過率部、13…底壁部、13a頭部挿入口…、13b…挿入口中央開口部、13c…切り込み、13d…可撓片、14…上壁部、15…通気口周囲部(突筒部材)、15a…取付部、15b…突筒部、16…フィルタ固定部材、16a…筒壁部、16b…押さえ突起、17…ノズル、17a…固定用フランジ、18…ノズル固定部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7