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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】凍結保存装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241126BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   B01L 9/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
A61J3/00 301
B65G1/00 521A
B01L9/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021034443
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134930
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青田 周樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 守
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148254(WO,A1)
【文献】特開昭61-023012(JP,A)
【文献】特開2008-100825(JP,A)
【文献】実開昭51-057484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65G 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のケースを内部に収容する凍結保存容器を備え、前記凍結保存容器の上方が作業空間とされた凍結保存装置であって、
前記ケースは、鉛直方向に互いに離間する複数の床板を有し、X軸方向の幅が異なる二種以上の箱が、前記床板の各々に載置されて収納可能とされており、
前記凍結保存容器の上面には前記作業空間と連通し、前記ケースが通過可能な開口部が形成され、
前記作業空間には、前記凍結保存容器から取り出した取出対象の前記箱を載置可能な第1ステージと、前記箱の前記第1ステージ上の位置を規制する2以上の位置決めガイドと、前記ケースを把持し、前記開口部を介して前記ケースを鉛直方向に上昇および下降させるとともに、前記ケースを任意の高さに維持する第1アームと、前記第1ステージと隣接する高さに位置する前記取出対象の前記箱を、前記ケース側から前記第1ステージ側に移動させる第2アームが設けられ、
前記第1ステージは、平面視した際に前記開口部の前記X軸方向に沿った周辺に隣接する位置に設けられ、
2以上の前記位置決めガイドは、少なくとも第1の位置決めガイドと第2の位置決めガイドとを含み、総ての前記位置決めガイドは、前記開口部と対向する位置に入口部があり、前記入口部から前記X軸方向と直行するY軸方向に延在する一対の幅規制部を有し、
前記第1の位置決めガイドが有する一対の前記幅規制部は、対向する壁面の離間距離が、二種以上の前記箱の内前記X軸方向の前記幅が最も小さい前記箱の前記幅と同等以上であって、かつ、前記X軸方向の前記幅が2番目に小さい前記箱の前記幅よりも小さく、
前記第2の位置決めガイドが有する一対の前記幅規制部は、対向する壁面の離間距離が、二種以上の前記箱の内前記X軸方向の前記幅が2番目に小さい前記箱の前記幅と同等以上であり、
2以上の前記位置決めガイドは、一対の前記幅規制部の対向する壁面の離間距離が小さなものから順に、鉛直方向下方の一対の前記幅規制部各々の上面の一部が露出するように鉛直方向上方に向かって積み重ねられており、
前記X軸方向の前記幅が最も小さい前記箱が前記取出対象の前記箱である場合は、前記第1アームで前記取出対象の前記箱を収納した前記ケースを前記開口部から取り出して、前記取出対象の前記箱を載置した前記床板の上面が前記第1ステージより高く、一対の前記第1の位置決めガイドの一対の前記幅規制部の上面より低い位置となるまで上昇させた状態で前記第2アームにより前記取出対象の前記箱を前記第1ステージ上に押し出し、
前記X軸方向の前記幅が2番目に小さい前記箱が前記取出対象の前記箱である場合は、前記第1アームで前記取出対象の前記箱を収納した前記ケースを前記開口部から取り出して、前記取出対象の前記箱を載置した前記床板の上面が前記第1の位置決めガイドの一対の前記幅規制部の上面より高い位置となるまで上昇させた状態で前記第2アームにより前記取出対象の前記箱を前記第1の位置決めガイドが有する前記幅規制部上に押し出すように動作する凍結保存装置。
【請求項2】
前記位置決めガイドの一対の前記幅規制部には、前記入口部における、対向する壁面の離間距離が、前記第1ステージ側から前記ケース側へ向かって拡径するテーパが設けられる、請求項1に記載の凍結保存装置。
【請求項3】
総ての前記位置決めガイドは、前記入口部と反対側に、一対の前記幅規制部の下面よりも鉛直方向上方に延在する壁面からなる奥行規制部を有する、請求項1又は2に記載の凍結保存装置。
【請求項4】
前記第1ステージに載置された前記箱を、前記ケースに移動させる第3アームをさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の凍結保存装置。
【請求項5】
前記第1ステージに載置された前記箱を、前記ケースに移動させる第3アームをさらに備え、
前記第3アームが、前記第1ステージを挟んで前記ケースと反対側に位置し、
1以上の前記位置決めガイドの前記奥行規制部に、前記第3アームが挿通可能な開口が設けられる、請求項に記載の凍結保存装置。
【請求項6】
前記第1ステージと2以上の前記位置決めガイドとが、分離不可能に一体化されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の凍結保存装置。
【請求項7】
前記第1ステージと2以上の前記位置決めガイドとが、分離可能に固定されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の凍結保存装置。
【請求項8】
2以上の前記位置決めガイドが、それぞれ分離可能に固定されている、請求項に記載の凍結保存装置。
【請求項9】
さらに、1以上の前記ケースを備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の凍結保存装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存装置、及び凍結保存装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新薬の開発や医療の基礎研究では、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生体試料が用いられている。生体試料は、常温では生物学的作用により劣化するため、凍結保存装置などにより凍結保存されるのが一般的である。凍結保存装置としては、液体窒素を用いた凍結保存装置が、長期間安定して保存できるため、広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体窒素を用いた凍結保存装置として、容器の直径より半分程度の開口部をもち、内部の載置トレイを自在に回転することができる凍結保存装置が開示されている。なお、特許文献1に開示された凍結保存容器では、試料を大量に収納するため、複数の試料を収納箱に納め、さらに複数の収納箱をケース本体に納めている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された凍結保存容器では、作業者自身が凍結保存容器から試料等の保存対象が収納されたケース本体を入出庫する必要があるため、凍結保存容器内の低温の液体窒素に対する凍傷防止のための装備や治具を使わなければならない等、作業者への負担が大きかった。また、ケース本体を凍結保存容器から出庫した状態で、目的の保存対象を取り出す必要があるため、ケース本体内に収納された他の保存対象も昇温するおそれがあった。
【0005】
そこで、特許文献2には、目的の試料等の保存対象を自動で取り出すことができ、かつ、目的の保存対象以外の保存対象が昇温することを抑えることが可能な凍結保存装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-143873号公報
【文献】特許第6368032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された凍結保存装置では、試料を大量に収納するため、複数の試料を収納箱に納め、さらに複数の収納箱をケース本体に納めている。しかしながら、試料を収納する収納箱は規格化が不十分であり、様々な大きさや形状があるのが実情である。したがって、自動運転であってもこれらの2種以上の収納箱の同時使用が可能であることが要求される。
さらに、自動運転の際、収納箱に対して衝撃を与えないことに加えて、搬送時の落下や搬送先との衝突の恐れがないことが要求されているが、2種以上の収納箱を同時使用する際、特に懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、自動運転において2種以上の収納箱の同時使用が可能な凍結保存装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、自動運転において、搬送時の落下や搬送先との衝突の恐れがなく、収納箱に対して衝撃を与えない凍結保存装置の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 保存対象が収納された箱を収納するケースと、
1以上の前記ケースを内部に収容し、外部と連通する開口部を上面に有する凍結保存容器と、
