(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】振とう培養装置および振とう培養方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241126BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20241126BHJP
C12M 1/24 20060101ALI20241126BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/02 A
C12M1/24
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020119854
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】都倉 知浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将太
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/207907(JP,A1)
【文献】中国特許出願公開第109628285(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102776116(CN,A)
【文献】特開2017-035009(JP,A)
【文献】特開2019-198850(JP,A)
【文献】特開2016-202089(JP,A)
【文献】特開2007-282629(JP,A)
【文献】特開平09-065876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/02
C12M 1/24
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器の底面に湾曲面を有し、前記湾曲面の高さが、前記底面の中心部において高く、前記底面の周辺部において低くなるように前記湾曲面が形成され
、
前記培養容器が、可撓性の内袋と、前記湾曲面を有する湾曲部材と、前記内袋を収容する金属の外殻とを備え、前記湾曲部材が、前記外殻の底面と前記内袋との間に設置されることを特徴とする振とう培養装置。
【請求項2】
前記底面が円形であり、前記培養容器が前記底面上に円筒状の側面を有することを特徴とする請求項1に記載の振とう培養装置。
【請求項3】
前記湾曲面が前記底面の中心部の周囲で回転対称な形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の振とう培養装置。
【請求項4】
前記
内袋が、前記外殻に収容され
ていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の振とう培養装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の振とう培養装置を用いて培養物の振とう培養を行うことを特徴とする振とう培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振とう培養装置および振とう培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞などの培養により、医薬品、食品、化粧品やこれらの原材料などとして有用な各種物質が生産されている。
特許文献1には、可撓性を有する培養バッグを収めるハウジング部の内面で、培養バッグと当接する当接面の一部に、湾曲凸状の突起部からなるバッフルが設けられたシングルユース細胞培養装置が記載されている。
特許文献2には、液状の内容物を入れる円柱状の撹拌容器の内部に、水平方向に延在して設けられた突起状のバッフルを有する培養容器が記載されている。
特許文献3には、培養容器の内部底面の外形が円形であって、底面に対して同心状に設けられた凹状の環状路として、振とう培養時に培養液の流れの方向を定め得る流路が設けられた培養容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-35009号公報
【文献】特開2019-198850号公報
【文献】特開平9-65876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、培養液の一部がバッフルに衝突することにより、旋回流の方向が転向されて上下方向の流れが生じ、培養液が均一になるように、効率的に混合することができるとの記載がある。
特許文献2には、内容物に作用するシェアを抑制するために、マイルドに撹拌しても、高い撹拌効率で均一に混合することが可能になるとの記載がある。
特許文献3には、培養液中に浮遊する動物細胞は、培養液の流れに沿って定められた流れ方向に滑らかに移動するので、動物細胞同士が衝突することが大幅に減少し、動物細胞が傷付くことを抑制できるとの記載がある。
【0005】
再生医療に使用される幹細胞のように、大量の細胞を培養する場合、撹拌または振とうにより、細胞がシェアストレスを受けることで生育阻害を及ぼす。シェアストレスを低減する目的で、単に流れの速度を低下させるのでは、内容液の混合が不十分になるため生育阻害を及ぼす。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、培養物に作用するシェアストレスを低減して、生育阻害を抑制することが可能な振とう培養装置および振とう培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、培養容器の底面に湾曲面を有し、前記湾曲面の高さが、前記底面の中心部において高く、前記底面の周辺部において低くなるように前記湾曲面が形成されていることを特徴とする振とう培養装置を提供する。
