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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびカプラ
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20241126BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20241126BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B23K26/064 K
G02B6/26 301
G02B6/42
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021020924
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123547
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 浩平
(72)【発明者】
【氏名】森 肇
(72)【発明者】
【氏名】厚味 泰輔
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183977(JP,A)
【文献】特開2018-190918(JP,A)
【文献】特開2003-112281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
G02B 6/26
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有し
前記第一光源として、異なる波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有した、レーザ加工装置。
【請求項2】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有し
前記第一光源として、同じ波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有し、
前記複数の第一光源のそれぞれのレーザ光の出力および出力停止を切替可能に構成された、レーザ加工装置。
【請求項3】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有し
前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に、第二入力光ファイバを有し、
前記第二入力光ファイバは、前記束部において、前記第一端部と並び前記第二端部と面し当該第二端部と光学的に結合された第三端部を有し、
前記第二入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する第二光源を備え、
前記第二光源は、前記第一光源とは異なる波長のレーザ光を出力する、レーザ加工装置。
【請求項4】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有し
前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に、第二入力光ファイバを有し、
前記第二入力光ファイバは、前記束部において、前記第一端部と並び前記第二端部と面し当該第二端部と光学的に結合された第三端部を有し、
前記第二入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する第二光源を備え、
前記第二光源のレーザ光の出力は、前記第一光源のレーザ光の出力よりも低い、レーザ加工装置。
【請求項5】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有し
レーザ光を出力し、前記光学ヘッドと光学的に接続された第三光源を備え、
前記光学ヘッドは、前記第一光源からのレーザ光と前記第三光源からのレーザ光とを合波する光学系を有した、レーザ加工装置。
【請求項6】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有し
前記第一光源として、異なる波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有した、レーザ加工装置。
【請求項7】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有し
前記第一光源として、同じ波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有し、
前記複数の第一光源のそれぞれのレーザ光の出力および出力停止を切替可能に構成された、レーザ加工装置。
【請求項8】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有し
前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に、第二入力光ファイバを有し、
前記第二入力光ファイバは、前記束部において、前記第一端部と並び前記第二端部と面し当該第二端部と光学的に結合された第三端部を有し、
前記第二入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する第二光源を備え、
前記第二光源は、前記第一光源とは異なる波長のレーザ光を出力する、レーザ加工装置。
【請求項9】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有し
前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に、第二入力光ファイバを有し、
前記第二入力光ファイバは、前記束部において、前記第一端部と並び前記第二端部と面し当該第二端部と光学的に結合された第三端部を有し、
前記第二入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する第二光源を備え、
前記第二光源のレーザ光の出力は、前記第一光源のレーザ光の出力よりも低い、レーザ加工装置。
【請求項10】
マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、
マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、
前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、
マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、