前記ケースを把持し、前記開口部を介して前記ケースを鉛直方向に上昇および下降させるとともに、前記ケースを任意の高さに維持する第1アームと、
前記凍結保存容器の上方であって、平面視した際に前記開口部に隣接する位置に移動可能であり、前記箱を載置可能な第1ステージと、
前記第1ステージと隣接する高さに位置する前記箱を、前記ケース側から前記第1ステージ側に移動させる第2アームと、を備え、
前記ケースは、前記ケース側から第1ステージ側に向かう第1方向と直行する第2方向の幅が異なる二種以上の前記箱を収納可能であり、
前記第1ステージには、二種以上の前記箱の前記幅にそれぞれ対応する開口からなる入口部を有し、前記箱の前記第1ステージ上の位置を規制する2以上の位置決めガイドが設けられ、
2以上の前記位置決めガイドは、前記入口部が前記ケース側に対向する向きに揃えられ、前記第1ステージ上に、前記幅が小さなものから順に鉛直方向上方に向かって積み重ねられている、凍結保存装置。
[2] 前記位置決めガイドは、対象となる前記箱が載置される載置面から鉛直方向上方に延在し、前記幅の長さに離間し、かつ互いに対向した状態で前記第1方向に延在する一対の壁面からなる幅規制部をそれぞれ有する、[1]に記載の凍結保存装置。
[3] 前記位置決めガイドは、前記入口部に前記第1ステージ側から前記ケース側へ向かって拡径するテーパが設けられる、[1]又は[2]に記載の凍結保存装置。
[4] 鉛直方向上下に配置された2つの位置決めガイドにおいて、下方に位置する前記位置決めガイドの前記幅規制部の上面の一部が、上方に位置する前記位置決めガイドの対象である前記箱の載置面となる、[1]乃至[3]のいずれかに記載の凍結保存装置。
[5] 前記位置決めガイドは、前記入口部と反対側に、前記載置面から鉛直方向上方に延在する壁面からなる奥行規制部を有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載の凍結保存装置。
[6] 前記第1ステージに載置された前記箱を、前記ケースに移動させる第3アームをさらに備える、[1]乃至[5]のいずれかに記載の凍結保存装置。
[7] 前記第3アームが、前記第1ステージを挟んで前記ケースと反対側に位置し、
1以上の前記位置決めガイドの前記奥行規制部に、前記第3アームが挿通可能な開口が設けられる、[6]に記載の凍結保存装置。
[8] 前記第1ステージと2以上の前記位置決めガイドとが、分離不可能に一体化されている、[1]乃至[7]のいずれかに記載の凍結保存装置。
[9] 前記第1ステージと2以上の前記位置決めガイドとが、分離可能に固定されている、[1]乃至[7]のいずれかに記載の凍結保存装置。
[10] 2以上の前記位置決めガイドが、それぞれ分離可能に固定されている、[9]に記載の凍結保存装置。
[11] 保存対象が収納された箱を収納するケースを、凍結保存容器の内部に収容して保存するとともに、前記凍結保存容器から前記ケースを搬送テーブルと同じ高さに引き上げた後、前記ケースと前記搬送テーブルとの間で前記箱を自動で移動可能な凍結保存装置の運転方法であって、
前記ケース及び前記搬送テーブルのうち、移動元における前記箱の載置面の高さが、移動先における前記箱の載置面の高さよりも高くなるように、前記ケースを鉛直方向上下に移動し、前記ケースの高さを維持した後、前記箱を移動元から移動先に向かって移動させる、凍結保存装置の運転方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の凍結保存装置は、自動運転において2種以上の収納箱の同時使用が可能である。
本発明の凍結保存装置の運転方法は、自動運転の際、搬送時の落下や搬送先との衝突の恐れがなく、収納箱に対して衝撃を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置を示す側面模式図である。
図2】本実施形態の凍結保存装置に適用可能な、保存対象が収納されたボックス(箱)の一例を示す平面図である。
図3】本実施形態の凍結保存装置に適用可能なドロワーを示す斜視図である。
図4】本実施形態の凍結保存装置に適用可能なドロワーの、開口している側面から見た側面図である。
図5】本実施形態の凍結保存装置に適用可能なドロワーの、一方の縦板側から見た側面図である。
図6】本実施形態の凍結保存装置における凍結保存容器を側面から見た断面模式図である。
図7】本実施形態の凍結保存装置における凍結保存容器を上から見た断面模式図である。
図8】本実施形態の凍結保存装置におけるドロワー昇降装置の動作を示す側面図である。
図9】本実施形態の凍結保存装置における第1ステージ、第2ステージ、第1の押圧装置、および第2の押圧装置を示す平面図である。
図10】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドの構成の一例を示す斜視図である。
図11】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドをドロワー側から見た正面図である。
図12】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドにボックスを載置する方法を示す平面図である。
図13】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドにボックスを載置する方法を示す平面図である。
図14】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドにボックスを載置した状態を側面から見た断面図である。
図15】本実施形態の凍結保存装置における搬送系統を示す側面模式図である。
図16】本実施形態の凍結保存装置の運転方法において、ドロワーから第1ステージにボックスを移動する方法を説明する側面図である。
図17】本実施形態の凍結保存装置の運転方法において、第1ステージからドロワーにボックスを移動する方法を説明する側面図である。
図18】本実施形態の凍結保存装置におけるボックスガイドの構成の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置、及びその運転方法について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<凍結保存装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置の構成について、図1図15を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置1を示す側面模式図である。図1に示すように、本実施形態の凍結保存装置1は、凍結保存容器2と、作業空間3にドロワー昇降装置(第1アーム)4と、第1ステージ5と、第2ステージ6と、第1の押圧装置(第3アーム)7と、第2の押圧装置(第2アーム)8と、少なくともドロワー昇降装置(第1アーム)4および第2の押圧装置(第2アーム)8を制御する制御装置(制御部)(図示略)と、外部に制御装置へのバイアル、ボックス(箱)あるいはドロワー(ケース)13の入出庫情報について入出力を行うための管理用の入出力装置9とを備えて概略構成されている。
【0014】
本実施形態の凍結保存装置1は、制御装置(図示略)によってドロワー昇降装置4および第2の押圧装置8を独立して駆動させることにより、凍結保存容器2内に保存されている目的の生体試料を自動で取り出すとともに、目的以外の生体試料の昇温を低減できる。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の凍結保存装置1では、平面視した際、複数のバイアル(保存対象)11がボックス(箱)12A,12B内にそれぞれ収納されている。
なお、本実施形態の凍結保存装置1では、2種以上の規格のボックス(箱)を用いることが可能であるが、以下、2種の規格のボックス12Aとボックス12Bとを用いる場合を一例として説明する。
【0016】
バイアル11は、生体試料などの試料を直接収容するための円筒状容器である。バイアル11は、生体試料などの試料を直接収容することができ、凍結保存容器内の低温に耐えられるものであれば、樹脂、ガラス等種々の材質からなる容器を使用することができ、特に限定されない。
【0017】
ボックス12A,12Bは、それぞれ複数のバイアル11を収納するための箱である。
ここで、ボックス12Aは、平面視した際、一辺の幅がWの正方形であり、81本の複数のバイアル11を2次元に並べて収納できる。
また、ボックス12Bは、平面視した際、長辺の幅がWの長方形(矩形)であり、48本の複数のバイアル11を2次元に並べて収納できる。
なお、ボックス12A,12Bは、ボックス12A,12Bに収納したままバイアル11の底面に貼り付けられたバーコードを後述するバーコードリーダーにて読み取ることができるよう、ボックス12A,12Bの底面が複数の開口を有していてもよい。各開口の形状は、バイアル11の突上げやバーコードの読み取りが可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、バイアル11よりもひとまわり小さな円形や矩形であってもよいし、スリット状や格子状であってもよい。
【0018】
ドロワー(ケース)13は、2種以上のボックス12A,12Bを収納することが可能な、ラック状の収納部材である。
図3に示すように、ドロワー13は、側面となる一対の縦板31,31と、縦板31,31間に亘って設けられた複数の床板32とによって構成される。これにより、鉛直方向(以下、「Z軸方向」と記載する場合がある)に連続して棚が設けられ、各棚にボックス12A及びボックス12Bのうちいずれか一つを収納することができる。また、一対の縦板と直交する少なくとも一つの側面が開口しているため、ボックス12A,12Bの出し入れが可能となっている。
【0019】
図4及び図5に示すように、ドロワー13には、2種類のボックス12A,12BがX軸方向に交互に収納されている。
