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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】冷却デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241126BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241126BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F28D15/02 102C
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
H01L23/46 B
H05K7/20 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020207385
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094482
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 早紀
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351769(JP,A)
【文献】特開2018-173193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材に接して支持され、内部空間に作動流体を収容する複数本のヒートパイプ部と、
前記支持部材に接して支持され、前記支持部材の第1面に対して垂直に延在する複数の第1フィンを有する第1放熱フィン部と、
前記ヒートパイプ部に接すると共に前記第1放熱フィン部の上部に配置される複数の第2フィンを有する第2放熱フィン部と
を備え、
前記第1放熱フィン部は、一対の幅広部を有し、
前記複数本のヒートパイプ部は、前記一対の幅広部の間に設けられていることを特徴とする冷却デバイス。
【請求項2】
前記複数の第2フィンは、前記複数の第1フィンに対して垂直に延在する、請求項1に記載の冷却デバイス。
【請求項3】
前記第1放熱フィン部と前記第2放熱フィン部とは離間している、請求項1または2に記載の冷却デバイス。
【請求項4】
前記作動流体は、フッ素系溶媒または炭化水素系溶媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項5】
前記作動流体は、純水の沸点よりも低い沸点を有するフッ素系溶媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項6】
前記作動流体は、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテンと(E)-1,2-ジクロロエチレンとの混合物、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン、および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項7】
前記支持部材はベースプレートである、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項8】
前記支持部材はベーパーチャンバである、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の床下に設置される電力変換装置などには、電気・電子部品などの発熱体が搭載されている。発熱体の温度が所定の許容温度を超えると、発熱体の誤作動が引き起こされることがあるため、発熱体の温度を許容温度以下に維持し続けることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鉄道車両の床下に設置され、半導体素子用の冷却器を車体側方側に設けた電力変換装置を含む機器群と、機器群の車体側方側を覆うように設けられ、内壁が冷却器の構成部材と接続されるふさぎ板とを備える車両用電力変換装置が記載されている。車両用電力変換装置の冷却器は、ヒートパイプを用いたものであり、このヒートパイプの一方の端部は、ふさぎ板の内壁に接続されている。この車両用電力変換装置では、ヒートパイプおよびふさぎ板が放熱部位として機能する。電力変換装置の熱は、ヒートパイプを介してふさぎ板に伝達され、車両外部に排出される。
【0004】
特許文献2には、放熱フィンの表面における境界層の形成を抑制し、冷却風の風上側以外の部位でも優れた放熱性能を有することを目的とするヒートシンクが記載されている。このヒートシンクは、ベースプレートと、ベースプレートに熱的に接続された第1の放熱フィンと、第1の放熱フィンの側端部に隣接し、ベースプレートに熱的に接続された第2の放熱フィンとを有する。そして、第1の放熱フィンの表面は、第2の放熱フィンの表面に対して平行ではない。また、第2の放熱フィンの少なくとも1つは、第1の放熱フィンの少なくとも1つよりも低い位置に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-039914号公報
【文献】特開2019-046904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において、放熱部位であるヒートパイプについて、低温になると、最大熱輸送量が低下する。そのため、ヒートパイプを介して電力変換装置からふさぎ板に伝達される熱量は減少する。その結果、引用文献1の車両用電力変換装置の冷却効率は低下する。このような現状から、低温時の冷却効率の低下を抑制できる冷却デバイスが求められている。