前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、
を備え、
前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有し
レーザ光を出力し、前記光学ヘッドと光学的に接続された第三光源を備え、
前記光学ヘッドは、前記第一光源からのレーザ光と前記第三光源からのレーザ光とを合波する光学系を有した、レーザ加工装置。
【請求項11】
前記延部において、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのクラッド同士が溶着された、請求項1~5のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記境界が、前記第二部位として、前記第一部位に対して径方向の内側に位置した第二部位と、前記第一部位に対して径方向の外側に位置した第二部位と、を有した、請求項6~10のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記第一光源として、同じ波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有した、請求項3~5、8~10のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記複数の第一光源のそれぞれのレーザ光の出力および出力停止を切替可能に構成された、請求項または6に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に光ファイバを有しない、請求項1、2、5、6、7、10のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記第二入力光ファイバは、マルチモード光ファイバであり、
前記第二光源は、マルチモード光源である、請求項3、4、8、9のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項17】
前記第一光源が出力するレーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下であり、
前記第三光源が出力するレーザ光の波長は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下である、請求項5または10に記載のレーザ加工装置。
【請求項18】
前記第一端部において、前記第一入力光ファイバのコアは、OH基を含有する、請求項1~17のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項19】
前記第一端部において、前記第一入力光ファイバのコア中のOH基の濃度は、10[ppm]以上2000[ppm]以下である、請求項18に記載のレーザ加工装置。
【請求項20】
前記第一入力光ファイバの、前記束部から外れた非伸長区間における、外力が作用しない自由状態でのコアの外径に対するクラッドの外径の比率は、1.04以上かつ1.25以下である、請求項1~19のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項21】
請求項1~5のうちいずれか一つに記載のレーザ加工装置に含まれる前記カプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置およびカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の入力光ファイバと一つの出力光ファイバとを光学的に結合したカプラとして、TFB(tapered fiber bundle)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5864644号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ加工装置が、複数の光源からのレーザ光を合波するTFBを有することにより、より好適なビーム形状を有したレーザ光を出力することができれば、有益である。
【0005】
本発明の課題の一つは、例えば、より好適なビーム形状のレーザ光を出力することが可能なレーザ加工装置およびカプラを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工装置は、例えば、マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、を備え、前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有する。
【0007】
前記レーザ加工装置にあっては、前記延部において、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのクラッド同士が溶着されてもよい。
【0008】
また、本発明のレーザ加工装置は、例えば、マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラと、マルチモード光源であってそれぞれ一つの前記第一入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する少なくとも一つの第一光源と、前記出力光ファイバと光学的に接続され、前記第一光源が出力し前記第一入力光ファイバおよび前記出力光ファイバを経由したレーザ光を出力する光学ヘッドと、を備え、前記第一端部の軸方向と交差する断面において、周方向における前記第一入力光ファイバのコアとクラッドとの間の境界が、第一部位と、当該第一部位よりも曲率半径の小さい第二部位と、を有する。
【0009】
前記レーザ加工装置にあっては、前記境界が、前記第二部位として、前記第一部位に対して径方向の内側に位置した第二部位と、前記第一部位に対して径方向の外側に位置した第二部位と、を有してもよい。
【0010】
前記レーザ加工装置は、前記第一光源として、同じ波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有してもよい。
【0011】
前記レーザ加工装置は、前記第一光源として、異なる波長のレーザ光を出力する複数の第一光源を有してもよい。
【0012】
前記レーザ加工装置にあっては、前記複数の第一光源のそれぞれのレーザ光の出力および出力停止を切替可能に構成されてもよい。
【0013】
前記レーザ加工装置にあっては、前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に光ファイバを有しなくてもよい。
【0014】
前記レーザ加工装置にあっては、前記束部は、周方向に並んだ少なくとも二つの前記第一入力光ファイバの径方向の内側に、第二入力光ファイバを有してもよい。