具体的には、図4に示すように、2種類のボックス12A,12Bは、ドロワー13の開口している側面から、ボックス12Aの一辺(幅W)、及びボックス12Bの長辺(幅W)が見える向きに並べられて、床板32上にそれぞれ載置されている。
換言すると、ドロワー(ケース)13は、ドロワー13側から後述する第1ステージ5側に向かう第1方向(後述するY軸方向)と直行する第2方向(後述するX軸方向)の幅が異なる2種類のボックス12A,12Bを収納可能である。
【0020】
なお、本実施形態の凍結保存装置1では、1つのドロワー13に2種類のボックス12A,12BをX軸方向に交互に収納する態様を一例として説明したが、ドロワー13へのボックス12A,12Bの収納の態様はこれに限定されない。例えば、2種類のボックス12A,12Bを1つのドロワー13のX軸方向の上下に種類ごとに分けて収納する態様としてもよいし、1つのドロワー13に1種のボックスのみを収納する態様としてもよい。
【0021】
ドロワー13の上面には、把持部33が設けられている。この把持部33の形状は、ドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させることができるものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置4によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置4によって把持部33を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置4をZ軸方向に上昇および下降させることで、ドロワー13を後述する凍結保存容器2の開口部23a,23bから自動で入出庫させることができる。
なお、ドロワー13としては、ボックス12を収納することができ、かつ、ドロワー昇降装置4によりZ軸方向に上昇および下降させることが可能であれば、特に限定されない。
【0022】
図1に示すように、凍結保存容器2は、本実施形態の凍結保存装置1の下方に設けられている。凍結保存容器2は、1以上のドロワー13を内部に収容し、凍結保存するための容器である。
【0023】
図6は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置1における凍結保存容器2を側面から見た断面模式図である。
図6に示すように、凍結保存容器2は、ステンレス鋼などからなる内槽21と外槽22とから形成される二重構造であり、内槽21と外槽22との間の空隙が真空である真空二重断熱容器である。したがって、内槽21の内部に液体窒素などの低温液化ガスを満たすことにより、内部を低温状態に保持することができる。例えば、内槽21の底部付近まで、具体的には後述のドロワーテーブル(回転テーブル)24の下まで液体窒素を満たすことにより、内槽21の内部の気相部を-150℃以下に保持することができる。
【0024】
凍結保存容器2の上面には、2つの開口部23a,23bが設けられている。この開口部23a,23bを介して、凍結保存容器2の内部空間と作業空間3とが連通されている。
2つの開口部23a,23bは、後述のドロワーテーブル(回転テーブル)24の半径方向に互いに隣接するように設けられている。ここで、2つの開口部23a,23bが隣接して並ぶ方向を「X軸方向」と記載する。
【0025】
各開口部23a,23bの開口面積は、ドロワー13を平面視した際の面積とほぼ同等となっている。このため、作業空間3においてドロワー13からボックス12A,12Bを搬送する際に、誤ってボックス12A,12Bが開口部23a,23bから凍結保存容器2内に落下することを防止することができる。
【0026】
各開口部23a,23bは、当該開口部を閉塞するキャップ25が設置可能とされている。ここで、図6では、開口部23aにキャップ25が設けられて閉塞されており、開口部23bにはキャップ25が設けられていない場合を一例として説明する。各開口部23a,23bにそれぞれキャップ25を設けることにより、当該開口部が閉塞されるため、凍結保存容器2内の温度の上昇を抑制することができる。
【0027】
キャップ25の材質としては、断熱性能の高いものであれば特に限定されないが、例えば、発泡ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0028】
キャップ25の上面には、把持部26が設けられている。この把持部26の形状は、キャップ25を各開口部23a,23bから着脱させる際に把持しやすいものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置4によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置4によって把持部26を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置4をZ軸方向に上昇および下降させることで、キャップ25を開口部23a,23bから自動で着脱させることができる。
【0029】
図6および図7に示すように、凍結保存容器2内の底部には、ドロワー13を載置させるためのドロワーテーブル24が設けられている。このドロワーテーブル24は、凍結保存容器2の外側に設けられドロワーテーブル24の中心軸28に結合したモーター27により、回転軸28を中心として回転させることができるように構成されている。
【0030】
また、図7に示すように、ドロワーテーブル24上には、回転軸28を中心とする任意の2つの同心円の各円周上に、複数のドロワー13をそれぞれ載置可能とされている。なお、平面視した際に、開口部23a,23bが上記同心円の各円周上となるように、各開口部と同心円とが位置合わせされている。
【0031】
これにより、任意のドロワー13を取り出す際に、ドロワーテーブル24を回転させることにより、任意のドロワー13を開口部23aまたは開口部23bの真下に位置するように移動させることができる。
【0032】
また、図6に示すように、ドロワーテーブル24上には、各ドロワー13を載置する位置に対応するように、上端部が広がったテーパ形状とされたドロワーガイド29が設けられている。ドロワーガイド29を設けることにより、各ドロワー13が所定の位置に載置されるように固定することができる。これにより、ドロワーテーブル24を回転させた際に、ドロワーテーブル24上で各ドロワー13の位置がずれることを防止することができる。また、ドロワーガイド29のテーパ部がドロワー13下降時の位置ずれを補正することができる。
【0033】
各ドロワー13をドロワーテーブル24上に載置する際は、後述するドロワー昇降装置4によりドロワー13を上昇した場合に、ドロワー13の開口している側面が第1ステージ5側を向くように載置する。
ドロワー昇降装置4によってドロワー13の把持部33を把持し、ドロワー昇降装置4をZ軸方向に上昇および下降させることで、ドロワー13を開口部23aあるいは開口部23bから自動で入出庫させることができる。
【0034】
作業空間3は、図1に示すように、凍結保存容器2の上方に設けられており、開口部23a,23bを介して凍結保存容器2と連通している。本実施形態の凍結保存装置1は筐体(図示略)に囲まれており、作業空間3は、凍結保存容器2内から蒸発した窒素ガスなどにより、例えば露点-40℃以下、好ましくは露点-50℃以下のドライ環境に維持されている。凍結保存容器2の開口部23a,23bを含んだ作業空間を筐体で覆うことによって、ドロワー13や液体窒素に作業者が直接触れることによる凍傷や、開口部23a,23bから蒸発する窒素ガスによる酸欠の危険を解消できる。また、ドライ環境に筐体内を維持することにより、作業空間3内での結露などを防止することができる。
【0035】
図8に示すように、ドロワー昇降装置4は、ドロワー13を把持するなどにより保持した状態で、開口部23a,23bのいずれか一方を介してドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させるための部材であり、作業空間3内に設けられている。このドロワー昇降装置4は、支持レール41と、昇降装置駆動部42と、主軸部43と、フック44とによって構成されている。
【0036】
支持レール41は、作業空間3の上方にX軸方向に亘って設けられている。この支持レール41には、昇降装置駆動部42が上記X軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0037】
昇降装置駆動部42には、主軸部43が垂下するように設けられている。また、主軸部43の下端には、フック44が設けられている。
【0038】
主軸部43の形態は、昇降装置駆動部42とフック44との間を連結し、昇降装置駆動部42からフック44を垂下可能なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、棒状の部材であってもよいし、2以上に分割可能なチェーンを組み合わせた態様であってもよい。
【0039】
また、昇降装置駆動部42は、主軸部43を介してフック44をZ軸方向に上昇および下降させることができるものであれば特に限定されるものではなく、上述した主軸部43の態様によって適宜選択することができる。例えば、主軸部43の態様が棒状の部材である場合には、主軸部43を軸支するローラー部材を回転させる機構であってもよい。また、主軸部43の態様が2以上に分割可能なチェーンの組み合わせの場合には、チェーンの分割機能および巻き取り機能を有する機構であってもよい。
【0040】
フック44の形状は、ドロワー13を把持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、鉤状とすることができる。これにより、ドロワー13の上部に設けられた把持部33を把持できる。
