(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】金属製チューブの加工方法
(51)【国際特許分類】
B23P 15/00 20060101AFI20241126BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20241126BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B23P15/00 Z
A61M25/00 500
A61M25/00 632
B24B19/02
(21)【出願番号】P 2021046304
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-235071(JP,A)
【文献】特開昭60-144131(JP,A)
【文献】特開2012-213505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309587(US,A1)
【文献】特開2004-173406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 13/00-15/52;
A61M 25/00;
B24B 1/00-57/04;
B23D 1/00-81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製チューブを屈曲可能に加工する金属製チューブの加工方法であって、
金属製チューブを収容する直線状の矩形溝を備えた治具を準備する治具準備工程と、
該矩形溝に金属製チューブを収容し液状樹脂を注入して金属製チューブを液状樹脂で埋設する埋設工程と、
液状樹脂を硬化させて金属製チューブの外面が四角柱状に樹脂で覆われた四角柱体を該治具から取り出す取り出し工程と、
該四角柱体の第1の面を露出させ該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第1のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第1のハーフカット溝形成工程と、
該第1の面と直交する第2の面を露出させ隣り合う該第1のハーフカット溝と該第1のハーフカット溝との中央に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第2のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第2のハーフカット溝形成工程と、
該第1の面の反対側に位置する第3の面を露出させ該第1のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第3のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第3のハーフカット溝形成工程と、
該第2の面の反対側に位置する第4の面を露出させ該第2のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第4のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第4のハーフカット溝形成工程と、を含む金属製チューブの加工方法。
【請求項2】
該第1のハーフカット溝形成工程の次に該第3のハーフカット溝形成工程を実施し、
該第2のハーフカット溝形成工程の次に該第4のハーフカット溝形成工程を実施する請求項1記載の金属製チューブの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製チューブを屈曲可能に加工する金属製チューブの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細長い円管状の金属製(たとえば、チタン合金製)チューブの外周に周方向に延びる多数の溝を形成し、金属製チューブを屈曲可能に加工する技術が提案されており、屈曲可能に加工された金属製チューブは、医療用のカテーテル等に用いられる(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属製チューブを例えば90度毎に間欠回転させながら、全周に渡り略50μmの間隔をおいて略20μmの幅の溝を金属製チューブに形成するような場合、金属製チューブの固定が不安定となり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、金属製チューブに溝を形成する際に、金属製チューブの安定した固定が可能となり、生産性を向上させることができる金属製チューブの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の金属製チューブの加工方法が提供される。