【0015】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第二入力光ファイバは、前記束部において、前記第一端部と並び前記第二端部と面し当該第二端部と光学的に結合された第三端部を有し、前記レーザ加工装置は、前記第二入力光ファイバと光学的に接続されレーザ光を出力する第二光源を備えてもよい。
【0016】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第二入力光ファイバは、マルチモード光ファイバであり、前記第二光源は、マルチモード光源であってもよい。
【0017】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第二光源は、前記第一光源とは異なる波長のレーザ光を出力してもよい。
【0018】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第二光源のレーザ光の出力は、前記第一光源のレーザ光の出力よりも低くてもよい。
【0019】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第一端部において、前記第一入力光ファイバのコアは、OH基を含有してもよい。
【0020】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第一端部において、前記第一入力光ファイバのコア中のOH基の濃度は、10[ppm]以上2000[ppm]以下であってもよい。
【0021】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第一入力光ファイバの、前記束部から外れた非伸長区間における、外力が作用しない自由状態でのコアの外径に対するクラッドの外径の比率は、1.04以上かつ1.25以下であってもよい。
【0022】
前記レーザ加工装置にあっては、レーザ光を出力し、前記光学ヘッドと光学的に接続された第三光源を備え、前記光学ヘッドは、前記第一光源からのレーザ光と前記第三光源からのレーザ光とを合波する光学系を有してもよい。
【0023】
前記レーザ加工装置にあっては、前記第一光源が出力するレーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下であり、前記第三光源が出力するレーザ光の波長は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下であってもよい。
【0024】
また、本発明のカプラは、例えば、マルチモード光ファイバである少なくとも二つの第一入力光ファイバと、マルチモード光ファイバである一つの出力光ファイバと、を有し、前記少なくとも二つの第一入力光ファイバが周方向に並ぶよう束ねられた束部の第一端部と、前記一つの出力光ファイバの第二端部であって前記第一端部と面した第二端部とを、光学的に結合したカプラであって、前記第一端部の軸方向と交差する断面において、前記第一入力光ファイバのクラッドは、周方向に隣り合う二つの第一入力光ファイバのコアの間で軸方向と交差する方向に線状に延びた延部を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば、より好適なビーム形状のレーザ光を出力することが可能なレーザ加工装置およびカプラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1実施形態のレーザ加工装置の例示的な模式図である。
図2図2は、照射するレーザ光の波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
図3図3は、第1実施形態のレーザ加工装置に含まれるカプラの例示的かつ模式的な断面図である。
図4図4は、第1実施形態のレーザ加工装置に含まれる入力光ファイバの非伸長区間の自由状態における例示的かつ模式的な断面図である。
図5図5は、図3のV-V断面図である。
図6図6は、第1実施形態のレーザ加工装置に含まれる出力光ファイバの断面ならびに当該断面における光軸を通るX方向に沿う中心線上およびY方向に沿う中心線上でのレーザ光の強度分布を示す例示的な模式図である。
図7図7は、第1実施形態のレーザ加工装置に含まれる出力光ファイバから出射された光が光学系を介して集光された際のフォーカス位置における光軸と直交する断面の中心線上でのレーザ光の強度分布の一例を示す模式図である。
図8図8は、第1実施形態のレーザ加工装置の光学ヘッドから対象物に向けて出力されたレーザ光の、光軸と直交する断面における光軸を通る中心線上での強度分布の一例を示す模式図である。
図9図9は、第1実施形態のレーザ加工装置に含まれる出力光ファイバの断面における光軸を通る中心線上でのレーザ光の強度分布の別の一例を示す模式図である。
図10図10は、第2実施形態のレーザ加工装置に含まれる入力光ファイバの端部の例示的かつ模式的な断面図である。
図11図11は、第3実施形態のレーザ加工装置に含まれる入力光ファイバの端部の例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0028】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0029】
本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0030】
また、図中の、矢印X、矢印Y、および矢印Zは、それぞれ、X方向、Y方向、およびZ方向を表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0031】
[第1実施形態]
[レーザ加工装置の構成]
図1は、実施形態のレーザ加工装置100の模式図である。レーザ加工装置100は、複数の光源装置111,112と、複数の入力光ファイバ11と、一つの出力光ファイバ12と、カプラ10と、光学ヘッド120と、デリバリ光ファイバ130と、コントローラ200と、を備えている。
【0032】
レーザ加工装置100では、光源装置111,112のそれぞれから出射されたレーザ光が合波され、当該合波されたレーザ光Lが、光学ヘッド120から出射される。光学ヘッド120は、対象物Wの表面Waにレーザ光Lを照射することにより、例えば、溶接や、切断のような、対象物Wのレーザ加工を行う。
【0033】
レーザ加工装置100は、レーザ光Lが表面Wa上で掃引されるよう、光学ヘッド120と対象物Wとをレーザ光Lの光軸(照射方向)と交差する方向に相対移動する相対移動機構(不図示)を備えてもよい。また、レーザ加工装置100は、レーザ光Lが表面Wa上で掃引されるよう、光学ヘッド120からのレーザ光Lの出射方向を変更するガルバノスキャナ(不図示)を備えてもよい。この場合、ガルバノスキャナは、光学ヘッド120に設けられる。なお、レーザ加工装置100は、相対移動機構およびガルバノスキャナの双方を備えてもよい。