【0041】
このように構成されたドロワー昇降装置4によれば、支持レール41上をX軸方向に移動させることで、目的の試料が保管されたドロワー13の位置に対応する開口部23aおよび開口部23bのいずれかの上方にフック44を移動させることができる。
【0042】
また、ドロワー昇降装置4を凍結保存容器2内に下降させてドロワー13の上部に設けられた把持部33を把持する際に、支持レール41上をX軸方向に移動させることでフック44の位置を容易に調整することができる。これにより、ドロワー昇降装置4が1本であっても、複数の開口部23a,23bからドロワー13を入出庫することができる。
【0043】
また、昇降装置駆動部42を駆動させることにより、主軸部43を介してフック44をZ軸方向に上昇および下降させることができる。すなわち、ドロワー13を把持した状態で、開口部23a,23bのいずれかを介してドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させることができる。これにより、ドロワー13を凍結保存容器2から入出庫させることができる。
【0044】
さらに、昇降装置駆動部42の駆動を停止することにより、フック44をZ軸方向の任意の高さに維持することができる。すなわち、ドロワー13を把持した状態で、ドロワー13を任意の高さに維持することができる。
【0045】
図9に示すように、作業空間3の下方に、第1のX軸レール51がX軸方向に亘って設けられている。第1ステージ5は、上記第1のX軸レール51に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第1ステージ5は、平面視した際に、開口部23aおよび開口部23bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
【0046】
第1ステージ5が、平面視した際に、開口部23a,23bのいずれかに隣接していることにより、ドロワー13から任意の高さに収納された所望のボックス12(12A,12B)を取り出す際、ドロワー13全体を凍結保存容器2から出庫させる必要がなくなる。これにより、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1ステージ5とが略同一の高さとなるまでドロワー13を上昇させることにより、後述する第2の押圧装置8(第2アーム)によって、所望のボックス12(12A,12B)のみを第1ステージ5上に移動して取り出すことができる。したがって、目的の試料以外の試料が昇温することを抑制することができる。さらに、ドロワー13の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化できる。
【0047】
第1ステージ5は、目的の試料が収納された所望のボックス12(12A,12B)をドロワー13との間で受け渡しが可能な搬送テーブルである。
第1ステージ5は、サイズの異なる2種以上のボックス12(12A,12B)を載置可能である。第1ステージ5には、第1ステージ5の中央部分には、上面と底面とを貫通する開口部52が設けられている。これにより、開口部52を介して第1ステージ5の下方からボックス12(12A,12B)に収納されている各バイアル11を突き上げることができる。また、開口部52を介して第1ステージ5の下方から、各バイアル11の例えば底部に設けられたバーコードを識別することができる。
【0048】
開口部52の形状としては、バイアル11の突上げやバーコードの読み取りが可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、ボックス12(12A,12B)よりもひとまわり小さく開口されたものであってもよいし、スリット状や格子状に複数開口されたものであってもよい。
【0049】
第1ステージ5の上面には、2種以上のボックス12(12A,12B)の位置決めをするためのボックスガイド100が設けられている。このボックスガイド100により、後述の第2の押圧装置8により押圧された2種以上のボックス12(12A,12B)を、それぞれ第1ステージ5上の所定の位置に載置されるように、移動する方向を規制(位置決め)できる。
以下、ボックスガイド100の構成について、2種のボックス12A,12Bの位置決めをする場合を一例として、説明する。
【0050】
図10及び図11に示すように、ボックスガイド100は、2種のボックス12A,12Bの第1ステージ5上の位置を規制する2つの位置決めガイド110,120を有する。
【0051】
位置決めガイド110は、入口部111、幅規制部112、及び奥行規制部113を有する。
入口部111は、位置決め対象となるボックス12Aの幅Wに対応する開口を有する。入口部111は、第1ステージ5上のドロワー13側に位置する。また、入口部111の先端には、第1ステージ5側からドロワー13側へ向かって漸次拡径するテーパ111aが設けられている。これにより、対象であるボックス12Aがドロワー13側から第1ステージ5側へ向かって移動する際、入口部111から位置決めガイド110の内側の空間へスムーズに導入することができる。
【0052】
幅規制部112は、対象となるボックス12Aが載置される第1ステージの上面(載置面)からZ軸方向(鉛直方向)上方に延在する一対の壁面112aを有する。幅規制部112は、第1ステージ5上において入口部111と奥行規制部113との間に位置する。換言すると、幅規制部112の一端側(一対の壁面112aの先端側)が入口部111であり、他端側(一対の壁面112aの基端側)が奥行規制部113である。
【0053】
一対の壁面112aは、一端側から他端側にわたって、少なくとも対象となるボックス12Aの幅(長さ)Wよりも離間し、かつ互いに対向して、後述するY軸方向(第1方向)に延在する。これにより、ドロワー13と第1ステージとの間で、対象となるボックス12Aを受け渡す際、X軸方向(第2方向)への移動を規制できる。
【0054】
なお、幅規制部112は、一対の壁面112aの間に対象となるボックス12Aが挿入可能であれば、特に限定されない。
幅規制部112のY軸方向(第1方向)の長さは、対象となるボックス12Aよりも長くてもよく、短くてもよい。
幅規制部112のZ軸方向(鉛直方向)の高さは、対象となるボックス12Aよりも高くてもよく、低くてもよい。2つの位置決めガイド110,120をZ軸方向(鉛直方向)に積み上げる観点から、幅規制部112の高さは低い方が好ましく、幅規制部112の上面112bは平坦であることが好ましい。
一対の壁面112aは、垂直面であってもよく、傾斜面であってもよい。また、一対の壁面112aは、一端側から他端側にむかって連続する壁面であってもよく、間隔を開けて設けられた不連続な壁面であってもよい。
【0055】
奥行規制部113は、対象となるボックス12Aが載置される第1ステージの上面(載置面)からZ軸方向(鉛直方向)上方に延在する壁面113aを有する。奥行規制部113は、第1ステージ5上において入口部111と反対側に位置する。
【0056】
壁面113aは、幅規制部112の一対の壁面112aの他端間に位置し、X軸方向(第2方向)に延在する。これにより、対象となるボックス12Aをドロワー13から第1ステージへ移動する際、Y軸方向(第1方向)への移動を規制できる。
【0057】
なお、壁面113aのX軸方向(第2方向)の長さは、対象となるボックス12Aの幅Wよりも長くてもよく、短くてもよい。
壁面113aのZ軸方向の高さは、対象となるボックス12Aよりも高くてもよく、低くてもよい。2つの位置決めガイド110,120をZ軸方向に積み上げる観点から、壁面113aの高さは低い方が好ましく、幅規制部112の上面112bと同じ高さであることが好ましい。
壁面113aは、垂直面であってもよく、傾斜面であってもよい。また、壁面113aは、一対の壁面112aの他端と連続する壁面であってもよく、間隔を開けて設けられた不連続な壁面であってもよい。
【0058】
位置決めガイド120は、入口部121、幅規制部122、及び奥行規制部123を有する。
入口部121は、位置決め対象となるボックス12Bの幅Wに対応する開口を有する。入口部121は、第1ステージ5上のドロワー13側に位置する。また、入口部121の先端には、第1ステージ5側からドロワー13側へ向かって漸次拡径するテーパ121aが設けられている。これにより、対象であるボックス12Bがドロワー13側から第1ステージ5側へ向かって移動する際、入口部121から位置決めガイド120の内側の空間へスムーズに導入することができる。
【0059】
幅規制部122は、対象となるボックス12Bが載置される、位置決めガイド110の幅規制部112の上面(載置面)112bからZ軸方向(鉛直方向)上方に延在する一対の壁面122aを有する。幅規制部122は、第1ステージ5上において入口部121と奥行規制部123との間に位置する。換言すると、幅規制部122の一端側(一対の壁面122aの先端側)が入口部121であり、他端側(一対の壁面122aの基端側)が奥行規制部123である。
【0060】
一対の壁面122aは、一端側から他端側にわたって、少なくとも対象となるボックス12Bの幅(長さ)Wよりも離間し、かつ互いに対向して、Y軸方向に延在する。これにより、ドロワー13と第1ステージとの間で、対象となるボックス12Bを受け渡す際、X軸方向への移動を規制できる。
【0061】
なお、幅規制部122は、一対の壁面122aの間に対象となるボックス12Bが挿入可能であれば、特に限定されない。
幅規制部122のY軸方向の長さは、対象となるボックス12Bよりも長くてもよく、短くてもよい。
幅規制部122のZ軸方向(鉛直方向)の高さは、対象となるボックス12Bよりも高くてもよく、低くてもよい。2つの位置決めガイド110,120をZ軸方向(鉛直方向)に積み上げる際、位置決めガイド110の小型化を図る観点から、幅規制部122の高さは低い方が好ましく、幅規制部122の上面122bは平坦であることが好ましい。