すなわち、金属製チューブを屈曲可能に加工する金属製チューブの加工方法であって、金属製チューブを収容する直線状の矩形溝を備えた治具を準備する治具準備工程と、該矩形溝に金属製チューブを収容し液状樹脂を注入して金属製チューブを液状樹脂で埋設する埋設工程と、液状樹脂を硬化させて金属製チューブの外面が四角柱状に樹脂で覆われた四角柱体を該治具から取り出す取り出し工程と、該四角柱体の第1の面を露出させ該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第1のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第1のハーフカット溝形成工程と、該第1の面と直交する第2の面を露出させ隣り合う該第1のハーフカット溝と該第1のハーフカット溝との中央に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第2のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第2のハーフカット溝形成工程と、該第1の面の反対側に位置する第3の面を露出させ該第1のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第3のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第3のハーフカット溝形成工程と、該第2の面の反対側に位置する第4の面を露出させ該第2のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第4のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第4のハーフカット溝形成工程と、を含む金属製チューブの加工方法が提供される。
【0007】
好ましくは、該第1のハーフカット溝形成工程の次に該第3のハーフカット溝形成工程を実施し、該第2のハーフカット溝形成工程の次に該第4のハーフカット溝形成工程を実施する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属製チューブの加工方法は、金属製チューブを収容する直線状の矩形溝を備えた治具を準備する治具準備工程と、該矩形溝に金属製チューブを収容し液状樹脂を注入して金属製チューブを液状樹脂で埋設する埋設工程と、液状樹脂を硬化させて金属製チューブの外面が四角柱状に樹脂で覆われた四角柱体を該治具から取り出す取り出し工程と、該四角柱体の第1の面を露出させ該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第1のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第1のハーフカット溝形成工程と、該第1の面と直交する第2の面を露出させ隣り合う該第1のハーフカット溝と該第1のハーフカット溝との中央に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第2のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第2のハーフカット溝形成工程と、該第1の面の反対側に位置する第3の面を露出させ該第1のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第3のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第3のハーフカット溝形成工程と、該第2の面の反対側に位置する第4の面を露出させ該第2のハーフカット溝に対応する反対側に該四角柱体の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第4のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第4のハーフカット溝形成工程と、を含むので、金属製チューブに溝を形成する際に、金属製チューブの安定した固定が可能となり、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】(a)紫外線を照射して液状樹脂を硬化させている状態を示す斜視図、(b)金属製チューブの外面が四角柱状に樹脂で覆われた四角柱体の斜視図。
【
図4】(a)
図3(b)に示す四角柱体がダイシングテープを介して環状フレームに支持された状態を示す斜視図、(b)(a)におけるB-B矢視図。
【
図5】第1のハーフカット溝形成工程を実施している状態を示す斜視図。
【
図6】第1のハーフカット溝が形成された四角柱体の正面図。
【
図7】第1・第3のハーフカット溝が形成された四角柱体の正面図。
【
図8】第1・第2・第3のハーフカット溝が形成された四角柱体の正面図。
【
図9】(a)第1~第4のハーフカット溝が形成された四角柱体の正面図、(b)(a)に示す四角柱体から樹脂が除去された金属製チューブの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、金属製チューブを屈曲可能に加工する金属製チューブの加工方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1を参照して説明すると、本実施形態においては、まず、金属製チューブ2を収容する直線状の矩形溝4aを備えた治具4を準備する治具準備工程を実施する。金属製チューブ2としては、たとえば、血管の治療や検査等に使用される医療用の細長いカテーテルが挙げられる。金属製チューブ2がカテーテルとして用いられる場合、金属製チューブ2の材質にはチタン合金を採用することができ、また、金属製チューブ2のサイズについては、たとえば、外径0.4mm、内径0.35mm、長さ300mm程度でよい。
【0012】
治具4の材質については、紫外線を透過する材質(たとえばガラス)を用いることができる。治具4は、全体として