【0034】
光源装置111,112は、それぞれ、レーザ光を出力するレーザ装置である。
【0035】
光源装置111は、マルチモード光源である。光源装置111は、例えば、光源としてダイレクトダイオードレーザを含み、それぞれ、400[nm]以上かつ500[nm]以下の波長のレーザ光を出力する。光源装置111は、第一光源の一例である。本実施形態では、複数の光源装置111は、いずれも同じ波長のレーザ光を出力する。ただし、これには限定されず、複数の光源装置111は、互いに異なる波長のレーザ光を出力してもよい。
【0036】
光源装置111には、それぞれ、入力光ファイバ11が光学的に接続されている。入力光ファイバ11は、それぞれ、光源装置111が出力したレーザ光を伝送する。入力光ファイバ11は、マルチモード光ファイバである。
【0037】
カプラ10は、複数の入力光ファイバ11と、一つの出力光ファイバ12とを、光学的に結合している。出力光ファイバ12は、デリバリ光ファイバとも称されうる。出力光ファイバ12は、マルチモード光ファイバである。
【0038】
マルチモード光ファイバは、規格化周波数Vについて以下の式を満たす光ファイバである。
V>V1=2.405
V=k*a*√(n1-n2)=2π/λ*a*√(n1-n2
k=ω/c
ここに、ωは、角周波数、a(>0)は、コア半径、n1は、コアの屈折率(n1>n2)、n2(>0)は、クラッドの屈折率、λ(>0)は、波長である。
【0039】
出力光ファイバ12は、光学ヘッド120と光学的に接続されている。出力光ファイバ12は、光源装置111が出力し入力光ファイバ11およびカプラ10を経由したレーザ光を、光学ヘッド120へ伝送する。
【0040】
光源装置112は、例えば、シングルモード光源である。光源装置112は、例えば、光源としてファイバレーザを含み、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出力する。光源装置112は、第三光源の一例である。
【0041】
デリバリ光ファイバ130は、光源装置112が出力したレーザ光を、光学ヘッド120へ伝送する。デリバリ光ファイバ130は、シングルモード光ファイバである。
【0042】
コントローラ200は、コンピュータとして作動する回路であり、光源装置111,112の作動および作動停止を切り替える作動制御信号を出力する。すなわち、光源装置111,112の作動は、コントローラ200によって制御される。
【0043】
[光学ヘッドの構成]
光学ヘッド120は、光源装置111,112から入力されたレーザ光を、対象物Wに向かって照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121(121-1,121-2)と、集光レンズ122と、ミラー123と、フィルタ124と、を備えている。コリメートレンズ121、集光レンズ122、ミラー123、およびフィルタ124は、光学部品とも称されうる。なお、光学ヘッド120が有する光学部品は、出力光ファイバ12やデリバリ光ファイバ130のレイアウト、レーザ光の波長等に応じて変更されうる。
【0044】
コリメートレンズ121(121-1,121-2)は、それぞれ、出力光ファイバ12あるいはデリバリ光ファイバ130から入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0045】
ミラー123は、コリメートレンズ121-1からのレーザ光を反射し、フィルタ124へ向かわせる。
【0046】
フィルタ124は、ミラー123からのレーザ光を透過し、かつコリメートレンズ121-2からのレーザ光を反射して、集光レンズ122へ向かわせる。フィルタ124は、例えば、閾値波長よりも長い波長の光を通過させるダイクロイックミラーである。
【0047】
集光レンズ122は、平行光としてのフィルタ124からのレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、対象物Wの表面Waへ向かわせる。なお、光学ヘッド120がガルバノスキャナを有する場合、当該ガルバノスキャナは、例えば、フィルタ124と集光レンズ122との間に設けられる。
【0048】
[波長と光の吸収率]
ここで、金属材料の光の吸収率について説明する。図2は、照射するレーザ光Lの波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。図2のグラフの横軸は波長であり、縦軸は吸収率である。図2には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、およびチタン(Ti)について、波長と吸収率との関係が示されている。
【0049】
材料によって特性が異なるものの、図2に示されている各金属に関しては、一般的な赤外線(IR)のレーザ光を用いるよりも、青や緑のレーザ光を用いた方が、エネルギーの吸収率がより高いことが理解できよう。この特徴は、銅(Cu)や、金(Au)等においては顕著となる。
【0050】
使用波長に対して吸収率が比較的低い対象物Wにレーザ光が照射された場合、大部分の光エネルギーは反射され、対象物Wに熱としての影響を及ぼさない。そのため、十分な深さの溶融部位を得るには比較的高いパワーを与える必要がある。その場合、ビーム中心部は急激にエネルギーが投入されることで、昇華が生じ、キーホールが形成される。
【0051】
他方、使用波長に対して吸収率が比較的高い対象物Wにレーザ光が照射された場合、投入されるエネルギーの多くが対象物Wに吸収され、熱エネルギーへと変換される。この過程において、パワー密度が低いレーザ光を照射した場合には、熱伝導型の溶融となる。
【0052】
本実施形態では、上述したように、光源装置111は、銅や金等に対する吸収率が相対的に高く熱伝導型の溶融を生じる波長帯(例えば、400[nm]以上かつ500[nm]以下)のレーザ光を出力する。また、光源装置112は、銅や金等に対する吸収率が相対的に低くキーホール型の溶融を生じる波長帯(例えば、800[nm]以上かつ1200[nm]以下)のレーザ光を出力する。そして、光学ヘッド120は、これら双方の波長帯のレーザ光を含むレーザ光Lを対象物Wに向けて照射する。これにより、双方の波長帯のレーザ光の照射による利点を得ることができる。
【0053】
[カプラの構成]