【0007】
本開示の目的は、低温環境下でも安定して優れた冷却効率を有する冷却デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 支持部材と、前記支持部材に接して支持され、内部空間に作動流体を収容するヒートパイプ部と、前記支持部材に接して支持され、前記支持部材の第1面に対して垂直に延在する複数の第1フィンを有する第1放熱フィン部と、前記ヒートパイプ部に接すると共に前記第1放熱フィン部の上部に配置される複数の第2フィンを有する第2放熱フィン部とを備えることを特徴とする冷却デバイス。
[2] 前記複数の第2フィンは、前記複数の第1フィンに対して垂直に延在する、上記[1]に記載の冷却デバイス。
[3] 前記第1放熱フィン部と前記第2放熱フィン部とは離間している、上記[1]または[2]に記載の冷却デバイス。
[4] 前記作動流体は、フッ素系溶媒または炭化水素系溶媒である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[5] 前記作動流体は、純水の沸点よりも低い沸点を有するフッ素系溶媒である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[6] 前記作動流体は、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテンと(E)-1,2-ジクロロエチレンとの混合物、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン、および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[7] 前記支持部材はベースプレートである、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[8] 前記支持部材はベーパーチャンバである、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低温環境下でも安定して優れた冷却効率を有する冷却デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の冷却デバイスの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の部分透過図である。
図3図3は、実施形態の冷却デバイスを構成する第1放熱フィン部の他の例を示す部分透過斜視図である。
図4図4は、実施形態の冷却デバイスを構成するヒートパイプ部の他の例を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態の冷却デバイスを構成するヒートパイプ部の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、冷却デバイスを構成するヒートパイプ部ならびに第1放熱フィン部および第2放熱フィン部の配置状態に着目することによって、冷却デバイスを低温環境下に設置しても、安定して優れた冷却効率を発揮することを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0013】
実施形態の冷却デバイスは、支持部材10と、支持部材10に接して支持され、内部空間Sに作動流体を収容するヒートパイプ部20と、支持部材10に接して支持され、支持部材10の第1面10aに対して垂直に延在する複数の第1フィン31を有する第1放熱フィン部30と、ヒートパイプ部20に接すると共に第1放熱フィン部30の上部に配置される複数の第2フィン41を有する第2放熱フィン部40とを備える。
【0014】
図1は、実施形態の冷却デバイスの一例を示す斜視図である。図2は、図1の部分透過図である。なお、図2では、支持部材10、ヒートパイプ部20および第1放熱フィン部30の位置関係がわかりやすくなるように、第2放熱フィン部40を透過した状態を示している。また、図2では、液相の作動流体F(L)が流れる方向を黒塗り矢印で示し、気相の作動流体F(G)が流れる方向を白抜き矢印で示している。
【0015】
図1~2に示すように、実施形態の冷却デバイス1は、支持部材10、ヒートパイプ部20、第1放熱フィン部30、および第2放熱フィン部40を備える。冷却デバイス1は、ヒートパイプ部20の内部に設けられる内部空間Sに封入されている作動流体を液相から気相に相変化させることによる潜熱を利用したものである。ここでは、冷却デバイス1が沸騰冷却装置である例を示す。
【0016】
冷却デバイス1を構成する支持部材10の第1面10a側には、冷却デバイス1の放熱部位であるヒートパイプ部20、第1放熱フィン部30、および第2放熱フィン部40が設けられる。第1面10aの裏面である支持部材10の第2面10bは、不図示の電気・電子部品などの発熱体と熱的に接続される。発熱体から発生する熱は、第2面10bから支持部材10に伝達される。支持部材10は、例えば板状である。
【0017】
冷却デバイス1を構成するヒートパイプ部20は、支持部材10の第1面10aに接して支持され、第1面10aに熱的に接続される。ヒートパイプ部20の内部空間Sには、作動流体が収容される。内部空間Sは、ヒートパイプ部20によって密閉されている。支持部材10の熱の一部は、ヒートパイプ部20に伝達される。