図1に示すような細長い直方体状でよく、治具4の矩形溝4aの断面(治具4の長手方向を横断する面)の形状は正方形でよい。また、矩形溝4aの幅、深さは、金属製チューブ2の外径よりも若干大きく、矩形溝4aの長さは金属製チューブ2の長さより若干長く、金属製チューブ2の全体を矩形溝4aの中に収容することができるようになっている。なお、図面には、理解の容易さの観点から、矩形溝4aの長手方向端部に壁がなく、矩形溝4aの長手方向端部が開放されている例を示しているが、矩形溝4aの長手方向端部には、後述の液状樹脂の流出を防止する壁を治具4に設けることができる。
【0013】
治具準備工程を実施した後、
図2に示すとおり、矩形溝4aに金属製チューブ2を収容し液状樹脂6を注入して金属製チューブ2を液状樹脂6で埋設する埋設工程を実施する。液状樹脂6としては、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型の液状樹脂を用いることができる。
【0014】
埋設工程を実施した後、液状樹脂6を硬化させて金属製チューブ2の外面が四角柱状に樹脂で覆われた四角柱体を治具4から取り出す取り出し工程を実施する。取り出し工程において液状樹脂6を硬化させる際は、たとえば、治具4が紫外線を透過する材質から形成され、かつ、液状樹脂6として紫外線硬化型の液状樹脂を用いた場合には、
図3(a)に示すとおり、治具4の周囲から紫外線UVを照射することにより液状樹脂6を容易に硬化させることができる。液状樹脂6を硬化させたら、
図3(b)に示すとおり、金属製チューブ2の外面が四角柱状に樹脂6’で覆われた四角柱体8を治具4から取り出す。なお、
図3(b)では、液状樹脂6が硬化した樹脂を符号6’で示している。
【0015】
取り出し工程を実施した後、四角柱体8の第1の面を露出させ四角柱体8の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第1のハーフカット溝を切削ブレードで形成する第1のハーフカット溝形成工程を実施する。
【0016】
第1のハーフカット溝形成工程においては、まず、
図4(a)に示すとおり、周縁が環状フレーム10に固定されたダイシングテープ12に四角柱体8を貼り付け、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に四角柱体8を支持させる。このように図示の実施形態では、四角柱体8をダイシングテープ12に貼り付け、ダイシングテープ12によって四角柱体8を面で支持するため、金属製チューブ2の安定した固定が可能である。
【0017】
第1のハーフカット溝形成工程において、四角柱体8をダイシングテープ12に貼り付ける際には、四角柱体8に未だ溝が形成されておらず、軸方両側端面以外の4つの面に違う点はないので、第1のハーフカット溝形成工程において露出させる(上に向ける)第1の面として、軸方向両側端面以外の4つの面から任意に選択することができる。図示の実施形態では
図4(b)に示すとおり、上に向けた面を第1の面8aとし、第1の面8aと直交する一方の面(
図4(b)における右側面)を第2の面8bとし、第1の面8aの反対側に位置する面(
図4(b)における下面)を第3の面8cとし、第1の面8aと直交する他方の面(
図4(b)における左側面)を第4の面8dとしている。
【0018】
ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持させた四角柱体8に対して、第1のハーフカット溝を形成するには、たとえば
図5に示すダイシング装置14を用いて実施することができる。また、後述の第2~第4のハーフカット溝を形成する際も同様にダイシング装置14を用いて実施することができる。
【0019】
ダイシング装置14は、被加工物を保持するチャックテーブル(図示していない。)と、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段16と、チャックテーブルに保持された被加工物を撮像し切削加工を施すべき領域を検出する撮像手段(図示していない。)とを備える。切削手段16は、
図5に矢印Yで示すY軸方向を軸心として回転自在に構成されたスピンドル18と、スピンドル18の先端に固定された環状の切削ブレード20とを含む。なお、
図5に矢印Xで示すX軸方向はY軸方向に直交する方向であり、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0020】
図5を参照して説明を続けると、第1のハーフカット溝形成工程においては、まず、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持させた四角柱体8をチャックテーブルに保持させる。次いで、撮像手段で四角柱体8を撮像し、撮像手段で撮像した四角柱体8の画像に基づいて、四角柱体8の長手方向をY軸方向に整合させると共に、四角柱体8の長手方向端部を基準として、四角柱体8と切削ブレード20とのY軸方向の位置合わせを行う。
【0021】
次いで、スピンドル18を下降させ、四角柱体8の第1の面8aから金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さまで、
図5に矢印Aで示す方向に高速回転させた切削ブレード20の刃先を切り込ませると共に、切削ブレード20の刃先を切り込ませた部分に切削水を供給しながら、切削手段16に対してチャックテーブルを所定の送り速度でX軸方向に加工送りする。これによって、金属製チューブ2の径方向中心には至らない第1のハーフカット溝22aを形成することができる。