図3は、カプラ10の光軸Ax1,Ax2に沿う断面での断面図である。カプラ10は、複数の入力光ファイバ11の端部13bと、出力光ファイバ12の端部12cとを、光学的に結合している。カプラ10は、複数の入力光ファイバ11の光軸Ax1(中心軸)と一つの出力光ファイバ12の光軸Ax2(中心軸)とが略軸ずれ無く連なる状態で、複数の入力光ファイバ11と一つの出力光ファイバ12とを機械的に接続するとともに、光学的に結合している。本実施形態では、一つの出力光ファイバ12の端部12cのZ方向の反対方向の端面12dは、複数の入力光ファイバ11の端部13bのZ方向の端面13cと面している。そして、端部13bにおいて一体化された端面13cと端部12cの端面12dとが、互いに融着接続されている。カプラ10は、コンバイナとも称されうる。端部13bは、第一端部の一例であり、端部12cは、第二端部の一例である。
【0054】
本実施形態では、一例として、複数の入力光ファイバ11は、1本の入力光ファイバ11-2と、6本の入力光ファイバ11-1と、を含んでいる。すなわち、カプラ10は、合計7本の入力光ファイバ11を有している。なお、図3には、6本の入力光ファイバ11-1のうち2本のみが示されている。7本の入力光ファイバ11は、束ねられている。すなわち、6本の入力光ファイバ11-1は、入力光ファイバ11-2の周囲を取り囲むように光軸Ax1周りの周方向に並んで配置されている。入力光ファイバ11-1は、第一入力光ファイバの一例であり、入力光ファイバ11-2は、第二入力光ファイバの一例である。
【0055】
入力光ファイバ11(11-1,11-2)は、それぞれ、コア11aと、コア11aの外周に形成されたクラッド11bと、クラッド11bの外周に形成された被覆11cと、を有している。コア11aおよびクラッド11bは、それぞれ、例えば、石英系ガラスなどのガラスによって作られうる。また、被覆11cは、例えば、合成樹脂材料によって作られうる。なお、被覆11cは、Z方向の端部においては除去されている。入力光ファイバ11は、例えば、NAが0.15~0.22のマルチモード光ファイバである。
【0056】
出力光ファイバ12は、コア12aと、当該コア12aの周囲を取り囲むクラッド12bとを有した、マルチモード光ファイバである。コア12aおよびクラッド12bは、例えば、石英系ガラスなどのガラスによって作られうる。また、出力光ファイバ12は、クラッド12bの外周に形成された被覆を有している。被覆は、例えば、合成樹脂材料によって作られうる。出力光ファイバ12は、例えば、NAが入力光ファイバ11と同等以上のマルチモード光ファイバである。
【0057】
複数の入力光ファイバ11のZ方向の端部において、被覆11cが除去された部分は、束ねられ、統合部13を構成している。統合部13は、テーパ部13aと、当該テーパ部13aに対してZ方向に隣接した端部13bと、を有している。統合部13では、少なくとも二つの入力光ファイバ11が束ねられる。統合部13および当該統合部13を有するカプラ10は、TFBとも称されうる。統合部13は、束部の一例である。
【0058】
テーパ部13aでは、Z方向に向かうにつれて、各コア11aは徐々に細くなり、かつ、複数のコア11a間の距離が徐々に狭まっている。
【0059】
端部13bは、テーパ部13aのZ方向の端部の形状を維持したままZ方向に延びている。なお、形状を維持したままZ方向に延びている端部13bは無くてもよい。その場合、テーパ部13aのZ方向の端部が、統合部13すなわち複数の入力光ファイバ11の端部となる。
【0060】
このような統合部13は、束ねられた複数の入力光ファイバ11が加熱されながら光軸Ax1の軸方向に引き延ばされることにより形成される。この場合の加熱には、酸水素バーナが用いられる。酸水素バーナが用いられることにより、統合部13において、コア11aは、OH基を含有する。OH基によって石英ガラスを構成するSi-Oのネットワークの欠陥が回復するため、石英ガラス中の欠陥によるレイリー散乱ロスを低減することができる。この観点から、コア11a中のOH基の濃度は、10[ppm]以上2000[ppm]以下であるのが好ましい。
【0061】
図4は、入力光ファイバ11のうち、統合部13から出力光ファイバ12とは反対側に外れ加熱溶融されて引き延ばされていない非伸長区間11e(非伸長部位、図3参照)の、外力が印加されていない自由状態における中心軸と直交する断面図である。当該非伸長区間11eの自由状態での断面において、コア11aの外周およびクラッド11bの外周は、いずれも略円形である。統合部13に対して出力光ファイバ12とは反対側において、複数の入力光ファイバ11は、略円形の断面形状を維持した状態で束ねられている。
【0062】
また、図4に示されるように、本実施形態の入力光ファイバ11にあっては、クラッド11bは比較的薄い。具体的に、非伸長区間11eにおいて、コア11aの直径Daに対するクラッドの直径Dbの比Db/Daは、例えば、1.04以上かつ1.25以下に設定されている。
【0063】
図5は、図3のV-V位置における統合部13の端部13bの光軸Ax1と交差しかつ直交する断面図である。なお、わかりやすさのため、図5では、ハッチングを省略している。図5に示されるように、統合部13の断面の中央に位置する入力光ファイバ11-2のコア11aの断面形状は、略円形の形状を有している。他方、入力光ファイバ11-2の周囲に位置し光軸Ax1の周方向に並ぶ入力光ファイバ11-1のコア11aの断面形状は、それぞれ、非円形かつ略扇形の形状を有している。
【0064】
本実施形態のように、入力光ファイバ11-2の周囲に複数の入力光ファイバ11-1が並ぶ構成にあっては、入力光ファイバ11のコア11aのそれぞれの断面形状の円形度をC(=4・π・S/L、S:面積、L:周囲長、真円でC=1)とし、真円乖離度をDc(=|1-C|、1-Cの絶対値)とした場合、入力光ファイバ11-1のコア11aの真円乖離度Dcは、入力光ファイバ11-2のコア11aの真円乖離度Dcよりも大きくなる。
【0065】
図5のような断面形状は、統合部13を形成する際に、元々それぞれ円形の断面を有している入力光ファイバ11が、加熱によってより柔軟になった状態で光軸Ax1の軸方向に引っ張られることにより、得られる。この際、入力光ファイバ11-1は、それぞれ、光軸Ax1の径方向に縮むとともに光軸Ax1の周方向に延び、周方向に隣り合う入力光ファイバ11-1との間で互いに圧縮される。このような変形により、端部13bにおいては、互いに隣接する入力光ファイバ11(クラッド11bの外周)間の隙間は、変形した入力光ファイバ11によって充填されることによって、狭められ、消失する場合もある。このように、端部13bにおいて、互いに隣り合う入力光ファイバ11間の隙間が小さくなる、あるいは消失することにより、端部13bの切断および端面13cの形成において、劈開のみで済み、研磨が不要となる場合がある。この場合、製造の手間およびコストが低減されるという利点が得られる。