一対の壁面122aは、垂直面であってもよく、傾斜面であってもよい。また、一対の壁面122aは、一端側から他端側にむかって連続する壁面であってもよく、間隔を開けて設けられた不連続な壁面であってもよい。
【0062】
奥行規制部123は、対象となるボックス12Bが載置される、位置決めガイド110の幅規制部112の上面(載置面)112bからZ軸方向(鉛直方向)上方に延在する壁面123aを有する。奥行規制部123は、第1ステージ5上において入口部121と反対側に位置する。
【0063】
壁面123aは、幅規制部122の一対の壁面122aの他端間に位置し、X軸方向(第2方向)に延在する。これにより、対象となるボックス12Bをドロワー13から第1ステージへ移動する際、Y軸方向(第1方向)への移動を規制できる。
【0064】
壁面123aには、後述する第1の押圧装置(第3アーム)7が挿通可能な開口が設けられている。これにより、押圧装置7によってボックス12A、12Bを押圧し、第1ステージ5からドロワー13へ移動させることができる。
【0065】
なお、壁面123aのX軸方向(第2方向)の長さは、対象となるボックス12Bの幅Wよりも長くてもよく、短くてもよい。
壁面123aのZ軸方向の高さは、対象となるボックス12Bよりも高くてもよく、低くてもよい。2つの位置決めガイド110,120をZ軸方向に積み上げる観点から、壁面123aの高さは低い方が好ましく、幅規制部122の上面122bと同じ高さであることが好ましい。
壁面123aは、垂直面であってもよく、傾斜面であってもよい。また、壁面123aは、一対の壁面122aの他端と連続して設けられていてもよく、間隔を開けて設けられていてもよい。
【0066】
ボックスガイド100は、第1ステージ5上に、2つの位置決めガイド110,120が、それぞれの入口部111,121がドロワー13側に対向する向きに揃えられて、対象となるボックス12の幅が小さなものから順にZ軸方向(鉛直方向)上方に向かって積み重ねられている。すなわち、ボックスガイド100は、第1ステージ上に、位置決めガイド110が下側、位置決めガイド120が上側となるように積み重ねられて、これらが一体化されている。
【0067】
鉛直方向上下に配置された2つの位置決めガイド110,120において、下方に位置する位置決めガイド110の幅規制部112の上面112bの一部が、上方に位置する位置決めガイド120の対象であるボックス12Bの載置面となる。これにより、下方の位置決めガイド110の上面は、平坦であることが好ましい。
【0068】
図9に示すように、作業空間3の下方であって、開口部23a,23bを挟んで第1のX軸レール51の反対側に、第2のX軸レール54がX軸方向に亘って設けられている。第2ステージ6は、上記第2のX軸レール54に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第2ステージ6は、平面視した際に、開口部23aおよび開口部23bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
【0069】
第1ステージ5および第2ステージ6は、上述したようにX軸方向に移動可能であり、一対となってX軸方向に移動可能である。これにより、例えば、開口部23aからドロワー13を入出庫する際に、第1ステージ5、開口部23a、および第2ステージ6が、この順に隣接して並ぶことができる。ここで第1ステージ5、開口部23a、および第2ステージ6が隣接して並ぶ方向を「Y軸方向」と記載する。なお、第1ステージ5及び第2ステージ6は、一対で同時に動くだけでなく、個々に動作することも可能である。
【0070】
第1ステージ5および第2ステージ6の開口部23b側の側面には、ドロワーガイド55がそれぞれ設けられている。ドロワー13が開口部23bを介してZ軸方向に上昇または下降する際に、ドロワー13の両側からドロワーガイド55によって挟みこむようにドロワー13を支持することができる。これにより、ドロワー13の揺れなどを抑えることができるため、ドロワー13の上昇および下降、ドロワー13と第1ステージ5との間でのボックス12の移動をスムーズに行うことができる。
【0071】
ドロワーガイド55としては、ドロワー13を支持できるものであれば特に限定されない。例えば、ドロワー13の4隅の、X軸方向側の面およびY軸方向側の面に、樹脂製の車輪をそれぞれ当接させることにより、ドロワー13を支持する構成としてもよい。
【0072】
第1の押圧装置7は、第1ステージ5上に載置させられたボックス12をドロワー13側へ押圧することで、ボックス12をドロワー13に収納するための部材である。第1の押圧装置7は、第1ステージ5上に設けられている。この第1の押圧装置7は、第1の支持部56と、第1の押圧部57とによって構成されている。
【0073】
第1の支持部56は、第1ステージ5上であって、開口部23a,23bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第1の支持部56は、先端がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0074】
第1の押圧部57は、第1の支持部56の先端に設けられている。この第1の押圧部57によりボックス12をY軸方向に押圧することができる。
【0075】
このように構成された第1の押圧装置7によれば、第1ステージ5上に載置されたボックス12をドロワー13側へ押圧することで、ボックス12をドロワー13に収納することができる。
【0076】
第2の押圧装置8は、ドロワー昇降装置4により第1ステージ5と隣接する高さに維持されるボックス12を、第1ステージ5側へ押圧することで、ボックス12を第1ステージ5上に移動させる部材である。第2の押圧装置8は、第2ステージ6上に設けられている。この第2の押圧装置8は、第2の支持部58と、第2の押圧部59とによって構成されている。
【0077】
第2の支持部58は、第2ステージ6上であって、開口部23a,23bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第2の支持部58は、先端がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0078】
第2の押圧部59は、第2の支持部58の先端に設けられている。この第2の押圧部59によりボックス12をY軸方向に押圧することができる。
【0079】
このように構成された第2の押圧装置8によれば、ドロワー13内の第1ステージ5と隣接する高さに位置するボックス12を、第1ステージ5側へ押圧することにより、ボックス12を第1ステージ5に載置することができる。
【0080】
第1ステージ5と、第2ステージ6と、第1の押圧装置7と、第2の押圧装置8とが、連携して動作することにより、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から出庫したドロワー13からボックス12を第1ステージ5上に載置可能とされている。また、第1ステージ5上に載置されたボックス12を、ドロワー13へ収納可能とされている。
【0081】
例えば、ドロワー昇降装置4により開口部23bを介して出庫した後に、ドロワー13からボックス12を第1ステージ5に載置する場合、先ず、第1ステージ5および第2ステージ6が、平面視した際に開口部23bを挟んで対向する位置へ移動する。
【0082】
次に、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1ステージ5とが略同一の高さとなるまでドロワー13を上昇させる。ドロワー13を上昇させる際、第1ステージ5および第2ステージ6に設けられたドロワーガイド55により、ドロワー13を支持することにより、ドロワー13の揺れを抑える。
【0083】
次に、ドロワー13を支持した状態で、第2の押圧装置8により所望のボックス12をY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12をドロワー13から第1ステージ5へ移動させる。以上の動作により、第1ステージ5上に所望のボックス12を載置することができる。
【0084】
ここで、2種のボックス12A,12Bをドロワー13から第1ステージ5へ移動させる場合について、図12図14を参照しながら説明する。
先ず、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Aを対象とする場合、制御装置を操作して、所望のボックス12Aが収納されているドロワー13を、当該ボックス12Aの収納空間の底面と第1ステージ5上の載置面とが略同一の高さとなるまで上昇させる。ここで、図14(a)に示すように、第1ステージ5上の載置面は、ボックスガイド100を構成する位置決めガイド110の載置面、すなわち、第1ステージ5の上面となる。
【0085】
次に、ドロワー13を支持した状態を維持し、第2の押圧装置8により所望のボックス12AをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Aをドロワー13から第1ステージ5へ移動させる。具体的には、図12(a)に示すように、ボックス12Aは、入口部111の先端に設けられたテーパ111aから位置決めガイド110の内側に導入され、図12(b)に示すように、幅規制部112によりY軸方向への移動が規制されながらX軸方向へ移動する。なお、ボックス12AのX軸方向への移動は、奥行規制部113によって規制される。
以上の動作により、第1ステージ5上にボックス12Aを載置することができる。
【0086】