【0018】
ヒートパイプ部20は、支持部材10の第1面10aから離れるように延在する。例えば、ヒートパイプ部20は、支持部材10に固着されてもよいし、支持部材10および不図示のブロック部で挟持固定されてもよい。ヒートパイプ部20の数や形状は、冷却デバイス1の所望の特性に応じて適宜選択される。ここでは、ヒートパイプ部20の形状は棒状である。ヒートパイプ部20の内面には、ヒートパイプ部20の延在方向、すなわち支持部材10から第2放熱フィン部40の方向に延在する不図示の流路が設けられる。流路には、液相の作動流体F(L)が流れる。
【0019】
また、図2に示すように、ヒートパイプ部20には、支持部材10からの熱を液相の作動流体F(L)に伝え、液相の作動流体F(L)を蒸発させて気相の作動流体F(G)に相変化させる蒸発部50と、気相の作動流体F(G)を凝縮させて液相の作動流体F(L)に相変化させる凝縮部51とが設けられる。凝縮部51は蒸発部50から離れた位置に配設される。例えば、蒸発部50は、支持部材10近傍の内部空間Sに配設され、凝縮部51は、第2放熱フィン部40近傍の内部空間Sに配設される。
【0020】
冷却デバイス1を構成する第1放熱フィン部30は、支持部材10の第1面10aに接して支持され、第1面10aに熱的に接続される複数の第1フィン31を有する。複数の第1フィン31は、支持部材10の第1面10aに対して垂直に延在する。また、複数の第1フィン31は、ヒートパイプ部20の延在方向に沿って延在し、薄板状であり、所定のフィンピッチを空けて離間配置されている。複数の第1フィン31のフィンピッチは、冷却デバイス1の所望の特性に応じて適宜選択される。
【0021】
第1放熱フィン部30は、例えば図2に示すように、支持部材10の第1面10aに立設する複数のヒートパイプ部20の間に設けられる狭小部30a、および狭小部30aよりも幅が大きい幅広部30bを有する。狭小部30aの幅は、複数のヒートパイプ部20の間の長さに比べて小さい。複数の第1フィン31が離間配置されている方向における狭小部30aの端部は、幅広部30bと熱的に接続される。狭小部30aおよび幅広部30bは、一体でもよいし、別体でもよい。
【0022】
複数の第1フィン31が離間配置されている方向は、ヒートパイプ部20の延在方向に対して垂直である。支持部材10の熱の一部は、第1放熱フィン部30に伝達される。すなわち、支持部材10の熱は、ヒートパイプ部20および第1放熱フィン部30に伝達される。
【0023】
第1放熱フィン部30には、第1放熱フィン部30を冷却するための風W1が流れる。支持部材10から第1放熱フィン部30に伝達された熱は、第1放熱フィン部30から放熱される。第1放熱フィン部30から放熱された熱は、第1放熱フィン部30を構成する複数の第1フィン31の間を流れる風W1によって、冷却デバイス1の外部に排出される。
【0024】
第1放熱フィン部30を構成する材料は、熱伝導率などの観点から、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が好ましい。その中でも、軽量化およびコスト削減の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましく、より優れた冷却効率を発揮させる観点から、銅、銅合金がより好ましい。
【0025】
冷却デバイス1を構成する第2放熱フィン部40は、ヒートパイプ部20に接して、ヒートパイプ部20に熱的に接続される複数の第2フィン41を有する。複数の第2フィン41は、第1放熱フィン部30の上部に配置され、支持部材10には接しない。例えば、図1に示すように、第2放熱フィン部40は、複数の第2フィン41に設けられる貫通孔40aを有し、ヒートパイプ部20は第2放熱フィン部40の貫通孔40aに挿通される。貫通孔40aで、ヒートパイプ部20が第2放熱フィン部40と接する。
【0026】
複数の第2フィン41は、薄板状であり、所定のフィンピッチを空けて離間配置されている。複数の第2フィン41のフィンピッチは、冷却デバイス1の所望の特性に応じて適宜選択される。複数の第2フィン41および複数の第1フィン31のフィンピッチは、冷却デバイス1の所望の特性に応じて適宜選択され、同じでもよいし、異なってもよい。
【0027】
複数の第2フィン41は、複数の第1フィン31に対して垂直に延在する。また、複数の第2フィン41は、支持部材10の第1面10aに対して平行に延在する。複数の第2フィン41が離間配置されている方向は、複数の第1フィン31が離間配置されている方向に対して垂直であり、ヒートパイプ部20の延在方向に対して平行である。
【0028】
複数の第2フィン41、すなわち第2放熱フィン部40は、第1放熱フィン部30の支持部材10側とは反対側に設けられる。第1放熱フィン部30を介して支持部材10と対向する第2放熱フィン部40には、ヒートパイプ部20の熱が伝達される。
【0029】
第2放熱フィン部40には、第2放熱フィン部40を冷却するための風W2が流れる。ヒートパイプ部20から第2放熱フィン部40に伝達された熱は、第2放熱フィン部40から放熱される。第2放熱フィン部40から放熱された熱は、第2放熱フィン部40を構成する複数の第2フィン41の間を流れる風W2によって、冷却デバイス1の外部に排出される。一方向に流れる風W1に対して、風W2は全方位に流れる。
【0030】