【0008】
前記底面が円形であり、前記培養容器が前記底面上に円筒状の側面を有してもよい。
前記湾曲面が前記底面の中心部の周囲で回転対称な形状であってもよい。
前記培養容器が、前記湾曲面を有する外殻と、前記外殻に収容された可撓性の内袋とを備えてもよい。
前記培養容器が、可撓性の内袋と、前記湾曲面を有する湾曲部材と、前記内袋を収容する外殻とを備え、前記湾曲部材が、前記外殻の底面と前記内袋との間に設置されてもよい。
【0009】
また、本発明は、前記振とう培養装置を用いて培養物の振とう培養を行うことを特徴とする振とう培養方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養容器の底面に形成された湾曲面の高さが、底面の中心部において高く、底面の周辺部において低くなっているので、振とうの動力が作用しにくい底面の中心部における培養液の深さが浅く、振とうの動力が作用しやすい底面の周辺部における培養液の深さが深くなる。これにより、底面の中心部と周辺部との間の速度勾配を減少させ、より小さい動力で振とうさせて、シェアストレスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の振とう培養装置における培養容器の外観を示した斜視図である。
【
図2】第2実施形態の振とう培養装置における培養容器の内部を示した断面図である。
【
図3】第3実施形態の振とう培養装置における培養容器の内部を示した断面図である。
【
図4】第4実施形態の振とう培養装置における培養容器の内部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1に、第1実施形態の振とう培養装置における培養容器の外観を示す。この培養容器10は円柱状であり、底面13に湾曲面14を有する。湾曲面14の高さは、底面13の中心部において高く、底面13の周辺部において低くなっている。培養容器10の底面13は円形である。さらに培養容器10は、底面13上に円筒状の側面11を有する。側面11の上部において、培養容器10の上面12は閉鎖されていてもよく、上面12が開放されていてもよい。
【0014】
培養容器10を備える振とう培養装置を用いて培養物の振とう培養を行う場合、静置状態において、培養液等の液体Lの液面Sが湾曲面14の上方にある。液面S上には、気体Gが存在している。培養容器10によれば、振とうの動力が作用しにくい底面13の中心部における液体Lの深さD1が浅く、振とうの動力が作用しやすい底面13の周辺部における液体Lの深さD2が深くなる。これにより、底面13の中心部と周辺部との間の速度勾配を減少させ、より小さい動力で振とうさせて、シェアストレスを低減することができる。液体Lは、例えば水を主成分としてもよい。
【0015】
湾曲面14を設けずに、底面13が平坦な場合、底面13の中心部では、振とうの動力が作用しにくいため、液体Lの流速が小さくなりやすい。また、底面13の周辺部では、振とうの動力が作用しやすいため、液体Lの流速が大きくなりやすい。湾曲面14を設けた場合は、底面13の中心部では、液体Lの深さD1が浅いため、より小さい動力で振とうさせても、適度な流速を得ることができる。このため、底面13の周辺部の速度は、従来に比べて流速が低くなる傾向になり、径方向の速度勾配が減少し、よりマイルドな撹拌が可能になる。これにより、培養物の分布が底面13の中心部から周辺部まで広く分散しても、内容液である液体Lの混合を促進して、生育阻害を抑制することができる。
【0016】
図2に、第2実施形態の振とう培養装置における培養容器10Aの内部を示す。この培養容器10Aは、円筒状の側面11と、円形の上面12と、外周が円形の底面13とを有する。底面13と一体に湾曲面14が形成されている。第1実施形態の培養容器10と同様に、培養容器10Aの底面13の中心部における液体Lの深さD1は浅く、底面13の周辺部における液体Lの深さD2は深くなっている。これにより、底面13の中心部と周辺部との間の速度勾配を減少させ、より小さい動力で振とうさせて、シェアストレスを低減することができる。
【0017】
図3に、第3実施形態の振とう培養装置における培養容器10Bの内部を示す。この培養容器10Bは、湾曲面14を有する外殻15と、外殻15に収容された可撓性の内袋16とを備えている。外殻15は、円筒状の側面11と、円形の上面12と、外周が円形の底面13と、湾曲面14とを有する。第1実施形態の培養容器10と同様に、培養容器10Bの底面13の中心部における液体Lの深さD1は浅く、底面13の周辺部における液体Lの深さD2は深くなっている。これにより、底面13の中心部と周辺部との間の速度勾配を減少させ、より小さい動力で振とうさせて、シェアストレスを低減することができる。
【0018】
図4に、第4実施形態の振とう培養装置における培養容器10Cの内部を示す。この培養容器10Cは、可撓性の内袋16と、湾曲面14を有する湾曲部材17と、内袋16を収容する外殻18とを備えている。外殻18は、円筒状の側面11と、円形の上面12と、円形の底面13とを有する。湾曲部材17は、外殻18の底面13と内袋16との間に設置されている。外殻18は底面13に湾曲面14を有しないことから、底面13が平坦でもよい。第1実施形態の培養容器10と同様に、培養容器10Cの底面13の中心部における液体Lの深さD1は浅く、底面13の周辺部における液体Lの深さD2は深くなっている。これにより、底面13の中心部と周辺部との間の速度勾配を減少させ、より小さい動力で振とうさせて、シェアストレスを低減することができる。