また、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Bを対象とする場合、制御装置を操作して、所望のボックス12Bが収納されているドロワー13を、当該ボックス12Bの収納空間の底面と第1ステージ5上の載置面とが略同一の高さとなるまで上昇させる。ここで、図14(b)に示すように、第1ステージ5上の載置面は、ボックスガイド100を構成する位置決めガイド120の載置面、すなわち、位置決めガイド110の上面(幅規制部112の上面112b)となる。
【0087】
次に、ドロワー13を支持した状態を維持し、第2の押圧装置8により所望のボックス12BをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Bをドロワー13から第1ステージ5へ移動させる。具体的には、図13(a)に示すように、ボックス12Bは、入口部121の先端に設けられたテーパ121aから位置決めガイド120の内側に導入され、図13(b)に示すように、幅規制部122によりY軸方向への移動が規制されながらX軸方向へ移動する。なお、ボックス12BのX軸方向への移動は、奥行規制部123によって規制される。
以上の動作により、第1ステージ5上にボックス12Bを載置することができる。
【0088】
第1ステージ5上に取り出されたボックス12(12A,12B)は、作業空間3に設けられている搬送系統61によって筐体(図示略)の取り出し口(図示略)付近まで搬送される。
図15に示すように、搬送系統61は、第1ステージ5と、識別装置62と、突き上げ部63と、バイアル昇降装置64とから概略構成されている。
【0089】
識別装置62は、バイアル11を識別するためのものであり、第1のX軸レール51の周辺または第1ステージ5上に設けられている。識別装置としては、バイアル11を識別することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、バイアル11に貼り付けられた画像情報を認識できる装置であればいずれでもよく、具体的にはバーコードリーダーなどが挙げられる。
【0090】
識別装置62が、バーコードリーダーである場合、例えば、バイアル11の底部に識別コードが設けられ、第1ステージ5が底面に開口部を有しており、識別装置62(バーコードリーダー)が第1ステージ5の下方に設けられていることが好ましい。これにより、ボックス12(12A,12B)内に収納された状態で、バイアル11を容易に識別することができる。また、この場合、識別装置62(バーコードリーダー)は、第1ステージ5のX軸への移動経路であって、開口部23aと突き上げ部63の間のいずれかの位置に設けられていればよい。なお、識別装置62がバーコードリーダーである場合、一次元バーコード読み取り可能なリーダー、二次元バーコード読み取り可能なリーダー、いずれも可能である。
【0091】
識別装置62を設けることにより、バイアル11の保管場所や入出庫した日時などの在庫情報や運用履歴などの情報を自動で記録することができる。また、自動で記録することができるため、大量の試料を扱う場合であっても、読み取り忘れなどのミスを減らすことができ、試料の取り違いなどの事故を防ぐことができる。
【0092】
突き上げ部63は、第1ステージ5上に載置されたボックス12(12A,12B)内に収容されている各バイアル11を、第1ステージ5の下方から、第1ステージ5に設けられている開口部52を介して、各バイアル11の底部を押し上げるための装置である。
【0093】
突き上げ部63は、例えば、支持台65と、この支持台65上に直線状に設けられた複数の柱状部66A,66Bとから概略構成されている。支持台65は、2つのユニットに分割されており、一方のユニットにはボックス12(12A,12B)に収容されてあるバイアル列のうち、奇数番目に対応して位置する柱状部66Aが、他方のユニットにはボックス12(12A,12B)に収容されてあるバイアル列のうち、偶数番目に対応して位置する柱状部66Bがそれぞれ固定されている。また、支持台65は、2つのユニットを交互に上昇されることが可能となっており、一方のユニットを上昇させることにより、ボックス12(12A,12B)内に収容されてあるバイアル列のうち、奇数番号のバイアルを同時に突き上げることができるようになっている。同様に、他方のユニットを上昇させることにより、同バイアル列のうち、偶数番号のバイアルを同時に突き上げることができる。なお、支持台65が2つのユニットに分割されることにより、突き上げられたバイアル11間の間隔が全バイアル11を一度に突き上げる場合より広くなっているため、バイアル昇降装置64の把持部68が開状態となるスペースを十分に確保できる。
【0094】
バイアル昇降装置64は、筐体(図示略)の作業空間3の上部においてY軸方向に延在するように設けられたY軸レール(図示略)と、このY軸レール(図示略)に設けられてY軸方向に移動自在とされた昇降装置駆動部67と、昇降装置駆動部67の下端に設けられた把持部68とを備えて構成されている。
【0095】
昇降装置駆動部67は、Z軸方向に上昇および降下可能な機構であれば、特に限定されない。
把持部68は、バイアル11を1本ずつ把持することができる機構であれば、特に限定されない。具体的には、互いに離間および近接するように設けられた複数の板状部材によって構成することができる。把持部68を開状態とするには板状部材を互いに離間させるように移動させ、閉状態とするには互いに近接するように移動させる。これにより、板状部材の間の空間に、バイアル11を把持することができる。
【0096】
上記のように構成された搬送系統61によれば、第1ステージ5上に取り出されたボックス12(12A,12B)が、開口部23a、23bに隣接する位置から突き上げ部63に移動する際、識別装置62によって所望のバイアル11の位置が確認される。その後、第1ステージ5が突き上げ部63まで移動すると、識別装置62によって得られた位置情報に基づいて、支持台65の対応するユニットが上昇することにより、所望のバイアル11が上方に押し出される。押し出されたバイアル11の上方にバイアル昇降装置64を移動させた後に把持部68を降下させ、把持部68によって目的のバイアル11を把持した後、バイアル置き場69へと搬送させる。これにより、作業者は、所望のバイアル11を容易に取り出すことができる。
【0097】
入出力装置9は、筐体(図示略)の外部に設けられた、表示部および入力部を持つ例えばパーソナルコンピュータである。作業者は、入出力装置9を操作して、凍結保存装置1に内蔵された制御装置(図示略)に指示を出すことにより、バイアル11またはボックス12(12A,12B)を取り出しおよび収納するための様々な操作をすることができる。例えば、作業者が、在庫情報から取り出す試料を選択し、バイアル11またはボックス12(12A,12B)の取出しを指示することで、自動で所望のバイアル11またはボックス12(12A,12B)を取り出し口(図示略)まで移動させることができる。また、外部の入出力装置9が備える記憶部において、凍結保存装置1において管理されるバイアル11情報を記憶することもできる。
【0098】
また、凍結保存装置1内の制御装置(図示略)には、ドロワー昇降装置4、第1ステージ5、第2ステージ6、第1の押圧装置7、第2の押圧装置8、識別装置62、突き上げ部63、バイアル昇降装置64などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれている。これにより、例えば、第2の押圧装置8によりボックス12(12A,12B)を第1ステージ5上に載置した後に、ドロワー昇降装置4によりドロワー13を下降させ、凍結保存容器2内に移動させるといった動作指示をすることができる。これにより、ドロワー13内に収納された他の試料が昇温するのを抑制することができる。
【0099】
<凍結保存装置の運転方法>
次に、本実施形態の凍結保存装置1の運転方法(使用方法)について説明する。
本実施形態の凍結保存装置1の運転方法は、保存対象が収納されたボックス(箱)12(12A,12B)を収納するドロワー(ケース)13を、凍結保存容器1の内部に収容して保存するとともに、凍結保存容器1からドロワー13を第1ステージ(搬送テーブル)5と同じ高さに引き上げた後、ドロワー13と第1ステージ5との間でボックス12(12A,12B)を自動で受け渡し(移動)可能な凍結保存装置1の運転方法である。
具体的には、本実施形態の凍結保存装置1の運転方法は、ドロワー13及び第1ステージ5のうち、移動元におけるボックス12(12A,12B)の載置面の高さが、移動先におけるボックス12(12A,12B)の載置面の高さよりも高くなるように、ドロワー13を鉛直方向上下に移動し、ドロワー13の高さを維持した後、ボックス12(12A,12B)を移動元から移動先に向かって移動させることを特徴とする。
以下、開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12(12A,12B)を取り出す場合を一例として説明する。
【0100】
本実施形態の凍結保存装置1の運転方法は、先ず、入出力装置9を操作して、所望のボックス12の取り出しを制御装置(図示略)に指示する。これにより、ドロワーテーブル24が回転し、所望のボックス12を収納したドロワー13が、開口部23bの真下に移動する。
【0101】
次に、ドロワー昇降装置4がX軸方向に移動し、開口部23bの真上に移動する。その後後、フック44がZ軸下方向に下降し、キャップ25の把持部26を把持する。その後、フック44がZ軸上方向に上昇することにより、キャップ25が開口部23bから外される。開口部23bから外したキャップ25は、ドロワー昇降装置4およびフック44がX軸方向およびZ軸方向に移動することにより、例えば、もう一方のキャップ25の上などの空いているスペースに載置される。
【0102】
次に、第1ステージ5および第2ステージ6がX軸方向に移動することにより、平面視した際に開口部23aの両側を挟むような位置へ移動する。また、ドロワー昇降装置4が、キャップ25の外れた開口部23bの真上に移動する。