【0066】
各入力光ファイバ11のクラッド11bは、コア11aを取り囲む壁を形成している。互いに隣り合う二つの入力光ファイバ11において、当該二つの入力光ファイバ11のクラッド11b同士は、少なくとも部分的に溶着され、一体化されている。図5の例では、クラッド11b間の境界(界面)が消失している。ただし、これは一例であって、クラッド11b間の境界は残存していてもよい。
【0067】
クラッド11bは、内壁11b1と、外壁11b2と、複数の隔壁11b3と、を有している。端部13bにおいて、これら内壁11b1、外壁11b2、および複数の隔壁11b3は、光軸Ax1の軸方向に延びている。
【0068】
内壁11b1は、光軸Ax1の周方向に並ぶ複数の入力光ファイバ11-1のコア11aの径方向内側に位置し、管状の形状を有している。また、内壁11b1は、入力光ファイバ11-2のコア11aの周囲を取り囲んでおり、入力光ファイバ11-2のコア11aと、複数の入力光ファイバ11-1のコア11aとの間に介在している。内壁11b1は、入力光ファイバ11-2のクラッド11bと、複数の入力光ファイバ11-1のクラッド11bの一部と、を含んでいる。
【0069】
外壁11b2は、複数の入力光ファイバ11-1のコア11aの径方向外側に位置し、当該複数の入力光ファイバ11-1のコア11aの周囲を取り囲んでいる。外壁11b2は、管状の形状を有している。外壁11b2は、複数の入力光ファイバ11-1のクラッド11bの一部を含んでいる。
【0070】
隔壁11b3は、それぞれ、光軸Ax1の周方向に隣り合う二つの入力光ファイバ11-1のコア11aの間に介在し、略板状の形状を有している。図5の断面において、隔壁11b3は、光軸Ax1と交差する方向、本実施形態では、光軸Ax1の径方向に、線状に延びている。なお、隔壁11b3は、当該断面において、径方向に対して傾斜した方向に延びてもよい。隔壁11b3は、隣り合う二つの入力光ファイバ11-1のクラッド11bの一部を含んでいる。隔壁11b3においても、上述したように、当該二つのクラッド11bは、部分的に溶着されてもよいし、溶着されていなくてもよい。隔壁11b3は、延部の一例である。隔壁11b3は、ブリッジとも称されうる。
【0071】
また、図5の断面において、入力光ファイバ11-1のコア11aとクラッド11bとの間の境界11dは、隔壁11b3に沿って、第一部位11d1と、当該第一部位11d1よりも曲率半径が小さい第二部位11d21,11d22と、を有している。第一部位11d1および第二部位11d21,11d22は、光軸Ax1の周方向における入力光ファイバ11-1のコア11aとクラッド11bとの間の境界である。第二部位11d21は、第一部位11d1に対して径方向内側に位置し、第二部位11d22は、第一部位11d1に対して径方向外側に位置している。第一部位11d1は、二つの第二部位11d21,11d22の間に挟まれている。上述したように、統合部13を形成する際に、元々それぞれ円形の断面を有している入力光ファイバ11が、加熱によってより柔軟になった状態で光軸Ax1の径方向内方に向けて加圧されて変形することにより、このような第一部位11d1および第二部位11d21,11d22を有した境界11dが形成される。
【0072】
発明者らは、鋭意研究により、カプラ10における、図5のような断面形状を有する複数の入力光ファイバ11と一つの出力光ファイバ12との光学的な結合により、出力光ファイバ12の光軸Ax2と直交する断面において、レーザ光のフラットトップ型(台形型)の強度分布が得られるという知見を得た。
【0073】
図6は、出力光ファイバ12のコア12aの光軸Ax2と直交する断面、並びに、一つの入力光ファイバ11-1にレーザ光を入力した場合における、当該コア12aの断面でのレーザ光の強度分布の一例を示している。図6において、グラフGxは、光軸Ax2を通りX方向に沿う中心線lx上でのレーザ光の強度分布であり、グラフGyは、光軸Ax2を通りY方向に沿う中心線ly上でのレーザ光の強度分布である。グラフGx,Gyに示されるように、中心線lx、lyの双方において、レーザ光は、フラットトップ型の強度分布を有している。なお、レーザ光の強度分布は、光軸Ax2を中心とした略軸対称形状を有しており、中心線lx,ly以外の中心線においても、グラフGx,Gyとほぼ同等の強度分布が得られる。
【0074】
図7は、一つの入力光ファイバ11-1にレーザ光を入力した場合における、出力光ファイバ12から出射された光が光学系を介して集光された際のフォーカス位置における光軸Ax2と直交する断面の中心線上でのレーザ光の強度分布の一例を示すグラフである。横軸dは、中心線上の位置を示し、縦軸Pは、レーザ光の強度を示している。
【0075】
本明細書では、レーザ光の強度分布の平坦度F(%)を、次の式(1)のように定義する。
F=Pmax/Pmin×100 ・・・(1)
ここに、Pmaxは、コア12aの断面のうち光軸Ax2を中心とした直径k・Dの円形の対象範囲におけるレーザ光の強度の最大値、Pminは、当該対象範囲におけるレーザ光の強度の最小値、Dは、フォーカス位置におけるビーム径、kは、平坦度Fの演算の対象範囲を定める係数であって0より大きく1より小さい数である。平坦度Fは、100以上の値であり、平坦度Fの値が100に近いほど平坦である。
【0076】
上述したように、光学ヘッド120は、光源装置111から出力されたレーザ光と、光源装置112から出力されたレーザ光とを、対象物Wの表面Waに向けて照射する。図8は、光学ヘッド120から出力されたレーザ光Lの、光軸Ax3と直交する断面における光軸Ax3を通る中心線上での強度分布の一例を示すグラフである。実線は、光源装置111からの400[nm]以上かつ500[nm]以下の波長のレーザ光(以下、第一レーザ光と記す)の強度分布であり、破線は、光源装置112からの800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光(以下、第二レーザ光と記す)の強度分布である。図8に示されるように、第一レーザ光の最大値P1maxが第二レーザ光の最大値P2maxよりも低く、かつ第一レーザ光の幅W1(ビーム幅)が第二レーザ光の幅W2(ビーム幅)よりも広い場合に、スパッタや、ブローホール、割れ等の少ないより高品質なレーザ加工を実行することができる。これは、第二レーザ光によるキーホール型の溶融池の周囲に、第一レーザ光による熱伝導型の溶融池が形成されることにより、溶融池をより安定化できるからであると推定される。また、レーザ光Lが表面Wa上を掃引される場合には、第二レーザ光が加工位置に到達する前に、当該加工位置が第一レーザ光によって照射され、予め加熱されることにより、加工位置の急激な温度上昇が抑制され、溶融池が安定化されると推定される。なお、ビーム幅は、そのビームのピークを含み、ピーク強度の1/e以上の強度の領域の径として定義してもよい。また、円形でないビームの場合は、掃引方向と垂直方向における、ピーク強度の1/e以上の強度となる領域の長さをビーム幅と定義してもよい。