【0019】
次に、培養容器10,10A,10B,10Cについて、より詳しく説明する。
【0020】
培養容器10,10Aまたは培養容器10Bの外殻15,18は、側面11と上面12と底面13とが一体に構成されてもよく、側面11の途中、側面11と上面12との間、側面11と底面13との間などに継ぎ目を有してもよい。前記継ぎ目の両側の各部が相互に結合されていてもよい。前記継ぎ目の両側の各部が分割可能であってもよい。例えば、側面11と底面13とを一体の容器本体とし、上面12を前記容器本体に対して開閉可能な蓋部としてもよい。
【0021】
液体Lが内袋16に密閉状態で収容される場合には、上面12を省略したり、内袋16の一部を側面11の上端より上方に突出させたりしてもよい。内袋16は、湾曲面14の内側に重ね合わされて、湾曲面14の断面形状に沿って変形していてもよい。内袋16に収容された液体Lは、外殻15,18に触れないことが好ましい。内袋16の形状は特に限定されないが、四角柱状、六角柱状、八角柱状等の多角柱状あるいは円柱状が挙げられる。内袋がガゼット袋であると、外殻15,18の外で折り畳みが容易になるため、好ましい。内袋16が、二重袋や三重袋など多重の包装袋であると、内袋16から液体Lが漏れにくいので好ましい。
【0022】
振とう培養装置は、上述の培養容器10,10A,10B,10Cに加えて、培養容器10,10A,10B,10Cを振とうさせる振とう装置(図示せず)を備えることができる。振とう装置は、底面13の中心を円形の軌道上で水平方向に回転移動させる公転運動をさせながら振とうさせることが好ましい。これにより、撹拌時に液面Sは左右に盛り上がり、中央部が凹状となる。底面13の側面11に近い周辺部では、液面Sの高さが上下に振動する。
【0023】
培養容器10,10Aの材質または培養容器10B,10Cの外殻15,18の材質は特に限定されないが、十分な硬さ(剛性)を有することが好ましく、例えば、ステンレス等の金属、樹脂、木材、集成材、繊維強化プラスチック等の複合材料が挙げられる。内袋16を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂の少なくとも1種を含む積層体が挙げられる。内袋16は、シングルユース(使い捨て)であってもよい。
【0024】
側面11、底面13または湾曲面14の内面は、平滑面であってもよい。側面11、底面13または湾曲面14の少なくとも一部に、特許文献1に記載される湾曲凸状の突起部が設けられてもよい。湾曲凸状の突起部について、形状、個数、配置等は特に限定されない。側面11に、特許文献2に記載される水平方向に延在した突起状のバッフルが設けられてもよい。突起状のバッフルについて、形状、個数、配置等は特に限定されない。
【0025】
内袋16および湾曲部材17は、外殻15,18の所定位置に設置された状態で提供されてもよく、外殻15,18の付属部品として提供されてもよく、外殻15,18とは別に提供されてもよい。内袋16なしで使用し得る培養容器10,10Aを外殻15,18として使用し、内袋16を組み合わせてもよい。
【0026】
培養容器10,10A,10B,10Cの容積は、1L以上であることが好ましい。好ましくは前記容積が5L以上、10L以上、20L以上、50L以上、100L以上、200L以上である。前記容積が1000L、3000L、5000L等であってもよい。前記容積が大きい方が大量の撹拌に適している。液体Lが内袋16に収容される場合、内袋16の容量は、培養容器10B,10Cの容積に適合することが好ましい。外殻15,18に収容される内袋16の内容物は、液体Lの液体および気体Gを含むことが好ましい。
【0027】
内袋16には、培地や雰囲気ガス等の内容物の追加、取り出し、内容物のpH等の制御、添加物等の追加等の目的で、チューブ、ホース、注出口、注入口、コック、キャップ、注ぎ口等を1つ以上設けることもできる。チューブには、フィルター、フローモニター、流量計、バルブ、ポンプ等を設けてもよい。内袋16およびその付属物は、培養や衛生等の目的では必要に応じて、使用前に滅菌されていることが好ましい。滅菌手段は使用の目的等に応じて適宜選択でき、具体例として、γ線等の放射線、エチレンオキサイド等のガス、水蒸気等による加熱などが挙げられる。
【0028】
上述の培養容器10,10A,10B,10Cは、振とう型培養容器として、回分培養(バッチ培養)、流加培養(フェドバッチ方式)、灌流培養(パーフュージョン方式)のいずれにも応用することができる。培養工程において培養される微生物、細胞等の培養物としては、特に限定されないが、菌類、細菌類、ウイルス、酵母、藻類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、バイオ医薬製造用のCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞や、HeLa細胞、COS細胞、再生医療用途のiPS細胞、間葉系幹細胞を始めとした幹細胞、分化させた組織細胞などの動物細胞、などが挙げられる。また、培養工程においては、微生物、細胞等の培養物を目的物として得る場合に限らず、培養物が産生した酵素、抗体、化学物質等の産生物を培養液から回収することも可能である。