第2放熱フィン部40を構成する材料は、熱伝導率などの観点から、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が好ましい。その中でも、軽量化およびコスト削減の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましく、より優れた冷却効率を発揮させる観点から、銅、銅合金がより好ましい。
【0031】
このように、冷却デバイス1の冷却経路は、主に、支持部材10から第1放熱フィン部30に熱が伝わる第1冷却経路と、支持部材10からヒートパイプ部20を介して第2放熱フィン部40に熱が伝わる第2冷却経路とがある。
【0032】
また、第1放熱フィン部30は、図1に示すように、複数の第1フィン31の同じ側の端部と連結する端部連結部32を有してもよい。端部連結部32は、複数の第1フィン31および支持部材10と熱的に接続される。例えば、図1に示すように、第1放熱フィン部30は、複数の第1フィン31の対向する2つの端部とそれぞれ連結する、2つの端部連結部32を有する。
【0033】
第1放熱フィン部30が端部連結部32を備えると、第1面10aと垂直な方向の外力に対する、第1放熱フィン部30の耐久性が向上する。仮に第2放熱フィン部40が第1放熱フィン部30に衝突しても、または第2放熱フィン部40が第1放熱フィン部30に荷重を与え続けても、第1放熱フィン部30は第2放熱フィン部40から受ける力に対して高い耐久性を有する。そのため、支持部材10の熱は、安定して第1放熱フィン部30に伝達される。
【0034】
また、支持部材10はベースプレートであることが好ましい。ベースプレートは金属部材である。例えば、ベースプレートは、鉄道などの車両に用いられる。支持部材10がベースプレートであると、支持部材10の熱伝導率が向上するため、不図示の発熱体の熱がヒートパイプ部20および第1放熱フィン部30に伝達されやすくなる。
【0035】
このような構成を備える冷却デバイス1は、以下のような機構によって、不図示の発熱体を冷却する。
【0036】
冷却デバイス1を構成する支持部材10の第2面10bに熱的に接続される不図示の発熱体の熱は、支持部材10に伝達される。支持部材10の熱の一部は、第1放熱フィン部30に伝達されて、第1放熱フィン部30から放熱される。第1放熱フィン部30から放熱された熱は、第1放熱フィン部30を流れる風W1によって、冷却デバイス1の外部に排出される。
【0037】
また、支持部材10の熱の残りは、ヒートパイプ部20に伝達される。ヒートパイプ部20に伝達された熱は、蒸発部50において、ヒートパイプ部20における支持部材10側の内部空間Sに存在する液相の作動流体F(L)を蒸発させて、気相の作動流体F(G)に相変化させることによって、作動流体Fはヒートパイプ部20からの熱を潜熱として吸収する。気相の作動流体F(G)は、ヒートパイプ部20の内部空間Sを支持部材10側と反対側の端部の方向、すなわち第2放熱フィン部40の方向に向かって移動した後に、凝縮部51において、第2放熱フィン部40と熱交換することによって、気相の作動流体F(G)は液相の作動流体F(L)に相変化する。気相の作動流体F(G)から液相の作動流体F(L)への相変化の際に、気相の作動流体F(G)から放出される潜熱は、第2放熱フィン部40に伝達される。相変化した液相の作動流体F(L)は、ヒートパイプ部20の内面に設けられる不図示の流路に沿って支持部材10側に移動し、蒸発部50に戻る。このように、作動流体Fは、密閉された内部空間Sで、液相から気相への相変化、および気相から液相への相変化を繰り返す。気相の作動流体F(G)から第2放熱フィン部40に伝達された熱は、第2放熱フィン部40から放熱される。第2放熱フィン部40から放熱された熱は、第2放熱フィン部40を流れる風W2によって、冷却デバイス1の外部に排出される。
【0038】
このように、冷却デバイス1は、支持部材10からヒートパイプ部20を介さずに第1放熱フィン部30に熱伝達する第1冷却経路、および支持部材10からヒートパイプ部20を介して第2放熱フィン部40に熱伝達するする第2冷却経路によって、発熱体を冷却させる。
【0039】
ここで、低温時のヒートパイプ部20では、液相の作動流体F(L)が気相の作動流体F(G)に蒸発しにくくなるため、ヒートパイプ部20の最大熱輸送量が低下する。そのため、ヒートパイプ部20を介して冷却を行う第2冷却経路の冷却効率は低温時に低下することがある。
【0040】
一方で、第1冷却経路は、支持部材10から第1放熱フィン部30に熱を伝達する。第1冷却経路の冷却は、ヒートパイプ部20を介さないため、低温時におけるヒートパイプ部20の最大熱輸送量の低下による影響を受けない。すなわち、ヒートパイプ部20の冷却性能が低下する低温時であっても、第1冷却経路の冷却効率は維持できる。また、支持部材10に接して支持される第1放熱フィン部30を設置することで、支持部材10からヒートパイプ部20に伝達される熱の量を低減できる。こうしたことから、冷却デバイス1は、低温環境下に設置されても、安定して優れた冷却効率を有することができる。
【0041】
また、支持部材10よりも高い位置に第2放熱フィン部40が配置されると、液相の作動流体F(L)は重力によって支持部材10側の内部空間Sに容易に移動できる。支持部材10側に移動した液相の作動流体F(L)は、支持部材10から伝達される熱を効率的に吸収できる。そのため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。
【0042】