【0077】
発明者らは、鋭意研究により、本実施形態のように光学ヘッド120において光源装置111からの第一レーザ光と光源装置112からの第二レーザ光とを合波して対象物Wの表面Waに向けて出力するレーザ加工にあっては、第一レーザ光の平坦度Fが、レーザ加工の品質の観点から、係数k=0.7とした場合に、120以下であるのが好ましく、110以下であるのがより好ましいことを見出した。
【0078】
また、発明者らは、鋭意研究により、さらに、以下(1)~(6)のような知見を得た。
(1)複数の入力光ファイバ11-1のうち少なくとも一つ、言い換えると一つ以上の入力光ファイバ11-1にレーザ光を入力した場合には、係数k=0.7において平坦度Fが120以下となる第一レーザ光が得られる。
(2)複数の入力光ファイバ11-1のうち同じ強度のレーザ光を入力する入力光ファイバ11-1の数を増やすほど、最大値P1maxが大きくなる。この場合も、係数k=0.7において平坦度Fは120以下となる。
(3)参考例として、入力光ファイバ11-1にはレーザ光を入力せず、入力光ファイバ11-2のみにレーザ光を入力した場合、係数k=0.7において平坦度Fは120以下にはならず、ガウシアン分布のような、単峰型の強度分布となる。
(4)入力光ファイバ11-2にレーザ光を入力した場合にあっても、複数の入力光ファイバ11-1のうち少なくとも一つにレーザ光を入力した場合には、係数k=0.7において平坦度Fが120以下となる第一レーザ光が得られる場合がある。
(5)(4)の場合、入力光ファイバ11-2に入力されたレーザ光の強度は、入力光ファイバ11-1に入力されたレーザ光の合計の強度または入力光ファイバ11-1のそれぞれに入力されたレーザ光の強度よりも低いのが好ましい。また、入力光ファイバ11-1に入力されたレーザ光の強度と、入力光ファイバ11-2に入力されたレーザ光の強度との比率の調整により、平坦度Fを変化させることができる。
(6)参考例として、断面円形の入力光ファイバが束ねられた構成では、係数k=0.7において平坦度Fが120以下となる第一レーザ光は得られない。
【0079】
上記(1)~(6)において見られた現象は、光源装置111がマルチモード光源であるとともに入力光ファイバ11および出力光ファイバ12がマルチモード光ファイバであることに加えて、(a)入力光ファイバ11-1のコア11aが図5に示すような非円形断面を有していることや、(b)光軸Ax1の周方向に隣接するコア11a間のクラッド11bが薄く、周方向に隣り合うコア11a間でクラッド11bを介したレーザ光の漏出が生じていること、などが原因であると推定される。
【0080】
(b)については、入力光ファイバ11-1は、上述したように、クラッド11bが比較的薄いものであるのが好ましい。この観点から、入力光ファイバ11-1のうち、統合部13に対して出力光ファイバ12とは反対側に外れ加熱溶融されて引き延ばされていない非伸長区間11eにおける、コア11aの直径Da(図4参照)に対するクラッドの直径Dbの比Db/Daは、外力が作用していない自由状態あるいは当該自由状態と略同じ状態において、1.04以上かつ1.25以下であることが好ましく、1.04以上かつ1.08以下であることがより好ましい。また、クラッド径/コア径=125/115を上限に設定するのが、さらに好ましい。
【0081】
また、上記(2)の知見から、レーザ加工装置100において、コントローラ200が出力する作動制御信号により、複数の光源装置111のうちレーザ光を出力する光源装置111の数を変更する(切り替える)ことにより、第一レーザ光について、係数k=0.7において平坦度Fが120以下となる状態を維持しながら、当該第一レーザ光の強度を変更することができる。これにより、対象物Wの材質や、表面Waの面粗度、対象物Wの厚さ等に応じた、より適切な条件で、より高品質なレーザ加工を行うことができる。
【0082】
また、統合部13において中央に位置する入力光ファイバ11-2と光学的に接続された光源装置111は、統合部13において周辺に位置する入力光ファイバ11-1と光学的に接続された光源装置111とは異なる波長のレーザ光を出力してもよい。入力光ファイバ11-2と光学的に接続された光源装置111は、第二光源の一例であり、入力光ファイバ11-2の端部13bは、第三端部の一例である。なお、入力光ファイバ11-1と光学的に接続された光源装置111は、400[nm]以上かつ500[nm]以下の波長のレーザ光(第二レーザ光)を出力し、入力光ファイバ11-2と光学的に接続された光源装置111は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光(第二レーザ光)を出力してもよい。
【0083】
図9は、複数の入力光ファイバ11-1にレーザ光を入力した場合における、出力光ファイバ12のコア12aの光軸Ax2と直交する断面の中心線上でのレーザ光の強度分布の別の一例を示すグラフである。図9の例では、レーザ光の強度分布は、光軸Ax2から離れた二箇所に強度のピークを有した、所謂双峰型(M型)の強度分布である。この場合においても、係数=0.7において平坦度Fが120以下の強度分布であれば、より高品質なレーザ加工を行うことができる。なお、図9の双峰型に限らず、より多くのピークを有した多峰型の強度分布であっても、係数=0.7において平坦度Fが120以下の強度分布であれば、より高品質なレーザ加工を行うことができる。
【0084】
以上、説明したように、本実施形態では、少なくとも二つの入力光ファイバ11-1(第一入力光ファイバ)と出力光ファイバ12とが光学的に結合されたカプラ10の、当該入力光ファイバ11-1の端部13b(第一端部)において、入力光ファイバ11-1のコア11aのそれぞれの断面形状は、非円形形状を有している。
【0085】
また、本実施形態では、端部13bの光軸Ax1の軸方向と交差する断面において、入力光ファイバ11-1のクラッド11bは、光軸Ax1の周方向に隣り合う二つの入力光ファイバ11-1のコア11aの間に隔壁11b3(延部)を有している。当該隔壁11b3は、当該軸方向と交差する方向に線状に延びている。
【0086】
また、本実施形態では、端部13bの光軸Ax1の軸方向と交差する断面において、光軸Ax1の周方向における入力光ファイバ11-1のコア11aとクラッド11bとの間の境界11dが、第一部位11d1と、当該第一部位11d1よりも曲率半径の小さい第二部位11d21,11d22と、を有している。