【0022】
さらに、四角柱体8の長手方向(図示の実施形態ではY軸方向)に所定間隔で割り出し送りしながら、第1のハーフカット溝22aの形成を繰り返す。これによって、
図6に示すとおり、四角柱体8の長手方向に所定間隔をおいて複数の第1のハーフカット溝22aを形成することができる。なお、
図6には、四角柱体8や第1のハーフカット溝22aの寸法が示されているが、これらの寸法はあくまで参考の寸法である。
【0023】
本実施形態においては、第1のハーフカット溝形成工程を実施した後、第1の面8aの反対側に位置する第3の面8cを露出させ(上に向け)、第1のハーフカット溝22aに対応する反対側に四角柱体8の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第3のハーフカット溝を切削ブレード20で形成する第3のハーフカット溝形成工程を実施する。
【0024】
第3のハーフカット溝形成工程においては、まず、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持された四角柱体8をチャックテーブルから取り外すと共に、四角柱体8からダイシングテープ12を一旦剥離する。次いで、第3の面8cを上に向けて、ダイシングテープ12に四角柱体8を再度貼り付けると共に、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持させた四角柱体8をチャックテーブルに再度保持させる。
【0025】
次いで、第3の面8cを上に向けた四角柱体8を撮像手段で撮像し、撮像手段で撮像した四角柱体8の画像に基づいて、四角柱体8の長手方向をY軸方向に整合させると共に、四角柱体8の長手方向端部を基準として、四角柱体8と切削ブレード20とのY軸方向の位置合わせを行う。この際は、複数の第1のハーフカット溝22aのうち、端の第1のハーフカット溝22aの真上に切削ブレード20を位置づける。
【0026】
そして、第1のハーフカット溝22aを形成した際と同様に、第3の面8cから金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さまで、切削ブレード20の刃先を切り込ませると共に、チャックテーブルをX軸方向に加工送りして、第3のハーフカット溝22c(
図7参照。)を形成する。また、第1のハーフカット溝22aの間隔と同じ間隔で四角柱体8の長手方向に割り出し送りしながら、第3のハーフカット溝22cの形成を繰り返す。これによって、
図7に示すとおり、複数の第1のハーフカット溝22aのそれぞれに対応する反対側に、金属製チューブ2の径方向中心には至らない複数の第3のハーフカット溝22cを形成することができる。
【0027】
図7を参照することによって理解されるとおり、第3のハーフカット溝22cのY軸方向位置は、第1のハーフカット溝22aのY軸方向位置と同一であるが、第1・第3のハーフカット溝22a、22cの双方ともに、金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さなので、第1のハーフカット溝22aと第3のハーフカット溝22cとは連結せず、第1・第3のハーフカット溝22a、22cによって金属製チューブ2が分断されることはない。
【0028】
第3のハーフカット溝形成工程を実施した後、第1の面8aと直交する第2の面8bを露出させ隣り合う第1のハーフカット溝22aと第1のハーフカット溝22aとの中央に四角柱体8の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第2のハーフカット溝を切削ブレード20で形成する第2のハーフカット溝形成工程を実施する。
【0029】
第2のハーフカット溝形成工程においては、第3のハーフカット溝形成工程と同様に、まず、四角柱体8を支持している環状フレーム10をチャックテーブルから取り外すと共に、四角柱体8からダイシングテープ12を一旦剥離する。次いで、第2の面8bを上に向けて、ダイシングテープ12に四角柱体8を再度貼り付けると共に、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持させた四角柱体8をチャックテーブルに再度保持させる。
【0030】
次いで、第2の面8bを上に向けた四角柱体8を撮像手段で撮像し、撮像手段で撮像した四角柱体8の画像に基づいて、四角柱体8の長手方向をY軸方向に整合させると共に、四角柱体8の長手方向端部を基準として、四角柱体8と切削ブレード20とのY軸方向の位置合わせを行う。この際は、隣り合う第1のハーフカット溝22aと第1のハーフカット溝22aとの中央に切削ブレード20を位置づける。
【0031】
そして、第1・第3のハーフカット溝22a、22cを形成した際と同様に、第2の面8bから金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さまで、切削ブレード20の刃先を切り込ませると共に、チャックテーブルをX軸方向に加工送りして、第2のハーフカット溝22b(
図8参照。)を形成する。また、第1・第3のハーフカット溝22a、22cの間隔と同じ間隔で四角柱体8の長手方向に割り出し送りしながら、第2のハーフカット溝22bの形成を繰り返す。これによって、隣り合う第1のハーフカット溝22a間のそれぞれ(隣り合う第3のハーフカット溝22c間のそれぞれでもある。)に、金属製チューブ2の径方向中心には至らない複数の第2のハーフカット溝22bを形成することができる。