【0103】
次に、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1ステージ5とが略同一の高さとなるまでドロワー13を上昇させる。
【0104】
ここで、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Aをドロワー13から第1ステージ5へ移動させる場合について、図16(a)を参照しながら説明する。
先ず、制御装置を操作して、移動元であるドロワー13におけるボックス12Aの載置面の高さHが、移動先となる第1ステージ5上における載置面(第1ステージ5の上面)の高さHよりもわずかに高くなるように、ドロワー13の位置を移動させる。
なお、凍結保存装置1では、第1ステージ5はZ軸方向、すなわち、鉛直方向に可動しないため、ドロワー13を鉛直方向上下に移動させる。
【0105】
移動元の載置面の高さHと、移動先の載置面の高さHとの間隔(ギャップ)としては、特に限定されないが、1~10mmとすることができ、2~5mmとすることが好ましい。上記間隔を設けることにより、ドロワー13から第1ステージ5へ所望のボックス12Aを移動させる際、移動先となる第1ステージ5の手前側の側面にボックス12Aをぶつけるなど、ボックス12Aに対して衝撃を与えることなく、スムーズにボックス12Aを受け渡すことができる。
【0106】
次に、ドロワー13の高さを維持し、第2の押圧装置8により所望のボックス12AをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Aをドロワー13から第1ステージ5上へ移動させる。以上の動作により、第1ステージ5上に所望のボックス12Aが載置される。
【0107】
また、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Bをドロワー13から第1ステージ5へ移動させる場合について、図16(b)を参照しながら説明する。
先ず、制御装置を操作して、移動元であるドロワー13におけるボックス12Bの載置面の高さHが、移動先となる第1ステージ5上における載置面(位置決めガイド110を構成する幅規制部112の上面112b)の高さHよりもわずかに高くなるように、ドロワー13の位置を移動させる。
【0108】
移動元の載置面の高さHと、移動先の載置面の高さHとの間隔(ギャップ)としては、特に限定されないが、1~10mmとすることができ、2~5mmとすることが好ましい。上記間隔を設けることにより、ドロワー13から第1ステージ5へ所望のボックス12Bを移動させる際、ボックスガイド100の手前側の側面にボックス12Bをぶつけるなど、ボックス12Bに対して衝撃を与えることなく、スムーズにボックス12Bを受け渡すことができる。
【0109】
次に、ドロワー13の高さを維持し、第2の押圧装置8により所望のボックス12BをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Bをドロワー13から第1ステージ5上へ移動させる。以上の動作により、第1ステージ5上に所望のボックス12Bが載置される。
【0110】
次に、残りのボックスが昇温するのを防止するため、ドロワー昇降装置4を下降させ、ドロワー13を凍結保存容器2に入庫する。その後、上述したキャップ25を外す動作と逆の動作を行うことにより、キャップ25により開口部23bを閉塞する。
【0111】
次に、ボックス12を載置した第1ステージ5がX軸方向に移動することで、ボックス12が取出し口(図示略)に搬出される。その後、作業者は取出し口(図示略)から目的のボックス12を取り出すことができる。以上の動作により、ボックス12の取出し動作が完了する。
【0112】
次に、上述した凍結保存装置1を用いて、開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のバイアル11を取り出す方法について説明する。
先ず、作業者が入出力装置9を操作して、制御装置(図示略)に所望のバイアル11の取出しを指示する。これにより、上述したボックス12の取出しと同様の動作により、凍結保存容器2から開口部23bを介して所望のドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1ステージ5とが同じ高さとなるまでドロワー13を上昇させる。
【0113】
次に、第2の押圧装置8により所望のボックス12をY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12をドロワー13から第1ステージ5へ移動させる。以上の動作により、第1ステージ5上に所望のボックス12が載置される。
【0114】
次に、残りのボックスが昇温するのを防止するため、ドロワー13を上面が凍結保存容器2に入るまで下降させ、この状態で待機する。その際、ドロワー昇降装置4はドロワー13を把持した状態を維持する。
【0115】
次に、ボックス12を載置した第1ステージ5がX軸方向に移動することで、第1ステージ5を突き上げ部63まで移動させる。第1ステージ5上に取り出されたボックス12は、第1ステージ5が開口部23bから突き上げ部63に移動する際、識別装置62によって所望のバイアル11の位置が確認される。
【0116】
次に、第1ステージ5が突き上げ部63まで移動すると、識別装置62によって得た位置情報に基づいて、支持台65の対応するユニットが上昇することにより、所望のバイアル11が上方に押し出される。
【0117】
次に、押し出されたバイアル11の上方にバイアル昇降装置64を移動させた後に把持部68を降下させ、把持部68によって目的のバイアル11を把持した後、バイアル置き場69へと搬送させる。これにより、作業者は、所望のバイアル11を容易に取り出すことができる。
【0118】
所望のバイアル11を取り出した後のボックス12は、第1ステージ5に載置されたまま、X軸方向を移動し、ドロワー13に隣接する位置まで移動する。その後、ドロワー昇降装置4により、ドロワー13内の所望のボックス12を収納する空間の底面が、第1ステージ5および第2ステージ6と略同一の高さとなるまで、ドロワー13を上昇させる。
【0119】
次に、第1の押圧装置7により、ボックス12をY軸方向に押圧することで、ボックス12を第1ステージ5からドロワー13へ移動させる。
【0120】
ここで、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Aを第1ステージ5からドロワー13へ移動させる場合について、図17(a)を参照しながら説明する。
先ず、制御装置を操作して、移動元である第1ステージ5上における載置面(第1ステージ5の上面)の高さHが、移動先となるドロワー13におけるボックス12Aの載置面の高さHよりもわずかに高くなるように、ドロワー13の位置を移動させる。
【0121】
移動元の載置面の高さHと、移動先の載置面の高さHとの間隔(ギャップ)としては、特に限定されないが、1~10mmとすることができ、2~5mmとすることが好ましい。上記間隔を設けることにより、第1ステージ5からドロワー13へ所望のボックス12Aを移動させる際、移動先となるドロワー13の手前側の側面にボックス12Aをぶつけるなど、ボックス12Aに対して衝撃を与えることなく、スムーズにボックス12Aを受け渡すことができる。
【0122】
次に、ドロワー13の高さを維持し、第1の押圧装置7により所望のボックス12AをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Aを第1ステージ5からドロワー13の収納空間へ移動させる。以上の動作により、ドロワー13内に所望のボックス12Aが載置される。
【0123】
また、2種のボックス12A,12Bのうち、ボックス12Bを第1ステージ5からドロワー13へ移動させる場合について、図17(b)を参照しながら説明する。
先ず、制御装置を操作して、移動元である第1ステージ5上における載置面(位置決めガイド110を構成する幅規制部112の上面112b)の高さHが、移動先となるドロワー13におけるボックス12Bの載置面の高さHよりもわずかに高くなるように、ドロワー13の位置を移動させる。
【0124】
移動元の載置面の高さHと、移動先の載置面の高さHとの間隔(ギャップ)としては、特に限定されないが、1~10mmとすることができ、2~5mmとすることが好ましい。上記間隔を設けることにより、第1ステージ5からドロワー13へ所望のボックス12Bを移動させる際、移動先となるドロワー13の手前側の側面にボックス12Bをぶつけるなど、ボックス12Bに対して衝撃を与えることなく、スムーズにボックス12Bを受け渡すことができる。
【0125】
次に、ドロワー13の高さを維持し、第2の押圧装置8により所望のボックス12BをY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12Bを第1ステージ5からドロワー13の収納空間へ移動させる。以上の動作により、ドロワー13内に所望のボックス12Bが載置される。
【0126】
次に、ボックス12(12A,12B)を移動した後、ドロワー昇降装置4により、ドロワー13を下降させ凍結保存容器2へ入庫する。その後、上述したキャップ25を外す動作と逆の動作を行うことにより、キャップ25で開口部23bを閉塞する。以上の動作により、バイアル11の取出し動作が完了する。
【0127】
以上、所望のボックス12またはバイアル11を取り出す方法について説明したが、ボックス12またはバイアル11を収納する方法については、取り出す際の動作と逆の動作を行うことで収納することができるため、説明を省略する。
【0128】