また、第1放熱フィン部30および第2放熱フィン部40は、一体でもよいし、別体でもよい。また、第1放熱フィン部30と第2放熱フィン部40とは、互いに接触してもよいが、図1~2に示すように離間していることが好ましい。第1放熱フィン部30および第2放熱フィン部40が互いに離間配置されていると、第1放熱フィン部30と第2放熱フィン部40との間にも風W2が流れる。そのため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。
【0043】
内部空間Sに封入されている作動流体は、純水、アルコール類、フッ素系溶媒、または炭化水素系溶媒であることが好ましく、フッ素系溶媒または炭化水素系溶媒であることがより好ましい。なかでも、低温環境下であっても冷却デバイス1の冷却性能を維持する観点から、作動流体は、純水の沸点よりも低い沸点を有するフッ素系溶媒であることが好ましく、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-347pc-f)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン(R1336mzz(Z))と(E)-1,2-ジクロロエチレン(R1130(E))との混合物、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン(1336mzz(Z))、および1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンからなる群より選択される1種以上の溶媒を含むことがより好ましい。作動流体の沸点は、1気圧(1atm)のときの沸点とする。
【0044】
純水の沸点よりも低い沸点を有するフッ素系溶媒が作動流体として冷却デバイス1に用いられると、冷却デバイス1は低温環境下でも高い冷却効率を有することができる。
【0045】
また、上記の冷却デバイス1は、低温環境下でも安定して優れた冷却効率が求められる鉄道などの車両に好適に用いられる。
【0046】
また、上記の冷却デバイス1は、ベーパーチャンバにも好適に用いられる。この場合、冷却デバイス1の支持部材10はベーパーチャンバである。具体的には、ベーパーチャンバの作動流体を収容しているベーパーチャンバの容器が冷却デバイス1の支持部材10に相当する。冷却デバイス1は好ましくはベーパーチャンバの蒸発部に装着される。冷却デバイス1を備えるベーパーチャンバは、低温環境下でも安定して優れた冷却効率を有する。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、支持部材に対するヒートパイプ部、第1放熱フィン部および第2放熱フィン部の配置状態に着目することによって、冷却デバイスは、低温環境下に設置されても、安定して優れた冷却効率を有することができる。また、所定の特性を有するフッ素系溶媒を作動流体に適用すると、冷却デバイスの冷却効率を向上することができる。
【0048】
なお、上記では、第1放熱フィン部30が狭小部30aおよび幅広部30bを備える一例を示したが、図3のように第1放熱フィン部30は貫通孔33を有してもよい。貫通孔33は、支持部材10側から第2放熱フィン部40側に亘って第1放熱フィン部30を貫通する。ヒートパイプ部20は、第1放熱フィン部30の貫通孔33に挿通される。
【0049】
また、上記では、ヒートパイプ部20の形状が棒状である一例を示したが、図4に示すように、ヒートパイプ部20は、支持部材10側のヒートパイプ部20に連結され、支持部材10の第1面10aに接して支持される連結部20aを有してもよい。連結部20aは、支持部材10の第1面10aに熱的に接続される。連結部20aには、主に液相の作動流体F(L)が流れている。ヒートパイプ部20が連結部20aを有すると、支持部材10からヒートパイプ部20に伝達される熱の量が増加するため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。なお、図4では、便宜上、第1放熱フィン部30や第2放熱フィン部40は省略している。
【0050】
また、ヒートパイプ部20の連結部20aは、図5に示すように、複数のヒートパイプ部20に連結されてもよい。支持部材10からヒートパイプ部20に伝達される熱の量が増加することに加えて、内部空間Sを流れる液相の作動流体F(L)および気相の作動流体F(G)の循環が良好になる。そのため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。なお、図5では、図4と同様に、第1放熱フィン部30や第2放熱フィン部40は省略している。
【0051】
また、上記では、冷却デバイス1が1つの第1放熱フィン部30および1つの第2放熱フィン部40を備える一例を示したが、冷却デバイス1は、複数の第1放熱フィン部30を備えてもよいし、複数の第2放熱フィン部40を備えてもよい。この場合、複数の第1放熱フィン部30や複数の第2放熱フィン部40は、一体でもよいし、別体でもよい。
【0052】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 冷却デバイス
10 支持部材
10a 支持部材の第1面
10b 支持部材の第2面
20 ヒートパイプ部
20a 連結部
30 第1放熱フィン部
30a 狭小部
30b 幅広部
31 第1フィン
32 端部連結部
33 貫通孔
40 第2放熱フィン部
40a 貫通孔
41 第2フィン
50 蒸発部
51 凝縮部
S ヒートパイプ部の内部空間
F(L) 液相の作動流体
F(G) 気相の作動流体
図1
図2
図3
図4
図5