【0032】
第2のハーフカット溝形成工程を実施した後、第2の面8bの反対側に位置する第4の面8dを露出させ第2のハーフカット溝22bに対応する反対側に四角柱体8の長手方向に所定間隔で割り出し送りしながら中心には至らない第4のハーフカット溝を切削ブレード20で形成する第4のハーフカット溝形成工程を実施する。
【0033】
第4のハーフカット溝形成工程においては、第2・第3のハーフカット溝形成工程と同様に、まず、四角柱体8を支持している環状フレーム10をチャックテーブルから取り外すと共に、四角柱体8からダイシングテープ12を一旦剥離する。次いで、第4の面8dを上に向けて、ダイシングテープ12に四角柱体8を再度貼り付けると共に、ダイシングテープ12を介して環状フレーム10に支持させた四角柱体8をチャックテーブルに再度保持させる。
【0034】
次いで、第4の面8dを上に向けた四角柱体8を撮像手段で撮像し、撮像手段で撮像した四角柱体8の画像に基づいて、四角柱体8の長手方向をY軸方向に整合させると共に、四角柱体8の長手方向端部を基準として、四角柱体8と切削ブレード20とのY軸方向の位置合わせを行う。この際は、複数の第2のハーフカット溝22bのうち、端の第2のハーフカット溝22bの真上に切削ブレード20を位置づける。
【0035】
そして、第1~第3のハーフカット溝22a~22cを形成した際と同様に、第4の面8dから金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さまで、切削ブレード20の刃先を切り込ませると共に、チャックテーブルをX軸方向に加工送りして、第4のハーフカット溝22d(
図9(a)参照。)を形成する。また、第2のハーフカット溝22bの間隔と同じ間隔で四角柱体8の長手方向に割り出し送りしながら、第4のハーフカット溝22dの形成を繰り返す。これによって、複数の第2のハーフカット溝22bのそれぞれに対応する反対側に、金属製チューブ2の径方向中心には至らない複数の第4のハーフカット溝22dを形成することができる。
【0036】
図9(a)を参照することによって理解されるとおり、第4のハーフカット溝22dのY軸方向位置は、第2のハーフカット溝22bのY軸方向位置と同一であるが、第2・第4のハーフカット溝22b、22dの双方ともに、金属製チューブ2の径方向中心には至らない深さなので、第2のハーフカット溝22bと第4のハーフカット溝22dとは連結せず、第2・第4のハーフカット溝22b、22dによっても金属製チューブ2が分断されることはない。
【0037】
このような第1~第4のハーフカット溝形成工程は、たとえば、以下の加工条件で実施することができる。
<被加工物>
チューブの材質 :チタン合金
チューブの外径 :0.4mm
チューブの内径 :0.35mm
チューブの長さ :300mm)
<第1~第4のハーフカット溝>
溝の幅 :0.02~0.05mm
溝の深さ :0.15~0.18mm
溝同士の間隔 :0.10~0.15mm
<ダイシング装置>
切削ブレードの直径 :50mm
切削ブレードの幅 :0.02mm
切削ブレードの回転数:30,000rpm
切削水 :1.6L/min
加工送り速度 :3mm/s
【0038】
そして、第4のハーフカット溝形成工程を実施した後、適宜の溶剤を用いて四角柱体8の樹脂6’を除去することにより、
図9(b)に示すような第1~第4のハーフカット溝22a~22dが形成された屈曲可能な金属製チューブ2を得ることができる。
【0039】
以上のとおりであり、図示の実施形態の金属製チューブの加工方法においては、金属製チューブ2の外面を樹脂6’で覆い四角柱体8を形成してから、面で四角柱体8を支持した状態で第1~第4のハーフカット溝形成工程を実施する。したがって、第1~第4のハーフカット溝を形成する際に、四角柱体8がズレることがなく、つまり、金属製チューブ2の安定した固定が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0040】
図示の実施形態とは異なり、円筒状の金属製チューブ2をダイシングテープ12に直接貼り付けて環状フレーム10で支持する場合は、金属製チューブ2とダイシングテープ12とが線接触となり、金属製チューブ2を線で支持することになるので、金属製チューブ2の固定が不安定となってしまい、金属製チューブ2に精密な切削加工を施すことが困難になる。これにひきかえ、図示の実施形態では、金属製チューブ2の外面を樹脂6’で覆った四角柱体8をダイシングテープ12に貼り付けて環状フレーム10で支持しており、四角柱体8とダイシングテープ12とが面接触となり、面で四角柱体8を支持することになる。したがって、金属製チューブ2の安定した固定が可能であり、金属製チューブ2に精密な切削加工を施すことができる。
【0041】
なお、図示の実施形態では、第1のハーフカット溝形成工程の次に第3のハーフカット溝形成工程を実施し、第2のハーフカット溝形成工程の次に該第4のハーフカット溝形成工程を実施する例を説明したが、第1~第4のハーフカット溝形成工程の順は問わず、たとえば、第1、第2、第3、第4の順で実施してもよい。
【符号の説明】
【0042】
2:金属製チューブ
4:治具
4a:矩形溝
6:液状樹脂
6’:硬化した樹脂
8:四角柱体
8a:第1の面
8b:第2の面
8c:第3の面
8d:第4の面
20:切削ブレード
22a:第1のハーフカット溝
22b:第2のハーフカット溝
22c:第3のハーフカット溝
22d:第4のハーフカット溝