【0087】
また、本実施形態では、入力光ファイバ11-1の、統合部13(束部)から外れた非伸長区間11eにおける、外力が作用しない自由状態でのコアの外径に対するクラッドの外径の比率は、1.04以上かつ1.25以下である。
【0088】
このような構成によれば、出力光ファイバ12の光軸Ax2と直交する断面における、光軸Ax2を通る中心線上でのレーザ光の強度分布は、単峰型ではなく、フラットトップ型あるいは多峰型となる。また、当該強度分布において、係数k=0.7における平坦度Fは、120以下となる。本実施形態によれば、好適なレーザ光Lのビーム形状を得ることができるレーザ加工装置100を、より簡素なあるいはよりコンパクトな構成によって実現することができる。
【0089】
また、本実施形態のように、端部13bにおいて、互いに隣り合う入力光ファイバ11のクラッド11b同士が部分的に溶着し、複数の入力光ファイバ11が一体化されてもよい。この場合、例えば、複数の入力光ファイバ11を束ねる部材が不要となる分、カプラ10をよりコンパクトに構成することができたり、部品点数を減らすことができる分、製造の手間やコストを低減できたりといった、利点が得られる。
【0090】
本実施形態のカプラ10は、対象物Wの表面Waに、400[nm]以上かつ500[nm]以下の波長の第一レーザ光と、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第二レーザ光とを合波したレーザ光Lを照射するレーザ加工装置100において、第一レーザ光を出力する複数の光源装置111からのレーザ光を結合するカプラ10に、適用することができる。この場合、レーザ光Lの光軸と交差する断面における第一レーザ光の強度分布を、単峰型ではなく、フラットトップ型や多峰型とすることができ、ひいてはより高品質なレーザ加工を行うことができるという利点が得られる。
【0091】
[第2実施形態および第3実施形態]
図10は、第2実施形態のカプラ10Aの統合部13の端部13bの、図5と同等位置での断面図である。図11は、第3実施形態のカプラ10Bの統合部13の端部13bの、図5と同等位置での断面図である。入力光ファイバ11の数や配置、端部13bの断面形状等を除き、第2実施形態のカプラ10Aおよび第3実施形態のカプラ10Bは、第1実施形態のカプラ10と同様の構成を有している。なお、図10,11でも、ハッチングを省略している。
【0092】
第2実施形態の端部13bは、光軸Ax1の周方向に並んだ四つの入力光ファイバ11-1を有し、第3実施形態の端部13bは、光軸Ax1の周方向に並んだ三つの入力光ファイバ11-1を有している。また、第2実施形態および第3実施形態において、端部13bは、入力光ファイバ11-2を有しない。
【0093】
第2実施形態および第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、入力光ファイバ11-1のコア11aの断面形状は、それぞれ、非円形かつ略扇形の形状を有している。ただし、端部13bには、断面の中心において、複数の入力光ファイバ11-1の間の隙間gが形成されている。
【0094】
また、第2実施形態および第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、端部13bの光軸Ax1の軸方向と交差する断面において、入力光ファイバ11-1のクラッド11bは、光軸Ax1の周方向に隣り合う二つの入力光ファイバ11-1のコア11aの間に隔壁11b3(延部)を有している。当該隔壁11b3は、当該軸方向と交差する方向に線状に延びている。
【0095】
また、第2実施形態および第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、端部13bの光軸Ax1の軸方向と交差する断面において、光軸Ax1の周方向における入力光ファイバ11-1のコア11aとクラッド11bとの間の境界11dは、第一部位11d1と、当該第一部位11d1よりも曲率半径の小さい第二部位11d21,11d22と、を有している。
【0096】
また、第2実施形態および第3実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、入力光ファイバ11-1の、統合部13(束部)から外れた非伸長区間11e(図10,11には不図示、図3参照)における、外力が作用しない自由状態でのコアの外径に対するクラッドの外径の比率は、1.04以上かつ1.25以下である。
【0097】
これら第2実施形態および第3実施形態においても、出力光ファイバ12の光軸Ax2と直交する断面における、光軸Ax2を通る中心線上でのレーザ光の強度分布は、単峰型ではなく、フラットトップ型あるいは多峰型となる。また、当該強度分布において、係数k=0.7における平坦度Fは、120以下となる。第1実施形態のカプラ10に替えて第2実施形態のカプラ10Aおよび第3実施形態のカプラ10Bのうちいずれかを適用したレーザ加工装置100は、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
100…レーザ加工装置
10,10A,10B…カプラ
11…入力光ファイバ
11-1…入力光ファイバ(第一入力光ファイバ)
11-2…入力光ファイバ(第二入力光ファイバ)
11a…コア
11b…クラッド
11b1…内壁
11b2…外壁
11b3…隔壁(延部)
11c…被覆
11d…境界
11d1…第一部位
11d21,11d22…第二部位
11e…非伸長区間
12…出力光ファイバ
12a…コア
12b…クラッド
12c…端部(第二端部)
12d…端面
13…統合部(束部)
13a…テーパ部
13b…端部(第一端部)
13c…端面
111…光源装置(第一光源)
112…光源装置(第二光源)
120…光学ヘッド
121,121-1,121-2…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…ミラー
124…フィルタ
130…デリバリ光ファイバ
200…コントローラ
Ax1…光軸
Ax2…光軸
Ax3…光軸
d…(径方向の)位置
D…(出力光ファイバのコアの)外径
Da…(第一入力光ファイバのコアの)外径
Db…(第一入力光ファイバのクラッドの)外径
F…平坦度
Gx,Gy…グラフ
g…隙間
k…係数
L…レーザ光
lx,ly…中心線
P…強度
Pmax…最大値
Pmin…最小値
P1max…(第一レーザ光の)最大値
P2max…(第二レーザ光の)最大値
W…対象物
Wa…表面
W1…(第一レーザ光の)幅
W2…(第二レーザ光の)幅
X…方向
Y…方向
Z…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11