【0029】
液体L等の内容物の温度については、ヒータ等の温度調整機能を用いて温度調整を行うことができる。培養を行う場合の温度は、培養物の種類にもよるが、例えば動物細胞の場合、4~40℃が好ましく、25~37℃が特に好ましい。培養物を培養しないで培地等の撹拌装置として用いる場合は、冷却してもよい。冷却温度としては、例えば4~20℃が挙げられる。温度管理は、温度計の測定値を利用することで、フィードバック制御を行うことができる。温度計は、接触式温度計でもよいが、据え置き型、取り付け型などの非接触式温度計が好ましい。液体Lの粘度(粘性率)は、水と同程度(約1mPa・s)であってもよく、水より高粘度であってもよい。
【0030】
湾曲面14の形状は、底面13の中心部の周囲で回転対称な形状であってもよい。湾曲面14を構成し得る回転対称な形状としては、球面、回転楕円面、回転放物面、回転双曲面等の曲面が挙げられる。
図2~
図4に示すように、底面13の中心軸を含む断面における湾曲面14の形状としては、円弧、楕円弧、放物線、双曲線等の曲線形状が挙げられる。底面13の周辺部から中心部に向けて、周辺部における傾斜が大きく、中心部における傾斜が小さい形状であってもよい。底面13の全体が湾曲面14であってもよい。底面13のうち湾曲面14以外の部分の形状は、特に限定されないが、例えば、水平面、傾斜面等であってもよい。
【0031】
湾曲面14は、稜線を有しない滑らかな曲面に限らず、例えば、放射状または同心状の稜線により複数の面が接続された形状であってもよい。稜線とは、複数の異なる面の間で境界線を構成する線である。湾曲面14に含まれる稜線は、直線でも曲線でもよい。底面13の周辺部から中心部に向かう湾曲面14の高さの変化は、連続的でもよく、段階的でもよい。底面13の中心軸を含む断面において、湾曲面14が階段状に湾曲してもよい。階段状の湾曲面14としては、例えば、底面13からの高さが高くなるほど、各段の径が小さくなるように積層された形状が挙げられる。
【0032】
階段状の湾曲面14の形状が、底面13の中心部の周囲で回転対称な形状であってもよい。階段状の湾曲面14を構成する各段が、同心状に形成されてもよい。階段状の湾曲面14において、同心状の稜線の間を構成する面は、水平面、傾斜面、垂直面、円錐面、円柱面などから選択されてもよい。階段状の湾曲面14は、底面13に一体化されてもよく、複数の段を含む湾曲部材17から構成されてもよい。段ごとに分割された段部材を組み合わせて階段状の湾曲部材17を構成することもできる。階段状の湾曲面14の各段を形成する段部材の形状は、例えば、径の異なる円柱状または円錐台状であってもよい。段部材の上面または下面は、湾曲面14に限られず、平面であってもよい。
【0033】
湾曲部材17は、湾曲面14を放射状、同心状等に分割した複数の部材から構成してもよい。湾曲面14の形状が異なる湾曲部材17を外殻15,18に設置可能にしてもよい。湾曲面14を有する底面13の上に、湾曲部材17を設置可能にしてもよい。湾曲面14を有する湾曲部材17の上に、別の湾曲部材17を設置可能にしてもよい。湾曲部材17の着脱または交換により、条件に応じた適宜の湾曲面14を使用可能にしてもよい。
【0034】
湾曲面14の高さは、底面13の中心部における液体Lの深さD1や、底面13の周辺部における液体Lの深さD2の比率が適切となるように、適宜設計することが可能である。中心部における深さD1と周辺部における深さD2との比率は特に限定されないが、深さ比D1/D2の値として、例えば、0.01~0.99が挙げられる。前記深さ比D1/D2の値の具体例としては、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.99、またはこれらの中間値が挙げられる。
【0035】
図1に示すように、湾曲面14の直径をA、底面13の直径をBとするとき、湾曲面14の直径Aは、底面13の直径Bと同程度でもよい。湾曲面14の直径Aは、底面13の直径Bより小さくてもよい。底面13または湾曲面14の平面形状が円形でない場合は、例えば、長径、対角線長などの最大径を直径とすることができる。直径比A/Bの値は例えば、0.1~1.0が挙げられる。前記直径比A/Bの値の具体例としては、0.1、0.3、0.5、0.7、0.8、0.9、0.95、0.99、1.0またはこれらの中間値が挙げられる。
【0036】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、2以上の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【0037】
湾曲面14を有する湾曲部材17と、底面13に湾曲面を有しない外殻18とを組み合わせて用いる場合に、内袋16を省略して、湾曲部材17を固定した外殻18を培養容器として用いることも可能である。湾曲部材17が外殻18の底面13に確実に固定される等して支障がない場合は、内袋16を介することなく、湾曲部材17を固定した外殻18の内部に直接に液体Lを収容することができる。
【符号の説明】
【0038】
A…湾曲面の直径、B…底面の直径、D1…底面の中心部における培養液の深さ、D2…底面の周辺部における培養液の深さ、G…気体、L…液体、S…液面、10,10A,10B,10C…培養容器、11…側面、12…上面、13…底面、14…湾曲面、15…湾曲面を有する外殻、16…内袋、17…湾曲部材、18…湾曲面を有しない外殻。