以上、説明したように、本実施形態の凍結保存装置1は、第1ステージ5上に2種のボックス12A,12Bの位置決めをするためのボックスガイド100を有する。このボックスガイド100は、2つの位置決めガイド110,120を有し、それぞれの入口部111,121がドロワー13側に対向する向きに揃えられて、第1ステージ5上に対象となるボックス12の幅が小さなものから順にZ軸方向(鉛直方向)上方に向かって積み重ねられている。すなわち、ボックスガイド100は、第1ステージ5上に、位置決めガイド110が下側、位置決めガイド120が上側となるように積み重ねられて、これらが一体化された構成となっている。本実施形態の凍結保存装置1によれば、自動運転において、2種のボックス12A、12Bの同時使用が可能である。
【0129】
本実施形態の凍結保存装置1によれば、ボックスガイド100により、2種のボックス12A,12Bを、それぞれ第1ステージ5上の所定の位置に載置されるように、移動する方向を規制(位置決め)できる。
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、2つの位置決めガイド110,120がそれぞれ幅規制部112,122を有する。そして、幅規制部112,122は、一端側から他端側にわたって、少なくとも対象となるボックス12の幅(長さ)よりも離間し、かつ互いに対向して、Y軸方向に延在する一対の壁面112a,122aを有する。これにより、ドロワー13と第1ステージとの間で、対象となるボックス12A,12Bを受け渡す際、X軸方向への移動を規制できる。
【0130】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、鉛直方向上下に配置された2つの位置決めガイド110,120において、下方に位置する位置決めガイド110の幅規制部112の上面112bの一部が、上方に位置する位置決めガイド120の対象であるボックス12Bの載置面となる。これにより、ボックスガイド100のサイズを小型化できる。
【0131】
本実施形態の凍結保存装置1によれば、平面視した際に開口部23a,23bに隣接するように第1ステージ5が設けられているため、ドロワー昇降装置4によって目的の試料を凍結保存容器2から取り出す際に、ドロワー13の全体を凍結保存容器から引き上げることなく、目的のボックス12のみを第2の押圧装置8によって第1ステージ5上に取り出すことができる。したがって、目的の試料を自動で取り出すことができ、かつ、目的の試料以外の試料が昇温するのを抑えることができる。さらに、ドロワー13の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化できる。
【0132】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、少なくとも、ドロワー昇降装置4と、第2の押圧装置8とを制御する制御装置(図示略)をさらに備える構成となっている。そのため、第2の押圧装置8によりボックス12を第1ステージ5に載置した後に、ドロワー昇降装置4によりドロワー13を下降させ、凍結保存容器2内に収容させる一連の操作を自動で行うことができる。これにより、目的の試料以外の試料が昇温するのをさらに抑えることができる。
【0133】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、第1ステージ5に載置されたボックス12を、第1ステージ5側からドロワー13側に押圧して、ドロワー13に収納する第1の押圧装置7をさらに備える構成となっている。これにより、バイアル11またはボックス12を自動で凍結保存容器2内へ収納することができる。
【0134】
本実施形態の凍結保存装置1の運転方法によれば、ドロワー13及び第1ステージ5のうち、移動元におけるボックス12(12A,12B)の載置面の高さが、移動先におけるボックス12(12A,12B)の載置面の高さよりも高くなるように、ドロワー13を鉛直方向上下に移動し、ドロワー13の高さを維持した後、ボックス12(12A,12B)を移動元から移動先に向かって移動させる。このため、自動運転によってドロワー13と第1ステージ5との間でボックス12(12A,12B)の受け渡しを行う際、搬送時の落下や、移動先の手前側の側面にボックス12をぶつけるなど搬送先との衝突の恐れがなく、ボックス12に対して衝撃を与えることがない。
【0135】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した凍結保存装置1では、ボックスガイド100が2つの位置決めガイド110,120を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。本発明の凍結保存装置は、ボックスガイドが3つ以上の位置決めガイドを有する構成であってもよい。これにより、3種以上の規格のボックス12を同時に使用できる。
【0136】
また、上述した凍結保存装置1では、ボックスガイド100のうち、1つの位置決めガイド120の奥行規制部123に第1の押圧装置(第3アーム)7が挿通可能な開口が設けられる構成を一例としたが、これに限定されない。本発明の凍結保存装置は、2つの位置決めガイド110,120の奥行規制部113,123の両方に開口が設けられる構成であってもよい。
【0137】
また、上述した凍結保存装置1では、第1ステージ5とボックスガイド(2つの位置決めガイド110,120)100とが一体化された構成を一例として説明したが、これに限定されない。本発明の凍結保存装置は、第1ステージ5とボックスガイド100とが、分離可能な構成であってもよい。これにより、第1ステージ5上のボックスガイド100を交換することで、ボックス12A、12B以外のボックスを用いることができる。
【0138】
また、上述した凍結保存装置1では、ボックスガイド100が、2つの位置決めガイド110,120が一体化された構成を一例として説明したが、これに限定されない。図18に示すように、本発明の凍結保存装置は、2つの位置決めガイド210,220が分離可能なボックスガイド200を備える構成であってもよい。これにより、ボックスガイドの位置決めガイドを交換することで、ボックス12A、12Bの組み合わせ以外のボックスを用いることができる。
【0139】
上述した凍結保存装置1では、ドロワー13が凍結保存容器2内で同心円状に2段にわたり並べられ、2つの開口部23a,23bを備える例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、ドロワー13が凍結保存容器2内で1つの任意の円状に並べられ、開口部が1つであってもよいし、ドロワー13が凍結保存容器2内で3つ以上の任意の同心円状に並べられ、開口部が3つ以上であってもよい。
【0140】
また、上述した凍結保存装置1では、入出力装置9が筐体(図示略)の外部に設けられている例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置9の入力部および表示部の一方又は両方が筐体の外壁に設けられる等により、凍結保存装置と一体に構成されていても構わない。
【0141】
また、上述した凍結保存装置1では、凍結保存装置1に内蔵された制御装置(図示略)に、ドロワー昇降装置4、第1ステージ5、第2ステージ6、第1の押圧装置7、第2の押圧装置8、識別装置62、突き上げ部63、バイアル昇降装置64などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれ、外部に接続された入出力装置9を作業者が操作することにより制御部に各種指示を出す例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置9を介さず、作業者が制御装置(図示略)を操作することにより、ドロワー昇降装置4などの各動作部に直接指示するものであってもよい。
【0142】
また、上述した凍結保存装置1では、第1ステージ5と第2ステージ6とが連動する例について説明したが、この実施形態に限られるものではなく、別々に動く構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の凍結保存装置は、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生体試料を凍結保存するための装置として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0144】
1…凍結保存装置、2…凍結保存容器、3…作業空間、4…ドロワー昇降装置(第1アーム)、5…第1ステージ(搬送テーブル)、6…第2ステージ、7…第1の押圧装置(第3アーム)、8…第2の押圧装置(第2アーム)、9…入出力装置、11…バイアル(保存対象)、12,12A,12B…ボックス(箱)、13…ドロワー(ケース)、21…内槽、22…外槽、23a,23b…開口部、24…ドロワーテーブル(回転テーブル)、25…キャップ、26…把持部、27…モーター、28…回転軸、29…ドロワーガイド、31…縦板、32…床板、33…把持部、41…支持レール、42…昇降装置駆動部、43…主軸部、44…フック、51…第1のX軸レール、52…開口部、53…ボックスガイド、54…第2のX軸レール、55…ドロワーガイド、56…第1の支持部、57…第1の押圧部、58…第2の支持部、59…第2の押圧部、61…搬送系統、62…識別装置、63…突き上げ部、64…バイアル昇降装置、65…支持台、66A,66B…柱状部、67…昇降装置駆動部、68…把持部、69…バイアル置き場、100,200…ボックスガイド、110,120,210,220…位置決めガイド、111,121…入口部、111a,121a…テーパ、112,122…幅規制部、112a,122a…一対の壁面、112b,122b…上面、113,123…奥行規制部、113a,123a…壁面
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